TOP > 国内特許検索 > 導電性プラスチック、それによる導電回路及びその導電回路の形成方法 > 明細書

明細書 :導電性プラスチック、それによる導電回路及びその導電回路の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3810505号 (P3810505)
公開番号 特開平10-237331 (P1998-237331A)
登録日 平成18年6月2日(2006.6.2)
発行日 平成18年8月16日(2006.8.16)
公開日 平成10年9月8日(1998.9.8)
発明の名称または考案の名称 導電性プラスチック、それによる導電回路及びその導電回路の形成方法
国際特許分類 C08L 101/12        (2006.01)
C08K   3/08        (2006.01)
C08K   7/04        (2006.01)
C08J   3/20        (2006.01)
H01B   1/22        (2006.01)
FI C08L 101/12
C08K 3/08
C08K 7/04
C08J 3/20 Z
H01B 1/22 A
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願平09-045145 (P1997-045145)
出願日 平成9年2月28日(1997.2.28)
審査請求日 平成12年4月20日(2000.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中川 威雄
【氏名】野口 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】藤本 保
参考文献・文献 特開平09-241420(JP,A)
調査した分野 C08L1/00-101/16
C08K3/00-13/08
C08J3/20
H01B1/22
特許請求の範囲 【請求項1】
射出成形機による導電性材料の形成に適したペレット形状の、導電性樹脂組成物よりなる導電性プラスチックにおいて、
(a)熱可塑化温度を有する熱可塑性樹脂と、
(b)前記熱可塑化温度より低い融点を有し、前記熱可塑性樹脂の可塑化時に半溶融状態を形成する粉末状の鉛フリーハンダと、
(c)該鉛フリーハンダの粉末を前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末または金属粉末と金属短繊維との混合物とからなり、
前記熱可塑性樹脂が熱可塑化し前記ハンダが半溶融状態となる温度で、前記(a),(b)及び(c)の混合物を混練し、前記ハンダの隣接する粉末間にハンダ付けされた接続部を形成して、前記混練した混合物を造粒機を用いてペレット形状にしたことを特徴とする導電性プラスチック。
【請求項2】
請求項1記載の導電性プラスチックにおいて、前記粉末状の鉛フリーハンダは、Sn-Cu,Sn-Zn,Sn-Al及びSn-Agから選択された合金であり、前記金属粉末は銅、ニッケル、アルミニウム、クロム及びそれらの合金から選択された金属の粉末であることを特徴とする導電性プラスチック。
【請求項3】
請求項1記載の導電性プラスチックにおいて、前記鉛フリーハンダの粉末は熱可塑性樹脂全体に互いに接合された状態で分散していることを特徴とする導電性プラスチック。
【請求項4】
請求項1記載の導電性プラスチックにおいて、前記導電性樹脂組成物は、10-3Ω・cm以下の体積固有抵抗を有することを特徴とする導電性プラスチック。
【請求項5】
導電回路であって、請求項1記載の導電性樹脂組成物を射出することにより、絶縁物中に配線を形成することを特徴とする導電回路。
【請求項6】
請求項5記載の導電回路において、前記配線は搭載電気・電子部品との接続を形成することを特徴とする導電回路。
【請求項7】
請求項5記載の導電回路において、前記配線は電気・電子部品との接続を形成することを特徴とする導電回路。
【請求項8】
熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、該鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を射出成形し、絶縁物中に配線を形成することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、該鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を電気・電子部品間を離間している絶縁物に射出成形し、前記電気・電子部品間に配線を形成することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、該鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を基板上に射出成形し、搭載電気・電子部品への配線を形成することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項11】
(a)空間を有するフレームを成形する工程と、
(b)前記フレームの空間に熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、該鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を射出成形し、配線を形成する工程とを有することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項12】
請求項11記載の導電回路の形成方法において、前記フレームに予め電気・電子部品を実装することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項13】
請求項12記載の導電回路の形成方法において、前記電気・電子部品のリードに連通する空間を設け、該空間に配線を形成することを特徴とする導電回路の形成方法。
【請求項14】
請求項12記載の導電回路の形成方法において、前記複数の電気・電子部品のリードにそれぞれ連通する空間を設け、該空間に配線を形成することを特徴とする導電回路の形成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂と金属(鉛フリーハンダ)を金属の半溶融状態下で、または完全溶融状態下で溶融しない金属粉末を完全溶融状態の金属に添加することにより、疑似的に金属の半溶融状態を作り、この金属の半溶融状態下で樹脂との混練を行い、樹脂中に金属を細かく分散させ、また分散した金属を接続させて低抵抗の導電性樹脂組成物を製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高導電性プラスチックとして、樹脂中に金属繊維や金属繊維に低融点金属を混ぜて金属繊維の接触抵抗を下げて信頼性を向上させた導電性プラスチックは、電磁波シールドなどの用途として利用されている。
【0003】
しかし、これまでの導電性プラスチックは体積固有抵抗が10-3Ω・cm以上あり、抵抗が大きいため、通電を行った場合に発熱して、導電性プラスチックが溶けたり、抵抗が大きくなるため、通電用途には利用できなかった。
【0004】
また、体積固有抵抗を下げるために、繊維の混入量を多くすると、射出成形ができなくなるなど成形性が悪くなるといった問題を生じる。また、有害な鉛を含むハンダを使用した場合、廃棄物の環境問題が生じる。
【0005】
更に、他の技術として、MID(Molded Interconnect Device,射出成形回路部品)と称する方法がある。この方法は、樹脂を2回射出成形し、その一方にメッキがのりやすいように処理を施した樹脂を使用することにより、射出成形体をメッキすることで表面に金属膜を形成する技術である。
【0006】
しかし、この技術にはメッキ工程が必要であり、メッキにより導電回路を形成する必要から、樹脂の内部には回路が形成できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、導電性プラスチックの導電性を上げるためには、より多くの金属成分を樹脂中に混ぜなければならないが、繊維状の物を多く混入すると成形性が悪く、ノズルづまりが起こったり、細い形状に射出成形ができない。また、金属粉末を多量に入れて、金属同士の接触による接続を図り、導電性を得ようとする場合には、体積比率で60%以上混入する必要があり、この場合でも成形性が悪いばかりではなく、その導電性は低く、温度変化により、プラスチックと金属成分の熱膨張差があるため、高温になると樹脂の膨張に伴い、金属の接触箇所が減少し、その結果として導電性が劣化するといった問題が生じる。
【0008】
さらに、低融点金属である共晶ハンダを少量加えたものがあるが、共晶ハンダは鉛を含んでおり、その廃棄物は地球環境に対して悪影響を及ぼす。
【0009】
また、上記したMID法では、メッキ工程を必要とし、また樹脂自身に導電性がないため、樹脂の内部には導電回路を形成できない。
【0010】
本発明は、上記問題点を除去し、様々な環境下で、導電性の低下を起こすことがない、信頼性の高い鉛フリー超高導電性プラスチック、それによる導電回路及びその導電回路の形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
(1)射出成形機による導電性材料の形成に適したペレット形状の、導電性樹脂組成物よりなる導電性プラスチックにおいて、(a)熱可塑化温度を有する熱可塑性樹脂と、(b)前記熱可塑化温度より低い融点を有し、前記熱可塑性樹脂の可塑化時に半溶融状態を形成する粉末状の鉛フリーハンダと、(c)この鉛フリーハンダの粉末を前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末または金属粉末と金属短繊維との混合物とからなり、前記熱可塑性樹脂が熱可塑化し前記ハンダが半溶融状態となる温度で、前記(a),(b)及び(c)の混合物を混練し、前記ハンダの隣接する粉末間にハンダ付けされた接続部を形成して、前記混練した混合物を造粒機を用いてペレット形状にするようにしたものである。
【0012】
(2)上記(1)記載の導電性プラスチックにおいて、前記粉末状の鉛フリーハンダは、Sn-Cu,Sn-Zn,Sn-Al及びSn-Agから選択された合金であり、前記金属粉末は銅、ニッケル、アルミニウム、クロム及びそれらの合金から選択された金属の粉末である。
【0013】
(3)上記(1)記載の導電性プラスチックにおいて、前記鉛フリーハンダの粉末は熱可塑性樹脂全体に互いに接合された状態で分散するようにしたものである。
【0014】
(4)上記(1)記載の導電性プラスチックにおいて、前記導電性樹脂組成物は、10-3Ω・cm以下の体積固有抵抗を有するようにしたものである。
【0015】
(5)導電回路であって、上記(1)記載の導電性樹脂組成物を射出することにより、絶縁物中に配線を形成するようにしたものである。
【0016】
)上記(5)記載の導電回路において、前記配線は搭載電気・電子部品との接続を形成するようにしたものである。
【0017】
)上記(5)記載の導電回路において、前記配線は電気・電子部品との接続を形成するようにしたものである。
【0018】
)導電回路の形成方法において、熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、この鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を射出成形し、絶縁物中に配線を形成することを特徴とする。
【0019】
)導電回路の形成方法において、熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、この鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を電気・電子部品間を離間している絶縁物に射出成形し、前記電気・電子部品間に配線を形成するようにしたものである。
【0020】
10)導電回路の形成方法において、熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、この鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を基板上に射出成形し、搭載電気・電子部品への配線を形成するようにしたものである。
【0021】
11)導電回路の形成方法において、空間を有するフレームを成形する工程と、前記フレームの空間に熱可塑性樹脂と、可塑化時に溶融し得る鉛フリーハンダと、この鉛フリーハンダを前記熱可塑性樹脂中に細かく分散させることを補助する金属粉末又は金属粉末と金属短繊維の混合物を含む導電性樹脂組成物を射出成形し、配線を形成する工程とを有する。
【0022】
12)上記(11)記載の導電回路の形成方法において、前記フレームに予め電気・電子部品を実装するようにしたものである。
【0023】
13)上記(12)記載の導電回路の形成方法において、前記電気・電子部品のリードに連通する空間を設け、この空間に配線を形成するようにしたものである。
【0024】
14)上記(12)記載の導電回路の形成方法において、前記複数の電気・電子部品のリードにそれぞれ連通する空間を設け、この空間に配線を形成するようにしたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を詳細に説明する。
【0026】
本発明で用いる合成樹脂は特に制限されず、一般的に使用されてきたものが使用可能である。しかし、成形の容易さ及び他の要求物性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0027】
本発明で用いられる金属は、これを含む合成樹脂組成物が熱可塑化する際に、半溶融しうる鉛を含まない金属でなければならない。したがって、熱可塑性樹脂の熱可塑化温度が通常350℃以下であるので、これ以下の融点を持つ低融点金属が好適である。
【0028】
金属は金属単体でもよく、合金でもよい。また半溶融状態で混練するため、その形状も、特に制限されないが、粒状または、粉状のものが、分散させるためには取扱い易いので望ましい。
【0029】
上記金属の具体例を示すと、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)等及びそれらの合金をあげることができる。
【0030】
このうち、好ましい合金の例としては、Sn-Cu、Sn-Zn、Sn-Al、Sn-Ag等の低融点合金があげられる。
【0031】
ハンダの分散を補助する金属粉末としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)等及びそれらの合金粉末をあげることができる。また、金属粉末の粒径が細かい方が混練後のハンダの分散は細かくなるが、粒径を一定にする必要はなく、粒径の分布を持った金属粉末も使用できる。
【0032】
本発明において、金属成分の使用量は、導電性樹脂組成物全体の体積割合で、30~75%であり、好ましくは45~65%である。
【0033】
本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックは、樹脂と環境面からも鉛を含まない低融点合金(鉛フリーハンダ)を用い、これらを金属の半溶融状態で混練を行うことにより、金属成分である鉛フリーハンダを樹脂中に細かく分散させることができ、かつ半溶融状態で混練することで分散されているもの同士が、お互いに連続してつながっており、このつながりは単なる接触ではなく、ハンダの接合であり、金属の接触による導電性と異なるため、成形体が高温になっても接合が切れることなく、安定した低抵抗を示す。
【0034】
この材料を射出成形する場合は、金属成分の一部が半溶融のためと、鉛フリーハンダが細かく分散されているため、多量の金属成分を含んでいるにもかかわらず、細い形状に射出成形が可能であり、射出成形による工程のみで導電回路が形成できる。また、メッキを必要としないため、射出成形体の内部にも低抵抗の導電回路を形成することができる。
【0035】
本発明の導電性樹脂組成物を製造するには、一般的な樹脂用の混練機器や、押し出し機器を用いることができる。
【0036】
【実施例1】
ABS樹脂(東レ製、トヨラック441)45体積%に鉛フリーハンダ(福田金属箔粉工業製、Sn-Cu-Ni-AtW-150)40体積%と銅粉末(福田金属箔粉工業製、FCC-SP-77、平均粒径10μm)15体積%を軽く混ぜ合わせ、220℃に設定された混練機(森山製作所製、2軸加圧タイプ)に投入し、加熱保持時間なしで、回転数25~50rpmにて20分間混練し、熱可塑化せしめたハンダを、半溶融状態で樹脂中に分散させた。
【0037】
その混練体を、プランジャー押出造粒機(トーシン製、TP60-2型)にてダイス温度200~240℃にて造粒し、ペレットを作製した。
【0038】
このペレットを使用し、射出成形機(川口鉄鋼製、KS-10B)の設定温度230~280℃で金型(金型温度、常温~150℃)に射出成形を行った。
【0039】
得られた射出成形品は金属の分離は全く認められず、均一な表面をしていた。
【0040】
この射出成形品は、光学顕微鏡によるハンダの分散状況の観察では、ハンダは樹脂中に約5μmの大きさで均一に分散していた。この試料の体積固有抵抗は、10-5Ω・cmオーダーを示した。
【0041】
【実施例2】
PBT樹脂(ポリプラスチック製)45体積%に鉛フリーハンダ(福田金属箔粉工業製、Sn-Cu-Ni-AtW-150)40体積%と銅粉末(福田金属箔粉工業製、FCC-SP-77、平均粒径10μm)15体積%を軽く混ぜ合わせ、220℃に設定された混練機(森山製作所製、2軸加圧タイプ)に投入し、加熱保持時間なしで、回転数25~50rpmにて混練体の温度が235℃以上に上昇しないように、回転数を下げることや、冷却するなどの処置により、20分間混練し、熱可塑化せしめ、ハンダを半溶融状態で樹脂中に分散させた。混練体の光学顕微鏡によるハンダの分散状況の観察では、ハンダは樹脂中に約5μmの大きさで均一に分散していた。
【0042】
【実施例3】
ABS樹脂(東レ製、トヨラック441)35体積%に鉛フリーハンダ(福田金属箔粉工業製、Sn-Cu-Ni-AtW-150)55体積%と銅粉末(福田金属箔粉工業製、FCC-SP-77、平均粒径10μm)10体積%を軽く混ぜ合わせ、金属成分の合計が65体積%に設定し、この混合したものを220℃に設定された混練機(森山製作所製、2軸加圧タイプ)に投入し、加熱保持時間なしで、回転数25~50rpmにて20分間混練し、熱可塑化せしめ、ハンダを半溶融状態で樹脂中に分散させた。
【0043】
混練体をプランジャー押出造粒機(トーシン製、TP60-2型)にてダイス温度200~240℃にて造粒し、ペレットを作製した。このペレットを使用して、射出成形機(川口鉄鋼製、KS-10B)の設定温度230~280℃で金型(金型温度、常温;150℃)に射出成形を行った。
【0044】
得られた射出成形品は、金属の分離は認められず、均一な表面をしていた。光学顕微鏡によるハンダの分散状況の観察では、ハンダは樹脂中に約100μm以下の大きさで均一に分散していた。この試料の体積固有抵抗は4×10-5Ω・cmオーダーを示した。
【0045】
上記した具体例からも明らかなように、樹脂中に鉛フリーハンダを細かく分散させることができ、金属成分を65体積%と多量に混入しても、加熱時に樹脂から分離を起こさない混練体を得ることができた。
【0046】
この鉛フリー超高導電性プラスチックは、ハンダがお互いに接続しているため、温度変化に対しても導電性が劣化することなく、安定した高い導電性を示し、射出成形においても細い形状でも詰まることなく成形が可能であった。
【0047】
この鉛フリー超高導電性プラスチックを用いることにより、射出成形により3次元形状の低抵抗の導電回路の形成が可能となった。
【0048】
以下、図面を参照しながら具体例を詳細に説明する。
【0049】
図1は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックの概略構造図である。
【0050】
この図に示すように、本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックにおいては、鉛フリーハンダ1は、プラスチック3中を溶融したハンダ2で互いに接続されるため、鉛フリーハンダ1は互いに接合状態にあり、高導電性が得られ、接続の信頼性が高い。
【0051】
これに対して、図2に示すように、従来の溶融しない金属粉末5をプラスチック4に混練した場合は、金属成分を多量に混入しないと、金属が接続しないために、導電性が得られない。
【0052】
図3は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた導電回路形成工程を示す図である。
【0053】
(1)まず、金型(図示なし)をセットして、図3(a)に示すように、最終的には、設計された配線となる所望の空間11,12,13を有するプラスチックからなるフレーム(射出成形体)10を通常の射出成形機を用いて成形する。
【0054】
(2)次に、図3(b)に示すように、その所望の空間11,12,13に本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形機を用いて射出成形し、配線(導電回路)14,15,16を形成する。
【0055】
上記したフレーム10は、成形される態様によって異なるが、基板、ケース、カバーや筐体として機能させることができる。
【0056】
なお、導電回路の形状は自在に構成することができる。例えば、局部的にも幅や厚さを自由に設定することができる。また、形状がピンや端子類似の形状にも構成することができる。
【0057】
更に、図4に示すように、フレーム20に複数層の配線(導電回路)21,22,23や分岐配線(分岐回路)24,25や両面への配線(導通回路)26,27を形成することもできる。
【0058】
すなわち、配線(導電回路)は、フレームの表面、フレーム中、フレームの両面接続も可能である。
【0059】
このように導電回路の配置が自在であり、特に、通信回路が構成される基板では、多種類の回路(信号線、電源線、アース線の回路等)で、多層配線回路が構成されるが、このような回路に適用すると好適である。
【0060】
図5は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その1)を示す図である。
【0061】
この図に示すように、この実施例では、フレーム30には、まずその表面に電気・電子部品31が搭載され、そのリード端子32がフレーム30内に延びて裏面近傍まで延設され、そのリード端子32の先端部に空間が形成される。その空間に、本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、配線33を形成し、電気・電子部品31への接続を行うことができる。
【0062】
このように、この実施例では、電気・電子部品31はフレームの外部に、配線33はフレームの内部に形成することができる。
【0063】
図6は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その2)を示す図である。
【0064】
この図に示すように、この実施例では、フレーム40内に電気・電子部品41を実装し、そのリード端子42がフレーム40の裏面外に突設され、そのリード端子42の先端部に、本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、配線43を形成し、電気・電子部品41への接続を行うことができる。
【0065】
このように、この実施例では、電気・電子部品41はフレームの内部に、配線43はフレームの外部に形成することができる。
【0066】
図7は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その3)を示す図である。
【0067】
この図に示すように、この実施例では、フレーム50内に電気・電子部品51を実装し、そのリード端子52はフレーム50の裏面近傍まで延びるが、そのフレーム50の内部に設けられる。そのリード端子52の先端部に空間が形成される。その空間に、本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、配線53を形成し、電気・電子部品51への接続を行うことができる。
【0068】
このように、この実施例では、電気・電子部品51と配線53はフレームの内部に形成することができる。
【0069】
また、射出成形での導電回路成形時に、回路部品類を金型内にセットしておくことにより、導電回路と部品を射出成形の1工程で接続でき、回路実装工程の簡略化を図ることができる。
【0070】
図8は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その4)を示す図である。
【0071】
図7で説明した接続例(その3)と同様に、フレーム60,70内に電気・電子部品61,71を実装し、そのリード端子62,72はフレーム60,70の裏面近傍まで延びるが、そのフレーム60,70の内部に設けられる。そのリード端子62,72の先端部に空間が形成される。
【0072】
そのようなフレーム60,70の空間を連結させて、その空間に本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、電気・電子部品61,71が実装されたフレーム60と70の配線63,73の接続を行うことができ、電気・電子部品モジュールを製造することができる。
【0073】
このように構成すると、2枚のフレームの同時成形による回路形成を行うことができる。
【0074】
図9は本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いたピンの接続例を示す図である。
【0075】
この図に示すように、この実施例によれば、フレーム80の裏面に突出するようにピン81を植設して、そのフレーム80の裏面部で、かつピン81に連通する空間を形成する。また、フレーム80の両面に突出するようにピン83を植設して、そのフレーム80の裏面部で、かつピン83に連通する空間を形成する。更に、フレーム80の表面に突出するとともに、裏面近傍まで延びるようにピン85を植設して、そのフレーム80の裏面部で、かつピン81に連通する空間を形成する。
【0076】
その状態で、上記空間に本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、一度に複数の各種のピンに接続される配線82,84,86を形成することができる。
【0077】
なお、ピンは、IC用ソケットなどのリードピン類を含む。
【0078】
図10は本発明の導電回路形成を適用した表面実装型チップ部品搭載用のパッケージのリード配線を示す図である。
【0079】
この図に示すように、この実施例によれば、プラスチックにより基板(フレーム,射出成形体に対応)90を成形し、その表面に回路パターンに応じた空間が形成されており、その空間に本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを射出成形することにより、リード配線91を形成することができる。なお、92は表面実装型チップ(LSIやIC)を搭載する領域である。因みに、パッケージのサイズL1 は50mm、リード配線の外端のサイズL2 は1mm、リード配線の内端のサイズL3 は0.5mmに形成することができる。
【0080】
このように、表面実装型チップ部品搭載用のパッケージのリード配線の形成にも威力を発揮することができる。
【0081】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0082】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、
(1)本発明によれば、低抵抗値を示すとともに、様々な環境下で導電性の低下を起こすことのない、信頼性の高い鉛フリー超高導電性プラスチックを提供することができる。
【0083】
すなわち、樹脂と環境面からも鉛を含まない低融点合金(鉛フリーハンダ)を用い、これらを金属の半溶融状態で混練を行うことにより、金属成分である鉛フリーハンダを樹脂中に細かく分散させることができ、かつ半溶融状態で混練することにより、分散されているもの同士がお互いに連続してつながっており、このつながりは単なる接触ではなく、ハンダの接合であり、金属の接触による導電性と異なるため、成形体が高温になっても接合が切れることなく、安定した低抵抗を示す。
【0084】
(2)この材料を射出成形する場合は、金属成分の一部が半溶融のためと、鉛フリーハンダが細かく分散されているために、多量の金属成分を含んでいるにもかかわらず、細い形状にも射出成形が可能であり、射出成形による工程のみで導電回路が形成できる。また、メッキを必要としないためフレーム(射出成形体)の内部にも低抵抗の導電回路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックの概略構造図である。
【図2】 従来の溶融しない金属粉末を樹脂に混練したプラスチックの概略構造図である。
【図3】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた導電回路形成工程を示す図である。
【図4】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた導電回路例を示す図である。
【図5】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その1)を示す図である。
【図6】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その2)を示す図である。
【図7】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その3)を示す図である。
【図8】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いた電気・電子部品の接続例(その4)を示す図である。
【図9】 本発明の鉛フリー超高導電性プラスチックを用いたピンの接続例を示す図である。
【図10】 本発明の導電回路形成を適用した表面実装型チップ部品搭載用のパッケージのリード配線を示す図である。
【符号の説明】
1 鉛フリーハンダ
2 ハンダ
3 プラスチック
10,20,30,40,50,60,70,80 フレーム
11,12,13 空間
14,15,16,21,22,23,24,25,26,27,33,43,53,63,73,82,84,86 配線
31,41,51,61,71 電気・電子部品
32,42,52,62,72 リード端子
81,83,85 ピン
90 基板
91 リード配線
92 表面実装型チップ(LSIやIC)を搭載する領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9