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明細書 :X線回折を用いた結晶の観察方法及びその観察装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3676249号 (P3676249)
公開番号 特開2002-286660 (P2002-286660A)
登録日 平成17年5月13日(2005.5.13)
発行日 平成17年7月27日(2005.7.27)
公開日 平成14年10月3日(2002.10.3)
発明の名称または考案の名称 X線回折を用いた結晶の観察方法及びその観察装置
国際特許分類 G01N 23/207     
FI G01N 23/207
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2001-089382 (P2001-089382)
出願日 平成13年3月27日(2001.3.27)
審査請求日 平成13年3月27日(2001.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】川崎 雅司
【氏名】福村 知昭
【氏名】大谷 亮
【氏名】表 和彦
【氏名】菊池 哲夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】鈴木 俊光
参考文献・文献 特開2000-338061(JP,A)
川崎雅司,「酸化物のコンビナトリアルエピタキシーと新機能」,機能材料,日本,株式会社シーエムシー,2000年12月 5日,Vol.21,No.1,p.57-62
調査した分野 G01N 23/00 - 23/227
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
X線を観察したい結晶に照射し、その回折X線をX線検出器で検出するX線回折を用いた結晶の観察方法において、
湾曲モノクロメータを用いて回折X線の入射角に有限の角度を持たせて、該回折X線をコンポジションスプレッド薄膜結晶上に直線状に集光し、二次元X線検出器を用いることによって、前記有限の回折角度にわたって前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の直線状の回折X線を同時に測定することにより、X線回折強度、回折角度及び半値幅を空間的にマッピングし、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の対称面および非対称面を測定することにより、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の面内および面に垂直な格子定数を高速に測定することを特徴とするX線回折を用いた結晶の観察方法。
【請求項2】
X線を観察したい結晶に照射し、その回折X線をX線検出器で検出するX線回折を用いた結晶の観察装置において、
(a)湾曲モノクロメータと、
(b)水平方向に複数列配置されるコンポジションスプレッド薄膜結晶を搭載するとともに、水平方向に駆動可能なステージと、
(c)前記コンポジションスプレッド薄膜結晶からの回折X線を検出する二次元X線検出器
(d)前記湾曲モノクロメータを用いて前記回折X線の入射角に有限の角度を持たせて、該回折X線を前記コンポジションスプレッド薄膜結晶上で垂直方向の直線状に集光し、前記二次元X線検出器を用いることによって、前記有限の回折角度にわたって前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の垂直方向の直線状の回折X線を同時に測定することにより、X線回折強度を空間的にマッピングし、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の対称面および非対称面を測定することにより、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の面内および面に垂直な格子定数を高速に測定し、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶を評価する手段とを具備することを特徴とするX線回折を用いた結晶の観察装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、収束角をもって線状に集光するX線と二次元検出器を用いることにより、異なる複数の点でのX線回折を同時に測定できる、結晶の観察方法及びその観察装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的には、これまで、薄膜デバイス検査など薄膜結晶やバルク結晶の観察は、主に光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡で行われてきた。
【0003】
最近、材料探索の効率化のために高速に試料を作成する様々な方法が開発されている。この方法では、単結晶基板上に様々な組成の薄膜を集積したコンビナトリアル試料を作成する。X線回折は格子定数や不純物相の有無、超格子周期などの重要な情報を得ることができる(例えば、特開2000-338061号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に用いられているX線回折装置では、X線のビーム径は数mm程度の大きさを持ち、一回に一種類の試料の回折角の強度しか得ることができないので、上記のようなコンビナトリアル試料を測定するためには、測定を集積された試料の数だけ繰り返さなければならない。そのため、測定を高速化するには新しい手法の開発が必要となる。Isaacs等は、シンクロトロン線源から出て集光したX線ビームを用いて、蛍光X線、回折X線、X線の吸収端近傍の吸収の三つの測定を同時にする方法を報告しているが、放射光を用いているためにその使用は制限されると考えられる。
【0005】
また、従来の光学顕微鏡装置では光学的に透明な材料が観察できず、表面が不透明なもので覆われていて観測したい結晶が表面に露出していないときは観察できないといった問題があった。さらに、電子顕微鏡装置では絶縁体が観察できず、表面が何かに覆われている場合、すなわち、観測したい結晶が表面に露出していないときは観察できないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、直線状に数度の入射角をもつX線と二次元X線検出器を採用することによって、X線回折の原理により結晶を高速に観察することができるX線回折を用いた結晶の観察方法及びその観察装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕X線を観察したい結晶に照射し、その回折X線をX線検出器で検出するX線回折を用いた結晶の観察方法において、湾曲モノクロメータを用いて回折X線の入射角に有限の角度を持たせて、その回折X線をコンポジションスプレッド薄膜結晶上に直線状に集光し、二次元X線検出器を用いることによって、前記有限の回折角度にわたって前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の直線状の回折X線を同時に測定することにより、X線回折強度、回折角度及び半値幅を空間的にマッピングし、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の対称面および非対称面を測定することにより、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の面内および面に垂直な格子定数を高速に測定することを特徴とする。
【0008】
〔2〕X線を観察したい結晶に照射し、その回折X線をX線検出器で検出するX線回折を用いた結晶の観察装置において、湾曲モノクロメータと、水平方向に複数列配置されるコンポジションスプレッド薄膜結晶を搭載するとともに、水平方向に駆動可能なステージと、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶からの回折X線を検出する二次元X線検出器、前記湾曲モノクロメータを用いて前記回折X線の入射角に有限の角度を持たせて、その回折X線を前記コンポジションスプレッド薄膜結晶上で垂直方向の直線状に集光し、前記二次元X線検出器を用いることによって、前記有限の回折角度にわたって前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の垂直方向の直線状の回折X線を同時に測定することにより、X線回折強度を空間的にマッピングし、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の対称面および非対称面を測定することにより、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶の面内および面に垂直な格子定数を高速に測定し、前記コンポジションスプレッド薄膜結晶を評価する手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、上記したように、収束角をもって線状に集光するX線と二次元検出器を用いることによって、異なる複数の点でのX線回折を同時に測定できる一括X線回折装置により、バルク結晶や単結晶基板上に組成が変化している薄膜結晶のX線回折を測定できることに加えて、X線回折強度を空間的にマッピングすることが可能である。この手法により、バルク結晶やエピタキシャル薄膜で作られたデバイスを高速に評価することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例を示す結晶の観察装置(一括X線回折装置)の模式図である。
【0012】
1.2kwの回転式Cu陽極X線源(点X線源)1から0.1mm角のX線を発生させ、アパーチャ2により、そのX線を絞り、Johan型の湾曲結晶(湾曲モノクロメータ)3によりアパーチャ4を介して2度の収束角をもって試料台(水平方向移動及びω回転機構付き試料台)5に搭載される試料(結晶)6に略0.1×10mm2 で集光させる。
【0013】
これにより、CuのKα2 線とKβ線は除去され、Kα1 線のみが集光される。試料台5と二次元検出器〔2θ回転可能な二次元X線検出器(CCDカメラ)〕7はそれぞれ2サークルのゴニオメーターのωと2θステージ(図示なし)上に配置されている。試料6により回折されたX線は二次元X線検出器7にイメージとして取り込まれるが、そのイメージの二つの軸は試料6の位置とX線回折の2θにそれぞれ対応している。
【0014】
現在の光学系ではイメージの空間分解能は約0.1mmで主に二次元X線検出器7により決まっており、角度分解能は約0.02度となっている。このように、収束角を持って線状に集光したX線と二次元X線検出器7を使うことにより、一回の測定でX線回折を回折角と線方向の位置情報を同時に得ることができ、かかる時間は僅かに数分である。
【0015】
X線を観察したい結晶6に照射し、回折X線を二次元X線検出器7で検出する。湾曲モノクロメータ3を用いて回折X線の入射角に有限の角度を持たせて回折X線を直線状に集光し、二次元X線検出器7を用いることによって有限の回折角度にわたって試料(結晶)6の直線上の回折X線を同時に測定することができるため、高速な測定ができる。また、試料(結晶)6に特有の回折角の強度分布をマッピングすることにより、試料(結晶)6の形状を観察することができる。
【0016】
図3は本発明の薄膜結晶の観察装置による第1の観察例を示す図である。
【0017】
図3(A)は、図3(C)に示すように、SrTiO3 (001)基板上の{〔(SrTiO3 n /(BaTiO3 4 30(n=4,6,8,10,12)}の5つの超格子を集積したコンビナトリアル試料の測定結果の生データであり、縦軸と横軸はそれぞれ薄膜の位置と回折角度2θを示しており、色が回折強度を示している。縦方向の直線と階段状のイメージはそれぞれ基板と超格子のサテライトピークのX線回折を示している。縦軸方向を比較すると明らかに6つのエリアに分かれており、基板と図3(C)で模式的に示される5種類の薄膜のコンビナトリアルX線回折測定が実際に測定可能である(例えば特開2000-338061)。横軸方向の断面図を縦軸方向の変化に即して任意の位置で各々読み取ったものが、図3(B)に示すデータであり、これを比較することにより、図3(C)で模式的に示される5種類の薄膜のデータ解析ができる。
【0018】
図4は本発明の薄膜結晶の観察装置による第2の観察例を示す図である。
【0019】
図4(A)から薄膜の面に垂直方向の格子定数cが求まる。図4(A)の薄膜および基板の対称面の(001)面の測定データに加えて、非対称面である(103)面と(-103)面の測定データが得られるが、それを図3(B)と同様に任意の位置において横軸方向の断面図を読み取ると、各非対称面の測定データに対して、模式図の図5のようなプロットデータが得られる。すると結晶が立方晶あるいは正方晶の場合次式を用いることにより、薄膜の任意の位置における面内の格子定数aが求まる。
【0020】
〔a/√(h2 +k2 )〕/ (c/l)=tan(α+Δα)
ここで、(h k l)は測定した非対称面の指数、αは対称面と非対称面のなす角度〔例えば(001)面と(103)面もしくは(-103)面のなす角度〕、Δα=(Δω2-Δω1)/2であり、Δω1、Δω2は図5にあるように各非対称面のプロットの薄膜の回折ピークと基板の回折ピークの差の角度である。xの増加、SrをBaに置換する量の増加に伴い、薄膜の体積は増加しているが、基板からのエピタキシャル歪みにより面内の格子定数は変化していない。
【0021】
従って、面外の格子定数のみが大きくなっている。xの値が0.6を越えると、弾性変形のエネルギーがエピタキシャル歪みによるエネルギーより大きくなるために、面内の格子定数を維持することができなくなる。結果として、転位が出現し突然面外の格子定数が小さくなる。このように、格子不整合基板上の薄膜の格子定数が不整合性の増加とともに変化している様子が分かる。この結果から、薄膜結晶の面内および面に垂直方向の格子定数が、x(位置情報)の関数で高速に求められることが分かった。
【0022】
このように本発明によれば、図3や図4のようなイメージから2θのピーク位置やピーク強度、半値幅を得ることができるので、基板での位置の関数として格子定数や結晶性を表すことができる。
【0023】
図6は本発明の薄膜結晶の観察装置による第3の観察例を示す図であり、図6(A)は、不均質な膜質を持ったYBa2 Cu3 7-δ薄膜の写真である。
【0024】
図6(B)は、薄膜の(005)ピークの強度を一括X線回折によりマッピングしたものである。このマッピングは試料台5を水平方向に100μmステップで160回動かしながら取った一括X線回折イメージを解析して得たものである。回折強度は位置の関数であり、中心付近で最大値を取り、角に向かうにつれて減少している。図6に示されるような回折強度のマッピングはエピタキシャル薄膜を使用したデバイスの検査にも有用である。
【0025】
図6(C)及び図6(D)はそれぞれ同様に得られたX線回折ピーク角度位置とX線回折ピークの半値幅のマッピングである。X線回折ピークの角度位置から格子定数を求めることができるため、図6(C)は面外の格子定数のマッピングに相当する。
【0026】
図7は本発明の薄膜結晶の観察装置による第4の観察例を示す図である。
【0027】
図7(A)はScAlMgO4 基板上に透明導電体であるZnO薄膜でホールバーのアレイを作成して、ホールバーの一部分に金電極を積層したものの写真である。一般的に、薄膜は物質固有のある決まった回折角度で強い回折強度を示すため、その決まった回折角度における回折強度のマッピングを行うことにより、薄膜の形状を画像化できる。
【0028】
図7(B)は、図7(A)のホールバーに対して図6(B)と同様な測定を行って得たマッピングである。ホールバーの目では見えない部分から金電極で覆われている部分まで明瞭に観察することができた。図7(B)の赤い円で囲まれている部分からわかるように、ホールバーに亀裂が入っていることが観察されている。
【0029】
本発明のX線回折装置は、標準的なX線回折装置に改造を加えて開発したために、研究室での使用が可能である。コンビナトリアル試料を高速に測定できるだけでなく、バルク結晶やエピタキシャル薄膜の結晶性の空間分布やデバイス構造などを検査することができる。現在、この装置の空間分解能は約100μmであるが、X線光学系の改良やX線源に放射光を用いることにより分解能を向上させることができるので、顕微鏡装置としての改良が見込まれる。
【0030】
図2は本発明の実施例を示す薄膜結晶積層構造を示す模式図であり、図2(a)にはその積層構造が示され、図2(b)はA層の平面図、図2(c)はB層の平面図、図2(d)はC層の平面図である。
【0031】
図2に示すように、異なる化合物の薄膜結晶の積層構造(つまり、それぞれの薄膜結晶が異なる回折角度にピークを持つことが必要)、ここでは、薄膜結晶のA層11、薄膜結晶のB層12、薄膜結晶のC層13を作製すると、上記の原理により、各回折角度での強度をマッピングすることで、図2(b)~図2(d)に示すように、各薄膜結晶のA層11,B層12、C層13を独立して観察することができる。つまり、複数の薄膜が積層された薄膜積層デバイスにおいても、各層の観察を行い、形状の検査をすることができる。
【0032】
また、そのような積層薄膜の各層に対して、任意のパターニングを施し、本発明を用いて各層のパターンを観察することにより、情報の読み書きができる。すなわち、面内方向に加えて面間方向(積層方向)にも情報を記録できる記録媒体を作製することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0034】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0035】
(A)収束角をもって線状に集光するX線と二次元X線検出器を用いることにより、異なる複数の点でのX線回折を同時に測定し、そのデータ解析をすることができる。
【0036】
(B)バルク結晶および単結晶基板上の薄膜結晶のX線回折を測定できることに加えて、X線回折強度を空間的にマッピングすることが可能であり、本発明によって、バルク結晶およびエピタキシャル薄膜で作られたデバイスを高速に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す結晶の観察装置(一括X線回折装置)の模式図である。
【図2】 本発明の実施例を示す薄膜結晶積層構造を示す模式図である。
【図3】 本発明の結晶の観察装置による第1の観察例を示す図である。
【図4】 本発明の結晶の観察装置による第2の観察例を示す図である。
【図5】 本発明の結晶の観察装置による回折角度に対する回折強度特性図である。
【図6】 本発明の結晶の観察装置による第3の観察例を示す図である。
【図7】 本発明の結晶の観察装置による第4の観察例を示す図である。
【符号の説明】
1 1.2kwの回転式Cu陽極X線源(点X線源)
2,4 アパーチャ
3 湾曲モノクロメータ
5 試料台
6 試料(結晶)
7 2θ回転可能な二次元X線検出器(CCDカメラ)
11 薄膜結晶のA層
12 薄膜結晶のB層
13 薄膜結晶のC層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6