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明細書 :モジュール化人工骨

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431668号 (P4431668)
公開番号 特開2001-231797 (P2001-231797A)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
公開日 平成13年8月28日(2001.8.28)
発明の名称または考案の名称 モジュール化人工骨
国際特許分類 A61F   2/28        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
C04B  35/00        (2006.01)
FI A61F 2/28
A61L 27/00 J
A61L 27/00 L
A61L 27/00 F
C04B 35/00 H
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2000-046450 (P2000-046450)
出願日 平成12年2月23日(2000.2.23)
審査請求日 平成18年12月12日(2006.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】592078597
【氏名又は名称】タマチ工業株式会社
【識別番号】507000800
【氏名又は名称】アエモテック株式会社
発明者または考案者 【氏名】田中 順三
【氏名】菊池 正紀
【氏名】生駒 俊之
【氏名】太田 邦博
【氏名】横山 能周
個別代理人の代理人 【識別番号】100108877、【弁理士】、【氏名又は名称】鴨田 哲彰
【識別番号】100108877、【弁理士】、【氏名又は名称】鴨田 哲彰
【識別番号】100108877、【弁理士】、【氏名又は名称】鴨田 哲彰
審査官 【審査官】川島 徹
参考文献・文献 特公昭61-044503(JP,B2)
特表平07-503869(JP,A)
特許第2706467(JP,B2)
実開平06-009612(JP,U)
特開2002-248119(JP,A)
特開平07-124241(JP,A)
特開平07-255832(JP,A)
特許第2551670(JP,B2)
特許第2635437(JP,B2)
米国特許第05492697(US,A)
調査した分野 A61F 2/28
A61L 27/00
C04B 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
生体における硬組織または軟骨組織の欠損部分に置き換える人工骨であって、複数の棒状モジュールを束ねて、一体に固定して得られ、前記モジュールは、生体活性セラミックス、生分解性高分子素材、または、生体活性セラミックスおよび生分解性高分子素材の複合体から作られており、前記モジュールの周囲に1つ以上の環状溝を備え、該環状溝により該モジュールの長さ方向に対して直角方向に、管状または網状の隙間からなるボルクマン管様の空間が形成され、かつ、前記モジュールの断面形状が、角を丸めた多角形であり、相隣接するモジュール間に該モジュールの軸方向に平行な細い管状孔からなるハーバース管様の空間が形成されていることを特徴とするモジュール化人工骨。
【請求項2】
中央部において、全長にわたり少なくとも1本分のモジュール欠損部があって、該欠損部により長さ方向に伸長する髄液穴様空間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール化人工骨。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体において、骨の異常あるいは折損などによって、欠落した部分を補完するモジュール化人工骨に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨の異常あるいは折損などの場合、一般的には、異常のある部分の骨を除去し、その失った部分を、例えば、生体に適合していると言われるセラミックス、ステンレス、チタン合金、あるいはチタン合金にアパタイトをコーティングしたものなどを埋め込み、補完する。これらは人工骨と称される。
【0003】
これらの素材は加工が難しいので、各部位専用に形状をあらかじめ想定し、機械加工工場で生産される。従って、従来の人工骨は、想定した部位以外の他の部位に共用することはほとんど出来ない。
【0004】
また、手術現場では形状加工が難しいため、メーカーが需要動向を推測して予め生産した標準品の中から、適当な人工骨を大きさにより選定する。そして、該人工骨を埋め込み、周囲を同種の物質であてて補完し、ネジ、セメントなどで固定する。
【0005】
即ち、従来は、サイズを選択することしか出来ない既製品の人工骨であり、かつ、本来必要な修正をすることが難しい金属やセラミックスのような、内部が密で、剛性が生体より高い人工骨を、体内に挿入し、そのまま使いつづけることが主流である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来抱えている問題は、これら従来の人工骨が、加工性の悪い素材であり、適切な大きさや形状への変更が難しいことにある。まして、手術現場では、従来の人工骨に対して、不具合部分の修正は不可能である。従って、生体を切開してしまってから、選定した人工骨が不適切と思われても、そのまま使用せざるを得ないことも起こり得た。
【0007】
また、従来の人工骨が、生体に対して経年的に不具合を生じることがあった。その原因としては幾つか考えられるが、大きく分けて二つにその原因を分けることが出来る。
【0008】
第一に、生体骨と人工骨とに、強度や柔軟性の差があり、外部からその近辺に力が掛かった時、不自然な力学的集中応力が掛かり、生体に負担を掛け、炎症あるいは痛みを与える可能性が有る。まして、人工骨が不適切な大きさや形状であれば、不必要な力学的集中応力が発生する心配が増大する。
【0009】
第二に、従来の人工骨の問題として、生体とのなじみの問題がある。従来の人工骨の内部は、均一で密なため、生命活動はしていない。即ち、血管あるいは各種細胞は、人工骨の内部に入ることが出来ないので、生体組織と人工骨の境界面でさまざまな問題を起こす。その対策として、実際の生体骨と似た性質を持つアパタイトを、人工骨の表面にコーティングし、生体との親和性を高める方法も取られている。しかしながら、その被覆層は薄く、血管や生体組織が被覆層の内部に入り込む状態ではないため、親和性の改善にはなっても、生体の骨組織との一体化は難しかった。
【0010】
本発明は、補完したい形状、寸法を得やすく、生体に負担が掛からず、生体の骨組織と一体化しやすい人工骨部材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のモジュール化人工骨は、生体における硬組織または軟骨組織の欠損部分に置き換える人工骨であって、複数の棒状モジュールを束ねて、一体に固定する。
【0012】
前記モジュールは、周囲に1つ以上の環状溝を備え、軸方向に対し直交方向の管状空間が形成されるとよい。
【0013】
前記モジュールの断面形状が、角を丸めた多角形であり、モジュールとモジュールの間に、軸方向の管状空間が形成されるとよい。
【0014】
少なくとも1本分のモジュール欠損部があって、該欠損部が、軸方向の管状空間であるとよい。
【0015】
前記モジュールが、生体用金属、生体活性セラミックス、生体不活性セラミックス、高分子素材、または、それらからなる群より選ばれる2種以上の複合体から作られていることが望ましい。
【0016】
生体用金属には、チタン、ステンレス、チタン合金などの腐食性のない金属が挙げられる。
【0017】
生体活性セラミックスには、HAP(ハイドロキシアパタイト)、TCP(リン酸三カルシウム)などのリン酸系素材、A-W.Glass、Bio.Glassなどのシリカ系素材が挙げられる。
【0018】
生体不活性セラミックスには、アルミナ、ジルコニア、カーボンなどが挙げられる。
【0019】
高分子素材には、高分子ポリエチレンなどの非分解性素材、あるいはポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲンなどの生分解性素材が挙げられる。
【0020】
複合体としては、アパタイトとコラーゲンの複合体など、上記素材の2種以上の組合せからなる複合体が挙げられる。
【0021】
モジュールの固定方法としては、手術用糸あるいは金属バンド、ネジなどでくくる。
【0022】
また、生体骨への結合部材としては、手術用糸、チタン材、各種セラミックスなどが考えられる。特に、モジュールに生体吸収性部材を使用する場合は、生体吸収性糸を用いることが好ましい。
【0023】
また、各モジュールは、六角形を代表とする適当な断面形状、寸法を用い、前記環状溝のほか、表面を曲面にしたり、穴、しわなどを設ける。単独で使用してもよい。
【0024】
従って、束ねて固定する時、あるいは単独使用時に、血管および細胞が浸入、あるいは定着しやすい人工骨となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明を、図面を参照して説明する。図1は、本発明のモジュール化人工骨の一実施例の断面図である。図2は、モジュール化人工骨を構成する二本のモジュールを並べた一部の拡大側面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。
【0026】
本発明のモジュール化人工骨は、1つ以上の環状溝3aを備えた棒状のモジュール3を束ね、一体に固定する。
【0027】
このように、比較的小さなモジュール3を作成しておき、緊急の手術現場では、特別な装置や器具、材料を用意せずに、前記モジュール3を好ましい形状、寸法に束ねて、一体に固定し、モジュール化人工骨を作成する。モジュール3の数を加減することにより、治療したい患部に最適な形状や寸法に変更することが出来る。
【0028】
モジュール3の各側面は互いにできるだけ広く接触して、支え合うことが必要であり、断面がハニカム構造状となるように、それぞれのモジュールの断面は六角形が好ましい。さらに、六角形よりも角数が多く円に近い多角形や、凹みのある星形などでもよい。
【0029】
さらに、一体に束ねたモジュール3の中央の一本を抜くことにより、本来、骨髄液の通る髄液穴2を整形することが出来る。
【0030】
同時に、図3に断面図を示したように、このモジュール3の軸方向に直角な断面において、角を取ることにより、モジュール3を束ねた際に、軸方向に平行な細い管状穴5(図1参照)を作ることが出来る。生体骨でもこれと同様の穴が存在し、ハーバース管と呼ばれ、主に栄養分を供給する重要な機能を果たす。
【0031】
また、図2に拡大した側面図を示したように、各モジュール3に対し、軸方向に直角に、環状溝3aを設けることにより、軸に直角方向へ、管状あるいは微細な隙間4を網状に作ることが出来る。生体骨でもこれと同様の管が存在し、ボルクマン管と称し、主に血管の通る隙間である。生体骨に本来備わった必要な器官であるこのボルクマン管を、本発明により自在に作ることが可能であり、骨髄液、栄養、血液が潤沢に供給されるため、骨細胞の自由な成長を妨げることなく、自然治癒に近い形で、人工骨の目的を果たすことが出来る。
【0032】
本発明では、モジュール各々のサイズを小さくした時、束ねて一体に固定したモジュールとモジュールの間に、生体の好む複雑なパイプ状の空間や、軸方向の穴を有する断面形状を作ることが出来るので、生体の血管や細胞が活発に成長し入り込み、モジュールとモジュールのバインダーとしての好ましい現象を誘発させることが可能となる。従って、モジュール各々を、骨細胞のような生体細胞がくるみ込むため、時間とともに自然治癒に近い状況をもたらすことが出来る。特に、金属と違い、体内にもともと有る素材の一部であるアパタイトのような、生体との親和性を持つ材料で作成したモジュールは、新たに発生、成長した生体骨の中にほとんど取り込まれ、従来の生体と同等の機能を持つことが可能となる。
【0033】
更に言えば、近年注目されているコラーゲンとアパタイトの複合材を、本発明のモジュールに適用すれば、各モジュール間の間隙に、血管や細胞が活発に入り込むため、各細胞の活動する面積を多く取れる。従って、同時多発的に、破骨細胞の働きにより前記複合材を溶解し、そこに正常な骨芽細胞の活性が促され、時間とともに、生体自体が、甦生させた自分の骨として、欠落部を速やかに補完する作用が充分に期待できる。
【0034】
このようなコラーゲンとアパタイトの複合材を、従来のように単体で挿入するよりも、本発明のようにモジュール化し、生体が好む寸法および形状にし、束ねて一体に固定して埋め込むことにより、血管や細胞が活動する場をより多く提供できるため、治癒効率が高く、速やかに自然治癒とまったく同等な成果をあげることが出来る。
【0035】
(実施例)
図4、5に基づき、本発明の実施例を説明する。図4は、本発明のモジュール化人工骨を、生体骨の間に補完した状態を示す側面図である。図5は、図4のV-V断面図である。
【0036】
モジュール3の代表的断面形状は六角形であり、対面寸法は3mm程度が使用しやすい。長さは欠損部に合わせるが、10mmから30mmの間が実際的な長さである。必要な太さのモジュール化人工骨を得るには、適当な本数のモジュール3を束ねる。例えば、図5に示したように18本のモジュール3を束ねることにより、対辺直径約14.2mmの太さのモジュール化人工骨を作り出す。あるいは、図1に示したように30本の前記と同じモジュール3を一体に束ねることにより、対辺直径約20mmの太さのモジュール化人工骨を作り出すことができる。特に、中央の一本を抜くことにより、本来、骨髄液の通る髄液穴2を形成する。
【0037】
同時に、モジュール3の軸方向に直角な断面の角を取ることにより、束ねた際に、軸方向に平行な細い管状穴5を作ることが出来る。また、図2に示したように、側面を曲面にしたり、あるいはしわを設けることにより、軸に直角方向へ管状の間隙あるいは微細な網状の隙間4を作ることが出来る。
【0038】
組み立てられたモジュール化人工骨は、生体骨8の間に埋め込む。モジュール化人工骨の装着直後は、生体骨8との間に、当然、間隙があり、分離している状態なので、一時的に支え6を施す。図示した実施例では、2つの支え6で挟み込み、固定する。支え6は、モジュール3よりもやや長く、両端にネジ穴を備えた例えばチタンの板状部材を使用する。固定方法は、両端のネジ穴に通したネジ7で生体骨8に固定する。
【0039】
時間とともに、目的の効果、即ち治癒したと判断できる経過日数であるおよそ3ヶ月を過ぎた辺りから、レントゲン検査を行う。レントゲン検査により、モジュール化人工骨の周囲の石灰化が進んだと判断されれば、支え6を段階的に緩め、治療部分に一部ストレスが掛かるように調節する。最終的には、強度が確保される段階で、前記支え6を取り外すことが出来るようになる。
【0040】
実際に、ビーグル犬での実験において、アパタイトおよびコラーゲンを材料としたモジュールを束ねて固定したモジュール化人工骨により、顕著な治癒効果を確認している。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、補完したい形状、寸法を得やすく、生体に負担が掛からず、生体の骨組織と一体化しやすいモジュール化人工骨を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のモジュール化人工骨の一実施例を示す断面図である。
【図2】 モジュール化人工骨を構成する二本のモジュールを並べた拡大側面図である。
【図3】 図2のIII-III断面図である。
【図4】 本発明のモジュール化人工骨を、生体骨の間に補完した状態を示す側面図である。
【図5】 図4のV-V断面図である。
【符号の説明】
1 糸
2 髄液穴
3 モジュール
3a 環状溝
4 ボルクマン管
5 ハーバース管
6 支え
7 ネジ
8 生体骨
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4