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明細書 :ハイドロキシアパタイトナノ粒子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4076203号 (P4076203)
公開番号 特開2002-137910 (P2002-137910A)
登録日 平成20年2月8日(2008.2.8)
発行日 平成20年4月16日(2008.4.16)
公開日 平成14年5月14日(2002.5.14)
発明の名称または考案の名称 ハイドロキシアパタイトナノ粒子およびその製造方法
国際特許分類 C01B  25/32        (2006.01)
A61K   6/033       (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI C01B 25/32 P
C01B 25/32 V
A61K 6/033
A61L 27/00 J
G01N 30/88 101C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2000-333638 (P2000-333638)
出願日 平成12年10月31日(2000.10.31)
審査請求日 平成16年12月16日(2004.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】591108880
【氏名又は名称】国立循環器病センター総長
発明者または考案者 【氏名】田中 順三
【氏名】古薗 勉
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開平04-026508(JP,A)
特開平05-017111(JP,A)
特開昭63-064905(JP,A)
特開平11-255507(JP,A)
特開平07-146281(JP,A)
特開平06-293507(JP,A)
特開平10-028728(JP,A)
特開平06-206713(JP,A)
特開平10-045405(JP,A)
調査した分野 C01B 25/00 - 25/46
A61K 6/033
A61L 27/00
G01N 30/88
CAplus(STN)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
短軸の最大直径が50nm~5μm、長軸が75nm~10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が1~5であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、反応させてハイドロキシアパタイ卜微粒子を合成する方法において、前記界面活性剤の曇点以上で反応させることを特徴とする請求項1記載のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤の官能基および親水性/疎水性比の割合を変えることによりハイドロキシアパタイトナノ粒子の大きさを制御することを特徴とする請求項2記載のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子からなるクロマトグラフィー充填剤。
【請求項5】
請求項1記載のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子を用いて表面修飾した有機高分子。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイドロキシアパタイトナノ粒子およびその製造方法ならびにハイドロキシアパタイトナノ粒子の用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイドロキシアパタイトは骨および歯の修復材等に用いられている。また、生体高分子化合物の分離や精製等に用いられるクロマトグラフィーの充填剤や、医薬剤やたんぱく質を担持して生体内を輸送するための担体としても使用される。さらに、高分子材料からなるカテーテル基体の、生体への装着状態において生体組織と接触する部分に、ハイドロキシアパタイトを蒸着法等で被覆することも知られている(特開平10-28728号公報)。
【0003】
ハイドロキシアパタイト微粒子の製造方法としては、界面活性剤-水-無極性有機液体系、または界面活性剤-水-アルカノール無極性有機液体系W/Oマイクロエマルジョン相に、Ca(NO3 2 /アンモニア水溶液および(NH4 2 HPO4 /アンモニア水溶液をそれぞれ可溶化させ、これら可溶化液を混合することにより粒径100nm以下の球状水酸アパタイト超微粒子を製造する方法が知られている(特開平5-17111号公報)。
また、水熱方法によりa,b軸方向に成長した板状アパタイト(特開平6-206713号公報)やa面を優先的に成長させた板状アパタイト(特開平10-45405号公報)も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、骨結合性および軟組織適合性材料の開発を目指し、共有結合を介したハイドロキシアパタイ卜(Hap)・高分子複合体の合成に関する研究を行ってきた。ハイドロキシアパタイト超微粒子の形態は、上述のように、製造法により多様であるが、大がかりな装置、設備を必要としない点で、エマルジョン法は好ましい方法である。
【0005】
上記のエマルジョン法によるハイドロキシアパタイト超微粒子の製造方法では、界面活性剤の曇点より低い反応温度の合成条件が用いられている。しかし、そのような条件では、界面活性剤より構成されたミセルが熱力学的に安定な構造をとるため、界面活性剤ミセル内で起こるハイドロキシアパタイトの結晶成長が抑制されることになり、得られた微粒子の形態が球状~不定形状となる。 しかも、結晶の大きさが直径20~100nmと制限されることから、特定形状の大きい結晶が得られなかった。イオン結合および共有結合でHap粒子を高分子気体に結合させる場合に、Hap粒子と基体との反応を高めるには、より大きな接着表面積のHap粒子を作製する必要がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、エマルジョン法によりハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子を製造する方法において、得られる微粒子の形態制御を行うことによって高分子表面とHap微粒子との接着性に優れた截頭形柱状構造のナノオーダーの微粒子を製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、短軸の最大直径が50nm~5μm、長軸が75nm~10μmであり、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が1~5であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子である。
【0008】
また、本発明は、非イオン性界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、反応させてハイドロキシアパタイ卜微粒子を合成する方法において、前記界面活性剤の曇点以上で反応させることを特徴とする請求項1記載のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、前記界面活性剤の官能基および親水性/疎水性比の割合を変えることによりハイドロキシアパタイトナノ粒子の大きさを制御することを特徴とする上記のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、上記のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子からなるクロマトグラフィー充填剤である。
【0011】
また、本発明は、上記のハイドロキシアパタイ卜ナノ粒子を用いて表面修飾した有機高分子である。
【0012】
本発明の製造方法により得られるハイドロキシアパタイトナノ粒子は、短軸の最大直径が50nm~5μm、望ましくは90~150nm、長軸が75nm~10μm、望ましくは100~300nmと大きく、c軸方向に成長し、結晶のアスペクト比(c軸長/a軸長)が1~5であり、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造の単結晶体である。
【0013】
本発明のハイドロキシアパタイトナノ粒子の形態は、これまでのエマルジョン法によるハイドロキシアパタイト微粒子の形態とは全く異なり、その形状は、クロマトグラフィー分離用充填剤として好適である。
【0014】
また、本発明のハイドロキシアパタイトナノ粒子は、接着に供する面積が従来の微粒子より格段に広いため、高分子基材との接着性を向上できるので、カテーテル等の生体親和性医療材料など、高分子表面に修飾するのに適している。高分子表面に修飾する方法としては、ハイドロキシアパタイトナノ粒子の活性基と高分子基体、例えば、表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴム、の活性基と化学反応させて複合体とする方法や、硬化性接着剤を用いる方法、高分子基材を融点近傍まで加熱して基材に埋設させる方法などを用いることができる。
【0015】
界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、反応させてハイドロキシアパタイ卜微粒子を合成する方法においては、界面活性剤のミセルの中でハイドロキシアパタイトの核が成長し、結晶成長する。本発明のハイドロキシアパタイトナノ粒子の製造方法の特徴は、反応温度を界面活性剤の曇点以上とすることにより、ミセルの熱力学的安定性を制御した点である。
【0016】
界面活性剤の曇点以上に反応温度を上げるということは、界面活性剤のミセルを形成する力を下げるということである。そうすると、ミセルという枠の中で制限を受けていたアパタイトの結晶成長の駆動力がミセルの枠を維持しようとする駆動力より大きくなると考えられる。そのメカニズムを利用して結晶の形を制御できる。反応温度の上限は、水溶液の反応であるから溶液が沸騰しない温度であれば特に限定されず、90℃以下程度とすればよい。
【0017】
界面活性剤の曇点は、種類によって異なる。本発明の方法において用いる界面活性剤の種類は、特に限定されず、上記の特開平5-17111号公報に開示された他種類の公知の陰イオン、陽イオン、非イオン性界面活性剤から適宜選択して用いることができる。界面活性剤のミセルを作る場合に、界面活性剤の官能基(親水性部位)および分子内の親水性/疎水性比が重要であり、この違いによってミセルの安定性、曇点も異なってくる。
【0018】
界面活性剤の曇点より高い温度で反応させると、界面活性剤分子の疎水性が高まり形成したミセルが熱力学的に不安定となり、Hapの結晶性成長がより強調される。界面活性剤は、その曇点で一瞬にして100%疎水性になるわけではなく、温度の上昇によって徐々に疎水性に傾いていく。その度合いは、界面活性剤の官能基、親水性・疎水性比、分子量が影響する。
【0019】
【実施例】
実施例1
連続オイル相としてドデカン[CH3 (CH2 10CH3 ]、非イオン性界面活性剤として曇点31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテル[CH3 (CH2 10CH2 O(CH2 CH2 O)4 CH2 CH2 OH]を用いた。室温で界面活性剤を0.5g含有したオイル相40mlを調製した後、Ca(OH)2 分散水溶液(2.5M)を10ml添加した。十分に攪拌後、その水/オイル(W/O)溶液に1.5M-KH2 PO4 溶液を10ml添加し24時間攪拌し反応温度50℃で反応させた。
【0020】
反応物は遠沈により精製し、60℃にて乾燥後、800℃にて1時間仮焼させた。得られたハイドロキシアパタイト焼結体はBタイプ炭酸アパタイトであり、高い生体活性を有することが確認された。また、元素分析によりCa/P比は1.61であり、本アパタイトはカルシウム欠損アパタイトであった。
【0021】
図1に得られたHapナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。TEMの観察から粒径が100~200nmで、先端角が斜角面を有する截頭形柱状構造の形態を有することを確認した。また、電子線回折による分析の結果、得られた粒子はc軸方向に配向していた。
【0022】
比較例1
反応温度を25℃とした以外は実施例1と同じ条件で得られたハイドロキシアパタイトナノ粒子は、図2に示すTEMの観察から球状~不定形ロッド状で粒径が30~60nmであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の截頭形柱状構造のナノオーダーの微粒子は、従来の球状の粒子に比べて高分子界面の接着に供する面積が格段に広くなり、高分子基材へのアパタイト焼結体粒子の接着において優れた特性を発揮する。また、本発明の方法は、ハイドロキシアパタイトナノ粒子の大きさ、形態を反応温度の選択によって制御することを可能にした。また、反応温度条件に加えて界面活性剤の種類を変更することによって、製造されるHap粒子の形態、サイズがより細かく制御可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られたHapナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図面代用写真である。
【図2】図2は、比較例1で得られたHapナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図面代用写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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