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明細書 :光学系の薄層斜光照明法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3828799号 (P3828799)
公開番号 特開2003-185930 (P2003-185930A)
登録日 平成18年7月14日(2006.7.14)
発行日 平成18年10月4日(2006.10.4)
公開日 平成15年7月3日(2003.7.3)
発明の名称または考案の名称 光学系の薄層斜光照明法
国際特許分類 G02B  21/06        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  13/10        (2006.01)
FI G02B 21/06
G01N 21/64 E
G01N 13/10 F
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2001-380967 (P2001-380967)
出願日 平成13年12月14日(2001.12.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年6月18日発行の日刊工業新聞に掲載
審査請求日 平成15年12月18日(2003.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】徳永 万喜洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100107009、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 隆生
審査官 【審査官】谷山 稔男
参考文献・文献 特許第3093145(JP,B2)
特開平05-119266(JP,A)
特開平05-224128(JP,A)
特開2001-083428(JP,A)
調査した分野 G02B 19/00-21/00,21/06-21/36
G01N 21/62-21/74
特許請求の範囲 【請求項1】
対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明において、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算される 試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明することを特徴とする光学系の薄層斜光照明法。
【請求項2】
試料の屈折率よりも開口数が大きい対物レンズを用いて、試料への照明光入射角度をさらに光軸に垂直に近くし、より薄い光で試料を照明することを特徴とする請求項1記載の光学系の薄層斜光照明法。
【請求項3】
対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明であって、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算される 試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光の入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する光学系の薄層斜光照明において、焦点位置を変えて異なる高さの試料面を観察する場合に、照明光の対物レンズへの入射角を変えることにより、試料観察面における照明光の入射角を一定に保つことを特徴とする光学系の薄層斜光照明法。
【請求項4】
対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明であって、試料観察面での照 射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照 明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算され る試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光の入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する光学系の薄層斜光照明において、複数の入射光の使用や、回転等による入射位置の移動によって、偏りのない薄層斜光照明を行うことを特徴とする光学系の薄層斜光照明法。
【請求項5】
光学系が蛍光顕微鏡や暗視野顕微鏡などの光学顕微鏡、対物レンズを用いたレンズ光学系であることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の光学系の薄層斜光照明法。
【請求項6】
薄層光照明を用いた顕微鏡観察において、焦点位置を移動させながら連続画像を得て、デコンボリューションによってセクショニング画像及び3次元画像を得ることを特徴とする請求項5記載の光学系の薄層斜光照明法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物質や分子を光を使って高感度検出する顕微鏡と同等の光学系の薄層斜光照明法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、物質や分子を光を使って高感度検出する光学顕微鏡の照明技術は種々のものが提案されており、その内の幾つかを以下に説明する。図9は、蛍光顕微鏡の照明として、現在一般的に使われている落射照明方法の概略図である。図に示すように、光源からの光を、照射光は反射し、蛍光は透過させるダイクロイックミラーで反射させて、対物レンズ中央に入射し、試料観察面を照射するものである。
【0003】
また、ガラス表面近傍のみを局所的に照明する方法として、全反射照明法がある。全反射した際に生じるエバネッセント光(深さ100200nm程度)を使って照明するものである。プリズムを使う方法と対物レンズを使う方法があるが、図10に対物レンズ型全反射照明法の概略図を示す。対物レンズの開口数をNA、試料溶液の屈折率をnとしたとき、開口数(NA)がNA>nの式を満たす対物レンズにより全反射照明が可能となる。この方法は、従来、極く限られた利用のみであったが、蛍光色素1分子を蛍光顕微鏡で観察する方法として有用であることが判明し、最近1分子イメージング用に使用され始めている。
【0004】
更に、本発明者が提案し、特許第3093145号として既に特許されている光照射切り替え方法の概略を図11に示す。1は試料溶液、2はカバーガラス、3はオイル、4は対物レンズ(レンズ群)、5は照射光、6は照射光、7はダイクロイックミラーである。落射照明から全反射照明の状態への変更を、ミラー等の光学部品を図11(A)→11(B)→図11(C)へと移動することのみで実現することができ、余分な光学系を必要とせず、簡単な原理で照射の切替を行えることができる。また、この方法では、入射光位置又は光源位置(例えば光ファイバーの出射位置)をずらすことによっても同等の状態変更を実現することができる。
【0005】
また、他の方法として、通常の光学顕微鏡や落射照明法による蛍光顕微鏡において、セクショニング像や3次元画像を得る方法としては、焦点を連続的に変化させて得た連続画像からデコンボリューションによって計算する方法が用いられている。これは、試料上の1点から出た光の像が、焦点からはずれた時にどうなるかを予め知っておくことにより、計算によって元の3次元像を計算するものであるが、厚みのある試料や、明るい中にある暗い部分を観察する場合には、この方法では限界がある。
【0006】
また、他の方法として、セクショニング像や3次元画像を用いる方法としては、現在、共焦点顕微鏡法が広く普及している。この方法は、高感度カメラに比べると感度が劣っており、特に蛍光試料の観察においては、レーザー光を1点に集光して照射するために、蛍光色素の退色が早くなったり、生物試料に損傷を与えるなどの難点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の方法では、厚みのある試料や明るい中にある暗い部分の観察において、高感度、高S/N比を得ることができなかった。そこで本発明は、顕微鏡と同等の光学系を用いて光を使って物質や分子を高感度検出することを可能とし、光学顕微鏡における低背景・高感度観察を可能にする光学系の薄層斜光照明法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る光学系の薄層斜光照明法は、対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明において、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算される 試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する構成とした。
【0009】
これにより、対物レンズを用いた斜光照明において、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明することができ、光学顕微鏡においては、低背景・高感度のセクショニング像や3次元画像を得ることができる。
【0010】
この発明の請求項2に係る光学系の薄層斜光照明法は、対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明であって、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算される 試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光の入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する薄層斜光照明法において、試料の屈折率よりも閉口数が大きい対物レンズを用い、試料への照明光入射角度をさらに対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照射領域を絞ることにより、より薄い層状の光で試料を照明する構成とした。
【0011】
これにより、口数の大きい対物レンズを用いるほど照明光を薄くでき、試料の屈折率よりも開口数が大きい対物レンズを用いて、試料への照明光入射角度を更に光軸に垂直に近くすることで、より薄い光で照明することができる。
【0012】
この発明の請求項3に係る光学系の薄層斜光照明法は、対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明であって、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算される 試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光の入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する光学系の薄層斜光照明において、焦点位置を変えて異なる高さの試料面を観察する場合に、照明光の対物レンズへの入射角を変えることにより、試料観察面における照明光の入射角を一定に保つように構成した。
【0013】
これにより、対物レンズの焦点位置を変えて、試料観察面のカバーガラス表面からの高さを変えても、対物レンズへの照明光の入射角を変えることにより、同じ入射角で試料を照明することができる。
【0017】
この発明の請求項4に係る光学系の薄層斜光照明法は、対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明であって、試料観察面での照 射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照 明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、d=2r・cosθの式により計算され る試料における照明光の厚さdが20μm以下になるように、対物レンズの縁に光を入射し、試料への照明光の入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分δφを小さくして、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明する光学系の薄層斜光照明において、複数の入射光の使用や、回転等による入射位置の移動によって、偏りのない薄層斜光照明を行う構成とした。
【0018】
この発明の請求項5に係る光学系の薄層斜光照明法は、上記請求項1乃至請求項4の光学系が蛍光顕微鏡や暗視野顕微鏡などの光学顕微鏡、対物レンズを用いたレンズ光学系にも適用可能な構成とした。
【0019】
これにより、光学顕微鏡はもとより各種の顕微鏡及び光を用いた検出において、低背景の画像及び低バックグラウンドのシグナルを得ることができる。その結果として、高感度・高いS/N比の画像及びシグナルを得ることができる。
【0020】
この発明の請求項6に係る光学系の薄層斜光照明法は、上記請求項1乃至請求項4の薄層斜光照明法を用いる蛍光顕微鏡、原子間力顕微鏡、トンネル顕微鏡、又はフォトトンネル顕微鏡の光学系において、薄層光照明を用いた顕微鏡観察を、焦点位置を移動させながら連続画像を得て、デコンボリューションによってセクショニング画像及び3次元画像を得る構成した。
【0021】
これにより、薄層光照明を用いた顕微鏡観察から、焦点位置を移動させながら連続画像を得て、デコンボリューションによってセクショニング画像及び3次元画像を得ることができ、背景光が低く高画質である。また、試料の照明が薄い層状領域のみの局所的であるので、得られる蛍光像を高感度カメラであるイメージングインテンシファイアーCCDによって観察することにより、蛍光色素1分子を可視化できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、対物レンズを用いたレンズ光学系の斜光照明において、試料を薄い層状の光で照明することにより、照明光のあたる領域が局所的に制限されて、背景光を低くすることができ、高感度で高いS/N比の画像およびシグナルを得ることができることに依拠するものである。光学系としては蛍光顕微鏡や暗視野顕微鏡などの光学顕微鏡はもとより、対物レンズを用いたレンズ光学系にも広く適用できるものである。次に、本発明の実施形態を図1乃至図8に基づいて以下に詳述する。
【0023】
図1に照明光の厚さを求める原理を示す。図において、試料観察面での照射半径をr、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角(又は、照明光と対物レンズ光軸とのなす角)をθとすると、
【数1】
d=2r・cosθ
の関係式により、試料における照明光の厚さdを求めることができる。
【0024】
図2に光学系の対物レンズに関連する部分拡大図を示す。図において、1は試料媒体(溶液等)、2はカバーガラス、3はオイル、4は対物レンズ(レンズ群)、5は照射光である。光源からの照射光はダイクロイックミラー(図示なし)で直角に屈折されて照射光5となり、オイル3、カバーガラス2を経て試料媒体1に斜光照明される。
【0025】
図2において、試料における照明光の厚さをd、試料における照明光の入射角をθ、レンズへの照明光入射位置、即ち、対物ンズ後焦点面における照明光のレンズ光軸からの距離をX、照明光の対物レンズへの入射角をφ、照明光の対物レンズ入射の開き角の半分をδφとすると、試料における照明光の厚さdを与える式 d=2r・cosθにおいて、試料への照明光の入射角θはXとφによって決まり、試料観察面での照射半径rはδφによって決まる値であることがわかる。従って、照明光の厚さdを薄くすることは、cosθおよびrを小さくすることにより実現できる。
【0026】
cosθを小さくするには、θを90度に近づければ良いが、そのためにXを大きくする。即ち、対物レンズの縁に光を入射し、試料において対物レンズ光軸と垂直に近い角度で斜光照明をおこなう。更に、対物レンズへの入射角φを調節して、θを90度近くにする。
【0027】
照射半径rを小さくするためには、δφを小さくすれば良い。その際、rを小さくすると観察視野が狭められるので、観察視野の許す範囲において、rを小さくする必要がある。
【0028】
こうして、対物レンズを用いた斜光照明において、試料への照明光入射角度を対物レンズ光軸に垂直に近い角度にし、照射領域を絞ることにより、薄い層状の光で試料を照明することができる。そして、光学顕微鏡においては、低背景・高感度のセクショニング像や3次元画像を得ることができる。
【0029】
また、口数の大きい対物レンズを用いるほど照明光を薄くできるが、試料の屈折率よりも開口数が大きい対物レンズを用いて、試料への照明光入射角度を更に光軸に垂直に近くすることで、より薄い光で照明することができる。対物レンズの開口数(NA)が大きいほど、図2においてXを大きくすることができ、照明光の入射角θが大きくなるので、その結果として、照明光の厚さdを薄くすることができる。
【0030】
次に、図3を参照して、対物レンズの開口数NAで決まるXの最大値をXNA、試料の屈折率nで決まる全反射が起こるXの境界値をXn とすると、閉口数NAが試料の屈折率nよりも大きいレンズでは、図3(A)に示すように、Xを大きくすると全反射が起こり試料を照明できなくなる。
【0031】
しかし、図3(B)に示すように、対物レンズへの入射角φを調節することにより、全反射を起こすことなく試料を斜光照明することができる。この方法を用いると、照明光の入射角θを90度により近い値にすることが可能となり、照明光の厚さdを更に薄くすることができる。
【0032】
次に、対物レンズの焦点位置を変えて、試料観察面のカバーガラス表面からの高さZを変える場合について図4を参照して説明する。図4(A)は対物レンズへの照明光の入射角φでは、試料観察面のカバーガラス表面からの高さはZであることを示す。
【0033】
図4(B)は対物レンズへの照明光の入射角が(φ+△φ)では、試料観察面のカバーガラス表面からの高さは(Z+△Z)となることを示す。それ故、対物レンズの焦点位置を変えても対物レンズへの照明光の入射角φを変えることにより、同じ入射角θで試料を照明することができる。
【0034】
次に、カメラ等の受光素子の受光面を傾ける場合、あるいは結像レンズを傾ける場合について図5を参照して説明する。図5において、1は試料媒体(溶液等)、2はカバーガラス、3はオイル、4は対物レンズ(レンズ群)、5は照射光、8は試料観察面、9は結像レンズ、10はカメラ等の受光素子である。図では、レンズ系を単純化して描いているが、実際には中間にレンズ群が入って構成されている。
【0035】
図5(A)はカメラ等の受光素子10の受光面を傾けることにより、試料観察面8を傾け、斜光照明光5と試料観察面8を平行、若しくはほぼ平行にして観察することができることを示している。
【0036】
また、図5(B)は結像レンズ9を傾けることにより、試料観察面8を傾け、斜光照明光5と試料観察面8を平行もしくはほぼ平行にして観察することができることを示している。結像レンズ9を傾ける方法では、中間の光学系の変更によっても同等のことを行うことができる。
【0037】
図5(A)の試料観察面8を傾ける場合に、対物レンズ4に入射する照明光の形を細長くし、試料を照明する薄層光をさらに薄くすることができる。このことを図6を参照して説明する。符号は上述の例と同一である。
【0038】
図6(A)は図2と同じ構成であるので説明は省略する。図6(B)は試料領域の照射光を上側からみた拡大図である。照明光の厚さdを与える式 d=2r・cosθにおける、rはカバーガラスに平行な面による照明光の断面形状の、照明光進行方向の半径である。試料観察面を傾けている場合には、観察視野の大きさはrには依存せず、rに垂直な方向の半径r’によって決まる。従って、r’は大きくし、rは小さくした細長い形の入射光を用いると、観察視野を狭めることなく、照明光の厚さdを薄くすることができる。
【0039】
こうして、薄層光照明を用いた顕微鏡観察から、焦点位置を移動させながら連続画像を得て、デコンボリューションによってセクショニング画像及び3次元画像を得ることができる。そして、本発明によると従来法とは違って、背景光が低く高画質であることに加え、試料の照明が薄い層状領域のみの局所的である。
【0040】
それ故に、試料観察面近傍の領域のみをデコンボリューションの計算対象とすれば良いという計算上・画質上ともに大きな利点がある。従って、厚みのある試料の観察、明るい中にある暗い部分の観察、1分子観察のような高感度観察の、セクショニング画像及び3次元画像を行うことを可能にする。
【0041】
更に、図7のように、複数の入射光または回転対称な入射光の使用や、回転等による入射位置の移動によって、偏りのない薄層光照明を行うことができる。
【0042】
次に、本発明を適用して蛍光顕微鏡に薄層斜光照明法を用いた例を図8に示す。図において、符号は上述の例と同一物のものには同一符号を付しており、11は光学フィルタ、12はミラー、13は集光用レンズ、Rは照明レーザー光可変絞りの内径である。レーザー光を照明光として用い、集光用レンズ13によって対物レンズ4の後焦点面にレーザー光を集光し、試料における照明光を平行光にする。
【0043】
可変絞り径Rを変えて入射開き角δφを変化させ、照射半径rを調節する。ミラー12と集光用レンズ13を一体としてtx方向に移動させることにより、入射位置Xを調節する。次に、ミラー12へのレーザー光の入射位置をtφ方向に移動すると、集光用レンズ13を通過後の光路の傾きが変化するので、tφによって対物レンズ4への入射角φを調節する。以上の調節によって、試料における照明光の層の厚さ d=2r・cosθを数ミクロンに設定することができる。
【0044】
実施例を挙げると、油浸100倍 NA1.4の対物レンズを用い、試料観察面における照射領域の直径2r=30μmの時、試料における入射角θ=80°でd=5μm、入射角θ=84°でd=3μmとなる。油浸60倍 NA1.4の対物レンズを用い、試料観察面における照射領域の直径2r=45μmの時、試料における入射角θ=86°でd=3μmとなる。
【0045】
こうして、薄層斜光照明によって得られる蛍光像を、高感度カメラであるイメージングインテンシファイアーCCDによって観察することにより、蛍光色素1分子を可視化できる。
【0046】
また、他の適用例として、蛍光顕微鏡において、試料観察面を傾け、照明光を細長くし、高NA対物ンズを用いて、薄層照明光を薄くする例を説明する。図8の蛍光顕微鏡において、図5の結像レンズを傾ける方法により試料観察面を傾け、図6の細長い照明光を使う方法を用いる。
【0047】
カバーガラスでの照明光の断面形状は、短径2r=30μm、長径2r’=100μmにする。このようにすれば、1辺100μmの観察視野を得ることができ、観察視野を狭めることなく、照明光の厚みを薄くできる。
【0048】
式 d=2r・csθから、試料における照明光の層の厚さdは、油浸60倍 NA1.4の対物レンズを用いると、2r=30μm、試料における照明光の入射角θ=86°でd=2μmとなる。但し、厚さdが光の波長(可視光で0.4~0.7μm)に近くなるため、回折現象により光の層の上下に光の広がりが見られ始める。
【0049】
更に、NAの大きい油浸60倍 NA1.45の対物レンズを用いると、試料における入射角θ=87°、即ち、カバーガラスとのなす角が3°となり、照明光とカバーガラスとがほとんど平行になる。このように平行に近づけることにより、結像レンズを傾けることによる画質への影響が無視できるようになる。光の厚さdに関しては、理論的には2μmより薄くなるが、回折光による厚みの広がりも強くなる。
【0050】
本発明の光学系の薄層斜光照明と従来の斜光照明法による照明光の厚みを実測比較すると、図12に示すように、例えば開口数NA=1.4の対物レンズを用いた場合、従来の斜光照明法による照明光の厚みの約半分の厚みが得られた。
【0051】
本発明の薄層斜光照明法を用いた蛍光顕微鏡観察によって、細胞内においても明瞭な1分子イメージングが実現した。その結果、分子1個の動きや変化を直接観察できるようになった。それと共に、分子1個の蛍光強度を得ることによって、蛍光強度から細胞内における分子数を定量することも実現できた。更に、分子数の定量から細胞内における分子間相互作用の結合分子数と結合の強さを求めることを実現できた。
【0052】
現在、ナノテクノロジーのバイオへの応用が強い興味を集めているが、1分子レベルの高感度検出を可能にする本発明の薄層斜光照明法は、この分野における重要な要素技術になるものと考えられる。また、顕微鏡技術としても、新しい顕微鏡法として発展することが期待される。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光学系の薄層斜光照明法は、対物レンズを用いた斜光照明において、薄い層状の光で試料を照明することにより、光学顕微鏡はもとより各種の顕微鏡及び光を用いた検出において、低背景の画像及び低バックグラウンドのシグナルを得ることができる。その結果として、高感度・高いS/N比の画像及びシグナルを得ることができる。
【0054】
また、薄層光照明を用いた顕微鏡観察から、焦点位置を移動させながら連続画像を得て、デコンボリューションによってセクショニング画像及び3次元画像を得ることができ、背景光が低く高画質である。また、試料の照明が薄い層状領域のみの局所的であるので、得られる蛍光像を高感度カメラで観察することにより、蛍光色素1分子を可視化できると共に、分子1個の蛍光強度を得ることによって、蛍光強度から細胞内における分子数を定量することも実現できる。更に、分子数の定量から細胞内における分子間相互作用の結合分子数と結合の強さを求めることを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の照明光の厚さを求める原理図。
【図2】光学系の対物レンズに関連する部分拡大図。
【図3】対物レンズへの入射角を調節方法の概略図。
【図4】対物レンズの焦点位置を変える方法の概略図。
【図5】受光素子の受光面あるいは結像レンズを傾ける方法の概略図。
【図6】対物レンズに入射する照明光の形を細長くする方法の概略図。
【図7】複数の入射光または回転対称な入射光を使用する方法の概略図。
【図8】蛍光顕微鏡の薄層斜光照明法の概略図。
【図9】蛍光顕微鏡の落射照明法の概略図。
【図10】対物レンズ型全反射照明法の概略図。
【図11】光照射切り替え方法の概略図。
【図12】本発明方法と従来方法の照明光の厚めの比較表。
【符号の説明】
1 試料媒体(溶液等)
2 カバーガラス
3 オイル
4 対物レンズ(レンズ群)
5,6 照射光
7 ダイクロイックミラー
8 試料観察面
9 結像レンズ
10 受光素子
11 光学フィルタ
12 ミラー
13 集光用レンズ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11