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明細書 :ポリチオフェンラダー化合物とその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3377494号 (P3377494)
公開番号 特開2001-261794 (P2001-261794A)
登録日 平成14年12月6日(2002.12.6)
発行日 平成15年2月17日(2003.2.17)
公開日 平成13年9月26日(2001.9.26)
発明の名称または考案の名称 ポリチオフェンラダー化合物とその製造法
国際特許分類 C08G 61/12      
FI C08G 61/12
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2000-069484 (P2000-069484)
出願日 平成12年3月13日(2000.3.13)
審査請求日 平成12年3月27日(2000.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】土田 英俊
【氏名】小柳津 研一
【氏名】岩崎 知一
【氏名】米丸 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】森川 聡
参考文献・文献 国際公開99/12989(WO,A1)
調査した分野 C08G 61/12
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式〔1〕
【化1】
JP0003377494B2_000002t.gif(Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基またはオキシ炭化水素基を示し、これらの炭化水素基はヘテロ原子を含むものであってよく、Y- はアニオンを示し、nは整数で重合度を示す。)で表わされることを特徴とするポリチオフェンラダー化合物。

【請求項2】
Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、あるいはアリールオキシ基を示し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、並びにアリールオキシ基の各々は、ヘテロ原子を含むものであってもよく、nは2~1500の整数で重合度を示す請求項1のポリチオフェンラダー化合物。

【請求項3】
Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基、あるいはトルイル基である請求項1または2のポリチオフェンラダー化合物。

【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの化合物の製造方法であって、次式〔3〕
【化2】
JP0003377494B2_000003t.gifの化合物を酸により脱水環化反応させて前記式〔1〕の化合物を製造することを特徴とするポリチオフェンラダー化合物の製造方法。

【請求項5】
前記式〔1〕の化合物の脱アルキル化または脱アルコキシル化反応により次の一般式〔2〕
【化3】
JP0003377494B2_000004t.gif(nは整数で重合度を示す。)で表されるポリチオフェンラダー化合物を製造することを特徴とするポリチオフェンラダー化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ラダー状に縮環された複素五員環ポリマー化合物に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、耐熱性、化学安定性、光学特性、電気・電子物性に優れ、可溶性で、溶媒に対する溶解度を幅広く調整できる、新しいポリチオフェンラダー化合物とその製造方法に関するものである。

【10】
そして、第4の発明では、前記のいずれかの化合物の製造方法であって、次式〔3〕

【11】

【化6】
JP0003377494B2_000006t.gif【0012】の化合物を酸により脱水環化反応させて前記式〔1〕の化合物を製造することを特徴とするポリチオフェンラダー化合物の製造方法を提供する

【13】
またこの出願の発明は、第5には、前記式〔1〕の化合物の脱アルキル化または脱アルコキシル化反応により次の一般式〔2〕

【14】

【化7】
JP0003377494B2_000007t.gif【0015】(nは整数で重合度を示す。)で表されるポリチオフェンラダー化合物を製造することを特徴とするポリチオフェンラダー化合物の製造方法を提供する。

【16】


【17】


【18】
以上のとおりの特徴を有するこの出願の発明は、発明者らによる鋭意研究の結果得られた。スルホニオ基によって架橋されたポリチオフェンラダー化合物が、優れた溶解性、耐熱性、導電性を示すことを見出し完成されたものである。

【19】

【発明の実施の形態】以下、この出願の発明の実施の形態について詳しく説明する。まず、前記一般式〔1〕で表される化合物に関しては、式中のRは、前記のとおり置換基を有していてもよい炭化水素基またはオキシ炭化水素基であり、この両者の場合の炭化水素基は直鎖または分枝鎖の鎖状であっても、環状を含むものであってもよく、環状を含む炭化水素基は脂肪族系でも芳香族系でもよく、さらには単環であっても、多環であっても、ヘテロ環であってもよい。また炭化水素基は置換基を含んでいてもよい。

【2】

【従来の技術とその課題】ポリチオフェン化合物はチオフェン環の2位と5位を一次元に連結した化合物であり、広い共役系をもち、伝導性、化学安定性に極めて優れているため、有機電子・光機能性材料として有効に用いられてきている。また、p型、n型ドーピングにより安定に高い電気伝導性を示すことから、近年二次電池の電極材料としても注目を集めてきている。

【20】
前記Rの炭化水素基の具体例を例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基、ナフチル基、ベンジル基、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、キシリルオキシ基、ベンジルオキシ基、等を挙げることができる。これらの中でも、当該化合物の溶解性、安定性、合成収率の点で、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、トルイル基などが好ましい。

【21】
前記一般式〔1〕中のY- はアニオンであるが、具体例を例示すると、例えば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、などのハロゲンアニオン:酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、過塩素酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサクロロアンチモネートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、などを挙げることができる。これらの中でも、当該化合物の合成収率および安定性の点から、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、およびヘキサフルオロホスフェートアニオン等が好ましい。

【22】
以上のような一般式〔1〕で表されるポリチオフェンラダー化合物の合成は、いくつかの方法により可能であるが、例えば、前記のように、スルホキシド基を有するポリチオフェンの酸を用いた脱水環化反応などによりスルホニオ化して合成する事ができる。

【23】
上記スルホニル化反応に関して通常アニオンY- は反応の完了時点で反応溶媒、あるいは酸化合物の対アニオンであるが、公知のアニオン交換反応を利用して、アニオンY-が重合溶媒の対アニオン以外であるその他のポリチオフェンラダー化合物を合成できる。

【24】
一般式〔1〕で表されるポリチオフェンラダー化合物の合成については、後述の実施例において示されるが、この出願の発明によって、一般式〔1〕においてアニオンY- を除く高分子の分子量としてMn=5300、Mw=7200、n=22程度のものが、例えば提供される。

【25】
この発明の前記一般式〔1〕のポリチオフェンラダー化合物は、公知の反応を利用してRを脱離することにより、前記一般式〔2〕で表される公知のポリチオフェンラダー化合物へ容易に変換することができる。すなわち、前記ポリチオフェンラダー化合物を還元剤、あるいは求核性試薬などの脱アルキル化試薬と反応させることにより、Rは脱離する。

【26】
以下、この発明を実施例により詳しく説明する。なお、以下の実施例により発明が限定されないことはいうまでもないことである。

【27】

【実施例】(実施例1)オリゴチオフェンラダー1
10mlのトリフルオロメタンスルホン酸中に3-デシルスルフィニル-2-(2-チエニル)チオフェン0.14gを溶解し、60℃で24時間攪拌した。反応溶液を水中に滴下すると、濃赤色の沈殿が得られた。生成のため沈殿を濾過後、水で洗浄し乾燥する事により、オリゴチオフェンラダー1を収率66%で得た。オリゴチオフェンラダー1はジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硫酸、ジエチルエーテルなどに可溶であった。UV-visスペクトルにおいてオリゴチオフェンラダー1はλmax =463.0nmを示した。反応式と分析結果を以下に示す。

【28】

【化9】
JP0003377494B2_000008t.gif【0029】
【表1】
JP0003377494B2_000009t.gif【0030】(実施例2)オリゴチオフェンラダー2
10mlのトリフルオロメタンスルホン酸中に3-デシルスルフィニル-5-〔2-(3-デシルスルフィニル)チエニル〕-2-(2-チエニル)チオフェン0.14gを溶解し、60℃で24時間攪拌した。反応溶液を水中に滴下すると、濃赤色の沈殿が得られた。生成のため沈殿を濾過後、水で洗浄し乾燥する事により、オリゴチオフェンラダー2を収率64%で得た。オリゴチオフェンラダー2はジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硫酸、ジエチルエーテルなどに可溶であった。反応式と分析結果を以下に示す。

【3】
従来、無置換ポリチオフェン(ポリ(チオフェン-2,5-ジイル))は、比較的高い平面性を持ち、またドーピング状態で高い伝導度を示すことが報告されているが、その不溶不融の性質から構造解析、成型加工が困難であるなどの問題点が指摘されてきた。

【31】

【化10】
JP0003377494B2_000010t.gif【0032】
【表2】
JP0003377494B2_000011t.gif【0033】(実施例3)ポリチオフェンラダー3
10mlのトリフルオロメタンスルホン酸中にポリ(3-デシルスルフィニルチオフェン)0.14gを溶解し、60℃で24時間攪拌した。反応溶液をジエチルエーテル中に滴下すると、黒色の沈殿が得られた。生成のため沈殿を濾過後、石油エーテル、水、ジエチルエーテルで洗浄し乾燥する事により、ポリチオフェンラダー3を収率100%で得た。ポリチオフェンラダー3は二硫化炭素、熱テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などに可溶であった。反応式と分析結果を以下に示す。

【34】

【化11】
JP0003377494B2_000012t.gif【0035】
【表3】
JP0003377494B2_000013t.gif【0036】(実施例4)ポリチオフェンラダー4
実施例3で得られたポリチオフェンラダー3 0.14gにピリジン30mlを加え、120℃で24時間攪拌した。反応溶液を10%塩酸酸性メタノール中に滴下すると、黒色の沈殿が得られた。生成のため沈殿を濾過後、生成水、メタノールで洗浄し乾燥する事により、ポリチオフェンラダー4を収率100%で得た。UV-visスペクトルにおいてポリチオフェンラダー4はλmax =535.0nmを示し、吸収端は750nmまで伸びた。反応式とポリチオフェンラダー化合物4の分析結果を以下に示す。

【37】

【化12】
JP0003377494B2_000014t.gif【0038】
【表4】
JP0003377494B2_000015t.gif【0039】
【発明の効果】以上詳しく説明したとり、この出願の発明によって、溶解性に優れ、大きな共役系の広がりと極めて小さいバンドギャップを示す新規なポリチオフェンラダー化合物が提供される。

【4】
これらの問題点を解決するため、従来、例えば溶解性の向上のため、チオフェン環の3位が長鎖アルキル基(ヘキシル以上)で置換されてポリ(3-アルキルチオフェン)が合成された。さらに、側鎖の立体障害による平面性の低下を防ぐため、側鎖の向きをそろえるいわゆる頭-尾規制重合(H-T規制重合)が実施された。しかし、いずれのポリチオフェン化合物でもチオフェン環同士のわずかなねじれから完全平面型の形状は取りえないことが知られている。

【5】
発明者らは、これらの問題点を解決するため、π共役系が擬二次元に拡張されたポリアセン構造に着目し、これまでに安定なイオン性官能基であるスルホニオ基を含み、溶媒可溶であるポリヘテロアセン化合物を常温常圧下で構造欠陥無く合成してきた(特願平10-121501)。しかし、分子量が低いため、十分な導電性が発揮されず、加工性や耐熱性は十分であるものの、実用化に向け、電気伝導性のより高い材料が望まれていたのが実情である。

【6】
この出願の発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的はポリチオフェンの3位と4位をスルホニオ基で連結された新規なポリチオフェンラダー化合物を提供することにある。

【7】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は前記の課題を解決するものとして、第1の発明では、一般式〔1〕

【8】

【化5】
JP0003377494B2_000005t.gif【0009】(Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基またはオキシ炭化水素基を示し、これらの炭化水素基はヘテロ原子を含むものであってよく、Y- はアニオンを示し、nは整数で重合度を示す。)で表わされることを特徴とするポリチオフェンラダー化合物を提供し、第2は、前記式〔1〕においてRは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、あるいはアリールオキシ基を示し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、並びにアリールオキシ基の各々は、ヘテロ原子を含むものであってもよい。Y- はアニオンである。nは2~1500の整数で重合度を示すポリチオフェンラダー化合物を提供する。また、この発明において、第3には、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基、あるいはトルイル基である高分子量ポリチオフェンラダー化合物を提供する。