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明細書 :ニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法とその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5315537号 (P5315537)
公開番号 特開2009-120920 (P2009-120920A)
登録日 平成25年7月19日(2013.7.19)
発行日 平成25年10月16日(2013.10.16)
公開日 平成21年6月4日(2009.6.4)
発明の名称または考案の名称 ニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法とその装置
国際特許分類 C22B  23/00        (2006.01)
C22B   7/00        (2006.01)
C22B   3/44        (2006.01)
B01D  21/28        (2006.01)
B01D  21/01        (2006.01)
B01D  35/06        (2006.01)
B03C   1/00        (2006.01)
C02F   1/62        (2006.01)
C02F   1/58        (2006.01)
FI C22B 23/00 102
C22B 7/00 G
C22B 3/00 Q
B01D 21/28 Z
B01D 21/01 Z
B01D 21/01 101A
B01D 35/06 A
B03C 1/00 A
C02F 1/62 Z
C02F 1/58 R
請求項の数または発明の数 9
全頁数 11
出願番号 特願2007-298680 (P2007-298680)
出願日 平成19年11月16日(2007.11.16)
審査請求日 平成22年11月9日(2010.11.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】592214302
【氏名又は名称】株式会社イムラ材料開発研究所
発明者または考案者 【氏名】岡 徹雄
【氏名】寺澤 俊久
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開昭61-120688(JP,A)
特開平10-085769(JP,A)
特開昭50-033122(JP,A)
特開2005-021782(JP,A)
特開2001-062463(JP,A)
特開2002-102862(JP,A)
調査した分野 C22B 1/00-61/00
B01D 21/01
C02F 1/52- 1/64
B09B 1/00- 5/00
B01D 15/00-15/08
B03C 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる析出工程と、この析出工程で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する分離工程とを備えたことを特徴とするニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法。
【請求項2】
前記分離工程において、亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場の強度が3T以上であることを特徴とする請求項1記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法。
【請求項3】
前記析出工程又は前記分離工程において磁性粉末を添加することを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法。
【請求項4】
亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる反応水槽と、この反応水槽で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する沈殿水槽と、この沈殿水槽において亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場を発生する磁場発生手段とを備えたことを特徴とするニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸回収装置。
【請求項5】
前記磁場発生手段が超伝導バルク磁石であることを特徴とする請求項4記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置。
【請求項6】
前記磁場発生手段が超伝導ソレノイド磁石又は電磁石であることを特徴とする請求項4記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置。
【請求項7】
前記磁場発生手段が永久磁石であることを特徴とする請求項4記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置。
【請求項8】
前記沈殿水槽中における前記磁場発生手段の近傍に磁性メッシュを配したことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置。
【請求項9】
前記沈殿水槽中における前記磁場発生手段の近傍に永久磁石を備えた円板を配し、この円板は回転可能に構成されたことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項記載のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法とその装置に関し、特に、無電解ニッケルめっき及び電解ニッケルめっきの廃液からニッケルならびに亜燐酸を効率よく抽出し、回収する方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、精密機械部品などの表面処理に用いられる無電解ニッケルめっき液は、ニッケル供給源としての硫酸ニッケル、還元剤としての次亜燐酸ナトリウム及び乳酸やクエン酸などの錯化剤から構成される。めっき工程では、次亜燐酸ナトリウムは酸化されて亜燐酸ナトリウムとなり、これとともにニッケルが消費されるため、随時硫酸ニッケル、次亜燐酸ナトリウム及びpH調節剤として水酸化ナトリウムを補充しながら使用している。しかし、めっき液を繰り返し使用するうちに、硫酸イオン、ナトリウムイオン、亜燐酸イオン、被めっき物の表面から溶出する亜鉛や鉄などがめっき液中に蓄積し、めっき皮膜の品質を維持することが難しくなるので、ある程度まで使用しためっき液は廃液として処分されている。近年の環境保全及び資源保護の観点から、使用済みめっき液の再利用法の開発が期待されている。
【0003】
めっき液中に生成する亜燐酸イオンを除去することができれば、ニッケルイオンを添加することでめっき液の再利用が可能なことから亜燐酸イオンの回収除去が有効である。
そこで、使用済み無電解ニッケルめっき液を再利用する方法として、例えば、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムなどのニッケル抽出剤を用いて、廃液から無電解ニッケル補充液を調製する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、上記の方法を工業規模の連続抽出装置や多段抽出装置などに適用した場合、ニッケルの抽出速度が低いために、ニッケルを効率よく回収することができなかった。
【0004】
上記のような課題を解決するためになされ、ニッケル含有水溶液からニッケルを効率よく抽出し、回収することを目的とした方法が開示されている(特許文献2参照)。この方法は、β-ヒドロキシオキシム系抽出剤及び酸性有機リン化合物を含有する有機溶媒を、ニッケル含有水溶液と接触させ、ニッケルを有機溶媒相中に抽出することを特徴とする。しかし、この方法では有機溶媒の使用あるいは廃棄処理に大きなコストがかかることと、その廃棄に際しての環境負荷がかかるという社会的な問題点があった。
【0005】
このほかの従来技術としては、ニッケルイオンをキレート樹脂に反応させて吸着沈殿によって除去し、後にニッケルを酸で溶離して回収する方法が開示されている(特許文献3)。しかし、この方法は、反応に反応凝集水槽を用いており、沈殿物の回収に大型の水槽が必要であって、沈降分離に掛かる時間が長いことから、工程に時間とコストが掛かるという問題があった。
【0006】
また、カルシウムを含む消石灰などを添加することによってアルカリ性にし、溶存するニッケルを不溶性の水酸化ニッケルに変えて、その沈殿をろ過する方法が開示されている(特許文献4)。しかし、この方法は、沈殿のろ過に時間とコストが掛かることに加え、消石灰などの処理薬品を必要としており、これらはすべて再利用できない廃棄物となるという問題があった。
【0007】
また、めっき廃液にパラジウムなど析出促進剤を添加して金属ニッケルの沈殿を作り、これをフィルタプレスで濾しとって固形化する方法が開示されている(特許文献5)。この方法では、析出する沈殿の性質は良好だが、フィルタプレスなどの沈殿物の固形化工程に大きな設備費とスペースが必要となるという問題があった。
【0008】
さらに、めっき液中のニッケルを銅電極による電解によって、電極表面に直接、金属ニッケルを析出させる方法が開示されている(特許文献6)。この方法では、ニッケルの回収に効果が大きいと考えられるが、ニッケル析出に大電力を要し、設備が大規模となってコスト高になるという問題があった。

【特許文献1】特開2001-192846号公報
【特許文献2】特開2004-307983号公報
【特許文献3】特開平11-226596号公報
【特許文献4】特開平10-066998号公報
【特許文献5】特開平10-180266号公報
【特許文献6】特開平11-124679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、使用済みめっき液からニッケルならびに亜燐酸のイオンを効率よく回収することができ、回収したニッケルならびに回収後のめっき液を再利用することのできる方法であって、環境負荷が小さく、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルならびに亜燐酸を回収することのできる、新規のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法を提供することを目的とする。さらに、そのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カニゼンめっきなどの無電解ニッケルめっきにおいて、ニッケルめっき廃液中に残存するニッケルイオンを再利用する場合、或いはニッケルを除去する浄水処理を行う場合には、ニッケルイオンと亜燐酸イオンを最終的に再利用可能な次亜燐酸ニッケルとして抽出する方法が用いられている。
【0011】
ここで、ニッケルめっき廃液のpHを調整することによって亜燐酸ニッケルを主成分とする沈殿を生成させることができるため、この亜燐酸ニッケルを主成分とする沈殿の分離ができるとすれば、廃液処理工程の大幅な短縮が可能である。しかし、亜燐酸ニッケルを主成分とする沈殿は微粒のゲル状であるため、フィルタで分離しようとしてもフィルタへの吸着や目詰まりを起こす。また、この沈殿は水溶液との比重差が小さいため、わずかな水溶液の流動によっても液中に浮遊する。このため、従来は、亜燐酸ニッケルとしての分離は行われていなかった。
【0012】
そこで、発明者は亜燐酸ニッケルとして分離する方法について鋭意検討した結果、このゲル状の沈殿が弱いながらも磁性を帯びており、3T(テスラ)の磁場を発生する超伝導バルク磁石に吸着させて分離することができることを見出し、本発明に想到した。
【0013】
すなわち、本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収方法は、亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる析出工程と、この析出工程で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する分離工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、前記分離工程において、亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場の強度が3T以上であることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記析出工程又は前記分離工程において磁性粉末を添加することを特徴とする。
【0016】
本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置は、亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる反応水槽と、この反応水槽で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する沈殿水槽と、この沈殿水槽において亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場を発生する磁場発生手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、前記磁場発生手段が超伝導バルク磁石であることを特徴とする。
【0018】
また、前記磁場発生手段が超伝導ソレノイド磁石又は電磁石であることを特徴とする。
【0019】
また、前記磁場発生手段が永久磁石であることを特徴とする。
【0020】
また、前記沈殿水槽中における前記磁場発生手段の近傍に磁性メッシュを配したことを特徴とする。
【0021】
さらに、前記沈殿水槽中における前記磁場発生手段の近傍に永久磁石を備えた円板を配し、この円板は回転可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法によれば、亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させることで、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルならびに亜燐酸を効率よく回収することができる。
【0023】
亜燐酸ニッケルとして回収したニッケルは次亜燐酸ニッケルに合成して再度ニッケルめっき液に添加して利用でき、不純物である亜燐酸イオンを回収除去された残りのめっき液は再利用できる。
【0024】
めっき液中に生じる亜燐酸イオンを亜燐酸ニッケルとして回収除去することにより、めっき液はニッケルイオンを追加することで再利用できるため、めっき液全体としてその寿命を延ばすことができるという大きな効果がある。
【0025】
めっき液を廃液として排水する際に、ニッケルならびに亜燐酸を効率よく回収除去することができ廃液の浄化に有効である。
【0026】
また、磁場の強度を3T以上とすることで、確実に亜燐酸ニッケルを吸着させることができる。
【0027】
さらに、磁性粉末を添加することで、亜燐酸ニッケルの沈降速度が大幅に増加し、分離効率を向上させることができる。
【0028】
本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置によれば、亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させることで、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルならびに亜燐酸を効率よく回収することができる。同時に亜燐酸を回収除去しためっき液は再利用ができる。
【0029】
また、前記磁場発生手段が超伝導バルク磁石であることで、バルク磁石の強磁場と急峻な磁気勾配により、効率よく亜燐酸ニッケルを吸着させることができるとともに、磁場発生手段をコンパクトに構成することができる。
【0030】
また、前記磁場発生手段が超伝導ソレノイド磁石であることで、大空間に発生する強磁場により、効率よく大量に亜燐酸ニッケルを吸着させることができ、電磁石であることで、磁場の変化を急速な磁場変化、交流磁場、パルス状の磁場とすることができ、応用範囲が広がり汎用性を向上させることができる。
【0031】
また、前記磁場発生手段が永久磁石であることで、装置を簡略化することができ、安価に小規模に装置を構成することができる。
【0032】
また、前記磁場発生手段の近傍に磁性メッシュを配したことで、磁性メッシュが磁化されることによって急勾配磁場が発生し、亜燐酸ニッケルの分離効率を高めることができる。
【0033】
さらに、前記磁場発生手段の近傍に永久磁石を備えた円板を配し、この円板を回転させることで、磁場発生手段で吸着した亜燐酸ニッケルを円板の永久磁石に吸着させて分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収方法は、亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる析出工程と、この析出工程で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する分離工程とを備えている。
【0035】
ニッケル含有水溶液としては、無電解ニッケルめっき液に限らず、電解ニッケルめっき液やその他のニッケル含有水溶液を用いることができる。また、有機物や無機物の沈殿を含むニッケル含有水溶液も用いることができる。
【0036】
析出工程においては、ニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる。ニッケル含有水溶液が無電解ニッケルめっき液の場合は酸性であるので、水酸化ナトリウムなどを加えて中性にすることで、亜燐酸ニッケルを析出させることができる。また、亜燐酸ニッケルの析出速度を制御するために、ニッケル含有水溶液の温度を管理するようにしてもよい。
【0037】
分離工程においては、析出工程で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する。亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させることで、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルならびに亜燐酸を効率よく回収することができる。
【0038】
また、分離工程において、亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場の強度は3T以上とするのが好ましい。磁場の強度を3T以上とすることで、確実に亜燐酸ニッケルを吸着させることができる。このような磁場を発生する手段としては、超伝導バルク磁石、超伝導ソレノイド磁石、電磁石、永久磁石を用いることができる。
【0039】
分離された亜燐酸ニッケルは、乾燥してスラッジとして回収する。この亜燐酸ニッケルを主成分とするスラッジは、次亜燐酸ニッケルに変成することで、再度めっき液に添加して用いることができる。
【0040】
本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収方法によれば、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルを効率よく回収することができる。また、添加する薬剤は水酸化ナトリウムのみであり、薬剤添加に係るコストが極めて低い。
【0041】
さらに、強い磁場によって亜燐酸ニッケルを吸着することで、亜燐酸ニッケルの沈降速度の向上、滞留時間の短縮、沈殿水槽の小型化などが可能となり、工程の大幅な省略ができる。また、臨界粒径の微細化、浮遊沈殿(SS)の減少、上澄み液の純化によって、微細な沈殿や弱磁性沈殿を効果的に凝集でき、分離浄化性能の向上並びに処理量(スループット)の向上を図ることができる。
【0042】
なお、前記析出工程又は前記分離工程において磁性粉末を添加してもよい。磁性粉末としては、例えば、マグネタイトやヘマタイトなどの酸化鉄、鉄を用いることができる。磁性粉末を添加した場合、磁性粉末と亜燐酸ニッケルが磁場により吸着して凝集し比重が増加することによって、亜燐酸ニッケルの沈降速度が大幅に増加し、分離効率を向上させることができる。また、亜燐酸ニッケルが凝集するため、浮遊固形物(SS)を極めて効率的に除去することができる。
【0043】
磁性粉末を含んだ亜燐酸ニッケルの沈殿は、炉で焼却することによって、磁性粉末として回収して再利用することができる。また、遠心分離や亜燐酸ニッケルの再溶解により、添加した磁性粉末としての酸化鉄や鉄を分離回収することもできる。
【0044】
以下の実施例において、本発明のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置について、添付した図面を参照しながら具体例に説明する。
【実施例1】
【0045】
本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置の構成を示す図1において、1はニッケル含有水溶液槽であり、このニッケル含有水溶液槽1から反応水槽2へ亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液が供給されるようになっている。
【0046】
反応水槽2には、反応水槽2中の水素イオン濃度を調整するための水酸化ナトリウム水溶液を反応水槽2へ供給するための水酸化ナトリウム水溶液槽3と、反応水槽2中のニッケル含有水溶液を撹拌するための撹拌手段4と、反応水槽2中の水溶液を加熱するための加熱手段5が備えられている。そして、反応水槽2で水素イオン濃度が調整されて亜燐酸ニッケルが析出したニッケル含有水溶液は、沈殿水槽6に供給されるようになっている。
【0047】
沈殿水槽6には、その底部に析出した亜燐酸ニッケルの沈殿を吸着させるための磁場を発生する磁場発生手段7と、磁場発生手段7の磁場に吸着された亜燐酸ニッケルを分離するための配管8が備えられている。また、沈殿水槽6の上部には、上澄み液を分離するための配管9が備えられている。なお、8a、9aはそれぞれ配管8、9に設けられたバルブである。
【0048】
なお、磁場発生手段7は、確実に亜燐酸ニッケルを吸着させるために、好ましくは3T以上の磁場を発生できるものが好ましく、超伝導バルク磁石、超伝導ソレノイド磁石、電磁石、永久磁石のいずれかにより構成することができる。
【0049】
つぎに、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置を用いたニッケルの回収方法について、亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液としてカニゼンめっき又はアモルファスニッケルめっきと呼ばれるニッケル-リン系のめっき廃液を用いた場合を例にとって説明する。
【0050】
はじめに、めっき廃液がニッケル含有水溶液槽1から反応水槽2に供給される。そして、撹拌手段4で撹拌されながら、また、必要に応じて加熱手段5で加熱されながら、反応水槽2に水酸化ナトリウム水溶液槽3から水酸化ナトリウム水溶液が添加される。そして、当初pH4.8程度である水素イオン濃度がpH7(中性)に近い値に調整されることで、ゲル状の亜燐酸ニッケルが析出する。亜燐酸ニッケルが析出したニッケル含有水溶液は沈殿水槽6に供給される。
【0051】
沈殿水槽6において、析出した亜燐酸ニッケルの沈殿は磁場発生手段7の発生する磁場により引き寄せられて速やかに沈降する。そして、沈殿水槽6の底部に凝集したゲル状の沈殿Aは、配管8からバルブ8aを介して抜き取られることによって分離される。また、沈殿水槽6の上澄み液は配管9からバルブ9aを介して抜き取られる。なお、ゲル状の沈殿Aを配管8が閉塞することなくスムーズに排出するには、重力による水圧によって排出する方法のほか、減圧して吸引する方法、配管の一部に設置したポンプによる圧送による方法を用いてもよい。
【0052】
また、反応水槽2又は沈殿水槽6において、亜燐酸ニッケルのゲル状の沈殿Aに、例えば、マグネタイトやヘマタイトなどの酸化鉄、鉄などの磁性粉末が添加されてもよい。磁性粉末が添加されることによって、亜燐酸ニッケルの沈降速度が大幅に増加し、分離効率が向上する。
【0053】
以上のように、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置は、亜燐酸を含有するニッケル含有水溶液の水素イオン濃度を調整することで亜燐酸ニッケルを析出させる反応水槽2と、この反応水槽2で析出した亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させて分離する沈殿水槽6と、この沈殿水槽6において亜燐酸ニッケルを吸着させる磁場を発生する磁場発生手段7とを備えている。
【0054】
したがって、亜燐酸ニッケルを磁場に吸着させることで、大掛かりな装置を必要とせず、かつ、短時間、低コストでニッケルならびに亜燐酸を効率よく回収することができる。また、亜燐酸ニッケルの分離にフィルタなどの分離材料を必要とせず、連続処理により亜燐酸ニッケルを分離することができる。また、磁場発生手段に汎用性があり、分離対象の規模や目的によって超伝導バルク磁石、超伝導ソレノイド磁石、電磁石、永久磁石のいずれかを選択することができる。
【0055】
また、多段式に複数の沈殿水槽と磁場発生手段を直列に配置すれば、より高い分離効率を簡単に得ることができる。したがって、ニッケル含有廃水の浄水に用いることができる。
【実施例2】
【0056】
本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置について、沈殿水槽付近の構成を示す図2に基づいて説明する。なお、上記実施例1と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施例において、磁場発生手段は超伝導バルク磁石で構成されている。10は磁場発生手段としての超伝導バルク磁石であり、沈殿水槽6の底面外部に磁極としての超伝導バルク材料11が近接して配置されている。超伝導バルク材料11には冷却部12が接しており、この冷却部12は冷凍機13により冷却され、さらに超伝導バルク材料11は冷却部12により冷却されるようになっている。また、バルク材料11、冷却部12は、真空容器に収容されており、外部からの熱を遮断し、バルク材料11が超伝導状態に保たれるようになっている。そして、バルク材料11は超伝導状態で励磁されて、磁場を発生するように構成されている。このほか、超伝導バルク磁石10には、真空ポンプ、圧縮機、励磁装置が付属するが、図示していない。
【0058】
以上のように、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置は、前記磁場発生手段が超伝導バルク磁石10であり、バルク磁石の強磁場と急峻な磁気勾配により、効率よく亜燐酸ニッケルを吸着させることができるとともに、磁場発生手段をコンパクトに構成することができる。
【実施例3】
【0059】
本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置について、沈殿水槽付近の構成を示す図3に基づいて説明する。なお、上記実施例1と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施例において、磁場発生手段は超伝導ソレノイド磁石で構成されている。14は磁場発生手段としての超伝導ソレノイド磁石であり、沈殿水槽6の底面外部に磁極が近接して配置されている。そして、超伝導ソレノイド磁石14の中央のボア15に配管8が通されている。
【0061】
以上のように、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置は、前記磁場発生手段が超伝導ソレノイド磁石14であり、大空間に発生する強磁場により、効率よく大量に亜燐酸ニッケルを吸着させることができる。
【0062】
また、同様の構成で超伝導ソレノイド磁石の代わりに電磁石とすることができる。磁場発生手段が電磁石であることで、磁場の変化を急速な磁場変化、交流磁場、パルス状の磁場とすることができ、応用範囲が広がり汎用性を向上させることができる。
【実施例4】
【0063】
本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置について、沈殿水槽付近の構成を示す図4に基づいて説明する。なお、上記実施例1と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施例において、磁場発生手段は永久磁石で構成されている。16は磁場発生手段としての永久磁石であり、沈殿水槽6の底面外部に磁極が近接して配置されている。また、沈殿水槽6の内部における底部には、磁性メッシュ17が配置されている。磁性メッシュ17は、目開き0.1mmから10mm程度の比較的粗い磁性材料からなる網である。そして、配管8の開口部は磁性メッシュ17の近傍に配置されている。
【0065】
以上のように、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルならびに亜燐酸の回収装置は、前記磁場発生手段が永久磁石16であり、装置を簡略化することができ、安価に小規模に装置を構成することができる。
【0066】
また、前記沈殿水槽6中における前記磁場発生手段たる永久磁石16の近傍に磁性メッシュ16を配し、磁性メッシュ16が磁化されることによって急勾配磁場が発生し、磁性メッシュ16に亜燐酸ニッケルの沈殿が凝集するため、亜燐酸ニッケルの分離効率を高めることができる。
【0067】
なお、磁性メッシュ17の代わりに、球状や粒状の磁性ステンレスやめっきを施した鉄を沈殿水槽6中に配置しても、同様の効果を得ることができる。また、実施例1~3の構成に磁性メッシュ17を加えて、亜燐酸ニッケルの分離効率を高めるようにしてもよい。
【実施例5】
【0068】
本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置について、沈殿水槽付近の構成を示す図5、図6に基づいて説明する。なお、上記実施例1、実施例2と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施例において、沈殿水槽6には円板22が立てて配置され、円板22の下部が沈殿水槽6中のニッケル含有水溶液に浸るようになっている。円板21の中心軸を中心とする円上には複数の永久磁石22が等間隔に配置されている。円板21はその中心を軸に回転可能に構成されており、円板21のニッケル含有水溶液の液面Bより下の部分に近接して、永久磁石21が配置された円上に位置するように、超伝導バルク磁石10が配置されている。また、液面Bより上には、円板21に吸着されて捕集された沈殿を離脱させるためのスクレイパ23が円板21に接して設けられている。24はスクレイパ23で円板21から離脱させられた沈殿を収容する貯槽であり、25は沈殿が分離された上澄み液が排出される配管である。
【0070】
つぎに作用について説明する。超伝導バルク磁石11から与えられた強磁場は、沈殿水槽6中のゲル状の沈殿Aを捕集する。そして、円板21を回転させると、沈殿Aは、円板21に設けられた永久磁石22とともに液面Bの上に移動し、スクレイパ23によって円板21から離脱させられ、貯槽24に収容される。このように、超伝導バルク磁石11の近傍に凝集した沈殿Aは、一度捕集されるとその位置を保つため、永久磁石22とともに移動し、簡単に沈殿水槽6の外部へ連続的に導出される。また、沈殿Aは液面Bより上で円板21から離脱させられるため、水分が少ない良好なスラッジとして回収される。
【0071】
以上のように、本実施例のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置は、前記沈殿水槽6中における前記磁場発生手段たる超伝導バルク磁石11の近傍に永久磁石22を備えた円板21を配し、この円板21は回転可能に構成されており、超伝導バルク磁石11で吸着した亜燐酸ニッケルを円板21の永久磁石22に吸着させて分離することができる。
【0072】
なお、円板21の代わりに、布でできたベルト状のシールドを設置して、このシールドを超伝導バルク磁石11上で移動させることで、沈殿Aを引き上げて分離することもできる。
【実施例6】
【0073】
ニッケル濃度が5400ppmのニッケルめっき廃液をpH調整し、亜燐酸ニッケルを沈殿させて除去した。上澄み液のニッケル濃度は1500ppmであり、当初の27.8%に低減された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1のニッケル含有水溶液からのニッケルの回収装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施例2の沈殿水槽付近の構成を示す模式図である。
【図3】実施例3の沈殿水槽付近の構成を示す模式図である。
【図4】実施例4の沈殿水槽付近の構成を示す模式図である。
【図5】実施例5の沈殿水槽付近の構成を示す側面図である。
【図6】実施例5の沈殿水槽付近の構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0075】
2 反応水槽
6 沈殿水槽
7 磁場発生手段
10 超伝導バルク磁石(磁場発生手段)
14 超伝導ソレノイド磁石(磁場発生手段)
16 永久磁石(磁場発生手段)
17 磁性メッシュ
21 円板
22 永久磁石
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5