TOP > 国内特許検索 > SiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法 > 明細書

明細書 :SiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4536950号 (P4536950)
公開番号 特開2002-293636 (P2002-293636A)
登録日 平成22年6月25日(2010.6.25)
発行日 平成22年9月1日(2010.9.1)
公開日 平成14年10月9日(2002.10.9)
発明の名称または考案の名称 SiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法
国際特許分類 C04B  35/565       (2006.01)
C04B  35/80        (2006.01)
FI C04B 35/56 101L
C04B 35/56 101S
C04B 35/80 C
C04B 35/80 K
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2001-104186 (P2001-104186)
出願日 平成13年4月3日(2001.4.3)
審査請求日 平成19年3月27日(2007.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】香山 晃
【氏名】加藤 雄大
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100144266、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 一寿
審査官 【審査官】正 知晃
参考文献・文献 特開平10-167832(JP,A)
特開平06-009278(JP,A)
特開平11-171658(JP,A)
特開2000-154066(JP,A)
特開平08-081276(JP,A)
調査した分野 C04B 35/565 - 35/577
C04B 35/80 - 35/83
特許請求の範囲 【請求項1】
SiC微粉末に焼結助剤としてAl、Y、SiO、CaOの何れか1種以上の酸化物粉末を加えた混合粉末を、SiC前躯体樹脂と混合してスラリーを調製し、該スラリーを高結晶性・近化学量論組成SiC繊維成形体に含浸させた後、加圧下において1600℃以上で、前記混合粉末の液相存在下でホットプレスすることを特徴とするSiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法。
【請求項2】
加圧力が10~20MPaである請求項1に記載のSiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、発電分野、航空宇宙分野、原子力/核融合分野等の高い熱負荷やその他の過酷な環境下で使用される、優れた熱特性と強度特性を有する構造材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電分野、航空・宇宙分野、原子力分野等の過酷な環境下で使用される材料として、耐熱性、化学的安定性、機械的特性に優れたSiC,Si34等、種々のセラミックス材料が開発されてきた。セラミックス材料は、熱交換器,メカニカルシール等の過酷な条件に曝される部材としても使用されている。
なかでも、SiCは、耐酸化、耐腐食に強く、かつ耐熱性および耐摩耗性に優れて、しかも、中性子照射条件下でも長寿命の放射性核種が発生しにくいことを活用し、発電機器用途、航空・宇宙用途から原子力等の先進エネルギーシステム用途までの広範囲な分野において有望視されている構造材料である。
【0003】
SiCは、融点が2600℃と高温特性に優れているが、それ自体では脆い材料である。そこで、SiC繊維で強化したSiC繊維強化型SiC複合材料が提案され、その製造方法として、ホットプレス法や液相焼結法等、多様な製造プロセスの検討が進められている。
しかしながら、いずれの製法によっても、高い熱伝導特性や高い密度、さらには高い強度特性を有するSiC繊維強化型SiC複合材料を得ることは容易ではなく、同一のプロセスを繰り返すことにより、特性の向上を図っている。
このため、SiC繊維強化型SiC複合材料の製造プロセスは煩雑になり、製造コストが上昇することに加えて、複雑形状部品の製造が困難になるため、実用化が制限されている。
【0004】
さらに実用に近いと思われている前躯体含浸焼成法やホットプレス法、液相焼結法等においては、繊維の劣化をもたらさないで複合材料の特性を向上させるために適用できる温度の上限が存在し、これによって母相の特性も制限されている。すなわち、これまでのポリカルボシランから製造されたSiC繊維を用いて複合体を製造する場合、このSiC繊維自体の耐熱度が高々1300℃程度であるため、複合体製造のための加熱温度は短時間の処理であっても1600℃未満に制限されていた。液相焼結法においては焼結温度が低いために、高密度や高い熱的特性、機械的特性のものが得られなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、耐熱温度の高いSiC繊維を用い、単純で安価な製造プロセスであるホットプレス法を採用して、焼結温度を高めて1回のプロセスにより、密度が高く、機械的特性の優れたSiC繊維強化型SiC複合材料を得る方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のSiC繊維強化型SiC複合材料のホットプレス製造方法は、その目的を達成するため、SiC微粉末に焼結助剤としてAl、Y、SiO、CaOの何れか1種以上の酸化物粉末を加えた混合粉末を、SiC前躯体樹脂と混合してスラリーを調製し、該スラリーを高結晶性・近化学量論組成SiC繊維成形体に含浸させた後、加圧下において1600℃以上で、前記混合粉末の液相存在下でホットプレスすることを特徴とするものである。ホットプレス時の加圧力は10~20MPaの範囲にすることが好ましい。
【0007】
【作用】
本発明で使用される高結晶性・近化学量論組成SiC繊維は結晶性が高く、酸素等の不純物含有量が低く、化学量論組成に近いものであるため、高い焼成温度を選択できる。
すなわち、本発明で使用する高結晶性・近化学量論組成SiC繊維は、微量のTi、Zr、Al、B、Y、Mg等を含有する他はSiCの化学量論組成に近い組成を有し、結晶性が高くて、1600℃以上の温度における熱処理によっても強度が劣化しない。したがって、本発明は、この高結晶性・近化学量論組成SiC繊維をSiC繊維強化SiC複合材料製造の際の強化用繊維として使用することで、ホットプレス温度を高めて密度が高く、機械的特性の優れた複合材料を得ることができたものである。
【0008】
また、繊維の劣化を起こさないようにSiC母相を生成させるために、SiC粉末に焼結助剤粉末を加え、SiC前躯体樹脂とともにスラリーを形成する。焼結助剤としては、通常SiC焼結体の製造に使用されているAl23、Y23、SiO2、CaOが使用可能であり、何れか1種以上の酸化物粉末をSiC粉末に対して5~15質量%添加することが好ましい。SiC粉末、焼結助剤粉末とも、SiC繊維成形体に含浸させる際に浸透のし易さ等を考慮すると、0.02~0.3μmの粒径のものを使用することが好ましい。
この酸化物系焼結助剤は、高温焼結時にSiC粒子の表面近傍の成分とで一部液相を含む複合化合物を形成することにより、SiC粒子の焼結すなわち粉末成形体の緻密化を促進する作用を有するものである。
【0009】
SiC粉末、焼結助剤粉末とともにスラリーを形成するSiC前躯体樹脂としては、ごく一般的なポリカルボシランの他にポリビニルシラン、ポリメチルシラン、およびこれらを含む混合ポリマー等も使用できる。
また、必要に応じて溶剤を使用する。SiC前躯体樹脂がポリカルボシランのように固体の場合は溶剤を使用する必要があるが、SiC前躯体樹脂がポリビニルシランやポリメチルシランのように液体の場合は必ずしも使う必要はない。
【0010】
スラリー中のSiC前躯体樹脂の含有率は、20~80質量%にすることが好ましい。SiC粉末と焼結助剤粉末の粉末混合体の種類、粒径等に大きく影響されるが、SiC前躯体樹脂の含有率が20%未満であると、スラリーを繊維成形体中に十分含浸できず緻密な複合体は得られ難い。また、80%を超えると繊維分布の不均一や含浸の偏在、割れの発生等が顕在化し、実用的ではない。
【0011】
焼結は1600℃以上の温度で液相存在下でホットプレスする必要がある。圧力条件は10~20MPaの範囲にすることが好ましい。
適切な焼結温度と加圧圧力は相互に依存する。すなわち温度または圧力が低すぎると焼結性が不十分で、密度、強度、熱伝導性、気密性等の点で満足するものが得難くなる。逆に温度または圧力が高すぎるとSiC繊維が劣化し、強度が劣化してしまう。要求する材料特性に応じて1600~1850℃の温度と10~20MPaの圧力の範囲からそれぞれ最適な温度・圧力を選定し、組み合わせてホットプレス焼結する。
実操業にあっては、1700~1750℃×10~15MPaの範囲での組み合わせによって、前記材料特性のバランスがとれた材料が得られる。
【0012】
このように、使用する高結晶性・近化学量論組成SiC繊維の選択、母相形成用SiC粉末と焼結助剤粉末の特定、含浸用SiC前躯体樹脂スラリーの使用、ホットプレス温度の高温化等により、SiC前躯体樹脂スラリーの繊維束間の浸透が十分に行われ、かつ液相での焼結が行われるので、1回のホットプロセス処理により、密度が2.9g/cm3で、強度が400MPa以上のSiC繊維強化型SiC複合材料を得ることができる。
【0013】
【実施例】
母相形成用として粒径0.02μmのβ-SiC粉末に、焼結助剤として粒径0.3μmのAl23粉末と粒径1μmのY23粉末を、β-SiC粉末に対して10質量%になるように加えた混合粉末とポリカルボシランとを1:1の質量割合で混合し、溶剤としてヘキサンを用いて作製したスラリーを、40×20mmサイズの宇部興産株式会社製のTyrannoTM‐SAなるSiC繊維の平織り織布に含浸させた。これらをアルゴンガス雰囲気中300℃/hrで800℃まで昇温し10分間保持した後、1時間以上かけて室温に冷却すると樹脂スラリーが固体化し繊維と一体化した繊維-樹脂複合シートが得られた。このシートを8枚積層して厚さ約2mmの繊維-樹脂複合成形体としてカーボン製の成形型に仕込み、カーボンを発熱体とする雰囲気制御高温炉を用いてアルゴンガス雰囲気中で成形体の厚さ方向に15MPaの一軸圧力を加えて300℃/hrの昇温速度で1720~1780℃まで昇温し、10分間保持した後、加圧力を除いて2時間かけて冷却し、高密度のSiC繊維複合成形体を得た。
【0014】
図1は、この実施例における15MPaの圧力下でホットプレスした時の焼結温度と体積密度との関係を示したものである。
焼結温度の上昇とともに密度は大きくなっており、1780℃では、2.95g/cm3のものが得られた。ちなみに、1750℃×15MPaでホットプレスして得られた複合体は、約410MPaの曲げ強度を示していた。
また、図2は15MPaの圧力下でホットプレスした複合材料中の、繊維束の中での母相の形成状況を示している。1720℃では繊維間に隙間が多く認められるが、大きな空隙が続いているわけではなく、繊維束の中でも母相が比較的良く形成されている。さらに焼結温度を1750℃、1780℃と高くすると、母相の形成は着実に向上していることがわかる。
【0015】
次に、SiC微粉末と焼結助剤の混合粉末に対するポリカルボシランの混合割合を変えたスラリーを使用し、上記と同様の工程でSiC繊維複合成形体を作製した。
図3に、1750℃の温度、15MPaの圧力でホットプレスした複合体の密度に及ぼすポリカルボシラン含有率の影響を示す。ポリカルボシラン含有率が30%以上で密度は2.9g/cm3に近づき、50%付近では2.9g/cm3の高い値を実現できている。
ポリカルボシラン含有率100%のポリマースラリーを含浸させ、ホットプレスして得られた複合体は、SiC繊維束中の空孔率がかえって高くなり、割れが顕在化し強度が低下した。
【0016】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明はSiC繊維強化型SiC複合材料をホットプレス法により製造する際、強化用のSiC繊維として耐熱温度の高い高結晶性・近化学量論組成SiC繊維を使用し、かつ含浸するSiC前躯体樹脂スラリー中にSiC微細粉末とその焼結助剤を添加している。したがって、従来よりも高い焼結温度の適用が可能となり、また、酸化物焼結助剤を加えているため高温にした時に部分的に液相を生じ、圧力付加と相俟って、1回のホットプレスで2.9g/cm3以上の高密度で、強度が400MPa以上の高強度のSiC繊維強化型SiC複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 15MPaの加圧下でホットプレスした時の焼結温度と製造された複合材料の密度の関係を示す図
【図2】 15MPaの加圧下でホットプレスした時の製造された複合材料の内部空隙を観察した断面観察模写図
【図3】 含浸スラリー中ポリマー含有率の密度に及ぼす効果を示す図
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2