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明細書 :CLBO単結晶の育成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3893012号 (P3893012)
公開番号 特開2001-039791 (P2001-039791A)
登録日 平成18年12月15日(2006.12.15)
発行日 平成19年3月14日(2007.3.14)
公開日 平成13年2月13日(2001.2.13)
発明の名称または考案の名称 CLBO単結晶の育成方法
国際特許分類 C30B  17/00        (2006.01)
C01D  17/00        (2006.01)
C01F  17/00        (2006.01)
C01G  33/00        (2006.01)
C01G  35/00        (2006.01)
C30B  15/30        (2006.01)
C30B  29/22        (2006.01)
C30B  29/30        (2006.01)
FI C30B 17/00
C01D 17/00
C01F 17/00 B
C01G 33/00 A
C01G 35/00 C
C30B 15/30
C30B 29/22 C
C30B 29/30 A
C30B 29/30 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2000-150679 (P2000-150679)
出願日 平成12年5月22日(2000.5.22)
優先権出願番号 1999178815
優先日 平成11年5月22日(1999.5.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成14年12月26日(2002.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐々木 孝友
【氏名】森 勇介
【氏名】吉村 政志
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平05-238875(JP,A)
特開昭63-159284(JP,A)
特開平08-295507(JP,A)
特開平09-208390(JP,A)
特開平07-309699(JP,A)
特開昭55-015938(JP,A)
古屋博之 外,複屈折率制御可能な新しい非線形光学結晶GdYCOB結晶の開発,日本結晶成長学会誌,日本,1998年,Vol.25,No.5,第193頁-第199頁
調査した分野 C30B 1/00-35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
るつぼ内の底部近くに羽根体もしくはじゃま板体を配置し、るつぼ内の原料溶液に種子結晶を接触または浸漬し、種子結晶を接触または浸漬した原料溶液の液面下を徐冷し、羽根体もしくはじゃま板体を回転させることなくるつぼを回転させ、原料溶液内で種子結晶の表面に一般式CsLiB10で示される組成物(CLBO)の単結晶を育成させることを特徴とするCLBO単結晶の育成方法。
【請求項2】
るつぼを回転させるとともに、種子結晶も回転させる請求項1記載のCLBO単結晶の育成方法。
【請求項3】
CLBO単結晶は、一般式CsLiB10においてCs、Liの少なくとも一方を他のアルカリ元素もしくはアルカリ土類金属元素の少なくとも一種により部分的に置換された組成物からなる請求項1または2記載のCLBO単結晶の育成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、CLBO単結晶の育成方法に関するものである。さらに詳しくは、
この出願の発明は、高粘性の溶液原料であっても高品質なCLBO単結晶を育成することのできるCLBO単結晶の育成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、酸化物等の単結晶の育成方法として、原料をるつぼ内で加熱溶融した後に、種子結晶を原料溶液に接触させ、種子結晶を回転させながら丸棒状単結晶を引上げて育成する方法が知られている。この引上げ法は、大口径単結晶を効率よく育成することができる方法として様々な単結晶の育成のために用いられている。
【0003】
また、原料をるつぼ内で加熱溶融した後に、種子結晶を原料溶液に接触させ、液面下で温度を徐冷して結晶を析出させて育成する方法(カイロポーラス法)等も知られている。
【0004】
しかしながら、従来の種子結晶との接触による単結晶の育成方法には、所要温度での育成時の原料溶液の粘性が高い場合、るつぼ内の原料溶液の流れが悪くなるため、温度や過飽和度等の不均一性が生じ、結晶の品質が低下しやすいという問題があった。
【0005】
たとえば、非線形光学結晶としてのCsLiB10(CLBO)は、高出力紫外レーザー光発生用として注目されているものであり、極高レーザー損傷耐力、極低光学損失、高均一性等の優れた性質と品質を持つものとすることが望まれているが、その融解溶液の粘性が高く、このことが高品質、高性能な単結晶を育成することを難しくしていた。実際、セルフフラックス組成のCLBO溶液の粘性は、育成温度の840℃近傍において約1000CS(センチストークス)という高い粘度にある。
【0006】
そして、CLBOの冷却法でのシード棒回転による単結晶の育成では、図7に示したように、原料溶液の温度分布が良好でなく、しかも結晶成長が速いため、高品質、高性能な単結晶を育成することに制約があった。
【0007】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであって、高粘性の原料溶液であるCLBOの高品質、高性能な単結晶を育成することのできるCLBO単結晶の育成方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1に、るつぼ内の底部近くに羽根体もしくはじゃま板体を配置し、るつぼ内の原料溶液に種子結晶を接触または浸漬し、種子結晶を接触または浸漬した原料溶液の液面下を徐冷し、羽根体もしくはじゃま板体を回転させることなくるつぼを回転させ、原料溶液内で種子結晶の表面に一般式CsLiB10で示される組成物(CLBO)の単結晶を育成させることを特徴としている。
【0010】
この出願の発明は、第に、るつぼを回転させるとともに、種子結晶も回転させることを特徴としている。
【0011】
この出願の発明は、第に、CLBO単結晶は、一般式CsLiB10においてCs、Liの少なくとも一方を他のアルカリ元素もしくはアルカリ土類金属元素の少なくとも一種により部分的に置換された組成物からなることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のCLBO単結晶の育成方法は、るつぼ内で加熱溶解した原料溶液に種子結晶を接触または浸漬し、原料溶液内で単結晶を育成することを基本としている。
【0013】
単結晶育成装置は、るつぼと、るつぼ内に入れた原料を加熱融解するための加熱手段と、加熱温度の検出・制御手段と、加熱融解した原料溶液(融液を含む)に種子結晶を液面下に浸漬する結晶支持手段とを基本的に備えている。そして、単結晶育成装置は、図1に示した概要図のように、るつぼ1の原料溶液2中に浸漬され、るつぼ1の底部近くに配置される羽根体5もしくはじゃま板体とともに、るつぼ1を載置した状態で回転させる回転体6を備えている。図中の符号3はシード棒、4は種子結晶を示している。この出願の発明のCLBO単結晶の育成方法では、冷却法を併用するので、シード棒3に中空のものを用い、中空部に冷却ガスを供給し、液面下を徐冷する。
【0014】
この出願の発明のCLBO単結晶の育成方法では、育成時にるつぼ1を回転させ、シード棒3等の結晶支持手段は特に回転させなくてもよい。結晶支持手段の回転は、るつぼ1の回転に対しての相対運動として必要に応じて選択することができる。
【0015】
羽根体5もしくはじゃま板体は、原料溶液2内においては静止状態にあってよく、るつぼ1の回転体6による図1図中に示した矢印方向の回転によって、原料溶液2の攪拌効果が高まり、単結晶の育成に問題となる拡散境界層(diffusion boundary layer)を薄くすることができ、原料物質の種子結晶4表面への供給量を増加させ、さらに過飽和度を均一にすることができる。このため、育成温度において高粘性の原料溶液2であっても、高品質、高性能なCLBO単結晶を育成することが可能となる。
【0016】
羽根体5もしくはじゃま板体には各種の形状のものが採用できる。好適には、たとえば複数枚の羽根が放射状に配置され、中心部において固定された、いわゆるスクリューのような形状を有するものが例示される。
【0017】
このような羽根体5もしくはじゃま板体は、基本的に静止状態に置かれるが、所望により、振動を与えたり、水平方向に往復運動させたりすることができる。羽根板5もしくはじゃま板体は、図1に示したように、支持棒7によってるつぼ1内に挿入され、るつぼ1の底部近くに配置される。
【0018】
回転体6によるるつぼ1の回転については、シード棒3、すなわち、種子結晶4を回転させる場合には、その回転方向に対して正回転または正逆回転を切り替えることができるようにすることができる。また、るつぼ1の回転は、CLBO単結晶の育成過程において回転速度を変更制御できるようにすることもできる。このような回転方向や回転速度の変更制御は、たとえば、るつぼ1内の原料溶液2の流動、温度や単結晶の大きさ等の光学的な検知、あるいは原料溶液2の流動、温度等の羽根体5もしくは支持棒7での感圧、感熱検知等と連係したものとすることができる。
【0019】
育成するCLBO単結晶は、一般式CsLiB10においてCs、Liの少なくとも一方を他のアルカリ元素もしくはアルカリ土類金属元素の少なくとも一種により部分的に置換された組成物であってもよい。
【0020】
【実施例】
(育成装置)
図2に示した構成のものを用いた。白金るつぼはモーターにより回転できるようにしている。シード棒3に中空のものを用い、その下端に種子結晶4を支持し、中空のシード棒3内にシード冷却用ガスを供給して種子結晶4を冷却できるようにした。種子結晶4が溶け落ちるのを防止している。種子結晶4が融解して単結晶の育成が困難であったメルト組成での育成を可能にしている。
【0021】
白金るつぼ内には、図3および図4に示した白金製のスクリュー型羽根体5を支持棒7に取り付けて配置した。羽根体5は6枚の羽根を有し、羽根角度は40°とした。この羽根体5を、羽根中心Aを白金るつぼの回転中心に一致させて白金るつぼの内底面から距離Hの位置に配置した。距離Hはできるだけ白金るつぼの内底面近傍とした。
【0022】
なお、図4に示したアルシント管およびFKSパイプは、いずれも、株式会社フルヤ金属(FURUYAMETAL CO.,LTD.)から購入したものである。アルシント管は、アルミナ(Al)が主原料とされているものであり、FKSパイプは、白金(Pt)にZrOが含有されたものより形成されている。
【0023】
(単結晶育成)
白金るつぼを回転させて冷却法によりCLBO単結晶の育成を行った。シード棒3は回転させず、羽根体5も回転しない静止状態において育成を行った。原料溶液はCLBOフラックス組成とした。このセルフフラックスの成分組成は、Cs:Li:B:O=1:1:5.5:9.2とした。この組成は、化学量論組成(メルト組成)とすることも良好であることが確認されている。
【0024】
原料溶液の最高加熱温度は900℃とした。温度降下とるつぼ回転の条件は次の通りとした。
温度降下 0.1℃/day
るつぼ回転 30rpm
【0025】
温度降下の測定点は、原料溶液の液面を最初の基準とし、液面の温度に対して0.1℃/day降下させた。温度測定は、図2に示した制御用センサにより行い、原料溶液全体に一様に0.1℃/dayで降下させた。
【0026】
図5は、従来法と比較した結晶履歴を示したものであり、図6は、原料溶液の温度分布を示したものである。図6から、白金るつぼ内の原料溶液の温度分布が、従来法に比べ、液面からの高さ方向でより均一化され、結晶成長が均一になっていることが分かる。
【0027】
図6に示した原料溶液の温度分布の結果についてさらに検討したところ、液面から高さ(深さ)が約10cmの位置までの間の温度差(Δt)が-0.5℃の範囲にあること、つまり、-0.5℃~0℃であることが良質なCLBO単結晶の育成のために望ましいことが確認された。
【0028】
図5に示されているように、従来法では、最初の立ち上がりの成長は遅いが、途中で成長速度が上がり、最終的な成長速度はかなり速くなっている。これは、結晶が小さい時はシード棒3が回転しても攪拌効果があまりなく、結晶が大きくなると、結晶自身が溶液を攪拌し、急に成長が速くなることを示している。
【0029】
これに対し、羽根体5を挿入し、白金るつぼの回転による単結晶の育成では、最初の立ち上がり成長が、従来法よりも速い。なぜならば、白金るつぼの回転によって原料溶液の攪拌が十分行われているため、拡散境界層と呼ばれる育成速度を決定する層が薄くなるからである。また、過飽和度が均一になるからである。
【0030】
(結晶の評価)
育成されたCLBO単結晶の品質を評価するため、単結晶を厚さ1.5cmにウェハー状にカットし、3面研磨を施したサンプルについて、He-Neレーザーにより結晶の内部散乱を観察した。品質の良い結晶では内部に散乱が起こり、内部が赤く光って散乱点が分かる。品質の悪い部分ではパスが見える。
【0031】
観察の結果、羽根体5を挿入し、白金るつぼを回転させて育成したCLBO単結晶は品質に優れていることが確認された。わずかに種子結晶4の下部においてパスが見られた程度である。
【0032】
一方、従来法により育成された単結晶では、全体的にパスが見られ、品質に問題があった。
【0033】
耐レーザー特性の評価を行った。10mm×10mm×15mmのサイズの試料を用いた。損傷閾値の測定は(001)面について行った。レーザー光源は、縦横シングルモードのQスイッチNd:YAGレーザーを用いた。評価は、Nd:YAGレーザーの第4高調波である発振波長266nmに対して行った。パルス幅は0.75nsである。
【0034】
直径8mmの光を焦点距離100mmのレンズにより集光させ、焦点部が入射表面から5mmになるように結晶の位置を調整し、1ショット毎に結晶を移動させた。この集光条件では、入射表面に損傷が生じていないことを確認している。
【0035】
Nd:YAGレーザーの同軸上に連続光のHe-Neレーザーを通し、移動毎にレーザー照射部に散乱点があるかどうかを確認するとともに、ショット後に新しく散乱点が発生するかどうかを目視によって調べ、損傷の有無を判断した。入射エネルギーが損傷閾値に比べて高い場合、集光部ではプラズマが観察される。閾値付近では散乱点の発生が確認されるだけである。レーザーパルスの強度は、λ/2板(偏光回転子)とポラロイザの組み合わせにより変化させた。入射エネルギーは、カロリーメーターで較正を行ったバイプラナフォトチューブとオシロスコープによりモニタしている。参照試料として溶融石英(10.4GW/cm)を用いた。
【0036】
このような手順でNd:YAGレーザーの第4高調波(266nm)により内部レーザー損傷閾値を測定した。羽根体5を挿入し、白金るつぼを回転させて育成したCLBO単結晶の内部レーザー損傷閾値と、従来法で育成した単結晶ならびに溶融石英の内部レーザー閾値を表1に示した。
【0037】
【表1】
JP0003893012B2_000002t.gif【0038】
表1に示されるように、従来法により育成した単結晶の内部レーザー損傷閾値は溶融石英に比べて低かったのに対し、羽根体5を挿入し、白金るつぼを回転させて育成したCLBO単結晶の内部レーザー損傷閾値は、低いところでも溶融石英より高い値となり、最高値は溶融石英の2倍程度になることが確認された。
【0039】
以上のように、従来法で育成したCLBO単結晶と羽根体5を挿入し、白金るつぼを回転させて育成したCLBO単結晶の内部レーザー閾値を比較すると、羽根体5を挿入し、白金るつぼを回転させて育成したCLBO単結晶の方が、従来法で育成したCLBO単結晶より高くなっていることが分かる。これは、結晶性がかなり良くなったことを意味している。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、高粘性の原料溶液から高品質、高
性能のCLBO単結晶の育成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この出願の発明のCLBO単結晶の育成方法の概要を示した構成図である。
【図2】 実施例に用いた単結晶育成装置を示した断面図である。
【図3】 実施例に用いた羽根体を示した平面図である。
【図4】 実施例に用いた羽根体を示した側面図である。
【図5】 結晶成長の履歴を示した図である。
【図6】 原料溶液の温度分布を示した図である。
【図7】 従来法の場合の原料溶液の温度分布を示した図である。
【符号の説明】
1 るつぼ
2 原料溶液
3 シード棒
4 種子結晶
5 羽根体
6 回転体
7 支持棒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6