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明細書 :塩基性軸配位子を有する置換テトラフェニルポルフィリン化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3455174号 (P3455174)
公開番号 特開2002-128781 (P2002-128781A)
登録日 平成15年7月25日(2003.7.25)
発行日 平成15年10月14日(2003.10.14)
公開日 平成14年5月9日(2002.5.9)
発明の名称または考案の名称 塩基性軸配位子を有する置換テトラフェニルポルフィリン化合物
国際特許分類 C07D487/22      
A61K 31/4178    
A61P  7/08      
C07F 15/02      
C07F 15/06      
FI C07D 487/22
A61K 31/4178
A61P 7/08
C07F 15/02
C07F 15/06
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2000-320025 (P2000-320025)
出願日 平成12年10月19日(2000.10.19)
審査請求日 平成12年10月20日(2000.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】土田 英俊
【氏名】小松 晃之
【氏名】松川 泰子
【氏名】宮武 薫
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】守安 智
参考文献・文献 特開2000-86666(JP,A)
特開 平8-301873(JP,A)
特開 昭59-162924(JP,A)
特開 昭59-164791(JP,A)
調査した分野 C07D 487/22
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I)
【化1】
JP0003455174B2_000002t.gif(ここで、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基、R2はC1~C10のアルキル基、R3はC1~C18のアルキル基を表わし、Mは二つの水素原子、X-はハロゲンイオン、nは0である)で示される置換テトラフェニルポルフィリン化合物。

【請求項2】
1は一般式(II)
【化2】
JP0003455174B2_000003t.gif(ここで、R4はC1~C18のアルキル基である)または1-メチルシクロヘキシル基である請求項1の置換テトラフェニルポルフィリン化合物。

【請求項3】
一般式(I)
【化3】
JP0003455174B2_000004t.gif(ここで、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基、R2はC1~C10のアルキル基、R3はC1~C18のアルキル基を表わし、Mは第4~5周期の遷移金属イオンであり、X-はハロゲンイオン、nはX-の個数を示す金属イオンの価数から2を差し引いた整数である)で示される置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体。

【請求項4】
MがFeまたはCoのイオンである請求項3の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体。

【請求項5】
Feの価数が+2価または+3価である請求項4の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体。

【請求項6】
Coの価数が+2価である請求項4の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体。

【請求項7】
少なくとも請求項3ないし6のいずれかの置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を含有する人工酸素運搬体。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【産業上の利用分野】この出願の発明は可逆的に酸素を結合脱離でき、安定な人工酸素運搬体として利用できるテトラフェニルポルフィリン化合物に関するものである。

【10】

【化4】
JP0003455174B2_000005t.gif【0011】(ここで、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基、R2はC1~C10のアルキル基、R3はC1~C18のアルキル基を表わし、Mは二つの水素原子X-はハロゲンイオン、nは0である)で示される置換テトラフェニルポルフィリン化合物を提供する。

【100】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1693(νC=O(アミド))、1740(νC=O(エステル))、3420(νNH)。

【101】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:403, 521, 553 nm)。

【102】
FAB-MSスペクトル(m/z):1630 [M]+
<応用例1>実施例6で合成した 2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物48.1 μg( 0.03 μmol)を10 mLの無水トルエン溶液とし、窒素置換後、亜二チオン酸水溶液と不均一系で約2時間混合攪拌し、鉄(II)へ還元した。

【103】
窒素雰囲気下、トルエン層だけを抽出、無水硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、濾別し、得られたトルエン溶液を測定セルに移し密閉した。こうして、2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(II)錯体のトルエン溶液を得た。

【104】
この溶液の可視吸収スペクトルはλmax:442、545、565 nmで、当該錯体はイミダゾールが1つ配位した5配位デオキシ型に相当するものであった。

【105】
この溶液に、酸素ガスを吹き込むと直ちにスペクトルが変化し、λmax:431、553 nmのスペクトルが得られた。これより、錯体が酸素化錯体になっていることが確認された。

【106】
この酸素化錯体溶液に窒素ガスを1分間吹き込むことにより、可視吸収スペクトルは酸素化型スペクトルからデオキシ型スペクトルへ可逆的に変化し、酸素の吸脱着が可逆的に生起することを確認した。さらに、酸素を吹き込み、次に窒素を吹き込む操作を繰り返したところ、酸素吸脱着が連続して行えることも確認された。

【107】
この酸素配位錯体はトルエン中に含まれる微量の水により徐々に酸化劣化していったが、その半減期は約12時間(25℃)であった。また、酸素親和性(P1/2)は、1.7 Torr(25℃)で、赤血球の値(8 Torr)に近い。
<応用例2>実施例6で合成した2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物48.1μg(0.03μmol)、およびジパルミトイルフォスファチジルコリン2.2 mg(3.0μmol)を15μLのメタノール溶液とし、窒素置換後、一酸化炭素を通気し、アスコルビン酸水溶液を加えて還元、一酸化炭素錯体とした。これを3 mLの水(70℃)に注入することによって、一酸化炭素化錯体の小胞体分散液が得られた(λmax:427、543 nm)。

【108】
さらに、窒素雰囲気下にて光照射しCOを脱離させたところ、可視吸収スペクトルは、λmax:440、542、563 nmに移行し、イミダゾールの1つ配位した5配位デオキシ型となることが確認された。この分散液の電子顕微鏡観察から、粒径100~200 nmの均一な二分子膜小胞体の形成が確認された。

【109】
この溶液に、酸素ガスを吹き込んだところ、直ちにスペクトルが変化し、λmax:426、551 nmのスペトルが得られた。これより酸素化錯体の形成が確認された。この酸素化錯体溶液に窒素ガスを1分間吹き込むことにより、可視吸収スペクトルは酸素化型スペクトルからデオキシ型スペクトルへ可逆的に変化したことから、酸素の吸脱着が可逆的に生起することが確認された。

【110】
なお、酸素を吹き込み、次に窒素を吹き込む操作を繰り返したところ、酸素吸脱着が連続して行えることが確認された。
<応用例3>実施例6に従い合成した2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物(20μM)を特開平8-301873号公報に記載の手法に従ってヒト血清アルブミン(2.5μM)に包接し、調製したアルブミン-ヘム複合体(ポルフィリン/アルブミン:8 (mol/mol))のリン酸緩衝水溶液(pH7.4、1/30mM) 3 mLを石英製分光測定用セルに移し、窒素雰囲気下で密封した。その可視吸収スペクトルはλmaxが443, 540, 567 nmであり、包接されたポルフィリン鉄(II)錯体は分子内軸塩基が1つ配位したFe(II)高スピン5配位錯体を形成していることが確認された。

【111】
この分散液に酸素を通気したところ、その可視吸収スペクトルのλmaxは425,551 nmへ移行し、酸素化錯体の形成が示された。この酸素化錯体溶液に窒素ガスを1分間吹き込むことにより、可視吸収スペクトルは酸素化型スペクトルからデオキシ型スペクトルへと可逆的に変化したことから、酸素の吸脱着が可逆的に生起することが確認された。

【112】
なお、酸素を吹き込み、次に窒素を吹き込む操作を繰り返したところ、酸素吸脱着を連続して行えることが確認された。

【113】
また、この酸素配位錯体の半減期は、約24時間(25℃)であることが確認された。これは従来の系に比べて長いものであった。

【114】

【発明の効果】この出願の発明により、赤血球の値に近い酸素親和性を有し、酸素錯体の安定性の高い置換テトラフェニルポルフィリン化合物が提供される。この化合物は、2位に塩基性軸配位子として機能するヒスチジン誘導体を有するため、遊離イミダゾールを添加することなく優れた酸素結合性を示し、人工酸素運搬体のほか、ガス吸着剤、酸素吸脱着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒などとしても有効に作用するものである。

【12】
また、第2には、この出願の発明は、上記一般式(I)の化合物において、R1が一般式(II)

【13】

【化5】
JP0003455174B2_000006t.gif【0014】(ここで、R4はC1~C18のアルキル基である)または1-メチルシクロヘキシル基である置換テトラフェニルポルフィリン化合物を提供する。

【15】
さらに、第3には、この出願の発明は、一般式(I)

【16】

【化6】
JP0003455174B2_000007t.gif【0017】(ここで、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基、R2はC1~C10のアルキル基、R3はC1~C18のアルキル基を表わし、Mは第4~5周期の遷移金属イオンであり、X-はハロゲンイオン、nはX-の個数を示す金属イオンの価数から2を差し引いた整数である)で示される置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を提供する。

【18】
この出願の発明は、第4には、MがFeまたはCoのイオンである前記第3の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を、第5には、Feの価数が+2価または+3価である置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を、第6には、Coの価数が+2価である置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を提供する。

【19】
そして、第7には、この出願の発明は、少なくとも前記のいずれかの置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体を含有する人工酸素運搬体をも提供する。

【2】

【従来の技術とその課題】ヘモグロビンやミオグロビン中に存在するヘム、すなわちポルフィリン鉄(II)錯体は、酸素分子を可逆的に吸脱着できる。この様な天然のヘムと類似の酸素吸脱着機能を合成のポルフィリン鉄(II)錯体で実現しようとする研究は従来数多く報告されている(例えば、J. P. Collman, Acc. Chem. Res., 10, 265 (1977)、F. Basolo, B. M. Hoffman, J. A. Ibers, ibid, 8, 384 (1975)など)。特に、室温条件下で安定な酸素錯体を形成できると報告されているポルフィリン鉄(II)錯体としては、5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-ピバルアミドフェニル)ポルフィリン鉄(II)錯体(以下、FeTpivPP錯体と呼ぶ)が知られている(J. P. Collman, et al., J. Am. Chem. Soc., 1975, 97, 1427)。

【20】

【発明の実施の形態】この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン化合物は、次の一般式(I)

【21】

【化7】
JP0003455174B2_000008t.gif【0022】(ここで、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基、R2はC1~C10のアルキル基、R3はC1~C18のアルキル基を表わし、Mは二つの水素原子または第4~5周期の遷移金属イオン、X-はハロゲンイオン、nはX-の個数を示す金属イオンの価数から2を差し引いた整数である)で表わされるものである。

【23】
このとき、MがCo、Feなどの第4~5周期の遷移金属イオンである場合には、この置換テトラフェニルポルフィリン化合物は、置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体であり、分子内のヒスチジンのイミダゾール残基が配位した状態となる。このような置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、当該分子のみで酸素結合能を発揮できるものである。また、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体では、近位塩基であるヒスチジン誘導体のイミダゾール環2位に立体障害基が存在しないため、酸素親和性を適当な値に保ちつつ、従来系よりも格段に安定な酸素配位錯体が生成される。このようなヒスチジン誘導体は天然アミノ酸由来のものであるため、生体適合性に優れており、好ましい。

【24】
以上より、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、使用時に軸塩基濃度を極限まで低減できることはもちろんのこと、体内毒性の高い遊離イミダゾールの存在を解消できるため、生体内投与において安全性が高く、人工酸素運搬体として有効に作用する。

【25】
前記のとおりの置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、さらに、酸化還元反応、酸素酸化反応または酸素添加反応の触媒としても作用するものである。したがって、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン化合物は、人工酸素運搬体として利用できるだけでなく、ガス吸着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒、酸素添加反応触媒としても利用可能なものである。

【26】
以上のとおりの置換テトラフェニルポルフィリン化合物は、どのような方法で製造されてもよいが、例えば、次の一般式(III)

【27】

【化8】
JP0003455174B2_000009t.gif【0028】に示される5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-アミノフェニル)ポルフィリンを出発物質として合成できる。

【29】
具体的には、Collman et al., J. Am. Chem. Soc., 97, 1427 (1975)に記載の方法に従って合成された5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-アミノフェニル)ポルフィリンを適当な乾燥有機溶剤、例えば乾燥テトラヒドロフランに溶解し、塩基(例えばピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなど)と2,2-ジメチルアルカン酸クロライド、または、1-メチルシクロヘキサン酸クロライドを加えて、暗所、氷冷するか、または室温で撹拌する。その後、溶媒を減圧除去し、これをクロロホルムなどの有機溶媒で抽出し、水で洗浄、濾過後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画精製する。こうして、5,10,15,20-テトラキス(o-アミノフェニル)ポルフィリンの4つのアトロプ異性体のうち、5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンのみが得られる。

【3】
FeTpivPP錯体は1-アルキルイミダゾール、1-アルキル-2-メチルイミダゾールなどの軸塩基が共存すると、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中、室温において分子状酸素を可逆的に結合できる。また、この錯体は、リン脂質から成る二分子膜小胞体に包埋させれば生理条件下(水相系、pH 7.4、≦40oC)でも同様の機能を発揮する(E. Tsuchida,et al., J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1984, 1147)。しかし、FeTpivPP錯体が酸素を可逆的に結合解離するために軸塩基として必要なイミダゾール誘導体には薬理作用を持つものがあり、体内毒性の高いものが多い。また、リン脂質小胞体を利用する場合、過剰なイミダゾール誘導体がその形態を不安定化させる要因となるという問題もあった。

【30】
次に、十分に脱気したジメチルホルムアミドを氷水で冷却し、オキシ塩化リンを加え、室温で1~2時間撹拌してVilsmeier試薬を調製する。ここに乾燥ジクロロメタンまたはクロロホルムに溶解した5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンを室温で滴下する。この時、反応溶液は瞬時に紫色からジカチオンの緑色に変化する。これを12~24時間沸点還流させ、放冷後、飽和酢酸ナトリウム水溶液を反応溶液に加え、緑色から紫色に変化することを確認した後、更に20~40℃で20~120分間撹拌を続ける。これを適当な有機溶剤で抽出し、水で洗浄、乾燥、濾過後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画精製する。こうして2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンが得られる。

【31】
この2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンを適当な有機溶剤(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼンなど)に溶解し、メタノールを加えて窒素で十分に脱気する。氷冷下、水素化ホウ素ナトリウムを加え5~15分間撹拌した後、水を加えて反応を停止させる。これをクロロホルムなどの有機溶媒で抽出し、水で洗浄、乾燥、濾過後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画精製する。こうして2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンが得られる。

【32】
このようにして得た2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンの2-ヒドロキシエチル基へのヒスチジン誘導体の導入は、例えば以下の方法により達成できる。

【33】
2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンを適当な乾燥有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ベンゼンなど)に溶解し、ジカルボン酸の環状無水物(例えば、グルタル酸無水物など)、4-ジメチルアミノピリジンを加え、窒素雰囲気下で、10~24時間沸点環流させる。溶媒を減圧除去した後、これをクロロホルムなどの有機溶媒で抽出し、水で洗浄、乾燥、濾過後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画精製する。こうして2-カルボキシアルカノイルオキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンを得る。

【34】
この2-カルボキシアルカノイルオキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリン、トリエチルアミンを無水ジメチルホルムアミドに溶解させ、10~30分間窒素バブルする。カップリング試薬であるBOPを加え、さらに窒素雰囲気下で10~30分間攪拌する。その後、L-ヒスチジンアルキル・2塩酸塩を加え、窒素雰囲気下、遮光しながら室温で10~18時間攪拌する。反応の進行をTLCで確認後、これを純水中に滴下し、ポルフィリンを沈殿させる。沈殿物をG4グラスフィルターでろ別し、ろ物をクロロホルムに溶解して採取する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を減圧除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画精製する。こうして目的物2-(L-アルキルヒスチジンアミドアルカノイルオキシメチル)-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリンが得られる。

【35】
なお、この生成物では一重項酸素によりイミダゾール環が分解してしまうので、精製操作は暗所にて行うことが好ましい。

【36】
こうして得られたポルフィリンへの中心金属導入は、例えば D. Dolphin 編、The Porphyrin、1978年、アカデミック・プレス社などに記載の一般法により達成され、相当のポルフィリン化合物として得られる。一般に、鉄錯体の場合にはポルフィリン鉄(III)錯体が、コバルト錯体の場合にはポルフィリンコバルト(II)錯体が得られる。

【37】
なお、上記置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体の内、鉄(III)錯体の形を有する場合は、適当な還元剤(亜二チオン酸ナトリウム、アスコルビン酸など)を用い、常法により中心金属を3価から2価へ還元すれば酸素結合活性が付与できる。

【38】
この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン化合物の鉄(II)錯体は、リン脂質分子から成る二分子膜小胞体に包埋したり、リン脂質被覆脂肪乳剤中へ内包、ヒト血清アルブミンに包接、組換えヒト血清アルブミンに包接、あるいは、アルブミン多量体に包接するなどしてもよい。これらの包埋物、内包物、包接物等においても、置換テトラフェニルポルフィリン鉄(II)錯体は、酸素との接触によって速やかに安定な酸素錯体を生成できる。

【39】
さらに、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、酸素分圧に応じて酸素を吸脱着できるものである。つまり、このような酸素結合解離は可逆的に繰り返し行うことができるものであり、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、酸素吸脱着剤や酸素運搬体として有効に作用するのである。

【4】
そこで、軸塩基の添加量を極限的に少なくする方法として、分子内に共有結合でイミダゾール誘導体を導入することが考えられる。この出願の発明者らは、ポルフィリン鉄錯体へ置換基として、例えばアルキルイミダゾール誘導体を導入すれば、軸塩基を外部添加することなく安定な酸素運搬体を供給できるものと考え、既にポルフィリン環の2位に置換基を有するFeTpivPP錯体と、これをリン脂質小胞体中あるいはヒト血清アルブミンに結合させた系について、可逆的な酸素の吸脱着反応を報告している(特開昭59-164791号公報、特開昭59-162924号公報、特開平8-301873号公報)。

【40】
また、以上のとおりの置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、金属に配位できる気体であれば、酸素に限らず、例えば、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素などを結合することもできる。したがって、この出願の発明の置換テトラフェニルポルフィリン金属錯体は、均一系、不均一系での酸化還元反応触媒やガス吸着剤としても応用できるものである。

【41】
以下、この発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明が実施例のものに限定されないことは言うまでもない。

【42】

【実施例】<参考例1>5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-アミノフェニル)ポルフィリン0.4g(0.59 mmol)をテトラヒドロフラン55 mLに溶解し、ピリジン1.7 mL(20.7 mmol)と1-メチルシクロヘキサン酸クロライド2.11 g(14.8 mmol)を加えて、室温、暗所で2時間撹拌させた。その後、溶媒を減圧除去し、これをクロロホルムで抽出し、5 %アンモニア水で洗浄した後、純水で数回洗浄する。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧除去する。残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/酢酸エチル:10/1(容量/容量))で分画精製し、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンを収量0.56 g(収率82%)で得た。

【43】
5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンの分析結果は、以下のとおりであった。

【44】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:10/1(容量/容量):Rf:0.50(モノスポット))。

【45】
赤外吸収スペクトル(cm-1):1691(νC=O(アミド))、3428 (νNH)。

【46】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 516, 549, 590, 647 nm)。FAB-MSスペクトル(m/z):1172 [M]+

【47】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)): -2.3 (s, 2H, innerH), 0.2(s, 12H, 1-methyl), 0.3-1.2(m, 40H, cyclohexyl), 7.5(t, 4H, phenyl-4), 7.6(s、4H、amide-H), 7.8(t, 4H, phenyl-5)、7.9(d、4H、phenyl-3), 8.8(d, 4H, phenyl-6), 8.9(s, 8H, pyrrole-βH)。
<参考例2>5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン0.54g(0.461 mmol)をクロロホルム10 mLに溶解し、塩化銅二水和物177 mg(1.15 mmol)とTEA 233 mg(2.31 mmol)のメタノール溶液(2 mL)を加えて、65℃で1時間、沸点環流した。反応溶液の可視吸収スペクトルで、銅イオンがポルフィリンに挿入されたことを確認した後、溶媒を減圧除去し、これをクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧除去した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/酢酸エチル:5/1(容量/容量))で分画精製した。目的物を集め、真空乾燥して紫色の 5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)を収量0.45 g(収率79%)で得た。

【48】
この5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)の分析結果は、以下のとおりであった。

【49】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:10/1(容量/容量):Rf:0.74(モノスポット))。

【5】
また、これらのポルフィリン鉄(II)錯体の水溶液や分散液を赤血球の代替物として使用することを考えた場合には、分子設計の過程で、酸素親和性(全体の50%のヘムに酸素が結合する際の酸素分圧)を適当な値、すなわち生理条件下で赤血球と同等の酸素親和性の値に調整することが重要となる。一般に、N-置換イミダゾールを分子内に結合した場合、酸素親和性が高く、赤血球代替物として使用できるものにはならない。そこで、酸素親和性を下げる方法として、従来、イミダゾール環の2位にメチル基などの立体障害基を導入し、イミダゾール窒素と中心鉄(II)の結合を緩めることにより、酸素親和性を調節することが広く行われてきた。しかしその一方で、メチル基の存在により、酸素錯体の安定性が低下する傾向も見られていた。つまり、イミダゾール環の2位に立体障害基がなく、酸素親和性が適当な値を示す、分子内塩基型のポルフィリン鉄(II)錯体の開発が望まれていたのが実情である。

【50】
赤外吸収スペクトル(cm-1):1687(νC=O(アミド))、3434 (νNH)。

【51】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 541, 576 nm)。

【52】
FAB-MSスペクトル(m/z):1233 [M]+
<実施例1>十分に窒素で脱気した蒸留ジメチルホルムアミド6.3 mLを氷水で冷却し、オキシ塩化リン7.4 mLを加え、室温で1時間撹拌させると、赤橙色のVilsmeier 試薬が得られた。そこジクロロメタン14 mLに溶解した 5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)0.45 g(0.36 mmol)を室温で滴下した。反応の進行に伴い、溶液の色は紫色から濃緑色に変化し、イミニウム塩の生成が確認できた。これを18時間沸点還流させた後、放冷し、飽和酢酸ナトリウム水溶液300mlを加えることにより、中和させると、反応溶液の色は緑色から紫色に変化した。そして、更に40℃で3時間撹拌を続けた。これをクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、溶媒を減圧除去した。シリカゲルカラム(クロロホルム/酢酸エチル:5/1(容量/容量))で分画精製、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)を収量 0.22 g(収率50%)で得た。

【53】
この2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)の分析結果は、以下のとおりであった。

【54】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:5/1(容量/容量):Rf:0.53(モノスポット))。

【55】
赤外吸収スペクトル(cm-1):1672(νC=O(<HAN>ホルミル</HAN>))、1692(νC=O(アミド))、3428(νNH)。

【56】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:430, 552, 593 nm)。

【57】
FAB-MSスペクトル(m/z):1262 [M]+
<実施例2>2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン銅(II)0.22 g(0.175 mmol)をジクロロメタン8 mLに溶解し、そこへ濃硫酸2 mLを加え、室温で10分間激しく攪拌させると、溶液の色は緑色に変化した。この溶液を、クロロホルムと氷水の二層溶液中へ滴下し、炭酸ナトリウムで中和したところ、クロロホルム層は、紫色に戻った。クロロホルム層を純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧除去した。残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/酢酸エチル:5/2(容量/容量))で分画精製し、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の 2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンを収量0.18 g(収率84 %)で得た。

【58】
前記した2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンの分析結果は、以下のとおりであった。

【59】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:5/2(容量/容量):Rf:0.60(モノスポット))。

【6】
また、ヘモグロビンのヘムに配位結合した近位塩基はヒスチジン残基のイミダゾールであることは良く知られているが、これを合成のポルフィリン化合物、特にテトラフェニルポルフィリン化合物に導入する場合には、これまで必ずN-置換イミダゾール誘導体やピリジン誘導体が用いられてきた(例えば、Momentau et al., Chem. Rev., 110, 7690 (1994)など)。すなわち、ヒスチジン誘導体をテトラフェニルポルフィリン化合物に共有結合した例は、これまで知られていなかったのである。

【60】
赤外吸収スペクトル(cm-1):1672(νC=O(ホルミル))、1691(νC=O(アミド))、3429(νNH)。

【61】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:432, 527, 555, 597, 662 nm)。

【62】
FAB-MSスペクトル(m/z):1201 [M]+

【63】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)):-2.3 (s, 2H, innerH), 0.2(d, 12H, 1-methyl), 0.3-1.0(m, 40H, cyclohexyl), 7.4-7.6(m, 8H, amide-H , phenyl-4), 7.8-7.9(m、8H、phenyl-3,5), 8.7-8.9(m, 10H, pyrrole-βH, phenyl-6), 9.4 (s, 1H, pyrrole-H), 9.6 (s, 1H, formyl)。
<実施例3>2-ホルミル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン177 mg(0.147 mmol)をジクロロメタン 2.5mLに溶解し、メタノール7 mLを加えて窒素で十分に脱気した。氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム53.6 mg(1.47 mmol)を加え10分間撹拌し、水を加えて反応を停止させた。これをクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧除去した。残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール:30/1(容量/容量))で分画精製し、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の 2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンを収量89.3 mg(収率50 %)で得た。

【64】
前記した2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンの分析結果は、以下のとおりであった。

【65】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:30/1(容量/容量):Rf:0.29(モノスポット))。

【66】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1690(νC=O(アミド))、3427(νNH)。

【67】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 517, 548, 591, 645 nm)。

【68】
FAB-MSスペクトル(m/z):1219 [M]+

【69】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)): -2.6 (s, 2H, innerH), 0.1(m, 12H, 1-methyl), 0.3-1.0(m, 40H, cyclohexyl), 4.9 (q, 2H, -CH2OH), 7.4-7.6(m, 8H, amide-H , phenyl-4), 7.7-7.8(m、8H、phenyl-3,5), 8.6-8.8(m, 10H, pyrrole-βH, phenyl-6), 9.0 (s, 1H, pyrrole-H)。
<実施例4>2-ヒドロキシメチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン 0.54 g (0.45 mmol)の蒸留テトラヒドロフラン溶液(15 mL)にグルタル酸無水物(155 mg, 0.67 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(32.7 mg, 0.27 mmol)を加え、窒素雰囲気下で、60℃、18時間反応させた。溶媒を減圧除去してから、これをクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧除去する。残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール:10/1(容量/容量))で分画精製し、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の 2-(3-カルボキシペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンを収量0.45 g(収率79%)で得た。

【7】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、赤血球の値に近い酸素親和性を有し、安定性の高い酸素錯体を形成でき、人工酸素運搬体として有効に作用するポルフィリン化合物を提供することを課題としている。

【70】
前記した2-(3-カルボキシペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンの分析結果は、以下のとおりであった。

【71】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:5/1(容量/容量):Rf:0.49(モノスポット))。

【72】
赤外吸収スペクトル(cm-1):1688(νC=O(アミド))、1734(νC=O(エステル))、3427(νNH)。

【73】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 517, 547, 591, 646 nm)。

【74】
FAB-MSスペクトル(m/z):1333 [M]+

【75】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)):-2.6 (s, 2H, innerH), 0.1(m, 12H, 1-methyl), 0.3-1.0(m, 40H, cyclohexyl), 2.0 (t, 2H, -CH2COOH), 2.4 (m, 4H, -CH2 CH2C(=O)O-), 5.3 (q, 2H, -CH2OC(=O)-), 7.4-7.5(m,8H, amide-H , phenyl-4), 7.7-7.8(m、8H、phenyl-3,5), 8.6(s, 1H, pyrrole-βH), 8.7-8.8(m, 10H, pyrrole-βH, phenyl-6)。
<実施例5>2-(3-カルボキシペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン (46 mg, 35μmol)とTEA (37.7μL, 0.31 mmol)の蒸留DMF溶液(4.6 mL)に、10分間窒素を通気して脱気した後、BOP (151 mg, 0.35 mmol)を加え、さらに窒素雰囲気下、室温で10分攪拌した。その後、ヒスチジンメチルエステル<HAN>・</HAN>2塩酸塩 25.1 mg (0.11mmol)を加えて、窒素雰囲気下、室温で遮光しながら、12時間攪拌した。反応の進行をTLCで確認した後、反応液を純水に滴下して、ポルフィリンを沈殿させた。沈殿物をG4グラスフィルターで濾別し、濾物をクロロホルムに溶解させて採取した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過、溶媒を減圧除去した。残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール:30/1(容量/容量))で分画精製し、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、紫色の 2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンを収量 19.1 mg(収率37 %)で得た。

【76】
2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリンの分析結果は、以下のとおりであった。

【77】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:20/1(容量/容量):Rf:0.16(モノスポット))。

【78】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1684(νC=O(アミド))、1740(νC=O(エステル))、3428 (νNH)。

【79】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 517, 549, 591, 646 nm)。

【8】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、より安定な酸素錯体を形成できる塩基性軸配位子を結合した置換ポルフィリン化合物の分子設計と機能発現に鋭意研究を重ねた結果、5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-置換アミドフェニル)ポルフィリン化合物の2位置へ酸素吸着能を有効に発揮させるために必要な置換基、すなわち塩基性軸配位子であるイミダゾール誘導体、特にヒスチジン誘導体をポルフィリン1モルに対して1モルの割合で導入することにより(分子内に軸塩基を持つポルフィリンと成る)、酸素親和性を適当な値に保ちながら、従来系に比べてより安定な酸素錯体を形成し得る新しい酸素運搬体が提供できるものと考え、本発明を完成するに至った。

【80】
FAB-MSスペクトル(m/z):1469 [M]+

【81】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)):-2.6 (s, 2H, innerH), 0.0-0.1(m, 12H, 1-methyl), 0.3-1.0(m, 40H, cyclohexyl), 1.9 (t, 2H, -CH2CONH-), 2.3-2.5 (m, 4H, -CH2CH2C(=O)O-), 3.2 (s, 2H, Im-CH2-), 3.7 (m,3H, His-OCH3), 4.9 (m, 1H, His-CH2CH-), 5.2-5.4 (q, 2H, -CH2OC(=O)-), 7.2 (s, 1H, Im), 7.4-7.5(m, 8H, amide-H , phenyl-4), 7.7 (s, 1H, Im), 7.8(m、8H、phenyl-3,5), 8.6-8.8(m, 11H, pyrrole-βH, phenyl-6)。
<実施例6>ポルフィリンへの鉄導入反応は、例えば D. Dolphin 編、The Porphyrin、1978年、アカデミック・プレス社などに記載の一般法により達成できる。

【82】
47 %臭化水素酸水溶液 1.3 mLを十分に脱気し、脱酸素を行った後、素早く電解鉄 87 mg(1.56 mmol)を加え、80℃まで昇温、1時間撹拌した。溶液の色は無色透明から薄緑色へと変化した。電解鉄が完全に溶けたら130℃まで昇温し、臭化水素酸、及び水を蒸発させた。水が無くなると白色固体の臭化第一鉄が得られる。完全に水が除去できたら、反応容器を放冷した。実施例5で得た2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン19 mg(13μmol)をテトラヒドラフラン溶液に溶解し、2,6-ルチジン 17.2μL(0.16 mmol)を加えて、十分に脱気した。これを調製した臭化第一鉄に窒素雰囲気で滴下し、2時間沸点還流する。溶媒を減圧除去後、これをクロロホルムで抽出し、水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、また溶媒を減圧除去した。シリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール(10/1)(容量/容量))で分画精製、目的物を集め、真空乾燥した。こうして、2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物を収量 9.1 mg(収率46 %)で得た。

【83】
2-(3-メチルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-(1-メチルシクロヘキシルアミド)フェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物の分析結果は、以下のとおりであった。

【84】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:10/1(容量/容量):Rf:0.44(モノスポット))。

【85】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1693(νC=O(アミド))、1740(νC=O(エステル))、3420 (νNH)。

【86】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:420, 505, 581 nm)。

【87】
FAB-MSスペクトル(m/z):1523 [M-Br]+
<実施例7>実施例1において1-メチルシクロヘキサン酸クロライドの代わりに、ピバロイルクロライドを用い、さらに実施例5においてヒスチジンメチルエステル<HAN>・</HAN>2塩酸塩の代わりにヒスチジンオクタデシルエステル<HAN>・</HAN>2塩酸塩を用いた以外は実施例1~6と全く同様な方法に従って、2-(3-オクタデシルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-ピバルアミドフェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物を定量的に合成した。

【88】
得られた2-(3-オクタデシルヒスチジンアミドペンタノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-ピバルアミドフェニル)ポルフィリン鉄(III)臭化物の分析結果は、以下のとおりであった。

【89】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:10/1(容量/容量):Rf:0.50(モノスポット))。

【9】
つまり、この出願の発明は、第1には、一般式(I)

【90】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1693(νC=O(アミド))、1741(νC=O(エステル))、3420 (νNH)。

【91】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:420, 506, 582 nm)。

【92】
FAB-MSスペクトル(m/z):1599 [M-Br]+
<実施例8>実施例1において1-メチルシクロヘキサン酸クロライドの代わりに、2,2-ジメチルオクタデカン酸クロライドを用い、さらに実施例4において無水グルタル酸の代わりに無水コハク酸を用いた以外は実施例1~5と全く同様な方法に従って、2-(3-メチルヒスチジンアミドプロパノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-2,2-ジメチルオクタデカンアミドフェニル)ポルフィリンを定量的に合成した。

【93】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:20/1(容量/容量):Rf:0.11(モノスポット))。

【94】
赤外吸収スペクトル(cm-1): 1684(νC=O(アミド))、1739(νC=O(エステル))、3428 (νNH)。

【95】
紫外可視吸収スペクトル(CHCl3、λmax:423, 516, 548, 592, 646 nm)。

【96】
1H-NMRスペクトル(CDCl3、TMS基準、δ(ppm)):-2.6 (s, 2H, innerH), -1.5-0.5(m, 24H, 2,2-dimethyl), 0.5-1.5(m, 52H, -(CH2)5CH3), 1.9 (t, 2H, -CH2CONH-), 2.3 (m, 2H, -CH2C(=O)O-), 3.2 (s, 2H, Im-CH2-), 3.7 (m, 3H, His-OCH3), 4.9 (m, 1H, His-CH2CH-), 5.2-5.4 (q, 2H, -CH2OC(=O)-), 7.2(s, 1H, Im), 7.4-7.5(m, 8H, amide-H , phenyl-4), 7.7 (s, 1H, Im), 7.8(m、8H、phenyl-3,5), 8.6-8.8(m, 11H, pyrrole-βH, phenyl-6)。

【97】
FAB-MSスペクトル(m/z):1573 [M]+
<実施例9>実施例8で合成した2-(3-メチルヒスチジンアミドプロパノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-2,2-ジメチルオクタデカンアミドフェニル)ポルフィリンに2,6-ルチジンを含む乾燥テトラヒドロフラン中で、塩化コバルトと反応させ、コバルト錯体である2-(3-メチルヒスチジンアミドプロパノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-2,2-ジメチルオクタデカンアミドフェニル)ポルフィリンコバルト(II)を定量的に合成した。

【98】
得られた2-(3-メチルヒスチジンアミドプロパノイルオキシ)メチル-5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-2,2-ジメチルオクタデカンアミドフェニル)ポルフィリンコバルト(II)の分析結果は、以下のとおりであった。

【99】
薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:10/1(容量/容量):Rf:0.61(モノスポット))。