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明細書 :遺伝子キャリヤー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4064108号 (P4064108)
登録日 平成20年1月11日(2008.1.11)
発行日 平成20年3月19日(2008.3.19)
発明の名称または考案の名称 遺伝子キャリヤー
国際特許分類 A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  47/36        (2006.01)
A61K  47/42        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
C07H  21/00        (2006.01)
C08B  37/00        (2006.01)
C08L   5/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 47/36
A61K 47/42
A61K 47/48
C07H 21/00
C08B 37/00 Z
C08L 5/00
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2001-536203 (P2001-536203)
出願日 平成12年11月9日(2000.11.9)
国際出願番号 PCT/JP2000/007875
国際公開番号 WO2001/034207
国際公開日 平成13年5月17日(2001.5.17)
優先権出願番号 1999319470
2000142897
優先日 平成11年11月10日(1999.11.10)
平成12年5月16日(2000.5.16)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成15年12月26日(2003.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】501190941
【氏名又は名称】三井製糖株式会社
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエホールディングス株式会社
発明者または考案者 【氏名】櫻井 和朗
【氏名】新海 征治
【氏名】木村 太郎
【氏名】田畑 ▲けん▼吾
【氏名】甲元 一也
【氏名】グロンヴァルド オリバー
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】瀬下 浩一
参考文献・文献 国際公開第96/014873(WO,A1)
特開平10-004979(JP,A)
調査した分野 A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 47/36
A61K 47/42
A61K 47/48
C07H 21/00
C08B 37/00
C08L 5/00
C12N 15/09
BIOSIS(STN)
CAplus(STN)
EMBASE(STN)
MEDLINE(STN)
JMEDPlus(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
核酸と類似のコンホメーションを有する高分子鎖上に水素結合性サイトが形成されている水素結合性高分子該水素結合性サイト核酸が結合されている核酸・高分子複合体であって、前記水素結合性高分子が、β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシランから構成されていることを特徴とする核酸・高分子複合体。
【請求項2】
β-1,3-グルカンが、シゾフィラン、カードラン、レンチナン、バーキマン、グリホランまたはスクレログルカンであることを特徴とする請求項1に記載の核酸・高分子複合体。

発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、遺伝子キャリヤーに関し、詳述すれば、核酸と相互作用して複合体を形成することによって該核酸を担持することのできる新規な人工材料(化合物)に関する。
背景技術
ヒトゲノムの解読が21世紀初頭に一応の終了を迎えると言われている。この成果を応用するには、核酸を人工的に操作(核酸の搬送、配列認識、転写や翻訳のon-off、分離など)する技術の開発が不可欠である。核酸を操作するための材料として、最も重要と考えられるのは、DNAなどの核酸を担持して搬送するキャリヤー、すなわち、遺伝子ベクターである。しかし、従来、in vivoにおける人工材料を用いた遺伝子ベクターは、ヒトの臨床研究ではなんら有意な効果をもたらさなかった。その理由は、特に、低い遺伝子伝達(transfer)効率、遺伝子情報の制約された発現[cottonら、Meth.Enzymol.217:618-644(1993)]、および採用されるカチオン担体材料の不充分な生物学的適合性(biocompatibility)[Choksakulnimitrら、J.Control.Rel.34:233-241(1995)]に見出される。
レトロウイルス[Miller,Nature 357:455-460(1992)]またはアデノウイルス[Mulligan,Science 260:926-932(1993)]等は、遺伝子ベクターとしてin vitroでは極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が特に原因してこれらのin vivoにおける使用は制限されている[Crystal,Science 270:404-410(1995)]。そこで、天然由来の遺伝子ベクターの代替物として、ウイルス系よりも取り扱いが簡単であるのみならず、細胞へDNAを確実に効率良く集中させることが可能な人工材料の非ウイルスベクターの使用が提示された[TomlinsonおよびRolland,J.Contr.Rel.39:357-372(1996)]。
最近のトランスフェクションの代替物として、ポリ-L-リシン(PLL)[WuおよびWu,Biotherapy 3:87-95(1991)]。DEAE-デキストラン[Gopal,Mol,Cell,Biol.5:1183-93(1985)]。デンドリマー(dendrimers)[HaenslerおよびSzoka,Bioconjugate Chem.4:372-379(1993)]またはカチオン性メタクリル酸誘導体[Wolfertら、Hum.Gene Ther.7:2123-2133(1996)]等の水溶性カチオンポリマーに基づく合成ベクター、すなわちカチオン脂質を用いる“リポフェクション(lipofection)”[GaoおよびHuang,Gene therapy 2:710-722(1995)]および両親媒性物質[Behr,Bioconjugate Chem.5:382-389(1994)]が案出された。カチオンポリマーを用いる“ポリフェクション(polyfection)”の決定的有利性は、ポリマーの物理化学的および生物学的特性に影響し得る構造的変形の可能性が無限にあることであり、さらに、プラスミドとポリマー複合体を形成し得ることにある。トランスフェリン[Qagnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.87:3410-3414(1991)]。アシアログリコタンパク[WuおよびWu,J.Bio.Chem.262:4429-4432(1987)]、および各種抗体[Trubetskoyら、Bioconjugate Chem.3:323-327(1992)]および炭水化物[Midouxら、Nucleic Acid Research 21:871-878(1993)]等の細胞特異的リガンドを追加的に結合することにより、これらベクターの効率を増加することができた。
現在、非ウイルス性の人口ベクターとして最も検討されているのはポリエチレンイミン(PEI)である。多数の異なった付着細胞および浮遊細胞ライン中では、3次元的分岐構造のカチオンポリマーであるPEIは、ある場合には平均以上のトランスフェクション率を引き起こす結果になった[Boussifら、Gene Therapy 3:1074-1080(1996)]。例えば3T3繊維芽細胞の95%形質転換がin vitroで達成された。in vivoでの遺伝子のマウス脳中へのPEI仲介伝達では、ニューロンおよびグリア細胞中のリポーター遺伝子およびBcl2遺伝子の長期発現が起きる結果になり、アデノウイルスによる遺伝子伝達の場合と同じ程度のものであった[Abdallahら、Hum.Gene Ther.7:1947-1954(1996)]。
しかし、ポリエチルイミンなどのカチオン性高分子の安全性は確認されていない。カチオン性を有するには、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基は生理活性が高く、体内毒性等の危険がある。事実、今まで検討されたいかなるカチオン性ポリマーも未だ実用に供されておらず、事実「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)に記載されていない。
さらに、塩基配列を認識する化合物としては、ペプチド核酸、抗生物質カリケミシン、DNA結合タンパクの研究が精力的に行われている。さらに、人工タンパクを用いた遺伝子の認識と遺伝情報の翻訳制御に関する研究も最近急速に盛んになっている。このように、DNAやRNAなどの核酸と相互作用する化合物の研究は、重要な課題であるが、これらの研究の多くは各論段階に留まっており、どのような一般的特性を有する材料(化合物)が核酸と相互作用するかといった基本的見地に立った研究は少なく、それらの材料が実用に供されるには解決すべき課題も多く残されている。例えば、現在の研究の中心となっているポリエチルイミンなどのポリカチオンから成る材料は、(1)核酸と結合して複合体を形成するが、一度形成した複合体は静電的相互作用で結合しているために分離しにくいこと、(2)毒性が強いこと、(3)核酸に水溶性を付与しているリン酸とポリカチオンが結合するため、複合体は通常、不溶性であり、したがって、該材料を遺伝子を運搬する薬剤などとして利用するには極めて問題である。また、従来から知られた材料は、インターカレーターのように不可逆的に反応し、遺伝情報(核酸)を破壊してしまうような化合物が大半であった。
本発明の目的は、DNAやRNAなどの核酸と相互作用し、核酸を破壊することなく、核酸と結合して生体内の条件下に適用され得るような水溶性の複合体を形成するとともに、必要に応じてそれらの核酸を解離や再結合し得るような新しいタイプ遺伝子マニピュレーター(遺伝子キャリヤー)を提供することにある。
発明の開示
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を行い、核酸と類似のコンホメーションを有する高分子鎖上に水素結合性サイトが存在する水素結合性高分子が、DNAやRNAなどの核酸と相互作用し核酸・高分子複合体を形成して、遺伝子の運搬、核酸の分離、転写・翻訳の制御などに有用であることを見出し本発明を導き出した。
かくして、本発明に従えば、核酸と相互作用して該核酸と複合体を形成することのできる遺伝子キャリヤーであって、前記核酸と類似のコンホメーションを有する高分子鎖上に水素結合性サイトが形成されている水素結合性高分子から成る遺伝子キャリヤーが提供される。
さらに、本発明は、ヘリックス構造の核酸と相互作用して該核酸と複合体を形成することのできる遺伝子キャリヤーであって、前記核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖上に水素結合性サイトが形成されている水素結合性高分子から成る遺伝子キャリヤーを提供する。
本発明に従い、核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖の例は、多糖であり、別の例は、ポリペプチドまたは合成高分子である。
本発明の好ましい態様においては、水素結合性高分子の一部または全部が、β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシランから成り、特に、好ましい態様においては、β-1,3-グルカンであるシゾフィラン、カードラン、レンチナン、パーキマン、グリホランまたはスクレログルカンから成る。
本発明の別の態様においては、水素結合性サイトを有する分子が前記高分子鎖に結合されていることにより水素結合性サイトが形成された水素結合性高分子が用いられる。本発明の好ましい態様に従えば、水素結合性サイトを有する分子は、単糖またはオリゴ糖から成り、または、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラジル、もしくはこれらの誘導体である。
さらに、本発明の遺伝子キャリヤーを構成する高分子は、その重量平均分子量が2000以上であることが好ましく、また、その水素結合性サイトの数が5以上であることが好ましい。
さらに、本発明は、別の観点から、上記のごとき核酸と類似のコンホメーションを有する高分子鎖上に水素結合性サイトが形成されている水素結合性高分子に、該水素結合性サイトを介して核酸が結合されて構成されている核酸・高分子複合体も提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の遺伝子キャリアーは、核酸分子と類似のコンホメーションを有する高分子鎖上に(複数の)水素結合性サイトが形成されて構成される水素結合性高分子から成る。すなわち、本発明は、核酸に類似する立体構造(空間的配置)を有し且つ核酸と水素結合し得る部位を有する化合物を用いることによって、核酸を破壊することなく核酸と可逆的に相互作用する系を構築することに基づくものである。
本発明に関連して用いる「水素結合性サイト」という語は、プロトンのアクセプターまたはドナーになり得る官能基を指称する。このような官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド結合、ケトン、カルボニル基、ウレタン結合、ハロゲン基などが例示できるが、これらに限られるものではない。また、本発明に関連して用いる「水素結合性サイトを有する分子」とは、このようなプロトンのアクセプターもしくはドナーになり得る単数または複数の官能基を分子構造中に含む分子を指称する。本発明の遺伝子キャリヤーと成る水素結合性高分子は、このような官能基が以下に説明するような高分子鎖上に複数個存在するように構成され、水素結合によって核酸(核酸分子)と複合体を形成することができる。
本発明の遺伝子キャリヤーを構成する水素結合性高分子の更なる特徴は、その高分子鎖(基本骨格、主鎖)が、対象とする核酸と類似のコンホメーション(空間的配置)を有していることである。本発明は、対象とする核酸が直線状であれば、高分子鎖が直線状のコンホメーションを有する水素結合性高分子を用いることによって、そのような直線状の核酸に対する遺伝子キャリヤーとしても適用できる。しかし、核酸は多くの場合、水溶液中でヘリックス状を成しており、本発明は、特に、ヘリックス構造の核酸に対する遺伝子キャリヤーとして意義がある。
かくして、本発明の特に好ましい態様に従えば、ヘリックス構造の核酸と相互作用して複合体を形成することのできる遺伝子キャリヤーであって、該核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖に、上述したような水素結合サイトが存在する水素結合性高分子から成る遺伝子キャリヤーが提供される。ここで、ヘリックスパラメーターとは、当該分野で知られているように螺旋状化合物の形態を表示するのに用いられ、ヘリックスピッチ(h)、1ヘリックスピッチ中の官能基の数(R)、および螺旋の巻き方向(右巻きまたは左巻き)で定義される量である。
本発明の水素結合性高分子の基本骨格を構成する高分子鎖のヘリックスパラメーターは、相互作用して複合体を形成すべき核酸に応じて定められる。核酸と複合体を形成するためには、巻き方向は一致する必要があるが、他の量であるhとRについては近い値を持っていれば十分で、完全に一致する必要はない。すなわち、水素結合性高分子の高分子鎖は、水溶液中で部分的にでも核酸と類似のヘリックスパラメーターを有していればよい。類似の目安としては、核酸のh/R(一官能基あたりのピッチ長)の値が、2から4Åの間にあることより、好ましくは、2~4Å、さらに好ましくは単一核酸鎖の値である、2.4~3.6Å、より好ましくは多くの単一核酸鎖の値である、2.4~3.3Åである。
核酸および高分子を含む各種の螺旋状化合物のヘリックスパラメーターの値は、各種の文献の記述から容易に知ることができる。例えば、Wゼンガーの「核酸構造」(シュプリンガー・フェアラーク東京、昭和62年刊)に記載されている如く、A型DNAのヘリックスパラメーターはh=28.2Å、R=11、右巻きであり、また、合成RNAのpoly(C)ではh=18.6Å、R=6、右巻きである。本発明においては核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖を用いることが肝要であり、核酸のヘリックスパラメーターと類似の高分子鎖を用いることにより、核酸との複合体形成が熱力学的に容易になる。例えば、実施例に詳しく示すように、主鎖がβ-1,3-グルカンからなる多糖のヘリックスパラメーターは“高橋、小畠、鈴木、Prog.Polym.Phys.Jpn.27巻、767ページ”、または“Conformation of Carbohydrates,harwood academic publisher,1998年”に記述されており、Poly(C)に極めて近い。この為に、主鎖がβ-1,3-グルカンから成る多糖、例えば、シゾフィランやレンチナン、カードランは核酸と複合体を形成する。
ヘリックスパラメーターが不明の場合には、溶液中の高分子の局所的なコンフォメーションは結晶構造を反映していると考えられるので、結晶解析のデータを利用することによって、ヘリックスパラメーターの値を求めることができる。例えば、溶液中の光散乱や極限粘度、MNRなどの測定データを、「Helical Wormlike Chains in Polymer Solutions,山川裕美、Springer Verlag 1997年」に記載されている方法を用いて解析し、ヘリックスパラメーターの値がを求められる。
上述したようなヘリックス構造の核酸と類似したヘリックスパラメーターを与える高分子鎖として好ましい例は、β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシレンなどの多糖類である。β-1,3-グルカンやβ-1,3-キシラン等の多糖類を用いる場合は、該多糖が「ヘリックス構造の核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖」を有するとともに「水素結合性サイト」を兼備しているので、そのまま本発明の水素結合性高分子となり、別途「水素結合サイトを有する分子」を結合させることを要しない。β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-キシランが、水素結合性高分子の一部を構成していてもよい。
本発明に従う水素結合性高分子として用いられるのに特に好ましい例は、β-1,3-グルカンであり、シゾフィラン、カードラン、レンチナン、パーキマン、グリホラン、スクレログルカンなどの慣用名で知られた各種のβ-1,3-グルカンを用いることができる。これらは、主鎖がβ-結合(β-D-結合)により結合したグルカンで、側鎖の頻度が異なる天然の多糖であり、通常の過ヨウ素酸化法を用いてその側鎖を適当に間引くことにより、その溶解性を制御することができる。興味深いことには、後の実施例にも記載しているように、主鎖がα-D-結合しているグルコピラノース残基から成る多糖や、β-D-結合している多糖でも1,4-グルカンのようにヘリックスパラメーターが異なるものは、本発明で用いられるβ-1,3-グルカンのように一本鎖のDNAやRNAと複合体を形成する機能は存しない。
シゾフィランのようなβ-グルカンは、通常、水中で三重螺旋構造を呈している。したがって、本発明に従い、遺伝子キャリヤーとして使用するに当たっては、DMSO(ジメチルスルホオキシド)のような溶媒に溶解して一本鎖にする。これに所定のDNAやRNAを含有する水溶液(またはアルコール等の極性溶媒の溶液)を添加してゆくと疎水結合が形成され、分子内および分子間で多糖の会合体が形成される。この場に、DNAやRNAの一本鎖が存在すると、該会合体内にそれらの核酸が取り込まれて複合体が形成される。
本発明に従い、ヘリックス構造の核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖としては、上述したような多糖類以外に、各種のペプチドや合成高分子を用いることもできる。例えば、(2-アミノエチル)グリシン骨格または(3-アミノプロピル)グリシン骨格から成るポリペプチド;ポリイソシアネート類またはポリメチルメタアクリレート類の合成高分子が挙げられるが、これに限るものではない。
これらのペプチドや合成高分子が、核酸と類似のヘリックスパラメーターを有する高分子鎖から成るが、水素結合性サイトを有しない場合は、水素結合性サイトを有する分子を結合させることにより水素結合性サイトが形成されている水素結合性高分子にすることが必要である。例えば、(2-アミノエチル)グリシン骨格または(3-アミノプロピル)グリシン骨格から成るポリペプチドを本発明の水素結合性高分子として用いる場合は、高分子鎖自体に水素結合能がないため、「水素結合性サイトを有する分子」を必要に応じて当該高分子鎖上に配置する必要がある。
水素結合性サイトを有する分子としては、上述したように、プロトンのアクセプターまたはドナーとなり得る単数または複数の官能基を含有する各種の分子が使用できる。異種の水素結合性サイトが単一の分子上に混在してもよい。この点、複数の水酸基やアミノ基を有することができる単糖またはオリゴ糖は、本発明に従う水素結合性サイトを有する分子として適しており、グルコース、ガラクトース、マンノース等が例示されるが、これらに限られるものではない。また、本発明に従う水素結合性サイトを有する分子として、核酸塩基を使用してもよい。核酸塩基としては、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル、およびこれらの誘導体が挙げられる。
これら単糖、オリゴ糖、核酸塩基を、上述したような高分子鎖と結合することにより、本発明の遺伝子キャリヤーと成る水素結合性高分子が得られる。そのため、通常は糖の還元末端を、高分子鎖の適当な官能基に結合させるか、必要ならば、適当なスペーサーを入れてもよい。このようなスペーサーとしては例えば、エチレングリコールや、各種アミノ酸などの2官能性化合物を利用することができる。また、高分子鎖と水素結合性サイトを兼備する化合物を用いることもできる。
また、本発明の遺伝子キャリヤーと成る水素結合性高分子は、必要に応じて、化学修飾もすることができる。例えば細胞膜との親和性を高めるために、脂質を結合することができる。脂質としては、コレステロールなどのステロイド類、脂肪酸、トリアシルグリセロール、脂肪、リン脂質、などが例示される。また、細胞認識をする為に、グリコカリックスや糖脂質を結合してもよい。また、核酸とのバインディング特性を高めるために、ポリリジンやポリエチルイミンなどの核酸のアニオンと結合するポリカチオンを結合したり、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル、及びこれらの誘導体の所謂核酸塩基を結合してもよい。
本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子の長さ(分子量)は目的に応じて変えることができる。しかし、分子量が小さいと、所謂、クラスター効果(高分子系の協同現象)が発現し難くなり好ましくない。通常は、核酸と複合体を形成しうる分子量としては、核酸塩基の種類や高次構造によって異なるが、好ましくは2000以上、さらに好ましくは4000以上、より好ましくは6000以上である。また、高分子上に配置する「水素結合性サイト」は、核酸と複合体を形成するに必要な数があればよい。この数は、水素結合サイトの化学種に因っても、また、核酸塩基の種類や高次構造によって異なるが、通常は、5個以上、好ましくは、8個以上、さらに好ましくは、10個以上必要である。
以上のような水素結合性高分子は、DNAやRNAなどの核酸と相互作用し、該核酸と複合体を形成する。この際、成る水素結合性高分子の核酸に対する結合能は、核酸(遺伝子)の化学構造の違い〔核酸塩基の種類(A,T,G,C,U)や塩基配列などに因る〕によって異なる。複合体の形成は、例えばCD(円偏光二色性)スペクトルを測定することにより、コンホメーション変化を調べることによって確認することができる。得られる複合体は、一般に水溶性であり、温度変化やpHの変化によって解離および再結合し、さらに、核酸分解酵素に対する耐性を有し、核酸(遺伝子)が破壊されることもない。
かくして、該水素結合性高分子から成る本発明の遺伝子キャリアーは、核酸・高分子複合体の形態で、所定の遺伝子(DNA、RNA)を担持して生体や培養組織などに注入する遺伝子ベクターとして機能することができ、疾病の診断や治療などを目的とした薬剤や試薬などの開発に資することが期待される。また、本発明の遺伝子キャリヤーは、核酸と複合体を形成することにより加水分解酵素への耐性向上の効果があるので、核酸の保護剤としても利用できる。さらに、本発明の遺伝子キャリヤーは、核酸に対する結合能の差を利用して核酸分離剤としても応用できる。
本発明の水素結合性高分子を実際に、遺伝子ベクターとして使用する場合は、必要に応じて、化学修飾する。例えば、良く知られていた還元アミノ化法、グリコシル結合の導入などが使われる。特に、細胞膜の透過性をあげるためにはわずかなカチオンを導入する必要が生ずる場合がある。例えば、β-1、3-グルカンの場合は、過ヨウ素酸は1,2ジオールを選択的に開裂させ、2つのアルデヒドを生成する。シゾフィランやレンチナンの主鎖にはこの反応によって開裂する部分がなく、導入されたアルデヒドを用いて側鎖にのみ置換基を入れることができる。
また、本発明の水素結合性高分子を実際に、核酸分離剤(遺伝子分離剤)として使用する場合は、ゲル化させるか、適当なマトリックスの表面に、本発明の水素結合性高分子を修飾する必要がある。例えば、β-1、3-グルカンをゲル化させる場合は、すでに知られている方法(例えば、Polymer.J.31巻530ページの論文およびその論文に引用されている文献)によって行うことができる。また、適当なマトリックス上にシゾフィランを修飾する場合は、反応性ゲルと先に述べた方法で調整した、官能基の付いたシゾフィランを反応させれば良い。
実 施 例
以下、本発明の特徴をさらに明らかにするため実施例および比較例を示すが、これらの例は本発明を例示するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。
実施例1から実施例3は、β-1,3-グルカン(シゾフィラン)が、核酸(RNA)と複合体を形成し、遺伝子キャリアーとして機能することを示すものである。実施例4は実施例1~3で使用したシゾフィラン、及び他の多糖のヘリックスパラメータを核酸と比較し、複合体を形成するにはヘリックスパラメターが類似していることの必要性を示すとともに、ヘリックスパラメーターが近いと判定された水素結合性高分子鎖と核酸との複合体形成を調べた実験例を示すものである。実施例5は、化学修飾の例として、蛍光物質としてフルオロセインを導入したシゾフィランの製造法、およびその複合体形成能を調べた例である。実施例6は水素結合性高分子の一例として、シゾフィランの核酸との複合体形成能に与える分子量の影響を調べたものである。実施例7は、核酸と類似のヘリックスパラメターを有する高分子鎖として(2-アミノエチル)グリシン、水素結合サイトを有する分子としてグルコース有する、水素結合性高分子の合成法を示し、当該高分子の核酸との複合体形成能を調べたものである。実施例8は、本発明の核酸・高分子複合体の応用例として、核酸分解酵素への耐性を調べた実験例を示す。実施例9は、水素結合性高分子(シゾフィラン)から成る本発明の遺伝子キャリヤーが遺伝子ベクターとして機能しタンパク質の発現を制御し得ることを示す実験例である。実施例10は、水素結合性高分子(シゾフィラン)から成る本発明の遺伝子キャリヤーが核酸の分離剤として利用できることを示す実験例である。実施例11は、本発明の遺伝子キャリヤーを構成する水素結合性高分子(シゾフィラン)の特性を変化させる実験例である。実施例12は、シゾフィランから成る本発明の遺伝子キャリヤーが核酸と複合体を形成するとともに、該複合体が相補鎖の出現によって解離し得ることを示す実験例である。最後に、実施例13は、シゾフィランから成る本発明の遺伝子キャリヤーが核酸(DNA)と複合体を形成し該核酸のキャリヤーとなり得ることを示す実験例である。
実施例1
3重らせんシゾフィランを文献(A.C.S.38(1),253(1997);Carbohydrate Research,89,121-135(1981))記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American Type Culture Collection)から入手したSchizophyllum commune.Fries(ATCC 44200)を最少培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万の3重らせんシゾフィランを得た。これをDMSOに溶解(1%)させて、3重らせんを解き、1本鎖にした。これを限外濾過にて溶液を水に置き換えた。シゾフィランの濃度を0.5g/dLに調整し、この溶液100マイクロL、1000マイクロLの純水(pH=6.5)と、0.1g/dLのポリ(A)〔Poly(A)〕核酸溶液100マイクロLを混合した。得られた溶液は透明で、均一であった。
実施例2
分子量7万の3重らせんシゾフィランを用いた以外は実施例1と同様にして混合溶液を作成した。得られた溶液は透明で、均一であった。
実施例3
ポリ(A)の変わりにポリ(C)〔Poly(C)〕を用いる以外は実施例1と同様にして混合溶液を作成した。得られた溶液は透明で、均一であった。
比較例1-4
シゾフィランの変わりに、ポリエチルイミン(アルドリッチ製)、プルラン(主鎖:α1→6結合)、デキストラン(主鎖:α1→6結合)、アミロース(主鎖:α1→4結合)を用いて、実施例1と同様にして混合溶液を作成した。ポリエチルイミンの場合は白濁し、他は透明であった。
以上の各実施例および比較例において得られた溶液について円偏光二色性測定装置(JASCO製)を用いて、CDスペクトルを測定し、複合体の形成を確認した。
図1に、実施例2および実施例3のCDスペクトルを示す。●はポリ(A)を用いた場合(実施例2)、■はポリ(C)を用いた場合(実施例3)を示し、また▲はシゾフィランを添加しないポリ(C)のみのCDスペクトルを示す(図の説明中、s-SPGとは1本鎖シゾフィランを表す)。
●は約30℃前後でCDスペクトルの値の急激な変化がみられ、ポリ(A)は32℃で複合体から解離しており、また、■は50℃前後でCDスペクトルの値の急激な変化がみられ、ポリ(C)は54℃で複合体から解離していることが理解される。シゾフィランを用いない場合(▲)には、このようなCDスペクトルの変化は認められない。
同様のCD測定により得られた結果を表1にまとめる。
JP0004064108B2_000002t.gif表1に示されるように、本発明に従うシゾフィランを用いた場合には、5℃で水溶性の複合体が形成されるとともに、50℃ではその複合体が解離されている。これに対して比較例1のポリエチルイミンでは複合体は形成されているが不溶性であるため沈澱が生じており、また、比較例2~4の多糖を用いた場合はいずれも複合体を形成しない。
実施例4
実施例1~3で使用したシゾフィラン、ならびに、その他の多糖として、レンチナン、カードラン、β-1,3-キシラン、アミロース、およびロースのヘリックスパラメーターを核酸〔A-DNA、B-DNA、Poly(A)およびPoly(C)〕のヘリックスパラメーターと比較した。これらのヘリックスパラメーターの値は、既述の文献の記述を参照することによって得たものである。また、それぞれ多糖を実施例1と同様に処理してPoly(C)と混合溶液を作成し、円偏光二色性測定装置を用いてCDスペクトルを測定して複合体の形成を確認した。その結果を表2および図3に示す。これらの結果から、核酸と複合体を形成するには、β-1,3-グルカン(シゾフィラン、レンチナン、カードラン)やβ-1,3-キシランのようにヘリックスパラメーターが核酸と類似していることの必要性が示された。
JP0004064108B2_000003t.gif実施例5
実施例1で使用したのと同様の分子量45万のシゾフィランをイオン交換水に溶解し、重量濃度で1wt%の水溶液を10ml調製した。次に、通常の方法で蒸留・脱水したアセトンに同人化学社製のフルオロセイン-4-イソチオシアネート(品番FITC-I)を溶解して、5wt%の溶液を調製した。このフルオレセイン・アセトン溶液を、激しく攪拌したシゾフィランの水溶液中に2ml滴下した。そのまま、室温で1時間攪拌を続けた後に、反応液を大量のメタノール中にいれて、沈殿したシゾフィランを回収した。回収したシゾフィランを数回、水に溶解-アセトンの再沈の操作を繰り返した。得られた糖は僅かながら黄緑色をしていた。水中のでの極限粘度には変化がなかった。DMSO中のプロトンNMRによって糖のピークに変化がないことを確かめた。また、UVの吸収係数より修飾されたフルオレセインの量を見積もったところ、シゾフィランの繰り返し単位1000あたりに2~7であった。
このようにして得られたフルオレセイン修飾シゾフィランを実施例1と同様の方法で、円偏向二色性スペクトル(CD)を用いて、複合体形成能を調べたところ、複合体の存在が確認できた。
実施例6
水素結合性高分子の一例として、シゾフィランの核酸〔Poly(C)〕との複合体形成能に与える分子量の影響をCDスペクトルを測定することによって調べた。その結果を図4に示す。図4から理解されるように、分子量が大きい程、核酸との複合体形成が促進されるが、分子量が一定以上になるとその効果は飽和される。
実施例7
良く知られた合成ルート(例えば、E.Uklmann ら、Angew.Chem.,1998,110,2954-2983参照)に従って、エチレンジアミンからN-(2-アミノエチル)グリシン誘導体を合成した。収率は約60%であった。次に水素結合性サイトを有する分子として、グルコースを用いて、図5に示す方法にて、N-(2-アミノエチル)グリシン誘導体(I)にグルコースを修飾した(化合物II)。これを通常のアミノ酸重合法(メリフィールド合成法)にて、15繰り返し単位の糖付加ポリアミノ酸を合成した。
次にこの高分子のヘリックスパラメータをモーパックの分子力場計算を用いて求めたところ、右巻きで、h=10~20Å、R=4~7であった。
次に、この糖付加ポリアミノ酸を実施例1の方法にて複合体形成能を調べたところ、CDのピーク強度が1割増加し、複合体の形成が確認できた。
実施例8
実施例1で用いたシゾフィランをDMSOに溶解し、トリス緩衝液で溶解したPoly(C)に加えた。最終的なシゾフィランの濃度が6.6×-4Mに、水の体積分率が0.9になるようになるような条件で、Poly(C)の濃度を0.5×10-4Mから、3.5×10-4Mまで変化させて、ニッポンジーン社製のRNase-Aを濃度が10-4g/Lの条件で、Poly(C)の加水分解速度を吸収スペクトクと液体クロマトグラムで調べ、分解初速度を求めた(+s-SPG)。次に、シゾフィランが無い条件で同様に分解速度を求めた(ref)。
比較例5
実施例8のシゾフィランに替えて同一重量のポリエチレンイミン(和光純薬製、分子量1000)を用いた以外は同一の条件で、加水分解速度を吸収スペクトルと液体クロマトグラムで調べ、分解初速度を求めた。
液体クロマトからは1量体、2量体の生成が確認でき、これらは時間とともに増大した。吸収スペクトルの変化から見積もった分解初速度の基質濃度依存性(poly(C)の塩基モル濃度)を図6に示す。Ref(核酸のみ)のほうがシゾフィランを添加した場合より明かに分解速度が速く、また、従来、核酸の加水分解を良く抑制するとして知られているポリエチレンイミンを添加してもシゾフィランを添加した場合よりも分解速度が大きく、ポリエチレンイミン・核酸複合体より、シゾフィラン・核酸複合体の方が分解酵素から核酸をより効果的に保護をしていることが示される。
実施例9および比較例6
良く知られた、E.Coli.T7S30細胞抽出液中で蛍光タンパク質であるGFP(Green Fluorescence protein)をレポーターとして発現させるインビトロ試験を行った。標的遺伝子をT7のプロモーター遺伝子、CTTTAAGAAGGAGATATACC(配列番号:1)として、それに相補的な、GGTATATCTCCTTCTTAAAG(配列番号:2)の5’末端に30のdAをつけたシークエンスをアンチセンスDNAとした。アンチセンスDNAを入れないときの507nmの蛍光強度を100として比較した。モル数で、0.5、1.0、2.0、10倍のSPG(シゾフィラン)を実施例1に示した方法で、アンチセンスDNAに加えた(実施例9)。また、モル数で、0.5、1.0、10、100倍のポリエチレンイミン(PEI)を加えて比較した(比較例6)。結果を図7に示す。図7に示されるように、SPGおよびPEIのいずれについてもその添加量が多くなると、GFPの発現に起因する蛍光強度が減少しており、アンチセンスDNAとSPGまたはPEIとの間で複合体が形成されることにより、GFPレポーター遺伝子の翻訳および転写が抑制されることが理解される。SPGの場合は2倍以上入れてもそれ以上、抑制効果が見られなかった。これは、化学量論的な複合体を形成するために、複合体形成必要量以上いれても効果がないためと考えられる。一方、10倍のPEIは10倍のSPGより、抑制効果が見られず、本発明に従うシゾフィランの優位性を実証している。100倍のPEIでは蛍光発光量が減っているが、通常、これは、過剰のPEIをいれたことによる細胞毒性によると解釈されている。シゾフィランを100倍いれても顕著な蛍光発光の低下はなく、細胞毒性は少ないと結論できる。
実施例10
AF-Amino TOYOPEARL 650M(TOSOH)400mg(湿重量)に、シゾフィラン(M.W.2000)50mg(3.3×10-7mol)、シアノボロハイドライドナトリウム100mg(1.6×10-3mol)、リン酸水素二カリウム水溶液(0.2N)水溶液1.0mlを加えた。混合物を60℃で38時間振盪攪拌した後、残渣を蒸留水(20ml)、ホウ酸緩衝液(pH9.18)(20ml)、蒸留水(20ml)で順次洗浄した。酢酸ナトリウム水溶液(0.2N)0.3ml無水酢酸0.2mlを加え25℃で30分間放置した。残渣を蒸留水(50ml)、水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)(50ml)、蒸留水(50ml)の順で洗浄した。
次にこれを長さ3cm、半径2mmのカラムに詰め、5℃の恒温層に入れpoly(A)とpoly(U)がそれぞれ0.1wt%溶けた水溶液(pH=6)を流し、流下してくる溶液中のpoly(A)の濃度を紫外吸収スペクトルメーターを用いて測定した。誤差はあるが、poly(U)の濃度は変化しなかったが、流下してくる液のpoly(A)の濃度は、0.05wt%以下であった。次に、純水を十分流してカラムを洗い、pH=4の水溶液を再び流したところ、poly(A)の流出が確認できた。この実施例により、RNAの分離能があることが確認できた。
実施例11
シゾフィラン300mgを水300mlに溶解させた。所定量の過ヨウ素酸水溶液を加え、冷蔵庫内で2日間攪拌した。溶液を透析し、ヨウ素酸を取り除き、凍結乾燥させた。得られた白色固体をDMSOに溶解させ、過剰量のアミン、もしくは、ヒドラジン誘導体を加え、室温で2日間攪拌した。水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温で1日攪拌した。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを酢酸で失活させ、透析(弱酸水溶液→塩基性水溶液→蒸留水)し、凍結乾燥することで目的物を得た。
得られた化合物のアミノ基の導入率をBiochemistry Vol.6 No.2 p541記載の方法で評価すると、側鎖100個に対して、2個の割合でアミノ化されていた。このシゾフィランを用いて、実施例1と同様の方法でpoly(C)、poly(A)との複合体を作り、第2図に示したのと同様の試験をした。複合体の解離する温度は、アミノ基を導入しない場合に比べて(第2図中に記載の温度)、約10℃上昇した。
実施例12
実施例1と同様の方法にて、シゾフィランとpoly(A)の混合溶液1200マイクロLを調整した。次に、この混合液中のpoly(A)と等量モルのpoly(U)を、0.4Mの食塩水溶液1200マイクロLに溶解した。このpoly(U)の溶液を、先に作製した、シゾフィラン・poly(A)の混合溶液に滴下した。溶液の温度を10度に保ち、3時間後にCDを測定したところ、良く知られたpoly(A)/poly(U)2重螺旋のCDスペクトルが観察された。また、そのときの紫外吸収スペクトルの値も、典型的なpoly(A)/poly(U)2重螺旋(実験化学講座、核酸II)の吸光係数を示した。即ち、シゾフィランpoly(A)の複合体はpoly(U)添加により解消し、新たにpoly(A)/poly(U)複合体が形成した。この実施例より、相補鎖の出現によって、速やかにハイブリダイゼーションが進行することが分かる。
実施例13
実施例1と同様の方法にて、シゾフィランとpoly(dA)、およびpoly(dT)の混合溶液1200マイクロLを調整した。いずれの溶液においても、CDスペクトルが変化し、複合体の形成が確認できた。このように、シゾフィランは、RNAと同様にDNAとも相互作用をし、これらの核酸のキャリヤーになり得る。
【配列表】
JP0004064108B2_000004t.gif
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子の1例であるシゾフィランが核酸と複合体を形成するときのCDスペクトルチャートを示す。
第2図は、本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子の1例であるシゾフィランが核酸と複合体を形成するときのCDスペクトルの温度変化を示す。
第3図は、本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子である多糖類が核酸と複合体を形成するときのCDスペクトルチャートを示す。
第4図は、本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子であるシゾフィランの核酸との複合体形成能に与える分子量の影響を示すCDスペクトルチャートである。
第5図は、本発明の遺伝子キャリヤーとして用いられる水素結合性高分子の1例である糖付加ポリアミノ酸の原料と成る糖付加N-(2-アミノエチル)グリシン誘導体を合成する反応スキームを示す。
第6図は、本発明に従う核酸・高分子複合体が核酸分解酵素に対する耐性を有することを示す実験結果のグラフである。
第7図は、本発明に従う水素結合性高分子が遺伝子ベクターとして機能することを示す実験結果のグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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