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明細書 :X線管ターゲット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4010391号 (P4010391)
公開番号 特開2002-367549 (P2002-367549A)
登録日 平成19年9月14日(2007.9.14)
発行日 平成19年11月21日(2007.11.21)
公開日 平成14年12月20日(2002.12.20)
発明の名称または考案の名称 X線管ターゲット
国際特許分類 H01J  35/10        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
H05G   1/00        (2006.01)
FI H01J 35/10 C
G21K 5/08 X
H05G 1/00 R
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2001-176616 (P2001-176616)
出願日 平成13年6月12日(2001.6.12)
審判番号 不服 2005-021068(P2005-021068/J1)
審査請求日 平成15年7月29日(2003.7.29)
審判請求日 平成17年11月1日(2005.11.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】志水 隆一
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
参考文献・文献 特開昭55-74048(JP,A)
実開昭49-137465(JP,U)
特開昭50-141288(JP,A)
特開2000-306533(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に真空室を形成する装置本体と熱電子を放出する電子銃と回転対陰極とを備えたX線発生装置における反射型X線管ターゲットにおいて、
(a)傾斜を有する円錐台形形状をなし、
(b)基材として銅を用い、該銅の表面をタングステン(W)膜で被覆し、該膜の厚さを0.1μmから0.7μmとなし、
(c)電子ビームの入射角が10°から50°で、かつ、W-連続X線の取り出し角が40°から90°の範囲にあることを特徴とするX線管ターゲット。
【請求項2】
請求項1記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が30kVにおいて、前記膜の厚さが、略0. 3μmであることを特徴とするX線管ターゲット。
【請求項3】
請求項1記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が40kVにおいて、前記膜の厚さが、略0. 5μmであることを特徴とするX線管ターゲット。
【請求項4】
請求項1記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が50kVにおいて、前記膜の厚さが、略0. 7μmであることを特徴とするX線管ターゲット。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線発生装置に係り、開放型X線発生装置に用いられる回転対陰極(又は回転陽極)X線管のターゲット(対陰極)構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線管はX線回折装置やX線医療診断装置等のX線発生源として必須のものであり、電子銃に対向してターゲットを配置し、電子銃から出射された電子をターゲットの表面に衝突させて、ターゲットの表面からX線を発生させる構造になっている。代表的なX線管では、電子ビームによる焦点スポットに発生する熱を分散させる目的で、ターゲットを回転させる回転対陰極構造が取られている。
【0003】
ターゲットの表面部は銅、タングステン、クロム、コバルトなどの各種の金属が用いられている。この材料に応じて、発生するX線の波長等の特性が異なる。ターゲットは高温になるため、ターゲットには冷却機構が備えられている。
【0004】
また、ターゲットは熱伝導の良好な銅に各種金属を被覆している。表面部材は通常、銅のディスクに各種金属をメッキ等で処理を施したり、各種金属をはめ込み等で作製するため、ターゲットは数mmの厚さを有している。
【0005】
電子ビームの照射により、被照射スポットは高温になる。これを避けるため、ターゲットを冷却すると同時に、6000から10000rpmで高速回転させる。これにより表面部の温度は約1000℃以下に抑えられる。
【0006】
回転対陰極型X線管は長年、基本的な構造は変わっていないが、応用面が広くなり、より大きな強度のX線、実験室でのより小型の装置が求められている。
【0007】
一方、X線はディスクに垂直に電子ビームが当てられている。すなわち、金属面に対して90°に入射している。取り出し角は面に対して3から12°、通常6°近辺で用いられている。
【0008】
先行している関連特許出願では、ターゲットとしては特開平9-161673号、特開平11-213880号、熱対策としては特開平10-233160号、特開2000-340148号、管球構造として、斜めターゲット形状を有する特開平9-69396号などが挙げられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のX線管ターゲットでは、表面金属の膜厚が経験的に100μmになっていることを見直した。一方、X線はディスクに垂直に電子ビームが当てられている金属面に対して90°に入射している。取り出し角は面に対して3から12°、通常6°近辺で用いられている。この値も経験的であり、見直すことにより、効率よくX線を取り出す方法を検討した。
【0010】
その結果、本発明は、上記状況に鑑みて、表面金属の厚みをより薄くして、基材である銅により熱伝導を高め、冷却効果を向上させるとともに、効率よくX線を取り出すことができるX線管ターゲットを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕内部に真空室を形成する装置本体と熱電子を放出する電子銃と回転対陰極とを備えたX線発生装置における反射型X線管ターゲットにおいて、(a)傾斜を有する円錐台形形状をなし、(b)基材として銅を用い、その銅の表面をタングステン(W)膜で被覆し、この膜の厚さを0.1μmから0.7μmとなし、(c)電子ビームの入射角が10°から50°で、かつ、W-連続X線の取り出し角が40°から90°の範囲にあることを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が30kVにおいて、前記膜の厚さが、略0.3μmであることを特徴とする。
【0013】
〔3〕上記〔1〕記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が40kVにおいて、前記膜の厚さが、略0.5μmであることを特徴とする。
【0014】
〔4〕上記〔1〕記載のX線管ターゲットにおいて、前記電子ビームの加速度電圧が50kVにおいて、前記膜の厚さが、略0.7μmであることを特徴とする。
【0015】
上記したように、W膜の厚さは、好ましくは0.1μmから0.7μmである。それは、0.1μm以下になると、不要な下地からのX線が出ることになり、不具合なためである。
【0016】
また、照射された電子ビームがそのエネルギー損失量の70%から90%を基材金属(例えば、銅)内でなされるようにする。従来は、被覆金属が100μmの厚さであり、電子ビームのエネルギーはすべて被覆金属内で消滅している。冷却効率が比較的悪い被覆金属を最小限の厚さとし、冷却効率の良い銅をぎりぎりまで広げる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1実施例を示すX線管ターゲットの構成断面図である。
【0019】
この図において、1は円錐台形X線管ターゲット、2はそのX線管ターゲット1の内部に形成される基材(材質は銅)、3はその基材を被覆している金属被覆膜(材質はW)、4はX線管ターゲット1の回転中心軸、5は金属被覆膜の表面に対する垂直線(法線)、6は入射電子ビーム、7は取り出されるX線、α1 は入射角(入射電子ビームが照射される面の法線5と入射電子ビーム6とのなす角)、θ1 は取り出し角〔入射電子ビーム6が照射される面(金属被覆膜面)と取り出しX線7のなす角度〕である。ここでは、α1 は47°、θ1 は45°、金属被覆膜3の膜厚を1μm以下にすることにより、実用的に優れたものを得ることができる。
【0020】
図2は従来のX線管ターゲットと本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットとのX線スペクトル特性図であり、縦軸に強さ/電子、横軸にエネルギー(keV)を示している。なお、従来のX線管ターゲットの照射面と入射ビームのなす角は90°、取り出し角は10°である。また、図2における、aは本発明のX線管ターゲットとのX線スペクトル特性、bは従来例を示している。
【0021】
この図から明らかなように、本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットのX線スペクトル特性が優れていることが分かる。
【0022】
また、入射電子ビームの加速電圧によって金属被覆膜の厚さは最適なものを選定するのが望ましい。
【0023】
以下、その点について詳細に説明する。
【0024】
図3は本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットの入射電子ビームの加速電圧30kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図であり、横軸にW被覆膜の厚さ(μm)、左側の縦軸にX線強度(任意単位)、右側の縦軸に冷却効率(任意単位)が示されている。また、グラフの◆はX線強度を、■は冷却効率を示している。
【0025】
この図から明らかなように、X線強度及び冷却効率を総合的に見ると、最適な金属被覆膜の厚さは、0.3μm程度であることがわかる。
【0026】
ここで、冷却効率の評価は下記の通りである。
【0027】
図4は本発明にかかるX線管ターゲットの冷却効率の評価の説明図である。
【0028】
この図において、8は(dE/dZ)Cu:Cu基材中でのエネルギー損失、9は(dE/dZ)W :W被覆膜中でのエネルギー損失であり、エネルギー損失は発生する熱に比例するとすると、
冷却効率=〔(dE/dZ)Cu×σCu〕/〔(dE/dZ)Cu×σCu〕+
(dE/dZ)W σW …(1)
ここで、σCuは銅の熱伝導度
σW はタングステンの熱伝導度であり、
σCu/σW (573°Kにおいて)≒3.8/1.5を用いている。
【0029】
上記(1)式は、Cu中でのエネルギー損失が大きい程、冷却効果が大きい(Cuは水を流して冷却されている)。
【0030】
一方、W中でのエネルギー損失が大きい程、冷却効果が低くなると考えて、上記(1)のような式で冷却効率を評価することにした。
【0031】
図5は本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットの入射電子ビームの加速電圧40kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図であり、横軸にW被覆膜の厚さ(μm)、左側の縦軸にX線強度(任意単位)、右側の縦軸に冷却効率(任意単位)が示されている。また、グラフのはX線強度を、■は冷却効率を示している。
【0032】
この図から明らかなように、X線強度及び冷却効率を総合的に見ると、最適な金属被覆膜の厚さは、0.5μm程度である。
【0033】
図6は本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットの入射電子ビームの加速電圧50kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図であり、横軸にW被覆膜の厚さ(μm)、左側の縦軸にX線強度(任意単位)、右側の縦軸に冷却効率(任意単位)が示されている。また、グラフのはX線強度を、は冷却効率を示している。
【0034】
この図から明らかなように、X線強度及び冷却効率を総合的に見ると、最適な金属被覆膜の厚さは、0.7μm程度であることがわかる。
【0035】
図7は本発明の第2実施例を示すX線管ターゲットの構成断面図である。
【0036】
この図において、11は円錐台形のX線管ターゲット、12はそのX線管ターゲット11の内部に形成される基材、13はその基材を被覆している金属被覆膜、14はX線管ターゲットの回転中心軸、15は金属被覆膜の表面に対する垂直線(法線)、16は入射電子ビーム、17は取り出されるX線、α2 は入射角(入射電子ビーム16が照射される面の法線15と入射電子ビーム16とのなす角)、θ2 は取り出し角〔入射電子ビーム16が照射される面(金属被覆膜面)と取り出しX線17のなす角度〕である。ここでは、α2 は47°、θ2 は90°、金属被覆膜13の膜厚は1μm以下にすることにより、第1実施例に比べて数%X線強度を大きくすることができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0039】
(A)表面金属(被覆金属膜)の厚みを0.1μmから0.7μmと薄くして、基材である銅により熱伝導を高め、冷却効果を向上させるとともに、効率よくX線を取り出すことができる。
【0040】
(B)所定の入射角度及び取り出し角度で、表面金属(被覆金属膜)の厚さは、例えば、入射電子ビームの加速電圧30kVで0.3μm、入射電子ビームの加速電圧40kVで0.5μm、入射電子ビームの加速電圧50kVで0.7μmがX線強度及び冷却効率が最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示すX線管ターゲットの構成断面図である。
【図2】 従来のX線管ターゲットと本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットとのX線スペクトル特性図である。
【図3】 本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットとの入射電子ビームの加速電圧30kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図である。
【図4】 本発明にかかるX線管ターゲットの冷却効率の評価の説明図である。
【図5】 本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットの入射電子ビームの加速電圧40kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図である。
【図6】 本発明の第1実施例におけるX線管ターゲットの入射電子ビームの加速電圧50kVでのX線強度及び冷却効率の金属被覆膜の厚さ依存特性図である。
【図7】 本発明の第2実施例を示すX線管ターゲットの構成断面図である。
【符号の説明】
1,11 円錐台形X線管ターゲット
2,12 X線管ターゲットの内部に形成される基材(材質は銅)
3,13 金属被覆膜(材質はW)
4,14 X線管ターゲットの回転中心軸
5,15 金属被覆膜の表面に対する垂直線(法線)
6,16 入射電子ビーム
7,17 取り出されるX線
8 (dE/dZ)Cu:Cu基材中でのエネルギー損失
9 (dE/dZ)W :W被覆膜中でのエネルギー損失
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6