TOP > 国内特許検索 > 金微粒子の製造方法、金微粒子、レーザアブレーション装置、それに用いられる収集部材及び微粒子の製造方法 > 明細書

明細書 :金微粒子の製造方法、金微粒子、レーザアブレーション装置、それに用いられる収集部材及び微粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5432675号 (P5432675)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年3月5日(2014.3.5)
発明の名称または考案の名称 金微粒子の製造方法、金微粒子、レーザアブレーション装置、それに用いられる収集部材及び微粒子の製造方法
国際特許分類 C23C  14/00        (2006.01)
C23C  14/28        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
FI C23C 14/00 A
C23C 14/28
B01J 35/02 J
B01J 37/34
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2009-260846 (P2009-260846)
出願日 平成21年11月16日(2009.11.16)
審査請求日 平成24年10月30日(2012.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】齋藤 健一
【氏名】岡本 睦功
個別代理人の代理人 【識別番号】100104444、【弁理士】、【氏名又は名称】上羽 秀敏
【識別番号】100112715、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 隆夫
【識別番号】100125704、【弁理士】、【氏名又は名称】坂根 剛
【識別番号】100120662、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 桂子
【識別番号】100123906、【弁理士】、【氏名又は名称】竹添 忠
特許請求の範囲 【請求項1】
金からなるターゲットをチャンバ内に配置する工程と、
前記チャンバ内に0.9以上の換算密度を有する超臨界トリフルオロメタンを収納する工程と、
前記ターゲットにレーザ光を照射して、レーザアブレーションにより前記ターゲットから金微粒子を生成する工程と、
前記超臨界トリフルオロメタンを前記チャンバ内に収納する前に、複数の凹部が形成された上面を有する収集部材を前記チャンバ内に配置する工程とを備え、
前記金微粒子を生成する工程は、前記レーザ光の照射を停止した後、前記超臨界トリフルオロメタン中に放出された金微粒子が前記収集部材の前記複数の凹部に堆積するまでの一定時間放置する工程を含む、金微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金微粒子の製造方法であってさらに、
前記金微粒子を生成後、揮発性の液体を前記収集部材の前記凹部に滴下する工程を備える、金微粒子の製造方法。
【請求項3】
超臨界トリフルオロメタン及び金からなるターゲットを収納するチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、穴が形成された上面を有する収集部材と、
前記チャンバ内の前記超臨界トリフルオロメタンの温度が臨界温度以上になるように調整するとともに前記チャンバ内の前記超臨界トリフルオロメタンの圧力が0.9以上の換算密度に対応する圧力になるように調整することにより換算密度が前記0.9以上である前記超臨界トリフルオロメタンを前記チャンバ内に生成する生成装置と、
レーザ光を前記ターゲットに照射するレーザ装置とを備え、
当該レーザアブレーション装置は、前記レーザ光の照射が停止された後、前記超臨界トリフルオロメタン中に放出された金微粒子が前記収集部材の前記穴に堆積するまでの一定時間放置される、レーザアブレーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザアブレーション装置内に配置される収集部材であって、
穴が形成された上面を有する、収集部材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金微粒子の製造方法、金微粒子、レーザアブレーション装置、それに用いられる収集部材及び微粒子の製造方法に関し、さらに詳しくは、レーザアブレーションを利用した金微粒子の製造方法、金微粒子、レーザアブレーション装置、それに用いられる収集部材及び微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1~3は、超臨界流体中でレーザアブレーションを発生することにより種々の微粒子を生成する技術を開示する。本明細書において、超臨界流体は、臨界温度以上の流体と定義される。また、微粒子は、1nm~2μmの粒径を有する粒子と定義される。
【0003】
これらの微粒子は、サイズが小さいため、2μmよりも大きいサイズの粒子と異なる特性(たとえば量子サイズ効果や触媒効果)を有する。
【0004】
非特許文献1~3に開示される微粒子の製造方法は、次のとおりである。チャンバ内にターゲット(Target Material)と基板(たとえば、カプトン(商品名)膜)が配置される。次に、サンプルセル内に超臨界流体が収納される。次に、レーザアブレーションにより、ターゲットから微粒子が生成される。生成された微粒子は基板上に堆積する。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】日本化学会第89春期年会講演予稿集、講演番号3D2-29、「超臨界流体中での強光子場反応で創製した金ナノネットワークのフラクタル次元」、岡本睦功・矢野陽子・加治屋大介・齋藤健一、日本化学会、2009年3月発行
【非特許文献2】2008年日本化学会西日本大会講演要旨集、185頁、「超臨界流体中での強光子場反応で創製した金ナノ構造体のフラクタル次元解析」、岡本睦功・矢野陽子・井上勝晶・齋藤健一、日本化学会、2008年11月発行
【非特許文献3】「光の三原色で発光するシリコンナノ結晶の創製-超臨界流体中での強光子場反応-」、齋藤健一ら、[online]、2008年9月5日、第2回分子科学討論会2008福岡、[2009年9月30日検索]、インターネット<http://www.wdc-jp.biz/msf/ps2008/jp/download_file.php?flag=1&subject_no=2P072>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1及び2は、レーザアブレーションにより、30nm程度の粒径を有する小型の金微粒子や、500nm程度の粒径を有する大型の金微粒子が生成できることを開示する。
【0007】
金微粒子のうち、350nm以上の粒径を有する大型の金微粒子は、高感度の分析試薬等に利用可能である。しかしながら、大型の金微粒子を多数生成できる方法は今まで報告されておらず、上述の非特許文献にも開示されていない。
【0008】
また、上述のとおり、レーザアブレーションにより生成された微粒子はチャンバ内の基板上に堆積する。しかしながら、堆積された微粒子は基板上に散在するため、収集しにくい。
【0009】
本発明の目的は、大型の金微粒子を生成しやすい金微粒子の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、超臨界流体中におけるレーザアブレーションにより生成された微粒子を収集しやすいレーザアブレーション装置を提供することである。
【0011】
本発明による金微粒子の製造方法は、金からなるターゲットをチャンバ内に配置する工程と、チャンバ内に0.7以上の換算密度を有する超臨界トリフルオロメタンを収納する工程と、ターゲットにレーザ光を照射して、レーザアブレーションによりターゲットから金微粒子を生成する工程とを備える。
【0012】
超臨界トリフルオロメタンを超臨界流体として用い、かつ、その換算密度を0.7以上とすれば、350nm以上の粒径を有する大型の金微粒子の生成個数が顕著に増加する。
【0013】
本発明による金微粒子は、上述の金微粒子の製造方法により製造され、350nm以上の粒径を有する。
【0014】
本発明によるレーザアブレーション装置は、チャンバと、収集部材と、生成装置と、レーザ装置とを備える。チャンバは、超臨界流体及びターゲットを収納する。収集部材は、チャンバ内に配置される。収集部材は、凹部が形成された上面を有する。生成装置は、超臨界流体を生成する。レーザ装置は、レーザ光をターゲットに照射する。
【0015】
本発明によるレーザアブレーション装置では、レーザアブレーションにより生成された微粒子が、収集部材の上面に形成された凹部に堆積する。そのため、生成された微粒子を収集しやすい。
【0016】
本発明による収集部材は、上述のレーザアブレーション装置に利用される。
【0017】
本発明による微粒子の製造方法は、ターゲットと、凹部が形成された上面を有する収集部材とをチャンバ内に配置する工程と、チャンバ内に超臨界流体を収納する工程と、ターゲットにレーザ光を照射して、レーザアブレーションによりターゲットから微粒子を生成する工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザアブレーション装置の構成図である。
【図2】図1中の収集部材の斜視図である。
【図3】図2中のIII—III線での断面図である。
【図4】本実施の形態による微粒子の製造方法を示すフロー図である。
【図5】0.9の換算密度を有する超臨界トリフルオロメタンを用いて金微粒子を生成した場合の、収集部材の凹部を上方から見たSEM画像である。
【図6】0.9の換算密度を有する超臨界六フッ化硫黄を用いて金微粒子を生成した場合の、収集部材の凹部を上方から見たSEM画像である。
【図7】0.9の換算密度を有する超臨界二酸化炭素を用いて金微粒子を生成した場合の、収集部材の凹部を上方から見たSEM画像である。
【図8】超臨界トリフルオロメタンの換算密度を変化した場合の、大型金微粒子の生成数を模式的に示す図である。
【図9】超臨界トリフルオロメタンの換算密度と大型金微粒子の生成数との関係を示す図である。
【図10】図5の凹部の一部を拡大したSEM画像である。
【図11】図10にアセトンを滴下した後のSEM画像である。
【図12】図2と異なる他の収集部材の分解斜視図である。
【図13】図12に示す収集部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。

【0020】
[大型金微粒子の概要]
金微粒子は、光を消光する作用を有する。そのため、高感度の分析試薬や、ガン細胞の光熱破壊による治療、ラマン分光および分析用のSERS(Surface Enhanced Raman Scattering)基板、蛍光分光および分析用等のSPR(Surface Plasmon Resonance)基板、電気化学用のESPR(Electrochemical Surface Plasmon Resonance)基板、化学反応用の多光子化学反応基板や光触媒用基板、質量分析用のSALDI(Surface Assisted Laser Desorption/Ionization)基板やMALDI(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization)基板等に利用でき、さらに、微粒子からなる超格子、2次元ならびに3次元フォトニック結晶等に利用できる。

【0021】
これらの用途に利用される金微粒子は可視光を効率よく消光(吸収及び散乱)できるよう、可視光領域の波長と同程度の粒径を有する方が好ましい。より具体的には、金微粒子は、350nm以上の粒径を有するのが好ましい。以下、350nm以上の粒径を有する金微粒子を、大型金微粒子という。大型金微粒子の上限は特に限定されないが、たとえば、1.2μである。好ましい大型金微粒子の上限は、1.0μであり、より好ましい上限は950nmである。

【0022】
[レーザアブレーション装置]
上述の大型金微粒子を生成するレーザアブレーション装置の詳細を説明する。図1を参照して、レーザアブレーション装置100は、チャンバ6と、収集部材6cと、生成装置20と、レーザ装置10とを備える。

【0023】
チャンバ6は、ターゲット6bと超臨界流体とを収納する。チャンバ6は、円筒形の筐体であり、円筒面と2つの端面とを有する。チャンバ6は、例えば、ステンレスからなる。チャンバ6は、各端面の中央部に透明な窓6aを有する。窓6aは、例えば、サファイア窓である。一方の窓6aからはレーザ光が入射する。作業者は、他方の窓6aから内部を観察できる。

【0024】
チャンバ6はさらに、収集部材6cを収納する。収集部材6cは板状であり、チャンバ6の内側底面に配置される。収集部材6cはレーザアブレーションにより生成される微粒子を収集する。

【0025】
ターゲット6bは、微粒子の原料である。ターゲット6bは金からなり、たとえば金インゴットである。ターゲット6bの形状は特に限定されない。本実施の形態では、ターゲット6bは直方体状である。ターゲット6bの表面にレーザ光が照射されると、レーザアブレーションにより、ターゲット6bから金微粒子が生成される。そのため、ターゲット6bの表面は、レーザ光が入射する窓6aに対向する。つまり、ターゲット6bは、チャンバ6内で窓6aを介してレーザ光が入射するように配置される。

【0026】
生成装置20は、超臨界流体を生成する。生成装置20は、ボンベ1と、ポンプ3と、冷却器5と、ヒータ9と、温度検出器7と、制御装置8とを備える。

【0027】
ボンベ1は、超臨界流体の元となる流体を収納する。本実施の形態では、流体は、トリフルオロメタン(CHF)である。ボンベ1内の流体は、圧力弁1aを介して配管2に供給される。配管2に供給される流体は気体である。配管2はボンベ1とポンプ3との間に配置され、ボンベ1とポンプ3とをつなぐ。圧力弁1aは、流体に対して耐膨潤性を有する周知の材料によってシールされる。

【0028】
ポンプ3は、流体をチャンバ6に供給し、チャンバ6に収納される超臨界流体の圧力を調整する。換言すれば、ポンプ3は、チャンバ6内の超臨界流体の換算密度を調整する。ここで、換算密度は、式(1)に示すとおり、流体の臨界密度に対する流体の実際の密度の比で定義される。

【0029】
換算密度=流体の密度(kg/m)/流体の臨界密度(kg/m) (1)

【0030】
配管4はポンプ3とチャンバ6との間に配置され、ポンプ3とチャンバ6とをつなぐ。冷却器5は配管4の隣に配置される。冷却器5は、配管4を通る気体状態の流体(以下、気体流体という)を冷却して液体状態の流体(以下、液体流体という)にする。液体流体は、ポンプ3により、チャンバ6に供給される。液体の方が気体よりも加圧しやすく、超臨界流体を生成しやすい。そのため、冷却器5により気体流体を液体流体にする。

【0031】
ヒータ9は、チャンバ6の円筒面上に配置される。ヒータ9は、チャンバ6内の温度を調整して超臨界流体を生成する。温度検出器7は、熱電対7aを備える。熱電対7aの先端は、チャンバ6内に挿入される。温度検出器7は、熱電対7aを用いて、チャンバ6内の超臨界流体の温度を検出する。制御装置8は、温度検出器7により検出された温度に応じて、ヒータ9を制御する。換言すれば、ヒータ9は、チャンバ6内の超臨界流体の換算温度を調整する。ここで、換算温度は、式(2)に示すとおり、流体の臨界温度に対する流体の実際の温度の比で定義される。

【0032】
換算温度=流体の温度(K)/流体の臨界温度(K) (2)

【0033】
レーザ装置10は、ターゲット6bにレーザ光を照射する。レーザ光がターゲット6bに入射することによりレーザアブレーションが発生する。レーザ装置10は、レーザアブレーションが生じる強度を有するレーザ光を照射する。レーザ装置10はたとえば、Nd:YAGレーザ装置であり、Nd:YAGレーザ光の2倍波長である532nmの波長を有するレーザ光を出射する。

【0034】
レンズ11は、レーザ装置10とチャンバ6の端面との間に配置される。レンズ11は、レーザ装置10から出射されたレーザ光を集光する。集光されたレーザ光は窓6aを介してチャンバ6内のターゲット6bに入射する。

【0035】
超臨界流体内でターゲット6bにレーザ光が入射すると、レーザアブレーションが起こる。レーザアブレーションにより、ターゲット6bから金微粒子が生成される。

【0036】
収集部材6cは上述のとおり、レーザアブレーションにより生成された微粒子を収集する。図2及び図3を参照して、収集部材6cは、板状であり、複数の凹部60cが形成された上面60を有する。凹部60cは、穴(非貫通孔)であり、例えば、上面60に針を刺すことにより形成される。図2では、凹部60cの開口は円形である。

【0037】
収集部材6cの素材は、特に限定されない。収集部材6cの素材は、真鍮に代表される合金や銅に代表される金属であってもよいし、樹脂であってもよい。凹部60cの形状や開口の大きさは特に限定されない。凹部60cは、穴の代わりに、溝であってもよい。たとえば、溝状の凹部60cが格子状に配列されていてもよい。凹部60cの開口の好ましい大きさは0.01mm以下である。凹部60cの好ましい深さは150μm以下であり、より好ましい深さは50~60μmである。

【0038】
[金微粒子の製造方法]
図4は、金微粒子の製造方法を示すフロー図である。図4を参照して、金微粒子の製造方法は、ターゲット配置工程(ステップS1)と、超臨界流体収納工程(ステップS2)と、微粒子生成工程(ステップS3)とを備える。以下、各工程について詳述する。

【0039】
[ターゲット配置工程]
ターゲット配置工程(ステップS1)では、チャンバ6内にターゲット6bと収集部材6cとを配置する。このとき、レーザ装置10と対向するターゲット6bの表面は、レーザ装置10から出射されるレーザ光をほぼ垂直に受光する。収集部材6cは、ターゲット6bの隣に配置される。図1では、収集部材6cは、ターゲット6bの表面のうち、レーザ光を受光する表面と反対側の背面付近に配置される。しかしながら、収集部材6cの配置位置は図1に制限されない。上述のとおり、チャンバ6内に配置された収集部材6cの上面には複数の凹部60cが形成される。

【0040】
[超臨界流体収納工程]
ターゲット配置工程後、超臨界流体収納工程(ステップS2)が実行される。超臨界流体収納工程では、ターゲット6b及び収集部材6cを配置した後、生成装置20により超臨界CHFを生成してチャンバ6内に収納する。超臨界流体収納工程は、以下の2つの工程(ステップS21及びS22)を含む。ステップS21及びS22は並行して実行される。

【0041】
ステップS21では、冷却器5により生成された液体のCHFを、ポンプ3を用いてチャンバ6に供給する。このとき、ポンプ3は、チャンバ6内の超臨界CHFが所定の圧力を有するように、CHFの圧力を調整する。

【0042】
ステップS22では、ヒータ9を用いて、チャンバ6内の温度を調整する。ステップS21でCHFの圧力を調整し、ステップS22でチャンバ内の温度を調整することにより、チャンバ6内で超臨界CHFが生成される。

【0043】
レーザアブレーション装置100は、図示しない圧力計と、図示しない開閉弁とを備える。圧力計はチャンバ6内の圧力を測定する。開閉弁は、チャンバ6に取り付けられ、チャンバ6内の流体をチャンバ6の外部に放出する。ステップS21において、圧力計、開閉弁及びポンプ3を用いて、チャンバ6内の超臨界CHFの圧力を調整する。

【0044】
さらに、熱電対7aは、チャンバ6内の超臨界CHFの温度に起因する起電力を検出する。温度検出器7は、熱電対7aから検出された起電力を受け、その受けた起電力に基づいて、超臨界CHFの温度を検出する。ステップS22において、制御装置8は、温度検出器7により検出された温度に基づいて、チャンバ6内の超臨界CHFの温度が臨界温度以上となるようにヒータ9を制御する。ステップS21及びS22により、チャンバ6内の超臨界CHFの換算密度は調整される。

【0045】
本実施の形態では、ステップS21及びS22により、チャンバ6内の超臨界CHFの換算密度を0.7以上にする。超臨界CHFの換算密度を0.7以上にすれば、大型金微粒子を多数生成することができる。

【0046】
[微粒子生成工程]
超臨界流体収納工程後、微粒子生成工程(ステップS3)が実行される。微粒子生成工程では、レーザアブレーションにより金微粒子を生成する。生成工程は、以下の2つの工程(ステップS31及びS32)を含む。

【0047】
ステップS31では、レーザ装置10を用いて、レーザ光をターゲット6bに照射してレーザアブレーションを発生する。レーザ装置10は、レーザアブレーションが生じる強度を有するレーザ光を照射する。照射時間は、たとえば、5分~10分である。

【0048】
レーザ光を照射されたターゲット6bでは、レーザアブレーションが起こる。そして、金微粒子がターゲット6bから生成され、超臨界CHF中に放出される。

【0049】
所定の照射時間が経過した後、レーザ光の照射を停止する(ステップS32)。その後、一定時間放置する。超臨界流体中に放出された金微粒子は、時間が経つにつれ下方に落ちる。超臨界流体の密度が高いほど、粘性が高くなる。そのため、超臨界流体の密度が高いほど、放置時間を長くするのが好ましい。

【0050】
一定時間放置することにより、超臨界CHF中に放出された金微粒子は、収集部材6cの凹部60cに堆積する。

【0051】
[大型金微粒子の製造条件について]
上述のとおり、超臨界流体として超臨界CHFを選択し、かつ、超臨界CHFの換算密度を0.7以上とすることにより、350nm以上の粒径を有する大型金微粒子が多数生成され、かつ、350nm未満の粒径を有する微小な金微粒子の生成が抑制される。以下、大型金微粒子の製造条件について詳述する。

【0052】
[超臨界CHFについて]
大型金微粒子を生成する場合、超臨界流体として、超臨界CHFが選択される。図5は、超臨界CHFを用いてレーザアブレーション装置100により金微粒子を生成した場合の、収集部材6cの凹部60cを上方から見たSEM画像である。図6は、超臨界六フッ化硫黄(SF)を用いてレーザアブレーション装置100により金微粒子を生成した場合の、収集部材6cの凹部60cを上方から見たSEM画像である。図7は、超臨界二酸化炭素(CO)を用いてレーザアブレーション装置100により金微粒子を生成した場合の、収集部材6cの穴凹部60cを上方から見たSEM画像である。図5~図7の超臨界流体の換算密度はいずれも、0.9とした。

【0053】
図5は、以下の試験により得られた。チャンバ6内の超臨界CHFの温度は32.1℃であり、式(2)で定義される換算温度は1.02であった。超臨界CHFの圧力は5.48MPaであり、式(1)で定義される換算密度は0.9であった。レーザ装置10から照射されるレーザ光の波長は、Nd:YAGレーザ光の2倍波である532nmであり、パルス幅は10nsecであった。また、レーザ光の周波数は20Hzであり、フルーエンスは0.8J/cmであった。以上の製造条件で図4中のステップS1~ステップS3を実行し、金微粒子を生成した。一定時間放置した後、収集部材6cをチャンバ6から取り出した。そして、取り出した収集部材6cを用いて図5に示すSEM画像を得た。

【0054】
図6は、以下の試験により得られた。金インゴット及び収集部材6cが収納されたチャンバ6に、超臨界SFを収納した。超臨界SFの温度は52.0℃であり、式(2)で定義される換算温度は1.02であった。超臨界SFの圧力は4.24MPaであり、式(1)で定義された換算密度は0.9であった。その他の条件は図5の試験と同じであった。

【0055】
図7は、以下の試験により得られた。超臨界COの温度は37.1℃であり、式(2)で定義される換算温度は1.02であった。また、超臨界COの圧力は8.32MPaであり、式(1)で定義された換算密度は0.9であった。その他の条件は図5の試験と同じであった。

【0056】
図5を参照して、超臨界CHFを用いた場合、大型金微粒子が多数生成された。金微粒子の平均粒径は850nmであった。平均粒径は以下の方法で測定された。生成された大型金微粒子から任意に300個の大型金微粒子を選択した。選択された各金微粒子は、いずれも球状であった。各金微粒子の直径を測定し、測定値を粒径とした。測定された300個の大型金微粒子の粒径の平均値を平均粒径と定義した。

【0057】
測定された300個の大型金微粒子の50%以上の粒径が850±50nm以内であった。また、測定された大型金微粒子のうち最小粒径は550nmであり、最大粒径は1090nmであった。

【0058】
一方、図6を参照して、超臨界SFを用いた場合、大型金微粒子がほとんど生成されなかった。また、図7を参照して、超臨界COを用いた場合、金微粒子が生成されたが、その粒径は100nm未満であり、小さかった。さらに、図7に示されるように、複数の微粒子が繋がって線状体67(図7中の白い線状体)になっていた。

【0059】
以上のとおり、超臨界流体として超臨界CHFを用いてレーザアブレーションを発生させると、大型金微粒子が発生しやすい。

【0060】
[換算密度について]
さらに、超臨界CHFの換算密度を0.7以上とすれば、大型金微粒子の生成個数が顕著に増加する。図8は、超臨界CHFの換算密度を0.3~1.9まで変化してレーザアブレーションを発生させた場合の、各換算密度における収集部材6cの凹部60cを上から見たSEM画像である。

【0061】
図8に示される複数のSEM画像は、以下の試験により得られた。図5の場合と同様に、ターゲット6bとして金インゴットを用いた。チャンバ6内の超臨界CHFの温度は32.1℃であり、式(2)で定義される換算温度は1.02に維持した。表1に示すとおり、各試験番号ごとに換算密度を変えて、レーザアブレーションを発生させた。

【0062】
【表1】
JP0005432675B2_000002t.gif

【0063】
表1の「換算密度」欄には、各試験番号での試験における換算密度を示し、「圧力」欄では、各試験番号での試験における圧力を示す。表1以外の他の試験条件は、図5と同じとした。

【0064】
図8中の複数のSEM画像を参照して、大型金微粒子は、試験番号1(換算密度=0.3)及び試験番号2(換算密度=0.6)ではほとんど生成されなかった。

【0065】
一方、試験番号3~8のSEM画像を参照して、換算密度=0.7では大型金微粒子の生成数が顕著に増大した。そして、換算密度=0.9以降では、凹部60cを満たす程度の多数の大型金微粒子が生成された。試験番号3~8で生成された大型金微粒子の粒径の平均は850nmであり、各大型金微粒子の粒径は350nm~1200nmの範囲内であった。

【0066】
図9は、図8中の各換算密度における大型金微粒子の個数を示すグラフである。大型金微粒子の個数は次の方法で求めた。

【0067】
試験番号1及び2(換算密度=0.3及び0.6)については、凹部60c内に収集された大型金微粒子の個数をSEM観察中にカウントした。一方、試験番号3~8については、大型金微粒子の個数が顕著に増えたため、以下の方法で生成個数を算出した。

【0068】
図8中の各試験番号のSEM画像において、大型金微粒子が密集している領域(以下、密集領域という)の面積を測定した。続いて、密集領域のうちの一部の範囲(以下、基準領域という)の面積を測定し、かつ、基準領域内に含まれる大型金微粒子(粒径が350nm以上の金微粒子)の個数Nrをカウントした。そして、以下の式(3)に基づいて、密集領域内の大型金微粒子の個数Ntを算出した。

【0069】
Nt=Nr×密集領域の面積/基準領域の面積 (3)

【0070】
さらに、凹部60cのうち、密集領域以外の領域に散在する大型金微粒子をカウントし、式(3)で求めた値に加算して各試験番号の大型金微粒子の個数とした。

【0071】
図9を参照して、超臨界CHF3の換算密度が0.7になるまでは、換算密度が増加しても大型金微粒子の個数は増加せず、ほぼ100個程度であった。一方、換算密度が0.7になると、大型金微粒子の個数は急速に増大し、約5000個程度となった。そして、換算密度が0.7以降では、換算密度が増加するにしたがって、大型金微粒子の個数は徐々に増加するものの、10000個程度で収束した。とくに換算密度が0.9以上では、換算密度の増加の度合いに対する大型金微粒子の生成個数の増加の度合いは減少した。つまり、換算密度と大型金微粒子の個数との関係を示す曲線C1は、換算密度=0.7近傍に変曲点を有した。

【0072】
以上より、0.7以上の換算密度を有する超臨界CHF中でレーザアブレーションを発生させることにより、大型金微粒子の生成個数が顕著に増大する。その理由は定かではないが、以下の原理が推定される。超臨界CHFは、他の流体に比べ、密度が高くなると比誘電率が顕著に高くなる。分極エネルギーは、比誘電率が高いほど大きくなる。大きな分極エネルギーをもつ流体は、レーザアブレーションにより流体内に放出された、イオン化された金液滴を安定に存在させる。

【0073】
大型金微粒子は、安定に存在する金液滴が、流体の冷却とともに冷却されることで生成される。誘電率の小さな流体は、分極エネルギーが小さいためイオン化された金液滴を安定に存在させることができず、断片化する。換算密度が0.7以上の超臨界CHFは他の流体と比較して分極エネルギーが大きいため、大型金微粒子の断片化を抑制し、大型金微粒子が多数生成されると推定される。

【0074】
超臨界CHF3の好ましい換算密度は0.8以上であり、より好ましい換算密度は0.9以上である。

【0075】
[微粒子配列工程]
本実施の形態による金微粒子の製造方法はさらに、図4に示すように、微粒子配列工程(ステップS4)を備えてもよい。微粒子配列工程は、微粒子生成工程(ステップS3)後、実行される。

【0076】
微粒子生成工程で一定時間放置した後、チャンバ6から収集部材6cを取り出す。続いて、揮発性の液体を凹部60cに滴下する。揮発性液体は、たとえば、アルコールやケトンである。アルコールはたとえば、エタノールやメタノールであり、ケトンはたとえば、アセトンである。

【0077】
チャンバ6から取り出された収集部材6cの凹部60cでは、堆積された大型金微粒子が不規則に配列されている。揮発性液体を滴下すると、凹部60c内の金微粒子の配列が、ある程度整えられる。揮発性液体は、容易に揮発するため、凹部60cに残存しない。

【0078】
図10は、図5の凹部60cの一部を拡大したSEM画像である。図10は、図4中のステップS4で揮発性液体を滴下した後の凹部60cを上方から見たSEM画像である。図10のSEM画像は、次の試験により得られた。図5のSEM画像を得るための試験を実行した後、アセトンを穴60cに滴下した。そして、アセトンが揮発するまで放置した。放置後、図11に示すSEM画像を得た。

【0079】
図10及び図11を参照して、アセトン滴下前(図10)よりも、アセトン滴下後(図11)の方が、金微粒子の配列が揃っていた。したがって、凹部60cに揮発性溶液を滴下すれば、金微粒子の配列はある程度揃うと考えられる。

【0080】
揮発性液体を滴下することにより微粒子の配列が揃う原理は定かではないが、次のように推定される。揮発性液体を滴下する前の微粒子は、van der Waals力のような弱い力で相互作用(物理吸着)している。揮発性液体の表面張力は、この力に比べて10倍以上大きい。従って、微粒子同士の相互作用は、揮発性液体の表面張力により、崩される。相互作用が崩れた微粒子は、表面積を小さくすることにより、自由エネルギーを安定化する。表面積は、隙間を埋めるように配列することで最小となる。以上の原理により、揮発性液体が滴下されることにより、穴60c内の複数の微粒子の配列が揃うと推定される。

【0081】
上述の実施の形態では、複数の凹部60cを有する収集部材6cを用いた。しかしながら、平坦な上面を有する板状の収集部材を用いてもよい。この場合、大型金微粒子は収集されにくいが、換算密度が0.7以上の超臨界CHF中でレーザアブレーションを発生させれば、多数の大型金微粒子を生成でき、収集部材上に堆積する。

【0082】
[収集部材6cについて]
上述のとおり、収集部材6cは、複数の凹部60cが形成された上面60を有する。超臨界流体中において、レーザアブレーションにより複数の微粒子が生成されたとき、生成された複数の微粒子は、収集部材6cの複数の凹部60cに堆積しやすい。要するに、収集部材6cは複数の凹部60cを上面に有するため、生成された微粒子を収集できる。

【0083】
超臨界流体中において、レーザアブレーションにより生成された微粒子が凹部60cに収集される原理は定かではないが、次のように推定される。生成された微粒子は、対流している超臨界流体により、収集部材6cの凹部60cに搬送される。一般的に微粒子の表面積が小さいほど、表面エネルギーは小さい。凹部60cに複数の微粒子が集まると、複数の微粒子全体の表面積が小さくなり、表面エネルギーが低下する。表面エネルギーが小さくなれば、自由エネルギーも小さくなる。そのため、凹部60cに搬送された微粒子は他の場所に移動することなく、凹部60cに滞在し続ける。要するに、対流する超臨界流体により凹部60cに搬送された微粒子は、凹部60cから出ない。以上の原理に基づいて、凹部60cに微粒子が収集されると推定される。

【0084】
このような原理により微粒子が凹部60cに収集されると推定されるため、上述の凹部60cの作用は、超臨界流体の種類及び生成される微粒子の種類に限定されない。たとえば、ターゲット6aとして、シリコンインゴット、銀インゴット、白金インゴット、亜鉛インゴット、マンガンインゴット、チタンインゴット、パラジウムインゴット、ジルコニウムインゴット等の金属、ガリウムヒ素等の化合物半導体、又は合金を用いて、金微粒子以外の他の微粒子を生成する場合でも、それらの微粒子は収集部材6cに収集される。また、臨界流体として、六フッ化硫黄(SF)や、二酸化炭素(CO)、水、メタノール等のアルコール、キセノン、アルゴン、エタン、エチレン等を利用して、レーザアブレーションにより微粒子を生成する場合でも、生成された微粒子は収集部材6cの凹部60cに収集される。

【0085】
上述の実施の形態では、上面60に針を刺すことにより凹部60cを形成したが、凹部60cを他の方法で生成してもよい。たとえば、図12及び図13に示すように、収集部材6cは、上板61と下板62とを備えてもよい。図12を参照して、上板61には、複数の直方体状の貫通孔60dが形成される。下板62は穴を有さず、平坦な上面を有する。上板61が下板62上に配置され固定されることにより、図13に示すように、板状の収集部材6cが形成される。このとき、貫通孔60dの下端は下板62の上面に配置されるため、貫通孔60dは、非貫通孔(凹部60c)となる。

【0086】
収集部材6cの形状は、板状に限られない。たとえば、収集部材は、直方体状であってもよい。また、収集部材は、テーブルのように、1又は複数の脚を備えてもよい。要するに、収集部材は、穴が形成された上面を有していればよい。

【0087】
収集部材6cに形成される凹部60cは1つだけ形成されてもよいし、複数の凹部60cが形成されてもよい。凹部60cは格子状に配置されてもよいし、ランダムに配置されてもよい。

【0088】
また、上述の図4に示した微粒子配列工程(S4)の作用効果は金微粒子に限定されない。他の微粒子の生成する場合であっても、同様の作用効果を生じる。

【0089】
上述の実施の形態では、チャンバ6を円筒形としたが、チャンバ6の形状は円筒形に限定されない。直方体状であってもよいし、他の形状であってもよく、内部が密閉可能な筐体であればよい。

【0090】
上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
6 チャンバ
6b ターゲット
6c 収集部材
10 レーザ装置
20 生成装置
60c 穴
100 レーザアブレーション装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図9】
4
【図12】
5
【図13】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図10】
11
【図11】
12