TOP > 国内特許検索 > 光反応性部位を有する多孔性配位高分子 > 明細書

明細書 :光反応性部位を有する多孔性配位高分子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5295148号 (P5295148)
公開番号 特開2011-168558 (P2011-168558A)
登録日 平成25年6月21日(2013.6.21)
発行日 平成25年9月18日(2013.9.18)
公開日 平成23年9月1日(2011.9.1)
発明の名称または考案の名称 光反応性部位を有する多孔性配位高分子
国際特許分類 C07D 213/22        (2006.01)
C07C 247/18        (2006.01)
C07F   3/06        (2006.01)
FI C07D 213/22 CSP
C07C 247/18
C07F 3/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2010-035671 (P2010-035671)
出願日 平成22年2月22日(2010.2.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行所 錯体化学会 刊行物名 「第59回錯体化学討論会・講演要旨集」 発行日 平成21年9月4日
審査請求日 平成23年3月25日(2011.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】北川 進
【氏名】松田 亮太郎
【氏名】佐藤 弘志
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】小川 由美
参考文献・文献 Tachikawa, Takashi et al,Photoinduced Charge-Transfer Processes on MOF-5 Nanoparticles: Elucidating Differences between Metal-Organic Frameworks and Semiconductor Metal Oxides,Journal of Physical Chemistry C,2008年,112(36),14090-14101
N. Koga et al,Diazodi(4-pyridyl)methane and D1azophenyl(4-pyridyl)methane as Pjotoresponsive Ligands for Metal-Carbene Hetero-Spin Systems,Angewandte Chemie, International Edition ,1996年,35(7),755-757
S. Karasawa et al,Magnetic behaviors after irradiation of assemblies consistig of bis(hexafluoroacetylacetonato)copper(II) and tetrapyridyl-pentadiazo compound in frozen solution,Polyhedron,2003年,22,1877-1882
調査した分野 C07D
C07F
B01J
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
金属イオンと該金属イオンに配位可能なアジド基を有する有機化合物(配位子)とが繰り返し単位を構成する多孔性配位高分子化合物であって、光照射することにより細孔内にナイトレンを発生させることが可能であることを特徴とする多孔性配位高分子化合物。
【請求項2】
構成要素となる配位子が、以下の式1から式4のいずれかを含むことを特徴とする請求項に記載の多孔性配位高分子化合物:
【化1】
JP0005295148B2_000004t.gif
ここでLAは、光照射によりナイトレンを生じさせる為のアジド基であり、LBは、金属原子と配位結合を形成する基である。
【請求項3】
構成要素となる配位子が、5-アジドイソフタル酸を含むことを特徴とする請求項に記
載の多孔性配位高分子化合物。
【請求項4】
構成要素となる金属イオンが、Al3+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びZn2+からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物。
【請求項5】
溶液中で金属イオンを放出する化合物と該金属イオンに配位可能な有機化合物(配位子)を溶液中で反応させることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物を含むセンサー素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンと有機化合物(配位子)からなる多孔性配位高分子化合物及びその製造方法、並びに、該多孔性配位高分子化合物を用いたセンサー素子に関する。
【背景技術】
【0002】
気体分子は、我々の身の回りに無尽蔵にある物質である。最近では、酸素などに圧力を加えて固体にすると超伝導になることなどがわかってきた。この様に、気体という物質は、我々にとって、未踏の新材料である。気体を新材料として実用化するためには何らかの方法で気体分子を整列させて低次元構造化する必要がある。例えば、酸素を考えた場合、-218℃以下にまで冷却すると分子は固体となり一定の配列を持つ構造となるので新材料としての期待が持たれるが、このような温度は実用上あまりにも多くの制約を伴う。また、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のような物理的手法を用いて分子を整列させる方法もあるが、この手法では分子を基盤に1個ずつおいていくようなものなので、一時に大量に整列させることができないし、材料としての汎用性に欠ける。また、多数の分子(数千~数百万個)を1次元に整列させるためには強制力を必要とするため、容易に実現できるものではない。
【0003】
そこで、考えられることは、気体分子が整列保持されるような言わば「器」のようなものを利用して気体分子を整列保持できないかということである。このような器になりえる材料として容易に思いつくことができるのは、ゼオライトなどの無機材料や、活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料などの多孔性材料である。しかし、これらの多孔性材料は、孔の大きさが、気体分子を整列させて保持するには大きすぎたり不均一であったりするとともに、チャンネル形状(孔の入口の形状) が収容する気体分子に適していなかったりするので、とにかく保持できればよいといった要求には応えることができるが、整列させて保持するという要求には応えることができない。
【0004】
ところで、本発明者らは、ナノメートルの大きさを持つ細孔を規則正しく並べた物質を、あたかもブロックを組むようにデザインし、化学的に合成する研究をこれまで精力的に行ってきた。その研究成果として、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子の合成に成功している。この配位高分子は、遷移金属カチオンと有機架橋配位子が分子レベルで直接交互に結合した有機・無機の複合物質であり、その特徴としては、常に均一な構造を保つこと、自在に分子レベルから設計し、単に室温、1気圧で混ぜるだけで合成することができること(自己集合)、数グラムでバスケットボールコートからサッカーグラウンドまでの表面積を持つといったことが挙げられ、ガス貯蔵材料として期待されている。
【0005】
このような配位高分子の一例としては、遷移金属カチオンと第1有機架橋配位子から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子が各層に存在する遷移金属カチオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構造を有するものがあり、その具体例として、遷移金属カチオンとしての銅イオン(2価金属イオン) と第1有機架橋配位子としての2,3-ピラジンジカルボン酸(pzdc) から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子としての4,4’-ビピリジル(bpy)が各層に存在する銅イオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構成を有するCu(bpy)(pzdc) がメタンの貯蔵能力に優れることを明らかにしている(下記の特許文献1を参照)。
【0006】
上記の研究成果は、配位高分子をガス貯蔵材料として利用することを目的として得られたものであり、これまで、ガス貯蔵材料としての配位高分子の設計は、いかに多量のガスを貯蔵させるかという視点に基づいて行われてきた。従って、配位高分子を利用して気体分子を配列させるためにはどのような設計を行えばよいか、意図したように配位高分子を設計できたとしても、気体分子を思い通りに配列させることができるかといった点については未知の領域であった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許3746321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成し、光照射させることによって細孔内に電子欠損種を発生させ、気体の分子を、整列保持させる方法およびこのようにして気体分子が保持された材料及び製造方法、並びに、該配位高分子化合物を用いたことにより、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野において好適に使用することができ、高機能・高性能な、機能性膜、機能性複合材料、機能性構造体、及び、分子レベルでの検出乃至分析が可能である高性能なセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の点に鑑みて種々の検討を行った結果、多孔性配位高分子を構成する有機架橋配位子の種類を選択して、具体的には、電子欠損種を発生させることが可能である官能基部位を導入した配位子を用いることによって多孔性配位高分子を合成した場合、光照射することにより細孔内に電子欠損種が発生する多孔性配位高分子化合物を得ることに成功した。また、細孔内に電子欠損種が存在している状態で気体分子を吸着した場合、細孔内で光反応を起こすことを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)~(9)の発明を提供するものである
(1) 金属イオンと該金属イオンに配位可能な有機化合物(配位子)とが繰り返し単位を構成するた多孔性配位高分子化合物であって、光照射することにより細孔内に電子欠損種を発生させることが可能であることを特徴とする多孔性配位高分子化合物。
(2) 光照射することによって得られる電子欠損種がラジカル、カルベンまたはナイトレンである(1)に記載の多孔性配位高分子化合物。
(3) 構成要素となる配位子に電子欠損種を生じさせる為の官能基部位としてアジド基を有することを特徴とする(2)に記載の多孔性配位高分子化合物。
(4) 構成要素となる配位子が、以下の式1から式4を含むことを特徴とする(2)又は(3)に記載の多孔性配位高分子化合物:
【0011】
【化1】
JP0005295148B2_000002t.gif

【0012】
ここでLは、光照射により電子欠損種を生じさせる為の官能基部位であり、Lは、金属原子と配位結合を形成する基である。
(5) 構成要素となる配位子が、5-アジドイソフタル酸を含むことを特徴とする(4)に記載の多孔性配位高分子化合物。
(6) 構成要素となる金属イオンが、Al3+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びZn2+からなる群から選ばれることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物。
(7) 溶液中で金属イオンを放出する化合物と該金属イオンに配位可能な有機化合物(配位子)を溶液中で反応させることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物の製造方法。
(8) (1)~(6)のいずれかに記載の多孔性配位高分子化合物を含むセンサー素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として好適に使用することができ、高機能・高性能な、機能性膜、機能性複合材料、機能性構造体、及び、分子レベルでの検出乃至分析が可能である高性能なセンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】〔Zn2(aip)(bpy)2(DMF)〕の結晶構造模式図である。
【図2】実施例1の多孔性配位高分子化合物の77Kにおける光照射下でのESRスペクトルである。(A) 5-アジドイソフタル酸 [有機配位子のみ](B) [Zn2(aip)2(bpy)2]n [配位高分子化合物]
【図3】実施例1の多孔性配位高分子化合物の80kPaの酸素雰囲気下、120Kにおいて10時間光照射を行った後、酸溶液で分解後のNMRスペクトルである。(A) 光照射前の配位高分子化合物(B) 光照射後の配位高分子化合物 ●+▲(C) 有機化合物 (ニトロイソフタル酸) ●(D) 有機化合物 (ニトロソイソフタル酸)▲
【発明を実施するための形態】
【0015】
(光照射することにより細孔内に電子欠損種を有する多孔性配位高分子化合物)
配位高分子は、金属元素と有機配位子の反応により得られる高分子で、その主鎖の繰り返し単位が配位結合によって結合しているものをいう(「理化学事典 第4版」、久保、長倉、井口、江沢編集、岩波書店、1987)。本発明に使用される配位高分子化合物は、光照射することによって細孔内にラジカル、カルベン、ナイトレン等の電子欠損種を有する配位高分子化合物である。生成する電子欠損種はラジカル、カルベン、ナイトレンが考えられるが安定化の観点からナイトレンが最も好ましい。

【0016】
(金属元素)Al3+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+
前記金属イオン(金属原子) としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、長周期型周期表における6族元素から12族元素の中から選択される元素のイオン(原子) が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2 種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記金属イオン二量体ユニットを形成可能とする観点からは、2価以上の金属イオンが好ましく、規則的な有機金属層を形成する観点からは、アルミニウムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ニッケルイオン、及び亜鉛イオンから選択される金属イオンが更に好ましく、入手が容易である銅イオン及び亜鉛イオンが特に好ましい。なお、前記金属イオンは、前記有機金属錯体構造体の製造の際の原料としては、該金属イオンを含む塩等の化合物を使用してもよい。金属イオンの塩としては、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などが挙げられる。

【0017】
(有機配位子)
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記金属イオンに架橋可能な架橋配位子が好適に挙げられる。該有機化合物が前記架橋配位子である場合には、前記金属イオンと前記有機化合物とで前記金属錯体層を形成することができる。前記有機化合物の具体例としては、比較的安定で高強度な前記有機金属層を形成する観点からは、環状構造を有する化合物が好適に挙げられる。 前記環状構造を有する化合物としては、例えば、脂環式化合物及びその誘導体、芳香族化合物及びその誘導体、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体から選択されるものが好ましい。この場合、前記有機金属錯体構造体においては、該有機化合物におけるヘテロ原子が一の金属イオンに対して配位結合可能であると共に、該有機化合物における架橋性部が他の金属イオンに対して架橋可能である。

【0018】
具体的な有機配位子としては、以下の式1~式4からなる配位子がより好ましい。

【0019】
【化2】
JP0005295148B2_000003t.gif

【0020】
ここでLは、光照射により電子欠損種を生じさせる為の官能基部位であり、Lは、金属原子と配位結合を形成する基である。

【0021】
:配位結合可能な基(以下、配位結合基と称する場合もある)は2個以上有していることが好ましく、より好ましくは、配位結合基を2個以上有する芳香族化合物である。配位結合基は3~6個、複数個所有していても問題はないが、得られる配位高分子が複雑になる為、2個が好ましい。配位結合基は、金属原子と配位結合を形成できるものであれば特に制限はない。例えば、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、硝酸基、硫酸基、炭酸基及びリン酸基等を挙げることが出来る。好ましい配位結合基は、カルボキシル基(-COOH)、チオール基(-SH)、ジチオカルボキシル基(-CSH)又はスルホン酸基(-SOH)であり、合成される配位高分子の安定性の観点より、カルボキシル基が特に好ましい。

【0022】
:光照射により電子欠損種を生じさせる為の官能基部位は、複数個所有していても問題はないが、得られる配位高分子が複雑になる為、1個が好ましい。電子欠損種を生じさせる為の官能基としては、ラジカルを発生させることができるベンゾインや、カルベンを発生させることができるジアゾ基、ナイトレンを発生させることができるアジド基を挙げることが出来る。有機配位子の安定性上、アジド基が特に好ましい。

【0023】
:配位結合可能な基としてはカルボキシル基が好ましく、L:光照射により電子欠損種を生じさせる為の官能基部位としてはアジド基が特に好ましいが、容易に合成可能な、式2の有機配位子である5-アジドイソフタル酸が最も好ましい。

【0024】
本発明の有機配位子は、上記の式1~式4の配位子と金属に二座配位可能な有機配位子(以下、「二座配位子」)を組み合わせて使用することが好ましい。このような二座配位子としては、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5-ジメチルピラジン、4,4’-ビピリジル、2,2’-ジメチル-4,4’-ビピリジン、1,2-ビス(4-ピリジル)エチン、1,4-ビス(4-ピリジル)ブタジイン、1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン、3,6-ジ(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、2,2’-ビ-1,6-ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス-1,2-ビス(4-ピリジル)エテンなどが挙げられ、4,4’-ビピリジルが好ましい。

【0025】
(多孔性材料の製造方法)
上述の金属元素、有機配位子、溶媒を混合して拡散させるだけで得られることもあるが、ゼオライト合成と同様オートクレーブなどの耐圧容器に入れ高温・加圧下で反応させても良い。

【0026】
また反応する有機配位子の配位結合基は、酸のままでもアルカリ金属塩化しても良い。混合比は配位子の配位結合基に対し金属カチオンがモル比として1:1程度が好ましく、その比率よりをどちらかを過剰ないし大過剰に用いてもよい。好ましくは配位子の量を多く入れた場合の方が得られる錯体の比表面積が大きくなることもあるが、経済的に良くない。

【0027】
二座配位子を用いる場合、混合比は二座配位子の配位結合基に対し金属カチオンがモル比として1:1程度が好ましく、その比率よりをどちらかを過剰ないし大過剰に用いてもよい。

【0028】
反応温度は、通常、常温~300℃の間である。反応温度が余りに高いときには生成物が分解する怖れがあるので、好ましくは、250℃以下である。
反応時間は、反応温度は合成のスケールによって一概には決められないが、低温であるほど長時間を要し、一般に30分~3週間である。反応を均一溶媒で実施する際は数時間程度で問題ないが、耐圧容器下、不均一条件で反応を実施する場合は長時間、具体的には1週間程度必要とする場合もある。

【0029】
(助触媒)
配位高分子化合物の合成反応をより促進させるため沸酸、塩酸、蟻酸、酢酸、硝酸など少量の酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリを反応溶媒に加えてもよい。酸やアルカリは多量に用いると配位高分子化合物の合成を妨げる為、配位子に対して0.1~10倍モル、好ましくは1~5倍モル程度が良い。

【0030】
(溶媒)
溶媒に関しては水、アセトン、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン等の有機溶剤のいずれを使用しても良く混合させても良い。溶媒の使用量に関しては特に限定はないものの、重量基準で10~2000倍程度が反応制御の容易さの点で好ましい。

【0031】
(配位高分子化合物の洗浄、単離操作)
反応終了後、沈殿物をろ過、遠心分離することによって、生成物を簡単に単離することができる。生成物単離後は、必要に応じ水や有機溶媒による洗浄を行う。単離された生成物を吸着材として使用するためには、これを速やかに減圧下で加熱することによって、脱溶媒することが特に好ましい。脱溶媒することにより配位高分子化合物が安定化して多孔質構造が維持される傾向にある。その加熱温度は、50~350℃程度が好適である。なお脱溶媒せずに長時間、例えば数日間放置すると、配位高分子化合物の結晶構造が変わり、比表面積が減少し吸着材、触媒としての性能を損ねる怖れがある。

【0032】
(多孔性材料の形状)
このような本発明の配位高分子化合物の形状は、特に制限されないが、粒子状或いは膜状であることが好ましい。形状が粒子状の場合、粒子の平均粒径は0.01~100μmであることが好ましく、0.01~50μmであることがより好ましく、0.1~50μmであることが特に好ましい。

【0033】
(用途)
本発明の配位高分子化合物は光照射させることによって細孔内に電子欠損種を発生することができ、細孔内に電子欠損種が存在した状態でガス吸蔵させることによって分子を整列保持した状態で変換可能であることから分子センサー素子として使用可能である。
また、本発明の多孔性配位高分子化合物は、分子レベルでの検出乃至分析が可能である高性能なセンサーであることから電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野などの用途においても使用可能である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
光照射により電子欠損種の同定に関しては、以下の装置及び条件に示す方法にて実施した。
光照射装置:オプチカルモジュレックスSX-UI 501HQ(ウシオ電機株式会社製)
光源:超高圧水銀ランプUSH-500SC(ウシオ電機株式会社製)
電子スピン共鳴(ESR)装置 :JES-FA100(日本電子株式会社製)
測定セル:石英製チューブ(外径5ミリメートル)
測定条件:真空(<10-2 Pa)中、-196℃
また、合成した有機配位子並びに、ガス吸蔵下、光照射により生じた電子欠損種と反応した配位子の同定には、以下の装置及び条件にて評価した。
核磁気共鳴装置:JNM-ECS400(日本電子株式会社製)
共鳴周波数:399.8 MHz
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(濃塩酸5%混合)
測定温度:20℃
積算回数:128回
【実施例】
【0036】
<X線単結晶構造解析>
尚、配位高分子化合物のX線回折の測定は、粉末X線回折装置を用い、ターゲットにMoを有するX線管球から発生したX線を試料に照射し、試料により回折された回折X線を検出することにより行なった。
【実施例】
【0037】
X線回折装置:極微小結晶用単結晶構造解析装置VariMax(株式会社リガク製)
使用X線:MoKa線(l = 0.71069 A)
測定温度:-180℃
結晶サイズ:0.20 x 0.05 x 0.05 ミリメートル
実施例1.多孔性配位高分子合成例
[5-アジドイソフタル酸の合成]
5-アミノイソフタル酸(東京化成(株)製:試薬)5gの2mol/リットル塩酸溶液500mlを0℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム(和光純薬社製: 試薬)2gの水溶液50mlを15分間かけて加え、得られた溶液を0℃で15分間撹拌した。得られた黄色溶液にアジ化ナトリウム(和光純薬社製: 試薬)1.9gの水溶液50mlを20分間で加え、0℃で30分撹拌し、室温に戻した後、さらに12時間撹拌を続けた。析出した固体をろ別、水にて洗浄したのち、乾燥させることで、5-アジドイソフタル酸を収率94%で得た。
[多孔性配位高分子の合成]
硝酸亜鉛六水和物1.19 mg(0.04 mmol)をDMF(ジメチルホルムアミド)2mlに溶解させてB液とし、直管に仕込んだ。次いで、DMF0.2ml 及びメタノール0.2mlからなる溶媒(C 液) を、上記の直管のB液の上に静かに加えた。そして、aip(5-アジドイソフタル酸)8.3mg(0.04mmol) とbpy(4,4’-ビピリジン)6.2mg(0.04mmol)をメタノール2mlからなる溶媒に溶解させてA液とし、これを上記直管のC液の上に静かに加えた。その後、直管を静置したところ、各液は徐々に混合していき、室温にて2週間放置し、生じた薄黄色結晶を吸引濾過した後、室温にて真空乾燥したところ、目的物である錯体が8.1mg得られた。
【実施例】
【0038】
この結晶についてX線回折を行い、構造を解析した結果、亜鉛イオンとaipが形成する1次元ラダー構造がbpyによって連結されて2次元シート構造を形成していることが分かった。さらにその2次元シート同士が積層し、多層構造となって結晶を構成しており、この層間に空間を有する、組成式が、〔Zn2(aip)(bpy)2(DMF)〕で表されるものであることが判明した。この構造体を模式的に示したのが図1である。
得られた結晶を120℃で減圧乾燥した後、目的物である多孔性配位高分子7.2mgを得た。
[電子欠損種の生成]
続いて上記配位高分子1mgを石英製チューブに詰め、真空下で封入した試料に対して、77Kにて超高圧水銀ランプにより30分間光照射を行い、ESRスペクトルでモニターした。このモニター結果が図2である。
【実施例】
【0039】
図2のESRスペクトルでは、光照射後の試料において、700mT付近に三重項ナイトレンに帰属できるシグナルが得られた。このことは、細孔表面で光反応を起こしたアジド基が三重項ナイトレンへと変換されていることを証明する。
[ガス吸蔵下での電子欠損種発生]
本多孔性配位高分子を80kPaの酸素雰囲気下、120Kにおいて10時間光照射を行った後、少量の塩酸を加えて多孔性配位高分子を構成成分である金属イオンと有機配位子へと分解した。こうして得られた溶液のプロトンNMRスペクトル測定をした結果が図3である。
【実施例】
【0040】
図3より本多孔性配位高分子の一部は光反応しアジドイソフタル酸は、ニトロイソフタル酸またはニトロソイソフタル酸に変換され、図3の積分比より50%反応したことが確認できる。
【実施例】
【0041】
この結果から、本発明の配位高分子が、光照射することによって得られる電子欠損種を生成し、細孔内に電子欠損種が存在している状態で気体分子を吸着した場合、細孔内で光反応を起こすことを見出した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2