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明細書 :リポソーム複合体、その製造方法、及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5713311号 (P5713311)
公開番号 特開2012-067040 (P2012-067040A)
登録日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発行日 平成27年5月7日(2015.5.7)
公開日 平成24年4月5日(2012.4.5)
発明の名称または考案の名称 リポソーム複合体、その製造方法、及びその使用
国際特許分類 A61K   9/127       (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
FI A61K 9/127 ZNA
A61K 47/42
A61K 31/7088
A61K 48/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2010-214303 (P2010-214303)
出願日 平成22年9月24日(2010.9.24)
審査請求日 平成25年9月20日(2013.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】黒田 俊一
【氏名】太江田 綾子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】高橋 樹理
参考文献・文献 特開2010-077091(JP,A)
特開2007-106752(JP,A)
JUNG, J. et al.,Journal of Controlled Release,2008年,Vol.126,p.255-264
調査した分野 A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/48
特許請求の範囲 【請求項1】
リポソーム複合体を製造する方法であって、
(1)カチオン性リポソーム、B型肝炎ウイルスタンパク質を含む中空ナノ粒子、及び核酸を液中にて混合する工程1、及び
(2)前記工程1にて得られた混合物を密度に基いて分離する工程2を含み、
工程1における混合工程を、pHが5以下又は10以上の液中で行うことを特徴とする、
リポソーム複合体の製造方法。
【請求項2】
前記工程2において、1.07~1.19g/mlの密度を有するリポソーム複合体を分離することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
中空ナノ粒子が、脂質膜を構成要素とし、B型肝炎ウイルスタンパク質を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソーム複合体、その製造方法、その細胞への導入、及び個体の組織への導入を目的とした使用に関する。特に、リポソーム、バイオナノカプセル、及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体、その製造方法、及びその細胞への導入を目的とした使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオナノカプセル(BNC)は「膜透過活性(膜融合活性と同義)を有するタンパク質を提示する生物由来中空ナノ粒子及びその改変体」のことであり、その代表例としてB型肝炎ウイルスの感染機構と、細胞及び臓器認識機構を有する非ウイルス性ベクターとして開発されたB型肝炎ウイルス表面抗原Lタンパク質粒子がある(その他の例として、インフルエンザ外皮タンパク質、センダイウイルス外皮タンパク質が想定される)。このBNC(以降はB型肝炎ウイルス表面抗原Lタンパク質粒子を指す)を用いて遺伝子や薬剤等を送達するDDS技術が開発されている(特許文献1、非特許文献1)。このBNCへの遺伝子等の物質の封入は、エレクトロポレーション法を用いてBNC内部にプラスミドDNAを導入する方法が開発されていた。しかしこの方法は、遺伝子導入が非効率的であることや、遺伝子等の封入によるBNC粒子の巨大化により生体内投与に不向きであること、また医薬品をとして生産する上で巨大なエレクトロポレーション材料を製造するのが困難であるといった問題があった。
【0003】
そこでエレクトロポレーション法に代わる新たな遺伝子等の物質封入法として、カチオン性リポソームと遺伝子の複合体(lipoplex)に上記BNCを融合させる方法が確立された(特許文献2、非特許文献2)。また、BNCには抗体提示型BNC(特許文献3)、レクチン提示型BNC(特許文献4)、成長因子提示型BNC(特許文献5)も開発されており、種々の細胞乃至組織に対して特異的な標的化能を付与することも可能となっている。
【0004】
カチオン性リポソームは、カチオン性を有する脂質と、膜を安定化させる補助脂質とで構成されたリポソームであり、比較的遺伝子導入効率の高い非ウイルス性ベクターとして応用研究が盛んにおこなわれている。カチオン性リポソームは、静電的相互作用により遺伝子と複合体を形成し、さらに非特異的に細胞膜へ集積し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。BNCは、その膜融合活性によりlipoplexと膜融合し、BNC-lipoplex複合体を形成する。BNC-lipoplex複合体は、BNCを構成するタンパク質であるHBsAg Lのpre-S1領域に存在するヒト肝臓特異的レセプターの働きにより、肝臓細胞特異的に作用し、またHBsAg Lのアミノ末端側に存在する膜透過ペプチドの働きにより、後期エンドソームからの脱出がさらに速やかに行われると考えられる(非特許文献3)。
【0005】
これまでに、細胞への物質導入を目的としたBNC-リポソーム複合体について、その複合体のDDSとしての働きを高めるために、所定の粒径とする技術(特許文献2)や、生体内での複合体の安定性に鑑みてゼロに近い表面電荷とする技術(特許文献6)が開示されているが、細胞への物質導入能自体を高める技術は何ら開発されていない。また上述のように、BNCは高い特異性で物質を導入する対象を選択することが可能であるため、高い特異性を有しつつも、細胞への物質導入能が向上したBNC-リポソーム複合体の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001-316298号公報
【特許文献2】特開2007-106752号公報
【特許文献3】WO2005/049824
【特許文献4】特開2009-120532号公報
【特許文献5】特開2003-286198号公報
【特許文献6】特開2010-077091号公報<nplcit num="1"> <text>Nature Biotechnology 21 (2003) 885-890. Nanoparticles for the Delivery of Genes and Drugs to Human Hepatocytes. Yamada, T., Iwasaki, Y., Tada, H., Iwabuki, H., Chuah, M. K. L., VandenDriessche, T., Fukuda, H., Kondo, A., Ueda, M., Seno, M., Tanizawa, K., and Kuroda, S.</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Journal of Controlled Release 126 (2008) 255-264 Bio-nanocapsule conjugated with liposomes for in vivo pinpoint delivery of various materials Joohee Jung, Takashi Matsuzaki, Kenji Tatematsu, Toshihide Okajima, Katsuyuki Tanizawa, Shun'ichi Kuroda</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>Methods in Enzymology 464 (2009)147-166. Bio-nanocapsule-liposome conjugates for in vivo pinpoint drugs and gene delivery. Kasuya, T., Jung, J., Kinoshita, R., Goh, Y., Matsuzaki, T., Iijima, M., Yoshimoto, N., Tanizawa, K., and Kuroda, S.</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な課題は、細胞への物質導入を目的とするBNC-リポソーム複合体の、細胞への高い特異性を有しつつも、物質導入効率を上昇させる技術を開発する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の密度を有するリポソーム、バイオナノカプセル、及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体が、高効率で、且つ高い特異性を持って、特定の細胞へ所望の物質を導入できることを見出した。さらに、特定の環境下にて製造した前記リポソーム複合体は、特に高い物質導入効率を示すことを見出した。本発明は、係る知見に基いて完成されたものであり、下記の態様を含むものである。
【0009】
項1 リポソーム及びバイオナノカプセルを含むリポソーム複合体、又はリポソーム、バイオナノカプセル、及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体であって、該リポソーム複合体の密度が1.07~1.19mg/mlであるリポソーム複合体。
項2 前記バイオナノカプセルが、B型肝炎ウイルスタンパク質、又はその改変体を含む中空ナノ粒子である、上記項1に記載のリポソーム複合体。
項3 前記細胞導入物質が、核酸、タンパク質、薬剤、糖質、脂質、及び標識物質からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項1又は2に記載のリポソーム複合体。
項4 前記リポソームが、カチオン性リポソームであり、前記細胞導入物質が核酸である上記項3に記載のリポソーム複合体。
項5 前記リポソームが、アニオン性リポソームであり、前記細胞導入物質が薬剤又は標識物質である上記項3に記載のリポソーム複合体。
項6 前記リポソーム複合体の表面電荷が、-30~+10mVである上記項1に記載のリポソーム複合体。
項7 前記リポソーム複合体の粒径が、50~500nmである上記項1に記載のリポソーム複合体。
項8 上記項1に記載のリポソーム複合体と細胞を接触させ、前記細胞導入物質を細胞に導入する方法。
項9 リポソーム複合体を製造する方法であって、
(1)リポソーム、及びバイオナノカプセルを液中にて混合する工程1及び
(2)前記工程1にて得られた混合物を密度に基いて分離する工程2
を含む、リポソーム複合体の製造方法。
項10 前記工程2において、1.07~1.19mg/mlの密度を有するリポソーム複合体を分離することを特徴とする上記項9に記載の製造方法。
項11 前記工程1における混合工程を、pHが5以下、又は10以上の液中で行う上記項9又は10に記載の方法。
項12 前記バイオナノカプセルが、B型肝炎ウイルスタンパク質、又はその改変体を含む中空ナノ粒子である、上記項9~11のいずれかに記載の製造方法。
項13 前記工程1にて、更に細胞導入物質を混合する、上記項9~12のいずれか1項に記載の製造方法。
項14 前記工程2の後に、更に細胞導入物質を混合する工程3が含まれる、上記項9~12のいずれか1項に記載の製造方法。
項15 前記細胞導入物質が、核酸、タンパク質、薬剤、糖質、脂質、及び標識物質からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項13又は14に記載の製造方法。
項16 前記リポソームが、カチオン性リポソームであり、前記細胞導入物質が核酸である上記項15に記載の製造方法。
項17 前記リポソームが、アニオン性リポソームであり、前記細胞導入物質が薬剤又は標識物質である上記項15に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリポソーム複合体は、高効率で、且つ高い特異性にて細胞に物質を導入することができる。また、カチオニックリポソーム複合体に対してはゼータ電位を0mV前後からマイナスに下げるとともに、粒子径を300nm以下に抑える働きがあり、生体内投与にも向いている複合体を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のリポソーム複合体の製造に関する図。pHが2、4、6、8、10及び12の条件下で作製したリポソーム複合体を分画し、各フラクションが呈する蛍光強度を示している。
【図2】本発明のリポソーム複合体の製造に関する図。pHが3、5、7、9及び11の条件下で作製したリポソーム複合体を分画し、各フラクションが呈する蛍光強度を示している。
【図3】本発明のリポソーム複合体の細胞導入効率を示す図。pHが2、4、6、8、10及び12の条件下で作製した各々のリポソーム複合体の細胞導入効率を、ルシフェラーゼアッセイによって示している。各細胞に導入しているDNA量はすべて均一である。
【図4】本発明のリポソーム複合体の細胞導入効率を示す図。pHが3、5、7、9、及び11の条件下で作製した各々のリポソーム複合体の細胞導入効率を、ルシフェラーゼアッセイによって示している。各細胞に導入しているDNA量はすべて均一である。
【図5】本発明のリポソーム複合体の製造に関する図。pHが3、5、7、及び9の条件下で作製したリポソーム複合体を分画し、各フラクションが呈する蛍光強度を示している。図中□(白抜き四角)はCy3の蛍光強度を示し、●(黒丸)はNBDの蛍光強度を示す。
【図6】本発明のリポソーム複合体の細胞導入効率を示す図。pHが3の条件下で作製したリポソーム複合体の細胞導入効率を、複合体が取り込まれた細胞が呈す蛍光強度によって示している。

【0012】
本発明のリポソーム複合体
本発明のリポソーム複合体は、リポソーム及びバイオナノカプセルを含むリポソーム複合体、又はリポソーム、バイオナノカプセル、及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体であって、該リポソーム複合体の密度が1.07~1.19mg/mlであるリポソーム複合体である。
【0013】
本発明のリポソーム複合体の表面電位は、特に限定はされないが、通常は-30~+10mV程度となる。このような範囲の表面電位を有するリポソーム複合体は、DDSとして生体に投与された際に有効に機能することが可能である。
【0014】
本発明のリポソームは、アニオン性リポソーム、中性リポソーム、カチオン性リポソームのいずれであってもよく、特に限定はされない。
【0015】
リポソームは一枚膜リポソームであっても、多重層リポソームであってもよく、通常40~300nm程度の大きさである。好ましくは50~200nm程度であり、更に好ましくは60~150nm程度である。リポソームの大きさは、中空ナノ粒子の0.5~2倍程度の大きさであるのが好ましい。リポソームがナノ粒子に対して大きすぎても小さすぎても円滑な複合粒子の形成が妨げられる。
【0016】
リポソームは超音波処理法、逆相蒸発法、凍結融解法、脂質溶解法、噴霧乾燥法等により製造することができる。
【0017】
リポソームの構成成分としては、リン脂質、コレステロール類、脂肪酸等が挙げられ、具体的にはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、リゾレシチン等の天然リン脂質、あるいはこれらを常法によって水素添加したものの他、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリン等の合成リン脂質が挙げられる。リン脂質は様々な飽和度を有する脂質を組み合わせて使用するのが望ましい。その他、コレステロール類としては、コレステロール、フィトステロール等が挙げられ、脂肪酸としてはオレイン酸、パルミトオレイン酸、リノール酸、或いはこれら不飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物が挙げられる。側鎖の小さい不飽和脂肪酸を含むリポソームは曲率の関係から小さいリポソーム作製に有効である。
【0018】
リポソームの製造法の例を具体的に説明すると、例えば前記したリン脂質、コレステロール等を適当な有機溶媒に溶解し、これを適当な容器に入れて減圧下に溶媒を留去して容器内面にリン脂質膜を形成し、これに導入物質を含む水溶液、好ましくは緩衝液を加えて攪拌して、導入物質を内包したリポソームを得ることができる。該リポソームを直接、又はいったん凍結乾燥した後に、凍結乾燥処理された本発明のナノ粒子と混合することにより、リポソームとナノ粒子の複合粒子を得ることができる。
【0019】
本発明のバイオナノカプセルは、膜透過活性を有するタンパク質を提示する生物由来中空ナノ粒子又はその改変体と、脂質膜を構成要素であり、例として、B型肝炎ウイルス表面抗原粒子、インフルエンザ外皮タンパク質、センダイウイルス外皮タンパク質等が挙げられる。中でも粒子径性能を有するB型肝炎ウイルスL(HBsAg L)タンパク質を構成要素とする中空ナノカプセルが好ましい。
【0020】
HBsAgLタンパク質は、pre-S1領域に存在するヒト肝臓特異的レセプターの働きにより肝臓細胞特異的に作用し、またHBsAg Lタンパク質のアミノ末端側に存在する膜透過ペプチドの働きにより、後期エンドソームからの脱出がさらに速やかに行われる。
【0021】
HbsAg発明のタンパク質の改変体としては、特許文献1に記載された抗原性を減少させたB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質、特許文献3に記載された抗体結合領域を有するB型肝炎ウィルス表面抗原タンパク質などが挙げられる。
【0022】
本発明の細胞導入物質とは、例えば細胞が有する機能を変化させる目的、細胞を標識する目的、細胞に新たな機能を付与する目的を達成させるための物質である。これらの物質として、核酸、タンパク質、脂質、糖鎖、薬剤、標識物質等が挙げられる。
【0023】
上記の核酸は、DNA(例えば、プラスミド、タンパク質又はペプチドが結合したDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はこれらの断片等)、RNA(例えば、t-RNA、m-RNA、siRNA、miRNA、合成RNA又はこれらの断片)、アデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシルを有する核酸アナログ等が挙げられる。これらの核酸は、細胞に導入されることによって、遺伝子の発現の調整の機能を発揮するという目的が達成される。
【0024】
タンパク質としては、特に限定はされないが、抗体、成長因子、ホルモン等のように、外部から細胞に刺激を与えて、細胞が有する機能を変化させるもの、細胞内部で機能を発揮するものなどであればよい。また本発明におけるタンパク質とは、アミノ酸重合度の低いペプチドであってもよい。
【0025】
脂質及び糖鎖においても、上記タンパク質と同様に、細胞外部から細胞に刺激を与えて、差し棒が有する機能を変化させるもの、細胞乃部にて機能を発揮するものであればよく、特に限定はされない。
【0026】
薬剤としては、低分子化合物を示し、特に限定はされないが、本発明のリポソーム複合体は、DDSとしての機能を有することから、組織に特異的に送達する必要のある薬剤、又は徐放性が要求される薬物等が好適に用いられる。
【0027】
標識物質とは、細胞を外部から認識可能とする物質であり、一般的に標識物質と呼ばれるものであれば特に限定はされない。認識するための方法は、特に限定されず、例えば、体外から特定の部位の細胞を認識するための周知の手段であればよい。このような標識物質として、具体的には蛍光物質、放射性物質、磁性物質等を挙げることができる。
【0028】
また、本発明のリポソーム複合体は、その用途によって適宜粒子径を調整することも可能である。例えば、生体内への投与を目的とするのであれば、200nm以下の粒径に調整することが好ましい。具体的な粒子径の調整方法は、エクストルーダーを用いて、孔径の小さいフィルターを通過させることによって、粒子径の調節が可能である。
【0029】
本発明のリポソーム複合体は、上記リポソームとバイオナノカプセルが、各々が有する脂質膜等を介して結合して複合体を形成する。また、上記リポソーム、バイオナノカプセル及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体の場合、前記細胞導入物質は、前記リポソーム又はバイオナノカプセルの内部に包含されていてもよく、リポソーム、及び/又はバイオナノカプセルの表面に結合若しくは脂質膜中に介在した形態であってもよい。
【0030】
本発明のリポソーム複合体を構成する上記リポソームとバイオナノカプセルの重量比は、通常リポソーム:バイオナノカプセル=1:0.2~1.5程度である。高い細胞導入効率得る観点から、1:0.7~1.5程度とすることがより好ましい。
【0031】
本発明において特に好ましいリポソーム複合体は、リポソームとしてカチオン性リポソーム、バイオナノカプセルとしてB型肝炎ウイルスタンパク質を含む中空ナノ粒子、及び細胞導入物質としてDNAを含むリポソーム複合体があげられる。このようなリポソーム複合体の密度は、通常1.07~1.15g/ml程度である。
【0032】
また、リポソームとしてアニオン性リポソーム、バイオナノカプセルとしてB型肝炎ウイルスタンパク質を含む中空ナノ粒子を含むリポソーム複合体も、本発明における特に好ましいリポソーム複合体である。このようなリポソーム複合体の密度は通常1.17~1.19g/ml程度である。
【0033】
本発明のリポソーム複合体の製造方法
本発明のリポソーム複合体の製造方法は、下記の2つの工程を含むものである。
(1)リポソーム、及びバイオナノカプセルを液中にて混合する工程1。
(2)前記工程1にて得られた混合物を密度に基いて分離する工程2。
【0034】
<工程1について>
工程1では、リポソームとバイオナノカプセルを液中にて混合する工程である。リポソーム、及びバイオナノカプセルは、上述したものを用いればよい。混合する時間は、特に限定されないが、通常は10~30分程度とすればよい。また、混合する際の温度も特に限定はされず、通常は、15~37℃程度の室温とすればよい。
【0035】
得られるリポソーム複合体の、細胞導入効率を上昇させることを目的として、pHが5以下、又は10以上の液中で混合することが好ましい。更に細胞導入効率を向上させるためには、pHは1~5程度又は10~14程度が好ましい。このとき、上述の範囲のpHの液中にリポソーム又はバイオナノカプセルを調整して、その後混合してもよいが、リポソームとバイオナノカプセルを、適当なpHの液中で混合した後、直ぐに上記範囲のpHを有する液体を加えてもよい。
【0036】
このような液体は、特に限定されるものではないが緩衝液を用いることが好ましく、特に比較的広いpHにて緩衝能を有するBritton Robinson bufferが好ましい。
【0037】
工程1では、リポソームとバイオナノカプセルの混合と同時に、上述した細胞導入物質を混合してもよい。若しくは、予め細胞導入物質と複合体を形成しているリポソームとバイオナノカプセルを混合してもよく、予め細胞導入物質と複合体を形成しているバイオナノカプセルとリポソームを混合してもよい。ここで、細胞導入物質とリポソーム、及び細胞導入物質とバイオナノカプセルの複合体とは、リポソーム或いはバイオナノカプセルの中に、細胞導入物質が内包される形態であってもよく、リポソーム或いはバイオナノカプセルの表面に結合若しくは脂質膜中に介在した形態であってもよい。
【0038】
<工程2について>
工程2では、工程1にて得られる混合物を、密度に基いて分離する工程である。すなわち工程1にて得られる複合体は様々な組成にて形成される混合物となっているので、それらの混合物を各々の複合体が有する密度によって分ける工程である。
【0039】
分離工程は、密度に依存した分離方法を用いればよく、例えば密度勾配遠心分離法を挙げることができる。密度勾配に用いる密度勾配液として、塩化セシウム溶液、蔗糖溶液、硫酸セシウム溶液、OptiPrep,Percol等挙げることができ、各々の用途に応じて適宜選択して用いればよい。密度勾配液は、段階的密度勾配であっても、直線的密度勾配であってもよく、適宜選択して用いればよい。
【0040】
本発明のリポソーム製造方法において、工程1にて細胞導入物質をリポソーム、バイオナノカプセルと共に混合していない場合、工程2にて得られたリポソーム複合体と細胞導入物質を混合して、リポソーム、バイオナノカプセル及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体を製造してもよい。混合時の条件等は、特に限定されるものではなく、例えば15~37℃で10~30分程度混合すればよい。混合の後に、複合体を形成しなかった工程2にて得られるリポソーム複合体、又は細胞導入物質は、ゲル濾過カラム等を用いて、適宜分離してリポソーム、バイオナノカプセル、及び細胞導入物質を含むリポソーム複合体を精製してもよい。
【0041】
工程2の後に得られるリポソーム複合体は、その使用目的に応じて透析処理等を行ってもよい。
【0042】
本発明のリポソーム複合体の使用
本発明のリポソーム複合体は、細胞導入能を有する。また、本発明のリポソーム複合体が上述の細胞導入物質を含む場合は、該細胞導入物質を細胞へ導入することができる。「細胞導入」なる用語は、細胞の中にリポソーム複合体の全体が侵入すること、細胞膜とリポソーム複合体が脂質膜融合等によって結合し、リポソーム複合体の一部が細胞に侵入すること、又は細胞膜の近傍にリポソーム複合体が接触して、前記細胞導入物質複合体を形成する成分の一部が細胞に侵入することを意味する。
【0043】
本発明のリポソーム複合体は、例えばDDSの用途に用いることができる。即ち、生体内に本発明のリポソーム複合体を投与した場合、生体内の組織を構成する細胞にリポソーム複合体が導入される。また、本発明のリポソーム複合体は、培養細胞等に対する遺伝子導入試薬として用いることも可能である。
本発明のリポソーム複合体をDDSとして用いることによって、病気に対する治療、若しくは診断に用いることが可能となる。
【0044】
例えば、ドキソルビシン等の抗がん剤を細胞導入物質としたリポソーム複合体は、細胞に対して抗がん剤を導入することが可能である。
【実施例】
【0045】
<バイオナノカプセル(BNC)の作製>
本実施例にて用いるBNCは、BNC発現プラスミドpGLDLIIP39-RcTを保有するSaccharomyces cerevisiae AH22R株から、特開2007-209307号公報に記載された、バイオナノカプセルの効率的な精製法に従って作製した。なお、BNCは凍結乾燥処理を施して保存した。
【0046】
作製した1mLのBNC(タンパク質量として1mg/1mL)を、Amersham FluoroLink(登録商標) Cy3 Reactive Dye(GE Healthcare UK Ltd. Buckinghamshire UK)1tubeに全量添加し、室温にて遮光して60分間静置した後、1mMのTris-HCl(pH7.4-7.5)を50μl添加し、5分間の静置によって、その反応を停止させた。この工程によって、Cy3によって標識されたBNC(Cy3-BNC)が作製された。
【0047】
引き続いて、上記の反応物をSephadex G-25 Fine(GE Healthcare)、及びPBSを用いたゲルろ過クロマトグラフィーに供して、Cy3-BNCの精製を行った。
【0048】
得られたCy3-BNC溶液は、分光光度計によりタンパク質の吸光度(A280)及びCy3の吸光度(A552)を測定し、タンパク質濃度としてのBNC濃度を定量した。具体的には、Cy3-BNC溶液のA280からA552の8%(Cy3によるバックグラウンド)を差し引いた値をタンパク質の吸光度とし、あらかじめ測定しておいた未標識のBNC(タンパク質量として1mg/ml)のA280の値をStandardとしてBNC濃度を算出した。
【0049】
この定量結果に基づいて、Cy3-BNC溶液をBNC量が100μg/tube(タンパク質量として)になるように凍結乾燥用チューブに分注し、250mg/mlスクロース溶液を20μl/tube添加し、液体窒素で5分から10分間凍結させた後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)に連結した角型ドライチャンバー(東京理化器械株式会社)内で48時間凍結乾燥させた。
【0050】
<カチオン性リポソームの作製>
3.3mMのDC-6-14(相互薬工株式会社)を801.8μL、3.3mMのDOPE(日油)を601.4μL、3.3mMのCholesterol(Sigma)を581.3μL、2mg/mLの濃度の22-(N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino)-23,24-bisnor-5-cholen-3β-olを16.4μL準備し、これら全てを50mLのナスフラスコに入れ、減圧乾固した後に蒸留水2mLで水和した。
【0051】
引き続いて液体窒素による凍結と融解を5回繰り返し、更にアントラソン超音波細胞破砕機(Misonix Inc.)を用いて超音波処理する工程を経て、最終濃度2mg/mlのNBD標識カチオン性リポソームを得た。
【0052】
<カチオン性リポソーム複合体の作製>
NBDで標識したカチオン性リポソームを、脂質量で200μgずつエッペンドルフチューブに分注し、pCAG-Luc3ベクター(CAGプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子が配置された発現プラスミド)を44.2μg添加し、15分間室温静置して、DNA-カチオン性リポソーム複合体(以後、lipoplexとする)を作製した。このとき、二者の重量比は、pCAG-Luc3ベクター:リポソーム=1:4.53であった。
【0053】
次に、作製したlipoplexと、既に作製した100μgのCy3-BNCを混合し、pH3、5、7、及び9のBritton Robinson buffer(0.1Mホウ酸、0.1M酢酸、0.1Mリン酸、0.5M水酸化ナトリウム水溶液によりpH調製)をそれぞれ加え、30分間37℃でインキュベートしてBNC-lipoplex複合体を作製した。
【0054】
引き続いて、得られたBNC-lipoplex複合体を、塩化セシウム密度勾配遠心法に供して分画操作を行った。塩化セシウム密度勾配遠心法による分画は、10%、15%、20%、30%、及び40%(w/v)の塩化セシウム溶液(このときの溶媒はPBS)を、各2mlずつP40ST用の遠心管に充填し、分離用超遠心機CP100MX(日立工機)を用いて、室温のもと、回転数24,000rpmで16時間、遠心分離処理を行った。
【0055】
遠心分離の後、遠心管の上層から500μlずつ分取して各フラクションを得た。各フラクションは、Varioscan(Thermo Fisher Scientific)を用いて、リポソームを標識するNBD由来の蛍光(測定波長530nm)と、BNCを標識するCy3由来の蛍光(測定波長552nm)を測定し、BNC-lipoplex複合体を最も多く含有するピークフラクションを分取した。各フラクションのNBD及びCy3の蛍光強度を図1及び2にて示す。
【0056】
本実施例において、pH2の条件下で作製したBNC-lipoplex複合体は7及び8番目のフラクションを、pH4の条件下のものは8及び9番目のフラクションを、pH6の条件下のものは9番目のフラクションを、pH8の条件下のものは10番目のフラクションを、pH10の条件下のものは8、9及び10番目のフラクションを、そしてpH12の条件下のものは5、6及び7番目のフラクションを回収した。また、pH3の条件下で作製したBNC-lipoplex複合体は6、7及び8番目のフラクションを、pH5の条件下のものは8及び9番目のフラクションを、pH7の条件下のものは9番目のフラクションを、pH9の条件下のものは10番目のフラクションを、そしてpH11の条件下のものは7番目のフラクションを回収した。回収したそれぞれのピークフラクションは、500mlのPBSにて数回透析した後に4℃にて保存した。
【0057】
これらのフラクションに含まれるBNC-lipoplex複合体の各種性状について測定した。BNCの定量(タンパク質量として)は、Micro BCA assay kit(Promega)を用いたBCA assayにより評価した。また、複合体に含まれるDNAの定量は、Platinum SYBR Green qPCR SuperMix-UDG with ROX(Invitrogen)を用いて、Applied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステム(Life Technologies)によって行った。具体的には、マイクロチューブにPlatinum SYBR Green qPCR SuperMix-UDG with ROXを12.5μlずつ、各10μMのForward Primer(配列番号1)及びReverse Primer(配列番号2)を各0.5μlずつ添加し、そこにテンプレートをそれぞれ5μlずつ加え、蒸留水で25μlにメスアップしたものを、RT-QPCR(Real time-Quantitative PCR)に供した。
【0058】
テンプレートについては、2μlのBNC-lipoplex複合体と同量の2%(v/v)TX-100を混合し、30分室温で置いたものを200倍希釈して用い、スタンダードであるpCAG-Luc3は、濃度が0.025、0.25、2.5、及び25pg/μlのものを使用した。なお、反応液中に混入するTriton X-100の濃度は5×10-3%(v/v)以下とした。この濃度は、RT-QPCRを阻害しないことを別途確認している。なお、PCR反応のサーマルプログラムについては、上記システムのプロトコルに従って行った。
【0059】
BNC-lipoplex複合体の粒子径とζ電位は、ゼータサイザーナノシリーズZS(Malvern Instruments Ltd.)を用いて測定した。具体的には、ブラウン運動中の粒子群にレーザー光を当て、その散乱光を光電子倍増管にて検出するDLS法(動的光散乱法)による粒子径測定と、M3(mixed mode measurement)測定技術と、PALS(Phase Analysis Light Scattering)法をあわせたM3-PALSによるζ電位測定を行った。
【0060】
各pH環境下にて製造しその後、密度勾配遠心にて分画した後に回収した上記各フラクションに含まれるBNC-lipoplex複合体の各種性状について、下記の表1に示す。
【0061】
【表1】
JP0005713311B2_000002t.gif

【0062】
また、比較実験例として、上記のlipoplexとCy3-BNCを4.53:7.48の重量比で混合し、10分間室温にて静置して作製し、塩化セシウム密度勾配遠心法に供さないサンプルを、後の細胞導入効率実験における比較実験例として用いた。
【0063】
<リポソーム複合体を用いた細胞導入効率実験>
細胞への遺伝子導入効率は、細胞内のルシフェラーゼ活性を基にして測定した。
導入細胞として、Huh7(ヒト肝臓癌由来細胞)、及びHEK293細胞(ヒト腎臓由来細胞)を用いた。これらの細胞を、24穴well-plate(AGCテクノガラス)に5×10/well播種し、10%(v/v)FBS含有DMEM培地で37℃、5%(v/v)CO存在下で24時間培養した。次に、上述の密度勾配遠心法に供した後のBNC-lipoplex複合体を、DNA量が3ng/wellになるよう細胞に添加し、72時間培養した。
【0064】
また比較実験例として、lipoplex、及び上述の密度勾配遠心法に供していないlipoplex-BNC複合体を各Well当り3ngとなるように細胞へ添加した。ルシフェラーゼ活性は、Luciferase Assay System(Promega)を用いて測定した。具体的には、ルシフェラーゼ発現細胞をPBSで1回洗浄し、Passive Lysis Bufferを100 μl/well加え、BioShaker(TAITEC)を用いて室温で5分間振とうさせ、その後細胞溶解液を回収した。次に、細胞溶解液5μlにルシフェラーゼ基質100μlを加え、ルミノメーター(Lumat LB9507)を用いて10秒間の発光量を測定し、ルシフェラーゼ活性を相対的発光量ユニット(RLU)で表わした。
なお、Micro BCA Protein Assay Kit(SIGMA)により、各サンプルのタンパク質濃度を定量し、細胞数を反映するとして換算し、RLU値を補正した。結果を、図3、4に示す。測定は、6回ずつ行ってその平均値を算出して用いた。
【0065】
密度勾配遠心法に供したBNC-lipoplex複合体の遺伝子導入効率は、全ての複合体作製時の全てのpH条件において従来法よりも高くなった。中でも、低いpH条件下又は高いpH条件下にて作製したBNC-lipoplex複合体は飛躍的に同効率が向上した。また,従来法のBNC-lipoplex複合体は、lipoplexよりも低い遺伝子導入効率を示す傾向にあったのに対し、密度勾配遠心法に供したBNC-lipoplex複合体は、lipoplexよりも遺伝子導入効率が高くなった。また、密度勾配遠心法に供したBNC-lipoplex複合体の肝臓細胞特異性は、従来法のBNC-lipoplex複合体に比べて飛躍的に向上した。
【0066】
具体的にHuh7細胞に対する実験において、lipoplexのみのRLU値は4243、従来の混合しただけで、密度勾配遠心法に供さないBNC-lipoplex複合体のRLU値は2058であった。本実施例のように密度勾配遠心法に供したBNC-lipoplex複合体のうち、pH2の条件下にて調整したもののRLU値は844559、pH4では405935、pH6では277470、pH8では147597、pH10では279063、pH12では342588であった。以上の結果から、中性以外のpH環境下にて作製したBNC-lipoplex複合体が、特に高い遺伝子導入能を有することが明らかとなった。
【0067】
また、比較実験として行った、一般的に遺伝子導入剤として用いられるFugeneのRLU値の結果は84579であった。
【0068】
<アニオン性リポソームの作製>
アニオン性リポソームは、下記のようにして作製した。ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC;日油)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE;日油)、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロールナトリウム(DPPG-Na;日油)及びコレステロール(Chol;ナカライテスク)を、クロロホルム/メタノール(4:1(v/v))混合液に溶解させ、DPPC:DPPE:DPPG-Na:Cholが、モル比で15:15:30:40となるようにナス方フラスコに加え、後にロータリー式エバポレーターで減圧乾固して半球状の脂質フィルムを作製した。このフィルムに蒸留水を加え、引き続いてアントラソン超音波破砕機を用いて室温にて6分間超音波処理を行った。なお、NBDで標識されたアニオン性リポソームは、上述のDPPE代えて、N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)-1,2-dihexadecanoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(NBD-DHPE;Invitrogen)を用いた。
【0069】
<BNC-アニオン性リポソーム複合体の作製>
上述のNBDで標識したアニオン性リポソームと、上述のCy3にて標識したBNCをそれぞれ重量比で2:1となる量にてpHが3、5、7、及び9のBritton-Robinson bufferに添加し、37℃にて30分間インキュベートした。
【0070】
後に、上述した<カチオン性リポソーム複合体の作製>と同様に、塩化セシウム密度勾配遠心法に供した。塩化セシウム密度勾配遠心法で得られた各フラクションが呈する蛍光強度を、複合体作製時のそれぞれのpH条件下ごとに図5に示す。
【0071】
pH3の条件下で作製したBNC-アニオン性リポソーム複合体は8番目のフラクションを、pH5の条件下のものは8番目のフラクションを、pH7の条件下のものは8番目のフラクションを、pH9の条件下のものは8番目のフラクションを回収した。回収したそれぞれのピークフラクションは、500mlのPBSにて数回透析した後に4℃にて保存した。
【0072】
得られたBNC-アニオン性リポソームのうち、pH3の条件下にて作製したものは、1.18g/mLの密度を有することが明らかとなった。
【0073】
<BNC-アニオン性リポソーム複合体の細胞への導入能>
上述のBNC-アニオン性リポソーム複合体のうち、pH3の条件下にて作製し、塩化セシウム密度勾配遠心法にて分画したもの(タンパク質濃度で10μg/ml)を、約1×10細胞のHuh7又はHeLa細胞に添加し、氷上で1時間インキュベートした。比較実験として、同じタンパク質濃度のCy3-BNC、同じ脂質濃度のNBDにて標識したアニオン性リポソームを上記細胞に添加して、同様にインキュベートした。その後細胞を冷PBSにて数回洗浄し、4%(w/v)のパラホルムアルデヒドにて固定し、各測定サンプルとした。
【0074】
各測定サンプルを、共焦点レーザー顕微鏡FV-1000D(オリンパス)にて観察し、Cy3及びNBDの蛍光強度を測定した。それぞれの蛍光強度は、MetaMorph softwareversion6.1r2.を用いて解析した。なお、得られた蛍光強度値は細胞数にて標準化した。結果を図6に示す。
【0075】
BNC-アニオン性リポソーム複合体を細胞に作用させた場合、Hela細胞に比べてHuh7細胞ではCy3の蛍光強度を基にすると約44倍もの量で、またNBDの蛍光強度を基にすると約59倍もの量で、BNC-アニオン性リポソーム複合体が細胞内に吸着乃至取り込まれることが明らかとなった。またHuh7細胞に対して、BNC-アニオン性リポソーム複合体は、BNC単独と比較して約6倍、アニオン性リポソーム単独と比較すれば約200倍もの量で、細胞に対して吸着乃至取り込まれることが判明した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5