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明細書 :高性能ヘリウムガス精製器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3645526号 (P3645526)
公開番号 特開2003-214764 (P2003-214764A)
登録日 平成17年2月10日(2005.2.10)
発行日 平成17年5月11日(2005.5.11)
公開日 平成15年7月30日(2003.7.30)
発明の名称または考案の名称 高性能ヘリウムガス精製器
国際特許分類 F25J  3/08      
F25J  1/00      
F25J  1/02      
FI F25J 3/08
F25J 1/00 C
F25J 1/02
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2002-016430 (P2002-016430)
出願日 平成14年1月25日(2002.1.25)
審査請求日 平成14年2月18日(2002.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】武田 常広
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】服部 智
参考文献・文献 特開平3-79960(JP,A)
調査した分野 F25J 1/00-5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
液体ヘリウム再液化装置の冷凍チャンバ内に配置し、高温(約300K)ヘリウムガスを導入し同ガスを徐々に冷却するための下部管と、窒素、酸素等の不純物を固化(氷結)する固化部を備えた上部管とからなる精製器において、前記下部管に接続する上部管の径を下部管に比較して大きく設定し、その内部に不純物固化部を形成するフィンを流路がジクザクになるように配置したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項2】
前記上部管の上方には、ヘリウムガスの排出管となる管を、また、前記上部管の内壁には適宜数のフィンからなる不純物固化部(氷結部)を、さらに上記上部管の下部には液溜まりを形成したことを特徴とする請求項1に記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項3】
液体ヘリウム再液化装置の冷凍チャンバ内に配置される精製器において、前記精製器は上部管と、該上部管に挿入、固定した前記上部管より小径の下部管からなり、前記上部管を、小径部と、大径部からなるハット型の形状とし、小径部の内部には適宜数のフィンからなる不純物固化部を形成し、大径部には、大径部の内壁と前記下部管周囲とで液だまりを構成したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項4】
前記下部管には温度勾配を緩くするために流路の長い形状を採用したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項5】
前記フィンを、上は密に、下は粗に配置してガス中の不純物を均等に固化させるように配置したことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項6】
前記上部管にはフィンに堆積した不純物を液化するヒータを配置したことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項7】
前記ヒータは、ヘリウムガス通路の閉塞による管内の圧力上昇を検知して作動し、上部管内の温度が所定の温度となった時にヒータによる加熱を停止し、精製器の作動を再開始できることを特徴とする請求項6に記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項8】
前記ヒータは、ヘリウムガス通路内のガス流速が所定値以下になった時に作動し、上部管内の流速が所定の流速となった時にヒータによる加熱を停止し、精製器の作動を再開始できることを特徴とする請求項6に記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項9】
前記ヒータは、ヘリウムガス通路の閉塞による管内の圧力上昇を検知して作動し、管内の圧力が所定の圧力以下になった時にヒータの加熱を停止することを特徴とする請求項6に記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項10】
前記ヒータはヘリウムガス通路が固化物で閉塞し温度が所定以下になったことを検知して作動し、固化物が溶けて所定温度以上になった時に加熱を停止することを特徴とする請求項6に記載の高性能ヘリウムガス精製器。
【請求項11】
前記冷凍チャンバは真空内に配置し、また、前記下部管は、内管と外管とからなる二重管とし、内管はステンレス、外管は銅で形成したことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の高性能ヘリウムガス精製器。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍機用高性能ヘリウムガス精製器に関するものであり、特に液体ヘリウムの再液化装置に好適なヘリウムガス精製器に関するものである。さらに具体的には、脳磁計を極低温に維持するための液体ヘリウム貯留槽において、同槽から気化したヘリウムガスを再び液体ヘリウム貯留槽に循環利用できる循環式の液体ヘリウム再液化装置に適用でき、ヘリウムガス内に混入している不純物を効率よく取り除くことができる高性能ヘリウムガス精製器である。
【0002】
【従来の技術】
人間の脳から発する磁界を検出する脳磁気計測システムの開発が進められている。このシステムでは脳の活動を高時空間分解能で非侵襲的に計測できるSQUID(超電導量子干渉計)が利用されており、このSQUIDは断熱された槽内に貯留されている液体ヘリウムに侵漬され、冷却された状態で用いられる。
上記システムに使用している従来からの液体へリュウム槽では、同槽から蒸発したヘリウムガスは、ほとんどの場合大気に開放している。しかし、この場合1リットル当たり約1200円する高価なヘリウムを多量に無駄に消費するため経済的かつ資源的に問題がある。このため、ヘリウムを大量に使う所では、蒸発ガスを回収し、低温センタ-において液化するシステムが稼動している。また、小さなシステムではガスバッグ等に回収し、液化システムに輸送した後、再液化を行ったりしている。しかしながら、液体ヘリウムを完全に回収することが不可能であり、また、ガス回収中にガス内に不純物が混入し、ガスが汚染されてしまう問題がある。
特に、回収ヘリウムガス中には不純物として窒素や酸素が何らかの理由で混入することが避けられないため、回収ヘリウムガスの再利用を進める上で大きな障害となっている。
【0003】
これらの不純物は、いずれもヘリウムガスより液化及び固化温度が高いので、不純物が混入しているヘリウムガスを使用した場合、工程中の低温部分で液化し、更に凍結、固化し、工程の流路を閉塞し、長期間の連続運転の際には、ヘリウムガスの流通を止めてしまうという現象を起こし、ヘリウムガスの循環に支障をきたす。このようなことからヘリウムガス内に混入している不純物を除く除去手段として、ヘリウムガス精製器として従来より冷凍チャンバ内に置くタイプと、チャンバ外に置くタイプとが提案されてきている。後者は、ヘリウムガスを別の冷凍機で冷やしたり、液体窒素で冷やしたりする方式を取っているが、その場合、別の冷凍機を用意するのは、価格、大きさ等、大きな欠点がある。また、液体窒素で冷やす方式は、安価かつ簡便であるが、液体窒素を再充填しなければならないため、手間が掛かるという問題がある。
【0004】
上記背景から、最近では、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを全量回収し、システム内でヘリウムガス内の不純物を除去した後、再凝縮して液化する再循環システムが提案されている。この液体ヘリウム再循環システムの一例を図4を参照して説明する。
図中101は脳磁計を収容している液体ヘリウム貯留槽、102は前記貯留槽101内で気化したヘリウムガスを回収するドライポンプ、103はヘリウムガス内に混入している水分を除去する乾燥器、104は流量調整弁、105はヘリウムガス内に混入している不純物を除去する精製器、106は補助冷凍機、107は同補助冷凍機106の第一熱交換器、108は再凝縮冷凍機、109は再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器である。液体ヘリウム貯留槽101で気化し昇温した後、約300Kになったヘリウムガスは、ドライポンプ102で吸引され、乾燥器103で乾燥され、さらに精製器105でヘリウムガス中の不純物が除去される。不純物が除去されたヘリウムガスは補助冷凍機106で温度約40Kの極低温ヘリウムガスに冷却され、さらに再凝縮冷凍機108の再凝縮熱交換器109で温度4Kの液体ヘリウムに液化され、ここからトランスファ-ライン110を経由して液体ヘリウム貯留槽に供給される構成となっている。
【0005】
ここで、上記液体ヘリウム再循環システムに使用されている従来型の精製器105についてその構造を図面を参照して説明すると、図5は同精製器の断面図である。
図において120は外壁、121は冷凍チャンバの壁であり、両壁の間は断熱性を保持するために真空層Bとして形成され、冷凍チャンバRは真空層Bによって周囲を取り囲まれた断熱室として形成されている。冷凍チャンバR内には精製器の本体122が配置されており、精製器の本体122は外周が銅管123、内周がステンレス管124からなる二重の管状体として構成されており、銅管123およびステンレス管124の間は図示のように前記真空層Bに連通され、銅管123とステンレス管124の間を断熱している。また本体122を形成する銅管123の下部は冷凍チャンバRの壁121面に密封状態で取付けられている。
ステンレス管124の下部は外壁120と冷凍チャンバRの壁121との間に形成される真空層B内に突出して配置され、その下端には約300Kのヘリウムガスをステンレス管124内に導入する細管126が接続されており、この細管126には図4に示すように乾燥器103が接続されている。またステンレス管124の上部には、ヘリウムガス内の不純物を取り除く(固化する)フィン125がステンレス管124の内壁から流路内に突出して適宜個数取付けられており、さらにステンレス管124の上端にはヘリウムガスを補助冷凍機106に供給する管127が接続されている。管127と銅管123とは密封状態で接合されている。
【0006】
ところで、図5に示す精製器では、300Kのヘリウムガスが細管126を介して精製器本体のステンレス管124内に流入すると、ステンレス管124内で同ガスはステンレス管124内を図中上方に向かって流れ、冷凍チャンバ内の約40Kの温度によって冷却されているステンレス管124上部によってガス温度が約40Kにまで下げられる。この過程においてヘリウムガスがフィン125を通過する際に約40Kよりも高い温度で固化する不純物が約40Kに冷却されたフィンによって固化され取り除かれる。不純物が除去されたヘリウムガスは補助冷凍機106に供給される。
この精製器では、熱勾配を小さくするために精製器本体の高さ(ステンレス管124の高さ)hはある程度の高さとなるように設定されており、また、ステンレス管124の内径2rはできるだけ小さく、かつ、細管126の径もできるだけ小さく構成してある。こうした構成により、この精製器では、300Kのヘリウムガスから約40Kの温度を維持している冷凍チャンバR内に侵入する侵入熱をできるだけ小さく抑えている。
【0007】
上記精製器Sを用いてヘリウムガスを精製する過程を説明すると、液体ヘリウム貯留槽で気化した温度約300Kのヘリウムガスは、温度約40Kの状態の冷凍チャンバR内に置かれている精製器本体121の細管126に導入される。そして、細管126からステンレス管124内に流入したヘリウムガスは冷凍チャンバ内の冷気によって約40Kに冷却されているステンレス管上部に向かって流れ、この過程でフィン125を蛇行しながら冷却される。
そしてヘリウムガスが前記フィン125を通過する際に、ヘリウムガスに混入している不純物の窒素や酸素は除去される。即ち不純物の窒素や酸素は、それぞれ温度63、54Kで固化(氷結)することから、約40Kに冷やされているフィン125間をヘリウムガスが蛇行通過する間にそれらの不純物はフィン上で固化され、ヘリウムガスが精製される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記のような従来型精製器では、液体窒素で冷やしたりする方式に比べ極めて優れた効果を期待できるものの以下のような問題点がある。
即ち熱侵入を小さくするためにステンレス管124の内径2rを可能な限り小さくしたために、そのステンレス管の上部に配置するフィン125からなる不純物固化部の容積も必然的に小さくなり、その結果、精製期間が長期にわたると、固化した不純物物質がフィン125、さらには管127の入り口部分に堆積し、流路が閉塞されるという問題が起こる。このため、固化した不純物を取り除く間は運転中止しなければならないという不都合があった。
このようなことから冷凍チャンバ内に配置する上述型のヘリウムガス精製器では、冷凍チャンバ内への熱侵入を低く抑えつつ、大量の汚染物質を効率よく除去することは、極めて困難であり、最大でも2週間程度の連続運転しかできないのが現状である。また、これに代わる性能のよい精製器も現在では見当たらない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、ヘリウムガス精製器から冷凍チャンバ内への熱侵入を増やさずに、ガス内の不純物を確実に、かつ簡単に除去できるヘリウムガス精製器を提供することにより、上記問題点を解決することを目的とする。
本発明では、精製器の不純物固化部の直径をステンレス管の直径よりも大きくし、これによって固化部に配置するフィンとヘリウムガスとの接触面積を大きくし、不純物の固化を促進する。また、不純物固化部で固化した不純物を急激に加熱することで、固化した不純物を液化し簡単に除去できるようにする。こうすることで、固化した不純物を短時間で除去でき、速やかに冷凍運転を再開し、運転時間を従来品に比べて10倍以上長くすることが可能となる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した課題解決手段は、
液体ヘリウム再液化装置の冷凍チャンバ内に配置し、高温(約300K)ヘリウムガスを導入し同ガスを徐々に冷却するための下部管と、窒素、酸素等の不純物を固化(氷結)する固化部を備えた上部管とからなる精製器において、前記下部管に接続する上部管の径を下部管に比較して大きく設定し、その内部に不純物固化部を形成するフィンを流路がジクザクになるように配置したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記上部管の上方には、ヘリウムガスの排出管となる管を、また、前記上部管の内壁には適宜数のフィンからなる不純物固化部(氷結部)を、さらに上記上部管の下部には液溜まりを形成したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、液体ヘリウム再液化装置の冷凍チャンバ内に配置される精製器において、前記精製器は上部管と、該上部管に挿入、固定した前記上部管より小径の下部管からなり、前記上部管を、小径部と、大径部からなるハット型の形状とし、小径部の内部には適宜数のフィンからなる不純物固化部を形成し、大径部には、大径部の内壁と前記下部管周囲とで液だまりを構成したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記下部管には温度勾配を緩くするために流路の長い形状を採用したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記フィンを、上は密に、下は粗に配置してガス中の不純物を均等に固化させるように配置したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記上部管にはフィンに堆積した不純物を液化するヒータを配置したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記ヒータは、ヘリウムガス通路の閉塞による管内の圧力上昇を検知して作動し、上部管内の温度が所定の温度となった時にヒータによる加熱を停止し、精製器の作動を再開始できることを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記ヒータは、ヘリウムガス通路内のガス流速が所定値以下になった時に作動し、上部管内の流速が所定の流速となった時にヒータによる加熱を停止し、精製器の作動を再開始できることを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記ヒータは、ヘリウムガス通路の閉塞による管内の圧力上昇を検知して作動し、管内の圧力が所定の圧力以下になった時にヒータの加熱を停止することを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記ヒータはヘリウムガス通路が固化物で閉塞し温度が所定以下になったことを検知して作動し、固化物が溶けて所定温度以上になった時に加熱を停止することを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
また、前記冷凍チャンバは真空内に配置し、また、前記下部管は、内管と外管とからなる二重管とし、内管はステンレス、外管は銅で形成したことを特徴とする高性能ヘリウムガス精製器である。
【0011】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照して本発明に係るヘリウムガス精製器の説明をすると、図1は、本発明に係る液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを全量回収し、再凝縮して液化する再循環システムに用いる第1実施形態としての精製器の断面図である。
【0012】
図1において、精製器10は、前述の液体ヘリウム再循環システムと同様に温度約40Kの冷凍チャンバRに配置される。冷凍チャンバRの周囲は断熱性を高めるために真空層としてある。精製器10は、銅製の上部管11と、上部管11の下端に挿入、固定された二重管12からなる。二重管12より大径の上部管11の上部には、不純物が取り除かれ温度が約40Kに冷却されたヘリウムガスの排出管となる銅管13が固定され、また、上部管11の内壁には、銅製のフィン(不純物固化部)14が互い違いに流路がジクザクになるように適宜数設けられ、それらフィン14は、中心に向かって多少傾斜して配置される。また、上部管11の下方は、上部管11の下端と二重管12の外管19に溶接等で固着された銅製の底板15で閉塞され、この部分に後述する不純物の液溜まり21を形成する。また、上部管11の外周には、固化部で固化した不純物を液化するためのヒ-タ16と、センサーとしての温度計17が設けられている。なお、前記フィン14を、上は密に、下は粗に配置して不純物の堆積層の厚さが均等となるように配置することも可能である。
【0013】
二重管12は、ステンレス製の内管18と、銅製の外管19とからなり、ステンレス製の内管18と、銅製の外管19との間は冷凍チャンバ周囲に形成した真空層に連通している。二重管12の図中上部には銅製外管19とステンレス内管18を加工して形成した鍔部20が形成されており、この鍔部で両者は密着接合されている。前記鍔部20は、不純物の流下を容易にするために上部管11の内周壁に向かって下方に傾斜させてあり、それにより、液化した不純物の自然流下を良くしている。更に、鍔部20と上部管11の内壁との間には隙間S1を設け、液化した不純物が前述の液溜まり21に落下するようにしてある。
二重管12を構成する外管19の下端は、冷凍チャンバRの壁121に適宜手段で密閉状態で固着されており、また、内管18の下端には、300Kのヘリウムガスの導入管となる細管22が固定されている。細管22には、外壁120の外部で管22内の圧力を検知する圧力計Pが図示のように設けられている。
【0014】
以下精製器によるヘリウムガスの精製過程を説明する。
液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスは、300Kの状態で精製器10の細管22に導入され、ステンレス製の内管18管を通過し冷凍チャンバ内の冷気によって約40Kにまで冷却されている上部管11に到達する。上部管11ではヘリウムガスはフイン14を迂回しながら約40Kに冷却され銅管13から図示せぬ熱交換器に送られ、液化される。この時、ヘリウムガス内に、窒素或いは酸素等の不純物が混入していれば、窒素或いは酸素等の不純物は、温度約40Kに冷却されている上部管11のフィン14を蛇行する間に、フィン14上で固化(氷結)され除去される。
【0015】
また、精製中に不純物がフィン14部で固化堆積し、流路が閉塞されると圧力計Pの圧力が上昇する。例えば、細管22内の圧力が約200mmAqになると、ヘリウムガスの循環を一端停止し、図示せぬ制御機器を介してヒ-タ16をONし、ヒ-タ16により上部管11、フィン14を加熱する。この加熱によりフィン14部で固化した窒素や酸素等の不純物は液化され、該液体は傾斜したフイン14、鍔部20を伝って液だまり21に落下し、貯蔵される。液溜まりに溜まった不純物は適宜手段で外部に取り出すことができる。こうして固化によるフィン14部分や銅管13等の詰まり状態を解消する。
液溜まりに貯蔵された液体不純物をヒータ16によって温めすぎると再び気化してシステムのガスを汚染するため、温度計17によりフィン14の温度を監視し、フィン温度が約77K前後になったらヒ-タ16をOFFし、窒素の気化温度77Kより少し低い温度で再び自動的に精製器の運転を開始する。
なお、不純物固化によってフィン14、銅管13等の流路が詰まった場合の、流路圧力の検知、ヒ-タ16のON、OFF作動は、自動、手動のどちらで行なってもよい。さらに、ヒータの作動は、ヘリウムガス通路の閉塞による管内の圧力が所定値となった時のみ、管内の温度が所定値となった時のみ、あるいは、ヘリウムガス通路内のガス流速のみを検知して作動するようにしてもよい。そしてヒータ作動後は所定圧力、所定温度、所定時間経過後になったことを検知してヒータの作動を停止する。
【0016】
次に、第2実施例を、図2に基づいて説明する。
図2は、本発明に係る精製器の第二実施例で、この精製器30と、前記第一実施例の精製器10と同じ構成の部材のものは、同じ符号を使用してあり、その機能も同じであるので、それら説明は省略する。ところで、この精製器30が、前記第一実施例の精製器10と異なる点は、内管18の下端に設けた、高温のヘリウムガスの導入管となる細管22の下方の真空内の部分を、螺旋状22aあるいはジグザグ状に経路を長く形成したことである。この細管22の一部を、螺旋状あるいはジグザグ状に形成することによって、熱勾配を小さくできるため、銅製、ステンレス製からなる二重管12の高さ(長さ)Hを短縮でき,精製器を小型化することができる。内管18に導入されたヘリウムガスの不純物が除去される過程は前記第一実施例と同様である。
【0017】
次に、第3実施例を、図3に基づいて説明する。
図3は、本発明に係る精製器の第三実施例を示す断面図およびフィンの平面図であり、この実施例は、上部にスペースの余裕がない場合に、不純物固化部の外形を小さくし、かつ上部管の容積は大きくしつつ下部に液だまりを十分確保した点に特徴がある。
【0018】
精製器40は、上部管41と、上部管41に挿入、固定された二重管42から構成される。上部管41は、小径部43と、大径部44からなるハット型の形状で、小径部43の上部には、不純物の取り除かれた温度40Kのヘリウムガスの排出管となる銅管45が固定され、また、小径部43の内壁には、フィン46が互い違いに適宜数設けられている。フィン46は図示のように円形の一部を欠いた形状で取付け棒55に取付けられており、それらフィン46は、中心に向かって多少傾斜して配置される。大径部44の内周には銅製の大フィン53が取付けられ、この大フィン53は図示のようにフィン内に必要に応じて液流下用の穴54が形成され、フィン46および大フィン53は取付け棒55等で連結される。
【0019】
大径部44の外周には、ヒ-タ47と温度計48が設けられており、更に、大径部44内には、ステンレス製の内管49と、銅製の外管50からなる二重管42が配置され、大径部44の下端と外管50とが冷凍チャンバの壁121に密閉状態で固定されている。また、大径部44の内壁部と、外管50とで液だまり52が構成されている。内管49には、300Kのヘリウムガスの導入管となる細管51を設け、この細管51の真空内に配置される部分を、螺旋状51aあるいはジグザグ状に経路を長く形成する。こうすることで熱勾配を緩くしながら、かつ、精製器の上部径を小さくすることができる。また、上部の径を大きくすれば、精製器全体の高さを低くすることもできる。なお、外管50と、大径部44と、冷凍チャンバRとは一体に固定してもよい。
【0020】
この実施例の精製器40は、上部管41の上方を、小径部43としたので、収納スペースの関係から上部が大きくできない場合においても対応できるものである。このような構成によって、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスは、精製器40の細管22に導入され、ステンレス製の内管49を通過するとともに、大径部44に滞留している間に冷却され、さらにフイン46を迂回しながら銅管45を流通し、熱交換器により、液化されるものである。この過程でフィン46により不純物が除去されるが、不純物が固化され、液化される過程は、前記各実施例と同様であるので説明は省略する。
【0021】
本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る精製器は断面円筒状に限定することなく、種々の三角、四角等の形状を採用することができ、また上部管の形状、フィンの形状も上記と同様な機能を達成できるものであれば種々の形態を採用できる。さらにフィンは表面積を大きくするために表面に凹凸を形成することも可能である。また流路の閉塞状態は温度や圧力ではなく、流速等によっても検知することが可能であり、さらにヒータの作動温度、作動時間等も手動、自動によって任意に変更することも可能である。自動設定の場合にはパソコン等を使用することで容易に実現することができる。
さらに、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液体ヘリウム貯留槽で気化したヘリウムガスを全量回収し、再凝縮して液化する、再循環システムに好適な効率のよい精製器を提供することができる。また、精製器内の不純物固化部を大きくすることでヘリウムガス循環中に混入した窒素や酸素の不純物をより効率的に確実に除去することができる。ヘリウムガスの導入管(細管)を螺旋状やジクザクに形成することで、熱侵入量を増やさずヘリウムガスの熱勾配を、従来法と同程度に維持しながら、精製器の大きさを小型化することができる。また、固化部において不純物が体積し流路が閉塞した場合、固化部分を急激に加熱することで、固化した不純物を液体にし、流路の閉塞を解消することができる。また液化した後速やかに冷凍運転を再開し、液化したガスを再度ガス化することなく貯留部に貯蔵することによって、運転可能時間を従来品に比べて10倍以上長くできるようになった。さらに上部管をハット型の形状にしたり、或いは細管を螺旋状、ジグザグ状の形状にしたことにより、小スペースにおいても精製器を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の精製機の第一実施例である。
【図2】本発明の精製機の第二実施例である。
【図3】本発明の精製機の第三実施例である。
【図4】従来の液体ヘリウム再循環システムの概略図である。
【図5】従来の精製機の概略図である。
【符号の説明】
10 精製器
11 上部管
12 二重管
13 銅管
14 フィン
15 底板
16 ヒ-タ
17 温度計
18 内管
19 外管
20 鍔部
21 液だまり
22 細管
30 精製器
40 精製器
41 上部管
42 二重管
43 小径部
44 大径部
45 銅管
46 フィン
47 ヒ-タ
48 温度計
49 内管
50 外管
51 細管
52 液だまり
R 冷凍チャンバ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4