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明細書 :基板マスキング機構およびコンビナトリアル成膜装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3446138号 (P3446138)
公開番号 特開2002-069613 (P2002-069613A)
登録日 平成15年7月4日(2003.7.4)
発行日 平成15年9月16日(2003.9.16)
公開日 平成14年3月8日(2002.3.8)
発明の名称または考案の名称 基板マスキング機構およびコンビナトリアル成膜装置
国際特許分類 C23C 14/04      
FI C23C 14/04 ZCCA
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2000-259777 (P2000-259777)
出願日 平成12年8月29日(2000.8.29)
審査請求日 平成12年8月29日(2000.8.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】松本 祐司
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸 (外1名)
審査官 【審査官】藤原 敬士
参考文献・文献 特開2000-86389(JP,A)
特開 昭60-135567(JP,A)
特開 平9-213634(JP,A)
特開 昭63-145769(JP,A)
特開2000-319782(JP,A)
特開 昭63-118062(JP,A)
特表 平10-512840(JP,A)
松本祐司・鯉沼秀臣,コンビナトリアルケミストリーによる無機材料のハイスループット開発,セラミックス,日本,1999年,34(1999)No.5,pp.373-376
調査した分野 C23C 14/04 ZCC
特許請求の範囲 【請求項1】
基板至近位置にマスクを配置し、このマスクの孔を通して成膜領域が設定されるようにした基板マスキング機構であって、
上記マスクが、上記基板と密着する接触面を有する接触部と、この接触部が基板面に接触した際接触部周辺の基板面を遮蔽するシールド部と、を備え、
上記孔は、上記接触部の略中央部に開口しており、
上記シールド部は上記基板に接触する周縁部を備え、この周縁部は上記基板からマスクへの熱伝導を小さくするように先端がエッジ状に形成されており、
マスクを基板面に接触して成膜する際に、マスクの孔周辺の基板面を遮蔽することにより、蒸発したターゲット原子が回り込んで進入するのを阻止し、上記孔により成膜領域を規定することを特徴とする、基板マスキング機構。

【請求項2】
前記マスクの材質が、インコネル・ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の基板マスキング機構。

【請求項3】
真空チャンバと、この真空チャンバ内に置かれたターゲットと、このターゲットにレーザー光を照射してターゲット原子を光励起して蒸発させるレーザーアブレーション用レーザー装置と、上記真空チャンバ内に支持される基板と、この基板にレーザー光を照射して上記基板を加熱する加熱手段と、上記真空チャンバ内に酸素ガスを供給する供給管と、基板マスキング機構と、を備えたコンビナトリアル成膜装置において、
上記基板マスキング機構を上下動可能に支持し、且つ基板を回転可能に支持する支持機構を有し、
上記基板マスキング機構が、基板至近位置にマスクを配置し、このマスクの孔を通して成膜領域が設定されるようにしており、
上記マスクが、上記基板と密着する接触面を有する接触部と、この接触部が基板面に接触した際に接触部周辺の基板面を遮蔽するシールド部と、を備え、
上記孔は、上記接触部の略中央部に開口しており、
上記シールド部は上記基板に接触する周縁部を備え、この周縁部は上記基板からマスクへの熱伝導を小さくするように先端がエッジ状に形成されており、
支持機構を操作して基板とマスキング機構を接触させて成膜することにより、低真空中の成膜の際のマスク周縁部からの回り込み蒸着原子を防いで成膜領域を正確に規定すると共に、支持機構を操作して基板を回転することにより、基板上のこの回転の円周方向に成膜条件の異なる複数の薄膜を堆積することを特徴とする、コンビナトリアル成膜装置

【請求項4】
前記マスクの材質が、インコネル・ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項3に記載のコンビナトリアル成膜装置。

【請求項5】
前記支持機構は前記接触部の可動機構を有し、この接触部の可動機構を操作して前記円周の半径を変化させることにより、基板上に半径の異なる複数の同心円に沿って成膜条件の異なる複数の薄膜を形成することを特徴とする、請求項3又は4に記載のコンビナトリアル成膜装置
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、複数の薄膜を系統的に形成可能なコンビナトリアル成膜手法に好適な基板マスキング機構および成膜装置に関する。

【10】


【11】


【12】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づき、本発明による基板マスキング機構およびコンビナトリアル成膜装置の好適な実施の形態を説明する。図1は、この実施形態におけるコンビナトリアル成膜装置の概略構成を示している。この成膜装置は、後述する基板マスキング機構10を真空チャンバ3内で支持する支持機構11と、真空チャンバ3内に置かれたターゲット2にレーザー光を照射してターゲット原子2aを光励起して蒸発させる、すなわち、レーザーアブレーション用のレーザー装置4と、真空チャンバ3内に支持される基板1にレーザー光を照射して基板を加熱するレーザー装置5と、を備えている。なお、基板1の加熱手段は、本実施例では、真空チャンバ3外に置かれたレーザー装置5によって基板加熱を行うレーザー加熱装置について説明するが、真空チャンバ3内の基板1近傍に配設したランプヒーター等の手段であっても良い。

【13】
真空チャンバ3内は、真空引きにより10-3Torr程度の低真空レベルに設定される。また、供給管6から酸素ガス等が供給されるようになっている。

【14】
基板マスキング機構10は、図2に示されるように、基板1の至近位置にマスク12を配置し、このマスク12の孔13を通して成膜領域が設定されるようになっている。この例では、基板1は一辺15mm程度の矩形形状とし、ターゲット2側の面(基板面)に成膜される。また、孔13は一辺3mm程度の矩形形状である。図示のようにマスク12は、基板1の大部分の領域を覆い得る大きさを有する。

【15】
図3は基板マスキング機構10の具体的構成例を示している。マスク12は、基板1と密着する接触面14aを有する接触部14と、この接触部14が基板面1aに接触した際、接触部14の周辺の基板面1aを遮蔽するシールド部15とを備えている。マスク12の形成材料としては、熱膨張係数の小さいもの(たとえばステンレス鋼であるインコネル)が用いられる。

【16】
マスク12の孔13は、接触部14のほぼ中央部に開口している。シールド部15は、その周縁部15aで基板面1aに接触するが、この周縁部15aの基板面1aへの接触面積は、基板1からマスク12への熱伝導を極力小さくするため、図3に示すように、周縁部15aは先細のエッジ状に形成されている。

【17】
基板マスキング機構10を支持する支持機構11は、図1に示したように、回転支軸16によって基板1を回転可能に支持している。回転支軸16は真空チャンバ3の外部の駆動手段(ステッピングモータ等でよい)によって所定のピッチ角度で回転駆動される。また、マスク12はブラケット17を介して、シャフト18によって上下動可能に支持される。シャフト18は真空チャンバ3の外部の駆動手段によって上下にストローク調整可能に駆動される。

【18】
レーザー装置4は、例えばKrFエキシマレーザであり、真空チャンバ3の外部からターゲット2を照射することにより、ターゲット原子2aを光励起し蒸発させる。レーザー装置5は、例えばNd:YAGレーザであり、チャンバ3の外部から照射することにより基板1を加熱する。

【19】
上記構成において、成膜に際して供給管6から酸素ガス等が供給される。たとえばイットリウム系高温超伝導体YBCO(YBa2 Cu3 7 )の薄膜を形成する場合、600×10-3Torrの酸素圧に設定され、基板1はレーザー装置5によって800℃程度の温度に加熱される。

【2】

【従来の技術】有機・薬学合成の分野で始まったコンビナトリアル合成手法は、現在では無機材料一般にも適用され始め、新機能を有する材料探索に必要不可欠な手法となっている。なかでもレーザアブレーション法による成膜技術とマスク機構を組み合わせたコンビナトリアルレーザMBE(モリキュールビームエピタキシャル)装置によって、これまでにも酸化亜鉛や二酸化チタンなどの酸化物薄膜の高速合成/機能探索が有効に行なわれてきた。

【20】
図4はこの実施形態における成膜プロセスを模式的に示している。ターゲット2に対してレーザー装置4からレーザ光4aを照射することで、点線のようにターゲット原子2aを蒸発させる。このとき基板1の基板面1aに対して、接触部14とシールド部15が密着し、これにより基板面1aは外部から遮蔽される。したがって、たとえば図示のように、ターゲット2から蒸発したターゲット原子2a′が回り込もうとしても、その進入が阻止される。この結果、マスク12の孔13を通過したターゲット原子のみが基板面1aに到達することができ、これによってマスク12の孔13により成膜領域を正確に規定することができる。このように、マスク12によって規定された領域にのみ薄膜Fを堆積させることができる。

【21】
上記のような成膜プロセスで薄膜Fを形成する際、本発明では支持機構11の回転支軸16によって基板1を所定角度ずつ回転させることで、薄膜Fごとに成膜条件を異ならせ、1枚の基板1上に複数の薄膜Fをシーケンシャルに堆積させていく。この場合、図5に示すように高温超伝導体YBCOの薄膜を形成する際に、たとえばレーザー装置4のレーザ光4aの焦点距離を変化させることで、成膜条件を変えることができる。

【22】
図5(A)において、真空チャンバ3に付設されたレーザ導入窓19に照射されるレーザ光4aの光路上にフォーカスレンズ20が配置される。フォーカスレンズ20はレンズ駆動機構21によって、光路に沿って位置調整可能に移動されるようになっている。この例では成膜条件の異なる8種類の薄膜F(No.1~No.8)を得るために、フォーカスレンズ20を8つのフォーカスポイントに位置調整するようにしている。

【23】
図5(B)は、形成されたYBCOの薄膜のフォーカスポイントに対する結晶性の変化の関係を示している。この場合、結晶性の良否はΔC/Cの値で判断される。ここに「C」は薄膜のYBCOのC軸結晶軸の格子定数、また「ΔC」は各薄膜F(No.1~No.8)の格子定数の揺らぎに相当し、ΔC/Cの値が小さいほど、結晶性は良好である。No.4~No.7の薄膜で結晶性が良好となっている。結晶性はレーザ光4aのフォーカスポイントに依存度が強いことが判明するが、基板1を回転させながら1枚の基板1上に複数の薄膜Fを堆積させることにより、複数の試料を一度に得ることができるため極めて効率的に実験を行うことができる。

【24】
ここで、基板1を回転可能に支持することによって、基板面1aにおいて円周に沿った複数の薄膜Fを形成することができる。この場合、円周の半径を変化させることにより、半径の異なる複数の同心円に沿ってそれぞれ複数の薄膜Fを形成することができる。なお、円周の半径を変化させるには、たとえば図1あるいは図2において接触部14がマスク12の面上で半径R方向に移動する接触部可動機構を設け、この接触部可動機構を支持機構11のブラケット17およびシャフト18の内部に設けた駆動力伝達機構により駆動することにより行うことができる。

【25】
なおまた、基板1を回転可能に支持することで、図6のようにRHEED(電子線回折装置)を効果的に用いることができる。このRHEEDは、形成された薄膜F(No.1~No.8)に電子線を照射する電子銃22と、薄膜Fからの回折線を表示するスクリーン23と、スクリーン23の映像を撮像手段(CCD)24によって撮像して表示するモニタ25とを含んでいる。

【26】
RHEEDのモニタ25には、図7のように各薄膜Fごとに順次、成膜反応中の結晶の成長状態が表示される。成膜条件の異なる複数の結晶構造をリアルタイムで観察することができ、成膜条件と結晶構造との関係を容易にかつ的確に把握することができる。

【27】
上記実施形態では、低真空レベルでの薄膜形成の例を説明したが、本発明はこの場合だけでなく様々な真空条件下での薄膜形成法であるCVD法やスパッタリング法に対しても有効に適用可能であり、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、上記実施形態で用いた数値等は、それらの数値等にのみ限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。

【28】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、この種の成膜装置において、マスクの孔周辺の基板面を遮蔽することにより、蒸発したターゲット原子が回り込んで進入するのを阻止し、マスクの孔により成膜領域を正確に規定することができる。また、1枚の基板上に複数の薄膜をシーケンシャルに堆積させていくことで、成膜条件の異なる薄膜を効率よく、しかも適正に形成することができる。

【3】
図8は、従来のコンビナトリアルレーザMBE装置における成膜プロセスを模式的に示している。この装置では、ZnO,TiO2 などの酸化物をベースとする薄膜を形成する場合、基板1の下方にターゲット2が配置されるとともに、ターゲット2側の基板面にマスク100がセットされる。図示しないチャンバ内の雰囲気は、10-5Torr程度の高真空レベルに設定される。

【4】
ターゲット2に対してレーザ光(KrFエキシマレーザ等)を照射することで、点線のようにターゲット原子を光励起して蒸発させ、マスク100の孔100aを通過したターゲット原子により基板1上に薄膜Fが形成される。このMBE装置のように高真空雰囲気下で成膜反応を行なうことにより、マスク100によって規定された領域にのみ薄膜を堆積させることができる。

【5】

【発明が解決しようとする課題】一方、たとえば高温超伝導体などの薄膜形成は酸素雰囲気下で行なわれ、その雰囲気は、10-1Torr程度の低真空レベルに設定される。しかしながら、このような低真空雰囲気下では図9(A)に示さすように、ターゲット原子はマスク100の孔100aを通過するものばかりでなく、矢印で示すようにマスク周囲からの「回り込み」によってマスク100の外周部等から回り込んでしまう。この回り込みが生じると、基板面における成膜領域をマスク100によって規定することができなくなる。そして、図9(B)に示したように目標とする領域の周囲にターゲット原子が堆積し、そのため所望の領域に薄膜を堆積させることができない結果となる。

【6】
この発明は以上の点にかんがみ、単一基板上に複数の薄膜を適正かつ効率的に形成可能な基板マスキング機構およびこの基板マスキング機構によるコンビナトリアル成膜装置を提供することを目的とする。

【7】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、この発明は、基板至近位置にマスクを配置し、マスクの孔を通して成膜領域が設定されるようにした基板マスキング機構であって、マスクが、基板表面の一部と接触する接触面及びこの接触面の略中央部に形成された上記孔を有する接触部と、この接触部が基板面に接触した際接触部周辺の基板面を遮蔽するシールド部とを備え、上記シールド部が、上記基板からマスクへの熱伝導を小さくするように、先端がエッジ状に形成された周縁部を有しており、上記マスクを上記基板面に接触して成膜する際に、上記マスクの孔周辺の基板面を遮蔽することにより、蒸発したターゲット原子が回り込んで進入するのを阻止し、上記孔により成膜領域を正確に規定することを特徴としている。また、マスクの材質は、インコネル・ステンレス鋼であれば好ましく、この場合にはマスクの熱膨張係数が小さい。

【8】


【9】
さらに、本発明のコンビナトリアル成膜装置は、真空チャンバと、この真空チャンバ内に置かれたターゲットと、ターゲットにレーザー光を照射してターゲット原子を光励起して蒸発させるレーザーアブレーション用レーザー装置と、真空チャンバ内に支持される基板と、基板にレーザー光を照射して基板を加熱する加熱手段と、真空チャンバ内に酸素ガスを供給する供給管と、基板マスキング機構と、さらに、基板マスキング機構を上下動可能に支持し、且つ基板を回転可能に支持する支持機構と、を備え、基板マスキング機構が、基板至近位置にマスクを配置し、このマスクの孔を通して成膜領域が設定されるようにしており、上記マスクが、基板と密着する接触面を有する接触部と、この接触部が基板面に接触した際に接触部周辺の基板面を遮蔽するシールド部とを備え、上記孔は、接触部の略中央部に開口しており、シールド部は基板に接触する周縁部を備え、この周縁部は基板からマスクへの熱伝導を小さくするように先端がエッジ状に形成されており、支持機構を操作して基板とマスキング機構を接触させて成膜することにより、低真空中の成膜の際のマスク周縁部からの回り込み蒸着原子を防いで成膜領域を正確に規定すると共に、支持機構を操作して基板を回転することにより、基板上のこの回転の円周方向に成膜条件の異なる複数の薄膜を堆積することを特徴としている。マスクの材質は、インコネル・ステンレス鋼であることが望ましい。また、支持機構は接触部の可動機構を有していれば好ましく、接触部可動機構を操作して円周の半径を変化させることにより、基板上に半径の異なる複数の同心円に沿って成膜条件の異なる複数の薄膜を形成することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8