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明細書 :液体密度測定子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5115934号 (P5115934)
公開番号 特開2011-007756 (P2011-007756A)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
公開日 平成23年1月13日(2011.1.13)
発明の名称または考案の名称 液体密度測定子
国際特許分類 G01N   9/12        (2006.01)
FI G01N 9/12
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2009-154233 (P2009-154233)
出願日 平成21年6月29日(2009.6.29)
審査請求日 平成23年3月31日(2011.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】永井 崇之
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開2008-128750(JP,A)
特開平06-148052(JP,A)
実開平03-097647(JP,U)
特開2008-232890(JP,A)
調査した分野 G01N 9/00-9/22
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
密度測定対象の液体中に浸漬し、浮力による重量減を測定して体積で除することにより当該液体の密度を求める液体密度測定子において、
密度測定対象の液体に対して耐食性のある材料からなる測定子容器内に、重錘が封入され、該測定子容器の内部で重錘との隙間に緩衝材を充填することで該重錘が保持されていることを特徴とする液体密度測定子。
【請求項2】
前記測定子容器は細長状であって、上端に吊り下げ用の係止部を備え、中央の円筒状の胴部に対して上端部と下端部が流線型になっている請求項1記載の液体密度測定子。
【請求項3】
密度測定対象の液体が高温溶融塩であって、測定子容器は石英ガラスからなり、重錘はタングステンまたはタングステン合金からなる請求項2記載の液体密度測定子。
【請求項4】
測定子容器の内部が減圧された状態で封止されている請求項1乃至3のいずれかに記載の液体密度測定子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキメデス法による液体の密度測定に用いる測定子に関し、更に詳しく述べると、上下が流線型をなし細長形状の測定子容器内に重錘を封入した構造の液体密度測定子に関するものである。この液体密度測定子は、特に限定されるものではないが、例えば化学的に活性な高温の溶融塩の密度を高精度に測定するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液体密度測定方法の代表的な例としては、アルキメデス法がある。これは、体積が既知の測定子(「ボブ」とも呼ばれる)を、天秤からワイヤ等で吊り下げて密度測定対象の液体中に浸漬し、その際に生じる浮力による重量減を天秤で読み取り、測定子の体積で除することで液体の密度を求める方法である。
【0003】
上記のようなアルキメデス法による高温液体の密度測定事例としては、測定子として白金-10%ロジウム合金(Pt-10%Rh)製球体を用いたFeO-SiO2 密度測定[非特許文献1]、測定子として白金(Pt)製球体を用いたNa2 O-FeO-Fe2 3 -SiO2 密度測定[非特許文献2]等がある。その他、溶融塩の密度測定事例としては、白金(Pt)製測定子を用いた溶融LiCl-KCl混合塩等の密度測定[非特許文献3]が報告されているが、詳細な測定方法は明らかでない。
【0004】
このように、高温溶融塩の密度測定を行うには、測定子材料として、高密度で且つ高耐食性の材料である白金(Pt)や白金-10%ロジウム合金(Pt-10%Rh)等を用いる必要があるが、それらは非常に高価であり、製作し難いなど、コストの面で著しく不利である。
【0005】
そこで、安価な高密度金属であるタングステン(W)等を測定子材料に用いて、溶融塩の密度測定を試みた。しかし、タングステン製測定子と溶融塩が反応し、測定子表面に腐食による減肉や反応物の析出等が認められ、測定子の重量減が正確に読み取れず、測定密度の精度が低下することが判明した。
【0006】
密度測定対象の液体中での測定子の腐食を回避する技術として、従来、測定子本体表面に窒化硼素、炭化ケイ素、カーボン、白金、シリカ-アルミナ等をコーティングする構造が提案されている[特許文献1]。しかし、このようなコーティング構造では、測定子本体材料とコーティング材料の熱膨張係数が異なるため、例えば高温溶融塩中に測定子を浸漬すると、コーティング膜に亀裂や歪みが生じ、測定子本体の腐食等による測定子表面の凹凸によって、正確な密度測定が行えない欠点がある。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】足立彰,荻野和巳,川崎正蔵,若宮達也,“(70)アルキメデス法による溶融FeO-SiO2スラグの密度の測定,”日本鉄鋼協会第67回講演大会講演論文集(I),鉄と鋼,第3号,473(1964)
【非特許文献2】D. B. Dingwell, M. Brearley, J. E. Dickinson, Jr, “Melt densities in the Na2O-FeO-Fe2O3-SiO2 system and the partial molar volume of tetrahedrally-coordinated ferric iron in silicate melts,” Geochimica et Cosmochimica Acta, Vol.52, 2467 (1988)
【非特許文献3】E. R. Van Artsdalen, I. S. Yaffe, “Electrical Conductance and Density of Molten Salt Systems: KCl-LiCl, KCl-NaCl and KCl-KI,” J. Physical Chemistry, Vol.59, 118 (1955)
【0008】

【特許文献1】特開平6-148052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、安価な材料を使用し且つ製作し易い構造でありながら、密度測定対象の液体が高温溶融塩など腐食性があっても、精度よくアルキメデス法による密度測定が行えるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、密度測定対象の液体について、加熱による温度制御を行い対流が生じていても、その対流が測定に与える悪影響を最小限に抑えることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、密度測定対象の液体中に浸漬し、浮力による重量減を測定して体積で除することにより当該液体の密度を求める液体密度測定子において、密度測定対象の液体に対して耐食性のある材料からなる測定子容器内に、重錘が封入され、該測定子容器の内部で重錘との隙間に緩衝材を充填することで該重錘が保持されていることを特徴とする液体密度測定子である。
【0011】
前記測定子容器は細長状であって、上端に吊り下げ用の係止部を備え、中央の円筒状の胴部に対して上端部と下端部が流線型になっているのが好ましい。なお、吊り下げ用の係止部は、孔でもよいしフックなどでもよい。
【0012】
密度測定対象の液体が高温溶融塩のように化学的に活性の液体の場合には、測定子容器は石英ガラスで作製するのが好ましい。重錘は、タングステンまたはタングステン合金からなる円柱形状あるいはラグビーボール形状等とするのが好ましい。密度測定対象の液体の温度によっては、測定子容器を耐熱性ガラスなどで作製してもよい。なお、重錘は高密度材料であればよく、必ずしも塊状でなくてもよい。
【0013】
なお、測定子容器は、その内部が減圧された状態で封止されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液体密度測定子は、重錘が、耐食性材料からなる測定子容器内に封入されている構造なので、密度測定対象が高温溶融塩のように化学的に活性な液体であっても、腐食による減肉や反応物の析出などが生じず、測定精度の低下を防止できる。特に、測定子容器を石英ガラスで作製し、重錘にタングステンまたはタングステン合金を用いると、安価に製作できる。測定子容器の内部の重錘は緩衝材で保持されているため、たとえ機械的な衝撃が加わっても破損する恐れはない。
【0015】
また、測定子容器を細長状とし、中央の円筒状の胴部に対して上端部と下端部を流線型にすると、測定時の温度制御により密度測定対象の液体に対流が生じても、その対流による浮力への悪影響を回避でき、測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る液体密度測定子の典型例を示す説明図。
【図2】その液体密度測定子の使用状態を示す説明図。
【図3】LiCl-KCl共晶塩の密度測定結果を示すグラフ。
【図4】NaCl-KCl等モル塩の密度測定結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る液体密度測定子の典型的な例を図1に示す。この液体密度測定子は、測定子容器10内に重錘12を封入し、該測定子容器の内部で重錘との隙間に緩衝材14を充填することで該重錘12が保持されている構造である。測定子容器10は、密度測定対象の液体に対して耐食性のある材料からなり、細長状であって、上端に吊り下げ用の孔16が形成され、中央の円筒状の胴部に対して上端部と下端部が流線型に加工されている。

【0018】
ここで想定している密度測定対象液体は高温の溶融塩である。測定子容器10は、高温の溶融塩に対する耐食性材料である石英ガラスで作製し、重錘12は、円柱またはラグビーボール形状の高密度材料からなる塊でありタングステンまたはタングステン合金からなる。測定子容器10と重錘12との隙間に充填する緩衝材14としては、例えば石英ウール等を用いる。測定子容器10は、真空ポンプで内部のガス(空気)を吸引し、減圧した状態で封止される。

【0019】
この液体密度測定子は、外側が石英ガラスで覆われている高温の溶融塩中に浸漬しても腐食する恐れはなく、内部のタングステンまたはタングステン合金からなる重錘によって溶融塩中に浸漬する。測定子容器と重錘との隙間には石英ウール等の緩衝材が充填されているため、重錘が測定子容器に機械的衝撃を与えても破損する恐れはない。測定子容器の内部を減圧した状態で封止しておくと、高温の溶融塩中への浸漬時に危惧される内圧上昇による測定子容器破損が防止できる。

【0020】
なお、密度測定対象の液体によっては(例えば測定温度が600℃以下の場合)、測定子容器の材料に、軟化温度が約650℃の耐熱ガラスを用いることができる。重錘はタングステンあるいはタングステン合金でなくても高密度材料であればよい。孔は、この測定子を天秤から垂下したワイヤ等に接続するのに使用するものであり、孔形状以外にフック形状などでも対応できる。

【0021】
このような構造の液体密度測定子は、例えば次のような手順で製作できる。まず、石英ガラス管の一端を加熱溶融し、底面を肉厚な状態で流線型となるように整え封じる。片閉じ管形状に加工した石英ガラス管の中に緩衝材(石英ウール等)を敷き、重錘(タングステン棒等)を入れる。次に、下部緩衝材と重錘を入れた石英ガラス管の上部をガスバーナーで局所的に加熱して、石英ガラス管の上端の肉厚を厚く、径を小さくするように火箸等で押さえながら絞込む。そして、径が閉塞する前に加熱を中断して、上部緩衝材(石英ウール等)を石英ガラス管の上端開放部から押し込む。なお、重錘が小さい場合、上部緩衝材の挿入を省略してもよい。省略しても、強度に支障がないことが確認されている。上部緩衝材を重錘の上部にセットした後、石英ガラス管の上端開放部に真空ポンプ等の減圧ポンプを接続し、石英ガラス管の内部を減圧させながら、石英ガラス管の上部の径を絞り込んだ部分付近を局所的にガスバーナーで加熱して、石英が軟化した状態で火箸等により押さえ付けて流線型となるように整え密封する。その後、石英ガラス管の上部端を加熱軟化させて引き伸ばし、吊り下げ用の孔となる輪を形成する。所定の形状に成型した後、測定子全体を再加熱して徐々に冷却することで、残留熱歪の少ない液体密度測定子を製作することができる。

【0022】
アルキメデス法による高温溶融塩の密度測定の例を図2に示す。液体密度測定子20をワイヤ22等で天秤24から吊り下げ、測定対象の溶融塩26中に浸漬する。天秤24で液体密度測定子20の重量減ΔWを読み取り、熱電対28で測定した溶融塩の温度Tにおける液体密度測定子20の体積Vで重量減ΔWを除して、溶融塩の密度ρ(=ΔW/V)を求める。ここで、溶融塩26は液体容器30に入れられており、外側に位置する電気炉等の加熱炉32により加熱され、容器蓋34により液体容器30内の溶融塩温度変化を抑制する。天秤24は、容器蓋34の上部に直接又は架台等介して設置され、容器蓋34には、液体密度測定子20を吊り下げるワイヤ22等が通過する孔36が形成されている。溶融塩の温度Tにおける液体密度測定子の体積は、液体密度測定子の材料の熱膨張係数を基に予め算出しておく。

【0023】
ところで密度測定対象である溶融塩の温度は、プロセス条件300~1300℃の範囲で電気炉等加熱炉により制御管理する必要がある。このため、溶融塩中には電気炉等による加熱と溶融塩の気液界面での放熱による冷却に起因して溶融塩中に対流が生じる。この液体密度測定子は、その形状が縦方向に流線型となっているので、対流が浮力に与える悪影響を回避することができる。

【0024】
上記図2に示す測定法は、単一の液体密度測定子による測定の例である。溶融塩を用いる電解プロセスにおいて、連続的に溶融塩の密度を測定する場合、装置構成や測定手順を簡素化するため、このような1個の液体密度測定子を用いる方法が適当である。しかし、溶融塩の粘性が高く、気液界面の表面張力が大きい場合は、次に述べるような2個の液体密度測定子を連設して測定する既知の方法を適用するのが好ましい。

【0025】
下方の液体密度測定子のみを溶融塩に浸漬した時の天秤の重量減ΔW1と、上下両方の液体密度測定子を浸漬した時の重量減(ΔW1+ΔW2)を読み取り、上方の液体密度測定子による重量減ΔW2(=(ΔW1+ΔW2)-ΔW1)を算出する。次に、上方の液体密度測定子による重量減ΔW2を上方の液体密度測定子の体積V2で除することによって、溶融塩の密度ρ(=ΔW2/V2)を得る。これによって、天秤から吊り下げたワイヤ等が及ぼす溶融塩の気液界面の表面張力による影響を排除することができる。

【0026】
密度測定対象となる液体としては、例えば多価の原子価を示すランタニド塩化物やアクチニド塩化物等を含むアルカリ塩化物及びアルカリ土類塩化物並びにこれらの混合塩からなる溶融塩、多価の原子価を示すランタニドハロゲン化物、アクチニドハロゲン化物等を含むアルカリ塩化物、アルカリ土類塩化物及びこれらの混合塩化物並びにこれら塩化物にアルカリハロゲン化物及びアルカリ土類ハロゲン化物を添加した塩化物からなる溶融塩、多価の原子価を示すランタニド酸化物、アクチニド酸化物等を含む溶融アルカリモリブデン酸化物及び溶融アルカリタングステン酸化物塩化物並びにこれら混合酸化物からなる溶融塩などがある。
【実施例】
【0027】
図1に示す構造の液体密度測定子を用いて高温溶融塩の密度を測定した。ここで使用した液体密度測定子は、石英ガラスからなる測定子容器内に、タングステン製の重錘を挿入し、周囲に石英ウールの緩衝材を入れて減圧封入した構造である。測定子容器が耐食性材料からなるため、高温溶融塩と反応することが回避できた。また、測定子容器の上下端部の形状が流線型に加工されているため、溶融塩中で生じる対流の影響を緩和できた。これらの効果により、高温の溶融塩の密度を長時間連続的に安定して測定することが可能となった。
【実施例】
【0028】
溶融塩化リチウム-塩化カリウム(LiCl-KCl)共晶塩の密度を、温度をパラメータに測定した測定例を図3に示す。また、750℃の溶融塩化ナトリウム-塩化カリウム(NaCl-KCl)等モル塩に塩化ネオジム(NdCl3)を添加し、NdCl3濃度をパラメータに測定した溶融NaCl-KCl等モル塩の密度測定例を図4に示す。このようにして高温の溶融塩について密度測定した結果、白金製球体の液体密度測定子で測定した高精度な値と同等な値が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る液体密度測定子を用いて、アルキメデス法による液体の密度測定手法を適用し、化学的に活性な高温の溶融塩の密度を、簡便な装置構成で高精度に測定することが可能となる。本発明に係る液体密度測定子は、例えば、溶融塩を溶媒に用いる電解プロセスにおいて、溶融塩の密度を測定し、溶融塩中の溶存物質濃度を換算し、電解制御の条件設定を行うこと、あるいは溶融塩を溶媒に用いる乾式再処理プロセスにおいて、溶融塩の密度を測定することで、溶融塩中の核物質量の計量管理を行うこと、などに適用できる。
【符号の説明】
【0030】
10 測定子容器
12 重錘
14 充填材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3