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明細書 :荷電粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5472731号 (P5472731)
公開番号 特開2011-177391 (P2011-177391A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成23年9月15日(2011.9.15)
発明の名称または考案の名称 荷電粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム
国際特許分類 A61N   5/10        (2006.01)
FI A61N 5/10 Q
請求項の数または発明の数 3
全頁数 17
出願番号 特願2010-045774 (P2010-045774)
出願日 平成22年3月2日(2010.3.2)
審査請求日 平成25年1月17日(2013.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】永嶺 謙忠
個別代理人の代理人 【識別番号】100098589、【弁理士】、【氏名又は名称】西山 善章
【識別番号】100097559、【弁理士】、【氏名又は名称】水野 浩司
【識別番号】100123674、【弁理士】、【氏名又は名称】松下 亮
審査官 【審査官】木村 立人
参考文献・文献 特開平9-189769(JP,A)
特開2008-022994(JP,A)
特開2008-173299(JP,A)
特開2009-261634(JP,A)
米国特許出願公開第2008/0135764(US,A1)
調査した分野 A61N 5/10
特許請求の範囲 【請求項1】
加速器によって加速された高エネルギー荷電粒子ビームを人体に照射して、粒子線治療を行う粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、
人体に照射された高エネルギー粒子ビームパルスのブラッグピーク位置に対応するように配置され、前記高エネルギー粒子ビームパルスに起因して生成された各粒子、各放射線のうち、前記ブラッグピーク位置に対応する位置で停止したミュオンの崩壊で放出される遅延陽電子を選択的に通過させる遮蔽体と、
指定された方向からの陽電子を検出する複数の陽電子検出板を持ち、前記ブラッグピーク位置に対応するように配置されて、前記各陽電子検出板毎に、前記遮蔽体を通過した遅延陽電子を検出し、陽電子発生位置と遅延同時信号の時間との情報を提供する陽電子検出器と、
前記高エネルギー粒子ビームパルスの照射が完了してから、所定時間だけ遅れたタイミングで、所定幅の遅延信号を生成し、この遅延信号を生成している間、前記陽電子検出器を動作させて、前記遅延陽電子を検出させる処理、前記陽電子検出器を所定回数動作させて得られた検出結果を解析し、陽電子発生場所毎に区分されたミュエスアール信号を生成する処理を行う制御/解析装置と、
を備えたことを特徴とする粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、
前記加速器と前記人体との間に配置され、前記加速器から出射される前記高エネルギー粒子ビームが持つエネルギーの一部を吸収する前置エネルギー吸収体、
を備えたことを特徴とする粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、
前記加速器から供給される前記高エネルギー粒子ビームの出射位置、又は出射方向を調整して、前記人体に照射させるビーム左右スキャナ、
を備えたことを特徴とする粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線医学などで使用される陽子線などの荷電粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムに関し、特に、ブラッグピークにおける放射線効果を直接観測し得るようにした粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、がん治療方法の1つとして、陽子や重イオンなどの高エネルギー荷電粒子線を利用した放射線医療が実用化されている。
【0003】
また、PET方式のモニター装置やガンマ線方式のモニター装置などを使用し、粒子線治療効果をその場(In-situ)で的確にモニターする方法も提案されている。
【0004】
例えば、In-situ PET方式のモニター装置では、粒子線の核反応で生ずる陽電子発生原子核を利用してPETの観測を行い陽子が通過する位置の元素分析を行う。
【0005】
また、In-situ Gamma方式のモニター装置では、陽子線の核反応から発生する特性ガンマ線を捕らえ元素分析を行う。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-261634号公報
【特許文献2】特開2008-173299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来提案されている各モニター装置では、次に述べるような問題があった。
【0008】
まず、PET法では、ビームを止め、原子核崩壊を待って観測しなければならないことから、観測結果が得られるまでに時間がかかりすぎるという問題があった。また、核反応が、MeV(百万電子ボルト)レベル以上で起こるために、陽子などが静止寸前に起こるブラッグピークとは位置が10cm以上ずれてしまうという問題があった。
【0009】
また、Gamma法は、短寿命核を対象にできるので、観測時間はPET法より早い。しかしながら、観測される原子核の位置は、PET法と同じく、ブラッグピーク位置から大きくずれてしまうという問題があった。
【0010】
さらに、これら2つの手法は、元素分析が主目的で、放射線効果の生物物理化学現象の観測を行うことができないという問題があった。
【0011】
このため、荷電粒子線の放射線効果が最大となるブラッグピーク位置において、何らかの「非破壊的なその場観測」を行い、粒子線治療効果を的確にモニターすることができ、医療作業を向上させることができる技術の開発が強く望まれていた。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑み、請求項1では、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムを提供することを目的としている。
【0013】
また、請求項2では、ブラッグピークの深さを自在に制御し、如何なる深さの粒子線治療に対しても、適用自在にしながら、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムを提供することを目的としている。
【0014】
また、請求項3では、ブラッグピークの左右位置を制御自在にし、治療対象部位が左右に広がっているときの粒子線治療に対しても、適用自在にしながら、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、加速器によって加速された高エネルギー荷電粒子ビームを人体に照射して、粒子線治療を行う粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、人体に照射された高エネルギー荷電粒子ビームパルスのブラッグピーク位置に対応するように配置され、前記高エネルギー粒子ビームパルスに起因して生成された各粒子、各放射線のうち、前記ブラッグピーク位置に対応する位置で停止したミュオンの崩壊で放出される遅延陽電子を選択的に通過させる遮蔽体と、指定された方向からの陽電子を検出する複数の陽電子カウンターを持ち、前記ブラッグピーク位置に対応するように配置されて、前記各陽電子カウンター毎に、前記遮蔽体を通過した遅延陽電子を検出する陽電子検出器と、前記高エネルギー粒子ビームパルスの照射が完了してから、所定時間だけ遅れたタイミングで、所定幅の遅延信号を生成し、この遅延信号を生成している間、前記陽電子検出器を動作させて、前記遅延陽電子を検出させる処理、前記陽電子検出器を所定回数動作させて得られた検出結果を解析し、ミュエスアール信号を生成する処理を行う制御/解析装置とを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項2では、請求項1に記載の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、前記加速器と前記人体との間に配置され、前記加速器から出射される前記高エネルギー粒子ビームが持つエネルギーの一部を吸収する前置エネルギー吸収体を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、請求項3では、請求項1又は2に記載の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムにおいて、前記加速器から供給される前記高エネルギー粒子ビームの出射位置、又は出射方向を調整して、前記人体に照射させるビーム左右スキャナを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明による、請求項1の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムでは、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる。
【0019】
また、請求項2の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムでは、ブラッグピークの深さを自在に制御し、如何なる深さの粒子線治療に対しても、適用自在にしながら、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる。
【0020】
また、請求項3の粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムでは、ブラッグピークの左右位置を制御自在にし、治療対象部位が左右に広がっているときの粒子線治療に対しても、適用自在にしながら、荷電粒子線パルスの照射に起因して、人体内から放出される遅延陽電子を位置選択的、時間選択的に測定させることができ、これによって荷電粒子線パルスのブラッグピーク位置に静止した正ミュオンのミュエスアール信号を得て、粒子線治療の効果を正確に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第1形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す鉛遮蔽板、プラスチックカウンターテレスコープ部分の正面図である。
【図3】図1に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの動作タイミングを示すタイムチャートである。
【図4】図1に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの動作例を示す模式図である。
【図5】本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第2形態を示す平面図である。
【図6】本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第3形態を示す平面図である。
【図7】生体中における陽子のブラッグピーク位置、正パイオンの静止位置、前方ミュオンの静止位置、後方ミュオンの静止位置を示す模式図である。
【図8】色々なエネルギーの陽子ビームに対する放射線効果の生体厚さ依存性を示すグラフである。
【図9】窒素、クリプトン、アルゴン、キセノンなどの色々な原子核と、陽子とが反応したときに生成される正パイオン生成微分断面積の陽子エネルギー依存性の一例を示すグラフである。
【図10】パイオンが死滅してミュオンが発生する際に、色々なパイオン運動量(エネルギー)に対して発生するミュオンが持つ運動量の分布と角度の広がりを示すグラフである。
【図11】水中における、各粒子の飛程(静止するまでに飛行する距離)のエネルギー依存性を示すグラフである。
【図12】本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの基本構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《本発明の原理説明》
本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの詳細な説明に先立ち、本発明の原理を説明する。

【0023】
まず、本発明者は、関連実験データが全て存在している230MeV陽子線を用いた粒子線治療について、具体的検討を行った。

【0024】
この結果、陽子ビームパルスの一部により同時発生するスピン偏極した正ミュオンの停止位置と、陽子ビームパルスのブラッグピーク位置とがほぼ一致する点に着目し、正ミュオンの消滅に起因して発生する陽電子(遅延陽電子)を測定すれば、ブラッグピーク位置における分子レベルでの生物物理化学的放射線効果の観測ができることが分かった(本発明の原理)。

【0025】
次に、230MeV陽子線と、正ミュオンの消滅に起因して発生する陽電子(遅延陽電子)との関係について、検討内容を具体的に説明する。

【0026】
まず、230MeV陽子は生体中で30cmの深部にブラッグピークを作る。その過程で、90MeV程度の正パイオンを作り、その1/30が物質中を飛行している途中で崩壊して正ミュオンとなり、その1/10が100MeV程度のエネルギーを持ち、陽子とほぼ同じ前方方向に進み、30cmの深さに止まる。このミュオンは陽子の進行方向の反対方向にスピン偏極している。正ミュオンは寿命2.2マイクロ秒で死滅し、スピンの方向に対し、非対称的に最高エネルギー50MeVの陽電子を放出する。

【0027】
また、加速器から出射される陽子ビームは、加速用RF電場特性に対応する特定のパルス時間構造を持っている。この陽子ビームと生体物質との核反応の結果生ずる高エネルギー陽子、アルファ、電子、ガンマ線などは全て陽子ビームパルス近辺の数nsに集中して放出され、各陽子ビームパルス間の数100ナノ秒~数マイクロ秒の間に存在する信号は全て正ミュオンからの陽電子(遅延陽電子)となる。またブラッグピーク以外に止まった正ミュオンからの陽電子は、所定の厚さの鉛遮蔽体で除去することができる。つまり、陽電子の測定器の時間特性と、陽電子の遮蔽体とを適切に製作することにより、ブラッグピーク位置に止まったミュオン以外からの信号を容易に排除することができる。

【0028】
かくして、陽子ビームパルスに同期して放出される遅延陽電子を時間選択的、位置選択的に測定することで、ブラッグピーク位置でのミュオンスピン信号を得ることができる。この手法で、陽子のブラッグピーク位置モニターはもとより、分子レベルで、放射線効果の生物物理化学的解明が可能になり、粒子線治療の進展を図ることができる。

【0029】
以下、図7乃至12と、数式とを参照しながら、本発明の原理について、具体的な構成、数値を箇条書き的に説明する。

【0030】
(1)図8は色々なエネルギーの陽子ビームに対する放射線効果の生体厚さ依存性を示すグラフである[参考文献1]。このグラフから明らかなように、がん治療に使われる230MeVの陽子ビームを生体などに照射すると、生体の表面から30cmの深い位置で、ブラッグピークが発生する。

【0031】
(2)図8に示すように、230MeV陽子を生体に照射すると、生体の表面から深さ30cmの位置にブラッグピークができる。この際、陽子の核反応で発生する正パイオンの大半は生体の表面から深さ20cmの位置に止まる。また、その正パイオンの30分の1が止まるまでにミュオンに変わり、高エネルギー成分(前方ミュオン)が生体の表面から深さ30cmの位置に止まり、後方ミュオンが生体の表面から深さ5cmの位置に止まる。

【0032】
また、生体に照射される230MeV陽子が10ナノAであれば、陽子の方向に、次式に示す90MeV近辺の正パイオンが放出される。
π=I×(dσ/dΩ)×ΔΩ×n×t
=(0.63×1011)×(0.1×10-27)×π/4×(6×1023/18)×10
=3×10 …(1)
但し、Nπ:正パイオンの強度[/s]
dσ/dΩ:正パイオンの生成微分断面積[cm2/sr]
ΔΩ:正パイオン発生立体角[sr]
n:単位体積当たりの分子数[/(cm)3]
t:陽子標的の厚さ(cm)

【0033】
さらに、90MeV近辺の正パイオンからは、次式に示す100MeVの前方ミュオンが生成される。
μ=Nπ×(Δts.d./γπτπ)×(ΔΩμ/Δωdecay
=(3×10)×(1ns/30ns)×1/10
=10 …(2)
但し、Nμ:前方ミュオンの強度[/s]
π:正パイオンの強度[/s]
Δts.d.:減速静止するまでの時間[s]
γπτπ:相対論的補正を加えたパイオンの寿命[s]
ΔΩμ:ミュオン収集立体角[sr]
Δωdecay:パイオンミュオン崩壊の際のミュオン放出角[sr]

【0034】
(3)上記評価では、図9の(a)乃至(d)に示すように、窒素、クリプトン、アルゴン、キセノンなどの色々な原子核と、陽子とが反応するとき、陽子エネルギーに応じて、正パイオン生成微分断面積が変化する[参考文献2]。この際、観測対象となっているパイオンのエネルギーが20度(11-60MeV)であれば、色々な原子核と、陽子との核子・核子反応の閾値が280MeV以下であっても、正パイオンの生成微分断面積は十分な値になる。そして、原子が生体を構成している生体原子C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)であれば、230MeV陽子に対し、前方に生成される、90MeV近辺の正パイオンの生成微分断面積は、0.1×10-27cm2/srとなる。

【0035】
(4)また、陽子パイオン生成断面積の陽子エネルギー依存性[参考文献2]が示すように、230MeVの陽子は生体の表面から10cmまでの生体原子の原子核と反応し、230MeVの陽子の2万分の1に対応する90MeV近辺の正パイオンが陽子の方向に放出され、その30分の1が正ミュオンに変わり、生体の表面から30cmで停止する。また、陽子の方向に放出された正パイオンの残りが生体の表面から20cmの位置までに静止し、26nsで4MeVの正ミュオンに変わる。

【0036】
(5)また、図10に示す如く色々なパイオン運動量(エネルギー)と、これらの各パイオンが崩壊したときに発生する各ミュオンの運動量分布とその角度の広がりとの関係を示すグラフ[参考文献3]から明らかなように、176MeV/c(85MeV)のパイオンが崩壊すると、パイオンの飛行経路を軸とした15度の円筒形状の中に、189MeV/c(107MeV)の前方ミュオンと、90MeV/c(31MeV)の後方ミュオンとが発生する。

【0037】
また、正パイオンが飛行中に変化して得られた正ミュオンは、30MeVから110MeVまで分布しているが、その約10分の1が100MeV以上であり、正パイオンの飛行方向(陽子の方向)と同じ方向(前方)に進む(前方ミュオン)。

【0038】
また、図11に示す如く、色々な粒子に対する水中の飛程のエネルギー依存性を示すグラフから明らかなように、各粒子の水中飛程距離は、エネルギー依存性を持ち[参考文献4]、230MeVの陽子が30cm、90MeVのパイオンが23cm、100MeVの前方ミュオンが30cm、30MeVの後方ミュオンは5cmとなる。

【0039】
(6)これらの各実験データから明らかなように、230MeVの陽子を生体に照射したときに生成される100MeVの前方ミュオンは、陽子のブラッグピーク位置と同じ、表面から30cmの位置に止まる。

【0040】
また、陽子のブラッグピーク位置と同じ位置で止まった正ミュオン(前方ミュオン)は、陽子の進行方向に対して正反対方向に強くスピン偏極していて、2.2マイクロ秒の時定数で崩壊し、正ミュオンのスピンの方向(陽子線の進行方向の反対方向)に強く偏向した50MeVまでの高エネルギー陽電子を放出する。

【0041】
(7)この高エネルギー陽電子強度の時間変化を、陽子ビームパルス時間を時間基準にして観測することにより、ブラッグピーク位置で、正ミュオンスピンの運動を測ることができ、これによってその位置での分子レベルの磁場の大きさと、その時間変化を捉えることができ、陽子線のブラッグピーク位置での生物物理化学現象を観測することが可能になる(ミュエスアール法)[参考文献3]。

【0042】
(8)また、陽子ビームパルスの照射が終了してから、10ns以降に陽電子観測を開始することにより、陽子線が即時に発生する高エネルギーアルファ、陽子、中性子、ガンマ線、電子などのバックグラウンドノイズを除去することができる。また、生成される放射性原子核からの遅延ベータ線、ガンマ線は強度が弱い。また、静止した正パイオンによって生成された正ミュオンが崩壊したときに生成される陽電子や飛行中の正パイオンによって生成された後方ミュオンが崩壊したときに生成される陽電子は、これらミュオンの静止位置が、前方ミュオンの静止位置に比べ10cm以上、上流になるため、図12に示すように、陽子線のブラッグピーク位置のみに開口部を持つ、適切な鉛遮蔽体を置くことにより、ブラッグピーク位置以外の位置から放出される遅延陽電子などを完全に排除しながら、陽子線のブラッグピーク位置から放出される遅延陽電子のみを通過させて測定させることができる。

【0043】
(9)また、陽子線強度を10nA(0.63x1011/s)とすると、前記(2)式に示すように、陽子のブラッグピーク位置に止まるスピン偏極した正ミュオンは毎秒1万個となる。したがって、立体角10%の陽電子カウンターを使用すれば、毎秒1000個程度、陽電子(遅延陽電子)を観測することができ、陽子ビームパルスの照射を開始してから、約30秒で放射線効果の生物物理化学現象の解明に有用なミュエスアール信号を得ることができる。

【0044】
(10)また、枡目状に細分化された複数のプラスチックカウンター(陽電子カウンター)からなる位置敏感陽電子カウンター板を、複数枚重ね合わせた多重分割プラスチックカウンターテレスコープなどを使用することにより、陽電子発生位置を5mm以内で決定できる。陽子のブラッグピーク位置と、前方ミュオンの静止位置との相関からブラッグピークの位置のモニターとして利用できる。

【0045】
(11)以上の定量的な説明は、ブラッグピーク位置が30cmとなる陽子エネルギー230MeVについて行ったが、陽子ビームのブラッグピークの深さ方向における変化に対しては、図12に示すように30cmからの差分に対応する厚さを有する水を置けばよい。陽子ビームと生体とのビーム垂直面上の変化により、深さと垂直な面の位置変化に対応できる。

【0046】
参考文献
[1]bragg peak pdf Ebook Download;Abstract11D:8159
[2]J.Matensson et a1.Phys. Rev. C62(2000)014610.
[3]K.Nagamine,Introductory Muon Science, Cambrige Univ. Press, 2003,
pp. 1-208.
[4].TRIUMF Kinemmatic-Handbook-P3(1987).
[5]K.Nagamine et al. Chem. Phys.Lett87(1982)186.
[6].K.Nagamine et al. Proc. Japanese Academy, Ser. B83(2007)120-126.
[7].K.Nagamine et al. Physica B404(2009)1020-1023.

【0047】
《第1形態》
図1は、上述した原理を用いた、本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第1形態を示す平面図である。

【0048】
この図に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1aは、治療対象となる人(人体)2の治療部位(ブラッグピーク位置)に対応する範囲以外の部分を覆うように配置される鉛遮蔽体3の開口部4に対応する位置に配置され、鉛遮蔽体3の開口部4から外部に放出される遅延陽電子を測定するプラスチックカウンターテレスコープ5と、これら鉛遮蔽体3、プラスチックカウンターテレスコープ5が設けられた粒子線治療室に隣接する操作室内などに配置され、医師などによって操作される操作卓6と、操作室内などに配置され、操作卓6の操作内容、加速器(図示は省略する)から出力される同期信号などに基づき、プラスチックカウンターテレスコープ5から出力される測定結果を解析して、ミュエスアール信号、遅延陽電子の発生位置などを演算する制御/解析装置7と、操作卓6と隣接して配置され、操作卓6の操作内容、制御/解析装置7の解析結果などを画面表示する表示装置8とを備えており、加速器から出射される230MeVの陽子ビームパルスを治療対象となる患者(人体2)に照射させる毎に、ブラッグピーク位置で発生する遅延陽電子のみを位置的、時間的に選択させる。そして、所定時間、連続で遅延陽電子を測定させた後、測定結果を解析させて、表示装置8にミュエスアール信号、遅延陽電子の発生位置などを画面表示させる。

【0049】
鉛遮蔽体3は、人体内に生成されるブラッグピーク位置(治療部位)に対応する範囲に開口部4が形成された、所定厚さの鉛板によって構成されており、加速器から出射される230MeVの陽子ビームパルスが人体を構成する原子の原子核と反応して生成される各粒子、各放射線のうち、ブラッグピーク位置以外で生成される遅延陽電子などを遮蔽する。そして、開口部4によって、ブラッグピーク位置で生成される遅延陽電子のみを通過させ、プラスチックカウンターテレスコープ5に入射させる。

【0050】
プラスチックカウンターテレスコープ5は、図2に示す如く陽電子発生位置を5mm以内で決定し得るように、枡目状に細分化された複数のプラスチックカウンター(陽電子カウンター)からなる位置敏感陽電子カウンター板2枚によって構成されている。第1位置敏感陽電子カウンター板9は、鉛遮蔽体3の開口部4に対応するように、鉛遮蔽体3の外側に配置され、また第2位置敏感陽電子カウンター板10は、第1位置敏感陽電子カウンター板9と第2位置敏感陽電子カウンター板10との同時計測により陽電子の経路を演算し、遅延陽電子の発生位置を演算し得るように、第1位置敏感陽電子カウンター板9から所定距離だけ、外側に配置される。そして、制御/解析装置7から計数開始指示が供給されたときから、計数終了指示が供給されるまでの間、第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンターの通過位置、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターの通過位置によって、決定された方向からの遅延陽電子(鉛遮蔽体3の開口部4を通過した遅延陽電子)を計数し、陽電子発生位置と遅延同時信号の時間との計数結果を制御/解析装置7に供給する。

【0051】
また、操作卓6は、粒子線治療室に隣接する操作室内などに配置されており、医師などによって各種操作ボタンなどが操作されたとき、操作内容に応じた指示信号を生成して、制御/解析装置7に供給する。

【0052】
制御/解析装置7は、操作室内などに配置されており、操作卓6から照射開始指示が入力されたとき、照射開始信号を生成して、加速器の制御装置に供給する処理、操作卓6から照射終了指示が入力されたとき、照射終了信号を生成して、加速器の制御装置に供給する処理、操作卓6から解析許可指示が供給されている状態で、加速器側の制御装置から230MeVの陽子ビームパルスを出射中であることを示す同期信号が供給される毎に、同期信号の立ち下がり時刻から10ns遅延させて、所定幅(例えば、100ナノ秒~数マイクロ秒の幅)の遅延信号を生成する処理、この遅延信号の立ち上がりと同期させて、プラスチックカウンターテレスコープ5に計数開始指示を供給し、第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターに遅延陽電子の計数を開始させ、第1位置敏感陽電子カウンター板9と第2位置敏感陽電子カウンター板10との同時計測から、陽電子発生位置と遅延同時信号の時間との情報を集積する処理、遅延信号の立ち下がりに同期して、プラスチックカウンターテレスコープ5に計数終了指示を供給し、各陽電子カウンターの計数動作を停止させる処理、各陽電子カウンターの計数結果を取り込んで記憶する処理、加速器側の制御装置から最初の同期信号が出力されてから、所定時間、例えば30秒(各陽電子カウンターの計数値がミュエスアール信号を生成するのに十分な値になるまでの時間)が経過したとき、記憶している各陽電子カウンターからの計数結果を解析して、ミュエスアール信号を生成するとともに、遅延陽電子の発生位置(陽電子発生場所)を演算する処理、陽電子発生場所毎に区分されたミュエスアール信号を得る処理、などを行う。

【0053】
また、表示装置8は、操作卓と隣接して配置されており、操作卓の操作内容、制御/解析装置の解析結果などを画面表示する。

【0054】
次に、図1に示す平面図、図2に示す正面図を参照しながら、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1aの動作を説明する。

【0055】
まず、看護師、医師などによって、粒子線治療室内に設置された治療台に、治療対象となる患者(人体2)が載せられた後、治療対象部位に対応する形状に形成された鉛遮蔽体3、プラスチックカウンターテレスコープ5が患者(人体2)の治療対象部位に取り付けられて固定される。

【0056】
次に、看護師、医師などによって、治療対象部位が加速器の出射路に連結された照射装置11と対応する位置になるように治療台の位置が調整された後、粒子線治療室内から患者以外の人が出て、粒子線治療室のドアが閉じられる。

【0057】
そして、看護師、医師などによって、安全が確認されたとき、粒子線治療の準備が完了する。

【0058】
この後、操作室内にいる医師によって、操作卓6が操作されて、照射開始指示が入力されると、制御/解析装置7によって、照射開始信号が生成されて、加速器の制御装置に供給される。

【0059】
これにより、加速器の制御装置によって、陽子発生源、線形加速器、加速器のリングなどが起動されて、陽子発生源で得られた陽子が線形加速器に導入され、所定のエネルギーになるまで、加速された後、加速器のリングに導入され、230MeVになるまで加速される。

【0060】
そして、加速器のリングによって、陽子が230MeVまで加速されると、加速器の制御装置によって、出射路、ビーム輸送系、照射装置11などが起動されて、加速器のリング→出射路→ビーム輸送系→照射装置11なる経路で、230MeVまで加速された陽子が粒子線治療室内に設置された照射装置11に導かれ、数ns幅の陽子ビームパルスとして、治療台に載せられている患者(人体2)の治療対象部位に照射されるとともに、加速器の制御装置によって、陽子ビームパルスを出射したことを示す同期信号が生成され、制御/解析装置7に供給される。

【0061】
また、上述した動作と並行し、患者(人体2)に照射された陽子ビームパルスが患者(人体2)の治療対象部位(生体中で30cmの深さ)に到達し、ブラッグピークが生成されるとともに、人体2中で陽子ビームパルスの一部が90MeV程度の正パイオンになり、その1/30が人体2内を飛行している最中に崩壊して正ミュオンとなり、その1/10が100MeV程度のエネルギーを持ち、進行方向にスピン偏極した正ミュオンとなって、陽子ビームパルスとほぼ同じ方向に進み、患者(人体2)の治療対象部位(生体中で30cmの深さ)で止まる。

【0062】
そして、平均寿命2.2マイクロ秒が経過したとき、患者(人体2)の治療対象部位(生体中で30cmの深さ)で停止した正ミュオン(前方ミュオン)が死滅して、スピンの方向に対し、異方的に最高エネルギー50MeVの陽電子を放出する。

【0063】
また、上述した動作と並行し、図3の(a)、(b)に示す如く陽子ビームパルスが出射されていることを示す同期信号が立ち下がると、制御/解析装置7によって、これが検知されて、図3の(c)に示す如く同期信号の立ち下がりから10nsが経過したとき、遅延信号の生成が開始されるとともに、遅延信号の立ち上がりと同期するように、プラスチックカウンターテレスコープ5に計数開始指示が供給され、第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターによって、遅延陽電子(前方ミュオンの死滅に起因して放出される遅延陽電子)の計数が開始される。

【0064】
この際、加速器から出射される230MeVの陽子ビームパルスが人体2を構成する原子の原子核と反応して、ブラッグピーク位置で生成される遅延陽電子以外の粒子、放射線、例えば陽子ビームパルスが発生する高エネルギーアルファ、陽子、中性子、ガンマ線、電子などのバックグラウンドノイズが発生しても、同期信号の立ち下がりから10nsが経過し、遅延信号が立ち上がった時点で、バックグラウンドノイズがほぼ消滅していることから、時間的にバックグラウンドノイズが遮蔽される。

【0065】
さらに、図4に示す如く鉛遮蔽板3によって、後方ミュオンが消滅したときに生成される遅延陽電子、ブラッグピーク位置より上流側で停止したミュオンが消滅したときに生成される遅延陽電子などが三次元空間的に遮蔽されることから、ブラッグピーク位置で生成される遅延陽電子のみが、鉛遮蔽板3の開口部4を通過して、第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターに入射し、計数される。

【0066】
この後、遅延信号の立ち上がりから100ナノ秒~数マイクロ秒が経過したとき、制御/解析装置7によって、これが検知されて、遅延信号の生成が停止させられるとともに、遅延信号の立ち下がりに同期して、プラスチックカウンターテレスコープ5に計数終了指示が供給されて、第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターの計数動作が停止させられると共に、これら第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターで得られた計数結果が、陽電子発生位置と遅延同時信号の時間との情報として取り込まれて、記憶される。

【0067】
以下、加速器によって、230MeVまで加速された陽子が陽子ビームパルスとして、患者(人体2)の治療対象部位に照射される毎に、制御/解析装置7によって、上述した第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターの計数開始動作、計数終了動作が繰り返され、前方ミュオンの死滅に起因して放出される遅延陽電子を計数した数値が蓄積される。

【0068】
この後、加速器側の制御装置から最初の同期信号が出力されたときを基準とし、所定時間、例えば30秒(第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンター、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターの計数値がミュエスアール信号を生成するのに十分な値になるまでの時間)が経過したとき、制御/解析装置7によって、蓄積記憶されている第1位置敏感陽電子カウンター板9の各陽電子カウンターの計数結果、第2位置敏感陽電子カウンター板10の各陽電子カウンターにおける計数結果の解析が開始され、ミュエスアール信号が生成されるとともに、遅延陽電子の発生位置が演算されて、陽電子発生場所毎に区分されたミュエスアール信号が、表示装置8に画面表示される。

【0069】
このように、この第1形態では、陽子ビームパルスを人体2に照射したとき、陽子ビームパルスの一部が正パイオンに変化し、さらにその一部が正ミュオンに変化して、ブラッグピーク位置に停止した後、2.2マイクロ秒の時定数で崩壊したときに放出される遅延陽電子を測定して、ミュエスアール信号、ブラッグピーク位置情報を生成するようにしているので、次に述べる効果を得ることができる(請求項1の効果)。
(a)まず、既存の陽子線治療施設ですぐに実施できる。この際、早い取り出し陽子シンクロトロンが理想的だが、時間構造を持つシンクロトロン・サイクロトロンでも利用できる。また、重イオンビームの施設にも適用できる。
(b)また、粒子線治療中のその場その時間での観測が可能であるとともに、5mm以内の空間分解能、30秒以内のデータ取得を可能にすることができる。
(c)また、陽電子のブラッグピークの位置モニターはもとより、放射線効果の分子レベルの生物物理化学現象の解明を可能にし、粒子線治療の進展が図ることができる。また、対象となる現象の例として、(1)水中のラジカル生成密度の決定とそれによる陽子ブラッグピーク位置の決定、(2)ヘム蛋白の磁性の変化の観測、(3)蛋白質・DNA中の電子伝達の変化の観測。
(d)プラスチックカウンターテレスコープ5などの多重位置敏感陽電子検出器により、陽電子の経路を選ぶことにより、ミュエスアール信号発生源の空間解像度を上げられる。
(e)ビーム診断をこえて、真の粒子線の放射線効果の生物物理化学現象、がん治療の本質を解明できる。

【0070】
《第2形態》
図5は、本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第2形態を示す平面図である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分には同じ符号が付してある。

【0071】
この図に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1bが図1に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1aと異なる点は、照射装置11の陽子ビームパルス出射口と、患者(人体2)との間に前置エネルギー吸収体12を配置し、230MeVまで加速された陽子が粒子線治療室内に設置された照射装置11に導かれ、数ns幅の陽子ビームパルスとして、治療台に載せられている患者(人体2)の治療対象部位に照射されたとき、生体中の深さ30cmより、浅い場所で、ブラッグピークが発生するようにしたことである。

【0072】
前置エネルギー吸収体12は、厚さが調整自在に構成され、内部に水が満たされた水槽、又は所定の厚みに形成され、内部に水が満たされた複数の水槽の積層体などによって構成されており、照射装置11の陽子ビームパルス出射口から出射される陽子ビームパルスが持つエネルギーの一部を吸収して、生体中の深さ30cmより浅い場所で、ブラッグピークを発生させる。

【0073】
このように、この第2形態では、照射装置11の陽子ビームパルス出射口と、患者(人体2)との間に前置エネルギー吸収体12を配置し、230MeVまで加速された陽子が粒子線治療室内に設置された照射装置11に導かれ、数ns幅の陽子ビームパルスとして、治療台に載せられている患者(人体2)の治療対象部位に照射されたとき、生体中の深さ30cmより、浅い場所で、ブラッグピークが発生するようにしているので、人体2の如何なる深さの治療部位でも、粒子線治療を行わせることができる(請求項2の効果)。

【0074】
《第3形態》
図6は、本発明による、粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムの第3形態を示す平面図である。なお、この図において、図1の各部と同じ部分には同じ符号が付してある。

【0075】
この図に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1cが図1に示す粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム1aと異なる点は、照射装置11内にビーム左右スキャナ13を配置し、照射装置11から出射される陽子ビームパルスの出射方向、又は出射位置を調整して、患者(人体2)の治療対象部位が広い場合にも、これに対処し得るようにしたことである。

【0076】
ビーム左右スキャナ13は、複数の電磁石などによって構成されており、制御/解析装置7からの指示に従い各電磁石などを動作させて、陽子ビームパルス出射口から出射される陽子ビームパルスの出射方向、又は出射位置を左右に移動させる。

【0077】
このように、この第3形態では、照射装置11内にビーム左右スキャナ13を配置し、加速器のリングに連結された照射装置11から出射される陽子ビームパルスの出射方向、又は出射位置を調整して、患者(人体2)の治療対象部位が広い場合にも、これに対処し得るようにしているので、治療対象部位が左右に広がっているときでも、連続的に粒子線治療を行わせることができる(請求項3の効果)。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、放射線医学などで使用される粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムに関し、特に、ブラッグピークにおける放射線効果を直接観測し得るようにした粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システムに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0079】
1a、1b、1c:粒子線医療におけるミュオン・モニタリング・システム
2:人体
3:鉛遮蔽体(遮蔽体)
4:開口部
5:プラスチックカウンターテレスコープ(陽電子検出器)
6:操作卓
7:制御/解析装置
8:表示装置
9:第1位置敏感陽電子カウンター板(陽電子検出板)
10:第2位置敏感陽電子カウンター板(陽電子検出板)
11:照射装置
12:前置エネルギー吸収体
13:ビーム左右スキャナ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図8】
11