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明細書 :胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5645189号 (P5645189)
公開番号 特開2012-152407 (P2012-152407A)
登録日 平成26年11月14日(2014.11.14)
発行日 平成26年12月24日(2014.12.24)
公開日 平成24年8月16日(2012.8.16)
発明の名称または考案の名称 胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法
国際特許分類 A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
FI A61B 5/04 300J
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2011-014615 (P2011-014615)
出願日 平成23年1月26日(2011.1.26)
審査請求日 平成26年1月23日(2014.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
発明者または考案者 【氏名】生駒 京子
【氏名】宮田 愛子
【氏名】小林 浩
【氏名】佐道 俊幸
【氏名】吉田 正樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100102048、【弁理士】、【氏名又は名称】北村 光司
【識別番号】100146503、【弁理士】、【氏名又は名称】高尾 俊雄
審査官 【審査官】杉田 翠
参考文献・文献 特開2004-135698(JP,A)
米国特許第05807271(US,A)
米国特許出願公開第2009/0259133(US,A1)
米国特許第04781200(US,A)
調査した分野 A61B5/02-5/023
5/0245-5/025
5/026-5/0265
5/0275-5/0285
5/0295-5/0408
5/0428-5/0444
5/0452-5/0456
5/0472-5/0478
5/0484-5/0492
5/05
5/06-5/11
5/117-5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の電極と、この電極を支持するシート状の電極支持体と、
電極における電位を測定し判定者の装置に送るためのインターフェイスとを備え、
前記電極を妊婦の腹部に密着させて胎児の状態を検出するための胎児状態検出用腹帯であって、
前記電極は前記電極支持体上に上下及び左右に複数個並べられて配置され、
フレームと、前記電極支持体をこのフレームに取り付けるための弾性部材と、前記フレームの一端側から他端側に妊婦の背中側を介して跨り前記フレームを妊婦の腹部に取り付けるための取付具とをさらに有し、
前記フレームは、妊婦の略上下方向に沿う一対の支持部と、この一対の支持部の間を妊婦の腹部からアーチ状に離隔させて連結するアーチ部とを備え、
前記電極支持体は妊婦の腹部に沿うように変形可能であり且つその左右で前記弾性部材により前記一対の支持部間に支持され、
前記電極は前記取付具に支持されて妊婦の背中側に接触する基準電極をさらに備え、
前記電極は弱粘着性の接触部材を備えている胎児状態検出用腹帯。
【請求項2】
前記弾性部材は、上下端側のものが上下方向中間部のものよりも張力が大である請求項1記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項3】
前記弾性部材は、上下方向に複数本並べて設けられ、前記電極支持体に取り付けられた複数の電極の設置幅は、上下端が上下方向中間部より狭く、前記弾性部材を上下端側でより中央側に近接する位置で前記電極支持体に取り付けてある請求項2記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項4】
前記電極支持体が生地又はフィルム(以下、「生地等」)を備えている請求項1記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項5】
前記電極支持体が前記生地等を二重に備え、これら二重の生地等の間に弾性材を介在させてある請求項4記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項6】
前記取付具は、前記フレームの一端側から張り出させたバンドと、このバンドの遊端側を前記フレームの他端側に固定する固定具とを備えている請求項1記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項7】
前記固定具は、前記フレームの他端側に固定する掛止部材と、この掛止部材に掛けた前記バンドの遊端側をバンドに接合してループを形成する接合部材とを備えている請求項6記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項8】
前記フレームは、矩形の剛性体を湾曲させて表面を布又はフィルムで覆い、全体として屈曲面状体を呈するように形成し、矩形の短辺部が前記支持部である請求項1記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項9】
前記基準電極は前記バンドに対する相対位置を変更可能である請求項6記載の胎児状態検出用腹帯。
【請求項10】
複数の電極と、この電極を支持するシート状の電極支持体と、
電極における電位を測定し判定者の装置に送るためのインターフェイスとを備え、
前記電極を妊婦の腹部に密着させて胎児の状態を検出するための請求項1~9のいずれかに記載の胎児状態検出用腹帯を用いた胎児状態検出方法であって、
前記電極は前記電極支持体上に上下及び左右に複数個並べられて配置され、前記腹帯は、フレームと、前記電極支持体をこのフレームに取り付けるための弾性部材と、前記フレームの一端側から他端側に妊婦の背中側を介して跨り前記フレームを妊婦の腹部に取り付けるための取付具とをさらに有し、
前記フレームは、妊婦の略上下方向に沿う一対の支持部と、この一対の支持部の間を妊婦の腹部からアーチ状に離隔させて連結するアーチ部とを備え、
前記電極支持体は妊婦の腹部に沿うように変形可能であり且つその左右で前記弾性部材により前記一対の支持部間に支持され、
前記電極は前記取付具に支持されて妊婦の背中側に接触する基準電極をさらに備え、
前記電極は弱粘着性の接触部材を備えており、
前記腹帯を妊婦の腹部に装着して、前側の電極を妊婦の腹部に密着させ、基準電極を妊婦の背中に密着させ、測定電位を判定者がモニターする胎児状態検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法に関する。さらに詳しくは、複数の電極と、この電極を支持するシート状の電極支持体と、電極における電位を測定し判定者の装置に送るためのインターフェイスとを備え、前記電極を妊婦の腹部に密着させて胎児の状態を検出するための胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周産期医療提供体制が徐々に整備されているが、僻地のために病院に通院するために数時間かかる地域も依然として存在する。妊娠中の早産は、子宮収縮と胎児心拍を胎児状態検出用腹帯を用いて連続モニタリングすることにより客観的把握が可能となり、予防することができる。
【0003】
ところで、上記構造とは異なるが、胎児状態検出用腹帯としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。同文献によれば、脈拍及び血圧センサのほか、胎児の心音をマイクでモニタしており、電極は用いていない。また、目的、用途が全く異なるが、特許文献2では、弾性体よりなるヘッドバンドに電極を支持した接触ベルトを取り付けている。そして、これを額に装着して電極を接触させ、脳波を測定している。
【0004】
胎児の状態、特に胎児の心拍を測定するには、複数の電極を妊婦の腹部に二次元的に展開して密着させ、しかも、この装着を妊婦がリラックスした状態で一人で行えることが望ましい。自宅で外乱に影響されず、家族に煩わされない時間帯で、妊婦がリラックスして自らを落ち着けることで、妊婦の心電と分離して胎児の心電測定が可能となるからである。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の構造を特許文献1の用途に適用しても、腹部の二次元展開された所望の位置に妊婦が一人で複数の電極を密着させるのは極めて困難である。また、二次元的に展開された腹部の位置に複数電極を密着させるには、腹部が立体的であることから、本来は複数の電極を支持する電極支持体を腹部の四方から引っ張ることが望ましい。しかし、この構成を採用すると、腹部の上下の湾曲に上述のヘッドバンドのごときものの端部を沿わさねばならず、臨月や体形の差に応じて上述のヘッドバンドのごときものを個別に準備せねばならず、事実上の測定が不可能である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2003-111760号公報
【特許文献2】実開平6-70704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、妊婦が、その体型や妊娠月に拘わらず、二次元的に展開された腹部の所望位置に一人で複数電極を密着させ、胎児の心拍をはじめとする胎児の状態を遠隔地の判定者において判定することの可能な胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る胎児状態検出用腹帯の特徴は、複数の電極と、この電極を支持するシート状の電極支持体と、電極における電位を測定し判定者の装置に送るためのインターフェイスとを備え、前記電極を妊婦の腹部に密着させて胎児の状態を検出するための構成において、前記電極は前記電極支持体上に上下及び左右に複数個並べられて配置され、フレームと、前記電極支持体をこのフレームに取り付けるための弾性部材と、前記フレームの一端側から他端側に妊婦の背中側を介して跨り前記フレームを妊婦の腹部に取り付けるための取付具とをさらに有し、前記フレームは、妊婦の略上下方向に沿う一対の支持部と、この一対の支持部の間を妊婦の腹部からアーチ状に離隔させて連結するアーチ部とを備え、前記電極支持体は妊婦の腹部に沿うように変形可能であり且つその左右で前記弾性部材により前記一対の支持部間に支持され、前記電極は前記取付具に支持されて妊婦の背中側に接触する基準電極をさらに備え、前記電極は弱粘着性の接触部材を備えていることにある。
【0009】
同構成によれば、前記電極は前記電極支持体上に上下及び左右に複数個並べられて配置され、弾性部材を介してフレームに取り付けられているので、フレームを手で持ち、複数の電極と体の部位を位置合わせしながら装着することができる。例えば、妊婦の臍と特定の電極との上下左右方向の位置合わせをしたり、フレームと骨盤との位置合わせとにより、電極を所望の位置に配置することができる。しかも、各電極は弱粘着性の接触部材を備え、電極支持体は妊婦の腹部に沿うように変形可能であり且つその左右で前記弾性部材により前記一対の支持部間に支持されているので、電極支持体の変形と前記弾性部材の弾性変形により、複数の電極を妊婦の腹部に二次元的に展開すると共に腹部の立体形状に沿って密着させることができる。また、妊婦の背中側を介してフレームの一端側から他端側に取付具を跨らせて装着する作業中も弱粘着性の接触部材により電極の位置はずれ難く、妊婦が一人で装着をすることが可能である。この装着作業は負担が小さいため、装着後に妊婦に負担が掛かり、妊婦の心拍が上昇して胎児の心拍がかき消されるおそれも極めて小さい。しかも、この取付具により背中に基準電極を接触させ、基準電極と前方の複数の電極間に胎児の心臓が位置することになり、心音のモニターが極めて容易になる。そして、フレームのアーチ部は、電極支持体を支持する支持部の間を妊婦の腹部からアーチ状に離隔させるので、妊婦の体型や妊娠月に拘わらず、本腹帯を適用させることが可能となる。
【0010】
上記構成において、前記弾性部材は、上下端側のものが上下方向中間部のものよりも張力が大であることが望ましい。妊婦の略上下方向中間部は立体的に突出しており、これに比較して上下端側は凹んでいるので、この上下端側をより強い張力で引くことにより、上下左右に展開する電極を平均的に腹部に密着させることが可能になるからである。さらに具体的には、前記弾性部材は、上下方向に複数本並べて設けられ、前記電極支持体に取り付けられた複数の電極の設置幅は、上下端が上下方向中間部より狭く、前記弾性部材を上下端側でより中央側に近接する位置で前記電極支持体に取り付けてある。同構成によれば、より電極に近い位置で弾性体により張力を付与することで、上下の電極を腹部に密着させることができるからである。
【0011】
前記電極支持体は生地又はフィルム(以下、「生地等」)を備えている。この電極支持体は、前記生地等を二重に備え、これら二重の生地等の間に弾性材を介在させてもよい。この構成により、生地等の間のスポンジ等の弾性材の弾性力により、さらに電極を腹部に密着させることが可能となる。
【0012】
前記取付具は、前記フレームの一端側から張り出させたバンドと、このバンドの遊端側を前記フレームの他端側に固定する固定具とを備えている。この固定具は、前記フレームの他端側に固定する掛止部材と、この掛止部材に掛けた前記バンドの遊端側をバンドに接合してループを形成する接合部材とを備えている。
【0013】
前記フレームは、矩形の剛性体を湾曲させて表面を布又はフィルムで覆い、全体として屈曲面状体を呈するように形成し、矩形の短辺部を前記支持部として構成してある。これにより、フレームを軽量に構成でき、妊婦による装着作業がさらに軽減される。
【0014】
また、前記基準電極は、前記バンドに対する相対位置を変更可能である。これにより、妊婦の体型や妊娠月によらず、基準電極と前方の電極との位置関係を適切に設定することが可能となる。
【0015】
一方、上記各構成に記載の胎児状態検出用腹帯を用いた胎児状態検出方法の特徴は、複数の電極と、この電極を支持するシート状の電極支持体と、電極における電位を測定し判定者の装置に送るためのインターフェイスとを備え、前記電極を妊婦の腹部に密着させて胎児の状態を検出するための胎児状態検出用腹帯を用いた方法であって、前記電極は前記電極支持体上に上下及び左右に複数個並べられて配置され、前記腹帯は、フレームと、前記電極支持体をこのフレームに取り付けるための弾性部材と、前記フレームの一端側から他端側に妊婦の背中側を介して跨り前記フレームを妊婦の腹部に取り付けるための取付具とをさらに有し、前記フレームは、妊婦の略上下方向に沿う一対の支持部と、この一対の支持部の間を妊婦の腹部からアーチ状に離隔させて連結するアーチ部とを備え、前記電極支持体は妊婦の腹部に沿うように変形可能であり且つその左右で前記弾性部材により前記一対の支持部間に支持され、前記電極は前記取付具に支持されて妊婦の背中側に接触する基準電極をさらに備え、前記電極は弱粘着性の接触部材を備えており、前記腹帯を妊婦の腹部に装着して、前側の電極を妊婦の腹部に密着させ、基準電極を妊婦の背中に密着させ、測定電位を判定者がモニターすることにある。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明に係る特徴によれば、妊婦が、その体型や妊娠月に拘わらず、二次元的に展開された腹部の所望位置に一人で複数電極を密着させ、胎児の心拍をはじめとする胎児の状態を遠隔地の判定者において判定することの可能な胎児状態検出用腹帯及びこれを用いた胎児状態検出方法を提供し得るに至った。
【0017】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る胎児状態検出用腹帯の斜視図である。
【図2】電極支持体近傍の背面図である。
【図3】胎児状態検出用腹帯の平面図である。
【図4】妊婦が胎児状態検出用腹帯を装着した状態を示す図である。
【図5a】装着状態における胎児状態検出用腹帯と胎児との位置関係を示す図である。
【図5b】前電極近傍の部分拡大断面図である。
【図5c】各電極の接続状態を示す図である。
【図6】腹帯の装着状態における電極支持体近傍の正面図である。
【図7】移動リング近傍を示す図である。
【図8】A-A線部分拡大断面図である。
【図9】本発明に係る胎児状態検出用腹帯を利用した胎児状態検出システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1~3に示すように、本発明に係る胎児状態検出用腹帯(以下、「腹帯」と称する。)1は、大略、フレーム10と、複数の前電極21と基準電極22とからなる電極20と、複数の前電極21を支持するシート状の電極支持体30と、電極支持体30をフレーム10に取り付ける弾性部材40と、妊婦Hにフレーム10を取り付ける取付具50を有する。基準電極22は、取付具50により複数の前電極21に対向して妊婦Hの背中B部分に配置され、背中B表面に密着するように取り付けられる。本実施形態では、複数の前電極21と基準電極22間のそれぞれの電位差を複数の電気信号として計測する。これらの電気信号の中には、母体の心電、胎児の心電、母体から発生する筋電などが含まれる。

【0020】
この腹帯1は、例えば、妊婦Hが自宅で測定した胎児の心拍データを判定者の装置に送信することで胎児の異常等を早期に発見する胎児状態検出システム100に用いられる。例えば、図9に示す胎児状態検出システム100においては、図4に示す如く、妊婦Hの腹部Sに腹帯1を装着し、複数の前電極21を腹部Sに密着させると共に基準電極22を妊婦Hの背中Bに密着させて、基準電極22と各前電極21間の電位差をそれぞれ電気信号として計測する。データ収集機72で計測された電気信号はデジタル化データとして収集されて処理ユニット70にて処理される。そのデータは、例えばブルートゥース(登録商標)等の無線通信手段のインターフェイス73,81を介してパーソナルコンピュータ等の家庭内ユニット80に送信される。そして、データ送信機82によりネットワーク90を介して医療機関等にデータが送信される。判定者としての医療機関等の医師等は、受信したデータを医療機関等のサーバー91に記憶されている妊婦の過去の問診データ等と共にパーソナルコンピュータ92でモニタし、診察を行う。

【0021】
次に、腹帯1について、さらに詳しく説明する。
フレーム10は、図1~4に示すように、大略、妊婦Hの略上下方向Zに沿う一対の支持部11,11と、その一対の支持部11,11をその間で妊婦Hの腹部Sから離隔させて連結するアーチ部12とを有する。支持部11及びアーチ部12は、針金等の矩形の剛性体15を湾曲させて布又はフィルム16により覆い、全体として屈曲面状体を呈する。これにより、腹帯1は軽量化され、妊婦Hが一人で容易に着脱することができる。この矩形の剛性体15の短辺部は、一対の支持部11,11を構成する。

【0022】
図1,2に示すように、一対の支持部11,11は、その支持部11,11間で後述する弾性部材40により電極支持体30を支持する。この一対の支持部11,11は、上下方向Zに沿って設けられているので、電極支持体30は左右方向Yにおいてのみ支持され、フレーム10の上下方向Zの両端部は解放される。よって、電極支持体30は、一対の支持部11、11を基準に弾性部材40を介して変形可能となり、腹部Bの湾曲形状に沿わせることが可能となる。これにより、胎児Cの成長に伴う腹部Sの大きさの変化を吸収することができ、妊娠期間を通して利用することができる。また、妊婦個々の体格差も吸収できるので、汎用性が高い。

【0023】
アーチ部12は、図1,3,4に示すように、妊婦Hの腹部Sから離隔するようにアーチ状に形成されている。アーチ状に形成することで、アーチ部12と電極支持体30との間にスペースを確保し、電極支持体30の前後方向Xへの変形を許容する。このスペースは、胎児Cの成長に伴う腹部Sの大きさの変化や妊婦個々の体格差等を考慮して決定される。また、アーチ部12の外面には、環状の掛止部材56の取付部56a及び先の処理ユニット70が内蔵されるポケット57が設けられている。

【0024】
図1~3に示すように、電極20は、複数の前電極21と基準電極22からなる。前電極21は、図2に示すように、電極支持体30の腹部S側の面に適宜間隔をおいて上下及び左右に複数個並べられて配置され、妊婦Hの腹部Sの下腹部から上腹部の表面と接触する。

【0025】
ここで、前電極21は、複数の測定電極21aと1つのニュートラル電極21bとを備える。図5cに示すように、ニュートラル電極21bは、各測定電極21aで測定される電位信号を信号処理する際に基準とする基準電位となる電極である。この基準電位を基準として、各測定電極21aと基準電極22間の電位差が計測される。ニュートラル電極21bを設けることで、ニュートラル電位と妊婦Hの体表面電位とを一致させ、交流電源の誘導ノイズ等による誤作動を防止する。このニュートラル電極21bと基準電極22とは、妊婦Hの体の軸に対しおおむね対称に配置される。

【0026】
前電極21は、図5bに示すように、大略、電極基材24と、腹部Sに接触するエレメント25と、エレメント25とケーブル71との接点となるスナップ端子26と、エレメント25と腹部Bとの間に介在させる接触部材27とからなる。電極基材24は、フィルム状で略円形を呈し、その中心部にエレメント25が固定されている。また、電極基材24の縁部には、電位測定時に接触部材27の位置ズレを防止するためのリング状部材24aが設けられている。このリング状部材24aは、例えば、ポリプロピレン製で厚さ200μmにて形成されている。

【0027】
エレメント25とスナップ端子26はカシメ構造を有する。エレメント25は、例えば、銀-塩化銀等の金属をコーティングしたものが用いられる。スナップ端子26には、例えば、ステンレス等の金属製のものが用いられる。このスナップ端子26には、ケーブル71が接続されている。このケーブル71は、図示省略するが、電極支持体30内部に配線され、処理ユニット70に接続される。接触部材27は、リング状部材24aの内側に設けられる。この接触部材27には、導電性を有し、且つ前電極21を腹部Sに密着させる弱粘着性を有するものが用いられる。

【0028】
図1,7,8に示すように、基準電極22は、妊婦H及び胎児Cの心電を測る上での基準となる電極であり、この基準電極22と各前電極21の電位差(電圧)を電気信号として計測する。基準電極22は、取付具50の移動リング54に設けられている。この基準電極22は、図8に示すように、前電極21と同様の構成である。また、基準電極22は、移動リング54裏面側の雄ホック58aとバンド53の雌ホック58bとにより位置調整可能である。なお、図示省略するが、基準電極22のケーブルは、妊婦Hが触れないように、バンド53の内部に配線され前方の処理ユニット70に接続される。ここで、スナップ端子26を位置調整用のホック58の雄ホック58aと同様の構造としても構わない。そのスナップ端子を雌ホック58bに直接嵌合させることで、基準電極22の位置調整を行うと共にケーブルと電気的に接続させる。

【0029】
電極支持体30は、図2に示すように、略六角形状を呈し、その左右方向Yの縁部に弾性部材40が取り付けられている。この電極支持体30は、図5bに示すように、伸縮性のある生地やフィルムの生地等を前布31及び後布32として二重に備え、その前布31及び後布32の間にスポンジ等よりなる弾性材33を介在させている。これにより、電極支持体30は妊婦Hの腹部Sに沿うように変形可能となる。また、電極支持体30の左右方向Yの縁部には、弾性部材40を貫通させるスリット34が複数形成されている。

【0030】
図2に示すように、本実施形態では、電極支持体30には、13個の前電極21が上下方向Zに4列に分かれて配置されている。電極支持体30の上端側30aに位置する前電極21の上側列L1の設置幅W1及び下端側30bの前電極21の下側列L2の設置幅W2は、上下方向Z中間部における前電極21の中間列L3の設置幅W3よりも狭い。これにより、湾曲した腹部Sに沿って立体的に前電極21を配置することができる。

【0031】
弾性部材40は、図2,6に示すように、帯状のゴム41とこのゴム41を連結固定するハトメ42からなる。ゴム41の一側は支持部11に巻き付けられ、他端は電極支持体30のスリット34を貫通し、両端部がハトメ42で連結固定される。本実施形態において、弾性部材40は、電極支持体30の左右方向Yの縁部に上下方向Zに複数本並べて設けられた第一~第六弾性部材40a~40fにより構成されている。

【0032】
電極支持体30の上端30a側に位置する第一、第二弾性部材(上端側弾性部材)40a,40b及び下端30b側に位置する第五、第六弾性部材(下端側弾性部材)40e,40fは、上下方向Zの中間に位置する第二、第三弾性部材(上下方向中間部弾性部材)40c,40dよりも張力を大きくしている。また、上端側弾性部材40a,40b及び下端側弾性部材40e,40fは、上下方向中間部弾性部材40c,40dよりも電極支持体30の左右方向Yの中央N側に近接する位置に取り付けられている。

【0033】
取付具50は、図1,3に示すように、大略、フレーム10の一端10a側から張り出すバンド53と、このバンド53の遊端53bをフレーム10の他端10b側に固定する固定具52とを備える。固定具52は、掛止部材56に掛けたバンド53の遊端53bをバンド53に接合させてループを形成する接合部材55と、バンドの遊端53bを掛止させる掛止部材56を備える。また、バンド53には、基準電極22を設けた移動リング54が移動可能に挿通させている。接合部材55としては、例えば対をなすフックテープ55aとループテープ55bよりなる固定テープが用いられる。この固定テープ55は、フックテープ55aはバンド53の幅方向に沿って設けられている。他方、ループテープ55bはバンド53の長手方向に沿って設けられている。

【0034】
図7,8に示すように、バンド53には、移動リング54の雄ホック58aを受け入れる雌ホック58bが適宜間隔をおいて設けられている。このホック58により移動リング54の基準電極22を妊婦Hの背中Bに位置させる。移動リング54により、基準電極22はバンド53に対する相対位置を変更可能となる。

【0035】
ここで、腹帯1の使用方法について説明する。
まず、基準電極22が背中Bの略中央に位置するように、移動リング54をホック58によりバンド53に固定する。次に、フレーム10の下端と骨盤との距離を基準に、医師が指示する適切な箇所に腹帯1を妊婦H自らが腹部Sに合わせる。ここで、電極支持体30の下側列L2の前電極21が妊婦Hの恥骨近傍に位置するようにするとよい。さらに、ニュートラル電極21bをへその真横に位置するようにするとよい。

【0036】
そして、妊婦Hは、片手でアーム部12を押さえながら、他方の手でバンド53をフレーム10の一端10a側から背中B側を介し他端10b側を跨らせて、バンド53の遊端53bを固定リング56に通すと共に折り返し、フックテープ55aとループテープ55bとを対向させてバンド53を固定する。これにより、図5aに示す如く、基準電極22と複数の前電極21とを胎児Cを挟むように位置させることができる。しかも、各前電極21は、電極支持体30により腹部Sに沿って配置されるので、胎児Cの姿勢に左右されにくく、胎児Cの心臓CH近傍の電位を検出することができる。このように、妊婦Hが一人で正確な位置に腹帯1を容易に装着することができる。

【0037】
ここで、電極支持体30は、弾性部材40により左右方向Yにおいてのみ支持され、上下方向Zは解放されているので、この弾性部材40により電極支持体30を湾曲変形させることができる。そして、この弾性部材40の第一、第二、第五、第六弾性部材40a,40b,40e,40f(上下端側)は、第二、第三弾性部材40c,40d(上下方向中間部)よりも張力を大きくしている。よって、図6に示す如く、各弾性部材の張力の相違により、妊婦Hの腹部Sの湾曲形状に沿うように立体的に電極支持体30を変形させることができる。

【0038】
しかも、電極支持体30の前布31及び後布32は、いずれも伸縮性を有する。よって、図2の符号30’で示す如く、電極支持体30は、腹部Sの湾曲形状に沿うように変形する。これにより、各前電極21を腹部Sの各箇所で密着させることができる。さらに、弾性材33の弾性によって、各前電極21の腹部Sへの接触圧が確保されるので、各前電極21は腹部Sにより密着し、精度よく心電を測定できる。

【0039】
また、第一~第六弾性部材40a~40fを取り付けるスリット34は、電極支持体30の縁部に位置する前電極21の近傍に位置させている。これにより、電極支持体30の縁部に張力を大きく作用させることができ、その縁部に近接する前電極21を腹部Sの形状に沿わせてより密着させることができる。そして、上端側弾性部材40a,40b及び下端側弾性部材40e,40fは、上下方向中間部弾性部材40c,40dよりも電極支持体30の左右方向Yの中央N側に近接する位置に取り付けられている。したがって、腹部Sの立体形状に沿って前電極21を配置することができる。

【0040】
さらに、アーチ部12のアーチ形状により、電極支持体30とアーチ部12との間にスペースが存在する。これらにより、電極支持体30は、腹部Sの湾曲形状及び胎児Cの成長に伴う腹部Sの変化に対応して変形し、各前電極21を腹部Sの適切な位置に配置することができる。このように、妊婦Hが一人で腹帯1を装着しても、電極支持体30及び弾性部材40によって各前電極21を適切な位置に配置することが可能となる。

【0041】
最後に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、移動リング54は、ホック58によりバンド53に固定した。しかし、移動リング54の固定手段はホック58に限られるものではない。例えば、図8に示すように、ホック58の他、フックテープ59a及びループテープ59bからなる固定テープ59を用いてもよく、ホック58及び固定テープ59を併用してもよい。係る場合、固定テープ59を仮固定手段とするとよい。

【0042】
上記実施形態において、13個の前電極21を左右方向に沿って4列で電極支持体30に配列した。しかし、前電極21の数、配列等は、胎児Cの心拍が測定可能な態様であれば、上記実施形態に限定されるものではない。

【0043】
また、弾性部材40の本数や構成も上記実施形態に限られるものではなく、電極支持体30を妊婦Hの腹部Sの形状に沿わせることが可能なものであればよい。また、適宜長さ調整可能に構成することも可能である。

【0044】
上記実施形態において、測定電位のデータ転送(送信)手段として、ブルートゥース(登録商標)を用いたが、これに限られるものではない。他の無線通信手段の他、ケーブルを介した有線通信手段を用いてもよく、USBメモリ等の記録媒体により情報を伝達しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、胎児状態検出用腹帯として利用することができる。また、この胎児状態検出用腹帯を利用して胎児の異常等を早期に発見するための胎児状態検出方法しても利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:胎児状態検出用腹帯、10:フレーム、10a:一端、10b:他端、11:支持部、12:アーチ部、15:剛性体、16:布又はフィルム、20:電極、21:前電極、21a:測定電極、21b:ニュートラル電極、22:基準電極、24:電極基材、24a:リング状部材、25:エレメント、26:スナップ端子、27:接触部材(ゲル)、30:電極支持体、30a:上端、30b:下端、31:前布(生地等)、32:後布(生地等)、33:スポンジ(弾性材)、34:スリット、40:弾性部材、40a~40f:第一乃至第六弾性部材、41:ゴム、42:ハトメ、50:取付具、52:固定具、53:バンド、53a:一端、53b:遊端、54:移動リング、55:固定テープ(接合部材)、55a:フックテープ、55b:ループテープ、56:固定リング(掛止部材)、57:ポケット、58:ホック、58a:雄ホック、58b:雌ホック、59:仮止めテープ、59a:フックテープ、59:ループテープ、70:処理ユニット、71:ケーブル、72:データ収集機、73:無線インターフェイス、80:家庭内ユニット、81:無線インターフェイス、82:データ送信機、90:ネットワーク(TCP/IP)、91:サーバー、92:ドクター用PC、100:胎児状態検出システム、B:背中、C:胎児、CH:心臓、H:妊婦、N:中央、S:腹部、U:子宮、X:前後方向、Y:左右方向、Z:上下方向、W1~W3:設置幅
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5a】
4
【図5b】
5
【図5c】
6
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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