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明細書 :汚泥処理装置および汚泥浄化処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3683518号 (P3683518)
公開番号 特開2003-047996 (P2003-047996A)
登録日 平成17年6月3日(2005.6.3)
発行日 平成17年8月17日(2005.8.17)
公開日 平成15年2月18日(2003.2.18)
発明の名称または考案の名称 汚泥処理装置および汚泥浄化処理方法
国際特許分類 C02F 11/04      
A01K 63/04      
FI C02F 11/04 ZABA
A01K 63/04 Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 15
出願番号 特願2001-237346 (P2001-237346)
出願日 平成13年8月6日(2001.8.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年6月 発行の「Applied Microbiology and Biotechnology」に発表
審査請求日 平成15年8月13日(2003.8.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】西尾 尚道
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】富永 正史
参考文献・文献 特開平02-002900(JP,A)
特開平02-251298(JP,A)
特開平09-323098(JP,A)
特開2000-153292(JP,A)
調査した分野 C02F 11/00-11/20
特許請求の範囲 【請求項1】
海水または淡水中の汚泥を浄化処理するための装置であって、
少なくとも海底の汚泥を含有する汚泥を充填し、ビタミン類を添加して海水または淡水中の汚泥の分解反応を行うための第1反応槽と、
該汚泥に酸素非含有気体を通気するための通気管と、
該汚泥の上澄み液であって、汚泥の分解反応により生成する有機酸を含有する上澄み液を抜き取るための送液手段と、
該上澄み液を供給し、有機酸の分解反応を行うための反応槽であって、有機酸分解能を有する微生物を含有する第2反応槽と、
有機酸の分解により発生した気体を第2反応槽から除去する手段と、
有機酸を分解した後の排出液を放出する手段
を有することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
海底の汚泥は、牡蠣養殖場の底面から採取される汚泥である請求項1の汚泥処理装置。
【請求項3】
第2反応槽において発生した気体の少なくとも一部を酸素非含有気体として第1反応槽に循環させる手段を有する請求項1または2のいずれかの汚泥処理装置。
【請求項4】
第2反応槽において発生した排出液の少なくとも一部をビタミン類含有液として第1反応槽に循環させる手段を有する請求項1ないし3のいずれかの汚泥処理装置。
【請求項5】
反応槽は、恒温手段を有する請求項1ないし4のいずれかの汚泥処理装置。
【請求項6】
第2反応槽から放出される排出液を、酸化処理する手段を有する請求項1ないし5のいずれかの汚泥処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの汚泥処理装置を用いて海水または淡水底面の汚泥を浄化処理する方法であって、第1反応槽に少なくとも海底の汚泥を含有する汚泥を充填した後、通気管から酸素非含有気体を通気し、ビタミン類を添加し、汚泥の分解反応により生成した有機酸を含む上澄み液を第2反応槽に送液して、さらに第2反応槽中でメタン発酵菌と接触させ、有機酸を分解してメタン/二酸化炭素混合気体と排出液に変換することを特徴とする汚泥浄化処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかの汚泥処理装置を用いて海水または淡水底面の汚泥を浄化処理する方法で、第1反応槽に少なくとも海底の汚泥を含有する汚泥を充填した後、通気管から酸素非含有気体を通気し、ビタミン類を添加し、汚泥の分解反応により生成した有機酸を含む上澄み液を第2反応槽に送液して、さらに第2反応槽中で光合成菌と接触させ、有機酸を分解して気体と有価物を含有する排出液に変換することを特徴とする汚泥浄化処理方法。
【請求項9】
海底の汚泥は、牡蠣養殖場底面から採取される汚泥である請求項7または8のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項10】
有機酸の分解により生成した気体と排出液を第1反応槽に循環させ、一連の操作を繰り返す請求項7ないし9のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項11】
第1反応槽は20~40℃に恒温する請求項7ないし10のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項12】
第1反応槽におけるpHは6~8とする請求項7ないし11のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項13】
ビタミン類は、水溶性ビタミン類から選択される2種以上のビタミンである請求項7ないし12のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項14】
ビタミン類は、汚泥量に対して1mL/L以上添加する請求項7ないし13のいずれかの汚泥浄化処理方法。
【請求項15】
排出液は、酸化処理した後、系外に放出される請求項7ないし14の汚泥浄化処理方法。
【請求項16】
第1反応槽の反応速度と第2反応槽の反応速度は、次の式(I):
1×L1 ≦ k2×L2 (I)
(ただし、k1は第1反応槽における有機酸生成速度(mmol/L・h)、L1は第1反応槽における液(汚泥)容量(L)、k2は第2反応槽における有機酸分解速度(mmol/L・h)、L2は第2反応槽における液(汚泥)容量(L)を示す)
で表される関係を有する請求項7ないし15の汚泥浄化処理方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、海洋、湖沼、河川等の底面に堆積する汚泥を浄化処理するための処理装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、汚泥、とくに海底に体積した汚泥を含有する混合汚泥を分解し、海砂や川砂を海底あるいは川底に戻すことを可能とする工業的価値の高い汚泥処理装置とそれを用いた汚泥の浄化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、大きな社会問題となっている海洋汚染では、その発生源として、有害化学物質、油類、放射性物質、廃棄物の投棄、富栄養価物などが知られている。
【0003】
中でも富栄養価物による汚染は、水中植物の栄養源として知られる有機物、窒素、リンなどが、工場や家庭あるいは農地から多量に排出されることによるものである。これらの栄養源は、通常、海洋や湖沼には適量しか存在しない。したがって、これらが多量に流出されると、水中の植物プランクトンや水中植物が急増し、赤潮、青潮が発生するのである。そしてプランクトンや水中植物の死骸で水中の溶存酸素が減少し、大量の魚介類が酸欠死し、水質汚濁、悪臭発生などが起こる。つまり、栄養源であるこれらの物質も、多量に排出されれば、海洋汚染の原因となるのである。
【0004】
特に牡蠣を初めとする魚貝類の養殖場の多くは、都市周辺の沿岸部に存在するため、このような有機物やリン等を含む富栄養化物による被害が深刻なものとなっている。牡蠣養殖場の海底には、富栄養化物を含む汚泥が2~3メートルにも堆積しており、赤潮の発生により、養殖牡蠣が斃死する自体が頻繁に起こっているのである。
【0005】
このような事態を解決するために、汚泥をオゾンガスで酸化分解する方法や、汚泥を仮焼し、多孔質セラミックスとして回収しようとする試みがなされている。しかし、いずれも処理コストが高く、経済的に成立しないため、これまで実用化には至っていないのが実情である。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、海水および淡水底面の汚泥を、環境に負荷をかけることなく、簡便かつ高効率に、工業的規模で処理するための浄化処理装置を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、これまで、汚泥を生物学的手法により分解し、清浄化した海砂を海底に戻す方法と、有機物を分解して得られた可燃性ガスをエネルギー源として利用するとともに、分解に利用されたバクテリア中に蓄積するリンやビタミン類を回収する方法について研究を行ってきた(Kenji Takeno et.al., Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol.88, No.4, 410-415 (1999))。そして、汚泥中に存在する嫌気性バクテリアを活性化させることにより、汚泥中の有機物を酢酸等の有機酸に分解させ、生成したこれらの有機酸をさらに光合成バクテリア(Rhodobacter sphaeroides IL106)やメタン発酵菌により分解させれば、可燃性気体を得ることができることを明らかにしている。また、発明者らは、とくに牡蠣養殖場底面を始めとする海底の汚泥中に存在するバクテリアが有機物の分解により酢酸のみを生成すること、バクテリアによる汚泥の分解がビタミン類を共存させることにより進行すること等を明らかにした。
【0008】
発明者らは、さらに、淡水性の前記光合成バクテリアやメタン発酵菌を海水中で好適に作用させるべく鋭意研究を進めた結果、前記バクテリアが海水中のNaClの影響を受けず、CODMn、NO3--NおよびPO43-の除去をも行うことを明らかにした。また、Rhodobacter sphaeroides IL106の同化を助け、増殖速度を高めるために、NH4+-Nとして(NH42SO4を添加することが効果的であることも、発明者らによって明らかにされた。
【0009】
発明者らは、以上のような汚泥の分解反応に関する知見を元に、さらなる鋭意研究を進めた結果、牡蠣養殖場の汚泥を他の領域から採取した汚泥と混合して用いても同様の機構で汚泥の分解処理が行えることを見出し、処理条件の最適化を行って、工業的価値の高い汚泥処理装置としての本願発明に至ったのである。
【0010】
すなわち、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、少なくとも海底の汚泥を含有する汚泥を充填し、ビタミン類を添加して海水または淡水中の汚泥の分解反応を行うための第1反応槽と、該汚泥に酸素非含有気体を通気するための通気管と、該汚泥の上澄み液であって、汚泥の分解反応により生成する有機酸を含有する上澄み液を抜き取るための送液手段と、該上澄み液を供給し、有機酸の分解反応を行うための反応槽であって、有機酸分解能を有する微生物を含有する第2反応槽と、有機酸の分解により発生した気体を第2反応槽から除去する手段と、有機酸を分解した後の排出液を放出する手段を有することを特徴とする汚泥処理装置を提供する。
【0011】
第2には、この出願の発明は、海底汚泥が牡蠣養殖場底面から採取される汚泥である前記の汚泥処理装置を提供する。
【0012】
この出願の発明は、第3には、第2反応槽で発生した気体の少なくとも一部を酸素非含有気体として第1反応槽に循環させる手段を有すること、第4には、第2反応槽において発生した排出液の少なくとも一部をビタミン類含有液として第1反応槽に循環させる手段を有することを前記の汚泥処理装置の態様として提供する。
【0013】
さらに、この出願の発明は、第5には、反応槽が恒温手段を有する汚泥処理装置を、第6には、第2反応槽から放出される排出液を酸化処理する手段を有する汚泥処理装置を提供する。
【0014】
この出願の発明は、第7には、いずれかの汚泥処理装置を用いて海水または淡水底面の汚泥を浄化処理する方法であって、第1反応槽に少なくとも第1反応槽に少なくとも海底汚泥を含有する汚泥を充填した後、通気管から酸素非含有気体を通気し、ビタミン類を添加し、汚泥の分解反応により生成した有機酸を含む上澄み液を第2反応槽に送液して、さらに第2反応槽中でメタン発酵菌と接触させ、有機酸を分解してメタン/二酸化炭素混合気体と排出液に変換することを特徴とする汚泥浄化処理方法をも提供する。
【0015】
また、この出願の発明は、第8には、前記のいずれかの汚泥処理装置を用いて海水または淡水底面の汚泥を処理する方法であって、第1反応槽に少なくとも海底汚泥を含有する汚泥を充填した後、通気管から酸素非含有気体を通気し、ビタミン類を添加し、汚泥の分解反応により生成した有機酸を含む上澄み液を第2反応槽に送液して、さらに第2反応槽中で光合成菌と接触させ、有機酸を分解して気体と有価物を含有する排出液に変換することを特徴とする汚泥浄化処理方法を提供する。
【0016】
この出願の発明は、第9には、海底汚泥は、牡蠣養殖場底面から採取される汚泥である前記の汚泥浄化処理方法を提供する。
【0017】
第10には、この出願の発明は、有機酸の分解により生成した気体と排出液を第1反応槽に循環させ、一連の操作を繰り返す前記いずれかの汚泥浄化処理方法を提供する。
【0018】
この出願の発明は、さらに、第11には、第1反応槽を20~40℃に恒温する前記のいずれかの汚泥浄化処理方法を、第12には、反応槽におけるpHは6~8とする前記のいずれかの汚泥浄化処理方法を、第13には、ビタミン類は、水溶性ビタミン類から選択される2種以上のビタミンである前記のいずれかの汚泥浄化処理方法を、そして、第14には、ビタミン類は、汚泥量に対して1mL/L以上添加する前記のいずれかの汚泥浄化処理方法を提供する。
【0019】
この出願の発明は、さらに、第15には、排出液を酸化処理した後、系外に放出する前記の汚泥浄化処理方法を提供する。
【0020】
そして、この出願の発明は、第16には、第1反応槽の反応速度と第2反応槽の反応速度が、次の式(I):
1×L1 ≦ k2×L2 (I)
(ただし、k1は第1反応槽における有機酸生成速度(mmol/L・h)、L1は第1反応槽における液(汚泥)容量(L)、k2は第2反応槽における有機酸分解速度(mmol/L・h)、L2は第2反応槽における液(汚泥)容量(L)を示す)で表される関係を有する前記いずれかの汚泥浄化処理方法をも提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の汚泥処理装置において、その構成は、図1に例示されるとおりである。すなわち、この出願の発明の汚泥処理装置は、海水または淡水底面の汚泥を浄化処理するための装置であり、少なくとも、
a.海底汚泥を含有する汚泥(11)を充填し、ビタミン類を添加して分解反応を行うための第1反応槽(1)
b.該汚泥(11)に酸素非含有気体を通気するための通気管(3)と、
c.該汚泥(11)の上澄み液(12)であって、汚泥(11)の分解反応により生成する有機酸を含有する上澄み液(12)を抜き取るための送液手段(4)と、
d.該上澄み液(12)を供給し、有機酸の分解反応を行うための反応槽であって、有機酸分解能を有する有機酸分解微生物(21)を含有する第2反応槽(2)と、
e.有機酸の変換により発生した気体を第2反応槽(2)から除去する手段(52)と、
f.有機酸を変換した後の排出液(22)を放出する手段(6)
を有するものである。
【0022】
この出願の発明の汚泥処理装置では、まず、第1反応槽(1)に汚泥供給管(7)等から汚泥(11)を供給する。この汚泥(11)に、ビタミン類供給管(8)からビタミン類を添加し、通気管(3)から酸素非含有気体を通気しながら恒温器(91)により加温することにより、汚泥(11)中のバクテリアが活性化され、汚泥(11)中の有機物の嫌気性分解が起こる。
【0023】
このとき、第1反応槽(1)内の温度は、20~40℃とすることが好ましい。とくに、30~40℃では、前記の嫌気性分解の反応速度が上昇し、好ましい。また、添加するビタミン類は、チアミン、ニコチン酸、ビオチン、リボフラビン等の水溶性ビタミン類から選択される2種以上、より好ましくは、3種以上とする。このとき、添加されるビタミン類の添加量は、汚泥(11)の量に対して1mL/L以上とすることが好ましい。ビタミン類の添加量が1mL/L未満の場合には、汚泥(11)のバクテリアによる嫌気性分解は進行しない。さらに、第1反応槽(1)中の汚泥(11)のpHは、6~8とすることが好ましい。とくにpH7~8では、嫌気性分解の反応速度が上昇し、好ましい。第1反応槽(1)は、さらに、通気された酸素非含有気体を排気するための排気管(51)を有する。
【0024】
以上のとおりの汚泥の嫌気性分解により有機酸を生成する汚泥(11)中のバクテリアとしては、酢酸生成菌(Acetobacterium woodii、 Eubacterium limosumなど)や蟻酸生成菌(Oxalobacter formigenes、Bacteroides sp.、Escherichia、Klebsiella、Enterobacter等)が挙げられる。発明者らの鋭意研究によれば、牡蠣養殖場底面を始めとする海底から採取される汚泥中には、酢酸のみを生成するバクテリアが存在することが確認されている(Kenji Takeno et.al., Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol.88, No.4, 410-415 (1999))。また、牡蠣養殖場底面の汚泥単独、他の海域の汚泥単独、あるいは複数の異なる海域から採取された汚泥を任意に混合したものでも、効率よく汚泥全体が浄化処理される。したがって、本願発明の汚泥処理装置における第1反応槽(1)において、この汚泥(11)は、牡蠣養殖場から採取された汚泥を始めとする海底汚泥を含んでいればよく、牡蠣養殖場等の海域から採取された汚泥単独であっても、複数の海水あるいは淡水領域中から採取された汚泥に海底から採取された汚泥を混合した混合汚泥であってもよい。そして、第1反応槽(1)では、汚泥(11)が分解され、酢酸が生成し、汚泥(11)の上澄み液(12)中に混在することとなる。
【0025】
この出願の発明の汚泥処理装置では、次に、汚泥(11)の嫌気性分解反応により生成した酢酸を含有する上澄み液(12)を、送液手段(4)により第2反応槽(2)に供給する。このような送液手段(4)としては、ポンプ等を用いてもよいが、そのような装置を用いなくても、第1反応槽(1)と第2反応槽(2)の液面高さの差による水頭差を利用し、図1に示されるような送液管(4)とすればよい。
【0026】
上澄み液が供給される第2反応槽(2)には、酢酸を分解する酢酸分解性菌(21)を充填しておく。このような酢酸分解性菌(21)としては、メタン発酵菌や光合成菌が知られている。メタン発酵菌は、有機酸をメタンと二酸化炭素に分解する。また、光合成菌は、光の存在下でリンや窒素を吸収しながらカロチノイド、ビタミンB12、ユビキノン等を生成、蓄積する。このような光合成菌としては、Rhodobacter sphaeroides IL106が好ましく例示されるが、もちろんこれに限定されず、様々な公知あるいは未知の光合成菌を適用できる。酢酸分解性菌(21)として光合成菌を用いる場合には、第2反応槽(2)は、処理液(22)に光を照射することが必要となるため、光透過性のものとすることが好ましい。また、第2反応槽(2)内に光を照射するための光源(10)を設置してもよい。さらに、これらの微生物は、溶液、粉末、顆粒等の各種の形態であってよい。例えば、微生物を多孔質担体に担持したもの等が好適に用いられる。
【0027】
第2反応槽(2)における酢酸の分解反応により生成した気体は、排気管(52)から系外へ除去できる。このような気体は、主にメタンおよび二酸化炭素からなる混合ガスであり、天然ガスと同様の組成(メタン/CO2=80/20)を有するものであることから、燃料として使用できる。したがって、気体は、排気管(52)からそのまま周辺環境に放出せずに、周辺の工場、焼却施設等へ搬送し、利用することが好ましい。また、光合成菌を用いて酢酸の分解を行った場合に生成されるカロチノイド、ビタミンB12、ユビキノン等は、回収し、養殖魚等の餌として利用することができる。すなわち、この出願の発明の汚泥処理装置は、リサイクル、省エネルギー、コスト削減等の観点からも工業的利用価値が高いといえる。
【0028】
さらに、酢酸が分解された排出液(22)は、放流経路(6)から系外に放出されてもよいが、化学的酸素要求量(COD)が環境基準よりも高い場合には、酸化処理することによりCODを除去し、湖沼、河川、海洋等のもとの環境に戻すことができる。
【0029】
以上のとおりのこの出願の発明の汚泥処理装置においては、第2反応槽(2)から第1反応槽(1)の通気管(3)と接続された循環経路(61)を設置し、第2反応槽(2)で発生した気体の少なくとも一部を酸素非含有気体として第1反応槽(1)に循環させてもよい。このような循環経路(61)を設置することにより、第2反応槽(2)で発生したメタンや二酸化炭素等のガスを再利用でき、汚泥処理のコスト削減につながる。また、このような循環経路(61)により、排出液(22)をも第1反応槽(2)に戻せば、添加されるビタミン類の再利用が可能となり、ビタミン類の総添加量を削減でき、コスト上昇を抑えることが可能となる。
【0030】
この出願の発明では、以上のとおりの汚泥処理装置を用いて海水あるいは淡水底面の汚泥を浄化処理する方法をも提供する。具体的な浄化処理方法は上述のとおりである。とくに、第1反応槽(1)と第2反応槽(2)における各反応速度について、次の(I)式
1×L1 ≦ k2×L2 (I)
(ただし、k1は第1反応槽における酢酸生成速度(mmol/L・h)、L1は第1反応槽における液(汚泥)容量(L)、k2は第2反応槽における酢酸分解速度(mmol/L・h)、L2は第2反応槽における液容量(L)を示す)
で表される関係が成立するとき、この出願の発明の汚泥処理装置を用いた汚泥の浄化処理がスムーズに進行する。そして、このような条件を制御することにより、この出願の発明の汚泥処理装置をシステムとして自動化することも可能となるのである。
【0031】
すなわち、式(I)は、直列に接続された第1反応槽(1)と第2反応槽(2)について、第2反応槽(2)では、第1反応槽(1)で生成される酢酸を十分に分解させるだけの反応条件が必要となることを示す式である。具体的に、この式に則って汚泥処理装置の制御を行うためには、例えば第2反応槽(2)から放出されるガス量をガス流量計(53)等によりモニターすることができる。第2反応槽(2)から放出されるガス量は、酢酸分解量、すなわちk2×L2に比例する(ただし、k2およびL2は前記のとおりである)ことから、この値を第1反応槽における酢酸生成量k1×L1と比較し、前記の関係式が成立するように、循環経路(61)の循環ポンプ(62)の吐出量やバルブ(63)を調整して液循環量を制御すればよい。また、放出ガス量が分かれば、第1反応槽(1)に供給する汚泥量(L1)と第2反応槽(2)に供給する液量(L2)から各k1およびk2を求めることができる。そして、この出願の発明の汚泥処理装置の運転において、これらの反応速度の絶対値が小さい場合には、前記式(I)の関係を維持しながら、第1反応槽(1)における反応速度k1に影響を及ぼす因子(温度、pH,ビタミン添加量)や第2反応槽(2)における反応速度k2に影響を及ぼす因子(温度、pH、光照射量、添加バクテリア量)を調整すればよい。
【0032】
したがって、この出願の発明の汚泥浄化処理方法では、各配管に流量計や自動弁を設けたり、反応槽に温度計、pH計等を設けたりすることにより、前記の汚泥処理装置をシステム化し、自動運転することも可能となる。このようなシステムの具体例は、後述の実施例において述べる。
【0033】
以上のとおりのこの出願の発明の汚泥処理装置および汚泥処理方法では、汚泥は浄化処理され、海砂と水(淡水あるいは海水)となる。浄化された海砂は、第1反応槽の浄化海砂放流経路(13)から放出すればよく、浄化された水は、放流弁(64)を開放して放流すればよい。すなわち、このような汚泥処理装置を用いることにより、低コストで簡便、かつ環境負荷の極めて小さい方法で汚泥を浄化することが可能となる。
【0034】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0035】
【実施例】
<実施例1>
この出願の発明の汚泥処理装置に各種制御システムを設け、自動運転を行った。汚泥処理システムの概略を図2に示した。
【0036】
この例では、第1反応槽(1)は、汚泥(11)の温度を制御するための恒温器(91)と液面計(101)を有する。この第1反応槽(1)の上澄み液(12)を送液するための送液管(4)には、液流量計(41)が設置されており、送液流量を計測できる。また、生成酢酸量を酢酸濃度計(42)により測定し、これらの値から第1反応槽(1)において単位時間あたりに生成した酢酸の総量、すなわち前記式(I)におけるk1×L1をk11算出器(104)で計算することができるのである。一方、液面計(101)の値から液面算出器(102)によりL1が求められ、先に得られたk1×L1からk1を算出することができる。
【0037】
第2反応槽(2)には、同様に液温度を制御するための恒温器(92)と液面計(201)が設置されており、第2反応槽(2)から単位時間あたりに発生する全ガス量をガス流量計(53)より求めることができる。この全ガス量は、酢酸分解量k2×L2に相当することから、k22算出器(204)が構成される。さらに、第1反応槽の場合と同様に、液面計(201)の値から液面算出器(202)によりL2が求められ、先に得られたk2×L2からk2を算出することができる。
【0038】
得られたこれらk1×L1およびk2×L2の値を比較器(207)で比較し、その出力に応じて第2反応槽(2)から第1反応槽(1)への排出液(22)の循環量を制御するべく、循環ポンプ(62)の回転数や自動弁(63)の開度を変化させた。具体的には、k1×L1+ε=k2×L2(ただし、εは、制御対象に応じて選択される微少量)の場合には、安定運転が維持され、k1×L1+ε<k2×L2の場合には、液循環量を増加させて、第1反応槽(1)における酢酸生成量を増加させた。さらに、k1×L1+ε>k2×L2の場合には、液循環量を減少させて第1反応槽(1)における酢酸生成量を減少させた。
【0039】
以上のとおりにしてこの汚泥処理装置における安定運転が継続された。しかし、何らかの外乱により各反応槽における酢酸生成量または酢酸分解量が所定の目標値から大きくそれることも考えられるため、第1反応装置には、k1目標値設定器(105)に目標とするk1値を入力し、酢酸生成速度算出器(103)より得られたk1の値と比較器(106)で比較して、その値が小さい場合には、恒温器(91)の温度を上昇させるようにした。反対に、第2反応槽では、k2目標値設定器(205)に目標k2値を入力し、メタン生成速度算出器(203)より得られたk2と比較器(206)で比較して、その値が小さい場合には、恒温装置(92)の温度を上昇させるようにした。
【0040】
さらに、酢酸濃度計(42)の替わりにpH計(42)を用いることを検討した。
【0041】
図2に示されるとおりの本願発明の汚泥処理システムにおける酢酸濃度とpHとの関係を測定し、結果を図3に示した。
【0042】
図3より、酢酸濃度と反応槽内のpHがほぼ直線的な関係にあることが示された。したがって、酢酸濃度測定を行うよりも、安価で信頼性の高いpH計を用いれば、より簡便に精度高く汚泥処理の自動運転が可能となることが示唆された。
<実施例2>
図1に示される汚泥処理装置(ただし、各反応槽(1、2)は等しい底面積(10cmφ)を有する)において、第1反応槽(1)の液面高さが20cmとなるように汚泥(11)を供給し、B1-HCl(1g/L)、ニコチン酸(1g/L)、およびビオチン(10mg/L)からなるビタミン溶液を汚泥に対して1mL/L添加し、二酸化炭素を供給した。まず、第1反応槽(1)の液を分析し、酢酸濃度を測定した。
【0043】
図4に第1反応槽(1)内のpHの変化を示した。
【0044】
図4より、ビタミン類の添加により酢酸の生成が開始することが確認された。
<実施例3>
次に、送液管(4)により第1反応槽(1)から光合成細菌Rhodobacter sphaeroides IL106を含有する第2反応槽(2)へ、第2反応槽(2)における液面高さが14cmとなるように上澄み液を供給し、酢酸の分解反応を行った。
【0045】
図5に第2反応槽(2)出口における酢酸濃度の変移を示した。
【0046】
図5より、酢酸濃度は、最初高い値を示しているが、徐々に低下し、反応開始から6日後にはほぼ0になることが示された。また、図5の酢酸分解の傾きより最大酢酸分解速度(k2)=14mmol/L・dが得られた。
<実施例4>
次に、顆粒状のメタン発酵菌を、次のとおりの方法で調製した:
海底から採取した汚泥200gを1Lの海水に懸濁し、ビタミン類溶液を3mL/L添加した後、この懸濁液400mLを720mLのバイアルビンに入れ、37℃で30日間嫌気的に馴養した。この汚泥を第2反応槽(2)の体積の30%(V/V)となるように充填した。次にビタミン類溶液1mL/Lを添加した200g汚泥/Lの懸濁液で4~5日嫌気培養し、酢酸を生成させ、遠心分離で上澄み液を得た後、海水で酢酸濃度が40mMとなるように希釈し、これを第1反応槽(1)に充填した。この液を37℃で希釈率0.8d-1として第2反応槽(2)へ連続的に通液し、第2反応槽(2)中に顆粒状のメタン発酵菌を得た。
【0047】
実施例3と同様の操作を、光合成菌の替わりにこの顆粒状のメタン発酵菌を充填して行った。
【0048】
顆粒状メタン発酵菌を含有する第2反応槽(2)において発生したガスおよび排出液(22)を循環経路(61)により第1反応槽(1)に戻し、汚泥処理装置の連続運転を行った。
【0049】
第2反応槽(2)内の液を2日毎に分析し、希釈率、pH、酢酸濃度、メタン生成速度をそれぞれ測定した。
【0050】
図6にこれらの経時変化を示した。
【0051】
図6より、第2反応槽における酢酸分解速度(k2)を、消費酢酸量に希釈率をかけて計算したところ、最大酢酸分解速度(k2)=60~70mmol/L・dであることが明らかになった。
<実施例5>
図1に示した汚泥処理装置(ただし、各反応槽(1、2)は等しい底面積(10cmφ)を有する)において、第1反応槽(1)の液面高さを20cm以下に保持し、第2反応槽(2)の液面高さを14cm以上に保持しながら第1反応槽から第2反応槽への上澄み液(12)の供給量を変化させた。このとき、第2反応槽(2)から第1反応槽への循環量は、第1反応槽における嫌気性ガスの攪拌効果や反応時間を考慮して、1時間あたりの循環量が第2反応槽の容量のほぼ1/100となるように、4.4×10-2L/hとした。
【0052】
第2反応槽出口における酢酸濃度は、ほぼ0となることが確認されたことから、この出願の発明の汚泥処理装置では、汚泥中の有機物をほぼ完全に分解できることが確認された。
<実施例6>
図1に示す汚泥処理装置を用いて、汚泥処理を行ったとき、反応速度(k1)に及ぼす温度、pH、およびビタミン添加量の影響を測定した。
【0053】
表1に結果を示した。
【0054】
【表1】
JP0003683518B2_000002t.gif
【0055】
表より、同一のpHおよびビタミン添加量では、温度30~37℃の範囲でとくに反応速度が高いことが示された。
【0056】
また、同一の温度およびビタミン添加量では、pH7でとくに高い反応速度が得られることが示された。
【0057】
さらに、同一の温度およびpHでは、ビタミンの添加量を汚泥量に対して1ml/L以上とするとき、とくに反応速度が高いことが示された。
<実施例7>
実施例6と同様に汚泥処理装置の運転を行い、ビタミン添加量の変化による第1反応槽(1)のpHおよび酢酸濃度変化を測定した。
【0058】
図7に結果を示した。
【0059】
図より、汚泥に対して1ml/L以上のビタミンを添加することにより、酢酸生成(すなわち汚泥の分解)反応が進むことが確認された。
【0060】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、低コストで簡便、かつ環境負荷の極めて小さい方法で汚泥を浄化することが可能となる汚泥処理装置が提供される。このような汚泥処理装置を用いた海水あるいは淡水底面の汚泥の浄化処理方法では、汚泥を分解することにより、燃料となりうるガスや養殖魚の飼料となりうる有価物等が得られることから、リサイクル、省エネルギー、コスト削減等の観点からも工業的利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の汚泥処理装置の構成を例示した概略模式図である。
【図2】この発明の汚泥処理装置およびその制御システムを例示した概略模式図である。
【図3】この発明の汚泥処理装置の一例における酢酸濃度とpHとの関係を示す図である。
【図4】この発明の実施例において、第1反応槽(1)内のpHの経時変化を示した図である。(A:ビタミン類未添加、B:ビタミン類添加)
【図5】この発明の実施例において、光合成細菌を含有する第2反応槽(2)へ、第1反応槽(1)からの酢酸含有上澄み液を供給した際の出口における酢酸濃度の経時変化を示した図である。
【図6】この発明の実施例において、顆粒状メタン発酵菌を含有する第2反応槽(2)において発生したガスおよび排出液(22)を第1反応槽(1)に戻し、汚泥処理装置の連続運転を行った際の第2反応槽(2)内の液の希釈率、pH、酢酸濃度、メタン生成速度の経時変化を示した図である。(◆:供給液、黒四角:排出液)
【図7】この発明の実施例において、ビタミン添加量の変化による第1反応槽(1)のpHおよび酢酸濃度変化を示した図である。
【符号の説明】
1 第1反応槽
11 汚泥
12 上澄み液
13 浄化海砂放流経路
2 第2反応槽
21 有機酸分解微生物、酢酸分解菌(メタン発酵菌、光合成菌)
22 処理液、排出液
3 通気管
4 送液手段、送液管
5 排気管
51 排気管(第1反応槽)
52 排気管(第2反応槽)
53 ガス流量計
6 放流経路
61 循環経路
62 循環ポンプ
63 バルブ、自動弁
64 放流弁
7 汚泥供給管
8 ビタミン類供給管
9 反応槽恒温器
91 恒温器(第1反応槽)
92 恒温器(第2反応槽)
10 光源
41 液流量計
42 酢酸濃度計、pH計
101 液面計(第1反応槽)
102 液面算出器(第1反応槽)
103 酢酸生成速度算出器
104 k11算出器
105 k1目標値設定器、pH目標値設定器
106 比較器
201 液面計(第2反応槽)
202 液面算出器(第2反応槽)
203 メタン生成速度算出器
204 k22算出器
205 k2目標値設定器、pH目標値設定器
206 比較器
207 比較器
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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