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明細書 :電子放出素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3536120号 (P3536120)
公開番号 特開2003-109493 (P2003-109493A)
登録日 平成16年3月26日(2004.3.26)
発行日 平成16年6月7日(2004.6.7)
公開日 平成15年4月11日(2003.4.11)
発明の名称または考案の名称 電子放出素子の製造方法
国際特許分類 H01J  9/02      
H01J  1/304     
H01J 29/04      
FI H01J 9/02 B
H01J 29/04
H01J 21/30
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2001-304570 (P2001-304570)
出願日 平成13年9月28日(2001.9.28)
審査請求日 平成13年9月28日(2001.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 博昭
【氏名】酒井 忠司
【氏名】佐久間 尚志
【氏名】大串 秀世
【氏名】渡辺 幸志
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
審査官 【審査官】村田 尚英
参考文献・文献 特開 平9-45215(JP,A)
特開2001-15012(JP,A)
特開2000-215788(JP,A)
特表2001-509839(JP,A)
特表2002-517087(JP,A)
調査した分野 H01J 9/02
H01J 1/304
特許請求の範囲 【請求項1】
ダイヤモンドを含む基板を用意する工程と、
前記基板上に開口を有するマスク板を配置する工程と、
前記マスク板を介して前記基板上に金属材料を堆積することにより、前記基板上の前記開口に対応した領域に主金属膜を形成するとともにその周囲の領域に回り込んだ金属材料によって該周囲の領域に微小サイズの複数の金属膜を形成する工程と、
前記主金属膜及び前記微小サイズの複数の金属膜をマスクとして前記ダイヤモンドをエッチングして、前記周囲の領域に電子を放出する先鋭な複数のダイヤモンドエミッタからなるエミッタ群を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする電子放出素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、真空マイクロ素子等に用いられる電子放出素子の製造方法に関する。

【10】


【11】


【12】
(作用)基板上にマスク板を配置する際、基板表面とマスク板とを意識的に離間させた場合はもちろん、基板上にマスク板を載置した場合にも基板表面の凹凸によって基板表面とマスク板との間には隙間が存在する。そのため、金属材料を堆積する際、開口に対応した領域に金属膜(主金属膜)が形成される他、開口の周囲の領域には回り込み現象によって微小サイズの金属膜が主金属膜の近傍に高密度で形成される。このような金属膜をマスクとしてダイヤモンドのエッチングを行うことにより、高アスペクト比のダイヤモンドエミッタからなるエミッタ群を主金属膜の近傍に高密度で形成することができる。また、主金属膜をダイヤモンドエミッタに電荷を供給するための電極として用いることもでき、これにより電極とダイヤモンドエミッタとの間に介在する抵抗成分を小さくすることができ、電圧ロスを少なくすることができる。また、金属膜をフォトリソグラフィ技術を用いずに形成できるため、製造工程の簡略化を図ることもできる。したがって、このようにして形成されたダイヤモンドエミッタからなるエミッタ群を用いることで、例えば一つのダイヤモンドエミッタが破壊等によって電子放出できなくなっても他のダイヤモンドエミッタによって容易に代替することができる等、安定性や信頼性に優れた電子放出素子を簡単な工程で作製することも可能となる。

【13】


【14】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。

【15】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示した工程断面図である。

【16】
まず、図1(a)に示すように、高圧合成されたダイヤモンド基板11上に、ダイヤモンド膜12を厚さ1μm程度、エピタキシャル成長させる。

【17】
次に、図1(b)に示すように、S(硫黄)或いはP(リン)等の不純物をダイヤモンド膜12にイオン注入する。このとき、ダイヤモンド膜12の表面から0.5μm程度の深さまで1019cm-3程度の濃度になるように、加速電圧を変化させてイオン注入を行う。さらに、不活性ガス中又は真空中にて、400℃以上1200℃以下で熱処理を行い、上記不純物を活性化させて低抵抗のn型ダイヤモンド層13を形成する。本例では、不純物として硫黄を用い、添加量はダイヤモンドがグラファイト化しない程度とした。また、注入エネルギーを3種類として、表面からの深さが50nm~400nm程度まで硫黄の添加量が一定となるようにした。

【18】
次に、図1(c)に示すように、開口部14aを有する金属マスク板14をn型ダイヤモンド層13上に載置し、開口部14aを通してn型ダイヤモンド層13上に金属膜15を真空蒸着する。n型ダイヤモンド層13の表面には数μmオーダーの凹凸があるため、金属マスク板14を載置することによって数μmオーダーの隙間が生じる。なお、本例ではマスク板14をn型ダイヤモンド層13上に載せるようにしたが、マスク板14をn型ダイヤモンド層13から微小距離(50μmを越えない範囲の距離)離して配置してもよい。金属膜15は、後工程で形成されるダイヤモンドエミッタに電荷(電子)を供給する(電圧を印加する)ための電荷供給電極(負極性側電極)となるものである。金属膜15を蒸着する際、金属膜15と基板(n型ダイヤモンド層13)との間には若干の隙間が存在するため、電荷供給電極の周囲には、開口部14aの周囲に回り込んだ金属膜によって、微小サイズの多数の金属膜が同時に形成される。なお、本例では、オーミックコンタクトが得られやすいように、金属膜15としてTi膜(400nm)、Pt膜(500nm)及びAu膜(3000nm)の積層膜を用いた。Ti膜はコンタクトメタル、Pt膜は熱処理時にTiが上方に拡散するのを防ぐためのストップ膜、Au膜は金線等との電気的接続を取りやすくするためのパッドメタルである。金属膜15を真空蒸着した後、オーミック性を上げるために、不活性ガス中で400℃、30分間の熱処理を行う。

【19】
なお、ここまでの工程において、電極とのオーミック性をさらに向上させるために、n型ダイヤモンド層13の表面領域に、アルゴン或いはカーボンのイオン注入によってグラファイト化コンタクト層を形成してもよい。

【2】

【従来の技術】電子放出素子(電界放出素子)は、高速応答性、耐放射線性及び耐高温性、さらに高精細な自発光型ディスプレイの可能性などの観点から、近年活発に研究開発が行われている。

【20】
次に、図1(d)に示すように、金属膜15(電荷供給電極となる金属膜及び電荷供給電極周囲の微小サイズの金属膜)をマスクとして、n型ダイヤモンド層13を酸素を用いて異方性ドライエッチングする。本例では、100%酸素雰囲気において、RFプラズマを用いたドライエッチングを行った。雰囲気圧力は5Pa、RF入力は100Wとした。20分間のドライエッチングを行ったところ、約400nmの深さまでエッチングされた。この異方性ドライエッチングには、プラズマ源としてICP、ECRプラズマを用いることも可能である。

【21】
図2は、図1(d)の丸で囲んだ部分を拡大して示した図である。金属膜15の蒸着時に回り込み現象によって電荷供給電極周囲に形成された微小サイズの金属膜がエッチングマスクとなり、n型ダイヤモンド層13からなる高アスペクト比(5以上で100以下程度)の微小なダイヤモンドエミッタ(先鋭なダイヤモンド柱)13aが多数形成される。これらの多数のダイヤモンドエミッタ13aによってエミッタ群が構成される。ダイヤモンドエミッタ13aは、金属膜15からなる電荷供給電極からの距離(n型ダイヤモンド層13の側壁からの距離)が遠くなるにしたがって(距離に反比例して)、密度がしだいに減少している。密度分布は、マスク板14と基板(n型ダイヤモンド層13)との密着度(平均的な隙間の距離)を変えることによって制御することが可能である。また、エッチングの際にエミッタ13aの先端部が微小サイズの金属膜とともに多少エッチングされるため、エミッタ先端部13aの高さは、電荷供給電極下のn型ダイヤモンド層13の上面の高さよりも低くなっている。

【22】
図3は、エッチング後の状態を斜め方向から反射電子顕微鏡で観察したものである。領域Aはダイヤモンドエミッタ13aが形成されている部分、領域Bはn型ダイヤモンド層13の部分、領域Cはn型ダイヤモンド層13上の金属膜15(電荷供給電極)の部分である。エッチングの条件は、エッチング雰囲気100%酸素、圧力5Pa、プラズマ用高周波電力の周波数を13.56MHz、出力を100Wとした。エッチング速度は20nm/min程度で、エッチング時間は60minである。図3に示すように、電荷供給電極の近傍に直径100nm程度で高さ1μm程度の柱状のダイヤモンドエミッタが無数に形成されている。電極からおよそ30μmまでの領域では、特に高密度にエミッタが形成されている。ダイヤモンドエミッタの密度は、電極の極近傍では107 cm-2程度以上、電極から30μm程度離れた部分では105 cm-2程度以上であった。そしてこれらのエミッタの先端は、50%以上のものが極めて先鋭化していた。

【23】
図4は、上述したようにして作製されたエミッタ13aの上方に、エミッタ13aから電子を引き出す(放出させる)ための引き出し電極(正極性側電極)21を設けた状態を示している。図4に示した構造により、エミッタの電子放出特性を測定した。引き出し電極21とエミッタ13aの先端との間隔は33μmとした。その結果、極めて小さい電界で電子の放出が確認でき、電流密度も150mA/cm2 以上であった。また、シリコンや高融点金属を用いたエミッタで見られる電子放出後の形状変化もまったく見られなかった。

【24】
図5は、上述したようにして作製された構造に対し、n型ダイヤモンド層13上に絶縁膜22を介してゲート電極23を設けた構造を示している。図5に示した構造により、電界放出時の電流電圧特性を測定した。その測定結果を図6に示す。横軸はエミッタ13aに対する引き出し電極21の電位、縦軸は引き出し電極21の電流であり、ゲート電極の電位は一定値に固定している。図5のようなゲート電極23を設けた構造でも、極めて安定な電子放出が確認でき、制御性も極めて良好で、測定中に特性の劣化等はまったく見られなかった。

【25】
以上のように、本実施形態によれば、メタルマスク板の周囲からの回り込み現象を利用することにより、電荷供給電極の周囲に微小サイズの金属膜を形成することができる。この微小サイズの金属膜をエッチングマスクとして異方性エッチングを行うことにより、電荷供給電極の近傍に高アスペクト比のダイヤモンドエミッタを高密度で形成することができる。したがって、このようにして形成されたダイヤモンドエミッタを用いることで、安定性や信頼性に優れた電子放出素子を作製することが可能となる。

【26】
なお、上述した実施形態では、電荷供給電極を堆積する際に金属マスク板を用いてエッチングマスクとなる微小サイズの金属膜を形成するようにしたが、ゲート電極となる金属膜を形成する際に同様の手法によって微小サイズの金属膜を形成するようにしてもよい。図7はその一例を示した図であり、図1に示した構成要素と対応する構成要素には同一の参照番号を付している。製造工程は、以下の通りである。

【27】
n型ダイヤモンド層13を形成した後、金属膜15を形成し、この金属膜15をパターニングして電荷供給電極を形成する。続いて、絶縁膜22を全面に形成する。その後、図1に示した例と同様に開口部を有する金属マスク板を用いて、絶縁膜22上にゲート電極23となる金属膜を堆積する。この金属膜(ゲート電極23)をマスクとして、絶縁膜22及びn型ダイヤモンド層13をエッチングすることで、図7に示すような多数のダイヤモンドエミッタ13aからなるエミッタ群を形成することができる。なお、エッチング後に絶縁膜22がダイヤモンドエミッタ13a上に残っているような場合には、例えばウエットエッチングによって絶縁膜22を除去すればよい。

【28】
(参考例)
図8は、本発明の参考例に係る電子放出素子の製造工程を示した工程断面図である。なお、図1等に示した実施形態の構成要素に対応する構成要素については同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。

【29】
まず、図8(a)に示すように、ダイヤモンド基板11上に、ダイヤモンド膜12を厚さ1μm程度、エピタキシャル成長させる。

【3】
電子放出素子のエミッタ材料には電子親和力の小さい材料が使用されている。近年、ダイヤモンドの電子親和力が0に近いことが見出され(例えば、J.VanらJ. VacSci. Technol, B,10,4(1992))、ダイヤモンドをエミッタ材料として用いた電子放出素子の作製方法が数多く提案されている。

【30】
次に、図8(b)に示すように、ダイヤモンド膜12の表面領域にAr(アルゴン)或いはC(カーボン)のイオン注入を行う。このイオン注入を適当な条件で行うことにより、ダイヤモンド膜12の表面領域の一部はグラファイト化され、ダイヤモンド部分とグラファイト部分の混在領域31が形成される。本例ではArを用いて、Arのイオン注入量を5×1019cm-3とし、混在領域31の厚さが100nm程度となるようにした。なお、上述した実施形態と同様、ダイヤモンド膜12の表面領域にn型ダイヤモンド層を形成しておき、このn型ダイヤモンド層の表面領域にダイヤモンド/グラファイト混在領域31を形成するようにしてもよい。

【31】
ここで、ダイヤモンドのグラファイト化について説明する。ダイヤモンドとグラファイトとは炭素の結合状態が互いに異なったものであり、ダイヤモンドは共有結合であるSP3 結合、グラファイトはπ結合であるSP2 結合である。グラファイトでは、π結合のπ電子が電気伝導に寄与するため電気抵抗が非常に小さいが(1Ωcm-1以下)、不純物が添加されていないダイヤモンドは極めて電気抵抗が高い(1×1014Ωcm-1以上)。

【32】
ダイヤモンドに10keV以上のエネルギーでAr等の原子を打ち込むと(イオン注入すると)、打ち込まれた原子はダイヤモンド中の炭素原子にぶつかりながらしだいにエネルギーを失い、打ち込みエネルギーと相関のある深さで止まる。失われるエネルギーは、結晶欠陥(ダイヤモンドの格子を壊したりダイヤモンド中の炭素原子を弾き飛ばしたりすることによって生じる)を発生させるために消費される。このとき、結合の一部がπ結合性になると、その部分がグラファイトに変化する。この変化は不可逆性である。これは、グラファイトの方がダイヤモンドよりも結合のエネルギーが大きいためである。

【33】
グラファイト化される領域は、打ち込み原子が通過した領域周囲の極めて狭い領域である。全ての領域をグラファイト化するためには、打ち込み原子の物性にもよるが、ダイヤモンドへの固溶限界を超える1020cm-3程度以上の原子を打ち込まなければならない。本参考例では、この値を越えない範囲の原子を打ち込むことで、ダイヤモンド部分とグラファイト部分とを混在させるようにしている。X線光電子分光法を用いて測定を行うことにより、ダイヤモンドとグラファイトそれぞれの結合エネルギーの違いから電子エネルギースペクトルの差が生じるため、どの程度の割合で両者が混在しているかを検出することができる。

【34】
次に、図8(c)に示すように、ダイヤモンド/グラファイト混在領域31に対して異方性ドライエッチングを行う。本例では、Ar中に1~2%の酸素を含む雰囲気において、RIEによるエッチングを行う。エッチング時間は1minとした。酸素系ガスを用いたドライエッチングでは、ダイヤモンドよりもグラファイトの方がエッチングされやすいため、このドライエッチングにより、混在領域31のうち、グラファイト部分が選択的にエッチングされ、ダイヤモンド部分32が残置する。エッチングガスとしては、酸素以外に水素を用いることも可能である。

【35】
図9は、図6(c)の丸で囲んだ部分を拡大して示した図であり、グラファイト部分が除去され、ダイヤモンド部分からなるダイヤモンドエミッタ32aが形成されている。これらの多数のダイヤモンドエミッタ32aによってエミッタ群が構成される。ダイヤモンドエミッタ32aの高さは80nm程度であり、直径は50nm程度以下でほとんどが直径20nm程度以下である。エミッタ32aの密度は最大で108 cm-2程度、最低でも106 cm-2程度であり、非常に高密度である。また、エミッタ先端も少なくとも1割以上が先鋭化していた。

【36】
次に、図8(d)に示すように、電荷供給電極となる金属膜15を真空蒸着する。金属膜15の形成方法は、上述した実施形態と同様、開口を有する金属マスク板を用いて行えばよい。

【37】
以上のように、本参考例によれば、ダイヤモンド膜に対してアルゴンやカーボンをイオン注入して、ダイヤモンド/グラファイト混在領域を形成し、ダイヤモンドに対してグラファイトを選択的にドライエッチングすることで、高アスペクト比のダイヤモンドエミッタを高密度で形成することができる。したがって、このようにして形成されたダイヤモンドエミッタを用いることで、安定性や信頼性に優れた電子放出素子を作製することが可能となる。

【38】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出され得る。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、所定の効果が得られるものであれば発明として抽出され得る。

【39】

【発明の効果】本発明によれば、アスペクト比の高い高密度のエミッタを有し、安定性や信頼性に優れた電子放出素子を得ることが可能となる。

【4】
例えば、V.V.Zhironらは(J. Vac. Sci. Technol. B13(2), Mar/Apr 1995)、以下のような方法を提案している。まず、エミッタの母体となるSiを加工して、高さ100μm、直径数μm程度の柱状構造を形成する。続いて、この柱状構造体の先にSi-Au合金を厚さ数μm程度形成する。さらに、エッチングや酸化技術を用いて柱状構造体の先端を尖らせ(シャープニング)、シャープニングしたSiエミッタにダイヤモンドをコーティングする。しかしながら、この手法で形成したダイヤモンドコーティングエミッタは、ダイヤモンドが個々の柱状構造体上に均一に形成されないため、安定性や信頼性に問題がある。

【5】
また、単結晶ダイヤモンドを用いたエミッタの作製も提案されている。この方法では、単結晶ダイヤモンドの低指数面(001)、(111)、(011)で構成されるファセットを利用してエミッタの作製が行われる。しかしながら、この方法では、エミッタ先端の角度は高々45度程度である。エミッタ先端が先鋭化するほど電界集中が大きくなり低電界での電子放出が可能となるが、現状では平坦な単結晶面との大きな差は見られない。

【6】
一方、ダイヤモンド上にマスク膜を形成し、これをマスクとしてダイヤモンドをエッチングする方法も考えられる。しかしながら、このようなマスクは通常フォトリソグラフィの技術を用いて形成される。そのため、ダイヤモンドエミッタは電荷供給電極(ダイヤモンドエミッタに電荷を供給するための電極)との間で一定以上の距離を隔てて形成されることになり、ダイヤモンドエミッタと電荷供給電極との間に介在する抵抗成分によって大きな電圧ロスが生じる。また、ダイヤモンドエミッタの密度を高くすることも難しい。したがって、ダイヤモンドエミッタから安定して電子を放出させることが困難である。さらに、フォトリソグラフィ工程によって全体の工程も増加する。

【7】

【発明が解決しようとする課題】このように、ダイヤモンドをエミッタ材料に用いた場合、従来は安定性や信頼性に優れた電子放出素子を簡単な工程で作製することが困難であった。

【8】
本発明は上記従来の課題に対してなされたものであり、安定性や信頼性に優れた電子放出素子の製造方法を提供することを目的としている。

【9】

【課題を解決するための手段】(構成)本発明に係る電子放出素子の製造方法は、ダイヤモンドを含む基板を用意する工程と、前記基板上に開口を有するマスク板を配置する工程と、前記マスク板を介して前記基板上に金属材料を堆積することにより、前記基板上の前記開口に対応した領域及びその周囲の領域に金属膜を形成する工程と、前記金属膜をマスクとして前記ダイヤモンドをエッチングして、電子を放出する先鋭な複数のダイヤモンドエミッタからなるエミッタ群を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図9】
2
【図1】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
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【図8】
8