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明細書 :エポキシド開環反応用触媒及びホモホモアリルアルコールの製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360722号 (P5360722)
公開番号 特開2011-184383 (P2011-184383A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明の名称または考案の名称 エポキシド開環反応用触媒及びホモホモアリルアルコールの製法
国際特許分類 C07C  29/36        (2006.01)
C07C  33/30        (2006.01)
B01J  31/26        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 29/36
C07C 33/30
B01J 31/26 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2010-052767 (P2010-052767)
出願日 平成22年3月10日(2010.3.10)
審査請求日 平成23年4月13日(2011.4.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】シュナイダー ウーヴェ
【氏名】ヒメネス アグスティン
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】土橋 敬介
参考文献・文献 Byeong Hyo Kimほか,InCl3-Catalyzed Regioselective Ring-Opening Reactions ofEpoxides to β-Hydroxy Ethers,Bulletin of the Korean Chemical Society,2004年,Vol.25, No.6,p.881-888
Reinhard W. Hoffmannほか,Stereoselective synthesis of alcohols.Part LIII.. (E)-c-Alkoxyallylboronates : generation and application inintramolecular allylboration reactions,New Journal of Chemistry,2001年,Vol.25,p.102-107
調査した分野 C07C 29/36
B01J 31/26
C07B 61/00
C07C 33/30
Scopus
特許請求の範囲 【請求項1】
インジウム触媒の存在下で、下式
【化1】
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(式中、Rは、アリール基又はアラルキル基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表わされるエポキシドと下式
【化2】
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(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアラルキロキシ基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、アルコキシ基を表し、但し、R及びRは、ホウ素原子と共に4~7員環を形成してもよい。)で表わされるアリルボロネート(求核剤)とを反応させることから成る、下式
【化3】
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(式中、R~Rは上記と同様を表す。)で表わされるホモホモアリルアルコールの製造方法であって、該インジウム触媒が、InX(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表わされるインジウム化合物及びIn(N(SiR12(式中、R12はアルキル基を表す。)を表す。)で表されるインジウム化合物の混合物から成る、ホモホモアリルアルコールの製造方法。
【請求項2】
前記InXで表わされるインジウム化合物及び前記In(N(SiR12で表されるインジウム化合物のモル比が1:2~2:1である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
、R、R及びRが水素原子である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
及びRが、それぞれ独立して、炭素数が1~10のアルコキシ基、又はピナコール基である請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
InX(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表わされるインジウム化合物及びIn(N(SiR12(式中、R12はアルキル基を表す。)を表す。)で表されるインジウム化合物の混合物から成る、エポキシド開環反応用インジウム触媒。
【請求項6】
前記InXで表わされるインジウム化合物及び前記In(N(SiR12で表されるインジウム化合物のモル比が1:2~2:1である請求項に記載の触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、エポキシド開環反応用触媒及びエポキシドを選択的に開環してホモホモアリルアルコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシドは有機合成において重要なビルディングブロックである。選択的なエポキシド開環反応は、より複雑な構造を有する化合物合成のキーステップとなる。エポキシドは様々な求核剤により開環反応する。一般に用いられるのは、窒素、酸素、硫黄の求核剤で、これらを用いる方法は既に確立されている。
炭素求核剤は反応性が低いため報告例は少ないが、生成物の有用性は高い。炭素求核剤として典型的なものはアリル金属試薬である(特許文献1)。生成物はホモアリルアルコール(カルボニル基とアリル化試薬との反応で生成)より炭素一個分長いアルコールである。このため本反応はカルボニルのアリル化反応と相補的な反応である。
なお、非金属アリル化試薬(本願発明で用いるアリルホウ素試薬)はこのエポキシド開環反応に用いられた例はない。
また従来エポキシド開環反応等に用いられていたインジウム触媒は単純なインジウム金属塩であった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0003】
<nplcit num="1"> <text>Tetrahedron 61 (2005) 6726-6742</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Tetrahedron Lett. 48 (2007) 6743-6746</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアリル金属試薬(特許文献1等)を用いたエポキシド開環反応の生成物は、末端開環生成物(2級ホモホモアリルアルコール、例えば、化学式(化6)の化合物4)であった。本発明は内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール、例えば、化学式(化6)の化合物3)を選択的に生成する反応系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、2種のインジウム化合物から成るインジウム触媒を開発し、この触媒を用いて求核剤としてアリルボロネートを用いてエポキシド開環反応を行ったところ、内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール、例えば、化学式(化6)の化合物3)を選択的に生成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、InX(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)で表わされるインジウム化合物及びIn(N(SiR12(式中、R12はアルキル基を表す。)を表す。)で表されるインジウム化合物の混合物から成る、エポキシド開環反応用インジウム触媒である。

【0007】
また本発明は、このインジウム触媒の存在下で、下式
【化1】
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(式中、Rは、アリール基又はアラルキル基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表わされるエポキシドと下式
【化2】
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(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアラルキロキシ基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、アルコキシ基を表し、但し、R及びRは、ホウ素原子と共に4~7員環を形成してもよい。)で表わされるアリルボロネート(求核剤)とを反応させることから成る、下式
【化3】
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(式中、R~Rは上記と同様を表す。)で表わされるホモホモアリルアルコールの製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる触媒は、下記2種のインジウム化合物の混合物、好ましくは下記2種のインジウム化合物のモル比1:2~2:1の混合物から成る。
(1)InXで表わされるインジウム化合物
式中、Xは、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、Cl、Br、I又はFであり、好ましくはCl又はBrである。
(2)In(N(SiR12で表されるインジウム化合物
式中、R12、アルキル基、好ましくは炭素数が1~4のアルキル基を表す。N(Si(CHは、ヘキサメチルジシラジド(hmds)と呼ばれる。




【0009】
本発明の反応の一方の反応物であるエポキシドは下式で表わされる。
【化1】
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式中、Rは、アリール基又はアラルキル基を表し、Rは、特に制限は無いが、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、より好ましくは水素原子を表す。アリール基は好ましくはフェニル基又はα若しくはβ-ナフチル基、より好ましくはフェニル基である。アラルキル基は好ましくはベンジル基である。
【0010】
本発明の反応の求核剤であるアリルボロネートは下式で表わされる。
【化2】
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式中、Rは、特に制限は無いが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はアラルキロキシ基、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。ハロゲン原子は、Cl、Br、I又はFであり、好ましくはCl又はBrである。アルキル基は好ましくは炭素数が1~6の直鎖アルキル基である。アルコキシ基は、好ましくは炭素数が1~10、より好ましくは2~6の直鎖アルコキシ基である。アリールオキシ基は好ましくはフェノキシ基であり、アラルキロキシ基は好ましくはベンジルオキシ基である。
、R及びRは、特に制限は無いが、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基、より好ましくは水素原子を表す。アルキル基は好ましくは炭素数が1~6の直鎖アルキル基である。アリール基は好ましくはフェニル基又はα若しくはβ-ナフチル基、より好ましくはフェニル基である。
及びRは、それぞれ独立して、アルコキシ基であり、このアルコキシ基は分枝であってもよく、炭素数は好ましくは1~10、より好ましくは2~6である。またR及びRは、ホウ素原子と共に4~7員環、好ましくは5~6員環を形成してもよい。R及びRは、好ましくはピナコール基(pin)である。
【0011】
これらを通常次の条件で反応させる。
反応溶媒としては、主にジクロロメタン、トルエン、ヘキサンが用いられ、ジクロロメタンに少量のメタノールを添加した溶媒が好ましい。
触媒濃度は、通常0.01~0.5M、好ましくは0.025~0.1Mである。
反応物であるエポキシドとアリルボロネートのモル比(エポキシド:アリルボロネート)は、通常1:0.9~1:2、好ましくは1:1~1:1.5である。
反応物の濃度はそれぞれ通常0.2~3M、好ましくは0.5~2Mである。
反応温度は、通常0~100℃、好ましくは室温~60℃である。
反応時間は通常8~48時間程度である。
【0012】
その結果下式の反応が主に起こり、内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール)が生成する。
【化4】
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【0013】
この反応では下式の構造の異性体が合成されない又はわずかしか合成されないことが特徴である。
【化5】
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【実施例】
【0014】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
本実施例では、1-phenylpent-4-en-2-ol(化合物3、内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール))を合成した。反応式を下式に示す(式中の番号は化合物の番号を示す。pinはピナコール基を表す。)。
【化6】
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【0015】
洗浄し乾燥させた反応容器に、三塩化インジウム(InCl3、2.2mg, 5mol%)、In(hmds)3(indium(III) hexamethyldisilazide、文献(H. Buerger, J. Cichon, U. Goetze, U. Wannagat, H. J. Wismar, J. Organomet. Chem. 1971, 33, 1.)記載の方法で調製、6.0 mg, 5 mol%)、塩化メチレン(CH2Cl2、100μL, 2M)及びメタノール(2.0μL, 24 mol%)を加えた。これにスチレンオキシド(東京化成工業(株)製>98%を蒸留精製、24 mg, 0.2 mmol)及びアリルピナコールボロネート(文献(W. R. Roush, M. A. Adam, A. E. Walts, D. J. Harris, J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 3422.)記載の方法で調製、51μL, 0.28 mmol)を順に滴下した。この混合物を40℃に加熱し、20時間攪拌した。冷却後、生成物を精製し、分取薄層クロマトグラフィー(PTLC; eluant: hexane/AcOEt = 7/1)で、2-phenylpent-4-en-1-ol (化合物3)を分離した(27 mg、収率86%)。副生成物として、1-phenylpent-4-en-2-ol (化合物5、転位生成物)を得た(<1 mg、収率1%)。化合物4(末端開環生成物(2級ホモホモアリルアルコール))は検出されなかった。2-phenylpent-4-en-1-ol (化合物3)の分析値を示す:
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz): δ= 7.33-7.31 (m, 2H), 7.24-7.20 (m, 3H), 5.74-5.67 (m, 1H), 5.03-4.95 (m, 2H), 3.78-3.70 (m, 2H), 2.87 (q, J= 6.6 Hz, 1H), 2.49-2.35 (m, 2H), 1.50 (s, 1H) ppm. 13C-NMR (CDCl3, 150 MHz): δ= 141.8, 136.3, 128.6, 127.9, 126.7, 116.3, 66.8, 48.1, 36.5 ppm. IR:νmax (neat): 3347, 3063, 3027, 2923, 1641, 1601, 1493, 1452, 1026, 914, 759 and 700 cm-1.
1-phenylpent-4-en-2-ol (化合物5)の分析値を示す:
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz): δ= 7.33-7.31 (m, 2H), 7.24-7.20 (m, 3H), 5.74-5.67 (m, 1H), 5.03-4.95 (m, 2H), 3.78-3.70 (m, 2H), 2.87 (q, J= 6.6 Hz, 1H), 2.49-2.35 (m, 2H), 1.50 (s, 1H) ppm.
【0017】
実施例2
実施例1と同じ反応物を用いて、表1に示すように触媒や溶媒を変更して、実施例1と同様に反応を行った。結果を下表に示す。
【表1】
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本願発明の反応系においては化合物3(内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール))が主生成物として合成される(entry 5~11)。
一方、従来用いられている3価のインジウム無機塩触媒を用いた場合、エポキシドからアルデヒドへの転位反応を起こすため、目的の化合物3は得られない(entries 2 and 3)。また、本願発明の求核剤(即ち、炭素求核剤)は反応性が低いため、3価のインジウムアミド触媒を用いた場合、反応は進行しない(ルイス酸性が十分でない)(entry 4)。
【0018】
実施例3
本実施例では、3-methyl-2-phenylpent-4-en-1-ol (化合物7)を合成した。反応式を下式に示す。
【化7】
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【0019】
洗浄し乾燥させた反応容器に、三塩化インジウム(InCl3、2.2mg, 5mol%)、In(hmds)3(6.0 mg, 5 mol%)、塩化メチレン(CH2Cl2、100μL, 2M)及びメタノール(2.0μL, 24 mol%)を加えた。これにスチレンオキシド(東京化成工業(株)製>98%を蒸留精製、24 mg, 0.2 mmol)及びα-メチルアリルピナコールボロネート(文献(R. W. Hoffmann, J. J. Wolff, Chem. Ber. 1991, 124, 563.)記載の方法で調製、51 mg, 0.28 mmol)を順に滴下した。この混合物を40℃に加熱し、20時間攪拌した。冷却後、生成物を精製し、分取薄層クロマトグラフィー(PTLC; eluant: hexane/AcOEt = 7/1)で、3-methyl-2-phenylpent-4-en-1-ol (化合物7、内部開環生成物(1級ホモホモアリルアルコール))を分離した(32 mg、収率99%)。化合物8~12は検出されなかった。
【0020】
3-methyl-2-phenylpent-4-en-1-ol (化合物7)の分析値を示す:
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 7.34-7.16 (m, 10H syn/anti), 5.80-5.73 (m, 1H, syn), 5.61-5.54 (m, 1H, anti), 5.11-5.01 (m, 2H, syn), 4.92-4.88 (m, 2H, anti), 3.91-3.72 (m, 4H, syn/anti), 2.76-2.43 (m, 4H, syn/anti), 1.02 (d, J= 6.9 Hz, 1H, anti), 0.8 (d, J = 6.9 Hz, 1H syn) ppm. 13C-NMR (syn) (CDCl3, 124.5 MHz): δ= 143.0, 141.1, 128.6, 128.5, 126.8, 114.3, 66.0, 53.9, 41.2, 19.2 ppm. 13C-NMR (anti) (CDCl3, 125 MHz): δ= 141.6, 140.2, 129.0, 128.3, 126.7, 114.2, 64.7, 53.6, 39.4, 18.1 ppm. IR:νmax (neat): 3342, 3082, 3027, 2961, 2883, 1640, 1601, 1495, 1453, 1419, 1372, 1052, 1003, 914, 758 and 700 cm-1.