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明細書 :ダクト消音装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3831263号 (P3831263)
公開番号 特開2003-216159 (P2003-216159A)
登録日 平成18年7月21日(2006.7.21)
発行日 平成18年10月11日(2006.10.11)
公開日 平成15年7月30日(2003.7.30)
発明の名称または考案の名称 ダクト消音装置
国際特許分類 G10K  11/16        (2006.01)
F16L  55/02        (2006.01)
F24F  13/02        (2006.01)
F01N   1/00        (2006.01)
FI G10K 11/16 B
F16L 55/02
F24F 13/02 H
F01N 1/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2002-011115 (P2002-011115)
出願日 平成14年1月21日(2002.1.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (社)日本音響学会騒音振動研究会資料N2001-33(2001年7月27日)
審査請求日 平成16年1月23日(2004.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤原 恭司
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】江嶋 清仁
参考文献・文献 特開平10-037342(JP,A)
特開平06-167982(JP,A)
特開平09-004433(JP,A)
特表平10-504406(JP,A)
特表2000-512369(JP,A)
調査した分野 G10K 11/16
F01N 1/00
F16L 55/02
F24F 13/02
特許請求の範囲 【請求項1】
矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する一対の壁面境界ほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置。
【請求項2】
矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する二対の壁面境界それぞれのほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置。
【請求項3】
辺数が4以上の多角形、円形、楕円形等断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、そのほぼ全周が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置。
【請求項4】
多数の音響管を並設した音響管の集合体は、前記各音波に対応する音響管として構成されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のダクト消音装置。
【請求項5】
前記音響管の集合体は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす音波の第1次共鳴周波数に一致するように調整された共鳴器を内蔵していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のダクト消音装置。
【請求項6】
前記音響管開口部に膜を張設したことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のダクト消音装置。
【請求項7】
前記音響的にソフトな境界を構成するために、アクティブ・ノイズ・コントロールシステム等の能動型制御手法を組み合わせたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載のダクト消音装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、工業プラント等のダクト騒音制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物や工業プラント等には騒音発生源が数多くある。特に、空気調整、換気用の送風系統においては、ダクトの断面寸法が波長に比べて小さくて平面波伝搬現象が生じるため、ダクトを通して騒音が伝搬し易くなる。そのため騒音制御に多くの費用が費やされている。従来、これらの騒音を防止するためには、板状に加工された繊維材料を吸音材としてダクトの内側に貼りつけている。また、内張りチャンバー等比較的大きな空間内表面全面を吸音材料で被うことを要するものものもあり、ダクト系での騒音制御には繊維材料が多用されている。この繊維材料の多用はダクト内気流流速の上昇に伴う繊維材飛散の問題も抱えている。また、内張り直管では騒音低減量を増加させるため、流路を曲折変形させているが、これは気流の流れの圧力損失を引き起こし、逆に送風機の馬力上昇につながり、ひいては騒音源のパワー増加を招いた。
【0003】
ダクト系における騒音制御で繊維材料を用いない方法もあり、1つのダクトを分岐させ、片方は半波長分だけ長くなるようにし、両者を再び結合することで、2系統の音波を干渉させ消去させる干渉型がある。この型の騒音低減性能は非常に優れるが、周波数選択性が大きくて多用されていない、また同様の機能を有するサイドブランチと称される1/4波長音響管をダクトに鉛直に取り付けたものも存在する(特表2000-512369号公報等)が、ダクトの一部に単独で用いられることが多く、その騒音低減効果があまり大きくなく、実用される例が少ない。このような機能を受動的でなく、能動的に行うアクティブノイズコントロール技術も実用化されてはいるが、前記サイドブランチと同様に、ある1点での騒音消滅を期待するために、あまり大きな効果が得られていない。加えて、能動制御特有の長時間利用に対する安定性に問題があり、受動型と併用する形態にて利用されている程度である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、ダクト系の騒音制御では、繊維材料が多用される場合は、気流等による繊維飛散の問題がある上、一般に繊維材料は低周波数域の騒音低減には不向きであり、ダクト内平面波伝搬に対する低周波数では騒音低減量が大きくならない。また、繊維材料を用いない手法でも局所的な制御に留まり、大きな減衰量は得られていない現状にある。
【0005】
そこで、本発明では、このような従来の騒音制御すなわち消音装置の課題を解決して、ダクト系騒音制御技術として、繊維材料等を使用せずして、繊維飛散等がなく、ダクトの断面寸法をあまり大きくすることなく、低周波域でも大きな減衰量が得られるダクト消音装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明が採用した技術解決手段は、
矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する一対の壁面境界ほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置である。
また、矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する二対の壁面境界それぞれのほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置である。
また、辺数が4以上の多角形、円形、楕円形等断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、そのほぼ全周が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたダクト消音装置であって、前記音響的にソフトな境界は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成したことを特徴とするダクト消音装置である。
また、多数の音響管を並設した音響管の集合体は、前記各音波に対応する音響管として構成されたことを特徴とするダクト消音装置である。
また、前記音響管の集合体は、ダクト内表面に騒音の主成分をなす音波の第1次共鳴周波数に一致するように調整された共鳴器を内蔵していることを特徴とするダクト消音装置である。
また、前記音響管開口部に膜を張設したことを特徴とするダクト消音装置である。
また、前記音響的にソフトな境界を構成するために、アクティブ・ノイズ・コントロールシステム等の能動型制御手法を組み合わせたことを特徴とするダクト消音装置である。
【0007】
【実施の形態】
以下、本発明のダクト消音装置を図面に基づいて詳細に説明する。図1から図13は本発明のダクト消音装置を説明する図で、図1は本発明のダクト消音装置の1実施の形態のダクトモデル説明図、図2はダクト内音波伝搬計算のための座標系を示す図、図3は音響管を20本配列した、音響的にソフトな境界面を実現したモデル図、図4は音響的に剛な条件をダクト壁面で満たすためのモデル図、図5は受音点における相対音圧レベル周波数特性図、図6は全てが剛な壁面の場合に対する音響的にソフトな壁面の効果図、図7はソフト境界の長さと減衰効果の関係図、図8は音響配列(ooa)に対する膜の影響図、図9は音響配列(oob)に対する膜の影響図、図10は音響配列(ooc)に対する膜の影響図、図11は音響配列(oab)に対する膜の影響図、図12は膜が存在しない場合の気流騒音レベル図、図13は膜が存在する場合の気流騒音レベル図である。
【0008】
本発明のダクト消音装置は、図1に示すように、所定断面(図示の例では矩形断面)のダクト10の長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する一対の壁面境界1A、1Bほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成された(音響管2、4、3等の設置)ことを特徴とするものである。以下に詳述する。本発明では、音響的にソフトな境界面をダクト内表面に実現することを考えた。この音響的にソフトな境界面とは、その表面で常に音圧がゼロになる境界面のことである。通常のダクト内表面は一般に金属板で構成される剛なものであり、音圧がゼロではなく、粒子速度がゼロになる。また、繊維材料で境界面を覆っても、その表面では音圧も粒子速度もゼロにはならない。ここでは、ダクト内表面が仮に剛である場合に、音波が平面波伝搬する条件下で(すなわちダクト断面寸法が音波の半波長以下であるような場合)、そのダクト内表面が音響的にソフトであれば音波伝搬が生じないことを数式を用いて説明する。
【0009】
デカルト座標系(x,y,z)で表現された波動方程式の正弦振動に対する解は音圧をp(x,y,z)として、
【数1】
JP0003831263B2_000002t.gifで与えられる。ここで、A,Rx ,Ry ,Rz はそれぞれ任意振幅、x軸方向反射率、y軸方向反射率、z軸方向反射率である。またkは波数、jは虚数単位である。これに対して境界値問題として、図2に示すようにz軸方向には無限に続き、x,y方向にはそれぞれa,bの長さを持つ矩形断面ダクトを考える。境界条件として、x軸に平行な面、すなわちy=0、b:0<x<a上では音響的に剛、y軸に平行な面、すなわちx=0、a:0<y<b上では音響的にソフトであるとする。
【0010】
まとめて示すと、
v=0: y=0,b, 0<x<a
p=o: x=o,a, 0<y<b
である。ここでvは境界面垂直方向粒子速度である。これらの境界条件を前記式(1)に代入して整理すると、一般解はz軸の一方向に進行する波動に対して、
【数2】
JP0003831263B2_000003t.gifで与えられる。この場合で対象とする音波の波長がダクト断面寸法よりはるかに大きい場合には、モード次数としてゼロ次となる。すなわちm=n=0を代入すると、全ての点において音圧はゼロとなり、このような音波はz方向にも伝搬しないことになる。
【0011】
この物理特性を利用して、ダクト内表面を音響的にソフトにすれば非常に騒音低減量の大きなダクトを構成することができる。しかし、音響的にソフトな境界条件を実現するには、受動的な手段では空気よりも軽い材料が必要であり、通常の建築材料で実現することは一般的には困難である。また、能動的には従来の技術であるANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)システムを利用することができる。本発明では受動的には周波数選択性はあるものの、基本的に音響管を用いることで音響的にソフトな表面を実現し、能動的には従来のANC技術をダクトに応用しようとするものである。
【0012】
前記式(2)ではx軸方向に関する固有関数がsin((mπ/a)x)となっており、この関数の性質によりm=0であればn≠0であっても音波が伝搬しなくなる。したがって、y軸方向は境界が剛であっても、別の条件であっても差し支えない。そこで、y軸方向では別の周波数に設計された音響管を配列することができ、1つの区分で2つの周波数に対応できる。これらの区分を繋ぎ合わせることにより、すなわち、複数の異なる深さを持つ音響管を配列することで広い周波数帯域に対応して大きな減衰量を得ようとするものである。また、音響管では低周波数域で管の長さが長くなり、ダクト断面サイズが大きくなり過ぎるような場合には、能動型を利用してダクト全体の断面サイズを小さく抑えようとすることもできる。このように構成されたダクトでは従来のチャンバーのような大きな空間を必要とせず、低い周波数からある程度高い周波数までダクトの断面寸法をあまり大きくすることなく大きな減衰量を得ることが期待できる。
【0013】
以下、図面等を用いて本発明の受動的な条件での実施例を説明する。図1に実験ダクトモデルを示す。ダクト部10の断面寸法は100mm×100mm、長さは2000mmである。外部騒音の侵入や信号音としての対象音の漏れを防ぐため、ダクト10は厚さ20mmのアクリル板1で構成されている。そのダクトの1つの壁面対を単なる剛壁としての厚さ20mmのアクリル板1、1、および深さがそれぞれ170mm、130mm、85mmのアルミ管製音響管4、3、2を配列できるようにした。また、それらの組合せも配列できるように音響管1つの単位を500mmの長さとし、3つの異なる音響管群を配列できるようにした。また、両端には全ての面が剛である部分を設け、受音側にはマイクロフォン7取付用の小孔を穿設し、最後部には長さ1000mmの吸音楔5を収容した無反射端を取り付けた。音源側では対象信号(100Hz~5kHz帯域)を放出できる小型スピーカー6を取り付けた。
【0014】
各音響管は厚さ2mm、断面50mm×50mmの角管を必要長さに切断し、10列2段、計20個を厚さ20mm、幅100mm、長さ500mmのアクリル板に接着した。それを1つの単位としてダクト表面を構成するようにした。図3にその1例として長さ(深さ)130mmの音響管群3を示す。このようにして製作したダクトモデルを用いて本発明の消音装置の効果を確認するための実験を行った。図4に示すような剛なアクリル板の壁面をタイプ(o)、1kHzに設計された長さ(深さ)85mmの音響管群をタイプ(a)、650Hzに設計された長さ130mmの音響管群をタイプ(b)、500Hzに設計された長さ170mmの音響管群をタイプ(c)とする。今回の実験では、受音側から配列した順で、(ooo)(ooa)(oaa)(caa)(cba)の5つの場合について測定した。
【0015】
表示配列例(oaa)の場合は、受音側から各500mm幅のアクリル板、タイプa、タイプaの順に総合して1500mmのダクトに構成したことを示す。測定は音源から受音点までの周波数伝搬特性を測定した。図5に測定された受音点における相対音圧レベルを示す。各測定ではスピーカー6からの音響出力が一定になるように入力電圧を一定に保った。したがって、図5における周波数特性は各種ダクト条件での伝搬特性を表していることになる。また、図6には全ての壁面がアクリル板である場合を基準とした音響管の減衰効果が示されている。図5中にも示されるように、中太実線が配列(ooo)の場合で、何も音響管配列がない場合(図6では縦軸が0dBに相当する)である。
【0016】
中太点線は配列(ooa)の場合で、1kHzに設計された長さ(深さ)85mmの音響管2が500mmだけ配置され、他は剛なアクリル板だけの場合である。この場合、1kHzの音が受音点まで殆ど伝搬せず、効果はほぼ43dB程度である。細実線は配列(oaa)の場合で、音響管が1000mm配置されているが、配列(ooa)の場合と殆ど変わらない。すなわち、1kHzの音波の波長340mmの約3倍あれば、ソフトな境界条件は大きな減衰を得るに充分であることを示している。経済的に許容されるなら、ダクト全長にわたりソフトな境界条件を採用するのが望ましい。
【0017】
次に、細点線は配列(caa)の場合で、500Hzに対する深さ170mmの音響管4が500mm加わった場合である。この場合の500Hzでの減衰は約43dBであり、1kHzの場合と同様である。これに650Hzに設計された深さ130mmの音響管3を500mm加えた配列(cba)では、太実線が示すように、450Hz~1.2kHzにわたって50dB程度の非常に大きな減衰が得られていることがわかる。図5中で一点鎖線は背景雑音レベルであり、計測信号レベルはそれよりも充分高く、測定条件は満たされていることがわかる。
【0018】
また、ダクト境界として最低どの程度の長さ分ソフト境界が必要かを調べたものを図7に示す。ここでは、ソフト境界の長さを100mm、200mmと順次長くしていき、500mm(ooa)までの条件下での音波減衰効果を示したものである。100mmでは減衰効果もあまり大きくはなく、かつ、その効果の生じる周波数範囲が狭い。しかし、200mm程度になると周波数帯域が長さ500mmのものとほぼ同様となる。この200mmは対象周波数1kHzの半波長170mmよりも少し長い。以上の結果より、波動が伝搬現象を生じるために必要な最小の距離、すなわち、半波長よりも長くソフト境界を設けることが周波数帯域が広く、かつ大きな減衰を得るに必要な条件であると言える。
【0019】
同様のダクト断面寸法で、繊維材料(グラスウール板50mm厚、密度32kg/m3 )を内張りした条件での予測式
TL=(α-0.1)PL/S
を用いて計算した場合、吸音率α=0.9、断面寸法100mm×100mmであれば、周長P=0.4、断面積S=0.01、長さL=0.5として、騒音低減量TL=16dB程度である。たとえ、吸音率αが0.99になったとしても騒音低減量TL=17.8dBである。これは全周にわたり吸音材料を取り付けた場合であり、前記の実験のように1つの壁面対だけで考えればその半分程度、約8~9dB程度であることを考えると、前記の音響的にソフトな境界面による騒音低減量は非常に大きなものであると言える。
【0020】
しかし、この音響管はダクト内表面に対して開口部が存在し、ダクト内部に存在すべき気流があれば雑音を発生する源となる。その発生は気流の流速にも依存するが、一般的には音響管内部の空気が流体として開口部近傍で激しく出入りし、雑音が発生するものと考えるのが通例である。したがって、このままの開口部をダクト内部に開けておくことは好ましくない。そこで、音響的には抵抗が少なく、流体としての抵抗が非常に大きい膜を開口部に取り付け、音響的な挙動を検討した。図8の実線は配列(ooa)の状態で、50μmの厚みを持つプラスティック膜を音響管開口部に無張力で張った場合の減衰効果を示す。破線は膜を張らない場合の値である。膜がない状態では効果の現れる周波数帯の中心が約1kHzであったのに対して、膜を張り付けることで300Hz下の700Hzが中心となっている。
【0021】
図9は配列(oob)の場合の減音性能を示しており、ここでも効果の現れる周波数の中心が700Hzから500Hzへと200Hzも低周波の方へ移動している。図10は配列(ooc)の場合で、この場合も550Hzから450Hzへと100Hzも低周波側へ移動している。これらの移動量は元の周波数の20%から30%にもなる。これは音響管の長さをその量だけ短くすることができることを意味する。さらに減衰量40dBのところで見ると、効果の現れる周波数範囲も膜が存在することによって広くなっており、膜の張設が非常に有効であることがわかる。また、高周波数であればあるほど膜の効果が大きく、今回の膜は厚さが50μmであることを考えれば、低周波数域ではさらに厚い膜を用いることで高周波数域と同等の効果が得られることが推測される。図11に配列(oab)で膜を張設した場合を示すが、この図で破線で示す膜なしの配列(obc)よりも周波数幅が広い範囲でより大きな効果が得られている。
【0022】
また、図12、図13に音響管開口部に膜が存在することにより気流発生騒音が低減されることを説明する実験結果を示す。図12は音響管配列(ooa)で膜を取り付けない状況でのダクト内気流発生騒音レベルを示し、縦軸は音圧レベル、横軸は周波数である。点線(+)は流速がゼロの場合で、暗騒音に当たるものである。破線(□)から実線(●)まで順次気流速度が1m/s、3m/s、5m/s、7m/sである場合の気流発生騒音を示している。図13はこの音響管開口部に200μmのプラスティック膜を取り付けた場合の前記図12と同様な条件での気流発生騒音である。例えば、流速7m/sで比較してみると、膜の有無により低周波数域で最大20dB以上も発生騒音が低減している。このように、音響管の開口部に膜を取り付けることは開口部における気流発生騒音を低減し、かつ音響管の長さを短く抑えるという効果が得られることが明らかとなった。
【0023】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ダクトおよび音響管の形状(実施の形態の矩形断面の他、筒状であれば特に限定されず、三角形断面も可能で、辺数が4以上の多角形、円形、楕円形等が採用され得る。台形のような平行でない対向二辺を有するものでも、略平行ならばソフトな境界を設定できる)、材質(実施の形態のアルミニウムとアクリル板の他の適宜の素材)、ダクトにおける音響的にソフトに形成される面の部位(矩形断面の少なくとも対向する一対の面の他、対抗する二面のそれぞれの面、さらには辺数が4以上の多角形、円形、楕円形のほぼ全周)、膜の形状、厚さ、材質(実施の形態の合成樹脂の他、金属や他の素材等も採用可能で特に限定されることはない)、音響的にソフトな境界を構成する音響管の深さ(騒音の主成分をなす音波の波長の1/4の長さとする他、騒音の主成分をなす音波の第1次共鳴周波数に一致させてもよい)、音響的にソフトな境界としての構成に組み合わせる能動型制御手法(アクティブ・ノイズ・コントロールシステムの他、適宜のものが採用され得る)等については適宜選択し得る。なお、前述の実施の形態はあらゆる点で例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【0024】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する一対の壁面境界ほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたことにより、ダクト内における少なくとも最小限必要な面のみを所定長さにわたって音響的にソフトな境界として構成するだけで、従来にない大幅な減音性能が得られた(40dBの減音性能が1/2オクターブ幅にわたって得られた)。
【0025】
また、矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する二対の壁面境界それぞれのほぼ全面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたことにより、減音性能はほぼ同じであるものの、効果の現れる帯域幅が広がることが確認された。
さらに、辺数が4以上の多角形、円形、楕円形等断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、そのほぼ全周が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成されたことにより、広範な断面形態のダクトに対しても高い減音性能が得られる。
さらにまた、前記音響的にソフトな境界として、ダクト内表面に騒音の主成分をなす音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成された場合は、簡素な構造の終端が閉じた音響管群の設置により、ダクト壁面の境界面における騒音の音圧をほぼゼロにすることができるので、大きな減音効果が得られる。
【0026】
また、前記音響的にソフトな境界として、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した前記各音波に対応する複数の音響管の集合体で構成された場合は、異なった波長の複数の騒音に対しても幅広く減音機能を発揮させることが可能となる。
さらに、前記音響的にソフトな境界として、ダクト内表面に騒音の主成分をなす音波の第1次共鳴周波数に一致するように調整された共鳴器内蔵の音響管の集合体で構成された場合は、音響管の深さの設計の自由度が向上する。
さらにまた、前記音響的にソフトな境界として、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の第1次共鳴周波数に一致するように調整された共鳴器内蔵の前記音波に対応する複数の音響管の集合体で構成された場合は、異なった波長の複数の騒音に対しても幅広く減音機能を発揮させることが可能となる。
【0027】
また、前記音響的にソフトな境界として、騒音の主成分をなす1つまたは複数の音波に対して表面音圧がほぼゼロになるように開口部に膜を張設して終端が閉じた音響管をダクト内表面に多数配列した場合は、音響管内の気流の移動をさらに効果的に抑制して、効果の現れる周波数帯の中心を低周波側へ移動させることができ、結果的に音響管の長さを短くできて装置がコンパクトになる。
さらに、前記音響的にソフトな境界を構成するために、アクティブ・ノイズ・コントロールシステム等の能動型制御手法を組み合わせた場合は、低周波数域で長くなりがちな音響管の深さを短くしてダクト全体の断面サイズを小さく抑えることができる。
かくして本発明によれば、繊維材料等を使用せずして、繊維飛散等がなく、ダクトの断面寸法をあまり大きくすることなく、低周波域でも大きな減衰量が得られるダクト消音装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のダクト消音装置の1実施の形態のダクトモデル説明図である。
【図2】 同、ダクト内音波伝搬計算のための座標系を示す図である。
【図3】 同、音響管を20本配列した、音響的にソフトな境界面を実現したモデル図である。
【図4】 同、音響的に剛な条件をダクト壁面で満たすためのモデル図である。
【図5】受音点における相対音圧レベル周波数特性図である。
【図6】 全てが剛な壁面の場合に対する音響的にソフトな壁面の効果図である。
【図7】 ソフト境界の長さと減衰効果の関係図である。
【図8】 音響配列(ooa)に対する膜の影響図である。
【図9】 音響配列(oob)に対する膜の影響図である。
【図10】音響配列(ooc)に対する膜の影響図である。
【図11】音響配列(oab)に対する膜の影響図である。
【図12】膜が存在しない場合の気流騒音レベル図である。
【図13】膜が存在する場合の気流騒音レベル図である。
【符号の説明】
1 ダクト壁(厚さ20mmのアクリル板)
1A 壁面境界
1B 壁面境界
2 音響管(深さ85mmのアルミ製管:タイプ(a))
3 音響管(深さ130mmのアルミ製管:タイプ(b))
4 音響管(深さ170mmのアルミ製管:タイプ(c))
5 吸音楔(長さ1000mmのグラスウール製)
6 スピーカー
7 マイクロフォン
10 ダクト
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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