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明細書 :形状記憶合金の機械振動を情報伝達手段とする触覚による情報伝達装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4395572号 (P4395572)
公開番号 特開2008-262478 (P2008-262478A)
登録日 平成21年10月30日(2009.10.30)
発行日 平成22年1月13日(2010.1.13)
公開日 平成20年10月30日(2008.10.30)
発明の名称または考案の名称 形状記憶合金の機械振動を情報伝達手段とする触覚による情報伝達装置
国際特許分類 G06F   3/01        (2006.01)
G09B  21/00        (2006.01)
FI G06F 3/01 310A
G09B 21/00 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2007-106017 (P2007-106017)
出願日 平成19年4月13日(2007.4.13)
審査請求日 平成21年5月21日(2009.5.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592160663
【氏名又は名称】株式会社エスシーエー
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】澤田 秀之
【氏名】水上 陽介
【氏名】内田 啓治
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100084375、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 康夫
【識別番号】100121692、【弁理士】、【氏名又は名称】田口 勝美
【識別番号】100125221、【弁理士】、【氏名又は名称】水田 愼一
審査官 【審査官】円子 英紀
参考文献・文献 特開平10-255106(JP,A)
特開平04-366990(JP,A)
特開2008-123431(JP,A)
特開2006-318231(JP,A)
特表2008-502017(JP,A)
特開2005-338382(JP,A)
特開2007-048268(JP,A)
調査した分野 G06F 3/01
G09B 21/00
特許請求の範囲 【請求項1】
形状記憶合金を用いた情報伝達装置において、
形状記憶合金本体と、
前記形状記憶合金本体に取り付けられた触覚子と、
前記形状記憶合金本体に、情報伝達のための、オン・オフデューティを有し、同一、又は異なる波高値のパルス電圧を印加するパルス発生器と、を備え、
前記形状記憶合金本体は屈曲自在な形状であり、弛緩した状態で両端部が固定され、中間部に前記触覚子の一端、又は一部が取り付けられており、
前記触覚子の他端側は、生体に接触可能に構成され、
前記形状記憶合金本体は、前記触覚子によって押圧又は牽引されて張力を与えられた状態において前記パルス電圧印加により機械振動を生じ、前記触覚子が振動して前記他端側の生体の触覚に情報を伝達することを特徴とする情報伝達装置。
【請求項2】
前記形状記憶合金本体は、複数個が線状又は面状又は立体的に配置され、
各触覚子の前記他端側が生体に接触するように、該触覚子の長さが異なっていることを特徴とする請求項1に記載の情報伝達装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金本体は、複数個が線状又は面状又は立体的に配置され、
前記パルス発生器は、それら隣り合う複数の形状記憶合金本体に、同時、又は時間差をもってパルス電圧を印加することにより、生体に触覚移動を与えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の情報伝達装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を用いて、生体に触覚の情報を伝達する情報伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動モータや圧電素子などを振動源とし、人体の触覚を刺激することにより情報を伝達する情報伝達装置が知られている。従来の情報伝達装置の例を説明する。図17に示されるように、情報伝達装置101は、握り棒191の形状をし、内部に振動モータ104と駆動アンプ192と有しており、駆動アンプ192が振動モータ104に電源を供給することにより振動モータ104が振動し、人体M103に情報を伝達する。また、例えば特許文献1に示されるように形状記憶合金と弾性体を備え、形状記憶合金自体への通電による加熱や形状記憶合金に沿って設置された発熱体による加熱、又はレーザ光の照射による加熱等により、形状記憶合金を相変化により変形させ、また、冷却により弾性体の弾力により元の形状に戻すことにより、人体の触覚に情報を伝達する情報伝達装置が知られている。また、例えば、特許文献2に示されるように、形状記憶合金の近傍に熱源を設け、この熱源への電圧、電流値を制御することにより形状記憶合金の伸縮を制御し、触力覚呈示を行なう装置が知られている。
【0003】
しかしながら、従来の振動モータを用いる情報伝達装置101では、機械振動部の寸法が大きいために、指の一部などの微小な触覚部への情報伝達ができず、また、複数個所へ情報伝達するのに複数個の振動モータ104を駆動させると相互に振動が干渉し、隣接した複数箇所に細かい情報を伝達することが困難であるという問題がある。また、高周波数の振動ができず、エネルギー効率も悪い。圧電素子を用いる情報伝達装置では、その変位量が小さいために十分に情報を伝達することができない。
【0004】
また、特許文献1に示されるような触力覚呈示装置においては、形状記憶合金の形状変化により情報を伝達するが、このような形状変化では応答が遅く、振動現象を呈することは困難で、情報伝達には十分なものとは言えない。
【0005】
また、特許文献2に示されるような触力覚呈示装置においては、形状記憶合金を熱源により加熱するので、加熱、冷却に時間を要し、上記と同様、振動現象を呈することは不可能である。
【0006】
また、特許文献3に示されるように、形状記憶合金にパルス電圧を印加することにより情報を伝達する情報伝達装置が知られている。その情報伝達装置の小型振動アクチュエータを、図18を参照して説明する。小型振動アクチュエータ114は2本のリード線部109と、リード線部109を固定している絶縁部106と、2本のリード線部109の先端に馬蹄形に曲げられて接続されている形状記憶合金本体105とを備えており、形状記憶合金本体105はリード線部109からパルス電圧を印加されると、伸縮を繰り返して振動する。そして、形状記憶合金本体105の頂点153に接触する人体に振動を伝えて情報を伝達する。この情報伝達装置により、小型軽量で効率が良く、生体に高度な情報を十分に伝達することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献3に示される情報伝達装置においては、形状記憶合金本体105の馬蹄形の形状によって人体が感じる感覚が非常に異なり、最適な形状に製造するのが困難である。また、形状記憶合金本体105の振動の振幅が小さいために、人体がその接触面と形状記憶合金105との距離を微妙に調整する必要がある。また、人体の触覚は皮膚の表面より少し内部にあるので、振動が触覚に達するには接触に圧力が必要であるが、形状記憶合金は直径50μm程度の糸状のものであるため、少しの圧力で屈曲し、振動を十分に伝達することが困難である。

【特許文献1】特開平11-219143号公報
【特許文献2】特開平11-203040号公報
【特許文献3】特開2007-48268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、触覚子が応答性良く振動現象を呈することが可能で、小型軽量でエネルギー効率が良く、かつ、製造が容易であり、振動振幅を大きくすることが可能な情報伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、形状記憶合金を用いた情報伝達装置において、形状記憶合金本体と、前記形状記憶合金本体に取り付けられた触覚子と、前記形状記憶合金本体に、情報伝達のための、オン・オフデューティを有し、同一、又は異なる波高値のパルス電圧を印加するパルス発生器と、を備え、前記形状記憶合金本体は屈曲自在な形状であり、弛緩した状態で両端部が固定され、中間部に前記触覚子の一端、又は一部が取り付けられており、前記触覚子の他端側は、生体に接触可能に構成され、前記形状記憶合金本体は、前記触覚子によって押圧又は牽引されて張力を与えられた状態において前記パルス電圧印加により機械振動を生じ、前記触覚子が振動して前記他端側の生体の触覚に情報を伝達するものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の情報伝達装置において、前記形状記憶合金本体は、複数個が線状又は面状又は立体的に配置され、各触覚子の前記他端側が生体に接触するように、該触覚子の長さが異なっているものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の情報伝達装置において、前記形状記憶合金本体は、複数個が線状又は面状又は立体的に配置され、前記パルス発生器は、それら隣り合う複数の形状記憶合金本体に、同時に、又は時間差をもってパルス電圧を印加することにより、生体に触覚移動を与えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、形状記憶合金にパルス電圧を印加することにより、触覚子が応答性良く振動現象を呈することが可能であり、簡単な構成であるので情報伝達装置を小型軽量にすることができる。また、振動モータを用いるよりエネルギー効率も良い。また、従来の形状記憶合金に直接接触して振動を伝達する方式では、形状記憶合金の形状のバラツキの影響を強く受けるが、本発明の情報伝達装置では、形状記憶合金に張力を与えた状態で、形状記憶合金の振動を触覚子によって生体に伝達する方式であるので、形状記憶合金の形状に関係なく張力だけ与えればよい。形状記憶合金の形状の影響がないので、情報伝達装置の製造が容易である。また、形状記憶合金に張力を与えた状態で振動を行なわせるので、振動振幅を大きくすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、形状記憶合金の振動を曲面の生体に容易に伝達することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、隣り合う複数の形状記憶合金本体に時間差をもってパルス電圧を印加することにより、生体に触覚移動の感覚を与えることができ、例えば文字をなぞったように情報を伝達するといったことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る情報伝達装置について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る情報伝達装置の構成を示す。本実施形態に係る情報伝達装置1は、パルス電圧を発生するパルス発生器2と、パルス発生器2が発生したパルス電圧を増幅する電圧増幅器3と、電圧増幅器3からパルス電圧を印加されて振動運動を行なう小型振動アクチュエータ4(以下、アクチュエータという)と、を備えている。図2(a)は、アクチュエータ4の外観を、図2(b)は、アクチュエータ4の断面を示す。アクチュエータ4は、パルス電圧を印加されて振動運動を行なう形状記憶合金本体5と、形状記憶合金本体5が取り付けられる基板6と、形状記憶合金本体5の振動を生体の触覚に伝達する触覚子7と、触覚子7を保持するサポータ8と、基板6と対向して触覚子7を保持する上板61と、を有している。
【0016】
形状記憶合金本体5は、屈曲自在な形状であり、弛緩した状態で基板6に取り付けられており、例えば、直径50μm、長さ6mmであり、5mmの間隔で両端部51が基板6に半田によって固定されている。基板6は基板穴62を有して、触覚子7を貫通させている。触覚子7は、一端側が形状記憶合金本体5の中間部52に取り付けられており、他端側が生体に接触するように構成されている。サポータ8は、弾性を有し、例えば樹脂やゴムから成っている。サポータ8は、触覚子7と基板6とに接合しており、触覚子7を弾性により形状記憶合金本体5に押圧し、形状記憶合金本体5に張力を与えている。上板61はスペーサ63を挟んで基板6と対向しており、上板穴64を有して、触覚子7を貫通させ、触覚子7を軸方向に移動自在に保持している。触覚子7はストッパ71を基板6と上板61の内側に有しており、基板穴62及び上板穴64から抜け出さない。また、形状記憶合金本体5は抵抗値が2Ωであり、両端部51がリード線9に接続されて電圧増幅器3に繋がっており、電圧増幅器3を介してパルス発生器2から電圧を印加されると自身の抵抗により自己発熱して昇温し、形状記憶合金は収縮する。
【0017】
次に、上記のように構成された情報伝達装置1の動作について説明する。パルス発生器2は、アクチュエータ4の形状記憶合金本体5を振動させるパルス波を発生し、電圧増幅器3は、該パルス波を所定の電圧に増幅する。パルス波が印加されたときの形状記憶合金本体5の動作を、図3を参照して説明する。図3は、形状記憶合金本体5の温度と長さの関係を示す。横軸は形状記憶合金本体5の温度を示し、縦軸は形状記憶合金本体5の長さを示す。形状記憶合金本体5は、抵抗値を有しているので電圧が印加されているときは発熱し、温度T2以上になると長さが7%収縮し、元の長さLから長さ0.93Lに短くなる。そして、電圧が印加されていないときは放熱し、温度T1以下に冷却されると元の長さLに戻る。そして、温度T2以上の加熱と、温度T1以下の冷却とがパルス波の印加により繰り返される間、形状記憶合金本体5の長さは、長さLと長さ0.93Lとの間で伸縮を繰り返し、形状記憶合金本体5は振動する。
【0018】
そして、形状記憶合金本体5を押圧している触覚子7は触覚子7の軸方向である方向Aの向きに振動する(図2参照)。図4は、アクチュエータ4の使用状況を示す。アクチュエータ4は、触覚子7に接触した指M1に振動を伝達する。このように、触覚子7によって形状記憶合金本体5を三角形状に形成し、パルス電圧を印加して振動させる方式を本明細書において三角駆動法という。
【0019】
次に、アクチュエータを振動させるパルス波の印加方法について図5を参照して説明する。図5(a)乃至(e)は、パルス波の印加の状態を示す。これらの図において横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。図5(a)は、パルス波のオンとオフの時間の比率を示す。形状記憶合金本体は、加熱して収縮すると、一旦放熱して冷却してからでないと再加熱して収縮をさせることができないので冷却時間が必要である。形状記憶合金本体が加熱される電圧印加時間と、形状記憶合金本体が冷却される電圧無印加時間の比率であるオン・オフデューティは、印加電圧が1Vのとき1:20程度が効果的であり、電圧無印加時間をこれより短くすると冷却が不十分で振動が起きない。図5(a)での電圧印加時間を1~100msにすると電圧無印加時間は20~2000msとなる。
【0020】
図5(b)は、形状記憶合金本体を余熱するときの電圧印加方法を示す。オフセット電圧として0.3Vを印加しておくと、形状記憶合金本体は余熱され、パルス波の波高値を低くして、形状記憶合金本体を振動させることができる。
【0021】
図5(c)は、パルス波の波高値を変化させた電圧印加方法を示す。波高値を1V、1.2V、0.5V、1.5V、0.7V、及び1.2Vと変化させている。波高値が低いと形状記憶合金本体は、弱く振動し、波高値が高いと形状記憶合金本体は、強く振動する。波高値の高さを変えることにより、形状記憶合金本体の振動の強さを調整することができる。
【0022】
図5(d)は、パルス波を断続的に印加するときに、パルス波を印加する時間を一定にし、パルス波を印加する間隔を変化させる電圧印加方法を示す。パルス波を印加する時間は、10ms~500msの間の一定時間とし、パルス波を印加する間隔時間を10ms~1sの間で変化させる。間隔時間が短いと生体に与える刺激は、強くなり、間隔時間が長いと生体に与える刺激は、弱くなる。パルス波を印加する間隔時間を変えることにより、生体に与える刺激を調整することができる。
【0023】
図5(e)は、パルス波を断続的に印加するときに、パルス波を印加する間隔を一定にし、パルス波を印加する時間を変化させる電圧印加方法を示す。パルス波を印加する間隔時間は、10ms~1sの間の一定時間とし、パルス波を印加する時間を1ms~50msの間で変化させる。印加する時間が長いと生体に与える刺激は、強くなり、印加する時間が短いと生体に与える刺激は、弱くなる。パルス波を印加する時間を変えることにより、生体に与える刺激を調整することができる。
【0024】
上述のようにパルス波を形状記憶合金本体に印加することにより形状記憶合金本体を振動させ、生体の触覚に情報を伝達することができる。三角駆動法において形状記憶合金本体を振動させたときの振幅について、特許文献3の情報伝達装置における形状記憶合金本体と比較して図6(a)、(b)を参照して説明する。図6(a)は、本実施形態における形状記憶合金本体の振動動作を示し、図6(b)は、特許文献3における形状記憶合金本体105の振動動作を示す。図中において形状記憶合金本体が伸びている状態を2点鎖線で、収縮している状態を実線で示し、6mm程度の長さの形状記憶合金本体が0.2mm収縮したときの振幅を比較する。本実施形態における形状記憶合金本体5は、両端部51を固定されており、頂点53が触覚子によって図中上向きに押圧され、三角形状になっている(図6(a)参照)。両端部51が固定されている長さd1を6mmとする。また、形状記憶合金本体5が伸びているときの長さを2×101/2(約6.32mm)とし、加熱したとき0.2mm収縮して、6.12mmになるとする。すると、形状記憶合金本体5が伸びているときの頂点53の高さh1はピタゴラスの定理により1mmとなり、収縮しているときの高さh2は同様に0.614mmとなるので、形状記憶合金本体5の加熱時と冷却時の高さの差、即ち振幅h3は0.386mmとなる。
【0025】
特許文献3における形状記憶合金本体105は、両端部151を固定されており、形状記憶合金本体105が伸びているときの形状を半径r1が2mmの半円とする(図6(b)参照)。このとき、形状記憶合金本体105の長さは、図6(a)における形状記憶合金本体5とほぼ同等の長さの6.28mmとなる。また、形状記憶合金本体105の頂点153の高さh4は2mmとなる。そして、形状記憶合金本体105が収縮により、図6(a)における形状記憶合金本体5と同様に加熱により0.2mm短くなるとする。このとき、形状記憶合金本体105は円弧形状を維持するとする。すると、形状記憶合金本体105は、中心点O2が図中下方向に長さd2(0.104mm)離れたところにあり、半径が2.003mmの円弧になる。すると、収縮しているときの形状記憶合金本体105の頂点153の高さh5は1.899mmとなるので、形状記憶合金本体5の振幅h6は0.101mmとなり、本実施形態に係る形状記憶合金本体5の振幅の約1/4となる。
【0026】
上述のように本実施形態に係る情報伝達装置における三角駆動法による形状記憶合金本体5の頂点53の振幅が、特許文献3に係る情報伝達装置における形状記憶合金本体105の頂点153の振幅よりも約4倍の大きさとなっており、振動を機械的に増幅することができる。
【0027】
上述した本実施形態の情報伝達装置1によれば、形状記憶合金本体5にパルス電圧を印加することにより、応答性良く振動現象を呈することが可能であり、振動モータを用いるよりもエネルギー効率を良くすることができる。また、構成が簡単であるので情報伝達装置1を小型軽量にすることができる。また、形状記憶合金本体5に張力を与えた状態で、形状記憶合金本体5の振動を触覚子7によって生体に伝達する構成であるので、形状記憶合金本体5の形状のバラツキの影響を受け難く、情報伝達装置1の製造が容易であり、振動の振幅も大きくすることができる。また、形状記憶合金本体5が屈曲することもなく、生体にも直接触れないので、形状記憶合金本体5の損傷も防ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態のアクチュエータ4は、小型にすることができるので、極めて微小な部分への刺激が可能である。アクチュエータ4を手に装着するときは、敏感な部分として中指、小指の付け根、人差し指の先端などが確認されているので、その部分に重点的に配置すればよい。また、触覚子を介しており、形状記憶合金本体に触れることがないので、形状記憶合金本体に加えられる電圧による感電や、過熱によるやけどの心配もない。
【0029】
本実施形態に係るアクチュエータ4の機械振動を情報伝達手投とする情報伝達装置1は、小型軽量で、エネルギー効率が良く、高周波まで応答可能であり、振動源の分解能も極めて高い。また、単体で0.5Hz程度の振動を与えれば人の脈の様に感じ、10~200Hzの振動を加えるとびりびりした触覚を与えることができる。
【0030】
このアクチュエータ4には、種々な用途がある。例えば、人が使用する杖に配設し、杖に信号を送信するときや、犬の首輪に付けて指示をするにはアクチュエータ4を単体で使用すればよい。アクチュエータ4を単体でなく、複数組み合わせることにより高度な情報を振動により伝達することも可能である。医療教育用の脈発生装置、携帯電話の情報伝送、身障者への情報伝送、アミューズメントなどへの利用も可能である。
【0031】
次に、本実施形態のアクチュエータの第1の変形例を、図7を参照して説明する。本変形例では、形状記憶合金本体は触覚子によって牽引されている。形状記憶合金本体5は基板6の上板61側に固定されており、形状記憶合金本体5の中間部52が触覚子7の一端に取り付けられている。触覚子7はサポータ8によって上板61側へ押し上げられており、形状記憶合金本体5は触覚子7に牽引されて張力を与えられている。この構成により、基板6に穴を開けなくてもよく、また、ストッパ71も一つでよいので、構成を簡素化することができる。また、形状記憶合金本体5がアクチュエータ4の内部にあるので、形状記憶合金本体5が外部と接触して損傷することを防ぐことができる。
【0032】
本実施形態のアクチュエータの第2の変形例を、図8(a)及び(b)を参照して説明する。本変形例では、触覚子7は、上板61に埋め込まれたインシュレータ65で固定されている。インシュレータ65は、弾性を有しており、例えばゴムや樹脂から成っている。インシュレータ65は、基板6に取り付けられた形状記憶合金本体5に対して垂直方向に触覚子7を押圧し、形状記憶合金本体5に張力を与える。本変形例のアクチュエータはサポータやストッパを有していないので、構成が簡単となり、アクチュエータを小型にすることができる。
【0033】
本実施形態のアクチュエータの第3の変形例を、図9を参照して説明する。本変形例では、触覚子7は、触覚子の軸の垂直方向に振動(ゴマすり運動)する。触覚子7は、一端部72が傾倒自在に基板6に固定されている。形状記憶合金本体5は、中間部52が触覚子7を囲んだ状態で両端部51が基板6に固定されている。サポータ8は、触覚子7を形状記憶合金本体5の方向に押圧しており、形状記憶合金本体5は触覚子7によって張力を与えられている。形状記憶合金本体5にパルス電圧が印加されると、形状記憶合金本体5が伸縮して振動し、触覚子7は方向Bに振動する。この構成により、アクチュエータ4全体を薄くすることができる。携帯電話や時計などの薄さが要求される機器に有効である。
【0034】
本実施形態のアクチュエータの第4の変形例を、図10を参照して説明する。本変形例は複数のアクチュエータを用いる場合であり、アクチュエータの触覚子の長さが異なっている。複数のアクチュエータ4が線状に、又は面状に並設されており、各アクチュエータ4の触覚子7の先端が生体M2に沿って接触するように、触覚子7の長さが異なっており、上板61の形状も生体M2に沿った曲面形状となっている。振動を伝達される生体M2が曲面である場合に、その生体に合わせて基板6を曲面形状にし、アクチュエータ4を製造するのは難しいが、本変形例の構成のように触覚子7の長さを異ならせることにより、基板6を平面形状のままで、曲面の生体M2に振動を容易に伝達することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る情報伝達装置について図11を参照して説明する。本実施形態に係る情報伝達装置は、上述した第1の実施形態に係る情報伝達装置のアクチュエータ4を複数個用いて生体に情報を与えるものである。本実施形態に係る情報伝達装置1は、握り棒91の形状をしており、複数のアクチュエータ4と、アクチュエータ4を駆動させる駆動アンプ92と、アクチュエータ4と駆動アンプ92を接続する配線93とを備えている。アクチュエータ4は、握り棒91を握持したときに掌M3の触覚の敏感な部位である指先の腹M4に触覚子が当接するように握り棒91に貼着されている。このとき、形状記憶合金本体5に駆動アンプ92を介して0.1Hz~1kHzでの電気信号を印加すると機械振動が発生し、触覚子に当接する指先の腹M4にその振動が伝達される。さらに、電気信号の強弱やその周期を時系列に変化させて、例えば、PWAM波として印加すると、その触覚子に当接した指先の腹M4に様々な機械振動の組み合わせを、時系列で体感させることができる。予めその機械振動の強弱、周期及び組み合わせに何らかの意味を持たせておけば、それが複雑な意味を備えた情報として伝達される。
【0036】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る情報伝達装置について図12を参照して説明する。本実施形態に係る情報伝達装置は、上記第1の実施形態に係る情報伝達装置のアクチュエータにより人体の背中に情報を伝達するものである。本実施形態に係る情報伝達装置1は、複数のアクチュエータ4と、アクチュエータ4を駆動させる駆動アンプ92と、アクチュエータ4と駆動アンプ92を接続する配線93とを備えている。アクチュエータ4を人体の背中M5全体に貼着し、第2の実施形態と同様に駆動アンプ92を介して電気信号を印加すると、複雑な情報を背中M5に伝達することができる。このアクチュエータ4を直接人体に貼着せずに、人体の触覚に敏感な部位が触れる生活用具、例えば、椅子の背もたれ、杖、携帯電話などに複数のアクチュエータ4を適宜貼着する構造とすることもできる。
【0037】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る情報伝達装置について図13乃至図16を参照して説明する。本実施形態に係る情報伝達装置は、上述第1の実施形態に係る情報伝達装置のアクチュエータを複数個用いて生体に触覚の動的感覚を与えるものである。図13は、本実施形態に係る情報伝達装置の構成を示す。本実施形態に係る情報伝達装置1は、複数のアクチュエータ4と、アクチュエータ4に印加するパルス電圧を発生するマルチパルス発生器21と、パルス電圧を増幅するマルチ電圧増幅器31と、を備えている。複数のアクチュエータ4は、複数の列となって面状に配置され、それぞれの触覚子が生体に触れるように配設されている。アクチュエータ4は、それぞれがマルチ電圧増幅器31に接続されており、個別にパルス波を印加されるので、該情報伝達装置1に覆われた任意の箇所のアクチュエータ4の触覚子を振動させ、生体に情報を与えることができる。
【0038】
本実施形態に係る情報伝達装置へのパルス波の印加方法を図14(a)乃至(d)を参照して説明する。図14(a)乃至(d)は、生体の60mm程離れた2箇所(C、D点)に装着したアクチュエータを同時に振動させたときの、生体が感じる触感を示す。横軸は時間を示し、縦軸は2箇所(C、D点)それぞれに装着されたアクチュエータの形状記憶合金本体に印加されたパルス波の波高値を示す。また、C、D点に与えられた刺激の大きさと生体が感じる刺激の位置とをグラフの横に刺激Eと触覚点Fの記号で示す。刺激Eの記号の大きさは、刺激の大きさを表し、触覚点Fの記号の位置は、生体が感じた振動源の位置を示す。図14(a)は、C点及びD点のパルス波の波高値が同じ1Vであるときの状態を示し、生体は、C、D点の中間点に振動源が有るように感じる。図14(b)は、C点の波高値が1VでD点の波高値が0.5Vであるときの状態を示し、生体は、C点に近い方に振動源が有るように感じる。図14(c)は、C点の波高値が0.5VでD点の波高値が1Vであるときの状態を示し、生体は、D点に近い方に振動源が有るように感じる。図14(d)は、C点の波高値が0.2VでD点の波高値が1Vであるときの状態を示し、生体は、図14(c)のときよりもさらにD点に近い方に振動源が有るように感じる。このようにして実際には振動源が存在していない箇所に振動源が有るように触覚に感じさせるファントムセンセーションを起こすことができる。
【0039】
次に、C、D点に同じ高さの波高値のパルス波を、時間差をもって印加したときの生体に与える触感を、図15(a)乃至(d)を参照して説明する。図15(a)乃至(d)において、横軸は時間を示し、縦軸はパルス波の波高値を示す。また、振動源の移動速度の触感を移動感覚Gの記号で示す。移動感覚Gの矢印の記号のうねりで生体が感じた振動源の移動速度の様子を示し、うねりが多いほど遅く感じたことを表す。図15(a)乃至(d)において、C、D点のパルス波の波高値は1Vであるが、C点にパルス電圧を印加してからD点にパルス電圧を印加するまでの時間差が異なっている。図15(a)は、時間差が100msのときの状態を示す。以下、同様に図15(b)は、200msのときの、図15(c)は350msのときの、図15(d)は500msのときの状態を示す。そして、図15(a)における印加条件においては、生体の触覚に、振動源がC点からD点へ速く移動したように感じさせることができる。そして、C、D点にパルス波を印加する時間差を大きくするにつれて、生体の触覚に、振動源がC点からD点へ遅く移動したように感じさせる仮現運動を起こすことができる。
【0040】
上述のように2箇所のアクチュエータへの印加条件により、生体の触覚に種々の情報を伝達することができる。本実施形態に係る情報伝達装置の動作について再び図13を参照して説明する。図13において、アクチュエータ4の配置位置は、座標で示される。図中の左下の基準点Lに配置されているアクチュエータ4の位置座標を(0,0)とし、基準点Lから方向Xに順に配置されているアクチュエータ4の位置座標を順に(1,0)(2,0)としていく。また、基準点Lから方向Yに順に配置されているアクチュエータ4の位置座標を順に、(0,1)(0,2)としていく。アクチュエータ4それぞれに波高値の差異、時間差、印加時間などを適宜制御した信号を与えることにより、アクチュエータ4を配置した面全体に対し、振動源が移動しているかのような触感を与え、文字をなぞったように情報を伝達することができる。例えば、位置座標(0,2)のアクチュエータ4に波高値1Vのパルス波を印加して振動させ、次に、500ms後に位置座標(1,2)のアクチュエータ4に波高値1Vのパルス波を印加して振動させる。続けて同様に位置座標(2,2)(3,2)(4,2)(5,2)(6,2)のアクチュエータ4に順にパルス波を印加して振動させる。この情報伝達装置1を装着された生体の触覚は、位置座標(0,2)の位置から順に位置座標(1,2)(2,2)(3,2)(4,2)(5,2)(6,2)の位置にかけて、振動源が移動し、なぞられたように感じる。このことを利用して、生体の触覚に文字情報を伝達することができる。
【0041】
文字情報の具体的な伝達方法を、図16を参照して説明する。パルス波を印加するアクチュエータ4を枠で囲み、斜線を施して示している。例えば、「A」の文字を伝達するとき、まず波高値1Vのパルス波を位置座標(3,6)から位置座標(2,5)(2,4)(1,3)(1,2)(0,1)(0,0)へ500ms間隔で順に印加して振動させる。次に数秒後に同様に位置座標(3,6)から位置座標(4,5)(4,4)(5,3)(5,2)(6,1)(6,0)へ順に印加して振動させる。さらに、数秒後に位置座標(1,2)から位置座標(2,2)(3,2)(4,2)(5,2)へ順に印加して振動させる。このようにアクチュエータ4にパルス波を印加すると、生体は位置座標(3,6)から位置座標(0,0)へ、位置座標(3,6)から位置座標(6,0)へ、位置座標(1,2)から位置座標(5,2)へかけて振動源が移動し、なぞられたように感じて「A」の文字を認識することができる。「A」の文字の位置にあるアクチュエータ4に同時にパルス波を印加して振動させても、生体は複数個所に振動を感じるだけで文字を認識することができないが、このように印加する時間の間隔をあけてアクチュエータ4に順にパルス波を印加することにより文字をなぞったように情報を生体に伝達することができる。
【0042】
本実施形態に係る情報伝達装置により、画像情報の伝送が可能である。また、音階情報や会話などの複雑な情報を人間の触覚に伝達することができる。具体的な適用例を次に挙げる。第1の適用例は、音声データや文字データを点字や文字情報として呈示し、また、点字ブロック、階段、ゲート及び交差点等から発信される信号データや任意の対象物の形状を触覚への情報に変換して呈示する情報伝達装置であって、身障者の人に有効な情報を伝達することができる。本適用例では、アクチュエータが配設されている部分が情報伝達装置本体部分と一体であっても、分離していても構わない。第2の適用例は、第1の適用例における情報伝達装置であって、カメラ部を備えており、画像データを触覚への情報に変換するものである。第3の適用例は、パソコン等とUBS接続をすることができ、パソコンの画面中から文字や記号を読取り、文字情報に変換し、また、任意の対象物の形状を触覚への情報に変換して呈示するものであって、パソコンからの情報を触覚で知ることができる。第4の適用例は、腕時計への適用で、複数のアクチュエータを備え、時間を文字情報として人体に伝達する情報伝達装置であり、装着している人は、腕時計を見なくても触覚により時間を知ることができる。第5の適用例は、自動車のハンドルへの適用であり、アクチュエータをハンドル部分に配設する。情報伝達装置は、居眠り運転の警告やカーナビゲーションからの自動車の進行方向の情報を運転者の触覚へ伝達する。
【0043】
本発明に係る情報伝達装置は、アクチュエータを線状に配置してもよく、線状に配置すれば小型化することができ、必要な部位のみに情報を伝達することができる。また、アクチュエータを立体的に配置してもよく、生体に沿わせて立体的に配置すれば、生体により多くの情報を伝達することができる。
【0044】
この情報伝達装置は、目、耳などに障害のある障害者に対する情報伝達手段や意志の疎通手段として、その機能を最大限に発揮させることができる。また、他人には騒音になるなどの制約から音情報による伝達が規制される環境下において、有効に機能させることができる。また、機械振動による触覚の疑似体験ができるので医療、各種訓練、ゲーム、それにマジックハンドなど隔壁内の現象の再現などにも活用することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば形状記憶合金本体は、直径50μm、長さ6mmで2Ωの線状としたが、直径や長さや抵抗値に拘らず、パルス波を印加したときに振動が発生するように調整すればよい。また、形状記憶合金本体の形状は、薄片板に成形したものでもよい。また、形状記憶効果によって所定の温度以上になると、形状記憶合金本体が屈曲することにより振動を起こすようにしてもよい。また、振動により情報を伝える生体は人間のみに限らず犬などの動物でもよい。また、パルス波の波高値や印加時間や無印加時間等の印加条件も、形状記憶合金本体が振動するように調整すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る情報伝達装置の構成図。
【図2】(a)は同上装置におけるアクチュエータの斜視図、(b)はアクチュエータの断面図。
【図3】同上装置における形状記憶合金本体の特性図。
【図4】同上装置におけるアクチュエータの使用状況を示す図。
【図5】同上装置におけるパルス波の印加条件を示す図。
【図6】(a)は同上装置における形状記憶合金本体の振幅を示す図、(b)は特許文献3の情報伝達装置における形状記憶合金本体の振幅を示す図。
【図7】同上装置における第1の変形例によるアクチュエータの断面図。
【図8】(a)は同上装置における第2の変形例によるアクチュエータの斜視図、(b)はアクチュエータの断面図。
【図9】(a)は同上装置における第3の変形例によるアクチュエータの斜視図、(b)は同アクチュエータの断面図。
【図10】同上装置における第4の変形例によるアクチュエータの断面図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る情報伝達装置の斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る情報伝達装置の使用状況を示す図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る情報伝達装置の構成図。
【図14】同上装置におけるパルス波の同時刺激の印加条件を示す図。
【図15】同上装置におけるパルス波の同一波高値の印加条件を示す図。
【図16】同上装置における文字の伝達方法の説明図。
【図17】従来の情報伝達装置の斜視図。
【図18】特許文献3の情報伝達装置におけるアクチュエータの斜視図。
【符号の説明】
【0047】
1 情報伝達装置
2 パルス発生器
4 アクチュエータ
5 形状記憶合金本体
51 形状記憶合金本体の両端部
52 形状記憶合金本体の中間部
7 触覚子

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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