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明細書 :石炭灰コンクリート及びその調合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3877562号 (P3877562)
公開番号 特開2002-338322 (P2002-338322A)
登録日 平成18年11月10日(2006.11.10)
発行日 平成19年2月7日(2007.2.7)
公開日 平成14年11月27日(2002.11.27)
発明の名称または考案の名称 石炭灰コンクリート及びその調合方法
国際特許分類 C04B  28/02        (2006.01)
C04B   7/24        (2006.01)
C04B  18/10        (2006.01)
FI C04B 28/02 ZAB
C04B 7/24
C04B 18/10 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 28
出願番号 特願2001-299521 (P2001-299521)
出願日 平成13年9月28日(2001.9.28)
優先権出願番号 2001064512
優先日 平成13年3月8日(2001.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年3月10日(2003.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松藤 泰典
【氏名】小山 智幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100094835、【弁理士】、【氏名又は名称】島添 芳彦
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開平11-171615(JP,A)
特開平11-221821(JP,A)
特開平10-287455(JP,A)
特開平09-156971(JP,A)
特開平10-273354(JP,A)
特開2002-068804(JP,A)
特開平04-002642(JP,A)
特開平05-330866(JP,A)
小山 智幸 他,石炭灰を大量使用したコンクリートの強度・中性化特性,コンクリート工学年次論文集,2000年 6月 1日,第22巻 第2号,97-102頁
調査した分野 C04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
セメント、水、骨材及び石炭灰を混合する石炭灰コンクリートの調合方法において、単位セメント量を決定し、該単位セメント量に対して、石炭灰粗粉及び石炭灰細粉を外割調合により配合し、石炭灰量に相当する質量の細骨材の配合量を減量して、単位石炭灰量455kg/m3以上の石炭灰を配合するとともに、石炭灰の粗粉及び細粉の混合割合の設定により、コンクリートの流動性を調節することを特徴とする石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項2】
セメント、水、骨材及び石炭灰を混合する石炭灰コンクリートの調合方法において、コンクリートの目標強度に基づいて単位セメント量及び水セメント比を決定し、単位セメント量及び単位水量のセメント及び水に対して混合すべき石炭灰及び骨材の量を決定して、単位石炭灰量455kg/m3以上の石炭灰粗粉及び石炭灰細粉を配合し、石炭灰の配合量により、コンクリートのフレッシュ性状、強度及び中性化速度を調整するとともに、石炭灰の粗粉及び細粉の混合割合の設定により、コンクリートの流動性を調節することを特徴とする石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項3】
コンクリートの流動性が最適となる配合を調合材料の間隙比より求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項4】
調合すべき材料の固有の間隙比より理論最密間隙比及び理論最密組成を求め、流動性が最適となる配合を理論最密間隙比及び理論最密組成に基づいて決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項5】
コンクリートの圧縮強度は、セメント単味の場合に得られる圧縮強度に対して、石炭灰混合による強度増大値を加算することにより求められ、該強度増大値は、単位石炭灰量及びコンクリート材齢の関数として定義されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項6】
調合後のコンクリートの空隙量を求め、コンクリートの圧縮強度を設定する因子として前記空隙量を用いることを特徴とする請求項1、2又はに記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項7】
50nm以上の空隙径の空隙量を求め、該空隙量の増大に相応して、コンクリートの圧縮強度を低下させることを特徴とする請求項に記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項8】
単位石炭灰量の増大に相応して、コンクリートの中性化速度係数を低減することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の石炭灰コンクリートの調合方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の調合方法により調合された石炭灰コンクリート。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、石炭灰コンクリート及びその調合方法に関するものであり、より詳細には、コンクリート原料としての石炭灰の大量且つ有効な利用を可能にする石炭灰コンクリート及びその調合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭火力発電所の微粉炭燃焼ボイラ等から副産物として多量に発生する石炭灰は、その6割余りがセメント製造時の粘土代替およびフライアッシュセメント等のセメント関連原料として利用されているが、残りの大半が埋め立て処分されており、コンクリート混和材としての利用は約3 %と低率である。全国の火力発電所等から発生する石炭灰の量は、現在約540 万トンであるが、西暦2010年度には1000万トンを越えるものと予想されている。
【0003】
今後、セメント消費の飛躍的な増加は期待し難く、また、埋め立て処分が年々難しくなりつつある現在の状況では、環境保全および資源の有効利用といった観点からも、発生量が増大し続ける石炭灰をコンクリートに大量且つ有効に利用する方法を確立する必要が生じている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
石炭灰をコンクリートに混合する場合、配合設計は、石炭灰を単位セメント量に対して内割で混合する内割調合の配合法に従って実施されてきた。内割調合は、下表1に示す如く、セメント量及び石炭灰量を一定、即ち、単位結合材量を一定量に設定する配合設計であり、この調合方法によれば、相対的に高額なセメントの使用量が減少するばかりでなく、良質の石炭灰を使用すれば、コンクリートの流動性を向上することができ、しかも、高粉体系のコンクリートにおいて、水和発熱を低減し得るなどの利点が得られる。しかしながら、この調合方法では、石炭灰によるセメント置換率の増大に伴って強度低下が生じたり、耐久性の低下(特に中性化に依る耐久性低下)などの問題が生じ易く、このため、単位石炭灰量の上限値は、コンクリート強度及び耐久性により必然的に決定される傾向がある。
【0005】
【表1】
JP0003877562B2_000002t.gifこのような内割調合の場合には、石炭灰置換率の増大とともに単位セメント量が減少するので、通常は、普通ポルトランドセメント単味のコンクリートと比較し、特に初期材齢における強度が低減する。また、長期材齢における強度や耐久性は、置換率および調合・養生条件によって、普通ポルトランドセメント単味のコンクリートよりも向上する場合と、逆に低下する場合とが生じる。
【0006】
特に耐久性に関しては、セメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムが石炭灰のポゾラン反応によって消費されるため、普通ポルトランドセメント単味のコンクリートと比較すると、高置換率のコンクリートの中性化速度は大きくなる。
【0007】
したがって、内割調合の場合には、置換率の増大に伴う単位セメント量の減少に起因して強度及び耐久性が低下するので、石炭灰の置換率の上限値は、基本的に、普通ポルトランドセメント単味のコンクリートと対比して強度及び耐久性の低下を許容し得る限界によって定まる。このため、日本建築学会では内割置換率の上限は30%と定めており、石炭灰の使用量は、制限を受ける。また、内割調合では、コンクリートの強度及び耐久性は、使用する石炭灰の品質によって大きく影響されると認識されている。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリート原料としての石炭灰の大量且つ有効な利用を可能にする石炭灰コンクリート及びその調合方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セメント及び水に対して石炭灰を外割で混合する外割配合の場合、単位セメント量及び水セメント比を一定に設定した上で石炭灰の使用量を変化させることになるが、この場合には、少なくともコンクリートの目標圧縮強度及び耐久性等を確保することができ、しかも、石炭灰の混合による組織の緻密化により、若材齢から強度増進及び耐久性向上を期待し得ることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を達成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、セメント、水、骨材及び石炭灰を混合する石炭灰コンクリートの調合方法において、単位セメント量を決定し、該単位セメント量に対して、石炭灰粗粉及び石炭灰細粉を外割調合により配合し、石炭灰量に相当する質量の細骨材の配合量を減量して、単位石炭灰量455kg/m3以上の石炭灰を配合するとともに、石炭灰の粗粉及び細粉の混合割合の設定により、コンクリートの流動性を調節することを特徴とする石炭灰コンクリートの調合方法を提供する。
【0011】
本発明は又、セメント、水、骨材及び石炭灰を混合する石炭灰コンクリートの調合方法において、コンクリートの目標強度に基づいて単位セメント量及び水セメント比を決定し、単位セメント量及び単位水量のセメント及び水に対して混合すべき石炭灰及び骨材の量を決定して、単位石炭灰量455kg/m3以上の石炭灰粗粉及び石炭灰細粉を配合し、石炭灰の配合量により、コンクリートのフレッシュ性状、強度及び中性化速度を調整するとともに、石炭灰の粗粉及び細粉の混合割合の設定により、コンクリートの流動性を調節することを特徴とする石炭灰コンクリートの調合方法を提供する。
【0012】
他の観点より、本発明は、上記調合方法により調合された石炭灰コンクリートを提供する。
単位セメント量を一定にして石炭灰を混合した場合、ポゾラン反応とは無関係なメカニズムによるコンクリート組織の緻密化に起因して、初期材齢よりコンクリートの圧縮強度及び耐久性が向上する。セメントに対する石炭灰の混合は、常に、圧縮強度の増大と、中性化速度の低下とをもたらすので、多量の石炭灰を配合することが可能となり、これは、コンクリート原料としての石炭灰の大量使用を可能にする。また、ポゾラン反応とは無関係なメカニズムによりコンクリート組織が緻密化する作用は、低粉末度石炭灰でも同様に得られ、しかも、石炭灰の品質による影響も小さいので、比較的利用率の低い低粉末度の石炭灰をコンクリート原料として使用することが可能となる。
また、外割調合では、コンクリートの構成材料に占める石炭灰量の割合が大きいことから、構成材料の粉末度、石炭灰の種類の相違等がコンクリートの流動性に比較的大きく影響する。本発明によれば、コンクリートの流動性は、石炭灰の粗粉及び細粉の混合割合の設定により制御される。細粉と粗粉の混合割合が変化することによりフロー値が極大値となる組成があり、各調合における単位水量に相当する間隙比(水が充填することのできる最大間隙比)と混合粉体の間隙比との関係より、単位水量に相当する余剰水量を予測し、コンクリートの流動性を調節することができる。また、石炭灰粗粉及び石炭灰細粉の併用により、高性能AE減水剤の必要量を減らすことができ、更には、高性能AE減水剤等の添加が不可欠となる限界を間隙比及び単位水量より設定することも可能である。
【0013】
【発明の実施形態】
本発明の好適な実施形態によれば、コンクリートの流動性が最適となる配合が調合材料の間隙比より求められる。好ましくは、調合すべき材料の固有の間隙比より理論最密間隙比及び理論最密組成が求められ、流動性が最適となる配合が理論最密間隙比及び理論最密組成に基づいて決定される。
【0014】
前述の如く、外割調合では、コンクリートの構成材料に占める石炭灰量の割合が大きいことから、構成材料の粉末度、石炭灰の種類の相違等がコンクリートの流動性に比較的大きく影響する。上記構成によれば、理論上又は実測した間隙比に基づき、或いは、各構成材料固有の間隙比より理論的に求められる理論最密間隙比及び理論最密組成に基づき、コンクリートの流動性(フロー値等)が最適となる配合、或いは、化学混和剤添加量を最小にすることができる配合を理論的且つ定量的に決定することができる。また、このような調合方法によれば、粒度分布が相違する石炭灰を比較的容易に調合し得るので、従来は利用可能性が比較的低いと認識されてきた石炭灰粗粉を有効に活用することが可能となる。
【0015】
本発明の他の好適な実施形態において、コンクリートの圧縮強度は、セメント単味の場合に得られる圧縮強度に対して、石炭灰混合による強度増大値を加算することにより求められ、強度増大値は、単位石炭灰量及びコンクリート材齢の関数として定義される。好ましくは、調合後のコンクリートの空隙量が求められ、空隙量は、コンクリートの圧縮強度を設定する因子として用いられる。更に好ましくは、50nm以上の空隙径の空隙量が求められ、この空隙量の増大に相応してコンクリートの圧縮強度が低減される。
【0016】
本発明の更に他の実施形態によれば、単位石炭灰量の増大に相応して、コンクリートの中性化速度係数が低減される。外割調合では、中性化速度係数は、単位石炭灰量の関数として示すことができる。外割調合によれば、石炭灰の使用量が増大するにつれて、中性化速度係数が常に低下するので、石炭灰の大量使用は、水セメント比に関わらずコンクリートの中性化を防止する上で有効である。
【0017】
【実施例】
以下、本発明に係る石炭灰コンクリート調合方法の実施例について詳細に説明する。
外割調合は、下表2に示す如く、セメント量を一定値に設定した上で、石炭灰量及び骨材量を変化させる調合方法である。単位セメント量が一定であるため、最低の強度及び耐久性を確保することができる一方、石炭灰使用量の変動により、水結合材比及び骨材量が大きく変動することから、調合則を確立する必要がある。
【0018】
【表2】
JP0003877562B2_000003t.gif図1に石炭灰の内割調合と外割調合の違いを示す。同図において横軸は単位セメント量C 、縦軸は単位石炭灰量F である。図中の原点を通る点線は、内割調合の場合の置換率Afin=F/(C+F)一定のラインを表し、原点を通る実線は、外割調合の場合の置換率Afout=F/C 一定のラインを表す。さらに、右下がりの実線上は、単位セメント量と単位石炭灰量との和が一定のラインであり、単位水量が一定の場合には水粉体比もこの線上で一定となる。
【0019】
内割調合の場合の単位石炭灰量は、内割置換率の上限値30%、単位セメント量の下限値270kg/m3、練混ぜ可能な水粉体比の下限値約20%の各直線で囲まれる領域(ドットを付した四角形内の領域)の中で定められることになる。この領域内で、単純に単位石炭灰量を大きくしようとすると、必然的に単位セメント量を大きくする必要があるが、その場合でも単位石炭灰量の最大値は300kg/m3程度である。
【0020】
一方、外割の場合の単位石炭灰量は、練混ぜ可能な水粉体比の下限値20%(後述する図3参照)、および単位セメント量の下限値に囲まれる領域、即ち、内割の領域を含む図中の三角形の中で定められ、コンクリート1m3あたり600kg を超える石炭灰を混合することが可能となる。即ち、外割調合には、単位セメント量が小さい場合の方が、単位石炭灰量を大きくすることができるという特徴がある。
【0021】
石炭灰を混合したコンクリートの強度や耐久性といった性能、即ちポテンシャルに関し、図1には、これが一定とみなし得るラインとして、等ポテンシャルラインが、(イメージとして)図示されている。なお、後述する実験データにより具体例を示すように、図1の線図において右上側に移行するほど、ポテンシャルは高い。
【0022】
内割調合では、置換率を増大するとき、同図において(C+F) 一定の線に沿った斜めの矢印上で調合を行う。この場合、矢印方向に置換率が増大し、単位セメント量が低下する。このため、条件によって、コンクリートの性能が低下する場合と、逆に性能が向上する場合とが生じる。即ち、ポテンシャル一定のラインに対して、斜めの矢印が普通ポルトランドセメント単味の場合よりも上側にある場合(例:図中単位セメント量900kg/m3から始まる矢印)、性能が向上し、下側にある場合(例:図中単位セメント量500kg/m3から始まる矢印)、性能が低下する。
【0023】
他方、外割調合では、単位セメント量一定の縦方向矢印に沿って調合を行うので、置換率の増大に伴って、矢印は、必ずポテンシャルの高い側に向かう。これは、置換率の増大により、強度および耐久性等の性能が向上することを意味する。
【0024】
次に、外割調合の方法について説明する。
外割調合では、石炭灰使用量に応じて水粉体比が大きく変動し、通常と同様のコンクリートから高強度コンクリート、高流動コンクリートまで幅広いコンクリートが調合の対象となる。また、石炭灰使用量が増大した分だけ、同じ体積の細骨材が減ることになるので、結果として細骨材体積も大きく変動し、これは、コンクリートのフレッシュ性状に大きく影響する。同時に、単位石炭灰量の値に応じて、強度及び耐久性状が大きく変化する。
【0025】
以下に、石炭灰使用量に応じた各材料の使用量を設定する方法と、この方法により得られるコンクリートの性状を予測する方法について説明する。
【0026】
(1) 目標とするフレッシュコンクリートの性状を得るための調合方法
コンクリートの構成要素である水W 、セメントC 、石炭灰F 、細骨材S および粗骨材G の各体積の関係は下式(1) で示される。但し式中、air は、コンクリート1m3中の空気量(l/m3)を示す。
【数1】
JP0003877562B2_000004t.gif
【0027】
式(1) を基礎方程式として、単位石炭灰体積VF と、石炭灰を細骨材に対して置換したとみなした場合の置換率Vs /( VF + Vs ) との関係を表す下式(2) が得られる。
【数2】
JP0003877562B2_000005t.gif
【0028】
また、VF /(VF + VS ) =1-VS /(VF + VS ) であるから、単位石炭灰体積VFと単位細骨材体積VSとの関係は、下式(3) で与えられる。
【数3】
JP0003877562B2_000006t.gif
【0029】
同様に、単位石炭灰量が最大となるときに水粉体比が最小となることを示す下式(4) より、単位石炭灰量の最大値と、水粉体比最小値ならびに水セメント比の関係を表す下式(5) が導かれる。
【数4】
JP0003877562B2_000007t.gif【数5】
JP0003877562B2_000008t.gif
【0030】
外割調合では、まず水セメント比および単位セメント量を定め、次に、単位石炭灰量や、骨材他の材料の使用量を決めることになる。一例として、水セメント比W/C=65%、単位水量W=185kg/m3、単位セメント量C=285kg/m3、空気量4.5 %とした場合について、石炭灰をはじめとする各構成材料の使用量の関係を図2に示す。同図に示す値は、式(2) および式(3) を用いて求めたものである。
【0031】
同図を用いて、単位石炭灰体積VF (図中縦軸)、単位粗骨材体積VG (図中原点を通る直線)、単位細骨材体積VS (図中双曲線)、石炭灰を細骨材代替とみなした場合の置換率VF /(VF +VS ) (図中横軸)のうち、いずれか2つ値を与えれば、他の2つ値を定めることができる。理論上可能な調合の領域は、粗骨材の実積率や、練混ぜ可能な水粉体比等の制約から、同図中のハッチ部に限定される。スランプあるいはスランプフローや、分離抵抗性、ポンプ圧送性等のフレッシュ性状、強度発現性状ならびに耐久性等の条件を満足する調合の解は、この領域内に存在する。式(4) より求めた水粉体比の下限値と単位石炭灰量の上限値との関係を図3に示す。水セメント比および単位水量が同じであれば、水粉体比の低下とともに単位石炭灰量の上限Fmaxは急激に増大する。水セメント比および単位水量はその値が大きいほどFmaxを大きくするが、その影響は水粉体比の場合ほど顕著ではない。
【0032】
このような練混ぜ可能領域における最適調合方法を以下に示す。
石炭灰コンクリートの流動性状は、単位水量が他の構成材料により形成される空隙体積に対して不足するか、もしくは、余剰するかによって決定される。図4は、最密充填理論において、理論上の間隙比の最小値を与える理論最密組成と理論最密間隙比の関係を概念的に示す線図である。同図において、横軸の組成X(=Vg / (Vs+Vg)(なお、Vs 、Vg はそれぞれ粒子群s、gの体積))は、全粒子群に対する粒子群g の絶対容積比を示しており、Xが0および1のときは、それぞれ粒子群s単味および粒子群g単味となる。また、縦軸の間隙比Pは、粒子群を容器に充填した際の空隙量を全粒子群体積で除した値であり、空隙量の大小を表す指標である。間隙比の理論上の最小値を与える理論最密組成X0 と理論最密間隙比P0 は、[X= 0、P=Ps(粒子群sの固有間隙比) ]と[X=1、P=0]とを結んだ直線P1 と、[X=1、P=Pg(粒子群g の固有間隙比)]と[X=0、P=-1]とを結んだ直線P2 との交点で表される。実際の混合材料の間隙比曲線は、粒子が実際には不斉形を有しているため、常に理論値の上側に現れ、最密充填時の間隙比、即ち、曲線の極小値も、理論最密間隙比P0より大きくなる。
【0033】
ここに、単位水量に相当する間隙比、即ち、水が充填可能な最大空隙量が、図4中に示されている。構成材料(混合した粒子群)の間隙比がこれを下回る場合(図中Case 1)に、構成材料に対して水が余剰し、流動性は向上する。他方、間隙比が上側にある場合(Case 2)は、構成材料に対して水が不足している状態であり、水だけでは構成材料同士の分散が困難な状態にあると考えられる。したがって、この領域は、高性能AE減水剤などの分散剤の添加が必要になる領域である。
【0034】
下表3および下表4には、使用材料および石炭灰の品質が示されている。
【表3】
JP0003877562B2_000009t.gif【表4】
JP0003877562B2_000010t.gif
【0035】
本例では、セメントとして、普通ポルトランドセメントを使用し、細骨材として、玄海産海砂を2.5mm でふるったものを使用した。また、石炭灰は、分級細粉(F40)および粒度調整を行っていない粗粉(F10)とを使用した。なお、2種の各石炭灰について、以下、単に細粉、粗粉と夫々称する。
【0036】
下表5(a) および5(b) には、調合条件が示されている。この調合条件では、コンクリートのペースト部分およびモルタル部分に関する調合は、単位水量Wを185kg/m3、単位セメント量Cを285kg/m3の一定値としている。各表には、コンクリートに換算した場合の値が示されている。このうち、表5(a) は、石炭灰体積を一定として細粉に粗粉を体積比で0 、20、40、60、80および100%置換したものとした。また表5(b) は、外割混合で細骨材に対する細粉の混合率を変化させたものである。
【表5】
JP0003877562B2_000011t.gif
【0037】
構成材料の間隙比を算出するために空隙率の測定を行った。空隙率の測定は、まず試料を手練りで十分に混合し、その後、図5に示すように、50φ×100mm(196.2ml) のステンレス容器に収容し、フローテーブルで落下運動を与えて試料を容器内に充填した。試料の充填は、スケールで読み取った試料上面の高さが変化しなくなるまで行った。因みに、落下回数は1試料につき、500 回程度である。その後、試料の上面がステンレス容器の上面と合うように試料をすり切り、その質量を測定して実積率を求めた。空隙率および間隙比は、測定結果から得られた実積率に基づき、それぞれ下式(6) および式(7) により算出した。なお実積率の算出の際に必要となる混合試料の密度は、調合から算出した値を用いた。
【数6】
JP0003877562B2_000012t.gif【数7】
JP0003877562B2_000013t.gif
【0038】
ここに、各符号は、以下のとおりである。
p:空隙率
P:間隙比
a:実績率
【0039】
図6(a) および図6(b) には、石炭灰の細粉と粗粉の混合割合を変化させた場合における組成とフロー値の関係、および組成と間隙比の関係が示されている。なお、図6(a) および図6(b) の各図には、左から水と粉体の体積比が93%、78%ならびに63%の場合の結果が示されており、それぞれの水粉体比は質量比で約35%、30%、25%の場合に相当する。
【0040】
同図から明らかなように、細粉と粗粉の混合割合が変化することによりフロー値が極大値となる組成が存在し、このときの組成は間隙比曲線が極小値を示す組成と一致している。また、各調合における単位水量に相当する間隙比、すなわち水が充填することのできる最大間隙比と混合粉体の間隙比との関係に着目すると、水粉体比35% では殆どの組成で間隙比が単位水量に相当する破線よりも下回るため水が余剰した状態となり、この線よりも間隙比が下回るほど流動性が向上している。したがってこの場合には、目標とする流動性を得るための調合の自由度が相対的に大きいことになる。一方、水粉体比が小さくなるに伴い、構成材料の間隙比が水量に相当する破線よりも上回る場合が多くなり、水が不足した状態となっている。特に、水粉体比25%では単位水量に相当する破線に対して殆どの組成で間隙比が上側にくるため、粉体量に対して水が不足した状態となり、その結果、フロー値が低下し、併せて、練り混ぜ不可能な組成の領域も広くなっている。なお、水粉体比25%の場合でも、組成[F10/(C+F40+F10)]が約55%の調合では、間隙比と水量がほぼ同程度となるため、水粉体比が低いにも関わらず高性能AE減水剤の添加なしに練り混ぜが可能であった。
【0041】
次にこれを拡張した粉体と細骨材の混合系、即ち、コンクリートのモルタル部分を想定した場合において、石炭灰の細粉及び細骨材の組成が変化する場合について組成とフロー値の関係および組成と間隙比の関係を図7(a) および図7(b) に示す。先の細粉と粗粉の場合と同様、フロー値が極大値をとる組成と、間隙比が極小値をとる組成とが、非常によく一致している。さらに、構成材料の間隙比が単位水量に相当する間隙比を下回るときには、分散剤なしでも練り混ぜが可能とっている。したがって、石炭灰を少量使用する領域では、石炭灰の混合により流動性は向上するが、ある量まで混入量を増大すると、水だけでは分散させることができず、高性能AE減水剤の添加が不可欠となる。そして、この境界が間隙比曲線と水量の交点で表される。
【0042】
以上から、外割調合で石炭灰を混合する場合、粗い粒子と細かい粒子の混合系を対象とすると、それぞれの固有の間隙比が既知であれば、それを基に上記の方法で流動性が最適となる組成を求め、また、単位水量に相当する間隙比との関係により化学混和剤添加量を最小にできる最適調合設計が可能である。この調合方法では、実測が必要なものは構成材料単体の固有間隙比のみであり、粒度分布特性に関わらず簡便に実務に適用可能な調合方法が提供される。また、本方法によれば、比較的利用率が低い粗粉の有効に利用することが可能である。
【0043】
次にコンクリートについて調合を行った例として、単位水量185kg/m3 、165kg/m3のそれぞれの調合において、スランプ18cmを目標として練混ぜを行ったコンクリートに関し、単位石炭灰量と高性能AE減水剤添加量との関係を図8に示す。下表6には、調合が示され、下表7には、石炭灰の品質が示され、表8には、他の使用材料の諸元が示されている。石炭灰は、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)II種に適合するEP灰(FA4,000) およびI~IV種のいずれにも適合しない分級粗粉(FA1,000) であり、後者を使用する場合は、水粉体比25%および20%の調合において、前者に対して質量比で40%内割置換して用いた。
【表6】
JP0003877562B2_000014t.gif【表7】
JP0003877562B2_000015t.gif【表8】
JP0003877562B2_000016t.gif
【0044】
粉末度の影響に関して、単位石炭灰量が小さい場合には、粗粉の使用の影響は小さいが、単位石炭灰量が大きくなると、その影響が顕在化する傾向がみられる。すなわち、4,000 ブレーンの細粉を単独で使用するよりも、1,000 ブレーンの粗粉を4割程度混合して用いた場合の方が、高性能AE減水剤の必要量が小さくなった(図9参照)。このことは、図4及び図6に示した間隙比曲線と水量との関係を裏付けている。
【0045】
単位水量185kg/m3および165kg/m3それぞれの調合における各構成材料の使用量とフレッシュコンクリートの性状を図10(a) および図10(b) に示す。同図を用いて、設定した調合から得られるコンクリートの種類(普通、中流動、高流動コンクリート)の予測、または目的とするコンクリートの種類を実現するための調合の範囲を知ることができる。
(2) 目標とする圧縮強度を得るための調合方法
【0046】
表7に示す石炭灰を用い、下表9に示す調合で練混ぜを行った試験体の圧縮強度と単位石炭灰量の関係が、図11に示されている。
【表9】
JP0003877562B2_000017t.gif
【0047】
図11には、材齢28日における単位石炭灰量及び圧縮強度の関係が例示されている。石炭灰を外割混合した場合の強度は、セメント単味と比較して全般に大きく、同時に、単位石炭灰量が増加するにつれて増大する。単位石炭灰量と圧縮強度には明瞭な相関があり、両者の関係を下式(8) の如く表すことができる。
【数8】
JP0003877562B2_000018t.gif
【0048】
式(8) 中の第1項αs は、セメント単味の場合の圧縮強度(N/mm2) であり、圧縮強度は、水セメント比の関数として、図12に示す実測値との整合により、下式(9) で表される。
【数9】
JP0003877562B2_000019t.gif
【0049】
また、式(8) 中第2項のβs (N/mm2) は、圧縮強度に対する石炭灰の寄与の大きさを表す。図12に示す実測値との整合により、βs (N/mm2) は、材齢のみの関数として、また、γs (kg/m3) は、材齢や単位石炭灰量などに無関係に、それぞれ下式(10)及び下式(11)により定義し得る。
【数10】
JP0003877562B2_000020t.gif【数11】
JP0003877562B2_000021t.gif
【0050】
これらの結果をまとめると、上式(8) は、以下の式(12)で表すことができる。
【数12】
JP0003877562B2_000022t.gifこれらより、圧縮強度に対する等ポテンシャルラインを表す関数として、単位石炭灰量と単位セメント量との関係式が得られ、これは、下式(13)で表される。
【数13】
JP0003877562B2_000023t.gif
【0051】
図13~図15に、材齢7 日、28日、および91日における圧縮強度に関する等ポンシャルラインをそれぞれ示す。前述のように等ポテンシャルラインは式(12)あるいは式(13)中のfcを一定としたときの単位セメント量C と単位石炭灰量F の関係として算定される。各図中の黒丸は、圧縮強度の実測値である。例えば、材齢28日に関して示した図13中で、内割調合を示す斜めの矢印に着目すると、単位セメント量740 kg/m3 から始まる矢印の場合には、内割置換率20%程度までは圧縮強度は向上し、それ以上の置換率では低下する。一方、単位セメント量463 kg/m3 から始まる調合の場合には置換率の増加に伴って常に強度が低下している。他の材齢においても、内割調合の場合には単位セメント量や材齢によって普通ポルトランドセメント単味と比較して圧縮強度が低下する場合と向上する場合があることがわかる。これに対して、外割調合を示す縦の矢印は、単位石炭灰量の増加に伴って常にポテンシャルの高い方に向かっており、外割調合の利点が確認される。また、外割調合の場合には、材齢初期からセメント単味の場合よりも強度が大きくなっていることが明らかである(図13)。さらに、単位セメント量が小さい領域においても調合が可能であり、単位セメント量200 kg/m3 の調合であっても、単位石炭灰量が100 kg/m3 を超える領域で、30N/mm2 以上の圧縮強度が得られている。
【0052】
このように、設定した調合のコンクリート強度が、以上の方法により得られる。逆に、目標とする強度を得るための調合が上記方法から定まる。
石炭灰外割コンクリートの強度発現メカニズムについて、図16には、ポルトランドセメント単味のコンクリートと、石炭灰を外割混合したコンクリートとに関する空隙構造モデルが夫々示されている。このモデルは、モルタル中の細骨材粒子1個に対応する空間において、細骨材およびその周囲の空間を埋めるセメントや石炭灰などの粉体粒子、およびこれらの空隙で構成される。ここで、構成粒子は、球形で、それぞれの粒子ごとに平均径に相当する単一の大きさを有するものと仮定する。
【0053】
図16(a) は、ポルトランドセメント単味(W/C=65% )の場合で、細骨材以外の空間を埋める粒子はセメントのみである。さらに、その空隙は水が占めており、この空隙がセメントの水和反応によって生じる生成物により埋められていくことになる。調合から算定される各構成粒子の体積と、それぞれの粒子径から求められる粒子数に整合させてセメント粒子を配置すると、この場合の空隙は図16(a) 右側の拡大図のように、4個のセメント粒子に囲まれるモデルとなる。その内接円の半径、すなわち空隙径は、セメント粒子の半径をrCとすると、0.414rC となる。次に、石炭灰を外割で244kg/m3混合した場合(水粉体比W/P=35%)、その体積分だけ細骨材量が減少するため、細骨材1個に対応する空間は相対的に大きなる。この空間を埋めるのは、セメントおよび石炭灰粒子である。粉末の総体積が増加したため粒子の配列が密になり、セメント及び石炭灰の粒径が同程度の場合、図16(b) の拡大図のように、空隙は3個の粉体粒子に囲まれなければならない。従って、空隙半径は0.155 rCとなる。このモデルの特徴は、空隙の総量が単位水量に等しく、石炭灰外割調合では単位水量が一定であるため、両調合の総細孔量が等しいことである。即ち、石炭灰を外割混合するコンクリートでは、同一体積内での総空隙量は同じであるが、空隙を構成する粒子の同一体積あたりの個数が異なるため、コンクリート内部の空隙径は、単位粉体量が大きいほど小さくなる。この違いは練り混ぜ直後から成立する。これは、強度発現に関して、セメントの水和生成物が埋める空隙のサイズが練り混ぜ直後から小さく、従って、初期材齢から緻密な硬化体組織を構成し易いことを意味する。結果的に、石炭灰外割混合コンクリートの強度は、ポルトランドセメント単味のコンクリートの強度に比べ、初期材齢から高くなる。
【0054】
実証実験における使用材料を下表10に示す。セメントは、JIS R 5210(ポルトランドセメント)に規定する普通ポルトランドセメントを、細骨材は、壱岐産海砂を使用した。石炭灰(FA)は、比表面積が1000、2700、4000、7000 cm2/gの4種類を用いた。また、比較のため、比表面積が1200cm2/g の石粉(GP)を使用した。
【表10】
JP0003877562B2_000024t.gif
【0055】
実証実験における調合が、下表11に示されている。
【表11】
JP0003877562B2_000025t.gif実証実験では、単位水量を185kg/m3、水セメント比65% (単位セメント量=285kg/m3)を一定とし、単位石炭灰量を、0 、85、126 及び332kg/m3と変化させ、水粉体比W/Pを変化させた。なお、粗骨材は、コンクリートの調合から除かれている。なお、各粉末とも体積比を一定とした。また、いずれの調合においても高性能AE減水剤は使用していない。
【0056】
試験体はJIS R 5201(セメントの物理試験方法)に従い、寸法40×40×160mm の型枠に成型後、20℃、90%R.H.の環境下で1 日間湿空養生を行い、脱型して所定材齢(1,3,7,28日)まで水中養生を行った。各材齢ごとに供試体の内部から試料を採取し、試料を直径2 ~3mm の粒状に粉砕して、アセトンで水和を停止させ、1日真空乾燥した後、水銀圧入式ポロシメータを用いて、細孔半径6.0 ~90432nm の範囲で細孔径分布を測定して、細孔容積を求めた。なお強度試験はJIS R 5201(セメントの物理試験方法)に従って行った。
【0057】
図17に、設定した種々の調合について水銀圧入式ポロシメータで測定した総細孔量の測定結果を、材齢1,3,7 日の場合について示す。いずれの材齢においても、単位石炭灰量の違いと無関係に、総細孔量はほぼ同程度となっている。このことは、石炭灰外割調合では単位セメント量と単位水量を一定として細骨材の一部を石炭灰で置換する形となるため、単位石炭灰量が変化しても細孔の総量が一定となることを示しており、先に示したモデルでの検討結果と一致する。なお、図17には、石炭灰の比表面積が異なる場合や、粉体として石粉を用いた場合の結果も併記しているが、いずれの場合も水粉体比が一定であれば総細孔量は同程度であることがわかる。
【0058】
図18に、各調合における細孔径分布を、一例として材齢3 日の場合について示す。図より明らかなように、単位粉体量が大きくなるとともに細孔径の分布がより小さい側に移行していることがわかる。この傾向は他の材齢においても同様であった。この時期には石炭灰のポゾラン反応はほとんど進行しないことを考慮すると、空隙の緻密化は、先に述べたように、粉体量が大きくなることによって空間を埋める粒子の個数が多くなるために、コンクリート内部の空隙径が練り混ぜ直後から小さいことに起因すると判断し得る。従って、空隙を埋めるセメント水和物の量が同じであっても、単位粉体量の増大につれて、同じ材齢における組織構造がより緻密になることは明らかである。図19に単位粉体量と50nm以上の空隙量との関係を示す。図より明らかなように、単位粉体量が大きくなるにしたがって50nm以上の径の空隙量が小さくなる傾向がみられる。
【0059】
図20に、各調合、ならびに各材齢における圧縮強度と単位粉体量の関係を示す。先の図11と同様、単位粉体量が大きくなるにしたがって初期材齢から圧縮強度が大きくなっている。図21に細孔量と圧縮強度の関係を示す。種々の細孔径において強度との相関を検討した結果、圧縮強度は、50nm以上の空隙量と最も高い相関を示しており、50nm以上の空隙量の低減は、圧縮強度の増大をもたらした。
図19に示すように、石炭灰(FA)を外割で混合することにより、ポルトランドセメント単味の場合と比較して50nm以上の空隙量が材齢初期から減少するため、石炭灰外割コンクリートは、ポゾラン反応のほとんど進行しない初期材齢から高い強度を発現することが確認された。このことは、図20、図21に併記しているように、反応性を有さない砕石粉(GP)を用いた場合でも同様であり、粉体を外割混合したコンクリートの強度発現は、これらの粉体の空隙形成特性に依存し、粉体の反応性とは無関係であることが明らかである。また、本方法で示した強度発現メカニズムは、有効利用が望まれる石炭灰以外の粉体においても適用できることが明らかである。
【0060】
(3) 目標とする耐中性化性状を得るための調合方法
中性化速度係数は、硬化体の水酸化カルシウム量と透気係数から下式(14)のように表すことができる。
【数14】
JP0003877562B2_000026t.gif
【0061】
また、水酸化カルシウム量Q および透気係数K は、それぞれ式(15)および式(16)で表すことができる。
【数15】
JP0003877562B2_000027t.gif【数16】
JP0003877562B2_000028t.gif
【0062】
次に、これらを上式(14)に代入すると、中性化速度式は単位石炭灰量の関数として下式(17)のように表される。
【数17】
JP0003877562B2_000029t.gif
【0063】
圧縮強度と同じ材料、調合の試験体を作成し、温度20℃、相対湿度60%、炭酸ガス濃度5 %の環境下で促進中性化試験を行った。試験体は材齢91日で脱型後、20℃、相対湿度60%の恒温恒湿室で1 週間の乾燥を行っている。中性化深さの測定はフェノールフタレイン1 %溶液を割裂面に噴霧した後、呈色しない部分をノギスで測定し、その平均値を中性化深さとした。
【0064】
図22に中性化速度係数と単位石炭灰量の関係を示す。なお、中性化速度係数は各試験材齢における実験結果を√t 則により近似して求めたものである。水セメント比90%では、他の水セメント比(65、50、40%)と比較して著しく中性化速度が大きくなっている。しかしながら、いずれの水セメント比においても、石炭灰の使用量が大きくなるに伴って中性化速度係数が小さくなっていることから、水セメント比に関わらず石炭灰の大量使用は、コンクリートの中性化を抑制する上で有効であることが明らかである。また、図中の実線は、実測値に式(17)を近似した結果であるが、いずれの場合にあっても、実測値の傾向をよく示している。ここで、式(17)における実験定数αc , γc1およびγc2の値は、それぞれ単位セメント量の関数として、図23に示す実測値との整合により、それぞれ下式(18)~(20)のように表すことができる。
【数18】
JP0003877562B2_000030t.gif【数19】
JP0003877562B2_000031t.gif【数20】
JP0003877562B2_000032t.gif
【0065】
これらの結果をまとめると、式(17)は、以下の式(21)で表される。
【数21】
JP0003877562B2_000033t.gif以上より、中性化速度に関する等ポテンシャルラインを表す単位石炭灰量と単位セメント量の関係式が得られ、式(22)で表される。
【数22】
JP0003877562B2_000034t.gif
【0066】
図24には、式(22)から算出される中性化速度に関する等ポテンシャルラインが示されている。圧縮強度と同様、等ポテンシャルラインは式(22)中の中性化速度係数Aを一定としたときの単位セメント量C と単位石炭灰量F の関係として算定される。中性化速度に関しても圧縮強度と同様に、内割調合を示す斜めの矢印では、置換率の増大に伴い普通ポルトランドセメント単味と比較して低下する場合と、逆に向上する場合とがみられる。ただし、ポテンシャルラインはある置換率を超えると横軸に対して垂直になることから、内割調合では普通ポルトランドセメント単味と比較して急激に中性化抵抗性が低下することがわかる。一方、外割調合を示す縦の矢印は、単位セメント量に関わらず単位石炭灰量の増加に伴って常にポテンシャルの高い方に向かっていることから、外割調合の利点が確認される。また単位セメント量が200kg/m3のように少ない場合においても、石炭灰を使用することで性能が向上することがわかる。
【0067】
以上の結果より、石炭灰を外割混合するコンクリートはベースとなるポルトランドセメント単味のコンクリートよりも、任意の材齢、調合において、常に圧縮強度および耐中性化性状が向上し、また、これらの物性、ならびにフレッシュ性状を計画調合段階で予測可能となった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明の上記構成によれば、、コンクリート原料としての石炭灰の大量且つ有効な利用を可能にする石炭灰コンクリート及びその配合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】石炭灰の内割調合と外割調合との関係及び相違を示す線図である。
【図2】石炭灰外割コンクリートをにおける各構成材料の使用量の関係を示す線図である。
【図3】水粉体比の下限値と単位石炭灰量の上限値との関係を示す線図である。
【図4】理論上の間隙比の最小値を与える理論最密組成と理論最密間隙比の関係を概念的に示す線図である。
【図5】空隙率測定試験の試験方法を示す測定器具の概略正面図である。
【図6】石炭灰の細粉と粗粉の混合割合を変化させた場合にみられる組成とフロー値との関係を示すとともに、組成と間隙比との関係を示す線図である。
【図7】間隙比の極大値と、フロー値の極大値との対応関係を示す線図である。
【図8】スランプ18cmを目標として混練したコンクリートにおける単位石炭灰量及び高性能AE減水剤添加量の関係を示す線図である。
【図9】高性能AE減水剤添加量に対する粉末度の影響を示す線図である。
【図10】各構成材料の使用量と、フレッシュコンクリートの性状との関係を示す線図である。
【図11】圧縮強度と単位石炭灰量との関係を示す線図である。
【図12】実験定数、単位セメント量、水セメント比の関係を示す線図である。
【図13】材齢7日の圧縮強度に関する等ポンシャルラインを示す線図である。
【図14】材齢28日の圧縮強度に関する等ポンシャルラインを示す線図である。
【図15】材齢91日の圧縮強度に関する等ポンシャルラインを示す線図である。
【図16】ポルトランドセメント単味のコンクリートと、石炭灰を外割混合したコンクリートとに関する空隙構造モデルを示す概念図である。
【図17】石炭灰外割混合が総細孔量に及ぼす影響を示す線図である。
【図18】石炭灰外割混合が細孔径分布に及ぼす影響を示す線図である。
【図19】単位粉体量と50nm以上の空隙量との関係を示す線図である。
【図20】石炭灰外割混合がコンクリートの圧縮強度に及ぼす影響を示す線図である。
【図21】 50nm以上の細孔量とコンクリート圧縮強度との関係を示す線図である。
【図22】中性化速度係数と単位石炭灰量との関係を示す線図である。
【図23】実験定数と単位セメント量との関係を示す線図である。
【図24】中性化速度に関する等ポテンシャルラインを示す線図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23