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明細書 :熱電変換システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5093520号 (P5093520)
公開番号 特開2011-033429 (P2011-033429A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
発明の名称または考案の名称 熱電変換システム
国際特許分類 G21H   3/00        (2006.01)
G21H   1/10        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI G21H 3/00 H
G21H 1/10
H02N 11/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2009-178670 (P2009-178670)
出願日 平成21年7月31日(2009.7.31)
審査請求日 平成23年3月31日(2011.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】近澤 佳隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開平06-138298(JP,A)
特開昭48-071195(JP,A)
特開2006-138717(JP,A)
調査した分野 G21H 3/00
G21H 1/10
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピンが銅製の熱媒体中に埋め込まれている熱源部と、熱電変換部とを具備し、前記熱源部は、熱源ピンが垂直方向となる状態で前記熱電変換部の加熱側に接触するように配置されていることを特徴とする熱電変換システム。
【請求項2】
ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピンが銅製の熱媒体中に埋め込まれている熱源部と、アルカリ金属熱電変換部とを具備し、前記熱源部は、熱源ピンが垂直方向となる状態で前記アルカリ金属熱電変換部の加熱側に接触するように配置されていることを特徴とする熱電変換システム。
【請求項3】
熱源ピンは、ハステロイ被覆管内にフッ化ストロンチウム熱源を充填し、上部端栓と下部端栓とで塞いだ構造であり、複数本の前記熱源ピンが、銅製の熱媒体中に並列配置されるように埋め込まれて熱源部が形成されている請求項1又は2記載の熱電変換システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電変換システムを交換可能なモジュールとして、そのモジュールを多数、縦横2次元的に並置し集合体とした熱電発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロンチウムを熱源とし、その熱源部と熱電変換部とを組み合わせた熱電変換システムに関するものである。この技術は、高レベル廃棄物の発熱源として問題になっているストロンチウム90を有効利用でき、たとえば船舶用あるいは離島用などの電源として有用である。
【背景技術】
【0002】
電源は、通常、自然エネルギー(水力、風力、太陽光など)あるいは燃料(化石燃料、核燃料)を必要とする。自然エネルギーを利用する場合は、エネルギー供給が外部の自然環境に依存するために不安定であり、特定の環境を整備(ダム建設等)あるいは選択(風量、日照時間等)する必要がある。そのため、たとえば離島用などの電源では、自然エネルギーを利用することが困難な場合も多い。他方、燃料を利用する場合は、定期的な燃料補給が必要となり、燃料補給のコストも大きい。特に、船舶用あるいは離島用などのためには、安定で長期間燃料補給を必要としない電源が望まれる。
【0003】
ところで、ストロンチウム90等の放射性同位体と熱電発電を組み合わせた電源は、従来公知である(例えば非特許文献1参照)。しかし、この技術では、ストロンチウム化合物の熱伝導率が低いために、熱源部の寸法に限界があり数kW以下の小規模電源の設計となっており、特殊な用途に限られている。その他、ストロンチウムを含む焼結固化体によるRI電池が提案されているが(特許文献1)、焼結固化体の場合は発熱密度および熱伝導率ともに低く、熱電変換システムの出力密度の低下が想定され、船舶等に設置するコンパクトな電源には不向きである。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平06-138298号公報
【0005】

【非特許文献1】Paul J. Dick and John W. McGrew, “Application of Strontium-90 to Thermo-electric Power Generation”, Transactions of American Nuclear Society, vol. 15, p. 91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一般的な用途に利用できるように、熱源における熱輸送の問題を解決し、電源の大出力化及びコンパクト化の両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピンが銅製の熱媒体中に埋め込まれている熱源部と、熱電変換部とを具備し、前記熱源部は、熱源ピンが垂直方向となる状態で前記熱電変換部の加熱側に接触するように配置されていることを特徴とする熱電変換システムである。熱電変換部としては、典型的にはアルカリ金属熱電変換部を用いる。例えば、熱源ピンは、ハステロイ被覆管内にフッ化ストロンチウム熱源を充填し、上部端栓と下部端栓とで塞いだ構造であり、複数本の前記熱源ピンが、銅製の熱媒体中に並列配置されるように埋め込まれて熱源部が形成されている構造とする。
【0008】
このような熱電変換システムを交換可能なモジュール構成とし、必要に応じた個数、縦横2次元的に並置し集合体とすることによって、容易に必要な規模の大出力熱電発電装置を構成することができる。
【0009】
熱源としては、原子炉使用済燃料中のストロンチウムが使用できる。ストロンチウムの同位体であるストロンチウム90は発熱量が高く、半減期も30年程度と長い。原子炉使用済燃料中のストロンチウムはストロンチウム90を多く含んでいるため、高レベル廃棄物の発熱源として問題となっている。しかし、このストロンチウムを廃棄物から分離し熱電変換の熱源にすると、高レベル廃棄物処分の問題を解決できると共に、長期間安定な熱源として有望なものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱電変換システムは、熱源部として、ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピンが銅製の熱媒体中に埋め込まれている構造であるので、熱源部の熱輸送の問題(即ち、ストロンチウム化合物の熱伝導率が低いために、熱源部の寸法に限界があるという問題)を解決でき、電源の大出力化及びコンパクト化の両立を図ることができる。また本発明は、ストロンチウムを熱源とする熱源部とアルカリ金属熱電変換部とで構成でき、どちらも構造が簡素であり、可動部がないため、保守性にも優れている。
【0011】
本発明に係る熱電発電装置は、熱電変換システムを交換可能な小型のモジュールの集合体として設計可能なため、もし故障が生じた場合でも影響は特定のモジュール内部に限定され、補修はモジュール交換により容易に対応可能となる。従って本発明は、長期間にわたり安定した電力を供給でき、保守にも高度な専門性を要しない。このため特に船舶用あるいは離島用の電源として有用であり、また定置用電源としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る熱電変換システムの概念図。
【図2】それをモジュール化し集合した熱電発電装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る熱電変換システムの概念図である。この熱電変換システムは、ストロンチウムを熱源とする熱源部10とアルカリ金属熱電変換部12との組み合わせからなる。ここでは、アルカリ金属熱電変換部を下方に設置し、その上方に熱源部を設置する構成としている。

【0014】
熱源部10は、ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピン20を銅製の熱媒体22の中に埋設した構造である。例えば、熱源ピン20は、ハステロイ被覆管30内にフッ化ストロンチウム熱源32を充填し、上部端栓34と下部端栓36とで塞いだ構造である。銅製の熱媒体22は、四角柱体であり、その長手方向に延びるように孔が複数本、平行に均等間隔で穿設されている構造である。複数本の熱源ピン20は、銅製の熱媒体22の各孔内に埋め込まれる。ここで、熱源ピン20と銅製の熱媒体22との間は、熱伝達性能を考慮して互いに密接している必要がある。そこで具体的には、例えば銅製の熱媒体22とハステロイ被覆管30を熱間等方圧加圧加工(HIP加工:Hot Isostatic Pressing)により一体結合するのが望ましい。その場合は、銅製の熱媒体とハステロイ被覆管を一体化し、その後、ハステロイ被覆管に下部端栓を取り付け、内部にフッ化ストロンチウム熱源を充填し、上部端栓を取り付ける手順で製造する。その他、銅製の熱媒体を精度よく製作し、形成した孔にフッ化ストロンチウムを充填した熱源ピンを機械的に嵌入する方法でもよい。この場合には、運転時は銅製の熱媒体の熱膨張が生じるため、熱源ピンと銅製の熱媒体との間で良好な接触を確保できる。

【0015】
アルカリ金属熱電変換(AMTEC:Alkali Metal Thermo-Electric Conversion )部12は、周知のように、アルカリ金属とアルカリ金属イオン伝導性を有する固体電解質とを組み合わせた直接熱電変換装置である。高温のアルカリ金属と低温のアルカリ金属の蒸気圧差を駆動源として固体電解質内をアルカリ金属が移動することで発電する。このようなアルカリ金属熱電変換部自体は、既に様々な構造が提案されているので、それを利用することができる。図1に示す例では、βアルミナ発電素子40、及び毛細管42で構成されており、容器44内にアルカリ金属46が充填されている構造である。容器44の下部にあるアルカリ金属46は低温(250℃程度)に保たれており、毛細管42により容器44の上部のβアルミナ発電素子40に輸送される。容器44の上部は熱源部10と接しているためアルカリ金属46はこの部分で蒸発し低温部分へ再輸送される。このアルカリ金属の低温部から高温部への輸送を通して発電が行われる。但し、本発明で利用可能なアルカリ金属熱電変換部はこのような構造のみに限定されるものではない。

【0016】
更に、本発明では、アルカリ金属熱電変換以外の熱電変換方式を利用することも可能である。例えば、周知のCo-Sb系とBi-Te系の組み合わせを熱電変換素子とする方式、ケイ素化合物とBi-Te系の組み合わせを熱電変換素子とする方式等を採用することが可能である。これらは使用温度、効率等がアルカリ金属熱電変換と同等なため、開発状況に応じて最適なものを熱電変換部に採用することが可能である。

【0017】
前記のような熱源部10は、各熱源ピン20が垂直方向となる状態でアルカリ金属熱電変換部12の上面に載置される。アルカリ金属熱電変換部12と熱源部10とは熱伝達が行われれば十分であるため、接合面表面を十分滑らかな状態として、熱源部をアルカリ金属熱電変換部上に置くだけでよい。このような構造にすると、アルカリ金属熱電変換部と熱源部を独立して交換可能となるため保守補修性も良好となる。

【0018】
図2は、熱電変換システムをモジュールとし、それを集合して大出力化する熱電発電装置の例を示している。熱電変換モジュール50は、熱源部10とアルカリ金属熱電変換部12との組み合わせからなる。熱源部10は、前記のように、ストロンチウム熱源を被覆管で覆った熱源ピンが銅製の熱媒体中に埋め込まれている構造である。ここで、各熱電変換モジュール50の縦横寸法を10×10cm程度(熱源ピン36本分)とすればHIP加工の観点から製作や取扱いが容易となる。また、耐用年数を終了して熱源部を交換する場合、あるいは不具合が発生して交換する場合に、モジュール毎の交換が可能となるため保守補修性が向上する。更に、前記のように熱源部10はアルカリ金属熱電変換部12と独立しているため、各モジュールの熱源部10とアルカリ金属熱電変換部12を個別に交換および補修することが可能である。そのような熱電変換モジュール50を、必要とする出力に応じた台数、縦横2次元的に並置して大容量の熱電発電装置52とする。用途に応じてモジュール設置台数を適宜選定することで、発電出力を自由に調整できる。また、必要に応じて熱電変換モジュールを増設すれば、容易に出力増大にも対応可能となる。
【実施例】
【0019】
アルカリ金属熱電変換部の運転条件としては、高温側を500℃、低温側を250℃とした場合、効率重視の場合は、効率19.7%、熱流束10.8W/cm2 、熱流束重視の場合は効率10.1%、熱流束33.1W/cm2 が可能とされている。ストロンチウム熱源は、崩壊が進むにつれて発熱が低下し、原子炉取出しから5年冷却で0.448W/m3 、20年冷却で0.289W/m3 である。このため、運転初期は高発熱低効率運転、運転末期は低発熱高効率運転とすることにより安定な出力で運転が可能になる。
【実施例】
【0020】
実施例として、1000kW、寿命15年の熱電変換システムを設計した。この条件で必要な熱源部寸法を求めた。必要な熱源部の体積は、熱電変換システムの寿命末期の減衰したストロンチウム(原子炉取出後20年)を基準として評価すると、効率19.7%、熱流束10.8W/cm2 の条件では電気出力密度は2.1W/cm2 、熱源部高さはフッ化ストロンチウム単体では37cmと評価された。寿命初期で減衰が進んでいない状態(原子炉取出5年)では熱流束16.7 W/cm2 を提供可能であり、この時のアルカリ金属熱電変換部側の熱効率は17%程度、電気出力は2.8W/cm2 と評価された。このため、少なめに評価したとしても15年間一定して2W/cm2 の出力が得られることになる。発電設備全体で1MW出力とすると、熱電変換システムの総面積は47m2 になると評価される。この場合、1MWの発電設備に対するストロンチウムの必要量は全体で53kgと見積もられた。
【実施例】
【0021】
ところで、ストロンチウム熱源においては除熱性が問題となる。実際、熱源高さを37cm、発熱密度0.448W/cm3 (原子炉取出5年)の場合では、フッ化ストロンチウムの熱伝導度を1.42W/mKとすると、概略評価においても最高温度は2万℃以上となる。そこで本発明では図1に示すような銅製の熱媒体を利用した熱輸送構造を採用している。寸法的には、ハステロイ被覆管は外径13mm、フッ化ストロンチウム熱源は外径12mm、配列ピッチ16mm、銅製の熱媒体は高さ100cmである。アルカリ金属熱電変換部は高さ10cmとした。この場合、フッ化ストロンチウムの体積密度は44.2%のため熱源部の必要高さは85cmと評価される。フッ化ストロンチウム熱源から発生した熱は、ハステロイ被覆管を介し銅製の熱媒体に輸送され、その銅製の熱媒体によって下部のアルカリ金属熱電変換部まで輸送されることになる。
【実施例】
【0022】
本発明の有効性を確認するため、数値解析による温度分布評価を行った。熱源部は基本的に対称な構造となっているため4本の熱源ピンに着目した計算を実施した。解析結果から熱源部の最高温度は929℃(1202K)と評価された。熱源部の制限は、被覆管とフッ化ストロンチウムの接触部の温度制限である1000℃が目安となるが、熱源部の温度はこれを下回ることが評価され、本発明の銅製の熱媒体による熱輸送構造の有効性が確認できた。
【実施例】
【0023】
本発明では、アルカリ金属熱電変換部と熱源部とも単純な構造となっているため、熱電変換モジュールの個数によって出力を自由に選択することが可能となる。1体の熱電変換モジュールにおけるアルカリ金属熱電変換部を100cm2 (10×10cm)とすると1モジュール当たりの出力は0.2kWとなる。1000kWのためには5000体のモジュールを縦100体、横50体に設置することとなる。この場合、設置面積は10×5mで50m2 と見積もられる。アルカリ金属熱電変換部と熱源部には可動部はなく、故障の要因および運転中の保守項目は限定的になる。耐用年数終了あるいは万が一故障が発生した場合に必要な交換についてはモジュールの交換で対応可能であり、また、前記のようアルカリ金属熱電変換部12と熱源部10は独立して交換可能なため保守補修性にも優れている。
【符号の説明】
【0024】
10 熱源部
12 アルカリ金属熱電変換部
20 熱源ピン
22 銅製の熱媒体
30 ハステロイ被覆管
32 フッ化ストロンチウム熱源
34 上部端栓
36 下部端栓
図面
【図1】
0
【図2】
1