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明細書 :複素型直交変調器、複素型直交復調器及びこれらに用いる直交ミキサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5574293号 (P5574293)
公開番号 特開2012-034110 (P2012-034110A)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
公開日 平成24年2月16日(2012.2.16)
発明の名称または考案の名称 複素型直交変調器、複素型直交復調器及びこれらに用いる直交ミキサ
国際特許分類 H04L  27/36        (2006.01)
H04L  27/38        (2006.01)
H03D   7/00        (2006.01)
H03D   7/18        (2006.01)
H03D   7/14        (2006.01)
H03D   9/00        (2006.01)
FI H04L 27/00 F
H04L 27/00 G
H03D 7/00 D
H03D 7/18
H03D 7/14 C
H03D 9/00
請求項の数または発明の数 15
全頁数 28
出願番号 特願2010-170828 (P2010-170828)
出願日 平成22年7月29日(2010.7.29)
審査請求日 平成25年6月12日(2013.6.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
発明者または考案者 【氏名】束原 恒夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100094514、【弁理士】、【氏名又は名称】林 恒徳
【識別番号】100094525、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 健二
審査官 【審査官】彦田 克文
参考文献・文献 特開平11-168519(JP,A)
特開平06-120990(JP,A)
特開2000-115265(JP,A)
国際公開第2009/003101(WO,A1)
特開2003-060441(JP,A)
調査した分野 H04L 27/36
H04L 27/38
H03D 7/00
H03D 7/14
H03D 7/18
H03D 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ベースバンド信号の同相成分及び直交成分がそれぞれ入力される第1及び第2の直交ミキサを有し、前記第1及び第2の直交ミキサの出力に対する減算結果と、加算結果から直交出力を生成し、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、第1及び第2の乗算器を有し、
前記第1の直交ミキサの前記第1及び第2の乗算器は、前記ベースバンド信号の同相成分にそれぞれローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、
前記第2の直交ミキサの前記第1及び第2の乗算器は、前記ベースバンド信号の直交成分にそれぞれ前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、
さらに、前記第1及び第2の乗算器は、それぞれ前記ローカル信号の1/4周期毎に活性化され、且つ同時に動作しない、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、
前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、
それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、
前記第1、第2の差動対トランジスタのペアが、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタに並列に接続されている、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、
前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、
それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、
前記第1の差動対トランジスタのペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの一方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続され、
前記第1の差動対トランジスタのペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの他方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続されて構成される、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項4】
請求項1において、
前記ローカル信号の同相成分と直交成分を比較して、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に、前記ベースバンド信号を前記第1の乗算器に接続するスイッチと、
前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に、前記ベースバンド信号を前記第2の乗算器に接続するスイッチを有する、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項5】
請求項4において、更に、
前記ローカル信号の同相成分を全波整流する第1の全波整流回路と、
前記ローカル信号の直交成分を全波整流する第2の全波整流回路を有し、
前記第1の全波整流回路の出力と、前記第2の全波整流回路の出力との差分を採ることにより前記ローカル信号の同相成分と直交成分の比較を行う、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項6】
ーカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、
前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、更に
前記第1の差動対トランジスタのペアの一方とベースバンド信号の同相成分入力端子との間に設けられた第1のスイッチと、
前記第1の差動対トランジスタのペアの他方前記ベースバンド信号の直交成分入力端子との間に設けられた第2のスイッチと、
前記第2の差動対トランジスタのペアの一方前記ベースバンド信号の同相成分入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、
前記第2の差動対トランジスタのペアの他方前記ベースバンド信号の直交成分入力端子との間に設けられた第4のスイッチを有し、
前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に導通し、
前記第及び第のスイッチは、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に導通する、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項において、
前記第1及び第2の直交ミキサの直交出力端子に接続された、正周波数と負周波数とで周波数応答が非対称となり不要波成分を抑圧する複素型フィルタを
有すること特徴とする複素型直交変調器。
【請求項8】
請求項7において、
前記複素型フィルタは、抵抗と容量素子の組が縦続されたポリフェーズ・フィルタである、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項9】
請求項7において、
前記複素型フィルタとして所望の周波数のみが通過する複素バンドパス・フィルタである、
ことを特徴とする複素型直交変調器。
【請求項10】
無線周波信号を同相成分と直交成分に位相シフトする位相シフタと、
前記位相シフタからの無線周波信号の同相成分と直交成分がそれぞれ入力される第1及び第2の直交ミキサを有し、前記第1及び第2の直交ミキサの出力に対する減算結果と、加算結果から直交するベースバンド出力を生成し、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、第1及び第2の乗算器を有し、
前記第1の直交ミキサの前記第1及び第2の乗算器は、前記無線周波信号の同相成分にそれぞれローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、
前記第2の直交ミキサの前記第1及び第2の乗算器は、前記無線周波信号の直交成分にそれぞれ前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、
さらに、前記第1及び第2の直交ミキサの前記第1及び第2の乗算器は、それぞれ前記ローカル信号の1/4周期毎に活性化され、且つ同時に動作しない、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、
前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、
それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、
前記第1、第2の差動対トランジスタのペアが、前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタに並列に接続されている、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
【請求項12】
請求項10において、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、
前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、
それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、
前記第1の差動対トランジスタのペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの一方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続され、
前記第1の差動対トランジスタのペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの他方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続されて構成される、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
【請求項13】
請求項10において、
前記ローカル信号の同相成分と直交成分を比較して、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に、前記無線周波信号を前記第1の乗算器に接続するスイッチと、
前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に、前記無線周波信号を前記第2の乗算器に接続するスイッチを有する、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
【請求項14】
請求項13において、更に、
前記ローカル信号の同相成分を全波整流する第1の全波整流回路と、
前記ローカル信号の直交成分を全波整流する第2の全波整流回路を有し、
前記第1の全波整流回路の出力と、前記第2の全波整流回路の出力との差分を採ることにより前記ローカル信号の同相成分と直交成分の比較を行う、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
【請求項15】
ーカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、
前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、更に
前記第1の差動対トランジスタのペアの一方と無線周波信号の同相成分入力端子との間に設けられた第1のスイッチと、
前記第1の差動対トランジスタのペアの他方前記無線周波信号の直交成分入力端子との間に設けられた第2のスイッチと、
前記第2の差動対トランジスタのペアの一方前記無線周波信号の同相成分入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、
前記第2の差動対トランジスタのペアの他方前記無線周波信号の直交成分入力端子との間に設けられた第4のスイッチを有し、
前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に導通し、
前記第及び第のスイッチは、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に導通する、
ことを特徴とする複素型直交復調器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複素型直交変調器、直交復調器及びこれらに用いる直交ミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、無線LANなどディジタル無線通信における変調及び復調動作のための基本要素として、直交ミキサが用いられる。
【0003】
かかる直交ミキサは、送信機の変調器においてベースバンド信号を無線周波数(RF: Radio Frequency)信号に変換し、一方、受信機の復調器において無線周波数(RF)信号をベースバンド信号に変換するために使用される。
【0004】
ここで、ディジタル無線通信の送信機において、直交ミキサが用いられる直交変調器について考察する。図1は、かかる直交変調器の一般的な構成を説明する図である。
【0005】
直交変調器で得られる一般化した変調波RFは、
【0006】
【数1】
JP0005574293B2_000002t.gif
という式で表現出来る。
【0007】
この式を展開すると、
【0008】
【数2】
JP0005574293B2_000003t.gif
となる。
【0009】
したがって、上記図1に示す直交変調器において、伝送したいディジタル信号から生成した同相成分に対応するI(In-phase)チャネル(ch),直交成分に対応するQ(Quadrature phase)チャネル(ch)のベースバンド (BB: Baseband)入力信号に、90°移相器10を通して得た互いに90度位相が異なるキャリア[ローカル(LO)]信号(ωLO)を、一対の直交ミキサ20,21のそれぞれにより乗算する。ついで、直交ミキサ20,21の出力を減算器30により減算することにより変調が実現され、変調波RFが得られる。
【0010】
図2は、ベースバンド (BB: Baseband)入力信号(図2a)の周波数が、ローカル(LO)信号周波数(fLO)の帯域に変換され、周波数スペクトルがRF帯に移動した状態(図2b)を示している。
【0011】
なお、直交復調器は、同様に一対の直交ミキサ20,21を有して構成され、上記の直交変調器の動作と逆方向に行われて、入力される無線周波数(RF)信号を、Ich, Qchのベースバンド (BB: Baseband)に変換する。
【0012】
ここで、ディジタル無線通信における無線周波数(RF)信号は、GHz帯と高周波であるので、直交変調は、主としてアナログ回路により実現されている。図1において、乗算を行なう2つの直交ミキサ20,21には、アナログ乗算を実現できる図3に示す乗算器である、Gilbert型ダブルバランス・ミキサ(非特許文献1:Figure1)が広く用いられている。
【0013】
Gilbert型ダブルバランス・ミキサを構成するトランジスタレベルの回路は、差動入出力の形式であり、ローカル(LO)信号と、ベースバンド (BB: Baseband)入力信号及びRF出力との関係は、RF=BB×LOである。
【0014】
一方、無線通信用LSIの製造における性能テストを行うテスティングにおける低コスト化の要求が年々増大しており、テスタ用送信機に不可欠な高精度直交変調器をCMOSデバイス技術により、低コストで実現することが強く要求されている。
【0015】
また、無線LAN、第4世代携帯電話、ディジタル・テレビを中心に、図4に示すように、より多くのビットで構成される信号に対応する多数の信号点配置(図4aは16個の信号点配置、図4bは64個の信号点配置、更に、図4cは256個の信号点配置)を持つ直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)方式が採用されるようになり、かかる多数の信号点配置のために、変調精度への要求も厳しくなる傾向にある。
【0016】
なお、変調精度または変調誤差EVM(Error Vector Magnitude)(%)は、図5により次の様に説明できる。
【0017】
変調精度を劣化させる主な要因は、I, Qローカル(LO)信号間の位相差90度からのずれφ(rad)と、I, Qローカル(LO信号間の振幅のミスマッチ誤差δである。δはローカル信号間の振幅比を1+δとしたときの誤差分を表す。
【0018】
図5において、ある信号の実ベクトルBが、理想ベクトルAに対し、位相誤差Φ及び振幅誤差ΔAを有する時、変調精度または変調誤差EVM(Error Vector Magnitude)(%)は、次式で与えられる。
【0019】
【数3】
JP0005574293B2_000004t.gif
例として、経験則に基づく一般的な値として、φ=0.0175rad (=1deg)、δ=0.01(=1%)とすると、EVM=2.3%となる。
【先行技術文献】
【0020】

【特許文献1】特開2001-257538号公報
【特許文献2】特開2003-174329号公報
【特許文献3】特開2008-131566号公報
【特許文献4】特開2008-278035号公報
【特許文献5】特開2009-206748号公報
【0021】

【非特許文献1】J. Harvey and R. Harjani, “An Integrated Quadrature Mixer with Improved Image Rejection at Low Voltage,” 14th International Conference on VLSI Design, Jan. 2001
【非特許文献2】束原恒夫、「CMOS RF回路設計」、丸善、2009年11月30日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記の通り、無線通信用LSIのテスティングの低コスト化の要求が年々増大しており、テスタ用送信機に不可欠な高精度直交変調器をCMOSデバイス技術により、低コストで実現することが強く要求されている。かかる高精度直交変調器に対応して、同様に直交復調器にも低コストで高精度が要求される。
【0023】
そして、被測定無線通信用LSIの変調精度が数%であれば、テスタ用送信機にはその1/10程度の高精度特性、即ち要求される変調精度は、1%以下と厳しくなる傾向にある。同様に、第3.5世代、更に第4世代携帯電話に適用される移動端末用LSIに適用する直交変調器(及び直交復調器)についても高精度化の要求が厳しくなってきている。
【0024】
しかしながら、従来技術による直交変調用LSIの変調精度は、1~3%が限界であった。これに対応する直交復調用LSIの変調精度についても同様である。
【0025】
したがって、本発明の目的は、無線通信等におけるキャリア信号に対するディジタル変調(及び復調)を行なうための高精度化、特に1%以下の変調(及び復調)精度を実現できる複素型直交変調器、複素型直交復調器及びこれらに適用可能の直交ミキサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記本発明の目的を達成する複素型直交変調器は、基本的構成として、
ベースバンド信号の同相成分及び直交成分がそれぞれ入力される第1及び第2の直交ミキサを有し、前記第1及び第2の直交ミキサの出力に対する減算結果と、加算結果から直交出力を生成し、前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、第1及び第2の乗算器を有し、前記第1の乗算器は、前記複素ベースバンド信号の同相成分に前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、前記第2の乗算器は、前記ベースバンド信号の直交成分に前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、さらに、前記第1及び第2の乗算器は、それぞれ前記ローカル信号の1/4周期毎に活性化され、且つ同時に動作しないことを特徴とする。
【0027】
さらに、一の態様として、前記第1及び第2の直交ミキサは、
前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、前記第1、第2の差動対トランジスタのペアが、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタに並列に接続されていることを特徴とする。
【0028】
また、前記第1及び第2の直交ミキサのより詳細な一態様として、
前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、前記第1の差動対トランジスタのペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの一方のトランジスタの ドレイン(ソース)端子に共通に接続され、前記第1の差動対トランジスタのペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの他方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続されて構成される。
【0029】
さらにまた、前記第1及び第2の直交ミキサの別の態様は、
前記ローカル信号の同相成分と直交成分を比較して、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に、前記ベースバンド信号を前記第1の乗算器に接続するスイッチと、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に、前記ベースバンド信号を前記第2の乗算器に接続するスイッチを有する。
【0030】
また、前記第1及び第2の直交ミキサの別の態様の詳細な一態様として、
前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、
前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアと、前記第1の差動対トランジスタのペアの一方と前記ベースバンド信号の同相成分入力端子との間に設けられた第1のスイッチと、前記第1の差動対トランジスタのペアの他方を前記ベースバンド信号の直交成分入力端子との間に設けられた第2のスイッチと、前記第2の差動対トランジスタのペアの一方を前記ベースバンド信号の同相成分入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、前記第2の差動対トランジスタのペアの他方を前記ベースバンド信号の直交成分入力端子との間に設けられた第4のスイッチを有し、前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に導通し、前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に導通する。
【0031】
さらに、上記各態様の複素型直交変調器において、前記第1及び第2の直交ミキサの直交出力端子に接続された、正周波数と負周波数とで周波数応答が非対称となり不要波成分を抑圧する複素型フィルタを有する。
【0032】
上記本発明の目的を達成する複素型直交復調器は、基本的構成として、無線周波信号を同相成分と直交成分に位相シフトする位相シフタと、前記位相シフトからの無線周波信号の同相成分と直交成分がそれぞれ入力される第1及び第2の直交ミキサを有し、前記第1及び第2の直交ミキサの出力に対する減算結果と、加算結果から直交するベースバンド出力を生成し、前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、第1及び第2の乗算器を有し、前記第1の乗算器は、前記無線周波信号の同相成分に前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、前記第2の乗算器は、前記無線周波信号の直交成分に前記ローカル信号の同相成分及び直交成分を乗算し、さらに、前記第1及び第2の乗算器は、それぞれ前記ローカル信号の1/4周期毎に活性化され、且つ同時に動作しないことを特徴とする。
【0033】
上記複素型直交復調器の一の態様として、前記第1及び第2の直交ミキサは、前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、前記第1、第2の差動対トランジスタのペアが、前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタに並列に接続されていることを特徴とする。
【0034】
さらにまた、複素型直交復調器において、前記第1及び第2の直交ミキサの別の態様として、それぞれは、前記無線周波信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタと、それぞれ前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアを有し、前記第1の差動対トランジスタのペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの一方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの一方のトランジスタの ドレイン(ソース)端子に共通に接続され、前記第1の差動対トランジスタのペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子と、前記第2の差動対のペアの他方の差動対トランジスタのソース(ドレイン)端子を、前記ベースバンド信号を差動電流信号に変換する差動対トランジスタの他方のトランジスタのドレイン(ソース)端子に共通に接続されて構成される。
【0035】
また、上記複素型直交復調器において、一の態様として前記ローカル信号の同相成分と直交成分を比較して、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に、前記無線周波信号を前記第1の乗算器に接続するスイッチと、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に、前記無線周波信号を前記第2の乗算器に接続するスイッチを有する。
【0036】
さらに、かかる一の態様において、前記ローカル信号の同相成分を全波整流する第1の全波整流回路と、前記ローカル信号の直交成分を全波整流する第2の全波整流回路を有し、前記第1の全波整流回路の出力と、前記第2の全波整流回路の出力との差分を採ることにより前記ローカル信号の同相成分と直交成分の比較を行うことを特徴とする。
【0037】
また、前記複素型直交復調器の一の詳細な態様として、前記第1及び第2の直交ミキサのそれぞれは、前記ローカル信号の同相成分入力に対する第1の差動対トランジスタのペアと、前記ローカル信号の直交成分入力に対する第2の差動対トランジスタのペアと、前記第1の差動対トランジスタのペアの一方と前記無線周波信号の同相成分入力端子との間に設けられた第1のスイッチと、前記第1の差動対トランジスタのペアの他方を前記無線周波信号の直交成分入力端子との間に設けられた第2のスイッチと、前記第2の差動対トランジスタのペアの一方を前記無線周波信号の同相成分入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、前記第2の差動対トランジスタのペアの他方を前記無線周波信号の直交成分入力端子との間に設けられた第4のスイッチを有し、前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の同相成分が直交成分より大きい時に導通し、前記第1及び第3のスイッチは、前記ローカル信号の直交成分が同相成分より大きい時に導通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明の上記特徴構成は、従来のミキサに代えて、I,Qローカル(LO)信号間の位相誤差を補償できる直交ミキサを用いることで、直交出力を持つ高精度な複素型直交変調器及び複素型直交復調器が実現可能となる。
【0039】
さらに、この直交変調の出力に複素フィルタを付加することでローカル(LO)信号の振幅誤差の影響を大幅に低減することができ、さらなる高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の直交変調器の一構成を示す図である。
【図2】変調動作による周波数スペクトルの移動を説明する図である。
【図3】従来のアナログ乗算器(Gilbert型ダブルバランス・ミキサ (DBM))の構成を示す図である。
【図4】QAM変調方式における信号点配置を説明する図である。
【図5】変調精度または変調誤差EVM(Error Vector Magnitude)(%)を説明する図である。
【図6A】本発明に従う複素型直交変調器のブロック図を示す図である。
【図6B】本発明に従う複素型直交復調器のブロック図を示す図である。
【図7】図6A,図6Bの複素型直交変調器及び複素型直交復調器に直交ミキサとしてアクティブ型ミキサを適用する例を示す図である。
【図8】図7の直交ミキサに対応して使用される図6Aに示した複素型直交変調器における減算器の構成例を示す図である。
【図9】図7の直交ミキサに対応して使用される図6Aに示した複素型直交変調器における加算器の構成例を示す図である。
【図10】I/Q chローカル(LO)信号の位相誤差が無い場合のミキサ出力差動電流波形を示す図である。
【図11】直交LO信号に位相誤差がある場合の電流波形を図11に示す図である。
【図12】本願発明者により、新たに発明した直交ミキサの構成図である。
【図13】図12の直交ミキサに対応して使用される図6Aに示した複素型直交変調器における減算器の構成例を示す図である
【図14】図12の直交ミキサに対応して使用される図6Aに示した複素型直交変調器における加算器の構成例を示す図である。
【図15】切換信号I/QSW+とI/QSW-を生成出力する構成例を示す図である
【図16】図15により切換信号I/QSW+とI/QSW-を生成する過程を説明する図である。
【図17】I/Q chローカル(LO)信号間の90度位相差からのずれがある場合の、I/QSW信号の発生過程を説明する図である。
【図18】図15に示したI/QSW制御信号発生回路と等価な回路をトランジスタレベルでの構成例を示す図である。
【図19】位相誤差とSRR値の関係をプロットしたシミュレーション値のグラフである。
【図20】負周波数側に不要なイメージ信号が発生して、不要サイドバンドにつながる状態を説明する図である。
【図21】イメージ信号ISの存在する負周波数成分のみを抑圧するフィルタの特性を示す図である。
【図22】図21のフィルタの特性を実現するポリフェーズ・フィルタを示す図である。
【図23A】ポリフェーズ・フィルタを付加しない場合のSRRのシミュレーション結果を示す図である。
【図23B】ポリフェーズ・フィルタを付加した場合のSRRのシミュレーション結果を示す図である。
【図24】90度位相シフタ回路をポリフェーズ・フィルタにより構成した実施例を示す図である。
【図25】複素バンドパス・フィルタの具体的な構成例を示す図である。
【図26】複素バンドパス・フィルタの効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に図面に従い本発明の実施例を説明するが、本発明の適用は、かかる実施例に限定されるものではなく、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明及びこれに均等なものを含むものである。

【0042】
[複素型直交変調器]
図6Aは、本発明に従う複素型直交変調器のブロック図を示す。図6Aにおいて、2か所の破線で囲んだ部分は、第1及び第2の直交ミキサ100,200である。後に詳述するように直交ミキサ100,200は、90度位相差を有するローカル(LO)信号LO-IとLO-Q間の位相誤差を補償する効果を有し、かかる点に本発明の特徴を有する。なお、各信号線上の図中の短い斜線と数値「2」は差動信号であることを示している。

【0043】
直交ミキサ100(200)は、乗算器101,102(201,202)を有して構成され、乗算器101(201)には、ローカル(LO)信号LO-Iとして、

【0044】
【数4】
JP0005574293B2_000005t.gif
が入力され、乗算器102(202)には、90度移相されたローカル(LO)信号LO-Qとして、

【0045】
【数5】
JP0005574293B2_000006t.gif
が入力される。

【0046】
さらに、直交ミキサ100には、同相成分のベースバンド信号BB-Iとして、

【0047】
【数6】
JP0005574293B2_000007t.gif
が入力され、直交ミキサ200には、直交成分のベースバンド信号BB-Qとして、

【0048】
【数7】
JP0005574293B2_000008t.gif
が入力される。

【0049】
ついで、直交ミキサ100の乗算器101からの出力IIと、直交ミキサ200の乗算器202からの出力QQは、減算器300により引き算され、同相成分出力である無線周波数信号RF-Iとして、

【0050】
【数8】
JP0005574293B2_000009t.gif
を生成する。

【0051】
一方、直交ミキサ200の乗算器201からの出力QIと、直交ミキサ100の乗算器102からの出力IQは、減算器301により引き算され、直交成分出力である無線周波数信号RF-Qとして、

【0052】
【数9】
JP0005574293B2_000010t.gif
を生成する。これにより、複素型のRF変調信号が得られる。

【0053】
ここで、上記実施例において、乗算器101(201)及び102(202)に入力されるローカル(LO)信号LO-IとLO-Qは、本発明の特徴として、それぞれ1/4周期毎に活性化され、同時には動作しないように制御される。

【0054】
これにより、ローカル(LO)信号LO-IとLO-Q間の位相差90度からの位相誤差φ(rad)があっても、これを補償して高精度の複素型直交変調器が実現可能である。

【0055】
かかる理由は、後に第1、第2の直交ミキサ100,200の具体例に基づき説明する。

【0056】
[複素型直交復調器]
図6Bは、本発明に従う複素型直交復調器のブロック図を示す。基本的に図6Aに示した複素型直交変調器と相対的な構成を有し、2か所の破線で囲んだ部分は、先の複素型直交変調器におけると同様に、第1及び第2の直交ミキサ100A,200Aであり、それぞれは、乗算器101,102(201,202)を有して構成される。

【0057】
複素型直交復調器にあっては、無線周波数(RF)信号が直交信号ではないので、まず90°位相シフタ50により同相成分のRF-I信号及び直交成分のRF-Q信号に変換される。ついで、変換された同相成分のRF-I信号及び直交成分のRF-Q信号は、それぞれ一対の直交ミキサ100A,200Aに入力される。

【0058】
直交ミキサ100A,200Aの動作は、上記の複素型直交変調器におけると同様であるが、減算器300Aからは、同相成分のベースバンド信号BB-Iとして、

【0059】
【数10】
JP0005574293B2_000011t.gif
が出力され、加算器301Aからは、直交成分のベースバンド信号BB- Qとして、

【0060】
【数11】
JP0005574293B2_000012t.gif
が出力される。

【0061】
なお、上記RF信号用の90°位相シフタの例としては、一例として後に説明する入力を差動信号としたRCポリフェーズ・フィルタを用いることができる。

【0062】
[直交ミキサの第1の構成例]
図7は、上記した図6A,図6Bに示した複素型直交変調器、複素型直交復調器における第1、第2の直交ミキサ100(100A)、200(200A)としてアクティブ型ミキサを適用する例である。

【0063】
なお、図7に示す直交ミキサ100(100A)、200(200A)は、非特許文献1のFig. 2 に示す直交ミキサ(Quadrature mixer)に対応するものであり、本実施例では、上記複素型直交変調器及び複素型直交復調器の構成要素としている。

【0064】
以下同様構成であるので、複素型直交変調器における直交ミキサを参照して説明する。

【0065】
この直交ミキサは、トランスコンダクタ(電圧・電流変換)マッチィングを良好とするために、電流源40にソース端子が繋がる差動対トランジスタM9,M10を共通として、上記図3に示したGilbert型ダブルバランス・ミキサを2つ並列に結合した構成である。

【0066】
なお、トランジスタの説明において、上記ソース端子又はドレイン端子は、相互に置換えが可能であり、以下の実施例説明においても同様である。

【0067】
ベースバンド入力BB+, BB-用差動対トランジスタM9, M10が、一つの電流源40に接続され、差動対を形成している。ベースバンド入力BB+, BB-用差動対トランジスタM9, M10のそれぞれのドレイン端子に、トランジスタM1からM4で構成されるIチャネル(ch)ミキサと、トランジスタM5からM8で構成されるQチャネル(ch)ミキサが並列に直接接続されている。

【0068】
回路の全電流は、図示しない電源VDDからローカル(LO)信号で動作する4個の差動対(トランジスタM1とM2の差動対、M3とM4の差動対、M5とM6の差動対、及びM7とM8の差動対)を経由して、ベースバンド用差動対トランジスタM9,M10、及び電流源40へと流れる。

【0069】
かかる直交ミキサ100(200)の構成に対し、図6Aに示した複素型直交変調器における減算器300は、図8に示すように、負荷抵抗RLによる逆相信号の電流加算で実現できる。同様に加算器301は、図9のように、同相信号の電流加算で実現できる。

【0070】
図7に示す構成のミキサを用いることにより、I/Q chのローカル(LO)信号に位相誤差があっても、その影響を受けにくいためにイメージ抑圧が向上することが可能である。

【0071】
I/Qchローカル(LO)信号に位相誤差の影響を受けない理由は、I/QchのLO入力差動ペア(トランジスタM1とM2(M5とM6)、トランジスタM3とM4(M7とM8))がベースバンド差動対(トランジスタM10とM11)のドレイン端子で共通化されていることに起因している。

【0072】
図10に、I/Q chローカル(LO)信号の位相誤差が無い場合のミキサ出力差動電流波形を示す。

【0073】
図10(a)は、I/Q chローカル(LO)信号LO-IとLO-Qを正弦波で示し、それらが正しく90度の位相差を有する状態を示している。

【0074】
図10(b)は、I ch ローカル信号LO-Iが、Q ch ローカル信号LO-Qと、その反転信号よりも大きい1/4周期にのみ、LO-I信号が印加されるトランジスタM1とM4(M2とM3)がオンする状態(即ち、活性化状態)を示している。

【0075】
図10(c)は、反対に、Q ch ローカル信号LO-Qが、I ch ローカル信号LO-Iと、その反転信号よりも大きい1/4周期にのみ、LO-Q信号が印加されるトランジスタM5とM8(M6とM7)がオンする状態を示している。

【0076】
すなわち、LO-I側のトランジスタM1からM4に電流が流れるときLO-Q側の電流はゼロであり、反対にLO-Q側のトランジスタM5からM8に電流が流れるときLO-I側の電流はゼロである。

【0077】
上記の様に、図7の直交ミキサは、I/Q chが共通化されているので、I ch ローカル信号LO-Iが、Q ch ローカル信号LO-Qと、その反転信号よりも大きい1/4周期にのみ、LO-I信号が印加されるトランジスタM1とM4がオン(活性化)する(図10(b))。このとき、他のトランジスタは全てオフ状態になり、特に、Qchの2つの差動対がオフしており、IchからQchへの信号漏れは生じない(図10(c))。

【0078】
すなわち、Ichの差動対がオンしている(活性化されている)ときは、Qchの差動対は常にオフしており、その逆もまた正しい。

【0079】
次に、直交LO信号に位相誤差がある場合の電流波形を図11に示す。

【0080】
この場合も、電流波形は図10と同じ形をしており、LO-Q信号の位相がずれた分(Φ)、一定時間だけシフトした形になっており、図11の(b)と(c)との相対関係は、図10と変わらない。

【0081】
したがって、I chの差動対トランジスタM1, M4(M2, M3)がオンしているときは、Q chの差動対トランジスタ M5,M6(M7,M8)は常にオフしており、その逆もまた正しいので、位相誤差が吸収されイメージ抑圧比の向上のメカニズムが働く。

【0082】
なお、図6Bに示した複素型直交復調器における第1、第2の直交ミキサ100A、200Aとして図7に示す直交ミキサを用いる場合は、ベースバンド入力BB+, BB-は、90°位相シフタ50により得られる同相成分のRF-I信号及び直交成分のRF-Q信号に置き換わり、従って、出力側にベースバンド出力BB+, BB-が得られる。

【0083】
[直交ミキサの第2の構成例]
図12は、本願発明者により新たに発明したパッシブ型直交ミキサの構成図であり、直交変調器にも直交復調器にも使用可能である。

【0084】
ここでは図6Aに示した複素型直交変調器に第1、第2の直交ミキサ100、200として図12のパッシブ型ミキサを適用する例を説明する。

【0085】
図12における直交ミキサは、Nch (Negative channel) MOS (Metal Oxide Semiconductor)トランジスタは、全てスイッチとして働くパッシブ型ミキサである。

【0086】
したがって、先に説明した図7の直交ミキサの構成に比べ、スイッチのみで構成されるので、より低電圧化が可能であり、且つ常時に電流を流さない構成であり、低消費電力化も可能である。

【0087】
図12において、差動ベースバンド信号BB+、BB-は、トランジスタM11からM14のI/Q切替えスイッチを通して、トランジスタM1からM4で構成されるIchミキサと、トランジスタM5からM8で構成されるQchミキサに共通に供給される。

【0088】
切換信号I/QSW+がハイレベルで切換信号I/QSW-がローレベルのときトランジスタM11, M12のI/Q切替えスイッチがオンするので、Ichローカル信号LOI+、LOI-で駆動されるトランジスタM1からM4のIchミキサのみが動作状態となり、ベースバンド信号パスをローカル(LO)信号周波数で切り替える。

【0089】
一方、切換信号I/QSW-がハイレベルで切換信号I/QSW+がローレベルのときトランジスタM13, M14のI/Q切替えスイッチがオンするので、Qchローカル信号LOQ+、LOQ-で駆動されるトランジスタM5からM8のQchミキサのみが動作状態となり、ベースバンド信号パスをローカル(LO)信号周波数で切り替える。

【0090】
かかる図12に示すミキサ100(200)の構成に対し、図6Aに示した直交変調器における減算器300は、図13に示すように、負荷抵抗RLによる逆相信号の電流加算で、減算が実現できる。同様に加算器301は、図14のように、同相信号の電流加算で、加算が実現できる。

【0091】
なお、図12に示した直交ミキサは、電流源を有しないので、図13、図14の減算器300及び加算器301に定電流源40Aを有している。

【0092】
また、図6Bに示した複素型直交復調器における第1、第2の直交ミキサ100A、200Aとして図12に示す直交ミキサを用いる場合は、差動ベースバンド信号BB+、BB-は、90°位相シフタ50により得られる同相成分のRF-I信号及び直交成分のRF-Q信号に置き換わり、従って、出力側にベースバンド出力BB+, BB-が得られる。

【0093】
図12において、切換信号I/QSW+とI/QSW-は、例えば次の様な回路で生成可能である。図15は、二つの全波整流回路400,401と電圧比較器(コンパレータ)403からなる回路であり、電圧比較器(コンパレータ)403から切換信号I/QSW+とI/QSW-を生成出力する。

【0094】
図16は、かかる図15により切換信号I/QSW+とI/QSW-を生成する過程を説明する図である。

【0095】
図16(a)は、I/Qchローカル(LO)信号LO-IとLO-Qを正弦波で示し、それらが正しく90度の位相差を有する状態を示している。

【0096】
I/Qchローカル(LO)信号LO-IとLO-Qは、それぞれ、全波整流回路400と401に入力され、全波整流される。図16(b)は、全波整流波形であり、Ichローカル信号LOIとQchローカル信号LOQによる大小関係を検出可能である。この大小関係を、差動出力を持つ電圧比較器403で検出し増幅した波形が、図16(c)のI/QSW+と図16(d)のI/QSW-となる。

【0097】
図16(c)に示すようにI/QSW+により、図12におけるパッシブ型直交ミキサのトランジスタM1,M4(又はM2,M3)がオンにされ、図16(d) に示すようにI/QSW-により、図12におけるパッシブ型直交ミキサのトランジスタM5,M8(又はM6,M7)がオンにされる。

【0098】
これにより、IchミキサとQchミキサを、完全に独立したタイミングで、ローカル(LO)信号を1/4周期の期間で交互に動作させることができ、ローカル(LO)信号の位相誤差の影響を受けにくくなる。

【0099】
図17には位相誤差即ち、I/Q chローカル(LO)信号間の90度位相差からのずれがある場合の、I/QSW信号の発生過程を示している。

【0100】
位相誤差Φにより時間的に少しシフトしているが、図16と同様なスイッチ波形I/QSW+、I/QSW-が得られ、位相誤差がゼロのときと同様なミキサ動作をもたらすことが理解できる。

【0101】
さらに、図15に示したI/QSW制御信号発生回路と等価な回路は、トランジスタレベルでは図18の回路でも実現できる。

【0102】
図18において、破線で囲んだ部分は、2個の全波整流回路と電圧比較器の機能を行うことができる。トランジスタM31とM32の共通なソース端子には全波整流波形が発生する。M33とM34のソース端子も同様である。

【0103】
これらのソースが電流源404で共通化されていることにより、電圧レベルが高い方の全波整流波形のみが有効となり他方の回路はオフ状態となる。仮にIchローカル信号LOIがQchローカル信号LOQより高いレベルにあると、トランジスタM31とM32が有効になり、トランジスタM33とM34はオフ状態になる。

【0104】
したがって、左の負荷抵抗RLには、全ての電流が流れて、電圧レベルが下がる。この信号をインバータ1段(または奇数段)分通すことによりハイレベルの信号が得られる。一方、右側の負荷抵抗RLには電流が流れないので、電源レベルVDDが出力される。ここでインバータ1段を付加することでローレベルの信号が得られる。

【0105】
以上述べたように図6Aの本発明の実施例において、I/Qchローカル(LO)信号に位相誤差があっても、その誤差を補償して高精度な複素型直交変調器を実現可能である。また、図6Bの複素型直交復調器においても、同様の直交ミキサを有して複素型直交変調器と相対的な構成であるので、I/Qchローカル(LO)信号に位相誤差があっても、その誤差を補償して高精度な複素型直交復調器を実現可能である。

【0106】
次に回路シミュレーションにより本発明に従う複素型直交変調器における位相誤差の補償効果を検証する。評価が容易であるので、ベースバンド信号として、Ichに、

【0107】
【数12】
JP0005574293B2_000013t.gif
の余弦波、Qchに、

【0108】
【数13】
JP0005574293B2_000014t.gif
の正弦波を入力するSSB (Single Sideband)変調を用いサイドバンド抑圧比を評価尺度とする。

【0109】
SSB変調ではローカル(LO)信号の位相誤差、振幅誤差がゼロであれば、図6Aの直交変調器の同相出力には

【0110】
【数14】
JP0005574293B2_000015t.gif
というUSB (Upper Sideband)信号のみが生成される。しかし、位相誤差φ (rad)、振幅誤差δ(振幅比のアンバランスを1+δとする)が存在すると、不要なLSB (Lower Sideband)成分である

【0111】
【数15】
JP0005574293B2_000016t.gif
がサイドバンド信号として発生する。USB成分とLSB成分の振幅比がサイドバンド抑圧比(SRR: Sideband Rejection Ratio)であり、

【0112】
【数16】
JP0005574293B2_000017t.gif
と定式化できる。(非特許文献2)
図19は、縦軸にSRR[dB]値、横軸に位相誤差[deg]を採り、ベースバンド信号BBを10MHz、ローカル(LO)信号の周波数を190MHzとする時の、位相誤差とSRR値の関係をプロットしたシミュレーション値のグラフである。

【0113】
図19から一般的な経験値に基づき位相誤差3度、振幅誤差0.1dBとするときのシミュレーション値を求めると、SRRのシミュレーション値は43.8dBであり、一方(1)式から求めた従来例の理論値は31.5dBとなり、本発明構成による位相誤差補償によって12.3dBの改善効果がみられ、ノイズを低減することが可能である。

【0114】
一方、(1)式で位相誤差をゼロとし、振幅誤差0.1dBのみを入力すると、SRR=44.4dBとなるので、振幅誤差の補償効果はないことがわかる。

【0115】
[振幅誤差に基づく不要イメージ信号の抑圧]
上記実施例説明では、直交ミキサに関し、I/Qchローカル信号の位相誤差の補償について説明したが、高精度化に際しては、位相誤差に加え、I/Qchローカル信号間の振幅誤差の影響も考慮する必要がある。

【0116】
すなわち、複素信号で見ると本来のローカル(LO)信号は、

【0117】
【数17】
JP0005574293B2_000018t.gif
の正周波数のみであるが、ローカル(LO)信号に位相誤差や振幅誤差が存在する場合、

【0118】
【数18】
JP0005574293B2_000019t.gif
の負周波数成分が発生する。

【0119】
図20は、かかる負周波数側に不要なイメージ信号が発生して、不要サイドバンドにつながる状態を説明する図である。希望波(図20(a))に対し、正周波数側に周波数変換された希望波DSが得られるとともに、負周波数側に不要なイメージ信号ISが、発生している(図20(b))。

【0120】
そこで、実施例として正と負の周波数領域で伝達特性の異なる複素フィルタを、図6Aの直交変調器出力に付加することで更なる高精度化が実現できる。

【0121】
図21にイメージ信号ISの存在する負周波数成分のみを抑圧するフィルタの特性を示す。フィルタ出力では不要なイメージ成分が抑圧されるので、不要サイドバンドが抑圧できる。したがって、振幅誤差によって生じた不要サイドバンドを抑圧できる。

【0122】
図22は、このような図21に示すフィルタの特性を示すポリフェーズ・フィルタを示す図である。図示されるようにポリフェーズ・フィルタは、抵抗及び容量(RC)素子の組を縦続して構成されるパッシブ型のフィルタである。直交する差動RF信号である(RF-I+, RF-I-)と(RF-Q+, RF-Q-)を入力とし、不要波が抑圧された直交する差動RF信号を発生させる。

【0123】
[ポリフェーズ・フィルタ]
ポリフェーズ・フィルタは、

【0124】
【数19】
JP0005574293B2_000020t.gif
の周波数で最大の抑圧が得られるが、集積回路素子(IC)ではRC時定数のばらつきが10~20%と非常に大きい。そこで、通常は異なる時定数を持つ回路を多段化することで、素子ばらつきに対応させている。図22に示すポリフェーズ・フィルタは、3段構成である。

【0125】
図12に示した直交ミキサを用いた複素型直交変調器と、1段のポリフェーズ・フィルタを用いたSRRのシミュレーション結果を図23A,図23Bに示す。図23Aは、上記ポリフェーズ・フィルタを付加しない場合であり、図23Bは、1段のポリフェーズ・フィルタを従続した場合である。

【0126】
図23A,図23Bにおいて、縦軸にSRR[dB]値、横軸に位相誤差[deg]を採り、ベースバンド周波数を10MHz,ローカル(LO)信号周波数を190MHzとした時の、実測値(実線)と理論値(波線)を比較したグラフである。

【0127】
図23Aと図23Bの比較により、ポリフェーズ・フィルタの効果により、20dB以上(振幅比で10倍以上)の大幅なサイドバンド抑圧比SRRの改善が得られていることが理解できる。

【0128】
ここで、ポリフェーズ・フィルタは、先に図6Bに示した複素型直交復調器において、無線周波数(RF)信号を同相成分のIch信号RF-I及び直交成分のQch信号RF-Qに変換するための、90度位相シフタ回路50として構成することができる。

【0129】
図24は、かかる90度位相シフタ回路50をポリフェーズ・フィルタにより構成した実施例である。

【0130】
入力RF信号を差動信号として、3段のポリフェーズ構成により、所定の段数のキャパシタにより90度ずつ位相回転して直交するIch信号RF-Iと、Qch信号RF-Qに振り分けることができる。

【0131】
[複素バンドパス・フィルタの使用]
ここで、上記したポリフェーズ・フィルタに代え、希望周波数成分のみを通過させる複素バンドパス・フィルタを適用することが可能である。

【0132】
図25に、複素バンドパス・フィルタの具体的な構成例を示す。

【0133】
差動アンプ500(501)と入力抵抗510(511)、帰還容量・抵抗520(521)によりローパス・フィルタが形成される。一方、IchとQchを結ぶ4個の抵抗512により、ローパス・フィルタの周波数特性を正周波数方向にシフトさせ、アクティブ型の複素バンドパス・フィルタとしている。(非特許文献2)
図26にかかる複素バンドパス・フィルタの効果を示す。イメージ成分の周波数(-fim)では、減衰特性となり、上記したポリフェーズ・フィルタを従続する場合と同様に、振幅誤差の影響を改善できる。

【0134】
さらに、回路から発生する広帯域な雑音の帯域も制限するのでS/N比の改善も期待できる。
【符号の説明】
【0135】
100(100A),200(200A) 直交ミキサ
101(102),201(202) 乗算器
300(300A) 減算器
301(301A) 加算器
M1~M14, M21~M24 トランジスタ
40,40A 電流源
400,401 全波整流回路
403 コンパレータ
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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