TOP > 国内特許検索 > 月経周期推定装置および月経周期推定方法 > 明細書

明細書 :月経周期推定装置および月経周期推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5099751号 (P5099751)
公開番号 特開2008-264352 (P2008-264352A)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成20年11月6日(2008.11.6)
発明の名称または考案の名称 月経周期推定装置および月経周期推定方法
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 10/00 305B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 26
出願番号 特願2007-114211 (P2007-114211)
出願日 平成19年4月24日(2007.4.24)
審査請求日 平成22年4月1日(2010.4.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
発明者または考案者 【氏名】陳 文西
【氏名】北沢 真澄
【氏名】戸川 達男
個別代理人の代理人 【識別番号】100079441、【弁理士】、【氏名又は名称】広瀬 和彦
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 特開2006-280762(JP,A)
特開2004-163391(JP,A)
特開2004-290335(JP,A)
特開2000-116658(JP,A)
特開2000-111415(JP,A)
特開2000-088665(JP,A)
特開2006-134080(JP,A)
特開2007-101813(JP,A)
特開2008-128781(JP,A)
特表2009-539416(JP,A)
特表2004-535000(JP,A)
陳 文西 他,隠れマルコフモデルによる睡眠時体温を用いた生理周期の推定,日本生体医工学会大会プログラム 論文集(CD-ROM),日本,2007年 4月,vol.46th,PS1-18-10
調査した分野 A61B 5/00,10/00
G01K 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が高温期と低温期とのうちいずれの状態にあるかを推定する月経周期推定装置であって、
前記体温データ系列を用いて高温相および低温相の2つの状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する構成としてなる月経周期推定装置。
【請求項2】
被測定者の身体に常時装着可能なケーシングと、該ケーシングのうち被測定者の体表面側に設けられ体温を検出する体温検出手段と、測定日毎に開始時刻から終了時刻までの間に亘って予め決められた時間間隔で該体温検出手段による体温検出データを読込む読込み手段と、該読込み手段による体温検出データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された体温検出データを複数日に亘って連結して前記体温データ系列を生成するデータ系列生成手段と、該データ系列生成手段による体温データ系列を用いて前記隠れマルコフモデルを構築するモデル構築手段と、該モデル構築手段による前記隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求める状態系列演算手段と、該状態系列演算手段による状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する状態特定手段とを備える構成としてなる請求項1に記載の月経周期推定装置。
【請求項3】
前記状態特定手段は、前記状態系列に対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行い、該フィルタ処理後の状態系列に含まれる状態を各体温検出データを測定したときの被測定者の状態とする構成としてなる請求項2に記載の月経周期推定装置。
【請求項4】
前記データ系列生成手段は、前記体温検出データのうち予め設定された温度および温度変化の許容範囲以外の値を削除し、残余の体温検出データを連結して体温データ系列を生成する範囲外データ削除手段と、該範囲外データ削除手段を用いて生成された体温データ系列に対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行う前処理手段とを備え、
前記モデル構築手段は、該前処理手段よるフィルタ処理を行った後の体温データ系列を用いて前記隠れマルコフモデルを構築する構成としてなる請求項2または3に記載の月経周期推定装置。
【請求項5】
前記モデル構築手段は、前記体温データ系列の体温検出データが温度に対して離散的な値を有する状態で前記隠れマルコフモデルを構築する構成としてなる請求項2,3または4に記載の月経周期推定装置。
【請求項6】
前記モデル構築手段は、前記体温データ系列の体温検出データが温度に対して連続的な値を有する状態で前記隠れマルコフモデルを構築する構成としてなる請求項2,3または4に記載の月経周期推定装置。
【請求項7】
前記モデル構築手段は外部の処理装置によって構成し、
前記ケーシングには、前記記憶手段に記憶した体温検出データを該外部の処理装置に転送する転送手段を設ける構成としてなる請求項2,3,4,5または6に記載の月経周期推定装置。
【請求項8】
被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が高温期と低温期とのうちいずれの状態にあるかを処理装置が推定する月経周期推定方法であって、
前記体温データ系列を用いて高温相および低温相の2つの状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する構成としてなる月経周期推定方法。
【請求項9】
被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が月経周期における体温の多相性のうちいずれの状態にあるかを処理装置が推定する月経周期推定方法であって、
前記体温データ系列を用いて体温の多相性に対応する複数の隠れ状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の多相性を特定する構成としてなる月経周期推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数日に亘って測定した被測定者の体温(体表温度と深部温度を含む、以下同様)に基づいて被測定者が高温期と低温期のうちいずれの状態にあるかを推定する月経周期推定装置および月経周期推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、妊娠や避妊の目安となる周期を知る目的で女性のホルモンバランス状況を把握するために、基礎体温の日毎の変動を数ヶ月間に亘って追跡記録し、その変動周期や変動幅を数値的に分析する方法が行われてきた。基礎体温は一日のうちで最も新陳代謝の少ない就寝中の体温を計測することが望ましいが、就寝中に体温測定を行うことは一般的に困難である。このため、例えば起床時の口中温度を体温として計測し、この計測した体温を基礎体温の代わりに用いてきた(例えば特許文献1参照)。しかし、女性の生活の多様化を鑑みると、毎朝、計測時刻や計測方法等の条件を一定とすることは難しく、長期間に亘る計測の継続には不便を伴うと共に、短時間の口中温度の計測では計測結果にアーチファクト(外部要因による計測信号のゆがみ)が生じ易かった。このため、就寝している被測定者の腹部等に身体表面の温度(体表温度)を測定するセンサ装置を取り付け、このセンサ装置によって長時間に亘って自動測定した体表温度に基づいて基礎体温に対応した当日の代表温度を決めるものが知られている(例えば特許文献2参照)。このとき、代表温度は、例えば測定した体表温度の最高温度や平均温度としていた。
【0003】

【特許文献1】特開平11-316161号公報
【特許文献2】特開2004-163391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術では、被測定者の寝返り等によって体表に対するセンサ装置の密着状態が変化し、測定結果にばらつきが生じることがある。例えば、被測定者の腹部にセンサ装置を取付けた状態で、仰向けに寝たときにはセンサ装置の密着度が低いのに対し、うつぶせに寝たときにはセンサ装置の密着度が高くなる。さらに、うつぶせに寝た場合には、腹部刺激による一時的な血流の増加に伴う体表温度上昇の可能性、または腹部圧迫による血流の減少に伴う体表温度降下の可能性があるのに加えて、電気敷き毛布の利用に伴う体表温度上昇の可能性もある。この結果、体表温度の測定結果にアーチファクトが含まれてしまい、体表温度および代表温度の測定精度が低下する傾向がある。
【0005】
また、従来技術では、測定した体表温度の範囲で代表温度を決定している。このとき、従来技術でも、代表温度を用いて基礎体温の変動を把握することはある程度は可能である。しかし、一般的に体表温度は外気や血流等の影響を受け易いため、実測値の最高温度や平均温度を代表温度として決定すると、代表温度には外気等の影響によるアーチファクトが生じる可能性がある。ここで、高温期と低温期からなる基礎体温の二相性の把握においては、低温期から高温期への+0.3℃の上昇を的確に捉える必要がある。これに対し、従来技術では、高温期での体温の上昇か、計測のアーチファクトによる変化かを区別することが難しいという問題がある。
【0006】
このように、代表温度は計測のアーチファクトの影響を受けるから、代表温度に基づいて被測定者が高温期と低温期のうちいずれの状態にあるかを判別することが難しかった。この結果、基礎体温の二相性や周期期間が不明確になり易く、女性のホルモンバランス状況等は容易に把握することができなかった。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、複数日に亘る体温の計測データに基づいて被測定者の体温の二相性を明確に把握することができる月経周期推定装置および月経周期推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が高温期と低温期とのうちいずれの状態にあるかを推定する月経周期推定装置であって、前記体温データ系列を用いて高温相および低温相の2つの隠れ状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する構成としたことにある。
【0009】
請求項2の発明では、被測定者の身体に常時装着可能なケーシングと、該ケーシングのうち被測定者の体表面側に設けられ体温を検出する体温検出手段と、測定日毎に開始時刻から終了時刻までの間に亘って予め決められた時間間隔で該体温検出手段による体温検出データを読込む読込み手段と、該読込み手段による体温検出データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された体温検出データを複数日に亘って連結して前記体温データ系列を生成するデータ系列生成手段と、該データ系列生成手段による体温データ系列を用いて前記隠れマルコフモデルを構築するモデル構築手段と、該モデル構築手段による前記隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求める状態系列演算手段と、該状態系列演算手段による状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する状態特定手段とを備える構成としている。
【0010】
請求項3の発明では、前記状態特定手段は、前記状態系列に対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行い、該フィルタ処理後の状態系列に含まれる状態を各体温検出データを測定したときの被測定者の状態とする構成としている。
【0011】
請求項4の発明では、前記データ系列生成手段は、前記体温検出データのうち予め設定された温度および温度変化の許容範囲以外の値を削除し、残余の体温検出データを連結して体温データ系列を生成する範囲外データ削除手段と、該範囲外データ削除手段を用いて生成された体温データ系列に対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行う前処理手段とを備え、前記モデル構築手段は、該前処理手段よるフィルタ処理を行った後の体温データ系列を用いて前記隠れマルコフモデルを構築する構成としている。
【0012】
請求項5の発明では、前記モデル構築手段は、前記体温データ系列の体温検出データが温度に対して離散的な値を有する状態で前記隠れマルコフモデルを構築する構成としている。
【0013】
請求項6の発明では、前記モデル構築手段は、前記体温データ系列の体温検出データが温度に対して連続的な値を有する状態で前記隠れマルコフモデルを構築する構成としている。
【0014】
請求項7の発明では、前記モデル構築手段は外部の処理装置によって構成し、前記ケーシングには、前記記憶手段に記憶した体温検出データを該外部の処理装置に転送する転送手段を設ける構成としている。
【0015】
請求項8の発明では、被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が高温期と低温期とのうちいずれの状態にあるかを処理装置が推定する月経周期推定方法であって、前記体温データ系列を用いて高温相および低温相の2つの状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の二相性を特定する構成としている。
【0016】
請求項9の発明では、被測定者の体温を複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者が月経周期における体温の多相性のうちいずれの状態にあるかを処理装置が推定する月経周期推定方法であって、前記体温データ系列を用いて体温の多相性に対応する複数の隠れ状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが前記体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求め、該状態系列を用いて被測定者の月経周期における体温の多相性を特定する構成としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,8の発明によれば、体温データ系列を用いて高温相および低温相の2つの状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求めるから、この状態系列に含まれる状態を判定することによって、体温データ系列を測定した複数日に亘る被測定者の状態を特定することができる。この結果、体温データ系列に外気等の影響によって計測のアーチファクトが生じる場合でも、被測定者の二相性を明確に把握することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ケーシングのうち被測定者の体表面側に体温検出手段を設けたから、読込み手段は、開始時刻から終了時刻までの間に亘って予め決められた時間間隔で該体温検出手段を用いて体温検出データを読込み、記憶手段は該読込み手段による体温検出データを記憶する。そして、データ系列生成手段は該記憶手段に記憶された体温検出データを複数日分だけ連結して体温データ系列を生成するから、モデル構築手段は、該データ系列生成手段による体温データ系列を用いてモデルパラメータを演算し、該モデルパラメータからなる隠れマルコフモデルを構築する。これにより、状態系列演算手段は、モデル構築手段によって形成された隠れマルコフモデルが体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求めることができる。このため、状態特定手段は、状態系列演算手段による状態系列を用いて、各体温検出データを測定したときの被測定者の状態を特定することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、状態特定手段は状態系列に対して中央値フィルタを用いた処理を行うから、状態系列に含まれる不連続な外れ状態を除去することができる。この結果、数時間や数日単位で状態が繰り返し切り換わることがなくなり、1ヶ月程度の周期性をもって高温期および低温期を繰り返す被測定者の二相性を明確に把握することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、範囲外データ削除手段は、体温検出データのうち予め設定された温度および温度変化の許容範囲以外の値は異常な値として削除し、許容範囲以内の値からなる残余の体温検出データを連結して体温データ系列を生成する。一般に人体の体温計測範囲は32℃~40℃程度とされるので、熱平衡状態で体温検出手段によって検出される温度が例えば32℃~40℃の許容範囲を逸脱することはないものと考えられる。体温検出データがこの温度範囲以外の値となった場合には、例えば被測定者が身体からケーシングを取外したり、外熱が入ったりするとき等が考えられる。
【0021】
また、就寝中は被測定者の体温は比較的安定しているから、例えば10分程度の測定間隔で±1℃の許容範囲を超えて変化することはないものと考えられる。体温検出データがこの温度変化の許容範囲以外の値となった場合には、例えば被測定者が一時的に起きたときや、被測定者が寝具を跳ね除けたとき等が考えられる。
【0022】
このように温度の許容範囲以外または温度変化の許容範囲以外の体温検出データは、被測定者の状態に対する寄与率は低いものと考えられる。また、温度および温度変化の許容範囲以外の体温検出データを用いて隠れマルコフモデルを構築すると、状態の推定精度が低下する可能性がある。このため、範囲外データ削除手段は、体温検出データのうち許容範囲以外の値を削除して体温データ系列を記憶する。
【0023】
また、前処理手段は、範囲外データ削除手段によって記憶された体温データ系列に対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行うから、体温データ系列に含まれる不連続な外れ値を除去することができる。そして、モデル構築手段は、前処理手段よるフィルタ処理を行った後の体温データ系列を用いて隠れマルコフモデルを構築するから、外れ値を含む体温データ系列を用いた場合に比べて、隠れマルコフモデルのモデルパラメータに外れ値が影響するのを防止することができ、被測定者の状態の推定精度を高めることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、モデル構築手段は、体温データ系列の体温検出データが温度に対して離散的な値を有する状態で隠れマルコフモデルを構築するから、該隠れマルコフモデルは離散型の体温検出データに応じて離散確率分布からなる体温検出データ出力確率を有する。このため、温度に対して離散的な体温検出データからなる体温データ系列と離散型の隠れマルコフモデルとを用いて状態系列を求めることができる。また、離散型の隠れマルコフモデルを用いるから、連続型の隠れマルコフモデルを用いた場合に比べて、モデルの構築処理に必要な時間、記憶容量等を減縮することができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、モデル構築手段は、体温データ系列の体温検出データが温度に対して連続的な値を有する状態で隠れマルコフモデルを構築するから、該隠れマルコフモデルは連続型の体温検出データに応じて連続確率分布からなる体温検出データ出力確率を有する。このため、温度に対して連続的な体温検出データからなる体温データ系列と連続型の隠れマルコフモデルとを用いて状態系列を求めることができる。また、連続型の隠れマルコフモデルを用いるから、離散型の隠れマルコフモデルを用いた場合に比べて、状態系列の精度を高めることができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、モデル構築手段は外部の処理装置によって構成し、ケーシングには記憶手段に記憶したデータを該外部の処理装置に転送する転送手段を設ける構成としている。ここで、複数日に亘って測定した体温データ系列を用いて被測定者の状態を推定し、女性(被測定者)の基礎体温の変動周期を把握するためには、1周期分以上の体温検出データを用いて隠れマルコフモデルを構築するのが好ましい。この場合、被測定者に挿着する小型のケーシング内に設けられた制御回路をなすマイクロコンピュータや携帯電話等を用いたときに比べて、外部の処理装置を用いたときの方が隠れマルコフモデルを構築するのに効率的である。
【0027】
そこで、本発明では、有線方式、無線方式等の転送手段を用いて記憶手段に記憶した体温検出データをサーバコンピュータ等の外部の処理装置に転送する。このため、処理装置は、大量の体温検出データを演算処理し、隠れマルコフモデルを速やかに構築することができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、体温データ系列を用いて体温の多相性に対応する複数の隠れ状態をもった隠れマルコフモデルを構築し、該隠れマルコフモデルが体温データ系列を出力する最尤の状態系列を求めるから、この状態系列に含まれる状態を判定することによって、体温データ系列を測定した複数日に亘る被測定者の多相性をもった状態を特定することができる。この結果、体温データ系列に外気等の影響によって計測のアーチファクトが生じる場合でも、被測定者の多相性を明確に把握することができる。また、例えば低温相と高温相との間に中温相を設けた場合には、低温相から高温相への立ち上がり変化点や高温相から低温相への立ち下がり変化点を詳しく調べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態による月経周期推定装置を添付図面に従って詳細に説明する。
【0030】
まず、図1ないし図10は第1の実施の形態を示し、図において、1は後述する外部の処理装置11と一緒に月経周期推定装置を構成するウエアラブルセンサ装置(以下、センサ装置1という)で、該センサ装置1は、後述のケーシング2、体温検出部3、コントロールユニット5、表示部9等によって大略構成されている。
【0031】
2はセンサ装置1の本体(主支持体)をなすケーシングで、該ケーシング2は、図1ないし図4に示すように例えば樹脂材料を用いて略長円形(小判形)の箱形状に形成され、その内部には後述の回路基板4等が収容されている。また、ケーシング2のうち被測定者H0の体表面側(正面側)には、略円形状に貫通した開口2Aが設けられている。ここで、開口2Aはケーシング2の中央側に位置している。
【0032】
3は体温を検出する体温検出部(体温検出手段)で、該体温検出部3は、図2に示すように、ケーシング2の中央側に位置する開口2Aに取付けられている。また、体温検出部3は、例えばサーミスタ等からなる測温素子と、該測温素子を覆う金属製のカバーとによって構成されている。そして、体温検出部3はケーシング2のうち被測定者H0の体表面側に配置されるから、被測定者H0の体表面にカバーが接触し、体温がカバーを通じて測温素子に熱伝導する。これにより、体温検出部3は、測温素子によって被測定者H0の体温に応じた信号を出力する。
【0033】
なお、体温検出部3は、被測定者H0の体表面に接触して体温を直接的に検出する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば体温検出部3と被測定者H0の体表面との間に下着等を挟む場合には、体温検出部3は、下着等を介して被測定者H0の体温を間接的に検出する構成としてもよい。即ち、体温検出部3は、被測定者H0の絶対的な体温を検出する必要はなく、体温に対応して変化する相対的な温度を検出すれば足りる。従って、毎日の計測条件がほぼ一定であれば、例えば下着1枚を挟んで体温検出部3を被測定者H0の体表面に密着させる構成としてもよい。また、体温検出部3は、被測定者H0の体表面の温度を検出するものに限らず、例えば被測定者H0の体内の温度を検出する深部温度計を用いる構成としてもよい。
【0034】
4はケーシング2の内部に収容された回路基板で、該回路基板4には、図5に示すようにマイクロコンピュータ等からなる読込み手段としてのコントロールユニット5が搭載されている。そして、コントロールユニット5は、その入力側が体温検出部3に接続されると共に、その出力側が後述の表示部9に接続されている。また、コントロールユニット5には記憶手段として例えばROM、RAM等からなる記憶部6が設けられている。
【0035】
ここで、記憶部6には、コントロールユニット5を作動させるプログラムと該プログラムで使用する開始時刻ts、終了時刻te、時間間隔Δtが予め格納されると共に、コントロールユニット5の作動によって後述の体温T1が記憶される構成となっている。
【0036】
このとき、開始時刻tsと終了時刻teは就寝中の時刻として例えば午前0時(ts=0:00am)と午前6時(te=6:00am)とにそれぞれ設定され、時間間隔Δtは例えば10分程度の値に設定される。なお、開始時刻ts、終了時刻teは、被測定者H0が例えば夜間勤務者であれば、その就寝の開始時刻および終了時刻に設定されるものである。また、時間間隔Δtも、10分に限らず、例えば1~30分程度の間で測定条件等に応じて適宜設定されるものである。
【0037】
また、コントロールユニット5は、時刻を計時するタイマ7を有すると共に、例えば2個のボタンスイッチ8A,8Bからなるスイッチ部8が接続されている。そして、コントロールユニット5は、ケーシング2に搭載されたコイン型リチウム電池等の電源5Aによって駆動し、スイッチ部8を操作することによって記憶部6からプログラムを読出して作動する。これにより、コントロールユニット5は、タイマ7による時刻が開始時刻tsに達すると、開始時刻tsから終了時刻teまでの間に亘って一定の時間間隔Δt毎に体温検出部3から検出温度に応じた体温検出データD1を読込む。
【0038】
そして、コントロールユニット5は、この体温検出データD1を記憶部6に順次記憶する。これにより、記憶部6には、開始時刻tsから終了時刻teまでの複数の体温検出データD1が記憶される。
【0039】
また、記憶部6は、コントロールユニット5による体温検出データD1のうち予め設定された温度の許容範囲(例えば32℃~40℃)以内の値で、かつ温度変化の許容範囲(例えば±1℃/10分)以内の値を正常な値とし、許容範囲以外の値を異常な値として体温検出データD1を記憶する。具体的には、正常な値は体温検出データD1をそのまま記憶し、異常な値は欠損データ(例えば正常な値と識別可能なエラーフラグ)が記憶される。
【0040】
ここで、一般に人体の体温計測範囲は32℃~40℃程度とされるため、温度の許容範囲は、熱平衡状態で体温検出部3によって検出される温度が例えば32℃~40℃の範囲を逸脱することはないとの考えに基づいて決められている。また、就寝中は被測定者の体温は比較的安定している。このため、温度変化の許容範囲は、例えば10分程度の時間間隔Δtの前,後で±1℃の許容範囲を超えて変化することはないとの考えに基づいて決められている。
【0041】
なお、温度の許容範囲および温度変化の許容範囲は、例示した値に限らず、測定条件等を考慮して適宜設定してもよい。
【0042】
また、体温検出データD1は、検出した体温T1そのものでもよく、例えば予め設定された基準温度数値T0と体温T1との差分値でもよい。この場合、基準温度数値T0は、データ容量を削減する意味から、例えば体温T1の平均値(例えば34℃)等に設定するのが好ましい。
【0043】
9はケーシング2の背面側に設けられた液晶画面等からなる表示部で、該表示部9はコントロールユニット5に接続され、例えばコントロールユニット5の駆動状態を表示する。また、表示部9は、記憶部6に記憶した体温検出データD1を後述する外部の処理装置11に転送する転送手段を構成し、スイッチ部8を操作することによって、例えばQRコード(登録商標)等の2次元コードを表示する。ここで、この2次元コードは、記憶部6に記憶した1日分(1晩分)の体温検出データD1およびデータのURL(Uniform Resource Locator)等の送信先アドレスの情報を含む。このため、被測定者H0は、2次元コードの読取り機能を有する携帯電話PT等を使用することによって、携帯電話PT内に2次元コード内の情報を読み込む。これにより、被測定者H0は、図6に示すように、インターネット等を介して携帯電話PTを外部の処理装置11にアクセスし、処理装置11に向けて体温検出データD1を転送することができる。
【0044】
また、被測定者H0は、センサ装置1のスイッチ部8を操作することにより、月経開始日データを入力する構成としてもよい。この場合、被測定者H0は、センサ装置1および携帯電話PTを用いて前記と同様に2次元コード表示、読み込み、送信の操作を行うことによって、月経開始日データを処理装置11に転送することができる。
【0045】
なお、転送手段は、表示部9による2次元コード表示を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、コントロールユニット5と携帯電話PTとの間を例えばケーブル接続による有線方式または赤外線、Bluetooth(登録商標)による無線方式を用いて接続するコネクタ等の接続部を設け、該接続部によって転送手段を構成してもよい。
【0046】
10はケーシング2を被測定者H0に取付ける装着手段としてのクリップで、該クリップ10は、ケーシング2の中央側に位置して可撓性をもって帯状をなして上部(外部)に向けて延びると共に、その先端が衣服等を挟持可能な構成となっている。このため、クリップ10は、図1に示すように、ショーツ等の下着を挟むことによって、センサ装置1を被測定者H0の腹部に固定する。
【0047】
なお、センサ装置1は被測定者H0の腹部に限らず、例えば被測定者H0の胸部に固定する構成としてもよい。この場合、クリップ10は、就寝時に着用する下着等に取付けるものである。
【0048】
11は図6に示すようにセンサ装置1によって計測した体温検出データD1を用いて被測定者H0が高温期と低温期とのうちいずれの状態にあるかを推定する処理装置で、該処理装置11は、データ系列生成手段、モデル構築手段、状態系列演算手段、状態特定手段を構成している。また、処理装置11は、例えばサーバコンピュータ等によって構成され、ROM、RAM等からなる記憶回路を有している。
【0049】
ここで、処理装置11は、図7に示すように、低温相q1および高温相q2の2つの状態Q={q1,q2}をもった隠れマルコフモデルHMM(以下、モデルHMMという)を備える。このとき、モデルHMMは、状態遷移確率行列A={aij}(状態iから状態jに遷移する確率)、体温検出データ出力確率行列B={bj(k)}(bj(k)は状態jの時に観測データkとなる確率)および初期状態確率行列π={πi}(初期状態の時に状態iの確率)のモデルパラメータλ={A,B,π}を有する。
【0050】
そして、処理装置11は、図8に示すように、体温検出データD1とモデルHMMを用いて月経周期推定処理を行い、体温検出データD1が測定された複数日間(例えば6ヶ月間)について、被測定者H0が高温期および低温期のいずれの状態にあるかを推定する。
【0051】
具体的な月経周期推定処理の手順についてその概略を示すと以下のようになる。まず、処理装置11は、センサ装置1から転送される被測定者H0の体温検出データD1を複数日(例えば6ヶ月)に亘って蓄積すると共に、これらの体温検出データD1を連結して体温データ系列O={O1,O2,…,OT}を生成する。次に、処理装置11は、この体温データ系列Oを用いてモデルHMMを構築する。
【0052】
ここで、モデルHMMを構築するときには、体温データ系列Oを用いてモデルHMMのモデルパラメータλ={A,B,π}を演算する。このとき、モデルパラメータλは、後述するように、例えばバーム・ウェルチの学習アルゴリズム(Baum-Welch algorithm)を用いて求めることができる。これにより、処理装置11は、体温データ系列Oの尤度が最大となるモデルHMMを構築することができる。
【0053】
また、モデルHMMは、後述するように温度に対して離散的な値を有する体温検出データOtを用いて構築される。このため、モデルHMMの体温検出データ出力確率行列Bは、離散型の体温検出データOtに応じて離散確率分布によって構成される。
【0054】
次に、処理装置11は、体温データ系列Oを用いて構築されたモデルHMMを用いて、該モデルHMMが体温データ系列Oを出力する最尤の経路、即ち体温データ系列Oを出力する可能性が最も高い状態変化の系列Q*を求める。このとき、最尤の状態系列Q*は、例えば後述する前向き-後向きアルゴリズム(forward-backward algorithm)を用いて求めることができる。
【0055】
最後に、処理装置11は、最尤の状態系列Q*に含まれる状態qt*(時刻tでの状態)を判別し、体温データ系列Oに含まれる体温検出データOtを測定したときの被測定者H0の状態が低温相q1および高温相q2のいずれに該当するのかを特定する。これにより、処理装置11は、測定日の初日から終了日までの間の被測定者H0の状態を推定することができる。
【0056】
そして、処理装置11は、被測定者H0の状態の推定結果を表示可能なホームページを備えている。このため、処理装置11のホームページに対して被測定者H0が例えば携帯電話PTを用いてアクセスすると、被測定者H0の要求に応じて、状態の推定結果を携帯電話PT、コンピュータに表示する。これにより、携帯電話PT等の画面には、例えば6ヶ月間に亘る被測定者H0の状態の推定結果が表示される。
【0057】
なお、被測定者H0は携帯電話PTに限らず、各種の携帯端末、コンピュータ等を用いて処理装置11にアクセスする構成としてもよい。また、処理装置11は、予め登録されたメールアドレスに向けて、状態の推定結果を送信する構成としてもよい。
【0058】
本実施の形態による月経周期推定装置は上述のような構成を有するもので、次に図8を用いて月経周期推定処理について説明する。
【0059】
ここで、被測定者H0がセンサ装置1から処理装置11に毎日の体温検出データD1を転送することによって、処理装置11には、予め複数日分(6ヶ月分)の体温検出データD1が蓄積されているものとする。そして、処理装置11は、被測定者H0からの要請指令等を受け取ることによって、図7に示す後述の月経周期推定処理を開始する。
【0060】
まず、ステップ1では、蓄積された6ヶ月分の体温検出データD1のうち欠損データを削除する。このとき、センサ装置1は、開始時刻tsと終了時刻teとの間の6時間に亘って10分間隔で体温検出データD1を読込み、記憶部6に記憶している。このため、1日分の体温検出データD1のデータ数は37個であり、6ヶ月分の体温検出データD1のデータ数は6600個程度となる。しかし、実際には大抵20~50%程度の欠損データが発生するため、欠損データの削除後に残る体温検出データD1のデータ数は、3300~5200個程度となる。このため、体温データ系列Oの長さTも、欠損データの削除後のデータ数に対応して3300~5200程度になる。
【0061】
次に、ステップ2では、ステップ1で残った6ヶ月分の体温検出データD1を連結し、体温データ系列Oを生成する。このとき、体温データ系列Oは、測定初日の開始時刻ts側の体温検出データD1から測定終了日の終了時刻te側の体温検出データD1までを連結することによって構成する。このため、体温データ系列Oに含まれる体温検出データOt(1≦t≦T)は、測定初日の開始時刻ts側から測定終了日の終了時刻te側まで時系列に並んでいる。
【0062】
次に、ステップ3では、後述の隠れマルコフモデルの構築処理および状態系列演算処理からなる本処理を行う前に、前処理として体温データ系列Oに対して中央値フィルタ(median filter)を用いたフィルタ処理を行う。このとき、中央値フィルタは、例えば連続した11個のデータに対して、これらの中央値となる値を時系列中央のデータ(時系列に並んだ6番目のデータ)に代入する。これにより、体温データ系列Oに含まれる明らかな外れ値を除去することができる。
【0063】
次に、ステップ4では、体温検出データOtに離散化処理を施す。この離散化処理では、例えば0.1℃精度で4捨5入法、またはベクトル量子化法(vector quantization)やK-means法を用いることによって、体温データ系列Oに含まれる体温検出データOtをデータクラスタリングする。これにより、体温検出データOtは、例えば32℃から40℃までの間で0.1℃間隔で表した数値となる。
【0064】
次に、ステップ5では、後述する図9に示す隠れマルコフモデルの構築処理を行い、前処理後と離散化処理後の体温データ系列Oを用いてモデルHMMを構築する。具体的には、体温データ系列Oの尤度が最も高くなるように、モデルHMMの最適なモデルパラメータλopt(λopt=argmax[P(O|λ)])を求める。
【0065】
次に、ステップ6では、例えば前向き-後向きアルゴリズム(forward-backward algorithm)を用いた状態系列演算処理を行う。具体的には、以下に示す数1の式に基づいて、ステップ5で構築したモデルHMMが体温データ系列Oを出力する最尤の状態系列Q*に含まれる状態qt*を演算する。このとき、状態系列Q*は、モデルHMMが体温データ系列Oを出力する可能性が最も高くなる状態の経路となる。なお、数1の式中でγt(i)は、時刻tで状態iにいる確率を示し、後述する数4の式に基づいて演算されるものである。
【0066】
【数1】
JP0005099751B2_000002t.gif

【0067】
次に、ステップ7では、状態特定処理を行い、測定日の初日から終了日までの間の被測定者H0の状態を推定する。具体的には、まず最尤の状態系列Q*に対して再び中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行う。このとき、中央値フィルタは、例えば連続した11個の状態に対して、これらの中央値となる値を真中(時系列順で前から6番目)の状態に代入する。即ち、中央値フィルタは、連続した11個の状態に含まれる低温相q1および高温相q2のうち過半数を占める状態を真中の状態に代入する。
【0068】
そして、フィルタ処理後に出力される最尤の状態系列Q*から体温データ系列Oに含まれる体温検出データOtを測定したときの被測定者H0の状態qt*が低温相q1および高温相q2のいずれに該当するのかを特定する。具体的には、同日の低温相q1および高温相q2の数を数え、多数決の判定ルールやその他の確率方法でその日は低温相q1または高温相q2のいずれにあるのかを決定する。これにより、測定日の初日から終了日までの間の被測定者H0の状態を推定し、被測定者H0の月経周期における体温の二相性を特定する。
【0069】
最後に、ステップ8では、ステップ7によって特定した測定日の初日から終了日までの間の被測定者H0の状態の推定結果を、被測定者H0の携帯電話PT、コンピュータに表示する。
【0070】
次に、図9を用いて隠れマルコフモデルの構築処理について説明する。なお、本実施の形態では、バーム・ウェルチの学習アルゴリズムを用いてモデルHMMのモデルパラメータλを演算した場合を例に挙げて説明する。
【0071】
ステップ11では、モデルHMMの構築に必要な各種の係数を設定する。具体的には、モデルHMMに含まれる隠れ状態の数N、可能な計測値の数M(体温検出データOtの離散化数)、体温データ系列Oの長さT、体温データ系列Oをそれぞれ読込む。
【0072】
このとき、隠れ状態の数N、例えば図7に示すモデルHMMは低温相q1と高温相q2を含むため、2状態となる。また、可能な計測値の数Mは、例えば32~40℃までを0.1℃の精度で表したときには81個となる。また、体温データ系列Oの長さTは、例えば欠損データを削除した後の6ヶ月間の体温検出データOtとしたときには、3300~5200程度となる。
【0073】
次に、ステップ12では、モデルパラメータλに初期値を代入する。ここで、状態遷移確率aijの初期値は、全ての状態に遷移する確率がほぼ等しいものと仮定してほぼ1/N程度の値を代入する。但し、全ての状態遷移確率aijを同じ値にすると、パラメータλの学習が終了(収束)し難いため、僅かに異なる値を代入する。
【0074】
また、体温検出データ出力確率bj(k)の初期値は、各状態で全ての可能な体温離散値を出力する確率がほぼ等しい、即ち各状態で体温検出データOtとして32~40℃の値を均等に出力するものと仮定してほぼ1/M程度の値を代入する。さらに、初期状態確率πiの初期値は、全ての状態にいる確率がほぼ等しいものと仮定してほぼ1/N程度の値を代入する。
【0075】
次に、ステップ13では、以下の数2の式に基づいて、前向き変数αt(i)を演算する。このとき、前向き変数αt(i)は、時刻1から時刻tまでの間、部分観測列{O1,O2,…,Ot}を観測した後、時刻tには状態iにいる確率を示している。
【0076】
【数2】
JP0005099751B2_000003t.gif

【0077】
次に、ステップ14では、以下の数3の式に基づいて、後向き変数βt(i)を演算する。このとき、後向き変数βt(i)は、時刻tに状態iにいて時刻t+1から最後までの部分観測列{Ot+1,Ot+2,…,OT}を観測する確率を示している。
【0078】
【数3】
JP0005099751B2_000004t.gif

【0079】
次に、ステップ15では、以下の数4の式に基づいて、時刻tで状態iにいる確率γt(i)を演算する。
【0080】
【数4】
JP0005099751B2_000005t.gif

【0081】
次に、ステップ16では、確率γt(i)を用いてパラメータλを更新する。具体的に説明すると次のようになる。まず、時刻tに状態iにいて時刻t+1に状態jにいる確率をξt(i,j)とすると、この確率ξt(i,j)は以下の数5の式で表される。
【0082】
【数5】
JP0005099751B2_000006t.gif

【0083】
ここで、前向き変数αt(i)と後向き変数βt(i)の定義から、確率γt(i)と確率ξt(i,j)との間には、以下の数6の式に示す関係が存在する。
【0084】
【数6】
JP0005099751B2_000007t.gif

【0085】
以上より、体温検出データD1が離散化された場合には、再推定計算後の初期状態確率πi、状態遷移確率aijおよび体温検出データ出力確率bj(k)はそれぞれ次の数7、数8および数9の式で表すことができる。
【0086】
【数7】
JP0005099751B2_000008t.gif

【0087】
【数8】
JP0005099751B2_000009t.gif

【0088】
【数9】
JP0005099751B2_000010t.gif

【0089】
バーム・ウェルチの学習アルゴリズムでは、再推定することによって、再推定後のモデルパラメータλによりデータ系列Oを出力する確率Pr(O|λ)は、再推定前のモデルパラメータλによりデータ系列Oを出力する確率Pr(O|λ)よりも高くなることが保証されている。従って、以上のステップ13~16を繰り返すことによって、体温データ系列Oに基づくモデルパラメータλを得ることができる。
【0090】
また、ステップ16が終了すると、ステップ17に移行する。そして、ステップ17では、モデルパラメータλが収束したか否かを判定するために、以下の数10の式に基づいて、再推定後のモデルパラメータλによる確率Pr(O|λ)の対数値ηを演算する。なお、対数演算を行うのは、確率Pr(O|λ)の値は小さすぎる傾向があるから、対数を用いた方が収束の判定が行い易いためである。
【0091】
【数10】
JP0005099751B2_000011t.gif

【0092】
次に、ステップ18では、再推定前、後の対数値ηの差Δηが予め決められた所定の収束判定値δよりも大きいか否かを判定する。そして、ステップ18で「YES」と判定したときには、再推定前、後の確率Pr(O|λ)の差が大きく、パラメータλが収束していないから、ステップ13からの処理を繰り返す。
【0093】
一方、ステップ18で「NO」と判定したときには、再推定前、後の確率Pr(O|λ)の差が小さく、パラメータλが収束したものと考えられる。このため、ステップ19に移行して、このときの再推定の演算結果を最適なモデルパラメータλoptとして出力し、ステップ20でリターンする。
【0094】
本実施の形態では、上述した月経周期推定処理および隠れマルコフモデルの構築処理を行うもので、次にこれらの処理を用いたときの被測定者H0の状態の推定結果について説明する。
【0095】
ここでは、特定の被測定者H0について6ヶ月の測定期間に亘って体温検出データD1を測定したときに、この測定期間分の体温検出データD1を用いて測定期間中の被測定者H0を推定した場合を例に挙げて説明する。
【0096】
まず、処理装置11は、予め蓄積された6ヶ月分の体温検出データD1に対して、欠損データを削除し、残りのデータD1を連結する。これにより、図10中の特性線A1に示すように、5200程度のデータD1が連結された体温データ系列Oが生成される。
【0097】
次に、この体温データ系列Oに対して、前処理と離散化を行った後、隠れマルコフモデルの構築処理を行う。これにより、体温データ系列Oを出力する最尤のモデルHMMが構築されるから、この構築されたモデルHMMを用いて体温データ系列Oを出力する最尤の状態系列Q*を求める。この結果、図10中の特性線A2に示すように、体温データ系列Oに対応して1ヶ月程度の周期性をもった状態系列Q*を得ることができる。但し、状態系列Q*には、測定期間の全体に亘って外れ値が生じ、低温相q1と高温相q2とがδ関数のように急激に切換わる部分が生じている。
【0098】
そこで、処理装置11は、モデルHMMを用いて求めた状態系列Q*に対して、中央値フィルタやその他の確率手法を用いた状態特定処理を行う。これにより、外れ値を除去することができるから、図10中の特性線A3に示すように、状態系列Q*は、低温相q1と高温相q2とが1ヶ月程度の単位で周期性をもって切換わり、月経周期の二相性を明確に把握することができる。
【0099】
また、高温相q2から低温相q1への変化点は、月経の始まり信号となる。そこで、処理装置11によって推定された状態系列Q*(図10中の特性線A3)において、高温相q2から低温相q1に切換わる時期と、実際に月経が生じた時期とを比較した。この結果、図10に示すように、状態系列Q*中の高温相q2から低温相q1に切換わる時期と実施の月経の時期とがほぼ一致しており、モデルHMMを用いた月経周期の推定が有効であることが確認できた。
【0100】
かくして、本実施の形態によれば、体温データ系列Oを用いて低温相q1および高温相q2の2つの状態をもったモデルHMMを構築し、該モデルHMMが体温データ系列Oを出力する最尤の状態系列Q*を求めるから、この状態系列Q*に含まれる状態qt*を判定することによって、体温データ系列Oを測定した複数日に亘る被測定者H0の状態を特定することができる。この結果、体温データ系列Oに外気等の影響によって計測のアーチファクトが生じる場合でも、被測定者H0の二相性を明確に把握することができる。
【0101】
また、処理装置11は、最尤の状態系列Q*に対して中央値フィルタやその他の確率手法を用いた後処理を行うから、状態系列Q*に含まれる不連続な外れ状態を除去することができる。この結果、数時間や数日単位で状態が頻繁に切り換わることがなくなり、1ヶ月程度の周期性をもって低温相q1および高温相q2を繰り返す被測定者H0の二相性を明確に把握することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、処理装置11は、体温検出データD1のうち予め設定された温度および温度変化のうち少なくともいずれか一方で許容範囲以外となる値を削除して体温データ系列Oを生成する。このため、モデルHMMを構築するときに、温度の許容範囲以外または温度変化の許容範囲以外の体温検出データD1を用いることがなくなる。この結果、体温検出データD1の異常な値がモデルHMMに影響することがなくなり、モデルHMMを用いて被測定者H0の状態を推定したときに、この推定結果の精度を高めることができる。
【0103】
また、処理装置11は、モデルHMMを構築する前に体温データ系列Oに対して中央値フィルタを用いたフィルタ処理を行うから、体温データ系列Oに含まれる不連続な外れ値を除去することができる。そして、処置装置11は、このフィルタ処理を行った後の体温データ系列Oを用いてモデルHMMを構築するから、外れ値を含む体温データ系列Oを用いた場合に比べて、モデルHMMのモデルパラメータλに外れ値が影響するのを防止することができ、被測定者H0の状態の推定精度を高めることができる。
【0104】
さらに、処理装置11は体温データ系列Oの体温検出データOtが温度に対して離散的な値を有する状態でモデルHMMを構築したから、モデルHMMは離散型の体温検出データOtに応じて離散確率分布からなる体温検出データ出力確率Bを有する。このため、温度に対して離散的な体温検出データOtからなる体温データ系列Oと離散型のモデルHMMとを用いて最尤の状態系列Q*を求めることができる。また、離散型の隠れマルコフモデルHMMを用いるから、連続型の隠れマルコフモデルを用いた場合に比べて、隠れマルコフモデルの構築処理に必要な時間、記憶容量等を減縮することができる。
【0105】
さらに、本実施の形態では、センサ装置1のケーシング2には記憶部6に記憶した体温検出データD1を外部の処理装置11に転送する表示部9を設ける構成とした。このため、表示部9に表示した2次元コードを用いて、記憶部6内の体温検出データD1を外部の処理装置11に転送し、該処理装置11を用いて、モデルHMMを構築することができる。
【0106】
このため、例えば被測定者H0について数ヶ月間に亘る体温検出データD1を用いてモデルHMMを構築するときでも、処理装置11は、これらの大量の体温検出データD1を大容量の記憶回路内に蓄積し、高速に演算処理することができるから、モデルHMMの構築および最尤の状態系列Q*の算出を速やかに行うことができる。
【0107】
なお、第1の実施の形態では、図8中のステップ1~4はデータ系列生成手段の具体例、ステップ1、2は範囲外データ削除手段の具体例、ステップ3、4は前処理手段の具体例をそれぞれ示している。また、図8中のステップ5および図9中のステップ11~20はモデル構築手段の具体例、ステップ6は状態系列演算手段の具体例、ステップ7は状態特定手段の具体例をそれぞれ示している。
【0108】
また、ステップ3の前処理およびステップ7の状態特定処理では、中央値フィルタを用いる構成としたが、例えば外れ値(外れ状態)を除去するものであればよく、例えば低域通過フィルタ等を用いる構成としてもよい。
【0109】
さらに、前処理や状態特定処理に用いる中央値フィルタは、例えば11個のデータを用いてフィルタ処理を行う構成としたが、フィルタ処理に用いるデータ数は体温検出データD1を検出する時間間隔等に応じて適宜設定されるものである。
【0110】
次に、図11および図12は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、処理装置は体温データ系列の体温検出データが温度に対して連続的な値を有する状態で隠れマルコフモデルを構築する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0111】
21は本実施の形態による処理装置で、該処理装置21は、第1の実施の形態による処理装置11とほぼ同様にデータ系列生成手段、モデル構築手段、状態系列演算手段、状態特定手段を構成する。但し、処理装置21は、図12に示すように、体温データ系列Oの体温検出データOt(1≦t≦T)が温度に対して連続的な値を有する状態で隠れマルコフモデルHMMを構築する点で第1の実施の形態による処理装置11とは異なる。
【0112】
具体的には、処理装置21は、データの離散化処理を行わない。このため、体温検出データOt(1≦t≦T)は、温度に対して連続的な値となる。
【0113】
また、モデルHMMは、連続型の体温検出データOtに応じて連続確率分布からなる体温検出データ出力確率Bを有する。このため、体温検出データ出力確率Bは、M個のガウシアン(Gaussian)分布の合成によると仮定し、以下の数11の式で表される。このとき、数12の式に示す制限条件が付加される。
【0114】
【数11】
JP0005099751B2_000012t.gif

【0115】
【数12】
JP0005099751B2_000013t.gif

【0116】
体温検出データ出力確率Bの定義に伴い、モデルパラメータλを更新(再推定)するときには、ガウシアン分布密度関数Gの各パラメータ(混合係数cjm、平均ベクタμjm、共分散行列Ujm)は、以下の数13~数16の式を用いて求める。
【0117】
【数13】
JP0005099751B2_000014t.gif

【0118】
【数14】
JP0005099751B2_000015t.gif

【0119】
【数15】
JP0005099751B2_000016t.gif

【0120】
【数16】
JP0005099751B2_000017t.gif

【0121】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、処理装置21は、体温データ系列Oの体温検出データOtが温度に対して連続的な値を有する状態で隠れマルコフモデルHMMを構築するから、該モデルHMMは連続型の体温検出データOtに応じて連続確率分布からなる体温検出データ出力確率Bを有する。このため、温度に対して連続的な体温検出データOtからなる体温データ系列Oと連続型の隠れマルコフモデルHMMとを用いて状態系列Q*を求めることができる。また、連続型の隠れマルコフモデルHMMを用いるから、第1の実施の形態のように離散型の隠れマルコフモデルを用いた場合に比べて、状態系列Q*の精度を高めることができる。
【0122】
次に、図13および図14は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、処理装置は、被測定者の状態を円グラフおよび棒グラフを用いて表示する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0123】
図13は処理装置11によってホームページ内に表示された円グラフ31を示している。ここで、円グラフ31は8等分の扇形をなす第1~第8ステージ31A~31Hに分割され、半分の第1~第4ステージ31A~31Dは低温期に対応し、残余の第5~第8ステージ31E~31Hは高温期に対応している。これにより、円グラフ31は、被測定者が低温期および高温期(第1~第8ステージ31A~31H)のいずれのステージに該当するのかを表示するものである。
【0124】
そして、円グラフ31の1周分が基礎体温の1周期に該当するものとし、1サイクル(1周)は基本的に28日としている。このとき、第1,第2,第5,第6ステージ31A,31B,31E,31Fはそれぞれ4日が割り当てられ、第3,第4,第7,第8ステージ31C,31D,31G,31Hはそれぞれ3日が割り当てられる。また、第1ステージ31Aの初日は、例えば被測定者H0がセンサ装置1を用いて記録した月経開始日が設定される。
【0125】
そして、処理装置11は、原則として最新の体温検出データD1が計測された日(最新計測日)が、最新の変化点から経過した日数に応じて第1~第4ステージ31A~31Dのいずれに該当するかを判定する。即ち、処理装置11は、原則として最新計測日が第1ステージ31Aの初日から経過した日数に応じて第1~第4ステージ31A~31Dのいずれに該当するかを判定する。そして、処理装置11は、最新計測日が該当するステージ中に例えば文字記号(例えば星印)を表示する。なお、該当するステージは、文字記号に限らず、例えば点滅等によって表示する構成としてもよい。
【0126】
但し、最新の立ち下がり変化点を経過した後に、低温相q1から高温相q2への変化点(立ち上がり変化点)も経過した場合には、この立ち上がり変化点が生じた日を第5ステージ31Eに突入した日と判定する。そして、最新計測日が立ち上がり変化点から経過した日数に応じて第5~第8ステージ31E~31Hのいずれに該当するかを判定し、該当するステージ中に例えば文字記号を表示する。
【0127】
逆に、最新計測日が第1ステージ31Aの初日から12日以上経過しても立ち上がり変化点が生じないときには、第4ステージ31Dに留まっているものとして、第4ステージ31D中に文字記号を表示する。特に、最新計測日が第1ステージ31Aの初日から15日以上経過しても立ち上がり変化点が生じないときには、低温期が長引いていると判断し、その旨を表示する。
【0128】
また、処理装置11は、第5ステージ31Eの初日(最新の立ち上がり変化点の日)から17日以上が経過しても次回の立ち下がり変化点が生じない場合は、処理装置11は、第8ステージ31H中に文字記号を表示すると共に、妊娠の可能性がある旨を表示する。ここで、妊娠した場合には、一般的に基礎体温は16週頃から徐々に下降して20週頃には低温相q1に戻るから、16週から20週程度の間で低温相q1に戻ったときには、妊娠の可能性が高い旨を表示する。
【0129】
図14は処理装置11によって円グラフ31とは別個にホームページ内に表示された棒グラフ32を示している。ここで、棒グラフ32は最新の立ち下がり変化点が生じた日を月経開始日として決定し、その日付と一緒に月経開始を示す記号(例えば丸記号)で表示する。
【0130】
また、処理装置11は、高温期に該当する日には高温期であることを示す文字記号(例えば黒星印)を1個または複数個(例えば3個)表示する。一方、処理装置11は、低温期に該当する日には低温期であることを示す文字記号(例えば白星印)を1個または複数個(例えば3個)表示する。
【0131】
これにより、折れ線グラフによる表示を用いた場合に比べて、例えば携帯電話PTの画面でも見易く表示することができる。
【0132】
なお、高温期を示す文字記号を赤色、低温期を示す文字記号を青色等のように、色分け表示する構成としてもよい。
【0133】
また、被測定者に当日の体調(良、悪)を申告してもらい、棒グラフ32には、日付に対応した位置に、申告された当日の体調を簡単な文字記号(例えば、φで好調、#で普通、bで悪い気分)を用いて表示する構成としてもよい。
【0134】
また、過去の月経周期に基づいて、次回の月経期(立ち下がり変化点)を予測し、この予測日を表示する構成としてもよい。この場合、次回の月経期は、前回の月経期に直前の月経周期の1周期分の日数を加えることによって予測してもよく、過去数回の月経周期についてこれらの1周期分の平均日数を演算し、この平均日数を前回の月経期に加えることによって予測してもよい。さらに、月経周期の延長、縮小の変動が周期的に生じるものとして、この月経周期の周期性を考慮して月経周期の1周期分の日数を演算し、この演算した1周期分の日数を前回の月経期に加えることによって、次回の月経期を予測してもよい。
【0135】
また、立ち上がり変化点の生じた日の前,後2日の期間を可能な排卵期として、その旨を表示する構成としてもよい。さらに、過去の月経周期に基づいて、次回の排卵期を予測する構成としてもよい。この場合、次回の排卵期の予測は、前記次回の月経期の予測とほぼ同様に行うことができる。
【0136】
また、被測定者に黄体機能不全が生じると、黄体ホルモンの分泌が不十分で高温期を維持できないため、高温期の後半に体温が下降したり、極端に高温期が短いまま月経が生じ、妊娠し難い状態となる。このため、高温期の期間が10日未満となったときには、黄体機能不全の可能性があると推定し、その旨を表示する構成としてもよい。
【0137】
また、無排卵性周期では、周期的な出血はあるが、基礎体温の変化は現れずに低温期のまま月経を迎える。このような周期パターンの場合、排卵はないので妊娠しない。このため、月経周期の二相性変化が現れないときには、無排卵性周期の可能性があると推定し、その旨を表示する構成としてもよい。
【0138】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、処理装置11は、被測定者の状態を示す円グラフ31および棒グラフ32を表示する構成としたから、被測定者が円グラフ31、棒グラフ32を目視することによって、最新計測日等の状態を容易に把握することができる。
【0139】
また、第3の実施の形態では、第1の実施の形態による処理装置11を用いて、円グラフ31、棒グラフ32を作成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2の実施の形態による処理装置21を用いて円グラフ31、棒グラフ32を作成する構成としてもよい。
【0140】
また、前記各実施の形態では、隠れマルコフモデルHMMは、低温相q1と高温相q2の2つの状態のみを有する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図15に示す変形例による隠れマルコフモデルHMMのように、低温相q1と高温相q3との間に中温相q2を設け、隠れマルコフモデルHMMがこれら3つの状態を有する構成としてもよい。これにより、低温相q1から高温相q3への立ち上がり変化点や高温相q3から低温相q1への立ち下がり変化点を詳しく調べることができる。また、中温相q2を設けた場合には、低温相q1と高温相q3との間で直接遷移する確率が低くなると考えられるから、最尤の状態系列を求めるときには、ビタビアルゴリズム(Viterbi algorithm)を用いることが計算時間、計算コストを削減する上で有効である。
【0141】
また、前記各実施の形態では、センサ装置1は計測の開始時間と終了時間を予め設定しておき、これらの間で一定時間毎に体温検出データD1を検出する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、センサ装置1は、例えば体温検出部3によって検出した体温T1が一定温度(例えば32℃)を超えて上昇すると、体温検出データD1の読込み、記憶を開始し、一定温度よりも低下すると、体温検出データD1の読込み等を終了する構成としてもよい。
【0142】
さらに、センサ装置1にマイクロ方位スイッチを設け、被測定者が座位または立位から臥位に姿勢を変更すると、方位スイッチがオン状態となり、被測定者が臥位から座位または立位に姿勢を変更すると、方位スイッチがオフ状態となる構成としてもよい。これにより、センサ装置1は、方位スイッチのオン状態、オフ状態に応じて体温検出データD1の読込み等を開始、終了を行うことができる。
【0143】
また、前記各実施の形態では、就寝中の体温検出データD1を1日当り複数回検出する構成としたが、例えば体温が十分に安定した後に1日当り1回だけ検出する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるウエアラブルセンサ装置を被測定者が装着した状態を示す外観図である。
【図2】図1中のウエアラブルセンサ装置を単体で示す正面図である。
【図3】図2中のウエアラブルセンサ装置を示す背面図である。
【図4】ウエアラブルセンサ装置を図2中の矢示IV-IV方向からみた断面図である。
【図5】ウエアラブルセンサ装置に設けられたコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】ウエアラブルセンサ装置と外部の処理装置とから構成した月経周期推定装置を示す説明図である。
【図7】第1の実施の形態による隠れマルコフモデルを示す説明図である。
【図8】月経周期推定処理を示す流れ図である。
【図9】図8中の隠れマルコフモデルの構築処理を示す流れ図である。
【図10】前処理後の体温データ系列、最尤の状態系列、状態特定処理後の状態系列をそれぞれ示す特性線図である。
【図11】第2の実施の形態による月経周期推定装置を示す説明図である。
【図12】第2の実施の形態による隠れマルコフモデルを示す説明図である。
【図13】第3の実施の形態による円グラフを示す説明図である。
【図14】第3の実施の形態による棒グラフを示す説明図である。
【図15】変形例による隠れマルコフモデルを示す説明図である。
【符号の説明】
【0145】
1 ウエアラブルセンサ装置
2 ケーシング
3 体温検出部(体温検出手段)
5 コントロールユニット(データ読込み手段)
6 記憶部(記憶手段)
9 表示部(転送手段)
11,21 処理装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14