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明細書 :有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法及びその合成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3713561号 (P3713561)
公開番号 特開2003-012312 (P2003-012312A)
登録日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発行日 平成17年11月9日(2005.11.9)
公開日 平成15年1月15日(2003.1.15)
発明の名称または考案の名称 有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法及びその合成装置
国際特許分類 C01B 31/02      
FI C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2001-193629 (P2001-193629)
出願日 平成13年6月26日(2001.6.26)
審査請求日 平成14年12月4日(2002.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】安藤 寿浩
【氏名】蒲生 美香
【氏名】張 亜非
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2001-048507(JP,A)
特開2000-109308(JP,A)
特開2001-262343(JP,A)
国際公開第99/065821(WO,A1)
SHOUSHAN FAN, et al.,Self-oriented regular arrays of carbon nanotubes and their field emission properties,SCIENCE,1999年 1月22日,Vol.283,p.512-514
M.KUSUNOKI, et al.,Formation of self-aligned carbon nanotube films by surface decomposition of silicon carbide,PHILOSOPHICAL MAGAZINE LETTERS,1999年,Vol.79, No.4,p.153-161
調査した分野 C01B 31/02
D01F 9/127
JOIS
WEB OF SCIENCE
INSPEC
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を堆積し、薄膜又は島状微粒子を堆積した基板を水素プラズマに晒し、水素プラズマに晒した基板を、上記金属元素の触媒作用と急激な温度勾配で熱分解してカーボン原子が生成する有機液体中で一定温度に加熱して合成することを特徴とする、有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項2】
基板上に金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を堆積し、
この基板を水素プラズマに晒して加熱することにより、上記金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を径及び分布が均一な液体微粒子にして基板上に島状に分布させると共に基板に強固に結合させ、
この基板を上記金属元素の触媒作用と急激な温度勾配で熱分解してカーボン原子が生成する有機液体中で上記熱分解が生ずる一定温度に加熱すると共に上記有機液体を沸点以下の温度に保つことにより、
上記液体微粒子上にカーボンナノチューブを合成することを特徴とする、有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項3】
前記基板はSi基板であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項4】
前記金属元素からなる薄膜又は島状微粒子は、Fe,Co,Niから選択される一つの元素又は複数の元素からなる薄膜又は島状微粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項5】
前記有機液体はアルコールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項6】
前記アルコールはメタノールまたはエタノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項7】
前記一定温度に加熱する際、Si基板に電流を流して加熱することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法。
【請求項8】
有機液体を保持する液体槽と、有機液体を有機液体の沸点未満に保持する冷却手段と、有機液体の気相を液相に戻して液体槽に戻す凝縮手段と、有機液体中の基板に電流を流す電極を備えた基板保持手段と、合成装置内の空気を除去する不活性ガス導入手段と、上記液体槽を密閉して有機液体の気相の蒸発を防止する密閉手段とを有していることを特徴とする、高配向整列カーボンナノチューブの合成装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機液体から整列配列したカーボンナノチューブを合成する方法及びこの方法に用いる装置並びにこの方法で製造するカーボンナノチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、その特異な電気的及び機械的性質により、電界放射電子源、ナノスケール電子デバイス、化学的貯蔵システム、機械的補強材などといった将来のナノテクノロジーに応用できる可能性が高い。
フラーレン生成装置において、炭素電極を用いて放電した際に生ずる陰極堆積物の中にカーボンナノチューブが発見されて以来、種々のカーボンナノチューブの合成法が提案されてきた。これらの合成法の目的は、カーボンナノチューブを大量に製造できること、また、特定の機能を有するカーボンナノチューブを合成することであった。特定の機能を有するカーボンナノチューブとは、例えば、炭化水素の触媒能力の停止機能、凝縮相電気分解機能、SiC昇華触媒機能などの機能を有するカーボンナノチューブであり、これらのナノチューブは、これらの機能に適した配向成長構造を有している。
【0003】
しかしながら、これらの合成方法は、研究に使用するには十分な程度の収率に止まっており、工業的生産に適用できるレベルにはない。
また、従来の基板に整列させたナノチューブは、基板との結合力が弱く、取り扱い難いと言った課題もある。
現在、最も普及しているSiテクノロジーを使用してカーボンナノチューブを合成できれば、例えば、Si半導体プロセスに使用する原料と装置を使用して大量にかつ低コストで合成できれば、カーボンナノチューブの特異な性質を活かした優れた機能を有するナノテクノロジー製品を低コストで大量に供給するたとができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題に鑑み、カーボンナノチューブを低コストで大量に合成する方法とこの方法に用いる装置、並びに基板に強固に、高密度に高配向に整列配列したカーボンナノチューブを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法は、基板上に金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を堆積し、薄膜又は島状微粒子を堆積した基板を水素プラズマに晒し、水素プラズマに晒した基板を上記金属元素の触媒作用と急激な温度勾配で熱分解してカーボン原子が生成する有機液体中で一定温度に加熱して合成することを特徴とする。
具体的には、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法は、基板上に金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を堆積し、この基板を水素プラズマに晒して加熱することにより、上記金属元素からなる薄膜又は島状微粒子を径及び分布が均一な液体微粒子にして基板上に島状に分布させると共に基板に強固に結合させ、この基板を上記金属元素の触媒作用と急激な温度勾配で熱分解してカーボン原子が生成する有機液体中で上記熱分解が生ずる一定温度に加熱すると共に上記有機液体を沸点以下の温度に保つことにより、上記液体微粒子上にカーボンナノチューブを合成することを特徴とする。
前記基板としてSi基板が好適である。
前記金属元素からなる薄膜又は島状微粒子として、Fe,Co,Niから選択される一つの元素又は複数の元素からなる薄膜が好適である。
有機液体はアルコールでも良く、例えばメタノールまたはエタノールである。また、一定温度に加熱する方法は、Si基板に電流を流して加熱することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、Fe元素からなる薄膜又は島状微粒子が堆積したSi基板を高温の水素プラズマに晒すことによって、Fe薄膜がナノメーターサイズの微粒子になって、好ましくは、ナノメーターサイズの径及び分布が均一な液体微粒子になって、Si基板上に島状に分布すると共にSi基板に強固に結合して、又は島状微粒子がSi基板に強固に結合してFe液体微粒子を形成し、有機液体中でSi基板に電流を流してSi基板を高温に加熱することによって、Si基板近傍の有機液体が非熱平衡状態の触媒反応により分解してカーボン原子が生成し、カーボン原子がFe液体微粒子に過飽和に溶け込み、Si基板表面の高温とSi基板近傍の有機液体との温度勾配により、Fe液体微粒子中のカーボン原子がFe液体微粒子の表面に析出して成長核を形成し、この核にFe液体微粒子中からカーボン原子が連続的に供給されてSi基板表面の垂直方向にカーボンナノチューブが成長する。
本発明により、Si基板、有機液体としてアルコールを用い合成方法で合成した高配向整列カーボンナノチューブは、先端がほぼ継ぎ目なしのキャップによって閉じられたカーボンナノチューブが、Si基板表面全面に亘って垂直、高密度に整列配列し、且つ強固にSi基板に結合しており、また、この高密度に整列配列したカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの軸方向と長さを揃えて互いに固着した束になることを特徴としている。この特徴を有するカーボンナノチューブは、Si基板表面全面に亘って、垂直、強固かつ高密度に高配向整列配列しているので、また、軸方向と長さを揃えて互いに固着するので、デバイス等に加工することが容易である。
【0006】
この方法は、半導体プロセスで普通に使用される原料と装置を使用するので極めて低コストで、またSi基板表面全面に亘って成長するので極めて大量に製造できる。また、Si基板は単結晶である必要はなく、多結晶体でも良いので、基板材料が低コストである。
また、この方法は、様々な種類の有機液体を使用できるから、カーボン以外の元素を含んだ、いわゆるドープドナノチューブを合成することができる。
【0007】
本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成装置は、有機液体を保持する液体槽と、有機液体を有機液体の沸点未満に保持する冷却手段と、有機液体の気相を液相に戻して液体槽に戻す凝縮手段と、有機液体で基板に電流を流す電極を備えた基板保持手段と、合成装置内の空気を除去する不活性ガス導入手段と、液体槽を密閉して有機液体の気相の蒸発を防止する密閉手段とを有していることを特徴とする。
この構成によれば、有機液体の温度を沸点未満に保持することができると共に、基板温度を高温の成長温度に保持でき、高配向整列カーボンナノチューブの合成が可能になる。
また、有機液体の気相が凝縮されてもどるため原料の有機液体を無駄にすることがないと共に、有機気相と空気との混合による爆発、炎上の危険がない。
さらに、不活性ガス導入手段を有するから、液体槽中での有機気相と空気との混合による爆発、炎上の危険がない。
【0008】
また、本発明の高配向整列カーボンナノチューブは、基端がSi基板上のFe微粒子と結合し、且つ、先端がほぼ継ぎ目なしのキャップによって閉じられたカーボンナノチューブが、Si基板表面全面に亘って垂直、強固、かつ高密度に高配向整列配列したカーボンナノチューブである。
さらに本発明の高配向整列カーボンナノチューブは、基端がSi基板上のFe微粒子と結合し、且つ、先端がほぼ継ぎ目なしのキャップによって閉じられたカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブの軸方向と長さを揃えて互いに固着した束であることを特徴とする高配向整列カーボンナノチューブである。
この構成によれば、Si基板表面全面に亘って、垂直、強固かつ高密度に高配向整列配列しているので、デバイス等に加工しやすい。
また、カーボンナノチューブの軸方向と長さを揃えて互いに固着したカーボンナノチューブのは、デバイス等に加工することが容易である。
【0009】
本発明によれば、低コストでカーボンナノチューブを合成でき、従って、カーボンナノチューブの特異な性質を活かした優れた機能を有するナノテクノロジー製品を低コストで大量に供給することが可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
始めに、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成装置を説明する。
図1は、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成装置の構成を示す図である。
この合成装置は、液体槽1の外側に液体槽1を冷却するための水冷手段2と、基板3を保持し、かつ、基板3に電流を流すための電極4を有する基板ホルダー5と、液体槽1から蒸発する有機液体蒸気を冷却凝縮して液体槽1に戻す水冷パイプ6からなる凝縮手段7と、基板ホルダー5と凝縮手段7とN2 ガスを導入するバルブ8とを保持する蓋9を有し、液体槽1と蓋9で有機液体10を密閉して保持する構成である。
【0011】
この装置によれば、有機液体の温度を沸点未満に保持することができると共に、基板温度を高温の成長温度に保持でき、カーボンナノチューブの合成が可能になる。また、有機液体の気相が凝縮されてもどるため原料の有機液体を無駄にすることがなく、さらに有機気相と空気との混合による爆発、炎上の危険がない。また、不活性ガス導入手段を有するから、液体槽中での有機気相と空気との混合による爆発、炎上の危険がない。
【0012】
次に、基板がSiであり、金属原子からなる薄膜がFe薄膜であり、有機液体がメタノールの場合を例にとって、また、図1に示した合成装置を使用する場合の、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法を説明する。
導電性を有するSi基板を洗浄し、Fe薄膜を堆積する。堆積手段は、例えば、Ar中のスパッターでもよい。堆積するFe薄膜の厚さは、合成するナノチューブの径と密度を決定するので目的に合わせてFe薄膜の厚さを選択する。
次に、Fe薄膜を堆積したSi基板を、水素プラズマに晒して850℃に加熱する。このプラズマ処理によって、Fe薄膜が液体微粒子になってSi基板上に島状に分布すると共に、Si基板に強固に結合する。また、水素プラズマに晒すことによって、液体微粒子の径及び分布が均一になる。
【0013】
続いて、水素プラズマ処理を行ったSi基板を、図1で示した合成装置の基板ホルダー5に配置し、メタノール10を満たし、N2 ガスをバルブ8を介して導入し、合成装置内の残留空気をN2 ガスで置換する。
そして、電極4を介してSi基板に電流を流して加熱する。最初、基板温度が930℃になる電流を流し、合成中もこの電流値に保つ。Si基板表面からメタノールのガスからなる気泡が発生すると共に、Si基板表面がこの気泡によって覆われる。この際、メタノール10の温度をメタノールの沸点以下に保つことが必要であり、水冷手段2を用いて冷却する。また気相のメタノールを凝縮手段7により液体に戻し、液体槽1に戻す。
所望のカーボンナノチューブの長さに応じた一定時間、合成装置を上記の状態に保つことにより、カーボンナノチューブが合成される。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの成長メカニズムは以下のように考えられる。基板がSiであり、金属原子からなる薄膜がFe薄膜であり、有機液体がメタノールの場合を例にとって説明する。
図2は、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成におけるカーボンナノチューブの成長メカニズムを示す図である。
図において、Si基板3の表面は約900℃の高温であり、一方、Si基板3の表面に隣接するメタノールは約60℃である。また、Si基板3の表面は、メタノールのガス21で覆われており、Si基板表面から液体に向かって急激な温度勾配が存在する。この急激な温度勾配とFeの触媒作用とにより、メタノールガス21中で特異な熱分解反応が生じ、Fe液体微粒子22に溶け込むカーボン原子が生成するものと考えられる。すなわち、非熱平衡状態におけるFeの触媒反応によりカーボン原子が生成する。
生成したカーボン原子がFe液体微粒子22に過飽和に溶け込み、Si基板表面の温度勾配により、Fe液体微粒子22中のカーボン原子がFe液体微粒子22の表面に析出して成長核を形成し、この核にFe液体微粒子22中からカーボン原子が連続的に供給されてカーボンナノチューブ23が成長する。
【0015】
次に、実施例1を示す。
本例では、高純度メタノール(99.7%)を有機液体として用いた。低抵抗(0.002Ωcm)Si(100)面方位、寸法10×20×1mm3 の基板を用いた。Si基板は、アセトン中で超音波洗浄し、3%フッ酸溶液でエッチングして洗浄した。
Si(100)基板表面に、Arガスによるスパッタ法で25nm厚のFe薄膜を堆積し、基板温度850℃、20分の水素プラズマ中処理を行い、Fe薄膜の基板への付着力を高め、かつ、カーボンナノチューブの核生成のためのFe微粒子を形成した。
このSi基板を、図1の基板ホルダー3に配置し、直流電流を流し、930℃に加熱した。多数の泡が生成し、メタノール液表面に上昇し、Si基板表面はこの泡で覆われた。液体槽1中のメタノールの温度は約60℃に上昇した。冷却手段2は、メタノールの温度を沸騰点よりも低くするために必要であり、また、蒸発したメタノールを回収するために凝縮手段7が必要である。
Si基板温度は、光学放射温度計を使用し、焦点を基板表面に合わせて測定した。
Si基板に流す電流は成長中一定に保った。基板温度は、カーボンナノチューブの長さが長くなるに従ってゆっくりと減少することが観測された。
【0016】
図3は、合成したカーボンナノチューブのSEM(Scanning Electron Microscope)像を示す図である。
図3(a)は、劈開したカーボンナノチューブ層を斜め上方より撮影したSEM像であり、図の上方の平坦部分はカーボンナノチューブ層の上面であり、図の下方の筋状の部分はSi基板に垂直に密集して成長したカーボンナノチューブ層の側面である。図から明らかなように、同一の長さのカーボンナノチューブが軸方向を揃え、Si基板に垂直に、かつSi基板全面に亘って高密度に成長していることがわかる。
図3(b)はSi基板から剥がしたカーボンナノチューブのSEM像である。図に見られるように、カーボンナノチューブをSi基板から剥がすと、カーボンナノチューブがチューブの軸方向と長さを揃えて互いにくっつき、カーボンナノチューブの束のようになる。またカーボンナノチューブ先端が寄り集まって平坦な断面を形成する。肉眼で見ると黒い固まりのように見える。Si基板上のカーボンナノチューブは、硬い物質で引っ掻くなど、力を加えなければ剥がれることがない。
ナノチューブの軸方向の成長速度は、基板温度の上昇と共に増大した。ナノチューブの長さは、成長時間の増加と共に長くなった。
SEM装置に付属するEDX(Energy Dispersive X-ray)測定装置によって、カーボンナノチューブの化学成分はカーボンのみであることが確認された。
図から明らかなように、本発明の合成方法によれば、非常に高密度に、かつ軸方向を揃えたカーボンナノチューブの束が得られる。
【0017】
図4は、カーボンナノチューブの高分解能透過電子線顕微鏡(HRTEM)像を示す図である。
図4から明らかなように、カーボンナノチューブは、基本的になだらかで一様な中空多層ナノチューブである。多層ナノチューブの各層の間隔は0.34nmであった。大部分のカーボンナノチューブの径はナノチューブの長さ方向全体に亘ってほぼ一定であるが、いくらか、ナノチューブの長さ方向で変化している。カーボンナノチューブの外径は20nmを分布の中心として13から26nmの範囲に分布していた。カーボンナノチューブ半径の、チューブ壁の厚みすなわち殻の厚みに対する比は、約1.2から2.1であった。いくらかの格子不整及び格子欠陥がチューブ壁の縁と表面に見いだされた。これは、Si基板表面の不均一な触媒反応によって生ずるラジカル酸素によるものと考えられる。
【0018】
図5は、カーボンナノチューブの高分解能透過電子顕微鏡像を示す他の図である。図に示すように、カーボンナノチューブの先端は、ほぼ継ぎ目なしのキャップによって閉じられている。なお、図に見られる黒斑は、Feであることが確認されており、カーボンナノチューブのいくつかには、このように、チューブの先端付近にSi基板上のFeが検出された。
カーボンナノチューブの根本は基板表面上にあり、この部分の形状は開口チューブになっている。
【0019】
次に、実施例2を示す。
温度を変えるだけで、他の合成条件は実施例1と同一にして、メタノールに変えてエタノールでもカーボンナノチューブを形成することができた。
エタノール中でのSi基板温度を860℃、エタノールの温度は70℃に保持した。
図6は、70℃に保持されたエタノール中のSi基板上に成長したカーボンナノチューブのHRTEM像を示す図である。図6から明らかなように、形成したカーボンナノチューブは、ほとんど中空の多層ナノチューブであった。カーボンナノチューブの半径のチューブの殻の厚さに対する比は2.2から5.8であった。カーボンナノチューブの先端は、実施例1のカーボンナノチューブと同様にほぼ継ぎ目なしのキャップで閉じられていた。
【0020】
次に、Fe薄膜の触媒としての機能を証明する実施例を示す。
すなわち、Fe薄膜を形成しないSi基板を用いて、実施例1と同様に、メタノール中で合成を行ったが、カーボンナノチューブは成長しなかった。
この結果から、Feの触媒としての役割を確認した。
【0021】
次に、水素プラズマ中処理の有効性を証明する実施例を示す。
Si基板上にFe薄膜を形成した後、水素プラズマ中処理を行わずに、メタノール中で実施例1と同様に合成した。
図7は、水素プラズマ中処理を行わずに合成した場合のカーボンナノチューブのSEM像を示す図である。
図から明らかなように、Feを堆積後、水素プラズマ中処理無しにカーボンナノチューブの合成をした場合には、合成されたカーボンナノチューブの配列が不規則になり、また、直径がより広い範囲に分布するようになった。全てのカーボンナノチューブが基板上に様々な曲がり方をして横たわり、それらのいくつかは互いにくっついて梁のようになった。
このことから、水素プラズマ中処理が、Si基板に垂直に成長し、かつ均一の系を有するカーボンナノチューブを合成するために有効であることがわかる。
【0022】
メタノールとエタノールはもっとも一般的な有機液体の内の二つである。これらは、それぞれ、64.96℃と78.5℃の沸点を持つ無色な液体である。
これらの空気との混合体は爆発し、またほとんど無色の炎で燃える。しかしながら、高温基板が有機液体中に沈められており、高温基板が大気と接することがなければ、有機液体は安全である。本発明者らの設計したこのシステムは、気相の凝縮と、冷却水を使用することにより、槽の温度を有機液体の沸騰温度よりも低く押さえることにより、安全性を確実なものにしている。
【0023】
この実施例においては、メタノールとエタノールについてのみ示したが、これにとどまらず、他の有機液体を用いれば、様々な種類のカーボンナノチューブ及びカーボン以外の元素を構成元素とするカーボンナノチューブを作り出すことができることは明らかである。
【0024】
本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法は、いくつかの重要な特徴を有している。
第1に、カーボンナノチューブは非熱平行条件における触媒反応によって形成されており、また、カーボンナノチューブの成長端は、有機液体中で温度が制御できる基板表面のカーボンナノチューブの根元であることである。
第2に、液体が基板を囲んでいるために、カーボンナノチューブの根元である基板表面の垂直方向に大きな温度勾配が生じ、この大きな温度勾配が、基板表面に垂直方向にカーボンナノチューブを成長させる重要な原動力となっていると考えられることである。
第3に、本発明の合成方法は非常に簡単であり、大面積に亘って高配向整列配列したカーボンナノチューブが得られるのみならず、液体源に他の元素を導入し、他の元素がドープされたナノチューブを合成することも可能なことである。また、本発明のカーボンナノチューブは中空であり、毛管現象を利用して物質を満たすことができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成方法によれば、高配向に整列したカーボンナノチューブを低コストで大量に合成することができる。
また、本発明の合成方法は、現在の種々のSiテクノロジーに適合するものであり、従って、工業的に大量生産をすることができる。
また、本発明の合成方法は、真空を必要とせず、ガスを必要としない方法であるので工業生産向きであり、また、様々な種類のナノチューブ及びナノチューブ層を合成するための基礎技術になり、特に、中空ナノチューブ及びドープしたナノチューブを作るうえで極めて重要な技術である。
また、本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成装置によれば、大量、低コスト、かつ安全にカーボンナノチューブを合成できる。
さらに、本発明による高配向整列カーボンナノチューブは、高密度に高配向整列配列したカーボンナノチューブ束として合成でき、カーボンナノチューブを必要とする各種製品に使用する場合、極めて使用しやすいなど、種々の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機液体による高配向整列カーボンナノチューブの合成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の有機液体を用いたカーボンナノチューブの合成におけるカーボンナノチューブの成長メカニズムを示す図である。
【図3】合成したカーボンナノチューブのSEM(Scanning Electron Microscope)像を示す図である。
【図4】合成したカーボンナノチューブの高分解能透過電子線顕微鏡(HRTEM)像を示す図である。
【図5】合成したカーボンナノチューブの高分解能透過電子顕微鏡像を示す他の図である。
【図6】エタノール中のSi基板上に成長したカーボンナノチューブのHRTEM像を示す図である。
【図7】水素プラズマ中処理を行わずに合成した場合のカーボンナノチューブのSEM像を示す図である。
【符号の説明】
1 液体槽
2 水冷手段
3 基板
4 電極
5 基板ホルダー
6 水冷管
7 凝縮手段
8 バルブ
9 蓋
10 有機液体
11 冷却水
21 Cn m
22 Fe液体微粒子
23 カーボンナノチューブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6