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明細書 :パルス流制御式圧力スイング吸着法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3646238号 (P3646238)
公開番号 特開平10-216454 (P1998-216454A)
登録日 平成17年2月18日(2005.2.18)
発行日 平成17年5月11日(2005.5.11)
公開日 平成10年8月18日(1998.8.18)
発明の名称または考案の名称 パルス流制御式圧力スイング吸着法
国際特許分類 B01D 53/04      
C01B 13/02      
FI B01D 53/04 B
C01B 13/02 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願平09-017105 (P1997-017105)
出願日 平成9年1月30日(1997.1.30)
審査請求日 平成13年5月11日(2001.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野口 豊
個別代理人の代理人 【識別番号】100062225、【弁理士】、【氏名又は名称】秋元 輝雄
審査官 【審査官】森 健一
参考文献・文献 特開平09-077502(JP,A)
特開平06-055027(JP,A)
特開平04-059014(JP,A)
特開平03-052615(JP,A)
特開平02-131111(JP,A)
特開平02-115016(JP,A)
特開平02-095409(JP,A)
特開平02-051405(JP,A)
特開平01-288313(JP,A)
特公平06-083776(JP,B2)
調査した分野 B01D 53/04
特許請求の範囲 【請求項1】
2以上の吸着塔、1以上のポンプ、複数の自動弁(オン-オフ弁)を備えた圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption 、PSA)装置による非吸着成分および/または吸着成分を製品とする圧力スイング吸着法(PSA法)であって、上記PSAの1循環操作内に、原料気体供給加圧、製品気体送出、減圧放出の基本的個別操作以外に下記の1)5)から選ばれる少なくとも1つのPSA個別操作(ステップ)を含み、上記装置におけるステップの転換は1以上の瞬間的(パルス的)開閉を含む一定パターンの自動弁開閉操作に拠ること、上記パターンの決定はシミュレーター(吸着塔-自動弁系)により、シミュレーターをステップ転換前の条件(吸着塔、自動弁の上・下流間差圧等)に設定しガス移動試験を実施する、自動弁(オン-オフ弁)の開放時間(△ti)をパラメーターとして、△tiに対応する吸着剤カラム内差圧(△p、入口端部-出口端部間差圧)の時間的変化を測定し、△pを縦軸、経過時間(t)を横軸とした図形とし、この図形が正弦波(半波長)もしくはその近似形を示すときの△tiをパルス時間、△tiに対応するガス移動量をVi、上記正弦波の半波長時間から△tiを引いた値を△Ziとしたとき、△t1 -△Z1 -△t2 -△Z2 ・・・・△ti-△Ziの弁シーケンス(弁開放時間-時間関係)により上記個別操作に必要な気体移動量(ΣVi)と気体の移動速度(ΣVi/Σ(△ti+△Zi))を制御し、ステップ転換における圧力変動を円滑化し、ガス分離効果を向上させることを特徴とするパルス流制御式圧力スイング吸着法(Pulsed Flow Controlled Pressure Swing Adsorption,PF-PSA )。
1)有価ガスによるパージ(パージ)
2)2塔間の圧力平衡化(均圧)
3)製品ガスによる再加圧(製品加圧)
4)ポンプを介する有価ガスの回収(リサイクル)
5)吸着成分ガスによる塔内気相ガスの置換(気相置換)
【請求項2】
パージ操作を次式(1)に基づいて行うことを特徴とする請求項1記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法。
【数1】
JP0003646238B2_000007t.gif

【請求項3】
自動弁を通過するガス量(Vi)を次式(2)により定めることを特徴とする請求項1ないし請求項2記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法。
【数2】
JP0003646238B2_000008t.gif

【請求項4】
請求項1記載のパルス時間△ti、ポーズ時間△Ziを下記の範囲とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法。
電磁弁:△ti;0.05~1.0秒
△Zi;0.1~2.0秒
空気圧作動弁:
△ti;0.5~3.0秒
△Zi;1.0~6.0秒
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は圧力スイング吸着法およびガス流れのパルス流制御法に関するものであり、さらに詳しくは原料とする混合気体から所要気体を分離して抽出するためのパルス流制御式圧力スイング吸着法(PF-PSA、以下PSAと略す)による気体分離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1(a)、(b)に、原料混合ガス中の不用成分を吸着除去して、非吸着質を製品とする公知の2塔構成のPSAシステム図を示す。
は図1(a)のシステムの各弁を作動させて、PSA法循環操作を実施する場合の1サイクルにおける各弁の作動状態(弁シーケンスと称す)を示す図である。斜線部は各弁が開放されていることを示す(以下同様)。
【0003】
以下、空気を原料とし空気中の不用成分(水分、窒素など)を吸着分離して酸素を製品とする場合を例にとって従来技術を説明する。
図1(a)は2つの吸着塔で構成される基本システムであるが、2塔構成のPSAシステムに限ってもいくつかの変形システムが考えられる。
図1(b)は図1(a)の変形システムの例を示す。
2はポンプ2基(1つは圧縮用、他の1つは真空引用)を使用した他の基本システムの例を示す。
【0004】
以下に主として図1(a)(基本ハード)-図(図1に対応する基本ソフト)について従来技術を説明するが、本発明における「パルス流制御操作」はこれらすべてのPSAシステム及びその作動ソフト(弁シーケンス)に適用可能である。
【0005】
空気を原料とし、その中の水分、窒素成分(不用気体成分)を吸着除去し、酸素(有用成分)を製造する場合を例にとって説明する。
図1(a)において、10a、10bは吸着剤カラム(層)a、bをそれぞれ内蔵する吸着塔であり、1a~5a、1b~5b、6は、電気力もしくは空気圧によって開閉する電磁弁、モーター弁、ダイヤフラム弁、ピストン弁、バタフライ弁などの自動弁(オン-オフ弁)(以下自動弁と称す)である。3a、3bはパージ用弁であり、3a~4a(3b~4b)は同時に作動し2つの塔(10a、10b)間の圧力平衡化(均圧)に使用される。
Pはポンプ、11は気体混合物供給源、12と13は廃棄ラインを示す。
【0006】
PSA法は図1(a)に示した2塔構成PSAシステムにおいて図7に示した弁シーケンスに従って次の7工程を順次経る。
1 原料(ガス)加圧
2 製品(ガス)取出し
3 パージ供与
4 均圧-減圧
5 減圧
6 パージ
7 均圧・加圧
以下、上記1~7の工程を繰り返す。
【0007】
上記の例では「均圧」操作を含む例を示したが、もっと簡単なものは「均圧」を含まない下記の5工程を順次経る。即ち
1 原料ガス加圧
2 製品ガス取出し
3 パージ供与
4 減圧
5 パージ
以下、上記1~5の工程を繰り返す。
【0008】
空気より酸素を分離する場合、吸着剤カラムa、bの吸着剤はMS-5A、MS-13X、LiXなどの窒素選択吸着剤である。なお多くの場合吸着剤層は2層で構成され、入口端部には空気中の水分除去用としてシリカゲル、活性アルミナなど水分吸着剤層が設けられる。吸着剤は予め加熱もしくは加熱と真空引の併用などの手段により活性化し、乾燥空気または乾燥窒素を充填し密封しておく。 図1(a)に示すシステム内の自動弁は弁6を除きすべて閉止しておく。この状態から動作が始まる。
次に図1(a)および図により塔10aに着目して弁シーケンス(自動弁の開放時間~時間関係)の説明を行う。
【0009】
1.原料加圧
ポンプPを起動、弁6を閉止、弁1aを開放する。
気体混合物(空気または工業的に製造された混合ガス)は気体混合物供給源11からポンプPにより吸引され、弁1aを経て継続的に加圧下にて吸着塔10aの吸着剤層入口端部へ導入される。吸着塔10aへの気体の導入によって、不要気体成分は吸着剤カラムaの吸着剤に入口側から吸着され、吸着剤層に吸着気体帯域(入口側の吸着剤中の不用成分濃度が大きく、ガス流れの方向に沿って濃度が小さくなる)が形成され、気体混合物の導入に伴って、上記帯域の先端部は吸着塔に沿って前進する。
【0010】
2.製品取出
吸着塔内圧力が所定の圧力に達したら弁2aが開放され所要の気体成分(O2)が弁2a、流量調節弁(記載せず)を経てシステム外へ取出される。
【0011】
3.パージ供与
上記の2の工程と同時もしくは少し遅れて、パージ弁3aが開放され、製品気体(O2 )の一部が塔10aより弁3aを介して減圧下にある(図参照)塔10bの出口端部へ供給され、塔10b内を向流方向(塔10bの原料気体送入方向に対して逆の方向)に流れ、塔10bの吸着剤カラムbの吸着剤中に残留する不用ガス(N2 )をパージする。
不用ガス(N2 )の脱着効果を上げるためには、このパージ操作は重要で分離の基本性能に直接係るものである。
【0012】
4.均圧減圧
弁2aを閉止、弁3a、4aを同時に開放し(弁6開放、弁5b閉止)、塔10aと塔10bとを出口端部同志、入口端部同志を同時に連結して2つの塔の圧力の平衡化(均圧)を行う。
この操作は塔10aの向流減圧に先立って有価ガス(O2 リッチガス)の回収を行う。
この操作におけるガス流れの制御は重要で分離の基本性能に直接係ることは「パージ」と同様である。
【0013】
5.減圧(放出)
弁5aが開放され、吸着塔10a内に加圧された状態で残っている不用気体成分の一部は廃棄ライン13を通してシステム外に放出される。この放出工程により吸着塔10a内の気相部ガスは殆ど除かれるが、吸着剤カラムaの吸着剤内部には未だかなりの不用気体成分が吸着されたまま残っている。
【0014】
6.パージ
吸着塔10aの吸着剤中に吸着されて残っている不用成分の脱着は、製品ガスの一部を用いて行われる。即ちパージ供給弁3bを開放し、塔10bからの製品ガスの一部を原料気体混合物流通方向と逆方向に塔10aの出口端部から吸着剤カラムa内に導入流通させる。
導入された製品ガスは吸着された不用気体成分を脱着し、弁5aを経て廃棄ライン13を介して脱着された気体成分とともに放出される。製品ガスを使用して吸着された気体成分を脱着する上記脱着の手順は「パージ法」と呼ばれている。 パージに使用するガスは製品ガスであり、上記操作で損失となるから、できるだけ早く、できるだけ少ない量で、大きな脱着効果を上げることが要請される。 そのため「パージ」操作時のガス流の調整は分離の基本性能に直接係るものである。
【0015】
7.均圧・加圧
弁3b-弁4bを同時に開放(同時に弁6開放)し、吸着塔10a、吸着塔10bの出口端部同志、入口端部同志を連結し、圧力平衡化を行う。吸着塔10bの有価ガスを吸着塔10a内に移送し、吸着塔10aの圧力を操作の中間圧まで復圧させ、前記1.の原料加圧工程への準備をする。
この後、弁1aを開放し、以上1~7の7つの工程を繰り返す。
【0016】
以上1~7の7つの工程を1サイクル工程(T、秒)という。
以上の7工程から成る吸着塔10aについての気体分離操作は吸着塔10bについても同様に行われる。
但し、図に示すように吸着塔10a(あるいは10b)の1~4の工程と吸着塔10b(あるいは10a)の5~7の工程とが同時期に進行するようT/2時間づらして実施される。
上記1~4の工程は加圧工程もしくは製品取出工程であり、上記5~7の工程は減圧工程もしくは再生工程とまとめることができる。
【0017】
上記のように吸着塔10aの気体分離操作と吸着塔10bの気体分離操作は所望のガス要求量を製造するため繰り返される。
このように製品ガスは製品リザーバー(記載せず)へ各塔10a、10bから交互に送り込まれそこから連続的に消費端に供給される。
【0018】
以上で従来技術を最も基本的な2塔構成システムについて、“パージ”と“均圧”の2つの個別操作を含むPSAを説明した。
図1(b)は、図1(a)の変形態様である。E1 、E2 は均圧弁で、前記4と7の工程において作動する。
【0019】
PSAシステムは最も基本的な2塔構成装置に限ってもいくつかの変形態様がある。例えば、1つのポンプを使う方式でも2通りある(加圧専用ポンプのみ使う方式と加圧-真空引併用ポンプを使う方式と2通りある)
2は2つのポンプを使う方式を示す。
もっとも基本的な2塔システムのみ示したが、PSAシステムの変形態様は塔数、ポンプ数を変えれば他にも多数の構成が考えられる。
PSA操作はいくつかの個別操作(ステップ)の組合せから成立ち、前記従来技術の説明においては「パージ」と「均圧」の2つの個別操作を含む代表的な分離方法を説明したが、PSA操作には他に「製品加圧」、「リサイクル」、「気相置換」(吸着成分を製品とするとき行われる)などの個別操作が含まれる場合もある。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
PSA法による気体分離の改善方向は次の2点に集約される。
1.吸着剤生産性を増大する。すなわち、製品ガスm3 (STP)/kg吸着剤(H)を大きくする。こうすると装置がコンパクト、省資材になり装置価格が安くなる。
2.電力原単位の低下。すなわち、KWH/製品ガスm3 (STP)を小さくする。このことは圧力操作条件(加える電力量)が一定のときは収率を大きくすることになる。
前記の従来技術は長年改善が加えられてきたが、上記改善方向に照らし、改善要請は強くかつ不断にある。とくに空気より酸素を製品として分離する場合は、近年、環境、エネルギー分野などへの用途の拡大、使用量の増大が見込まれるので、少しでも安い酸素をつくる技術は、非常に重要である。
【0021】
吸着剤生産性を増大するためには、一般に1サイクルあたりの製品送出量を保持しつつ、1サイクル時間を短くするか、あるいは、1時間あたりのサイクル数を多くする必要があるが、このことは、吸着塔に対してより大きなポンプを接続すること(または1つのポンプに対して吸着塔容積を小さくすること)であり、吸着塔の加圧、減圧などの速度が速くなる。
このためPSA各個別操作において吸着剤に対して、
a.ガスの突入衝撃が起きたり、
b.偏流が起きたり、
c.線速や空間速度が従来基準より著しく増大することになり、
また、ポンプに対して、
d.サイクルを構成する各個別操作(ステップ)間の切換が急速になり圧力衝撃がおきる恐れがある。
以上により、吸着剤カラムの気相や固相の気体成分分布がかく乱され、ポンプの作動不良が生じ、所望の純度の製品が安定して得られなくなり、吸着剤生産性や製品収率低減の原因となる。
【0022】
以上の問題は、PSAの個別操作を行うにあたり下記の1~3を考慮して、ガスの移動を迅速、精密に制御することにより解決される。
1.吸着塔出入流速が早くなっても、吸着帯が乱れたり、拡がらないこと。
2.「パージ」などの有価ガス成分の損失を伴う操作では有価ガスの移送量が少なくてすむこと。
3.個別操作-個別操作のステップ間切換時、切換塔内やポンプのラインに突出した圧力変動がおこらないよう切換操作が円滑であること。
【0023】
従来のガス流制御手段は下記1~4などの用いて行われていた。
1.オリフイス-自動弁(オン-オフ弁)、逆止弁などと併用される。
2.流量調整弁-ダイヤフラム弁が多い。
3.センサー~自動弁系のフィードバック制御が行われており、センサーとしては圧力、温度センサーなどが用いられている。
4.ステップ-ステップ間における圧力変動の緩衝化のためリザーバーが使用されており、このリザーバーには定容量タンクと可変容量タンクとの2通りがある。
【0024】
しかし、上記従来技術におけるガス流制御手段は下記1~4のような問題点を有する。
1.オリフイスはエネルギー損失を伴う。流れる量が少ないし制御が十分でない。
2.流量調整弁は応答が遅く、値段が高い。
3.フイードバック制御はもっとも複雑・高価であり、通常「均圧」などの1つの個別操作で使用されている。またこの制御は主として圧力や温度の制御であって、きめ細かい流量の制御はできない。
4.コンパクト化ができず、コストも高くなる。
【0025】
【課題を解決するための手段】
従来技術における上記諸問題は自動弁(オン-オフ弁)の精密シーケンス操作によりすべて解決される。本発明における必要なハードはオン-オフ弁のみである。
本発明の請求項1の発明は、2以上の吸着塔、1以上のポンプ、複数の自動弁(オン-オフ弁)を備えた圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption 、PSA)装置による非吸着成分および/または吸着成分を製品とする圧力スイング吸着法(PSA法)であって、上記PSAの1循環操作内に、原料気体供給加圧、製品気体送出、減圧放出の基本的個別操作以外に下記の1)5)から選ばれる少なくとも1つのPSA個別操作(ステップ)を含み、上記装置におけるステップの転換は1以上の瞬間的(パルス的)開閉を含む一定パターンの自動弁開閉操作に拠ること、上記パターンの決定はシミュレーター(吸着塔-自動弁系)により、シミュレーターをステップ転換前の条件(吸着塔、自動弁の上・下流間差圧等)に設定しガス移動試験を実施する、自動弁(オン-オフ弁)の開放時間(△ti)をパラメーターとして、△tiに対応する吸着剤カラム内差圧(△p、入口端部-出口端部間差圧)の時間的変化を測定し、△pを縦軸、経過時間(t)を横軸とした図形とし、この図形が正弦波(半波長)もしくはその近似形を示すときの△tiをパルス時間、△tiに対応するガス移動量をVi、上記正弦波の半波長時間から△tiを引いた値を△Ziとしたとき、△t1 -△Z1 -△t2 -△Z2 ・・・・△ti-△Ziの弁シーケンス(弁開放時間-時間関係)により上記個別操作に必要な気体移動量(ΣVi)と気体の移動速度(ΣVi/Σ(△ti+△Zi))を制御し、ステップ転換における圧力変動を円滑化し、ガス分離効果を向上させることを特徴とするパルス流制御式圧力スイング吸着法(Pulsed Flow Controlled Pressure Swing Adsorption,PF-PSA である。
1)有価ガスによるパージ(パージ)
2)2塔間の圧力平衡化(均圧)
3)製品ガスによる再加圧(製品加圧)
4)ポンプを介する有価ガスの回収(リサイクル)
5)吸着成分ガスによる塔内気相ガスの置換(気相置換)
【0026
本発明の請求項2の発明は、請求項1記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法において、パージ操作を次式(1)に基づいて行うことを特徴とする。
【0027
【数3】
JP0003646238B2_000002t.gif【0028
本発明の請求項3の発明は、請求項ないし請求項2記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法において、自動弁を通過するガス量(Vi)を次式(2)により定めることを特徴とする。
【0029
【数4】
JP0003646238B2_000003t.gif【0030
本発明の請求項4の発明は、請求項ないし請求項3のいずれかに記載のパルス流制御式圧力スイング吸着法において、請求項1記載のパルス時間△ti、ポーズ時間△Ziを下記の範囲とすることを特徴とする。
電磁弁:△ti;0.05~1.0秒
△Zi;0.1~2.0秒
空気圧作動弁:
△ti;0.5~3.0秒
△Zi;1.0~6.0秒
【0031
【発明の実施の形態】
先ず図に示す実験装置を用いて吸着塔20に流(出)入するガスの挙動を調べた。
20: 吸着塔
20a:吸着剤カラム
1 : 自動弁(オン-オフ弁)
2 : 自動弁(オン-オフ弁)
3 : 自動弁(オン-オフ弁)
4 : 自動弁(オン-オフ弁)
V : 真空ポンプ
1 ,P2 :圧力センサー
△P:吸着剤カラム層の上-下(入-出)端部差圧
【0032
実験操作例を以下に示す。そして、V1 を所定時間開放した時の△Pの時間的変化を測定した結果を図(A)、(B)、(C)に示す。
吸着剤(20a)は予め加熱・真空引などの手段で活性化しておく(P1 -P2 =一定)。
1.V1 を0.1秒(1つの例)開放し、△Pの時間的変化を測定した結果を図(A)に示す。
2.V1 を0.2秒開放し、△Pの時間的変化を測定した結果を図(B)に示す。
3.V1 を0.3秒開放し、△Pの時間的変化を測定した結果を図(C)に示す。
【0033
(A)、(B)、(C)を比較すると、山型頂部の形状が最初鋭角であったのが次第に円みを帯びた形へと変化する。(C)の場合、V1 の開放により吸着塔(20)へ流入した一定量のガス塊が吸着剤カラム20aの層を圧力波として円滑に伝播していることが判る。(C-1)は好適なパルス波を示す。また相当する量が最小最適なガス塊の量を示す。
1 を0.3秒開放した(第1回)時の(C-1)を第1パルスと称し、V1を0.3秒開放した(第2回)時の(C-2)を第2パルスという。
C は第1パルス-第2パルス間にとられるべき時間間隙で、(TC -0.3)(秒)を第1ポーズ(Z1 )という。以下同様。
【0034
(A)、(B)、(C)に示す波高(HA 、HB 、HC )、半波長(TA、TB 、TC )などは下記のような吸着システム構成要件や実験条件により決まる。
自動弁仕様
吸着塔仕様、内部構造
吸着剤:種別、粒度、活性化条件など
吸着剤カラム:断面積、層高
実験に用いるガス
自動弁V3 が大気に開放されているか(P1 >>大気圧)
自動弁V4 が開放され、ポンプVで真空吸引されているか(P1 :大気圧近 傍)など
【0035
は、PSA個別操作における典型的な弁シーケンス(弁の開放時間-時間の関係)例を示す。
の30A、30B、30Cの斜線部は弁が開放された状態を示す。
△t1 、△t2 は、それぞれ第1パルス、第2パルスを示す。
△Z1 、△Z2 は、それぞれ第1ポーズ、第2ポーズを示す。
は自動弁の上流-下流の圧力差が次第に減少する場合を示す(高速PSAに見られる例)。圧力差の減少とともにパルス幅(△ti )が増大するが△tiに対応する量(Vi)は略一定に保たれる。
【0036
パルスの流量は前記式(2)(実験式)で示される。
以上をまとめると次のようになる。
PSA個別操作において吸着塔に接続される自動弁(オン-オフ弁)の上流-下流差圧が変化するとき、同一量のガス塊を継続的に送りたい場合(”定流量制御”)は、
1.△P一定のときは、パルス幅(△ti )は一定にすればよく、
2.△Pが減少するときは、パルス幅(△ti )は増大させればよく、
3.△Pが上昇するときは、パルス幅(△ti )は減少させればよい。
パージ操作は一般に自動弁上流-下流差圧が略一定の条件で行われるので、このときは弁シーケンスは例えば
1秒開-2秒停止-1秒開-2秒停止
のごとく行われ、一定量のガス塊が断続的に吸着塔へ送入される。
以上、自動弁上流-下流差圧が種々変動する条件下で“定速制御”できることを示した。
【0037
次に“パルス・パージ”操作を例にとって“定量(供給)制御”を行う例を示す。
“パージ”操作においては、前記式(1)(実験式)が成立する。
空気より酸素を分離する例(MS-5A使用)ではα≒1であった。
各パルスの量V1 、V2 …は同じ(V0 とする)であった。また必要なパルス数n=V/V0 =1~3となった。
最大、最適なパージ供与速度は次式(3)となる。
【0038
【数5】
JP0003646238B2_000004t.gif【0039
小型の吸着塔を用いた実験では、△ti=0.1秒以下、△Zi=0.4秒以下が可能であった。大型機の場合は小型機の10~20倍となった。
【0040
【作用】
1)近年、PSA法によるガス分離性能向上のためには自動弁を介して吸着塔へ出入するガス流れの迅速・精密制御法が必須の技術として期待されてきた。
2)PSA法の循環操作は高速化に伴い、圧力変動が激しくなった。従来、秒単位で精密に流れを制御することは困難もしくは不可能であったが、本発明の簡単な方法ですべて解決された。
3)本発明の方法は市販・規格品または常用自動弁(オン-オフ弁)の精密な弁シーケンス(弁開放時間-時間関係)の設定のみでPSA全圧力変動過程の細部に亘り迅速・精密な制御を可能にした。
4)その結果、吸着剤の潜在性能を引き出し、ガス分離性能を格段に向上さす作用が生じた。
5)従来技術で不可能であった、短時間(秒単位)での“定速制御”や“定量供給制御”が可能となったので、
サイクルタイム短縮による、吸着剤生産性向上や
有用成分の損失防止による、製品収率の向上を図ることができた。
例えば、酸素濃縮装置の小型コンパクト、低コスト化及び省エネ向上に作用した。
6)本発明は酸素濃縮装置の性能向上のみならず、吸着塔と自動弁で構成されるあらゆるPSA装置の動作改善に作用するものである。
7)本発明は、従来装置に特別な部品や複雑な機構を付加するものでない。コストのかからないシーケンスの変更のみで、PSA装置の省資材、省エネ性向上をもたらすものでその影響は広く、大きい。
8)本発明の方法は自動弁-吸着塔系に対するガス流の制御(PSA)のみに限定されるものではない。自動弁-充填塔系に対しても有効である。後者のシステムに前記の操作を適用することにより、ガス流の安定化、定量化が可能となる。また充填塔に2系列のガス流をパルス波として交互に供給することにより、他端から所定混合比のガス流が得られる。これらの操作に必要なハードは弁と塔のみで化学工学上もっとも基本的かつ簡単な要素であって、目的に応じ、もっとも低価格、コンパクトな組み合わせを選択できる。そして単にシーケンスの変更で、種々の態様のガス流の迅速精密な制御が可能になるので、ガス処理に係わる化学装置の簡素化、低価格化およびその操作の改善などに大きく作用する。
【0041
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1(a)は常用圧力スイング法の基本システム図(加圧法)であり、空気より酸素濃縮は本システムで実施されている。
は図1(a)のシステムを用いて本発明を実施するための標準弁シーケンス図である。図1(a)の構成については従来技術の欄で既に説明した。
本発明においては図1(a)の基本システムを用い、次の1)~7)の7工程を順次経てガス分離が行われる。
塔10aに着目し、図の弁シーケンスに従って操作を行う。
1)原料(ガス)加圧
2)製品(ガス)取出し
3)パージ供与(パルス・パージ)
4)均圧-減圧
5)減圧
6)パージ(パルス・パージ)
7)均圧-加圧
以下、1)~7)の7工程を繰り返す。
なお、この実施例1の工程は従来技術の説明で述べたものと全く同じであり、説明が重複するので省略する。3)、6)のパルス・パージ工程のみ従来技術と異なる(本発明における“パージ”は“パルス・パージ”と称す。以下同様)。
【0042
以下、従来技術の説明と同じく空気より酸素濃縮を例にとって“パルス・パージ”法を説明する。
3)パージ供与
2)の工程と同時もしくは少しおくれて、パージ弁3a(オン-オフ弁)の0.1秒開放-0.9秒閉止-0.1秒開放-0.9秒閉止の断的開閉操作(パルス操作)を行う。
上例は1つの例であって、弁-吸着塔系シミュレーターで予め実験しておき、それによりパルス操作シーケンスが定められる。
製品O2 の一部が、弁3aを介して減圧下にある塔10bの出口端部へ供給され、塔10b内を継続する2つの圧力波として塔10b内を向流方向に流れ、塔10bの吸着剤カラムbの吸着剤中に残留する不用ガス(N2 )をパージする。
【0043
6)パージ
塔10aの吸着剤カラムa中に吸着されて残っている不用ガスの脱着は、製品ガスの一部を用いて行われる。即ち、パージ供給弁3bを0.1秒開-0.9秒閉-0.1秒開-0.9秒閉と操作し、塔10bからの製品ガスを塔10aの出口端部へ断続的に供給し吸着剤カラム内に導入・流通させる。
導入された製品ガスは吸着剤カラム層a内を圧力波(正弦波)として伝播し、1つの伝播が終わったらすぐ次の第2波が供給される。
この製品ガスの圧力波は吸着剤カラム層a中に残留する不用ガス(N2 )の脱着に有効に作用し、弁5aを経て、廃棄ライン13を介して脱着された気体成分とともに放出される。
パルス数は小型機による酸素濃縮の場合、1~3回で十分である。
またポーズ時間は小型機の場合、1秒以下で十分である。
【0044
(実施例2)
図2は、常用圧力スイング法の他の基本システム図(真空法)であり、空気より酸素濃縮は本システムで実施されている。
は、図2のシステムを用いて本発明を実施するための標準弁シーケンス図である。
図2の構成は次の1点を除いて、すなわち真空ポンプVがついていることを除いて、図1と同じである。真空ポンプVは減圧を促進するため(生産性向上、収率向上を目的とする)に設けられている。
塔10aに着目し、図2のシステムを用い、図の弁シーケンスに従って次の1)~7)の7工程を経てガス分離が行われる。
1)原料(ガス)加圧
2)製品(ガス)取出し
3)パージ供与(パルス・パージ)
4)均圧-減圧(パルス・均圧)
5)減圧・真空引
6)パージ(パルス・パージ)
7)均圧-加圧(パルス・均圧)
【0045
上記の1)~7)の7つの工程は従来技術及び実施例1で説明したものと同じである。この実施例2はパルス・パージとパルス・均圧の2つの個別操作を用いた処に特長がある。
従来技術及び実施例1と説明が重復するのを避け“パルス・均圧”(4)と7))のみについて以下に説明する。
【0046
図2のシステムを用い、図の弁シーケンスに従って、空気より酸素濃縮を行う例について説明する。
4)均圧-減圧(パルス・均圧)
3)のパージ供与が終わったら、塔10aの加圧および塔10bの減圧を停止する。直ちにパージ弁3a(均圧併用)と均圧弁4aを同時に例えば、0.1秒開-0.4秒閉-0.5秒開の開閉操作を行い、加圧下の塔10aと減圧下の塔10bとの上(出口)端部同志および下(入口)端部同志を連結して2つの塔の圧力平衡化を行う。
この際、一般に弁3a(3b)と弁4a(4b)は同一のサイズ仕様であって、上端部同志のガス移動量と下端部同志のガス移動量を同じくする。
【0047
7)均圧-加圧(パルス・均圧)
この工程は、減圧及び有用ガスパージを経て“再生”の終わった塔10aを再び循環使用に備えて圧力を復帰さすための前工程である。弁3b-弁4bを同時に開放(同時に弁6、弁7開放)し、吸着塔10a、吸着塔10bを出口端部同志、入口端部同志を連結し、圧力平衡化を行う。吸着塔10aは圧力変動操作の略中間圧まで復圧し、1)の原料ガス加圧工程への準備をする。この後、弁1aを開放する。
均圧のパルス数は小型機の場合1~2で十分である。小型機および大型機について、自動弁(オン-オフ弁)、パルス時間(△ti)、ポーズ時間(△Zi)の好ましい態様を表1に示す。
【0048
【表1】
JP0003646238B2_000005t.gif【0049
(実施例3)
図1に示す基本システム(装置)を使用し、実施例1に示す本発明に従うPAS法で空気より酸素を分離した。
吸着塔: 直径5.3cm、長さ23cm(ステンレス製の筒)
吸着剤: MS-5A、充填量 498g
吸着塔入口端部に活性アルミナを全層高の15%迄充填した。使用した自動弁は電磁弁、ポンプはダイヤフラム式であった。
実施した弁シーケンスを表2に示す。
【0050
【表2】
JP0003646238B2_000006t.gif【0051
以上の結果、純度90%の濃縮酸素が毎分2リットルで連続的安定して得られた。
吸着剤生産性は240リットル(90%O2 )/kg(H)であった。
より大きいポンプを接続しサイクルタイムを短縮したときは吸着剤生産性は360リットル(90%O2 )/kg(H)であった。この値はさらに大きくすることが可能である。
従来技術では100リットル(90%O2 )/kg(H)以下である。
【0052
【発明の効果】
1.本発明は最新PSA法を特長づける“高速気体流れ”の迅速精密な制御法に係るものであり、本発明方法の適用によりPSA法全般の気体分離性能が大幅に改善された。
2.本発明のガス流制御方法は常用オン-オフ弁の精密シーケンス制御に係るものであり、従来技術のごとく特別な制御弁や弁機構は一切使用しないので、低コストで達成できる。
3.本発明の方法は弁-吸着塔間のガス流の制御を常用オン-オフ弁の一定のパターンに準拠した弁開閉操作(パルス的開閉操作)により行うものであり、どのような制御も単にシーケンス(パターン)を変更するだけでよいので、装置の改良・変更は必要なく、簡便な方法である。
4.本発明の方法は従来技術では不可能であった、自動弁上流-下流の差圧が秒単位で変動するプロセスの高速流れの精密な制御を可能とした。即ち、流れの平滑化、定速化、定量化が可能となった。
5.本発明の方法を空気より酸素濃縮分離に適用した場合、分離性能の著しい向上により酸素濃縮装置のコンパクト化(省資材化、低コスト化)、省エネ化が達成された。
6.本発明の方法は酸素分離のみならず、水素分離、炭酸ガス分離など広くPSA法全般の操作の改善に資するものである。
7.本発明の方法は化学工学のガスの流れを扱うプロセス、例えば定率供給(混合)、定量化、定速化など全般に適用可能であり、本法の採用により化学装置の簡単化、コンパクト化、省資材化、省エネ化が可能となり、化学工学操作全般の操作が改善されるので、本発明の効果は広範囲で大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、従来方法ならびに本発明の方法を実施するために利用される圧力・スイング法装置の基本システム例(2塔構成、加圧法)を示す説明図であり、(b)は、(a)の基本システム例の変形態様を示す説明図である。
【図2】 従来方法ならびに本発明の方法を実施するための圧力スイング法装置の他の基本システム例(2塔構成、真空法)を示す説明図である。
【図】 自動弁のパルス的開閉操作を示す実験システムを示す説明図である。
【図】 (A)はV1 を例えば0.1秒開放した時の吸着塔の入口端部-出口端部間の差圧の時間的変化を示すグラフであり、(B)はV1 を0.2秒開放した時の吸着塔の入口端部-出口端部間の差圧の時間的変化を示すグラフであり、(C)はV1 を0.3秒開放した時の吸着塔の入口端部-出口端部間の差圧の時間的変化を示すグラフである。
【図】 自動弁のパルス操作パターン例を示す説明図である。
【図】 図1の基本システムを用いて従来の方法を実施するための1サイクルにおける弁の作動状態を示す説明図(弁シーケンス)である。
【図】 図1のシステムを用いて本発明を実施するための標準弁シーケンス(加圧法)を示す説明図である。
【図】 図2のシステムを用いて本発明を実施するための標準弁シーケンス(真空法)を示す説明図である。
【符号の説明】
a、b 吸着剤カラム
1 、E2 自動弁
P ポンプ
V 真空ポンプ
1a~5a、1b~5b、6、7、8 自動弁
10a、10b 吸着塔
11 気体混合物供給ライン
12、13 廃棄ライン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7