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明細書 :光学材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5565731号 (P5565731)
公開番号 特開2012-102221 (P2012-102221A)
登録日 平成26年6月27日(2014.6.27)
発行日 平成26年8月6日(2014.8.6)
公開日 平成24年5月31日(2012.5.31)
発明の名称または考案の名称 光学材料及びその製造方法
国際特許分類 B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C08K   9/00        (2006.01)
G02B   1/04        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI B82B 1/00
B82B 3/00
C08K 9/00
G02B 1/04
C08L 101/00
G01N 21/27 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 26
出願番号 特願2010-251183 (P2010-251183)
出願日 平成22年11月9日(2010.11.9)
審査請求日 平成25年10月10日(2013.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】不動寺 浩
【氏名】澤田 勉
【氏名】早川 知克
【氏名】筒井 雄史
個別代理人の代理人 【識別番号】100125298、【弁理士】、【氏名又は名称】塩田 伸
審査官 【審査官】繁田 えい子
参考文献・文献 特開2010-044423(JP,A)
調査した分野 C08L
B82B
G02B 1
特許請求の範囲 【請求項1】
金属又は合金のナノ粒子を被覆材料で被覆し、該ナノ粒子を溶媒に分散させてコロイドサスペンション溶液を調製するコロイドサスペンション溶液調製工程と、
前記コロイドサスペンション溶液を基板上に塗布して、前記コロイドサスペンション溶液の液膜層を形成してから、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させて、前記ナノ粒子からなる集積体を形成する集積体形成工程と、
前記ナノ粒子の間に光透過性エラストマー前駆体を充填し、前記光透過性エラストマー前駆体を重合して光透過性エラストマーを形成する光透過性エラストマー形成工程と、
を有し、前記集積体形成工程が、前記液膜層の前記基板と反対側の面にカバー層を形成してから、前記基板を加熱して、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させる工程であることを特徴とする光学材料の製造方法。
【請求項2】
カバー層が、オイルで形成される請求項1に記載の光学材料の製造方法。
【請求項3】
光透過性エラストマー前駆体が、シリコーンオリゴマーである請求項1から2のいずれかに記載の光学材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料及びその製造方法に関する。特に、チューナブルプラズモニクス光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属ナノ粒子間の表面プラズモン共鳴に関する研究が活発に行われている。表面プラズモン共鳴とは、複数のAu、Ag、Pt等の金属ナノ粒子からなる集積体が示す光学量子効果の一つであり、各金属ナノ粒子間の相互作用により定まる光学特性である。表面プラズモン共鳴により、集積体は透過光のうちの一部の波長領域の光を吸収及び散乱する。
金属ナノ粒子間の表面プラズモン共鳴に関する研究としては、次のようなものがある。
【0003】
非特許文献1には、ゲル中にAuナノ粒子を分散固定した構造が示され、pH変化によるゲルの膨潤・伸縮を利用し、Auナノ粒子による局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance、以下、LSPR)の波長をリバーシブルに変化させたことが記載されている。
【0004】
また、非特許文献2には、基板上にアイランド上のAuを形成し、そのAu表面にポリマーを形成してから、その末端にAuナノ粒子を結合させた構造が示され、Auナノ粒子とAuアイランドのナノレベルの間隔をpH変化によって変化させることでLSPR波長をリバーシブルに変化できることが記載されている。
また、非特許文献3にも、同様の記載がある。
【0005】
特許文献1は、化粧品用着色ナノ粒子及びその製造方法に関するものであり、貴金属ナノ粒子はLSPR特性を有しており、粒子径や形状、配列状態によってそのLSPR波長が変化し、ナノ粒子が分散しているサスペンションの色も変化することが示され、このLSPRを利用した色材、化粧品等が開示されている。
非特許文献4には、LSPRの波長が、ナノ粒子の周囲の材料の屈折率によって制御できることが記載されている。
【0006】
特許文献2は、分析用チップとその製造方法及び分析方法に関するものであり、ナノ粒子表面にさまざまな分子を結合させることにより、プラズモン共鳴の波長をシフトさせ、センシングするセンサーが開示されている。なお、この波長シフトは、主にナノ粒子表面の分子が特定の分子と結合することで、ナノ粒子の周囲の屈折率が変化する現象に起因している。
【0007】
非特許文献5、6には、貴金属ナノ粒子のLSPRの研究の歴史的経緯が記載されており、貴金属ナノ粒子はLSPRによって特定の可視光を吸収/散乱すること、また、ナノ粒子の物質、形状、配列状態などでLSPRが大きく変化させることが記載されている。
非特許文献7には、ナノ粒子間隔を接近させることでプラズモン同士のカップリングによりLSPRが変化することが記載されている。
【0008】
また、ナノ粒子の集積方法については下記の文献に記載がある。
非特許文献8には、2次元の単粒子膜を液・液界面を利用するLB法により形成することが記載されている。
また、非特許文献9には、ヘテロ凝集によるレイヤー・バイ・レイヤー(Layer by Layer)積層法が記載されている。
しかし、非特許文献8、9に記載の方法は、特別な製膜装置や特殊技術を必要とする問題がある。
これに対して、非特許文献10に記載の方法は、懸濁液に分散したコロイド粒子が簡便な器具のみで自己集積現象によって自発的に3次元の規則配列構造を形成するプロセスに関するものであり、特別な製膜装置や特殊技術を必要としない。
【0009】
また、Auコロイドの調製方法については、非特許文献11、特許文献3に記載されている。この方法を用いることにより、単分散で粒子径を制御したAuコロイドを簡便に調製できる。
【0010】
更に、構造物の色調変化を、外部応力やガスなどのセンシングに用いた例としては下記の文献に記載がある。
特許文献4は、引張応力により構造色が変化する周期構造を有する弾性体材料とその製造方法に関するものであり、コロイド結晶のフォトニックバンドをチューナブルに制御することが記載されている。
非特許文献12には、量子効果以外の電気抵抗変化を利用した導電センサー、ガスセンサーなどが開示されている。
【0011】
このような研究を通して、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(吸収/散乱)のピーク波長の位置は、金属ナノ粒子の形状及び金属ナノ粒子間の距離によって制御されることが分かってきた。
しかし、何らかの外的要因を光学材料に印加・付加することにより、金属ナノ粒子間の距離を変化させ、局在表面プラズモン共鳴に係る光学特性を可逆的に変化させることができる光学材料(以下、チューナブルプラズモニクス光学材料という。)についての報告はない。
これまで、チューナブルプラズモニクス光学材料に適した形で、光透過性エラストマー中にナノ粒子を密に集積させるプロセス技術がなかったためである。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2009-221140号公報
【特許文献2】特開2009-265062号公報
【特許文献3】特開2007- 23384号公報
【特許文献4】特開2006- 28202号公報
【0013】

【非特許文献1】K.Akamatsu et al.,“Synthesis of pH-Responsive nanocomposite Microgels with Size-controlled gold Nanoparticles from Ion-Doped,Lightly Cross-linked Poly(Vinylpyridine)”,Langmuir,Vol.26,pp.1254-1259(2010).
【非特許文献2】I.Tokareva et al.,“Nanosensors based on responsive polymer brushes and gold nanoparticle enhanced transmission surface Plasmon resonance spectroscopy”,J.AM.CHEM.SOC.,Vol.126,pp.15950-15951(2004).
【非特許文献3】I.Tokareva et al.,“Specific Biochemical-to-Optical Signal Transduction by Responsive Thin Hydrogel Films Loaded with Noble Metal Nanoparticles”AdvMater,Vol.22,pp.1421-1416(2010).
【非特許文献4】T. Okamoto,“Local plasmon sensor with gold colloid monolayers deposited upon glass substrate”,Optics Letters,Vol.25,pp.372-374(2000).
【非特許文献5】山田淳監修、“プラズモンナノ材料の最新技術”、CMC出版(2009年).
【非特許文献6】Y.Xia and NJ.Halas(Eds.)“Synthesis and plasmonic properties of nanostructures”,MRS Bulletin,Vol.30,No.5(2005).
【非特許文献7】E.Hutter and JH.Fendler,“Exploitation of Localized Surface Plasmon Resonance”,Adv.Mater.,Vol.16,pp.1685-1706(2004).
【非特許文献8】S.Huang,G.Tsutsui,H.Sakaue,S.Shingubara,and T.Takahagi,J.Vac.Sci.Technol.B19,“Experimental conditions for a highly ordered monolayer of gold nanoparticles fabricated by the Langmuir-blodgett method”,pp.2045-2049(2001).
【非特許文献9】Gero Decher,Michel Eckle,Johannes Schmitt,and Bernd Struth,Current Opinion in Colloid&Interface Science,“Layer-by-layer assembled multicomposite films”,Vol.3,Issue1,pp.32-39(1998).
【非特許文献10】H.Fudouzi,Journal of Colloid and Interface Science,“Fabricating high-quality opal films with uniform strcture over a large area”,Vol.275,pp.275-277(2004).
【非特許文献11】PN.Njoki et al.,“Size correlation of optical and spectroscopic properties for gold nanoparticles”,J.PhysChem C,Vol.111,pp14664-14669(2007).
【非特許文献12】長岡勉他、“金ナノ粒子を利用する増感化学センサー技術”分析化学、Vol.56,pp201-211(2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ナノ粒子からなる集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変動可能な光学材料及び該光学材料を容易に製造可能とする光学材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち
<1> 金属又は合金のナノ粒子を被覆材料で被覆し、該ナノ粒子を溶媒に分散させてコロイドサスペンション溶液を調製するコロイドサスペンション溶液調製工程と、前記コロイドサスペンション溶液を基板上に塗布して、前記コロイドサスペンション溶液の液膜層を形成してから、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させて、前記ナノ粒子からなる集積体を形成する集積体形成工程と、前記ナノ粒子の間に光透過性エラストマー前駆体を充填し、前記光透過性エラストマー前駆体を重合して光透過性エラストマーを形成する光透過性エラストマー形成工程と、を有し、前記集積体形成工程が、前記液膜層の前記基板と反対側の面にカバー層を形成してから、前記基板を加熱して、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させる工程であることを特徴とする光学材料の製造方法
<2> カバー層が、オイルで形成される前記<>に記載の光学材料の製造方法。
> 光透過性エラストマー前駆体が、シリコーンオリゴマーである前記<>から<>のいずれかに記載の光学材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決することができ、ナノ粒子からなる集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変動可能な光学材料及び該光学材料を容易に製造可能とする光学材料の製造方法を提供することができる。
【0017】
即ち、本発明の光学材料は、被覆材料で被覆される金属又は合金のナノ粒子を複数集積させた集積体と、前記集積体の前記各ナノ粒子間に充填される光透過性エラストマーとを有することから、前記光透過性エラストマーの体積又は形状を可逆的に変化させて前記集積体の前記各ナノ粒子の間隙距離を可逆的に変化させることにより、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長が変動可能とされ、前記光透過性エラストマーを通して外部から前記ピーク波長の変動を視認可能な光学材料とされる。
【0018】
また、本発明の光学材料の製造方法は、金属又は合金のナノ粒子を被覆材料で被覆し、該ナノ粒子を溶媒に分散させてコロイドサスペンション溶液を調製するコロイドサスペンション溶液調製工程と、前記コロイドサスペンション溶液を基板上に塗布して、前記コロイドサスペンション溶液の液膜層を形成してから、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させて、前記ナノ粒子からなる集積体を形成する集積体形成工程と、前記ナノ粒子の間に光透過性エラストマー前駆体を充填し、前記光透過性エラストマー前駆体を重合して光透過性エラストマーを形成する光透過性エラストマー形成工程と、を有することから、前記光透過性エラストマーを体積又は形状を可逆的に変化させて前記集積体の前記各ナノ粒子の間隙距離を可逆的に変化させることにより、集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長が変動可能とされ、前記光透過性エラストマーを通して外部から前記ピーク波長の変動を視認可能な光学材料を容易に製造可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1(a)】図1(a)は、本発明の光学材料の一例を示す平面図である。
【図1(b)】図1(b)は、図1(a)のA-A’線における断面図である。
【図2】チューナブルプラズモニクス原理の一例を説明図であって、体積を変化させた場合の一例を示す図である。
【図3】図2に示した光学材料の消光スペクトルの変化を概念的に示すグラフである。
【図4(a)】図4(a)は、本発明の光学材料の外部応力による形状変化を示す模式図であり、押圧応力による形状変化を示す図である。
【図4(b)】図4(b)は、本発明の光学材料の外部応力による形状変化を示す模式図であり、引張応力による形状変化を示す図である。
【図5】本発明の光学材料の製造方法の一例を説明するフローチャート図である。
【図6(a)】コロイドサスペンション溶液調製工程を説明する工程図(1)である。
【図6(b)】コロイドサスペンション溶液調製工程を説明する工程図(2)である。
【図6(c)】コロイドサスペンション溶液調製工程を説明する工程図(3)である。
【図7(a)】集積体形成工程を説明する工程図(1)である。
【図7(b)】集積体形成工程を説明する工程図(2)である。
【図7(c)】集積体形成工程を説明する工程図(3)である。
【図7(d)】集積体形成工程を説明する工程図(4)である。
【図8(a)】光透過性エラストマー形成工程を説明する工程図(1)である。
【図8(b)】光透過性エラストマー形成工程を説明する工程図(2)である。
【図8(c)】光透過性エラストマー形成工程を説明する工程図(3)である。
【図9】第1のコロイドサスペンション溶液の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、Auナノ粒子の透過電子顕微鏡像である。
【図10】ドデカンチオールの自己組織化膜の形成前後の消光スペクトルを示すグラフである。
【図11(a)】図11(a)は、溶媒の吸収前後の状態を示す透過型光学顕微鏡写真のうち、膨潤前の状態を示す写真である。
【図11(b)】図11(b)は、溶媒の吸収前後の状態を示す透過型光学顕微鏡写真のうち、溶媒を膨潤後の状態の写真である。
【図12】実施例2の光学材料の膨潤前後のLSPRの消光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(光学材料)
本発明の光学材料は、集積体と、光透過性エラストマーとを有し、必要に応じてその他の部材を有する。

【0021】
<集積体>
前記集積体は、被覆材料で被覆されるナノ粒子を複数集積させてなる。
前記集積体の前記各ナノ粒子は、集積され近接配置されることから、前記各ナノ粒子の表面に発生するプラズモンは互いに強く影響しあう。その相互作用は大きく、前記集積体として単一の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を生じさせることができる。これにより、前記光学材料は、前記局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に基づき、特定の光を吸収/散乱し、入射光と波長の異なる光を出射する。
なお、前記集積体の構造としては、単一の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を生じる程度の規則性を有していれば、特に制限はなく、完全にランダムに配列された構造であってもよい。

【0022】
-ナノ粒子-
前記ナノ粒子としては、金属又は合金からなるナノ粒子である限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。前記ナノ粒子を、金属又は合金からなるナノ粒子とすることにより、プラズモンを効率的に発生させることができる。
前記金属又は合金としては、Au、Ag、Cu、Pt及びPdのいずれかから選択される少なくとも1つの金属元素を有するものであることが好ましい。これらを用いることにより、プラズモンを効率的に生成することができ、前記プラズモンによる局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱を大きくすることができる。したがって、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク値を高めることができる。

【0023】
前記ナノ粒子の形状としては、球状であることが好ましい。
なお、本明細書において、前記球状には、断面視で、真円状のもののほか、楕円状のもの、外郭に微小な凹凸を有するものを含み、前記真円状以外の場合の前記ナノ粒子の粒子径は、最も長い直径を指す。

【0024】
前記粒子径としては、数ナノメートルから数百ナノメートルのいわゆるナノサイズである限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~40nmが好ましく、5nm~20nmがより好ましい。
前記粒子径が、5nm未満であると、ファンデルワールス引力で凝集してしまうため安定なコロイド状態を維持できないこと、またプラズモンの寿命(ダンピング時間)が短くなることで局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収及び散乱のスペクトル幅が広がり、強度も小さくなることがある。一方、前記粒子径が40nmを超えると、プラズモンを効率的に生成することができなくなり、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱が小さくなる。前記粒子径が5nm~40nmのナノ粒子を用いることにより、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱を大きくすることができ、5nm~20nmとすることにより、その効果を更に高めることができる。したがって、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク値を高めることができる。
なお、前記粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の各種電子顕微鏡を用いて測定することができる。

【0025】
-被覆材料-
前記ナノ粒子は、被覆材料により被覆されてなる。
前記被覆材料の被覆により、前記ナノ粒子を集積させても、前記ナノ粒子同士の凝集を防ぐことができ、また、前記ナノ粒子同士の静電斥力が弱められるので、前記被覆材料による被覆がない状態よりも、前記ナノ粒子同士の間隙距離を近接させることができる。
例えば、前記被覆材料を形成しない前記ナノ粒子を集積させた集積体は金光沢を示す。これは、前記ナノ粒子同士が凝集するためであると考えられている。そして、このような集積体は膨潤させることができず、LSPRのシフトを生じさせることもできない。前記ナノ粒子が凝集しているため、前記ナノ粒子の間の間隙距離が変化しないためである。

【0026】
前記被覆材料としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ナノ粒子の分散液中に分散させて、前記ナノ粒子に定着可能な種々の低分子化合物、高分子化合物を選択することができるが、中でも、自己組織化膜(Self-Assembled Monolayer、以下、SAMともいう)形成材料が好ましい。
前記自己組織化膜により被膜化された前記ナノ粒子は、前記ナノ粒子同士の凝集を効果的に抑制することができ、また、前記ナノ粒子同士を近接させて、前記ナノ粒子の近接配置を規則的に形成することができる。

【0027】
前記自己組織化膜の形成材料としては、特に制限はなく、例えば、アルカンチオール、シリカシェル層、デンドリマー、シランカップリング剤等を用いることができ、中でも、アルカンチオール、シリカシェル層、デンドリマーが好ましい。これにより、前記被覆材料と前記ナノ粒子との結合を強固にすることができ、前記ナノ粒子の被膜を安定したものとすることができる。

【0028】
前記アルカンチオールとしては、直鎖又は分岐していてもよく、その炭素数は、4以上12以下であることが好ましい。これにより、前記ナノ粒子同士の凝集を、より効果的に防止できる。
例えば、アルカンチオールとしては、炭素数12のドデカンチオールや、炭素数8のオクタンチオール等を用いることができる。

【0029】
前記シリカシェル層としては、前記ナノ粒子をコアとして、いわゆるコア-シェル構造を形成し、前記ナノ粒子を被覆するものが挙げられる。

【0030】
前記デンドリマーとしては、前記ナノ粒子を被覆可能であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
前記デンドリマーの重量平均分子量としては、500~500,000が好ましい。これにより、前記ナノ粒子同士の凝集を、より効果的に防止でき、また、前記ナノ粒子を近接させて、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)効果を高めることができる。

【0031】
隣接する前記ナノ粒子同士の間隙距離は、前記被覆材料の鎖長(例えば、アルカンチオールの場合)ないし材料間の相互作用によって決定される。
また、隣接する前記各ナノ粒子の中心と中心とを結ぶ距離を中心間距離とした場合、この中心間距離は、前記ナノ粒子の間隙距離と前記ナノ粒子の粒子径とが決まれば自動的に決定される。
通常、複数のナノ粒子を集積させても、ナノ粒子の間に静電斥力が働き、各ナノ粒子を一定の距離以上近接させることはできない。
しかし、前記ナノ粒子の表面を被覆材料(自己組織化膜)で被覆することにより、前記各ナノ粒子の間の静電斥力を減少させることができ、前記各ナノ粒子をより近接させることができる。
また、前記各ナノ粒子をより近接させることにより、プラズモンの相互作用を高めることができる。

【0032】
また、前記各ナノ粒子を表面修飾する被覆材料は、スペーサーの役割を有し、前記各ナノ粒子を一定の距離以上近接させないことができる。また、この前記各ナノ粒子の間の最短間隙距離は、前記被覆材料のアルキル基の鎖の長さ(例えば、アルカンチオールの場合)ないし材料間の相互作用を変更することにより制御できる。
即ち、前記各ナノ粒子の間の間隙距離を短くすることにより、前記集積体のプラズモン相互作用を小さくして、前記光学材料の消光スペクトルのピーク波長を長波長側とすることができる。
逆に、前記各ナノ粒子の間の間隙距離を長くすることにより、前記集積体のプラズモン相互作用を大きくして、前記光学材料の消光スペクトルのピーク波長を短波長側とすることができる。

【0033】
<光透過性エラストマー>
前記光透過性エラストマーは、前記集積体の前記各ナノ粒子の間に充填されてなる。
前記光透過性エラストマーとしては、少なくとも可視領域の光の透過性が高い材料であって、360nm~680nmの波長範囲で50%以上であることが好ましい。これにより、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱の変化を前記光学材料の外部から容易に視認できる構成とすることができる。つまり、前記プラズモンによる消光スペクトルの変化、つまり、色の変化の確認が容易となる。
360nm~680nmの波長範囲で光透過率が50%未満の領域がある場合には、その波長領域で、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱の変化、つまり、色の変化の視認が困難となることがある。
なお、光透過率の測定対象となる光の波長範囲を360nm~680nmとするのは、代表的な金属ナノ粒子(金や銀など)のプラズモン共鳴を利用するためである。

【0034】
前記光透過性エラストマーの弾性率としては、常温常圧で10Pa~10Paであることが好ましい。これにより、前記光透過性エラストマーを可逆的に体積可変及び/又は形状可変の材料とすることができる。
前記光透過性エラストマーを可逆的に体積可変及び/又は形状可変させることにより、前記集積体のナノ粒子の間隙距離を可逆的に変化させて、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収/散乱のピーク波長を変化させることができる。なお、本明細書中、常温とは、摂氏25℃、常圧とは、1気圧を示す。

【0035】
前記光透過性エラストマーの形成材料としては、光透過性を有する材料であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン(Poly(dimethylsiloxane):PDMS)エラストマー又はアクリルエラストマーであることが好ましい。
これらの材料はいずれも、360nm~680nmの波長範囲の光透過率が50%以上であり、常温常圧での弾性率が10Pa~10Paの範囲内であるためである。
中でも、シリコーン(Poly(dimethylsiloxane):PDMS)エラストマーが特に好ましい。光透過性エラストマー前駆体として用いるシリコーンオリゴマー等によって、前記光透過性エラストマーを前記光学材料中に容易に形成できるためである。

【0036】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記集積体及び前記光透過性エラストマーを有する層状部を支持する基板が挙げられる。
前記基板としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも一面が平坦で、親水化処理が可能であることが好ましい。このような基板としては、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂シート、PET樹脂シート、サファイヤ基板、SiC基板等が挙げられる。

【0037】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である光学材料を説明する。
図1は、本発明の実施形態である光学材料の一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線における断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である光学材料10は、被覆材料2で被膜されたナノ粒子1と、光透過性エラストマー4とを有する。
複数のナノ粒子1は密にかつ格子状に配列されて集積体5を形成している。集積体5の各ナノ粒子1の粒子径d、中心間距離l及び間隙距離mは、それぞれほぼ一定とされている。

【0038】
次に、本発明の実施形態である光学材料10のLSPRによる消光スペクトルのピーク波長の変化の原理について説明する。
光学材料10は、光透過性エラストマー4の体積又は形状を変化させて、ナノ粒子1間の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変化させる材料、すなわち、チューナブルプラズモニクス光学材料である。

【0039】
図2は、チューナブルプラズモニクス原理の一例を示す説明図であって、体積を変化させた場合の一例を示す図である。図2の左図に示す状態は光透過性エラストマー2の膨張前の状態の光学材料10の模式図である。また、図2の右図に示す状態は光透過性エラストマー2の膨張後の状態の光学材料10の模式図である。
図2に示すように、光学材料10は、可逆的に体積可変の材料であり、いずれの状態でも、粒径dのナノ粒子1が規則性を有して配列されている。
膨張前の状態では、ナノ粒子1の中心間距離lであり、間隙距離はmである。一方、膨張後の状態では、ナノ粒子1の中心間距離l(l>l)であり、間隙距離はm(m>m)となっている。

【0040】
図3は、図2に示した光学材料10の消光スペクトルの変化を概念的に示すグラフであって、膨張前と膨張後のものである。
膨張により、集積体5の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長は、長波長側から短波長側へシフトする。各ナノ粒子1の間隙距離が広がることにより、ナノ粒子1同士の相互作用が弱まるためである。
光透過性エラストマー2の膨潤度が大きいほど、ナノ粒子1の間の距離を大きく変化させることができ、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長の変化を大きくすることができる。
なお、消光スペクトルの形状及びピーク波長はこれに限られるものではなく、ナノ粒子1の材料、粒径、形状及び集積体5におけるナノ粒子1の配列構造、ナノ粒子1間の間隙距離等に応じて決まる。

【0041】
光透過性エラストマー2は、例えば、溶媒を吸収及び排出して体積可変であることが好ましい。これにより、容易に体積を可逆的に変化させて、ナノ粒子1の間隙距離mを変化させ、局在プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長の変化させることができる。また、ピーク波長の変化により、溶媒の吸収量及び排出量をセンシングすることができる光学材料とすることができる。

【0042】
図4は、光学材料10の外部応力による形状変化を示す模式図であって、図4(a)は押圧応力による形状変化を示す図であり、図4(b)は引張応力による形状変化を示す図である。
図4(a)に示すように、光学材料10に押圧応力Fを印加すると、ナノ粒子1の間の押圧応力Fの印加方向の距離はm(m<m)となり、ナノ粒子1の間の押圧応力Fの印加方向と垂直方向の距離はm(m>m)となる
また、ナノ粒子1の中心の間の押圧応力Fの印加方向の距離はl(l<l)とされ、ナノ粒子1の中心の間の押圧応力Fの印加方向と垂直方向の距離はl(l>l)とされる。

【0043】
同様に、図4(b)に示すように、光学材料10に引張応力Fを印加すると、ナノ粒子1の間の引張応力Fの印加方向の距離はm(m>m)となり、ナノ粒子1の間の引張応力Fの印加方向と垂直方向の距離はm(m<m)となる
また、ナノ粒子1の中心の間の引張応力Fの印加方向の距離はl(l>l)とされ、ナノ粒子1の中心の間の引張応力Fの印加方向と垂直方向の距離はl(l<l)とされる。

【0044】
このように外部応力により形状可変であることにより、ナノ粒子1の間の距離は変化して、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変化させる。これにより、光学材料10の外部応力の加わった場所及びその大きさ等をセンシングすることができる。

【0045】
以上、本発明の光学材料によれば、前記光透過性エラストマーの体積又は形状を可逆的に変化させ、前記集積体の前記各ナノ粒子の間隙距離を可逆的に変化させ、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変動可能であるとともに、前記光透過性エラストマーを通して外部から前記ピーク波長の変動を視認可能な光学材料とすることができる。

【0046】
(光学材料の製造方法)
本発明の光学材料の製造方法は、少なくとも、コロイドサスペンション溶液調製工程と、集積体形成工程と、光透過性エラストマー形成工程とを有する。

【0047】
<コロイドサスペンション溶液調製工程>
前記コロイドサスペンション溶液調製工程は、金属又は合金のナノ粒子を被覆材料で被覆し、該ナノ粒子を溶媒に分散させてコロイドサスペンションを調製する工程である。
前記ナノ粒子及び前記被覆材料としては、本発明の前記光学材料と同様の材料を用いることができる。
前記溶媒としては、前記ナノ粒子を分散可能であれば、特に制限はなく材料に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸留水、メタノール、エタノール,プロパノール等が挙げられる。

【0048】
前記コロイドサスペンション溶液調製工程としては、前記ナノ粒子を含む第1のコロイドサスペンション溶液の調製工程と、前記被覆材料で被覆されたナノ粒子を含む第2のコロイドサスペンション溶液の調製工程とを有する。
前記ナノ粒子を含む第1のコロイドサスペンション溶液の調製方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ナノ粒子を含む酸溶液をクエン酸還元法により還元して、前記ナノ粒子が分散されたコロイドサスペンション溶液を調製する方法が挙げられる。
また、前記被覆材料で被覆されたナノ粒子を含む第2のコロイドサスペンション溶液の調製方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第1のコロイドサスペンション溶液に、前記被覆材料の分散溶液を添加し、攪拌して、前記被覆材料で被覆された前記ナノ粒子を含むコロイドサスペンション溶液を調製する方法が挙げられる。

【0049】
<集積体形成工程>
前記集積体形成工程は、前記コロイドサスペンション溶液を基板上に塗布して、前記コロイドサスペンション溶液の液膜層を形成してから、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させて、前記ナノ粒子からなる集積体を形成する工程である。
前記基板としては、前記コロイドサスペンション溶液を塗布する前にあらかじめ親水化処理を行うことが好ましい。

【0050】
ここで、前記集積体形成工程としては、特に制限はないが、前記液膜層の前記基板と反対側の面にカバー層を形成してから、前記基板を加熱して、前記液膜層中の前記溶媒を揮発させることが好ましい。これにより、前記液膜層中の前記溶媒を容易にかつ効率的に揮発させて、容易に前記集積体を形成することができる。
前記カバー層としては、特に制限はないが、オイルで形成されることが好ましく、これにより、前記液膜層を押しつぶすことなく、かつ、前記液膜層を密封するように形成することができるとともに、前記液膜層から前記溶媒を容易に揮発させることができる。

【0051】
<光透過性エラストマー形成工程>
前記光透過性エラストマー形成工程は、前記ナノ粒子の間に光透過性エラストマー前駆体を充填し、前記光透過性エラストマー前駆体を重合して光透過性エラストマーを形成する工程である。
前記光透過性エラストマーとしては、本発明の前記光透過性エラストマーと同様の材料を挙げることができ、前記光透過性エラストマー前駆体としては、重合して前記光透過性エラストマーを形成可能な材料が挙げられる。
前記光透過性エラストマーとしては、シリコーン(Poly(dimethylsiloxane):PDMS)エラストマーが好ましい。前記光透過性エラストマー前駆体として用いるシリコーンオリゴマーによって、前記光透過性エラストマーを前記光学材料中に容易に形成できるためである。

【0052】
前記光透過性エラストマーの具体的な形成方法としては、例えば、溶媒を揮発させて得られた前記集積体に、前記光透過性エラストマー前駆体を塗布し、前記集積体の前記ナノ粒子間に前記光透過性エラストマー前駆体を充填させた後、これを加熱重合して前記光透過性エラストマーを形成する方法が挙げられる。

【0053】
次に、本発明の実施形態である光学材料の製造方法を図を用いてより具体的に説明する。
図5は、本発明の実施形態である光学材料の製造方法の一例を説明するフローチャート図である。
図5に示すように、本発明の実施形態である光学材料の製造方法は、コロイドサスペンション溶液調製工程S1と、集積体形成工程S2と、光透過性エラストマー形成工程S3と、を有して概略構成されている。

【0054】
<<コロイドサスペンション溶液調製工程S1>>
コロイドサスペンション溶液調製工程S1は、ナノ粒子を含む第1のコロイドサスペンション溶液の調製工程と、被覆材料2で被膜されたナノ粒子1を含む第2のコロイドサスペンション溶液の調製工程とを有する。

【0055】
--第1のコロイドサスペンション溶液の調製工程--
図6は、コロイドサスペンション溶液調製工程S1を説明する工程図である。
まず、図6(a)に示すように、液槽28に所定の金属又は合金を含む酸溶液29を調製する。
次に、酸溶液29を所定の温度に加熱してから、所定の濃度のクエン酸(III)ナトリウムを添加してする。このクエン酸還元法により、図6(b)に示ように、溶媒13中にナノ粒子1を含む第1のコロイドサスペンション溶液30が調製される。
溶媒13は、蒸留水である。

【0056】
例えば、所定の金属又は合金を含む酸溶液29としては、テトラフロロ金酸(III)の塩化金酸溶液をイオン交換水で希釈したものを用いる。この場合、球状で、粒子径が約10nmのAuナノ粒子が形成され、これらのAuナノ粒子を含む鮮やかなワインレッド色の第1のコロイドサスペンション溶液が調製される。

【0057】
--第2のコロイドサスペンション溶液の調製工程--
次に、第1溶液30に、被覆材料2を分散させた溶液を添加してから、所定時間攪拌する。これにより、図6(c)に示すように、被覆材料2で被膜されたナノ粒子1を含む第2のコロイドサスペンション溶液14が調製される。

【0058】
例えば、被覆材料2としてはドデカンチオールを用い、溶液としてはエタノール溶液を用いる。この溶液を用いて、第2のコロイドサスペンション溶液14を調製した場合、ドデカンチオール分子は、Auナノ粒子の表面に金-チオール(Au-S)結合を形成し、Au表面と反対側にドデカン基を配置するように自己組織化膜(SAM)を形成する。
その結果、Auナノ粒子からなるワインレッド色の第1のコロイドサスペンション溶液は、ドデカンチオールで被膜されたAuナノ粒子を含む紫色の第2のコロイドサスペンション溶液となる。
なお、これらのコロイドサスペンション溶液の色は、凝集している状態にある複数のナノ粒子1の間の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルによって決まる。

【0059】
<<集積体形成工程S2>>
図7は、集積体形成工程S2を説明する工程図である。
基板12としては、例えば、ガラス基板を用いる。しかし、これに限られるものではなく、少なくとも一面が平坦で、親水化処理が可能な基板であればよい。
まず、基板12の一面12aをプラズマ親水化処理装置で3分間、表面クリーニングを行うことで、基板12の一面12aの親水化を行う。

【0060】
次に、図7(a)に示すように、基板12の一面12a上に、被覆材料2で被覆されたナノ粒子1と溶媒13とからなるコロイドサスペンション溶液14を滴下する。
これにより、基板12の一面12a上にコロイドサスペンション溶液からなる液膜層17を形成する。液膜層17の膜厚は、0.1mm程度とする。

【0061】
次に、図7(b)に示すように、液膜層17の一面17aが完全に覆われるまで、液膜層17の基板12と反対側の面17aにカバー層15を形成する。
カバー層15としては、例えば、10cSt(単位「cSt」は、1cSt=1mm/sである)のシリコーンオイルを用いる(オイル被覆法)。シリコーンオイルオイルでカバーすることにより、液膜層17を押しつぶすことなく、かつ、液膜層17を密封するように形成できるとともに、液膜層17の溶媒13を容易に揮発させることができる。カバー層15の膜厚は、0.1mm程度とする。

【0062】
次に、液膜層17の一面17a上にカバー層15を設けた基板12を、オーブンに搬入して加熱する。例えば、60℃オーブンで約4日間静置する。
これにより、液膜層17中の溶媒13は、被覆したカバー層15を通って蒸発され、図7(c)に示すように、カバー層15と基板12との間には、被覆材料2で被覆したナノ粒子1からなる集積体5が形成される。
次に、図7(d)に示すように、カバー層15を取り除くことにより、基板12の一面12a上に集積体5が形成される。

【0063】
<<光透過性エラストマー形成工程>>
図8は、光透過性エラストマー形成工程S3を説明する工程図である。
図8(a)に示すように、集積体5を構成するナノ粒子1の間に光透過性エラストマー前駆体22を充填する。
光透過性エラストマー前駆体22としては、例えば、シリコーンオリゴマー(ダウ・コーニング社、Sylgarad184)を用いる。これにより、ナノ粒子1の間の細かい隙間にも密に充填することができる。

【0064】
次に、図8(b)に示すように、加熱重合により、光透過性エラストマー前駆体22を光透過性エラストマー4へと転化させる。
例えば、加熱重合により、シリコーンオリゴマーはシリコーン(poly(dimethylsiloxane):PDMS)エラストマーへと転化する。これにより、集積体5のナノ粒子1間の隙間にPDMSエラストマーを充填できる。
次に、図8(c)に示すように、基板12を取り除く。
これにより、本発明の実施形態である光学材料10を製造できる。

【0065】
以上、本発明の光学材料の製造方法によれば、前記光透過性エラストマーの体積又は形状を可逆的に変化させ、前記集積体の前記各ナノ粒子の間隙距離を可逆的に変化させ、前記集積体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による消光スペクトルのピーク波長を変動可能であるとともに、前記光透過性エラストマーを通して外部から前記ピーク波長の変動を視認可能な光学材料を容易に製造することができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明の技術的思想はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
<コロイドサスペンション溶液調製工程>
まず、1質量%のテトラフロロ金酸(III)の塩化金酸溶液(関東化学社製)0.5mLを、イオン交換水45mLで希釈し、煮沸するまで加熱した。
次に、この溶液に38.8mM、1mLのクエン酸(III)ナトリウムを添加し、クエン酸還元法によって、Auナノ粒子のコロイドサスペンション溶液を調製した。このAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液は鮮やかなワインレッド色を呈していた。
【実施例】
【0068】
次に、紫外可視分光スペクトル装置(日本分光株式会社、V-570)を用いて、Auナノ粒子のコロイドサスペンション溶液の消光スペクトル測定を行った。これにより、プラズモン共鳴波長のピークが520nm付近であることが分かった。
図9は、Auナノ粒子のコロイドサスペンション溶液の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、Auナノ粒子の透過電子顕微鏡像である。測定条件は、加速電圧200kVとした。図9に示すように、第1のコロイドサスペンション溶液中のAuナノ粒子の粒子径は、約10~12nmで、球状であることが分かった。
【実施例】
【0069】
次に、ワインレッド(赤)色のAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液3mLに、10mMのドデカンチオール(関東化学社製)のエタノール溶液90μLを添加してから、マグネットスタラーによる攪拌を20分間行った。これにより、紫色のドデカンチオールで被覆されたAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液を調製した。
【実施例】
【0070】
図10は、ドデカンチオールの自己組織化膜形成前後の消光スペクトルを示すグラフである。
図10に示すように、Auナノ粒子のコロイドサスペンション溶液のプラズモン共鳴のピーク波長は520nmであり、ドデカンチオールで被覆されたAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液のプラズモン共鳴のピーク波長は540nmであった。自己組織化膜の形成により、プラズモン共鳴ピーク波長はレッドシフトした。
【実施例】
【0071】
<集積体形成工程>
次に、ガラス基板(15mm)の表面をプラズマ親水化処理装置で3分間、表面クリーニングを行った。
次に、ドデカンチオールで被覆されたAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液をガラス基板の一面上に1mL滴下して、ドデカンチオールで被覆されたAuナノ粒子のコロイドサスペンション溶液からなる液膜層を形成した。
次に、オイル被覆法を用いて、液膜層が完全に覆われるまで、10cStのシリコーンオイル層を形成した。
【実施例】
【0072】
次に、液膜層上にシリコーンオイル層を設けた基板を、オーブンに搬入し、60℃に加熱して、4日間静置することにより、液膜層の溶媒を揮発させた。これにより、被覆したシリコーンオイル層を通って液膜層中の溶媒が蒸発し、シリコーンオイル層と基板との間に、ドデカンチオールで被覆されたAuナノ粒子からなる集積体が形成された。
次に、シリコーンオイル層を取り除いた。
【実施例】
【0073】
<光透過性エラストマー形成工程>
次に、基板上に形成された集積体を完全に覆うように、シリコーンオリゴマー(ダウ・コーニング社、Sylgarad184)を塗布した。これにより、集積体のAuナノ粒子間にシリコーンオリゴマーを充填した。
【実施例】
【0074】
次に、シリコーンオリゴマーを加熱重合した。これにより、シリコーンオリゴマーは、シリコーン(poly(dimethylsiloxane):PDMS)エラストマーへと転化した。これにより、Auナノ粒子間の隙間にPDMSエラストマーを充填できた。
次に、基板を取り除いた。
以上により、Auナノ粒子がハイブリット化したチューナブルプラズモニクス光学材料(実施例1の光学材料)を製造した。
【実施例】
【0075】
-光学材料のTEM写真観察-
まず、実施例1の光学材料の透過型光学顕微鏡写真(TEM写真)観察及び消光スペクトルの測定を行った。
次に、シャーレに実施例1の光学材料を置いた。
次に、実施例1の光学材料を完全に浸漬するように、揮発性のシリコーンオイル(信越化学社製、0.65cSt)をシャーレ内に満たして、実施例1の光学材料を膨潤させてから、再度、実施例1の光学材料の透過型光学顕微鏡写真(TEM写真)観察及び消光スペクトルの測定を行った。
【実施例】
【0076】
図11は、溶媒の吸収前後の状態を示す透過型光学顕微鏡写真であって、図11(a)が膨潤前の状態であり、図11(b)が溶媒を膨潤後の状態の写真である。
膨潤することで初め淡紫色だった部分がわずかに淡赤色に変色した。
【実施例】
【0077】
溶媒を吸収させた前後の実施例1の光学材料の消光スペクトルの測定結果より、膨潤することでLSPRピークが541nmから530nmにブルーシフトすること及びそのシフト量が11nmであることが確認された。
【実施例】
【0078】
次に、実施例1の光学材料内のシリコーンオイルを揮発させた。
透過型光学顕微鏡写真観察及び消光スペクトル測定により、淡赤色に変色した部分が最初の状態の淡紫色に変色し、LSPRピークが541nmに戻ったことを確認した。
【実施例】
【0079】
(実施例2)
ドデカンチオールに代えてオクタンチオールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学材料を製造した。
透過型光学顕微鏡観察により、膨潤することで初め青色だった部分が紫色に変色したことを確認した。
【実施例】
【0080】
図12は、実施例2の光学材料の膨潤前後のLSPRの消光スペクトルを示すグラフである。
図12に示すように、膨潤前は595nmであった消光スペクトルのピーク波長が、膨潤した状態では554nmとシフトした。また、このシフト量41nmであり、実施例1の光学材料の消光スペクトルのピーク波長のシフト量11nmに比較して大きかった。
【実施例】
【0081】
炭素数12のドデカンチオールから炭素数8のオクタンチオールへと、アルカンチオールの炭素長を短くすることにより、LSPRのシフト量を、11nmから41nmと大きくすることができた。
また、炭素数12のドデカンチオールの膨潤前のLSPRピーク波長が541nmであるのに対し、炭素数8のオクタンチオールの膨潤前のLSPRピーク波長は595nmであり、炭素鎖が短いオクタンチオールのLSPRピーク波長の方が高波長側に位置することが確認された。
【実施例】
【0082】
以上の結果を下記表1に示す。
【表1】
JP0005565731B2_000002t.gif
【実施例】
【0083】
[シリコーンオイル種の変更試験]
実施例2の光学材料と同様の方法により光学材料を製造した。この光学材料をシャーレに置いた後、この光学材料を完全に浸漬するように、揮発性のシリコーンオイル(信越化学社製)をシャーレ内に満たし、膨潤前後の光学材料の消光スペクトルの測定を行った。
ここでは、シリコーンオイルとして、下記表2に示す屈折率がほぼ同じのシリコーンオイル1~3を用いて試験を行った。
【実施例】
【0084】
【表2】
JP0005565731B2_000003t.gif
【実施例】
【0085】
前記シリコーンオイル1~3を用いた試験に関し、膨潤前後の光学材料の消光スペクトルの測定結果を下記表3に示す。
【実施例】
【0086】
【表3】
JP0005565731B2_000004t.gif
【実施例】
【0087】
前記表2及び表3の結果から、光学材料におけるPDMSエラストマーの膨潤の程度は、シリコーンオイルの重量平均分子量に関係し、低分子であるほどPDMSエラストマーの膨潤度が大きく、LSPRピークの波長変化が大きくなることが理解される。即ち、膨潤度が大きいと、光学材料における金ナノ粒子間の間隔が大きくなり、金ナノ粒子同士のカップリングが小さくなると理解される。
【実施例】
【0088】
以上のことから、本発明の光学材料は、ナノ粒子の被覆材料、光透過性エラストマーの材料種を適宜選択することにより、特別な測定装置や技術を用いることなく、LSPRピーク波長の変化を通じて目的とする対象を鋭敏に感知し得るセンシング材料として用いることができ、産業界にとって極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の光学材料及びその製造方法は、プラズモン共鳴波長を可逆的にチューニングすることが可能な新規な光学材料及びその製造方法に関するものであり、センシング材料へと応用することが可能であり、センサーを製造ないし利用する電子機器産業等に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0090】
1 ナノ粒子
2 被覆材料
4 光透過性エラストマー
5 集積体
10 光学材料
12 基板
12a 一面
13 溶媒
14 第2のコロイドサスペンション溶液
15 カバー層
17 液膜層
17a 一面
22 光透過性エラストマー前駆体
28 液槽
29 酸溶液
30 第1のコロイドサスペンション溶液
S1 コロイドサスペンション溶液調製工程
S2 集積体形成工程
S3 光透過性エラストマー形成工程
、l、l、l、l、l 中心間距離
、m、m、m、m、m 間隙距離
d 粒子径
図面
【図3】
0
【図1(a)】
1
【図1(b)】
2
【図2】
3
【図4(a)】
4
【図4(b)】
5
【図5】
6
【図6(a)】
7
【図6(b)】
8
【図6(c)】
9
【図7(a)】
10
【図7(b)】
11
【図7(c)】
12
【図7(d)】
13
【図8(a)】
14
【図8(b)】
15
【図8(c)】
16
【図9】
17
【図10】
18
【図11(a)】
19
【図11(b)】
20
【図12】
21