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明細書 :光学レンズ締結装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3456646号 (P3456646)
公開番号 特開2002-267909 (P2002-267909A)
登録日 平成15年8月1日(2003.8.1)
発行日 平成15年10月14日(2003.10.14)
公開日 平成14年9月18日(2002.9.18)
発明の名称または考案の名称 光学レンズ締結装置
国際特許分類 G02B  7/02      
FI G02B 7/02 F
G02B 7/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2001-065245 (P2001-065245)
出願日 平成13年3月8日(2001.3.8)
審査請求日 平成13年3月8日(2001.3.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】501094018
【氏名又は名称】新田 勇
【識別番号】501094029
【氏名又は名称】菅野 明宏
【識別番号】300089563
【氏名又は名称】小俣 公夫
発明者または考案者 【氏名】新田 勇
【氏名】菅野 明宏
【氏名】小俣 公夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】岡田 吉美
参考文献・文献 特開2000-206387(JP,A)
特開 昭57-138606(JP,A)
特開 平11-271586(JP,A)
調査した分野 G02B 7/02 - 7/16
特許請求の範囲 【請求項1】
ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、
前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料であって、熱膨張係数が前記光学レンズの半径方向に大きく且つ光軸方向に小さくなるような異方性のある材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第1及び第2の締結部がそれぞれ前記光学レンズの円周部分及び球面部分に接触して前記光学レンズを半径方向に固定し、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置。

【請求項2】
ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、
前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料であって、熱膨張係数が前記光学レンズの半径方向に大きく且つ光軸方向に小さくなるような異方性のある材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第2締結部が前記光学レンズの球面部分に接触して前記光学レンズを光軸方向に固定し、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置。

【請求項3】
ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、
前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、
熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料であって、熱膨張係数が前記光学レンズの半径方向に大きく且つ光軸方向に小さくなるような異方性のある材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第2締結部による前記光学レンズの球面部分への締結で前記光学レンズの光軸方向の位置決めを行い、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置。

【請求項4】
前記締結部材は、一部又は全部の厚さに渡って半径方向にスリットを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学レンズ締結装置。

【請求項5】
前記締結部材は、前記鏡筒に対して摩擦力で固定されており、前記締結部材と前記鏡筒の間の静止摩擦力に抗した荷重を与えることで、光軸方向に微小に滑らせることが可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光学レンズ締結装置。

【請求項6】
前記光学レンズを透過した光の収束状態を観察する検出部と、
前記締結部材と前記鏡筒の間の静止摩擦力に抗した荷重を与えて微小に滑らせることで、前記光学レンズの光軸方向の位置を微調整する調整機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項に記載の光学レンズ締結装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、光学レンズ締結装置に係り、特に、鏡筒より熱膨張係数が大きい高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いることにより、光学レンズを鏡筒に組込むようにした光学レンズ締結装置に関する。

【10】
本発明の第2の解決手段によると、ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第2締結部が前記光学レンズの球面部分に接触して前記光学レンズを光軸方向に固定し、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置を提供する。

【11】
本発明の第3の解決手段によると、ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第2締結部による前記光学レンズの球面部分への締結で前記光学レンズの光軸方向の位置決めを行い、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置を提供する。

【12】

【発明の実施の形態】A.光学レンズ締結装置
図1は、本発明に係る光学レンズ締結装置の第1の実施の形態の構成図を示す。なお、以下各図中の寸法、角度等は一例を示すものであり、本発明は、これに限定されず適宜の寸法、角度等を用いることができる。図1(A)の縦断面図に示すように、この光学レンズ締結装置は、鏡筒CE、レーザーの入射する方向から順にレンズL1~L4、シュリンクフィッタ(締結部材)SS、SB、スペーサーSPを備える。シュリンクフィッタSSは、レンズL1~L3を締結し、シュリンクフィッタSBは、レンズL4を締結している。この例では、レンズL1~L4とシュリンクフィッタSS、SBは複数個備えられているが、個数は適宜変えることができ、また、一つの場合でも良い。

【13】
図1(B)に、図1(A)の丸枠箇所の拡大図を示す。図示のように、レンズL4を締結しているシュリンクフィッタSBは、レンズL4の円周を締結している部分(第1締結部)の半径方向の厚みが比較的薄いため(図中参照)、温度上昇によりこの部分に緩みが生じる場合がある。そこで、レンズL4球面部分にシュリンクフィッタSBが当るような部分(第2締結部)を形成し、このようなシュリンクフィッタSBを用いてレンズL4を締結する。レンズL4の締結力は、図中矢印で示されるように、レンズに対して軸方向及び半径方向に加えられる。こうすることで温度上昇により、万が一、鏡筒が膨張してレンズL4の円周の第1締結部(図中)が薄いため締結が緩んでくる場合であっても、レンズL4球面を締結している第2締結部(図中)は半径方向が厚いため熱膨張量が多いので、レンズL4の締結力は保たれる。この場合、シュリンクフィッタSBによるレンズ球面上の締結力は半径方向だけでなく光軸方向にも加わる。また、レンズL4は、光軸に対して反対側の球面に接して締結しているスペーサーに押さえられていることで、レンズL4の光軸方向位置は変動しない。なお、ここでは、一例として締結の反対側の球面をスペーサーで押さえている場合について説明しているが、本発明は、これに限定されるわけではなく、球面両側をシュリンクフィッタSBで締結する場合や、締結の反対側を押さえ蓋等で押さえる場合についても適用できる。

【14】
また、図1(C)に、図1(A)の右側面図を示す。シュリンクフィッタSBは、図示のように、レンズL4球面上のレーザー等の光の透過を妨げないように、走査領域部分(図中)の球面は、シュリンクフィッタSBが掛からないように第2締結部に切欠部を設けたり、又は、第2締結部を設けないようにして、レンズL4を締結しないものとすることができる。ここでは、一例として一走査方向のみレーザーが透過するものについて説明しているが、これに限定されるわけではなく、複数方向に走査する場合は、レーザー等の透過光の妨げにならないように切欠部を設けて締結することで様々に適用することができる。また、ここでは、一例として、レンズL4のレーザー射出側のレンズ球面上を締結するものについて説明しているが、各々のレンズ球面についてレーザー入射側のみ、出射側のみ又は両側を適宜締結することも可能であり、さらに、切欠部を適宜設けることも可能である。この点は、他のレンズのシュリンクフィッタも同様とすることができる。

【15】
また、シュリンクフィッタは、レンズ群の半径方向に適宜の数のスリットSLをいれるようにしても良い。このスリットは、シュリンクフィッタを完全に分割するようにいれてもよいし、一部残して分割しないようにしても良い。この例では、30°ごとに6つのスリットSLが設けられ、シュリンクフィッタSBは、6つのパーツに分かれている。シュリンクフィッタに、半径方向に上述のようなスリットSLをいれ、かつ、シュリンクフィッタの厚みを最適にすることで、シュリンクフィッタの半径方向の熱膨張を有効に活用でき、シメシロの減少を防ぐことが可能となる。

【16】
図2は、本発明に係る光学レンズ締結装置の第2の実施の形態の構成図を示す。図2(A)の縦断面図に示すように、この光学レンズ締結装置は、第1の実施の形態と同様に、鏡筒CE、レーザーの入射する方向から順にレンズL1~L4、シュリンクフィッタ(締結部材)SS、SB、スペーサーSPを備える。シュリンクフィッタSSは、レンズL1~L3を締結し、シュリンクフィッタSBは、レンズL4を締結している。この例では、レンズL1~L4とシュリンクフィッタSS、SBは複数個備えられているが、個数は適宜変えることができ、また、一つの場合でも良い。

【17】
レンズL1~L4の半径方向の固定はレンズの円周部分及び球面部分の締付によって行う。図2(B)及び(C)に、図2(A)の左側及び右側の丸枠箇所の拡大図をそれぞれ示す。図2(B)に示すように、レンズL4にはシュリンクフィッタSBのレンズ球面部分の締付(第2締結部)により、レンズの半径方向のみならず、光軸方向への締結力も発生する。また、図2(C)に示すように、レンズL1のレーザー入射側(例えば、図に向かって左側)のレンズL1の光軸方向端面は、シュリンクフィッタSS(第2締結部)及び鏡筒CEにより光軸方向に固定されている(図中矢印参照)。よって、レンズL4のレンズ球面の光軸方向に生じる締結力は、スペーサSP、レンズL3及びL2を介してレンズL1に伝わり、レンズL1のレーザー入射側端面の締結部分にその反対方向の力が生じることで各レンズL1~L4が固定される。これにより、温度変化によらず、レンズL1~L4の光軸方向位置の変化量を最小に抑えることが可能である。ここでは、一例として、光軸方向に押さえる面の一方がレンズL1のように平面である場合について説明しているが、これに限定されるわけではなく、レンズ群両端のレンズ面が球面又は平面であるに係らず適宜の面形状に適用できる。また、シュリンクフィッタSS及びSBのレンズL1及びL4の球面に接触する部分は第1の実施の形態の場合と同様に、レンズ球面上のレーザー透過を妨げないように、走査領域部分の球面は締結しないようにすることができる。

【18】
図3は、本発明に係る光学レンズ締結装置の第3の実施の形態の構成図を示す。この光学レンズ締結装置は、鏡筒CE、レーザーの入射する方向から順にレンズL1~L6、シュリンクフィッタ(締結部材)SFを備える。ここでは、レンズL1~L6は複数個、シュリンクフィッタSFは1個備えられているが、それぞれの個数は適宜変えることができる。

【19】
レンズL1~L6の半径方向の固定は、シュリンクフィッタSFによるレンズ円周部分の締付によって行い、図3(A)の縦断面図に示すように、各レンズ間の光軸方向の固定は、シュリンクフィッタSFのレンズ球面に当たる締結部分によって行う。図中に示す、シュリンクフィッタSFがレンズL1~L6の各球面に当たり、それを締結している部分の光軸方向の長さx1~x4を調節することで、従来の金属製スペーサー等を使わずにレンズ間の位置決めを行う。また、図3(B)に、図3(A)の丸枠箇所の拡大図を示す。凹面のレンズに対しては、シュリンクフィッタSFに一部又は全部の円周に渡って半径方向に溝SMを設け、レンズの円周部分がシュリンクフィッタSFに当たらないような形状の部分(第2締結部)を形成することでもレンズ間の位置決め及びレンズ締結への適応が可能である。ここでは、一例として、レンズL1~L6の光軸方向位置決めについて説明しているが、これに限定されるわけではなく、鏡筒CE端面と各レンズL1~L6間の位置決めにも適用できる。また、シュリンクフィッタSFは第1の実施の形態の場合と同様に、レンズ球面上のレーザー透過を妨げないように、走査領域部分の球面は締結しないものとしてもよい。

【2】

【従来の技術】近年、レーザープリンターやコピー機、レーザー顕微鏡など、レーザーの応用分野の拡大に伴って、レーザー応用装置の高解像度化・高精度化が望まれてきている。このような高解像度化・高精度化のためには、光学系において、レーザービーム径を広い走査幅にわたって結像する走査用レンズの高精度化が重要となってくる。

【20】
図4は、本発明に係る光学レンズ締結装置の第4の実施の形態構成図を示す。この光学レンズ締結装置は、上述の実施の形態のように、鏡筒CE、レンズL1~L4、シュリンクフィッタSG、ロッド(調整構機)RD、プリズムPL、フォーカス検出素子DT、レーザーダイオードLD、レーザーダイオード基板LBを備える。この光学レンズ締結装置では、シュリンクフィッタSGの締結部分の摩擦力で光学レンズL1~L4を固定している。また、シュリンクフィッタSGと鏡筒CEも摩擦力で固定している。シュリンクフィッタSGの外面(鏡筒CEと接触する側)を平坦又は滑らかにしてもよいし、摩擦力を調整するために表面に粗さ又はうねりをつけて加工してもよい。なお、シュリンクフィッタSGの移動方向に溝を設けるようにしてもよい。また、ロッドRDは、シュリンクフィッタSGと接合又は嵌合されている。ロッドRDは、適宜の角度毎(例えば、120°)に複数配置され、円周方向毎にレンズの傾きを調整することもできる。このような構成により、シュリンクフィッタSGをロッドRDにより微小に滑らせることで、レンズの光軸方向の位置を微調整することができる。加えて、操作者は、検出素子DTによりレーザー収束状態を観察しながら微調を行うことができる。すなわち、シュリンクフィッタSGの端面及び/又は円周面の一部を、ロッドRDにより、鏡筒CEとシュリンクフィッタSGの間に働く静止摩擦力以上の荷重で微小に押す又は引くことで、鏡筒CEに対するレンズ群全体の位置を高精度に調整することができる。さらに、各レンズを複数のシュリンクフィッタSGで締結している場合には、それらのシュリンクフィッタSGで締結されているレンズ群間位置を高精度に調整することも可能である。この際、若干の熱を加え、シュリンクフィッタSGと鏡筒CEとの間の摩擦力を低下させることで、より正確に位置決めができる。

【21】
以上、各実施の形態で説明したように、本発明に係る光学レンズ締結装置では、焼きばめ又は圧入で組込ができ、さらにはシュリンクフィッタを静止摩擦力以上の荷重で押し出す又は引くことで分解が容易に可能である。なお、鏡筒は、例えば、アルミニウム等の金属で形成することができる。また、シュリンクフィッタの一例として、ポリアセタール(POM、Polyacetal)耐熱高分子材料のポリイミドまたはアクリル等を材料として使用することができる。本発明の光学レンズ締結装置では、このようなシュリンクフィッタを用いることにより、締りばめを可能としている。シュリンクフィッタSS、SB、SFは、レンズ群を囲んでいる外周の円周方向に溝を有するようにしてもよく、この溝は、必要に応じて設けることができる。溝は、針金・ひもなどを通すことによって、レンズ群を接合しているシュリンクフィッタを固定することができる。

【22】
B.シュリンクフィッタ(締結部材)の材質
以下に、シュリンクフィッタの材料について説明する。シュリンクフィッタの材料は、鏡筒よりも熱膨張係数の大きい材料である。従来の光学レンズ締結装置では、鏡筒の材料がアルミニウム等の金属の場合を説明しているが、それに限定されるわけではなく、樹脂など金属以外の材料を使用する場合がある。また、シュリンクフィッタもポリアセタール、ポリイミド、アクリルなど樹脂材料を一例としているが、それに限定されるわけではなく、前記鏡筒材料よりも熱膨張係数の大きいものを材料として使用できる。

【23】
図5は、本発明に係る光学レンズ締結部材のクリープ特性についての説明図である。この図は、ポリアセタールの各保存温度における見掛けの弾性率の時間変化を実験的に求めた一例を示している。また、図6は、本発明に係る光学レンズ締結装置の締付圧力の時間変化の説明図である。図6(A)は、図5の弾性率を基にして、第1又は第2の実施の形態の光学レンズ締結装置において、レンズL1~L4を締結してから時間が経過する際の締付圧力減少率を解析した結果の一例を示している。図示のように、締結初期の数百時間までの間は締付圧力の減少が大きく、その後の変化が非常に少ないことがわかる。また、図6(B)は、締結部材(シュリンクフィッタ)を低温(約-15℃)、常温(約25℃)、高温(約70℃)の状態で保存して、数千時間経過した場合の各レンズL1~L4の締付圧力減少率を示す。図示のように、各温度で減少率が異なることが分かる。これらのことを考慮して、締結後の経年変化によるクリープ変形量を推察して、初期に多くシメシロを与えることで、長期間にわたって適切な締結力が発生することが可能となる。

【24】
図5に示すように、POMを70℃の環境で締付けたまま保存すると、最初の約数百時間で、クリープが大きく進み、見かけの弾性率は、初期値(2,417MPa)から一気に約1、700MPa減少して約700MPaになる。その後は時間が経過しても、弾性率は、その700MPa付近にとどまり、そこからの変化量が少なくなる。つまり、一例として、設計時にPOMの弾性率を700MPaと仮定して、目標とする締付圧力を発生するようなシメシロを数値解析することができる。この値は、POMの弾性率が初期値の2,417MPaとして求めた場合のシメシロよりも大きくなり、その多い分が上乗せ量になる。その求めたシメシロで締付けると、初めは弾性率が2,417MPaなので締付けすぎることになるものの、締付け後数百時間のクリープ現象により、目標の締付け圧力に収束する。そして、その後時間が経過しても見かけの弾性率はほぼ変化しないので、締付け圧力の減少もごく僅で安定した締付けを得る事ができる。また、この見かけの弾性率減少量は各温度で異なる。しかし保存温度域で見かけの弾性率減少量が等しいか又は同程度(つまりクリープ特性が等しいか又は同程度)の材料が望ましい。

【25】
また、本発明に係る締結部材においては、締付後短時間で変化が収束し、その後の変化が少なく、さらに各保存温度で特性の差がない材料を用いることで、前記初期に与えるシメシロの推察が容易に可能になる。

【26】
ここでは、図1で示したレンズ系に対して締結部材にポリアセタール(POM、Polyacetal)を使用した場合についての結果を示しているが、これに限定されるわけではなく他の光学レンズおよび、締結部材を使用した締結装置についても適用できる。さらに、ここでは、本発明における締結装置に関して説明しているが、それに限定されるわけではなく、全ての高熱膨張材料製リングを用いた光学レンズの締結装置に適用できる。

【27】
本発明に係る、光学レンズ締結装置では、光学レンズの円周および/又はレンズ球面部分を半径方向に締付けることで締結している。よって、本発明の締結装置では、締結部材に液晶ポリマーのような熱膨張係数に異方性がある材料をもちいて、熱膨張係数が高い方向をレンズの半径方向に、熱膨張係数が小さい方向を光軸方向に合わせて使用することで、温度変化時にもレンズ保持力は保たれつつ、光軸方向の位置変化を最小に抑えることが可能である。ここでは、液晶ポリマーを一例として挙げているが、それに限定されるわけではなく、同様に一方向に熱膨張が大きく、他方に熱膨張が小さい特性を持つ材料を用いることで同様な効果を得ることが可能である。

【28】
また、ここでは、本発明の第1~第4の実施の形態における光学レンズ締結装置に関して説明しているが、それに限定されるわけではなく、全ての高熱膨張材料製リング等を用いた光学レンズの締結装置に適用できる。

【29】

【発明の効果】本発明によると、以上のように、特に、光学レンズ球面を高熱膨張材料等の締結部材で締結することにより、締結部材が薄い場合でも周囲の温度変化に左右されることなく光学レンズの高精度な締結を可能とした。また、本発明によると、高熱膨張材料製リング等の締結部材によるレンズ球面部分の締結で生じるレンズ光軸方向の締結力で各レンズを光軸方向に押すことで、温度変化によらず、レンズ半径方向及び光軸方向の安定した締結力を確保できる。さらに、本発明によると、高熱膨張材料製リング等の締結部材によるレンズ球面部分の締結で光学レンズの光軸方向位置決めを行い、金属製スペーサー等の光軸方向位置決め部品を不要とした。

【3】
図7は、従来の光学レンズ締結装置の縦断面図を示す。また、図中の寸法は、一例を示す。図中の光学レンズ接合装置は、鏡筒100、走査用レンズ群11~16及びシュリンクフィッタ(締結部材)110、111を備えている。鏡筒100は、例えばアルミニウム等の金属で形成することができる。鏡筒100は、レーザーが入射する方向(例えば図中右側)から順にレンズ11~16、及びシュリンクフィッタ110、111を備えている。各レンズ11~16は、鏡筒100内でシュリンクフィッタ110及び111により接合されている。また、各レンズ11~16の径は、異径でも同径でもよく、さらには、各レンズ11~16の形は、凸または凹等適宜の形状とすることもできる。シュリンクフィッタ110及び111は、熱膨張係数がアルミニウム等の金属の鏡筒100よりも大きい材料の円筒形状の機械要素である。従来の光学レンズ締結装置では、このようなシュリンクフィッタ110及び111を用いることにより、締りばめをすることを可能としていた。

【30】
また、本発明によると、材料のクリープ特性を推定して、経年変化によるクリープ変形量を予め見越してシメシロを決定することで、長期間にわたって適切な締結力が発生することを可能とした。さらには、本発明によると、熱膨張に異方性がある材料を用いて、熱膨張係数が大きい方向をレンズ締結方向に、熱膨張係数が小さい方向を光軸方向に合わせて締結することで、温度変化時の高精度なレンズ間位置決めを可能にした。

【31】
また、本発明によると、レンズの組込後に締結部材と鏡筒の間の静止摩擦力に抗した荷重を与えて光軸方向に微小に滑らせることで、容易にレンズ群の光軸方向位置調整が可能であり、加えて、レーザーの収束状態を観察しながら微小に滑らせることで、光軸方向の位置を微調整することを可能とした。

【4】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の光学レンズと鏡筒の高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いた締結方法では、高熱膨張材料製リングが薄い場合には、温度変化時に締結部分の緩みが生じてしまう場合があった。また、高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いた締結方法では、温度変化時の材料の光軸方向の熱膨張による変形によって、各レンズの光軸方向の位置が変動してしまうことが課題となっていた。

【5】
さらに、高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いた締結方法では、材料のクリープ特性で経年変化により締結力が弱まってしまうことが課題となっていた。また、高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いた締結方法では、各レンズ間の光軸方向位置決めには、金属製スペーサー等の光軸方向位置決め部品を必要としていた。加えて、高熱膨張材料製リング等の締結部材を用いた締結方法では、一つの締結部材内で締結している各レンズの光軸方向間距離は正確に位置決めできるが、鏡筒に対するレンズ群全体の位置および、複数の締結部材で締結している場合には、それらの締結部材で締結されているレンズ群間を高精度に位置決めすることが難しかった。

【6】
本発明は、以上の点に鑑み、特に、光学レンズ球面を高熱膨張材料等の締結部材により締結することにより、締結部材が薄い場合でも周囲の温度変化に左右されることなく光学レンズの高精度な締結を可能とした光学レンズ締結装置を提供することを目的とする。また、本発明は、高熱膨張材料製リング等の締結部材によるレンズ球面部分の締結で生じるレンズ光軸方向の締結力で各レンズを光軸方向に押すことで、温度変化によらず、レンズ半径方向及び光軸方向の安定した締結力を確保できるような光学レンズ締結装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高熱膨張材料製リング等の締結部材によるレンズ球面部分の締結で光学レンズの光軸方向位置決めを行い、金属製スペーサー等の光軸方向位置決め部品を不要とした光学レンズ締結装置を提供することを目的とする。

【7】
また、本発明は、材料のクリープ特性を推定して、経年変化によるクリープ変形量を予め見越してシメシロを決定することで、長期間にわたって適切な締結力が発生することを可能とした光学レンズ締結装置を提供することを目的とする。さらには、本発明は、熱膨張に異方性がある材料を用いて、熱膨張係数が大きい方向をレンズ半径方向に、熱膨張係数が小さい方向を光軸方向に合わせて締結することで、温度変化時の高精度なレンズ間位置決めを可能にした光学レンズ締結装置を提供することを目的としている。

【8】
また、本発明は、レンズの組込後に締結部材と鏡筒の間の静止摩擦力に抗した荷重を与えて光軸方向に微小に滑らせることで、容易にレンズ群の光軸方向位置調整が可能であり、加えて、レーザーの収束状態を観察しながら微小に滑らせることで、光軸方向の位置を微調整することを可能とした光学レンズ締結装置を提供することを目的とする。

【9】

【課題を解決するための手段】本発明の第1の解決手段によると、ひとつの、又は、同形並びに/若しくは異形の形状及び/又は同径並びに/若しくは異径の複数の光学レンズと、前記光学レンズを内部に収容する鏡筒と、熱膨張係数が前記鏡筒よりも大きい材料で形成され、前記光学レンズの円周部分へ接触する第1締結部と、透過光が走査される近傍部分を除く前記光学レンズの円周領域について該第1締結部より半径方向に厚く前記光学レンズの球面部分へ接触する第2締結部とを有し、該第1及び第2の締結部がそれぞれ前記光学レンズの円周部分及び球面部分に接触して前記光学レンズを半径方向に固定し、前記鏡筒と前記光学レンズを締結するための締結部材とを備え、温度変化によらず安定した締結を確保するようにした光学レンズ締結装置を提供する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図7】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6