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明細書 :SiC繊維強化型SiC複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3971903号 (P3971903)
公開番号 特開2002-356381 (P2002-356381A)
登録日 平成19年6月15日(2007.6.15)
発行日 平成19年9月5日(2007.9.5)
公開日 平成14年12月13日(2002.12.13)
発明の名称または考案の名称 SiC繊維強化型SiC複合材料の製造方法
国際特許分類 C04B  35/80        (2006.01)
C04B  35/565       (2006.01)
FI C04B 35/80 C
C04B 35/56 101L
C04B 35/56 101S
C04B 35/80 L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2001-164996 (P2001-164996)
出願日 平成13年5月31日(2001.5.31)
審査請求日 平成18年10月31日(2006.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】香山 晃
【氏名】加藤 雄大
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100134005、【弁理士】、【氏名又は名称】澤田 達也
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100092392、【弁理士】、【氏名又は名称】小倉 亘
審査官 【審査官】大橋 賢一
参考文献・文献 特開平08-143374(JP,A)
特開平08-081276(JP,A)
特開平11-335170(JP,A)
特開2002-293636(JP,A)
調査した分野 C04B 35/80 35/565-35/577
特許請求の範囲 【請求項1】
SiC微粉末及び焼結助剤をケイ素系ポリマーに分散させたスラリーを用意し、
炭素,窒化ホウ素,炭化ケイ素の1種又は2種以上で被覆した近化学量論組成のSiC繊維に前記スラリーを含浸させて予備成形体とし、
液相が存在する焼結温度:1600~1800℃,圧力:10~30MPaで前記予備成形体をホットプレスして液相焼結することを特徴とするSiC繊維強化型SiC複合材料の製造方法。
【請求項2】
Al23,Y23,SiO2,CaOから選ばれた1種又は2種以上を焼結助剤に使用する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリカルボシラン,ポリビニルシラン,ポリメチルシランから選ばれた1種又は2種以上のケイ素系ポリマーを含むスラリーを使用する請求項1記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、発電,航空宇宙,原子力,核融合等の高い熱負荷を受け過酷な環境に曝される条件下で優れた熱特性及び強度特性を呈するSiC繊維強化型SiC複合材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空・宇宙,原子力,核融合,化石燃料を使用した発電等の設備機器に使用される材料は、高い熱負荷を受ける過酷な環境に曝される。このような環境下で使用される材料として、耐熱性,化学的安定性,機械的特性に優れたSiC,Si34等、種々のセラミックス材料が開発されてきた。セラミックス材料は、熱交換器,メカニカルシール等の過酷な条件に曝される部材としても使用されている。
なかでも、SiCは耐熱性のみならず、高強度で耐摩耗性に優れ、しかも化学的安定性等に優れている。このような長所を活用し、航空・宇宙用途から原子力,核融合,発電等にわたる広範囲な分野で有望視されている構造材料である。更に、熱特性のみならず、耐摩耗性,耐食性等にも優れた特性を呈する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
SiCは、融点が2600℃と高温特性に優れているが、それ自体では脆い材料である。そこで、SiC繊維で強化したSiC繊維/SiC複合材料が提案され、その製造方法として、ホットプレス法や液相焼結法等、多様な製造プロセスが検討されている。しかし、何れの製法によっても、高い熱伝導特性や高い密度、更には高い強度特性、優れた破壊挙動特性を有するSiC繊維/SiC複合材料を得ることは容易ではなく、同一プロセスを繰り返すこと等によって特性の向上を図っている。プロセスの繰返しは、製造プロセスの煩雑さを意味し、製造コストを上昇させる原因となる。また、製造上の問題から製品形状に制約が加わり、複雑形状の部品等の製造が困難となる。煩雑な製造プロセスや製品形状に加わる制約は、SiC繊維強化型SiC複合材料を実用材料として普及させる上でのネックとなる。
【0004】
他方、化学量論に近い組成をもち耐熱性に優れた高結晶性のSiC繊維を強化材に使用し、液相焼結法でマトリックスを成形するSiC繊維強化型SiC複合材料の製造方法も知られている。この方法で製造されるSiC繊維強化型SiC複合材料は、高密度で優れた熱特性を発現するが、破壊強度及び靭性を高レベルで両立させることに関しては依然として未解決である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく、炭素,窒化ホウ素等で被覆した近化学量論組成のSiC繊維を強化材として使用することにより、1回のホットプレスで高密度,高強度が付与されたSiC繊維強化型SiC複合材料を得ることを目的とする。
本発明の製造方法は、その目的を達成するため、SiC微粉末及び焼結助剤を分散させたスラリーを用意し、炭素,窒化ホウ素,炭化ケイ素の1種又は2種以上で被覆した近化学量論組成のSiC繊維に前記スラリーを含浸させて予備成形体とし、液相が存在する焼結温度:1600~1800℃,圧力:10~30MPaで前記予備成形体をホットプレスして液相焼結することを特徴とする。
【0006】
焼結助剤としては、Al23,Y23,SiO2,CaOから選ばれた1種又は2種以上が使用される。スラリーは、更にポリカルボシラン,ポリビニルシラン,ポリメチルシラン等のケイ素系ポリマーを含むことができる。
SiC繊維にスラリーを含浸させることによって調製した予備成形体を焼結温度1600~1800℃,圧力10MPa以上でホットプレスするとき、液相焼結反応によって高密度,高靭性のSiC繊維強化型SiC複合材料が得られる。
【0007】
【作用】
極限環境に曝されるSiC繊維強化型SiC複合材料では、酸素等の不純物含有量が低く化学量論組成に近い高結晶性のSiC繊維が必要とされるが、SiC繊維にSiC微粉末を配合した予備成形体を焼結する際、マトリックスとの反応によってSiC繊維が劣化・破壊されやすい。そこで、本発明では、マトリックスとSiC繊維との反応を抑制するため、SiC繊維の表面を炭素,窒化ホウ素,炭化ケイ素の1種又は2種以上で被覆している。
【0008】
C,BN等の被覆は、マトリックスとSiC繊維との相互拡散反応を抑え、製造過程におけるSiC繊維を損傷から保護する。被覆層は、破壊時において被覆部分で亀裂の分散・屈曲,SiC繊維の引き抜け等を助長し、破壊強度を制御する作用も呈する。その結果、ホットプレス時に成形圧力の向上が可能となり、SiC繊維強化型SiC複合材料を高密度化できる。
【0009】
SiC繊維に含浸させるスラリーとしては、SiC繊維強化型SiC複合材料のマトリックス成分となるSiC微粉末の他に、Al23,Y23,SiO2,CaO等の焼結助剤を配合している。焼結助剤は、1800℃以下の比較的低い温度においてSiCと共に遷移液相を形成し、焼結を促進させてSiC繊維強化型SiC複合材料を高密度化する。
【0010】
スラリーは、更にポリカルボシラン,ポリビニルシラン,ポリメチルシラン等のケイ素系ポリマーを含むことができる。ケイ素系ポリマーは、スラリー中の粒子が浸透し難い微細な繊維間空隙に浸透することにより、SiC繊維強化型SiC複合材料を高密度化する。
SiC繊維にスラリーを含浸させた予備成形体をホットプレスすることによりSiC繊維強化型SiC複合材料が作製されるが、焼結温度1600~1800℃,成形圧力10MPa以上でホットプレスすることが好ましい。SiC繊維強化型SiC複合材料は焼結温度及び成形圧力が高いほど高密度化する。
【0011】
しかし、1800℃を超える高温で焼結すると、成形圧力の下限10MPaにおいてもSiC繊維が著しく劣化する。30MPaを超える成形圧力もSiC繊維を劣化させ、得られたSiC繊維強化型SiC複合材料の強度が低下する。他方、1600℃未満の焼結温度では、マトリックスの焼結が不十分となって成形体の空隙率が著しく上昇するため、要求特性を満足するSiC繊維強化型SiC複合材料焼結体が得られない。また、10MPa未満の成形圧力では、焼結温度の上限1800℃で焼結しても得られた焼結体の空隙率が高くなりやすい。
【0012】
【実施例】
化学量論に近い組成をもつ高結晶性のSiC繊維としてTyrannoTM-SA繊維(宇部興産株式会社製)を使用し、CVD法によって熱分解炭素及び窒化ホウ素をSiC繊維表面に析出させることにより、膜厚約1μmのC又はBN被覆層をSiC繊維の表面に形成した。
SiC繊維に含浸させるスラリーは、極微細β-SiC粒子:平均粒径0.3μmのAl23(焼結助剤):ポリカルボシラン=4.5:0.5:5(質量比)でヘキサン(溶剤)に分散させることにより調製した。
真空吸引によってSiC繊維にスラリーを含浸させることにより、SiC繊維:マトリックス原料=4:6(質量比)の予備成形体を作製した。予備成形体をホットプレス機にセットし、表1に示す条件下でホットプレスした。得られたSiC繊維強化型SiC複合材料焼結体の特性を表1に併せ示す。
【0013】
JP0003971903B2_000002t.gif【0014】
C又はBN被覆したSiC繊維を配合した予備成形体を1750℃,15MPaでホットプレスすることにより得られたSiC繊維強化型SiC複合材料は、無被覆のSiC繊維を用いた試料No.1との対比から明らかなように、強度及び曲げ破壊エネルギーが飛躍的に向上していた。
被覆の有無によって曲げ特性が大きくことなる原因を調査するため、各SiC繊維強化型SiC複合材料の組織を走査型電子顕微鏡で観察した。図1の観察結果にみられるように、C被覆を施していないSiC繊維を使用した試料No.1では、SiC繊維とマトリックスとの反応が進行し、SiC繊維の健全性が損なわれていた。他方、C被覆したSiC繊維を使用した試料No.2~4は、何れもSiC繊維の健全性が維持されており、SiC繊維とマトリックスとの反応が完全に抑制されていることが判る。ただし、マトリックス材料として比較的大径のβ-SiC粒子を用いた試料No.4では、SiC繊維間にβ-SiC粒子が十分に充填されず、マトリックスにポアが散見された。
【0015】
各試料No.1~4を3点曲げ試験に供し、応力-歪曲線(図2)を求めた。試料No.1との対比から明らかなように、C被覆SiC繊維を使用した試料No.2~4のSiC繊維強化型SiC複合材料は、何れも弾性限界を超えて最大荷重が得られており、最大荷重点以降の伸びも確保されていた。このことからも、擬延性的破壊挙動をC被覆が有効に制御していることが窺われる。
図1,2は、C被覆の有効性を示すデータであるが、BN被覆したSiC繊維を強化材に用いてホットプレスした場合にも、SiC繊維とマトリックスとの反応が抑制され、同様に機械強度の高いSiC繊維強化型SiC複合材料が得られた。
【0016】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明で、強化材として使用される近化学量論組成のSiC繊維をCやBNで被覆することにより、1600~1800℃の液相焼結工程においてSiC繊維の損傷をほぼ完全に抑止し、SiC繊維強化型SiC複合材料本来の優れた特性を呈する焼結体を製造している。SiC繊維の損傷が抑制されることは、より高い焼結温度や成形圧力でのホットプレスを可能とし、SiC繊維強化型SiC複合材料の特性が更に向上する。このようにして得られたSiC繊維強化型SiC複合材料は、優れた高温特性を活用し、航空・宇宙,原子炉,核融合,発電等の極限雰囲気に曝される構造材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 SiC繊維強化型SiC複合材料焼結体のSiC繊維とマトリックスとの反応に及ぼすC被覆の影響を示した組織写真
【図2】 C被覆したSiC繊維を強化材としたSiC繊維強化型SiC複合材料の強度が格段に向上することを説明する応力-歪線図
図面
【図1】
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【図2】
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