TOP > 国内特許検索 > 有機光触媒を用いた水の電気分解方法 > 明細書

明細書 :有機光触媒を用いた水の電気分解方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3995051号 (P3995051)
登録日 平成19年8月10日(2007.8.10)
発行日 平成19年10月24日(2007.10.24)
発明の名称または考案の名称 有機光触媒を用いた水の電気分解方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
C01B  13/02        (2006.01)
C01B   3/02        (2006.01)
C25B   1/06        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B  11/12        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
C01B 13/02 Z
C01B 3/02 Z
C25B 1/06
C25B 11/06 Z
C25B 11/12
請求項の数または発明の数 21
全頁数 25
出願番号 特願2005-516568 (P2005-516568)
出願日 平成16年12月17日(2004.12.17)
国際出願番号 PCT/JP2004/018886
国際公開番号 WO2005/063393
国際公開日 平成17年7月14日(2005.7.14)
優先権出願番号 2003433623
優先日 平成15年12月26日(2003.12.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年11月8日(2005.11.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000046
【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
発明者または考案者 【氏名】長井 圭治
【氏名】阿部 敏之
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100115484、【弁理士】、【氏名又は名称】林 雅仁
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開2001-286749(JP,A)
特開平04-063113(JP,A)
阿部敏之 他,レーザー核融合ターゲット用有機材料の電子特性,レーザー核融合研究センター 平成14年度 共同研究成果報告書,2003年 3月,pp.157,158
阿部敏之 他,レーザー核融合ターゲット用有機材料の電子特性,レーザー核融合研究センター 平成13年度 共同研究成果報告書,2002年 3月,PP.159,160
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/02, 13/02
C25B 1/02 - 1/12
C25B 11/00 - 11/20
特許請求の範囲 【請求項1】
フタロシアニン誘導体からなるp型有機半導体と、フラーレン類及びペリレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のn型有機半導体とを含む有機光触媒からなる水の電気分解用電極材料。
【請求項2】
フラーレン類がC60C70C76C82、及びC84からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水の電気分解用電極材料。
【請求項3】
ペリレン誘導体が、下記式(4A)~(4C):
【化1】
JP0003995051B1_000007t.gif
(式中、R1は、アルキル基又はアリール基を示す)
で表されるペリレン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水の電気分解用電極材料。
【請求項4】
フタロシアニン誘導体が、下記式(1A)又は(1B):
【化2】
JP0003995051B1_000008t.gif
(式中、M1は、周期律表414族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるフタロシアニン誘導体である請求項1、2又は3に記載の水の電気分解用電極材料。
【請求項5】
p型有機半導体がフタロシアニン又はコバルトフタロシアニンであり、n型有機半導体がC60又は3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾールである請求項1~4のいずれかに記載の水の電気分解用電極材料。
【請求項6】
電極基材の表面に請求項1~5のいずれかに記載の水の電気分解用電極材料を被覆してなる水の電気分解用電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電極であって、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層を被覆してなり、必要に応じ、第2層の上に遷移金属触媒を担持してなる水の電気分解用アノード電極。
【請求項8】
請求項6に記載の電極であって、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層を被覆してなり、必要に応じ、第2層の上に遷移金属触媒を担持してなる水の電気分解用カソード電極。
【請求項9】
電極基材が、導電性透明ガラス基材、金属基材、又は炭素系基材である請求項6に記載の水の電気分解用電極。
【請求項10】
請求項7に記載のアノード電極と請求項8に記載のカソード電極とからなる電極、定電位電源、電解質水溶液、及び光源を備えた水の電気分解装置。
【請求項11】
前記アノード電極及び前記カソード電極が定電位電源に接続され、前記アノード電極及び前記カソード電極が電解質水溶液に浸漬されてなる請求項10に記載の水の電気分解装置。
【請求項12】
請求項11に記載の水の電気分解装置において、電極に光を照射しながら、定電位電源でアノード電極及びカソード電極に電圧を印加することを特徴とする水の電気分解方法。
【請求項13】
印加電圧が、0.3~1.2Vである請求項12に記載の水の電気分解方法。
【請求項14】
カソード電極と請求項7に記載のアノード電極とからなる電極、又はアノード電極と請求項8に記載のカソード電極とからなる電極、定電位電源、電解質水溶液、及び光源を備えた水の電気分解装置。
【請求項15】
前記アノード電極及び前記カソード電極が定電位電源に接続され、前記アノード電極及び前記カソード電極が電解質水溶液に浸漬されてなる請求項14に記載の水の電気分解装置。
【請求項16】
請求項15に記載の水の電気分解装置において、電極に光を照射しながら、定電位電源でアノード電極及びカソード電極に電圧を印加することを特徴とする水の電気分解方法。
【請求項17】
印加電圧が、1.0~1.4Vである請求項16に記載の水の電気分解方法。
【請求項18】
照射光が自然光である請求項12又は16に記載の水の電気分解方法。
【請求項19】
アノード電極から酸素を発生し、カソード電極から水素を発生することを特徴とする請求項12又は16に記載の水の電気分解方法。
【請求項20】
n型有機半導体からなる第1層の厚さが200~800nmであり、p型有機半導体からなる第2層の厚さが20~500nmである請求項7に記載の水の電気分解用アノード電極。
【請求項21】
p型有機半導体からなる第1層の厚さが20~500nmであり、n型有機半導体からなる第2層の厚さが200~800nmである請求項8に記載の水の電気分解用カソード電極。
発明の詳細な説明

(自然光照射時の酸素発生過程)
電極基材/PV/CoPcを光アノード極(作用極)、白金線を対極、銀/塩化銀電極を参照極として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いて、図2のような三極セルを構成した。自然光照射下、印加電位+0.4Vで電気分解を行ったところ、酸素が約1.5μl/h,水素が約3.5μl/h発生した。具体的な操作手順を以下に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光、特に可視光により活性化される有機光触媒を電極材料に用いて、光照射下、水を水素と酸素に効率的に電気分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて水分子を水素と酸素に分解することは、潜在的な太陽エネルギーの変換や貯蔵システムとして大いに注目されてきており、中でも、可視光照射下で水を分解することができる光触媒の開発は、近年大きな話題となっている。
【0003】
そして、二酸化炭素の発生を伴わずに水素発生を行なうことは、炭素循環に代わる水素循環型エネルギー社会を構築するうえでも必需な技術である。
【0004】
従来のアルカリ水電気分解装置は、約60~80℃以上と高温下で、1.7~2.0Vと高い印加電圧を要する条件で実用化されている(非特許文献1を参照)。つまり、水の電気分解には、過剰の熱エネルギーの投入と、理論電圧1.23Vに対してさらに約0.5~0.8Vの過電圧が必要とされているのである。
【0005】
しかし、これでは、エネルギーの有効利用や穏和な条件での水の電気分解という観点からは、大いに改善の余地がある。しかも、通常の水の電気分解では、その駆動力である電気は大量の二酸化炭素を排出しながら発電されるものであり、エネルギー効率、環境破壊、地球温暖化等の観点からも問題を有している。
【0006】
これらの問題点を解決するため、自然エネルギー(例えば、光エネルギー)を積極的に利用する試みがなされてきている。例えば、非特許文献2には、光エネルギーを用いた無機半導体光触媒による水の分解反応が報告されている。
【0007】
しかし、該光触媒は、紫外光或いは近紫外域の可視光を利用できる酸化チタン、その複合物、酸化タングステンなどの数種類にすぎず(非特許文献3等)、可視光領域の全域に渡る光を利用できる光触媒は知られていない。
【0008】
また、これまで水の分解反応に用いられる光触媒は、無機光触媒がほとんどであり、有機光触媒、特に、水素と酸素の両方を発生させることができ、かつ、水の電気分解に不可欠な水中使用できる有機光触媒は報告例はなかった(非特許文献4)。
【0009】
また、金属錯体等の水の酸化触媒と増感剤とを複合化させた水の光酸化触媒が検討されているが、光照射下における触媒活性は著しく低く、光エネルギーの有効利用にはほど遠いものであった(特許文献1を参照)。
【0010】
さらに、非特許文献5には、アントラセン等の有機半導体を用いた単層系電極が記載されているが、充分な光電流は得られておらず、しかもこの有機材料では性能の良い光電池を組んで化学エネルギーを取り出すのに使うことは無理であることが記載されている。

【特許文献1】特開平9-234374号公報
【非特許文献1】電気化学と工業物理化学4月号、p278-282,2003年
【非特許文献2】Nature,414,pp.625-627(2001)
【非特許文献3】Chem.Commun.,150(1992)
【非特許文献4】J.Chem.Soc.Faraday Trans.,93,221(1997)
【非特許文献5】化学総説No.45機能性有機薄膜昭和59年11月25日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、紫外及び可視領域の光を利用できる有機光触媒を電極材料に用いて、光照射下で水を電気分解することにより、水素と酸素を効率的に製造する方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を行った結果、特定のp型有機半導体と特定のn型有機半導体からなる有機光触媒に、紫外光乃至可視光を照射すると、単方向性の光誘起電子移動(unidirectional photo-induced electron transfer)を経て光触媒的な酸化還元反応が生じることを見出した。また、紫外光乃至可視光の照射下で、該有機光触媒を電極材料に用いた電極を用いて水の電気分解を行ったところ、より穏和な条件で電気分解が可能であることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき、さらに発展させて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の有機光触媒、水の電気分解用電極材料、該電極材料で被覆されてなる電極、該電極を用いた水の電気分解方法、及び水の電気分解装置等を提供する。
【0014】
項1.p型有機半導体とn型有機半導体とを含む有機光触媒からなる水の電気分解用電極材料。
【0015】
項2.p型有機半導体が大環状の配位子化合物又はその金属錯体である項1に記載の水の電気分解用電極材料。
【0016】
項3.p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、及びポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の水の電気分解用電極材料。
【0017】
項4.n型有機半導体が多環式芳香族化合物である項1、2又は3に記載の水の電気分解用電極材料。
【0018】
項5.n型有機半導体が、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、電子供与体をドープした導電性高分子、ペリレン誘導体、及びナフタレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1~4のいずれかに記載の水の電気分解用電極材料。
【0019】
項6.電極基材の表面に項1~5のいずれかに記載の水の電気分解用電極材料を被覆してなる電極。
【0020】
項7.項6に記載の電極であって、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層を被覆してなり、必要に応じ、第2層の上に遷移金属触媒を担持してなるアノード電極。
【0021】
項8.項6に記載の電極であって、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層を被覆してなり、必要に応じ、第2層の上に遷移金属触媒を担持してなるカソード電極。
【0022】
項9.電極基材が、導電性透明ガラス基材、金属基材、又は炭素系基材である項6に記載の電極。
【0023】
項10.項7に記載のアノード電極と項8に記載のカソード電極とからなる電極、定電位電源、電解質水溶液、及び光源を備えた水の電気分解装置。
【0024】
項11.前記アノード電極及び前記カソード電極が定電位電源に接続され、前記アノード電極及び前記カソード電極が電解質水溶液に浸漬されてなる項10に記載の水の電気分解装置。
【0025】
項12.項11に記載の水の電気分解装置において、電極に光を照射しながら、定電位電源でアノード電極及びカソード電極に電圧を印加することを特徴とする水の電気分解方法。
【0026】
項13.印加電圧が、0.3~1.2V程度である項12に記載の水の電気分解方法。
【0027】
項14.項7に記載のアノード電極とカソード電極とからなる電極、又は項8に記載のカソード電極とアノード電極とからなる電極、定電位電源、電解質水溶液、及び光源を備えた水の電気分解装置。
【0028】
項15.前記アノード電極及び前記カソード電極が定電位電源に接続され、前記アノード電極及び前記カソード電極が電解質水溶液に浸漬されてなる項14に記載の水の電気分解装置。
【0029】
項16.項15に記載の水の電気分解装置において、電極に光を照射しながら、定電位電源でアノード電極及びカソード電極に電圧を印加することを特徴とする水の電気分解方法。
【0030】
項17.印加電圧が、1.0~1.4V程度である項16に記載の水の電気分解方法。
【0031】
項18.照射光75自然光である項12又は16に記載の水の電気分解方法。
【0032】
項19.アノード電極から酸素を発生し、カソード電極から水素を発生することを特徴とする項12又は16に記載の水の電気分解方法。
【0033】
項20.p型有機半導体とn型有機半導体とを含む有機光触媒。
項21.p型有機半導体が大環状の配位子化合物又はその金属錯体である項20に記載の有機光触媒。
【0034】
項22.p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、及びポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項20に記載の有機光触媒。
【0035】
項23.n型有機半導体が多環式芳香族化合物である項20に記載の有機光触媒。
【0036】
項24.n型有機半導体が、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、電子供与体をドープした導電性高分子、ペリレン誘導体、及びナフタレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項20に記載の有機光触媒。
【0037】
以下、本発明について詳細に説明する。
I.有機光触媒
本発明の有機光触媒は、p型有機半導体とn型有機半導体とを含んでなり、また、水を含む媒体中で安定であることから、後述する水の電気分解の電極材料として好適に用いられる。
【0038】
p型有機半導体
p型有機半導体としては、大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられる。大環状の配位子化合物とは、不対電子を有する原子を環上に含む金属の配位子となり得る環状化合物の意であり、また、その金属錯体とは、該大環状配位子と金属原子からなる金属錯体の意味である。不対電子を有する原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子が挙げられ、窒素原子が好ましい。金属原子としては、周期律表1~15族の各金属元素が挙げられ、好ましくは4~14族の金属元素である。また、金属錯体は、通常、該金属原子と大環状の配位子化合物とが1:1(モル比)からなり、平面4配位の錯体を形成するものであればよい。
【0039】
大環状の配位子化合物又はその金属錯体の具体例としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられる。
【0040】
フタロシアニン誘導体とは、フタロシアニンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(1A)又は(1B):
【0041】
【化1】
JP0003995051B1_000002t.gif

【0042】
(式中、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0043】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、4族(特に、Ti)、5族(特に、V)、6族(特に、Mo)、7族(特に、Mn)、8族(Pe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)、13族(特に、Al)、14族(特に、Pb)が挙げられる。また、該金属原子を含む原子団としては、該金属に他の配位子(例えば、酸素、シアノ基)が配位したもの(例えば、Ti-O)を意味する。
【0044】
上記のうち、式(1A)で表されるフタロシアニン、又は式(1B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRuであるフタロシアニン誘導体が好ましく、特に水の電気分解における酸素の発生量の点からコバルトフタロシアニンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0045】
ナフタロシアニン誘導体とは、ナフタロシアニンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(2A)又は(2B):
【0046】
【化2】
JP0003995051B1_000003t.gif

【0047】
(式中、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるナフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0048】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、4族(特に、Ti)、5族(特に、V)、6族(特に、Mo)、7族(特に、Mn)、8族(Pe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)、13族(特に、Al)、14族(特に、Pb)が挙げられる。また、該金属原子を含む原子団としては、該金属に他の配位子(例えば、酸素、シアノ基)が配位したもの(例えば、Ti-O)を意味する。
【0049】
上記のうち、式(2A)表されるナフタロシアニン、又は式(2B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRuであるナフタロシアニン誘導体が好ましく、特に水の電気分解における酸素の発生量の点からコバルトナフタロシアニンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0050】
ポルフィリン誘導体とは、ポルフィリンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(3A)又は(3B):
【0051】
【化3】
JP0003995051B1_000004t.gif

【0052】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるポルフィリン誘導体が挙げられる。
【0053】
ここで、上記のRで示されるアルキル基としては、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくはC1-10のアルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0054】
また、上記のRで示されるアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0055】
また、上記のRで示されるヘテロアリール基としては、ピリジル、ピラジニル等が挙げられる。
【0056】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、4族(特に、Ti)、5族(特に、V)、6族(特に、Mo)、7族(特に、Mn)、8族(Fe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)、13族(特に、Al)、14族(特に、Pb)が挙げられる。また、該金属原子を含む原子団としては、該金属に他の配位子(例えば、酸素、シアノ基)が配位したもの(例えば、Ti-O)を意味する。
【0057】
上記のうち、式(3A)で表されるポルフィリン、又は式(3B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRu、Rがフェニル又は水素原子であるポルフィリン誘導体が好ましく、特に水の電気分解における酸素の発生量の点からコバルトポルフィリンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0058】
n型有機半導体
また、n型有機半導体としては、多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられる。多環式芳香族化合物とは、少なくとも2個以上の芳香環が縮環した構造を有する化合物、或いは複数の芳香環が不飽和結合(二重結合、三重結合等)を介して結合した構造を有する化合物等を意味する。芳香環としては、ベンゼン環等のほかに、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノキサリン環等の複素芳香環も含まれる(いずれの環も一部が飽和していても良い)。
【0059】
多環式芳香族化合物には、本発明に悪影響を与えない範囲で、種々の置換基を有していても良い。置換基としては、電子吸引基が挙げられ、具体的にはカルボニル基、スルホン基、スルホキシド基等が挙げられる。
【0060】
多環式芳香族化合物の具体例としては、C60、C70、C76、C82、C84などのフラーレン類;カーボンナノチューブ類;電子供与体(フェニレンジアミン、テトラアミノエチレン、トリス(2,2-ビピリジン)ルテニウムなど)をドープした導電性高分子(ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール等);ペリレン誘導体;ナフタレン誘導体等が挙げられる。中でも、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体、フラーレン類(C60等)等が好ましく採用され、特にペリレン誘導体やフラーレン類(C60等)が好ましい。
【0061】
ペリレン誘導体とは、ペリレンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(4A)~(4C):
【0062】
【化4】
JP0003995051B1_000005t.gif

【0063】
(式中、Rは、アルキル基又はアリール基を示す)
で表されるペリレン誘導体が挙げられる。
【0064】
ナフタレン誘導体とは、ナフタレンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(5A):
【0065】
【化5】
JP0003995051B1_000006t.gif

【0066】
(式中、Rは、アルキル基又はアリール基を示す)
で表されるナフタレン誘導体が挙げられる。
【0067】
ここで、上記のR又はRで示されるアルキル基としては、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくはC1-10のアルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0068】
また、上記のR又はRで示されるアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0069】
本発明の有機光触媒における、p型有機半導体とn型有機半導体の接合形態は特に限定はないが、両者の接触面積が増大するように接合させることが好ましい。例えば、フィルム状のp型有機半導体とn型有機半導体を接合させたり、いずれかの有機半導体膜に他方の有機半導体成分をコートして製造された層(膜)構造を有するものでも良い。
II.水の電気分解
本発明の水の電気分解方法は、p型有機半導体とn型有機半導体とからなる有機光触媒で被覆された電極に、光を照射しながら電圧を印加することにより、水を水素と酸素に効率的に電気分解することを特徴とする。模式図を図1に示す。
【0070】
電極
本発明の水の電気分解に用いられる電極は、電極基材表面が有機光触媒で被覆されている。
【0071】
電極基材としては、導電性透明ガラス基材、金属基材、炭素系基材等が挙げられる。具体的には、例えば、インジウム-スズオキシド(ITO)等で被覆された導電性透明ガラス基材;白金等の金属基材;グラファイト、ダイヤモンド、グラッシーカーボン等の炭素系基材等が挙げられる。電極基材の抵抗値は、例えば、5~100Ω/cm、好ましくは8~20Ω/cmのものが用いられる。また、電極基材の形状は種々の形状を採用することができるが、電気分解や光照射の効率を上げる電極表面の大きい平板状、基板状のものが好ましい。
【0072】
この電極基材を覆う有機光触媒は、特定のp型有機半導体と特定のn型有機半導体から構成される。
【0073】
本発明の電極に用いられるp型有機半導体としては、光照射時における水の電気分解において酸素を効率よく発生しうる酸素発生触媒として活性の高いものが用いられる。このp型有機半導体としては、上述した大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられ、好ましくは、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体が挙げられる。より好ましくは、式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)で表される化合物が好ましい。特に、式(1B)においてMがCoで示されるフタロシアニンの金属錯体(コバルトフタロシアニン)が好ましい。上記のp型有機半導体は、市販品として入手可能か、或いは当業者が容易に製造できるものである。
【0074】
本発明の電極に用いられるn型有機半導体としては、光照射時における水の電気分解において効率的な水素の発生が可能であり、かつ上記のp型有機半導体との間において良好なp-n接合の関係を有しているものが用いられる。このn型有機半導体としては、上述した多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられ、好ましくは、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体又はフラーレン類が挙げられる。より好ましくは、式(4A)、(4B)、(4C)、(5A)で表される化合物が好ましい。特に、効率的なキャリア生成の点から、式(4A)で示されるペリレン誘導体(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール)又はフラーレン類(C60等)が好適に用いられる。上記のn型有機半導体は、市販品として入手可能か、或いは当業者が容易に製造できるものである。
【0075】
これらのn型有機半導体及びp型有機半導体を組み合わせた有機光触媒を、電極基材に被覆することにより本発明の電極が形成される。具体的な電極の構成は、次に示す通りである。
【0076】
アノード電極(陽極)は、電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層(膜)を有し、その上にp型有機半導体からなる第2層(膜)を有している。第1層は、電極を被覆する通常200~800nm程度(好ましくは250~650nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層は、第1層を被覆する通常20~500nm程度(好ましくは30~350nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層は250~650nm程度、第2層は30~350nm程度がより好ましい。
【0077】
また、アノード電極は、上記の電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層(膜)及びp型有機半導体からなる第2層(膜)に加えて、さらに第2層の上に遷移金属触媒(例えば、Ni,Pd,Pt,Ir触媒等、好ましくはPt又はIr触媒)を担持したものであってもよい。第2層上に担持される遷移金属触媒は、第2層を完全に被覆する必要はなく分散担持されていればよい。例えば、遷移金属触媒は、その平均粒径が5~800nm程度(好ましくは10~100nm程度)の微粒子状態で第2層上に担持される。
【0078】
このような構成を採用する該アノード電極は、効率的な酸素発生極となる。アノード電極では、光(特に可視光)で励起された電子が、n型有機半導体内を電極基材方向に流れ、また光励起により生じた正孔はp型有機半導体内を電解液方向に流れる。p型有機半導体と電解液との界面では、水(もしくは水酸化物イオン)が正孔により酸化されて酸素を発生する(例えば、図1を参照)。
【0079】
これまで、光触媒を用いた光(可視光)照射による水の電気分解では、酸素の発生量は極めて低かったが、本発明の電極を用いる電気分解方法によれば効率的に酸素を発生させることができる。この点は、例えば、実施例の記載から容易に理解できる。
【0080】
また、背景技術でも述べた特許文献1(特開平9-234374号公報)に記載の水の光酸化触媒と比しても、単位触媒量当たりの酸素の発生量(酸素発生効率)は格段に増加している。
【0081】
一方、カソード電極(陰極)は、電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層(膜)を有し、その上にn型有機半導体からなる第2層(膜)を有している。第1層は、電極を被覆する通常20~500nm程度(好ましくは30~350nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層は、第1層を被覆する通常200~800nm程度(好ましくは250~650nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層は30~350nm程度、第2層は250~650nm程度がより好ましい。
【0082】
また、カソード電極は、上記の電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層(膜)及びn型有機半導体からなる第2層(膜)に加えて、さらに第2層の上に遷移金属触媒(例えば、Ni,Pd,Pt,Ir触媒等、好ましくはPt又はIr触媒)を担持したものであってもよい。第2層上に担持される遷移金属触媒は、第2層を完全に被覆する必要はなく分散担持されていればよい。例えば、遷移金属触媒は、その平均粒径が5~800nm程度(好ましくは10~100nm程度)の微粒子状態で第2層上に担持される。
【0083】
このような構成を採用する該カソード電極は、効率的な水素発生極となる。カソード電極では、光(特に可視光)で励起された電子が、n型有機半導体内を電解液方向に流れ、また光励起により生じた正孔はp型有機半導体内を電極基材方向に流れる。n型有機半導体と電解液との界面では、水(もしくはプロトン)が電子を受けて還元されて水素を発生する(例えば、図1を参照)。
【0084】
各電極基材をn型有機半導体及びp型有機半導体で被覆する方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電気化学的被覆(電析)、溶液より被覆等の方法が挙げられる。中でも、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体系に関しては、均一な被覆膜が得られる点から、真空蒸着法が好ましい。各電極を被覆する各有機半導体の膜厚は、前述した範囲に適宜設定することが好ましい。
【0085】
具体的には、アノード電極は、導電性透明ガラス基板にn型有機半導体を真空蒸着してn型有機半導体層(第1層)を形成し、その上にp型有機半導体を真空蒸着してp型有機半導体層(第2層)を形成すればよい。一方、カソード電極は、導電性透明ガラス基板にp型有機半導体を真空蒸着してp型有機半導体層(第1層)を形成し、その上にn型有機半導体を真空蒸着してn型有機半導体層(第2層)を形成すればよい。
【0086】
さらに、各電極の第2層上に遷移金属触媒を担持する場合、その方法は、電解析出法(電気化学的還元)等の公知の方法を採用できる。例えば、白金担持に関しては、硫酸やリン酸などを含む水溶液に、KPtCl、KPtCl、HPtClなどの白金塩を加えて、カソード条件で白金を担持する方法が挙げられる。適用するカソード条件としては、印加電圧が0~-0.2V(vs.Ag/AgCl)程度であることが好ましい。酸の濃度は、通常1mM~10mM程度であり、白金塩の濃度は、通常0.1mM~1mM程度であることが好ましい。
【0087】
かくして本発明の有機光触媒で被覆された電極が製造される。本発明の電極を用いることにより、光(特に可視光波長の全領域の光)を利用して、理論電圧より小さいセル電圧で水の電気分解が可能となり、水素及び酸素を効率的に発生させることが可能となる。しかも、本発明の有機光触媒を用いた電極は、水の電気分解の条件下でも、電極自身が酸化等により分解することなく安定であるという特徴を有している。
【0088】
なお、本発明の水の電気分解では、上記した有機光触媒を含むカソード電極及び/又はアノード電極を用いる。
【0089】
例えば、(a)電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層を有するカソード電極と、電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層を有するアノード電極の組合せ、(b)電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層、n型有機半導体からなる第2層及び遷移金属触媒を有するカソード電極と、電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層を有するアノード電極の組合せ、(c)電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層を有するカソード電極と、電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層、p型有機半導体からなる第2層及び遷移金属触媒を有するアノード電極の組合せ、(d)電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層、n型有機半導体からなる第2層及び遷移金属触媒を有するカソード電極と、電極基材の表面にn型有機半導体からなる第1層、p型有機半導体からなる第2層及び遷移金属触媒を有するアノード電極の組合せ、が挙げられる。
【0090】
さらに、本発明の水の電気分解では、上記した有機光触媒を含むカソード電極又はアノード電極と、公知の電極(白金電極等)からなるアノード電極又はカソード電極を組み合わせたものであってもよい。すなわち、いずれか一方の電極として本発明の有機光触媒を含む電極とし、他方を公知の電極とするものであってもよい。
【0091】
この場合、一方の有機光触媒からなる電極のみが光を利用することになるため、太陽エネルギーの利用効率は低くなるが、理論電圧より小さいセル電圧で水の電気分解は充分可能であり、水素及び酸素を効率的に発生させることができる。
【0092】
電解質水溶液
本発明の電気分解で用いられる電解質水溶液は、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。
【0093】
該酸性水溶液としては、リン酸や硫酸などの酸を含む水溶液が好ましい。特に好ましくは、リン酸水溶液である。該水溶液中の酸の濃度は、通常1mM~1M程度であればよい。例えば、上記のフラーレン類/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、酸水溶液が好ましく、そのpHは1~3程度が好ましい。
【0094】
該アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液中に、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の電解質を含むものが好ましい。特に好ましくは、アルカリ金属水酸化物水溶液である。該水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、通常1mM~1M程度であればよい。例えば、上記のペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、アルカリ金属水酸化物水溶液が好ましく、そのpHは10~11程度が好ましい。
【0095】
光源(光)
本発明で用いられる光は、広範な波長を有する光(波長220~800nm程度)を用いることができる。その光源としては、例えば、自然光(太陽光)、蛍光灯、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ブラックライト、エキシマレーザ、重水素ランプ、キセノンランプ、Hg-Zn-Pbランプ等から選ばれる1種類の光源または波長域の異なる2種類の光源を用いることができる。とりわけ、本発明では、n型有機半導体及びp型有機半導体からなる有機光触媒の特質から、自然光をほぼ全波長領域(波長300~800nm)に渡り電気分解に利用できる点で極めて実用的である。
【0096】
本発明の水の電気分解では、通常、有機光触媒を含むアノード電極及び/又は有機光触媒を含むカソード電極に、上記の光源から光を照射すればよい。いずれか一方の電極に、公知の電極(白金電極等)を用いた場合は、有機光触媒を含む電極に照射すればよい。
【0097】
電源及び印加電圧
本発明の水の電気分解で、有機光触媒を含むアノード電極及び有機光触媒を含むカソード電極を用い、その両電極に光を照射した場合は、電源の印加電圧は、0.3~1.2V程度(好ましくは0.8~1.1V程度)の低い電圧でよい。これは、本発明では上記のような有機光触媒を用いた電極を採用しているため、光照射により光誘起電圧が発生し、理論電圧と比べより低電圧の電源を用いることができるからである。つまり、光エネルギーを有効に利用することにより、電気分解に使用する消費電力を大きく低減することができる。
【0098】
また、一方の電極に有機光触媒を含む電極を用い、他方の電極に公知の電極(白金電極等)を用い、有機光触媒を含む電極に光照射する場合は、電源の印加電圧は、1.0~1.4V程度(好ましくは1.1~1.3V程度)の低い電圧でよい。この場合も、有機光触媒を含む電極における光エネルギーの利用により、印加電圧を低減し電気分解に使用する消費電力を大きく低減することができる。
【0099】
上記本発明の水の分解方法を採用することにより、太陽光エネルギーを有効に活用し、酸素及び水素を安全かつ効率的に発生させることが可能となる。また、本発明の水の電気分解は、常温下(例えば、0~40℃程度)で実施することができ、加温、加圧の必要がない点でも有利である。発生する水素は、燃料電池の燃料、現行の水素利用技術(例えば、石油精製、石油化学品製造、冶金など)などに有効に活用することが可能である。
III.水の電気分解装置
本発明の水の電気分解装置は、上述したアノード電極、カソード電極、電源(定電位電源)、電解質水溶液、及び光源を有している(例えば、図1を参照)。アノード電極、及びカソード電極は、電圧を印加するために電源に接続されており、また、各電極はその一部又は全部が電解質水溶液に浸漬されている。具体的な電気分解装置としては、一室型二極式セルを構成したものが例示される。
【0100】
アノード電極及びカソード電極は、上述したものが用いられる。また、電解質水溶液は、上述したものが用いられる。例えば、フラーレン類/フタロシアニン誘導体で被覆された電極の場合、そのpHは1~3程度が好ましく、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体で被覆された電極の場合、そのpHは10~11程度が好ましい。
【0101】
なお、有機光触媒を含む電極の性質に応じて、アノード電極及びカソード電極を浸漬する電解質溶液を異なるpHとしてもよい。その場合、アノード電極及びカソード電極の電解質溶液を隔てた塩橋を備えた反応セルが用いられる。例えば、実施例6の実施形態が例示される。具体的には、電解質溶液には、アノード電極(陽極)側の反応漕を水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどでpH~11に調整したアルカリ水とし、カソード電極(陰極)側の反応漕をリン酸または硫酸などでpH~2に調整した酸性水とし、両漕を塩橋でつないだ二極式セルが挙げられる。
【0102】
光源も上述したものが用いられるが、自然エネルギーの有効利用の観点から自然光を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0103】
本発明の水の電気分解方法によれば、紫外及び可視領域の光を利用できる有機光触媒を電極材料に用いて、光照射下、水を穏和な条件で効率的に水素と酸素に分解することができる。
【0104】
つまり、本発明は、自然エネルギー(太陽光エネルギー)を有効に利用し、二酸化炭素の排出を低減できるクリーンな水(水素イオンや水酸化イオンも含む)の電気分解方法を提供する。
【0105】
また、従来のアルカリ水電気分解装置では、高温(約60~80℃以上)、かつ1.7~2.0Vの電圧印加を要する条件で実用化されているが(理論電圧1.23Vに対してさらに約0.5~0.8Vの過電圧が必要)、本発明の有機光触媒を備えた電極の利用により、水素・酸素の化学量論的製造に要する熱エネルギーの投入が不要になるほか、理論電圧以下のセル電圧でも水の電解が可能となり、電気エネルギーの消費を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の有機光触媒を用いた水の電気分解方法の模式図である。
【図2】実施例1及び2と比較例1に関する光電気化学測定装置の概略図である。
【図3】実施例3及び4と比較例2及び3に関する光電気化学測定装置の概略図である。
【図4】実施例5に関する光電気化学測定装置の概略図である。
【図5】実施例6に関する光電気化学測定装置の概略図である。
【図6】実施例7に関する光電気化学測定装置の概略図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0107】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0108】
(ハロゲンランプ照射時の酸素発生過程)
電極基材/PV/CoPcを光アノード極(作用極)、白金線を対極、銀/塩化銀電極を参照極として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いて、図2のような三極セルを構成した。これを用いてハロゲンランプ照射下、印加電位+0.3Vで電気分解を行ったところ、酸素が約3~4μl/h発生した。具体的な操作手順を以下に示す。
【0109】
(1)有機光触媒材料として、n型半導体である3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール(以下「PV」と表記する)及びp型半導体であるコバルトフタロシアニン(以下「CoPc」と表記する)を用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0110】
(2)有機光触媒素子の作製は、真空蒸着法により行った。まず、インジウム-スズオキシド(ITO)で被覆された導電性透明ガラス基板(以下「ITO被覆ガラス基板」と表記する)(日本板硝子社製、抵抗13Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚110nm)上に、PVを250~650nmの厚さで、次いで、PV上にCoPcを30~350nmの厚さで積層した。
【0111】
(3)上記(2)で作製した有機光触媒素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0112】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を作用極、白金線を対極、銀/塩化銀電極(内部液は塩化カリウム飽和水溶液)を参照極として、一室型三極式セルを構成した。電解質溶液として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いた。
【0113】
(5)有機光触媒反応は、図2に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。
【0114】
(6)常温、常圧下、約+0.2V(vs.Ag/AgCl)付近より貴な電位領域で、水酸化物イオンの酸化に伴う光アノード電流が得られた。実際に、+0.3Vで定電位電解を行い、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析したところ、約3~4μl/h-1の酸素発生を確認した。
【0115】
2OH→1/2O+HO+2e
【実施例2】
【0116】
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるPV及びp型半導体であるCoPcを用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0117】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。まず、ITO被覆ガラス基板(日本板硝子社製、抵抗13Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚110nm)上に、PVを250~300nmの厚さで、次いで、PV上にCoPcを135~145nmの厚さで積層した。
【0118】
(3)上記(2)で作製した有機光触媒素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0119】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を作用極、白金線を対極、銀/塩化銀電極(内部液は塩化カリウム飽和水溶液)を参照極として、一室型三極式セルを構成した。電解質溶液として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどでpH~11に調整したアルカリ水を用いた。
【0120】
(5)有機光触媒反応は、図2に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用いた。光源としては、自然光を用いた。
【0121】
(6)真夏の晴天の日に、午前11時から午後2時までの計3時間、自然光を用いた光電気化学的水の分解に関する実験を行った。この時の最低光量は58mWcm-2、最高光量は64mWcm-2であり、平均光量は、約62mWcm-2であった。
【0122】
(7)水温約36℃、常圧下、+0.4Vのバイアス電位を印加した条件で、自然光照射下における光電気化学的水の分解を行った。反応生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析した結果、(有機光触媒電極(光アノード)における)酸化生成物として酸素が約1.5μlh-1、(白金対極(カソード)における)還元生成物として水素が約3.5μlh-1、それぞれ生じることを確認した。
【0123】
比較例1(暗時の酸素発生過程(参照データ))
実施例1及び2に関連して、暗時に働く酸素発生触媒を担持した電極を作製して、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水中での電気触媒化学的な酸素発生を行った。酸素発生触媒としては、その高い触媒活性が知られているIrOを用いた。具体的な操作手順を以下に示す。
【0124】
(1)約2.5mgのIrO(アルドリッチ社製)をITO被覆ガラス基板(1×1cm)(日本板硝子社製、抵抗13Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚110nm)上にコートした。コートしたIrOの剥離を抑制するために、0.05wt.%ナフィオン(デュポン社登録商標)のアルコール溶液を15μl塗布し室温風乾したもの(ナフィオンは成膜時30nm程度)を酸素発生実験に用いた。
【0125】
(2)図2に示した反応セル及び測定装置を用いて光源を使用せずに酸素発生実験を実施し、IrO電極上で、約+1.0V(vs.Ag/AgCl)より貴な電位領域で酸素発生に基づくアノード電流が得られた。実際に、+1.2Vで定電位電解を行い、実施例1(6)と同様に、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析したところ、約5~6μl/h-1の酸素発生を確認した。
【0126】
上記実施例1及び2と比較例1より、有機光触媒を含むアノード電極を採用する実施例1及び2では、自然光や可視光照射により光アノード電流が生じ、比較例1より低い(卑な)印加電位で酸素の発生が確認された。
【実施例3】
【0127】
(ハロゲンランプ照射時の水素発生過程)
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるPV及びp型半導体であるフタロシアニン(以下「HPc」と表記する)を用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0128】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。まず、ITO被覆ガラス基板(日本板硝子社製、抵抗10Ωcm-2)上にHPcを30~350nmの厚さで、次いでPVを250~650nmの厚さで、HPc上に積層した。さらに、白金黒微粒子を担持した。
【0129】
(3)上記(2)で作製した有機光触媒素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0130】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を作用極、白金線を対極、銀/塩化銀電極(内部液は塩化カリウム飽和水溶液)を参照極として、一室型三極式セルを構成した。電解質溶液として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いた。
【0131】
(5)有機光触媒反応は、図3に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。
【0132】
(6)常温、常圧下、約-0.7V(vs.Ag/AgCl)付近より卑な電位領域で、水素発生に伴う光カソード電流が得られた。生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析し、水素の生成を確認した。
【0133】
2HO+2e→2OH+H
比較例2(暗時の水素発生過程(参照データ))
実施例3に関連して、暗時に働く水素発生触媒を担持した電極を作製して、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水中で水素発生を行った。水素発生触媒としては高い活性の知られる白金黒を用いた。具体的な操作手順を以下に示す。
【0134】
(1)約0.3gを含むKPtCl水溶液を10ml調製し、約50mgの酢酸鉛を添加し、このKPtCl水溶液を用いて約50~100mAcm-2の条件で熱分解性グラファイト(basal-plane pyrolytic graphite)電極(約0.2cm)をカソード分極し、約3~4クーロン(C)通電して白金黒電極を得た。この白金黒電極を水洗後、水素発生実験に用いた。
【0135】
(2)図3に示した反応セル及び測定装置(但し光源を用いないで)を用いて水素発生実験を実施し、白金黒電極上で、約-0.9V(vs.Ag/AgCl)より卑な電位領域で水素発生に基づくカソード電流が得られた。実際に、-1.0Vで定電位電解を行い、実施例1(6)と同様に、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析したところ、約16μl/h-1の水素発生を確認した。また、多結晶白金板(1cm)を用いた場合も、同様の方法で水素が得られた。
【0136】
2HO+2e→H+2OH
上記実施例3及び比較例2より、有機光触媒を含むカソード電極を採用する実施例3では、可視光照射により光カソード電極が生じ、比較例2より高い(貴な)印加電位で水素の発生が確認された。
【実施例4】
【0137】
(ハロゲンランプ照射時の水素発生過程)
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるC60及びp型半導体であるHPcを用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0138】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。まず、ITO被覆ガラス基板(旭硝子社製、抵抗8Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚174nm)上にHPcを30~350nmの厚さで、次いでC60を100~200nmの厚さで、HPc上に積層した。さらに、白金黒微粒子を担持した。
【0139】
(3)上記(2)で作製した有機光触媒素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0140】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を作用極、白金線を対極、銀/塩化銀電極(内部液は塩化カリウム飽和水溶液)を参照極として、一室型三極式セルを構成した。電解質溶液として、リン酸または硫酸などでpH~2に調整した酸性水を用いた。
【0141】
(5)有機光触媒反応は、図3に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。
【0142】
(6)常温、常圧下、約+0.1V(vs.Ag/AgCl)付近より卑な電位領域で、水素発生に伴う光カソード電流が得られた。実際に、-0.1Vで定電位電解を行い、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析したところ、約10~15μl/h-1の水素発生を確認した。
【0143】
2H2e→H
比較例3(暗時の水素発生過程(参照データ))
実施例4に関連して、暗時に働く水素発生触媒を担持した電極を作製して、リン酸または硫酸などでpH~2に調整した酸性水中で水素発生を行った。水素発生触媒としては高い活性の知られる白金黒を用いた。具体的な操作手順を以下に示す。
【0144】
(1)約0.3gを含むKPtCl水溶液を10ml調製し、約50mgの酢酸鉛を添加し、このKPtCl水溶液を用いて+0.4V~-0.1V(vs.Ag/AgCl)の範囲で電位操作を繰り返す方法でITO被覆ガラス基板(旭硝子社製、抵抗8Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚174nm)電極(約1cm)をカソード分極し、約0.01~0.05クーロン(C)通電して白金黒電極を得た。この白金黒電極を水洗後、水素発生実験に用いた。
【0145】
(2)図3に示した反応セル及び測定装置(但し光源を用いないで)を用いて水素発生実験を実施し、白金黒電極上で、約-0.3V(vs.Ag/AgCl)より卑な電位領域で水素発生に基づくカソード電流が得られた。実際に、-0.4Vで定電位電解を行い、実施例1(6)と同様に、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)により分析したところ、約4μl/h-1の水素発生を確認した。また、多結晶白金板(1cm)を用いた場合も、同様の方法で水素が得られた。
【0146】
2H2e→H
上記実施例4及び比較例3より、有機光触媒を含むカソード電極を採用する実施例4では、可視光照射により光カソード電流が生じ、比較例3より高い(貴な)印加電位で水素の発生が確認された。
【実施例5】
【0147】
(有機光触媒電極を両極に用いた水の電気分解)
電極基材/PV/CoPcを光アノード電極(陽極)、電極基材/HPc/PV/白金触媒を光カソード電極(陰極)として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いて、図4のような二極セルを構成した。印加電圧0.9Vで電気分解を行ったところ酸素が約3.5μl/h、水素が約8.0μl/h発生した。具体的な操作手順を以下に示す。
【0148】
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるPV及びp型半導体であるCoPcまたはHPcを用いた。PV,HPc及びCoPcは、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0149】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。陽極に関しては、ITO被覆ガラス基板(日本板硝子社製、抵抗10Ωcm-2)上にPVを650nmの厚さで、次いで、PV上にCoPcを190nmの厚さで積層した。次いで1cm×1.5cmに切り出した。陰極に関しては、断面積1cm×1.5cmの熱分解性グラファイト上にHPcを190nmの厚さで、PVを650nmの厚さで積層し、更に白金黒を担持した。
【0150】
(3)上記(2)で作製した各電極の1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0151】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を両極として、一室型二極式セルを構成した。この場合、セルの構成上、参照極としての機能をも併せ持っている。電解質溶液として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどでpH~11に調整したアルカリ水を用いた。
【0152】
(5)有機光触媒反応は、図4に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。また、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)を用いて、解析した。
【0153】
(6)常温、常圧下、アノード電極及びカソード電極に上記の光源から光を照射し、印加電圧約0.9Vで電解を行ったところ、酸素が約3.5μlh-1、水素が約8μlh-1発生した。
【0154】
2OH→1/2O+HO+2e
上記実施例5より、有機光触媒を含むアノード電極及びカソード電極を採用する水の電気分解では、可視光照射により光誘起電極が生じ、理論電圧より低い印加電圧(0.9V)で水素と酸素の発生が確認された。
【実施例6】
【0155】
(有機光触媒電極を両極に用いた水の電気分解)
電極基材/PV/CoPcをアノード電極(陽極)、電極基材/HPc/C60をカソード電極(陰極)として、図5のような二極セルを構成した。印加電圧0.9Vで電気分解を行ったところ酸素が約3.0μl/h,水素が約6.0μl/h発生した。具体的な操作手順を以下に示す。
【0156】
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるPVまたはC60及びp型半導体であるCoPcまたはHPcを用いた。PV、HPc、CoPcは、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0157】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。陽極に関しては、ITO被覆ガラス基板(日本板硝子社製、抵抗13Ωcm-2;ガラスの透過率85%;インジウムスズオキシドの積層厚110nm)上にPVを650nmの厚さで、次いで、PV上にCoPcを190nmの厚さで積層した。次いで1cm×1.5cmに切り出した。陰極に関しては、陽極と同様に、ITO上にHPcを60nmの厚さで、C60を120nmの厚さで積層し、更に白金黒を担持した。
【0158】
(3)上記(2)で作製した各電極の1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0159】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を両極として、二極式セルを構成した。電解質溶液には、陽極側の反応漕を水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水、そして陰極側の反応漕をリン酸または硫酸でpH~2に調整した酸性水をそれぞれ用いた。さらに、両漕を塩橋でつないだものを反応セルとした。
【0160】
(5)有機光触媒反応は、図5に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。また、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)を用いて、解析した。
【0161】
(6)常温、常圧下、アノード電極及びカソード電極に上記の光源から光を照射し、印加電圧約0.9Vで電解を行ったところ、酸素が約3.0μlh-1、水素が約6.0μlh-1発生した。
【0162】
2OH→1/2O+HO+2e
上記実施例6より、有機光触媒を含むアノード電極及びカソード電極を採用する水の電気分解では、可視光照射により光誘起の電流が生じ、理論電圧より低い印加電圧(0.9V)で水素と酸素の発生が確認された。
【実施例7】
【0163】
(有機光触媒電極をアノード極に用いた水の電気分解)
電極基材/PV/CoPcをアノード電極(陽極)、白金棒をカソード電極(陰極)として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpH~11に調整したアルカリ水を用いて、図6のような二極セルを構成した。印加電圧1.1Vで電気分解を行ったところ酸素が約3.5μl/h、水素が約8.0μl/h発生した。具体的な操作手順を以下に示す。
【0164】
(1)有機光触媒材料として、n型半導体であるPV及びp型半導体であるCoPcを用いた。PV及びCoPcは、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0165】
(2)有機光触媒素子の作製は真空蒸着法により行った。陽極に関しては、ITO被覆ガラス基板(日本板硝子社製、抵抗10Ωcm-2)上にPVを650nmの厚さで、次いで、PV上にCoPcを190nmの厚さで積層した。次いで1cm×1.5cmに切り出した。陰極には白金棒をそのまま使用した。
【0166】
(3)上記(2)で作製した陽極の1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、有機光触媒被覆電極とした。
【0167】
(4)光触媒反応セルは、以下の方法で作製した。上記(3)で作製した有機光触媒被覆電極を陽極、白金棒を陰極として、一室型二極式セルを構成した。この場合、セルの構成上、参照極としての機能をも併せ持っている。電解質溶液として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどでpH~11に調整したアルカリ水を用いた。
【0168】
(5)有機光触媒反応は、図6に示すような測定装置を用いて実施した。関数発生器(北斗電工社製、HB-104)、クーロンメーター(北斗電工社製、HF-201)及びX-Yレコーダー(グラフテック社製,WX-4000)を備えたポテンショ/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA-301)を用い、光源としてハロゲンランプ(150W)を用いた。また、生成物をガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A)を用いて、解析した。
【0169】
(6)常温、常圧下、カソード電極には光を照射せずにアノード電極のみに光を照射し、印加電圧約1.1Vで電解を行ったところ、酸素が約3.5μlh-1、水素が約8μlh-1発生した。
【0170】
2OH→1/2O+HO+2e
上記実施例7より、有機光触媒を含むアノード電極及び白金からなるカソード電極を採用する水の電気分解では、可視光照射により光誘起電極が生じ、理論電圧より低い印加電圧(1.1V)で水素と酸素の発生が確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5