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明細書 :シルアルキレンシロキサンの重合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3793461号 (P3793461)
登録日 平成18年4月14日(2006.4.14)
発行日 平成18年7月5日(2006.7.5)
発明の名称または考案の名称 シルアルキレンシロキサンの重合方法
国際特許分類 C08G  77/50        (2006.01)
FI C08G 77/50
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2001-533882 (P2001-533882)
出願日 平成12年10月27日(2000.10.27)
国際出願番号 PCT/JP2000/007531
国際公開番号 WO2001/030887
国際公開日 平成13年5月3日(2001.5.3)
優先権出願番号 1999306522
優先日 平成11年10月28日(1999.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成14年2月5日(2002.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】永島 英夫
【氏名】松原 公紀
【氏名】寺沢 淳一
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】辰己 雅夫
参考文献・文献 特開平04-065428(JP,A)
特開平04-065429(JP,A)
Matsubara,Kouki,Silane-induced ring-opening polymerization of 1,1,3,3-tetrametyul-2-oxa-1,3-disilacyclopentane ~,Journal of Organometallic Chemistry,2002年,Vol.660/No.2,p.145-152
Matsubara,Kouki,Practical procedures for hydrosilylation of ketones and silane-induced ring-opening ~ ,Kyushu Daigaku Kino Busshitsu Kagaku Kenkyusho Hokoku,2001年,Vol.15/No.2,p.183-188
調査した分野 C08G 77/00-77/62
CAPLUS(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
3個または4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウム-カルボニル錯体を触媒とし、下記の一般式(1)または(2)で表わされるシラン化合物の存在下に、下記の一般式(3)で表わされる環状のシルアルキレンシロキサンを開環重合して下記の一般式(4)で表わされる反復単位を有する鎖状のポリシルアルキレンシロキサンを生成させることを特徴とするポリシルアルキレンシロキサンの製造方法。
JP0003793461B2_000013t.gif〔式(1)中、X、XおよびXは互いに同一または別異の官能基または原子を表わし、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基から成る群より選ばれる。〕
JP0003793461B2_000014t.gif〔式(2)中、X、X、XおよびXは互いに同一または別異の官能基または原子を表わし、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基から成る群より選ばれ、aは1~4の整数である。〕
JP0003793461B2_000015t.gif〔式(3)および(4)中、bは1~4の整数であり、Rは炭素数1~8の炭化水素基を表わす。〕
【請求項2】
触媒が、下記の式(5)~(9)で表わされる多核ルテニウム-カルボニル錯体のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1のポリアルキレンシロキサンの製造方法。
JP0003793461B2_000016t.gifJP0003793461B2_000017t.gif
【請求項3】
原料のシルアルキレンシロキサンが下記の式(10)で表わされるシルエチレンシロキサンであり、下記の式(11)で表わされる反復単位を有するポリシルエチレンシロキサンを生成させることを特徴とする請求項2のポリシルアルキレンシロキサンの製造方法。
JP0003793461B2_000018t.gif
【請求項4】
シラン化合物としてH(CHSi(CHSi(CHHを用いることを特徴とする請求項3のポリシルアルキレンシロキサンの製造方法。
【請求項5】
Rがメチル基であることを特徴とする請求項4のポリシルアルキレンシロキサンの製造方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、シリコーン化合物(ポリシロキサン)を製造する技術に関し、特に、環状のシルアルキレンシロキサンを開環重合して、対応する鎖状のシルアルキレンシロキサンを製造する新規な方法に関する。
背景技術
シリコーン化合物(ポリシロキサン)は、耐熱性や耐候性等に優れ、特異な電気特性を有する等の性質により、各種の分野に広く利用されるとともに、更にいろいろな改良が試みられている。ポリシルアルキレンシロキサンもそのような改良シリコーンの1種であり、シロキサン主鎖にシルエチレン結合のようなシルアルキレン結合を導入することにより、それまでに多用されていたジメチルポリシロキサンに比べて、酸、アルカリ等に対して優れた耐性を持ち、且つ、機械的強度においても優れたポリマーとして注目されている。
このポリシルアルキレンシロキサンを製造する手段としては、環状のシルアルキレンシロキサンを、アルカリ条件下でリチウムシラノレートを開始剤としてアニオン重合により開環重合する方法が報告されている(B.Suryanarayanan他、J.Polym.Sci.,12,1089-1109(1974))。さらにその修正法として、カリウムシラノレートを開始剤とし、ジビニルシロキサンを連鎖移動剤として開環重合する方法(特公平6-15614:特願平2-178727)や水を連鎖移動剤として開環重合する方法(特公平6-62773:特願平2-178728)が提示されている。このように、従来技術は、アルカリ条件下のアニオン重合によるリビング重合を基本としているため分子量制御に連鎖移動剤の使用が必要である点において、反応操作が煩雑である。
発明の開示
本発明者は、このたび、特定の遷移金属触媒とシラン化合物とを用いることによって、連鎖移動剤の使用を必要とせず、中性条件下に環状シロキサンを開環重合して、対応する鎖状ポリシロキサンを製造することのできる新しい方法を見出した。
かくして、本発明に従えば、3個または4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウムカルボニル錯体を触媒とし、下記の一般式(1)または(2)で表わされるシラン化合物の存在下に、下記の一般式(3)で表わされる環状のシルアルキレンシロキサンを開環重合して下記の一般式(4)で表わされる反復単位を有する鎖状のポリシルアルキレンシロキサンを生成させるポリシルアルキレンシロキサンの製造方法が提供される。
JP0003793461B2_000002t.gif式(1)中、X、XおよびXは互いに同一または別異の官能基または原子を表わし、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基から成る群より選ばれる。
JP0003793461B2_000003t.gif式(2)中、X、X、XおよびXは互いに同一または別異の官能基または原子を表わし、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基から成る群より選ばれ、aは1~4の整数である。
JP0003793461B2_000004t.gif式(3)および(4)中、bは1~4の整数であり、Rは炭素数1~8の炭化水素基を表わす。
発明を実施するための最良の形態
本発明の方法に従えば、3個または4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウム-カルボニル錯体を触媒とし、シラン化合物と組み合わせて用いることにより、環状シルアルキレンを開環重合して対応する鎖状のポリシルアルキレンシロキサンを簡単に合成することができる。すなわち、本発明に従えば、触媒量のルテニウム錯体と、少量のシラン化合物を用いるのみで、所望のポリマーが得られ、且つ、反応条件を変えることによりポリマーの分子量を比較的容易に制御することができる。本発明において用いられる多核ルテニウムカルボニル触媒の構造、製法等の詳細は本発明者らによる学術文献に記述されている〔H.Nagashima他、J.Am.Chem.Soc.,115,10430-10431(1993);H.Nagashima他、Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2441-2448(1998);S.A.R.Knox他、J.Am.Chem.Soc.,97,3942(1975);M.I.Bruce他、Inorg.Synth.,26,262(1989)〕。
本発明は、遷移金属触媒を用いて開環重合を達成した珍しい例である。しかしながら、同じく遷移金属のカルボニル錯体として従来よりよく知られているCo(CO)のような錯体はそのような反応の触媒としては機能しない。
本発明において用いられるルテニウム-カルボニル錯体は、カルボニル基が配位子となり複数のルテニウム原子が含まれた安定な多核構造を形成し、シルアルキレンシロキサンの開環重合に有効なクラスター触媒を提供する。本発明の方法において触媒として用いられる多核ルテニウム-カルボニル錯体は、3個または4個のルテニウム原子に複数のカルボニル基が配位した構造であれば、基本的には適用可能であるが、好ましくは、カルボニル基以外の配位子としてヒドリドおよび/またはアセナフチレンやアズレンのような多環式芳香族分子から成る配位子を含むものが好ましい。これらの配位子を追有する多核ルテニウム-カルボニル錯体は、シルアルキレンシロキサンの開環重合に対する活性が特に優れているが、これは、これらの配位子は、複数の金属を架橋してクラスター構造を保つとともに、反応基質が近づくと所謂ハプティシティー変化を起こし、活性金属種を形成するためと考えられる。かくして、本発明において用いられる触媒として特に好ましい多核ルテニウム-カルボニル錯体は、下記の構造式(5)~(9)のいずれかから選ばれるものである。
JP0003793461B2_000005t.gifJP0003793461B2_000006t.gif本発明に従う開環重合反応は、次の式(I)により総括的に表わすことができる。
JP0003793461B2_000007t.gif上記式(I)中、(3)は原料モノマーである環状のシルアルキレンシロキサンを表わし、bは1~4の整数である。すなわち、本発明の方法は、4~7員環の環状シルアルキレンシロキサンであるシルメチレンシロキサン、シルエチレンシロキサン、シルプロピレンシロキサンおよびシルブチレンシロキサンを開環重合して、式(4)で表わされる反復単位を有する対応する鎖状ポリマー(ポリシルアルキレンシロキサン)を得ることを対象とする。
式(3)および(4)において、Rは炭素数1~8の炭化水素基を表わし、具体的には、炭素数1~8のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが例示される。Rとして特に好ましいのは、メチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基である。また、式(3)および(4)における4個のRは一般的には同一のものであるが、別異のものであってもよい。
本発明の方法は、特に、下記の式(10)で表わされる5員環構造(b=2)をもつシルエチレンシロキサンから、下記の式(11)で表わされる反復単位を有するポリシルエチレンシロキサンを合成するのに適している。
JP0003793461B2_000008t.gif式(10)および(11)において、Rとして好ましい例はメチル基である。
本発明に従えば、以上のような環状シロキサンを特定の触媒とシラン化合物の存在下に開環重合反応させることにより、対応する鎖状ポリマーが得られる。触媒は既述したような多核ルテニウム-カルボニル錯体である。
シラン化合物としては、前述の一般式(1)または(2)によって表わされるものが使用される。既述したように、式(1)におけるX、XおよびXならびに式(2)におけるX、X、XおよびXは、互いに同一または別異の各種の官能基または原子から選ばれ、好ましい官能基または原子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基(ピリジル基など)などが挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1~8である。X~Xとして、特に好ましいのは、炭素1~4の低級アルキル基(例えばメチル基)およびフェニル基である。式(1)および(2)から理解されるように、これらのシラン化合物の構造上の特徴は少なくとも1つのSi-H結合を有することにある。式(1)および式(2)のシラン化合物は、既知の化合物として容易に入手することができる。
式(1)または(2)のシラン化合物のうち、式(2)のシラン化合物は、その濃度を下げて使用できる点において好ましい。特に好ましいのは、所望のポリシルアルキレンシロキサンに対応するアルキレン構造を有するシラン化合物、すなわちa〔式(2)〕=b〔式(4)〕の関係を満たすシラン化合物である。例えば、ポリシルエチレンシロキサンを製造する場合、助触媒としてH(CHSi(CHSi(CHH(テトラメチル示シルエチレン)を用いることが好ましい。
本発明に従う開環重合反応は、上述したような触媒とシラン化合物を用いることにより、中性条件下に非水溶媒中で行うことができる。好適な溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。反応は、常圧または減圧下に5~80℃、一般には30~50℃において行われ、反応時間は、2~100時間、一般には2~50時間である。
得られるポリマーの分子量は、特に限定されるものではないが、一般に、数平均分子量として約500~500,000である。本発明の方法に従えば、多核ルテニウム-カルボニル錯体から成る触媒とシラン化合物を用いるだけで、連鎖移動剤を使用することなく、得られるポリマーの分子量を制御することができる。すなわち、一般にモノマーの濃度を低くすることにより得られるポリマーの分子量は小さくなる。さらに、アセトンのような非プロトン性の溶媒を添加することによりポリマーの分子量を低下させることもできる。また、本発明の方法によって得られるポリマーは、Mw/Mnが一般に1.3から2.6の範囲にあり(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)、せまい分子量分布をもつ。ポリマーの両末端は、通常は水素原子であるが、系内に水が存在すると水酸基になっていることもある。
実施例
以下に、本発明の特徴をさらに明かにするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書に示す化学構造式においては、慣用的な表現方法に従い炭素原子や水素原子を省略していることがある。
実施例1
この実施例は、本発明に従う開環重合反応を例示するとともに、得られたポリマーの分析法を詳述するものである。共通摺り合わせジョイントを備えた直径5mmの肉厚NMR管に、下記の式(12)で表わされる5員環状シルエチレンシロキサンモノマー43mg(0.27mmol)、ジメチルフェニルヒドロシラン(シラン化合物)30mg(0.27mmol)、前記の式(5)で表わされる3核ルテニウムヘプタカルボニル錯体(触媒)1.7mg(2.7×10-3mmol)及び、重水素化ベンゼン(C)0.53gを仕込み、脱気封管した。
JP0003793461B2_000009t.gif次にこのNMR管を振とうしながら40℃に加熱した。そのまま40℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、開管してジエチルエーテルを0.3g投入して生成したポリマーを溶解させた。この溶解液をフラスコに移し、室温0.003mmHgで12時間、重水素化ベンゼン、未反応のシランを留去してオイル状物50mgを得た。
このオイル状物について、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィ)、赤外線吸収スペクトル、H NMR、13C NMR、29Si NMRによる測定を行ったところ、次ぎのような結果であった。
GPC:
機器 カラムオーブン:SHIMADZU CTO-10A、ポンプ:JASCO PU-980
測定条件 カラム:Shodex KF804L+KF805L(各1本)
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折計
温度:40℃
検量:ポリスチレンスタンダード×8種
そのチャートを図1に示す。このチャートから明らかな通り、単分散のパターンが示された。
赤外線吸収スペクトル:
図2にチャートを示す。
Si-O:1048cm-1
Si-CH:1257cm-1
H NMR:C中、内部標準C
δ(ppm)
0.21(s,Si-CH,12H)
0.65(s,Si-CH,4H)
13C NMR:C中、内部標準C
δ(ppm)
-0.04(Si-CH
10.26(Si-CH
29Si NMR:C中、外部標準TMS
δ(ppm) 8.25
以上の結果から、上記オイル状物は下記の式(13)で表わされるポリマーであることが確認された。
JP0003793461B2_000010t.gif実施例2
この実施例は、実施例1に記述した場合よりもモノマーの仕込量を増やし(50倍)、用いる溶媒の量を少なくすることによりポリマーの収量が多くなることを示すものである。すなわち、共通摺り合わせジョイントを備えた直径15mmの肉厚アンプル管に、式(12)で表わされる環状シルエチレンシロキサン2.13g(13.3mmol)、ジメチルフェニルヒドロシラン(シラン化合物)1.81g(13.3mmol)、式(5)で表わされるルテニウム-カルボニル錯体(触媒)0.87mg(1.3×10-3mmol)及び、ベンゼン0.27gを仕込み、脱気封管した。次にこのアンプル管を振とうしながら40℃に加熱した。そのまま40℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、開管してジエチルエーテルを0.3g投入して生成したポリマーを溶解させた。この溶解液をフラスコに移し、室温0.003mmHgで12時間、ベンゼン、未反応のシランを留去してオイル状物2.17gを得た。
このオイル状物を実施例1と同様に、GPC、赤外線吸収スペクトルおよびNMRで分析したところ、実施例1と同様のポリマーが得られていることが確認された。
実施例3
反応条件を変えながら、実施例1と同様の操作により、環状シルエチレンシロキサンから鎖状ポリシルエチレンシロキサンへの開環重合を試みた。その結果を表1に示す。
JP0003793461B2_000011t.gifシラン(シラン化合物)相対濃度および触媒相対濃度は、いずれも、モノマーに対するモル比で表している。
Run1は、実施例1に示した標準条件下の実験結果を示し、Run5は実施例2に示した実験結果を示す。また、Run2は、シラン化合物の濃度を実施例1の5倍にした場合の実験結果(30分後反応終了を確認)である。Run3は触媒としてルテニウム触媒ではなく、コバルト錯体Co(CO)を用いた場合の実験結果である。Run4は、実施例1のように減圧下ではなくアルゴンガスを用いた1気圧下での実験結果である。Run6はブランク実験(触媒およびシラン化合物無し、80℃)、Run7はブランク実験(触媒無し)、Run8はブランク実験(シラン化合物無し)の結果をそれぞれ示す。また、RUN9~RUN11は、式(5)以外の各種の多核ルテニウム-カルボニル錯体を触媒として用いた結果を示す。
表1に示されるように、本発明に従い多核ルテニウム-カルボニル錯体を触媒とし、Si-H基を有するシラン化合物の存在下での開環重合反応によれば(Run1,2,4、5、9、10および11)、原料の環状モノマーに対応するポリマーが生成するが、それらの触媒(多核ルテニウム-カルボニル錯体)およびシラン化合物を欠くと開環重合は起こらずポリマーを得ることはできない。
実施例4
この実施例は、アセトンを用いることにより、得られるポリマーの分子量を制御し得ることを示すものである。式(12)のシルエチレンシロキサン(モノマー)43mg(0.27mmol)、ジメチルフェニルシラン(シラン化合物)36mg(0.27mmol)、式(5)の3核ルテニウム-ヘプタカルボニル錯体(触媒)0.174mg(2.7×10-4mmol)、およびC(0.5ml)、アセトン(移動剤)16mg(0.27mmol)をNMR管に封入し、40℃で18時間加熱した。その間、H NMRで反応を追跡した。反応終了後、減圧下で溶媒を除去し、オイル状物45mgを得た。ポリマーの分子量および分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンスタンダードのGPC測定により、それぞれ、4,200および1.3であった。H NMRによる解析により、ポリマー主鎖のメチル部(0.215ppm)、メチレン部(0.656ppm)を確認したほか、末端のイロプロポキシ基の存在を示唆する3.90ppmの多重線が観察され、アセトンが分子量調節剤として働いて分子量が低下したことを示した。用いるアセトンの量を半分にして同様に反応を行ったところ、分子量21,000および分子量分布2.6のポリマーが得られた。
実施例5
この実施例は、シラン化合物として式(2)で表わされる化合物の1種であるテトラメチルジシルエチレンH(CHSi(CHSi(CHHを用いる場合には、シラン化合物濃度を下げることができることを示すものである。式(12)の環状シルエチレンシロキサン(モノマー)43mg(0.27mmol)、テトラメチルジシルエチレン(シラン化合物)0.39mg(0.0027mmol)、式(5)の3核ルテニウム-ヘプタカルボニル錯体(触媒)0.174mg(2.7×10-4mmol)、およびC(0.5ml)をNMR管に封入し、40℃で18時間加熱することによって反応を行わせた。したがって、シラン化合物相対濃度は0.01、触媒相対濃度は0.001である。反応中、H NMRで追跡した。反応終了後、減圧下で溶媒を除去し、オイル状物42mgを得た。ポリマーの分子量および分子量分布は、ポリスチレンスタンダードのGPC測定により、それぞれ、157,000および1.8であった。H NMRによる解析により、ポリマー主鎖のメチル部(0.215ppm)、メチレン部(0.656ppm)を確認した。
実施例6
この実施例は、モノマー濃度を変えることによっても分子量を制御できることを示すものである。シラン化合物としてテトラメチレンジシルエチレンを用い実施例5と同様に重合反応を行った。但し、溶媒Cの量を変化させ、モノマー(環状シルエチレンシロキサン)の濃度を変化させた。その結果を表1に示す。表1に示されるようにモノマー濃度を低くすることによって、得られるポリマーの分子量が低下する。
JP0003793461B2_000012t.gif産業上の利用の可能性
上述のように多核ルテニウム-カルボニル錯体から成る触媒とシラン化合物を用いる本発明に従えば、中性の温和な条件で、環状シルエチレンシロキサンのような環状シロキサンを開環重合して対応する鎖状のポリシロキサンを得ることができる。
得られるポリシルエチレンシロキサンのようなポリマーは、特に耐酸性や耐アルカリ性に優れ且つ機械的強度も大きい材料として、ゴム、グリース、電子材料などの広範な分野に利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の方法に従って合成されたポリマーのGPCチャートを示す。
第2図は、本発明の方法に従って合成されたポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1