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明細書 :合成石英ガラス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3531870号 (P3531870)
公開番号 特開2003-286040 (P2003-286040A)
登録日 平成16年3月12日(2004.3.12)
発行日 平成16年5月31日(2004.5.31)
公開日 平成15年10月7日(2003.10.7)
発明の名称または考案の名称 合成石英ガラス
国際特許分類 C03C  3/06      
C03B 20/00      
FI C03C 3/06
C03B 20/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願2002-089667 (P2002-089667)
出願日 平成14年3月27日(2002.3.27)
審査請求日 平成14年4月2日(2002.4.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】梶原 浩一
【氏名】生田 順亮
【氏名】菊川 信也
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】塩見 篤史
参考文献・文献 特開2001-180962(JP,A)
特開 平9-241030(JP,A)
特開2001-72428(JP,A)
特開2001-89170(JP,A)
特開2000-239040(JP,A)
調査した分野 C03C 1/00 - 14/00
C03B 8/04
C03B 20/00
特許請求の範囲 【請求項1】
波長150~190nmの光に使用される合成石英ガラスにおいて、合成石英ガラス中のOH基濃度が1ppm未満であり、酸素過剰型欠陥濃度が1×1016個/cm3以下、水素分子濃度が1×1017分子/cm3未満、かつキセノンエキシマランプ光を照度10mW/cm2で3kJ/cm2照射した後の非架橋酸素ラジカルの濃度が1×1016個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラス。

【請求項2】
波長150~190nmの光に使用される合成石英ガラスにおいて、合成石英ガラス中のOH基濃度が1ppm未満であり、酸素過剰型欠陥濃度が1×1016個/cm3以下、水素分子濃度が1×1017分子/cm3未満、かつF2レーザ光をエネルギー密度10mJ/cm2/パルスで107パルス照射した後の非架橋酸素ラジカルの濃度が1×1016個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラス。

【請求項3】
酸素欠乏型欠陥濃度が1×1014個/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2記載の合成石英ガラス。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、波長150~19nmの紫外線を光源とする装置に用いられる光学部材用合成石英ガラスとその製造方法に関し、詳しくは、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)、低圧水銀ランプ(185nm)、エキシマランプ(Xe-Xe:172nm)などの真空紫外~紫外光用のレンズ、プリズム、フォトマスク、窓材、ペリクルなどの光学部品として用いられる合成石英ガラスに関する。

【10】
すなわち、本発明は、波長150~190nmの光に使用される合成石英ガラスにおいて、合成石英ガラス中のOH基濃度が1ppm未満であり、酸素過剰型欠陥濃度が1×1016個/cm3以下、水素分子濃度が1×1017分子/cm3未満、かつキセノンエキシマランプ光を照度10mW/cm2で3kJ/cm2照射した後の非架橋酸素ラジカルの濃度が1×1016個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラスを提供する。

【11】
また、本発明は、波長150~190nmの光に使用される合成石英ガラスにおいて、合成石英ガラス中のOH基濃度が1ppm未満であり、酸素過剰型欠陥濃度が1×1016個/cm3以下、水素分子濃度が1×1017分子/cm3未満、かつF2レーザ光をエネルギー密度10mJ/cm2/パルスで107パルス照射した後の非架橋酸素ラジカルの濃度が1×1016個/cm3以下であることを特徴とする合成石英ガラスを提供する。

【12】
NBOHC濃度CNBOHC(個/cm3)と180nm吸収係数α180(cm-1)との関係は式(1)により与えられ、
NBOHC(個/cm3)=2.4×1017×α180(cm-1 (1)
NBOHCの濃度を1×1016個/cm3以下に抑えることにより180nm吸収帯の生成を低減することができ、優れた耐紫外線性を得ることができる。

【13】
合成石英ガラス中のOH基は、式(2)に従って紫外線照射によりNBOHCとなり、耐紫外線性を低下させるだけでなく初期光透過性にも悪影響を与えるため、合成石英ガラス中のOH基濃度は低い方が好ましく、具体的には1ppm以下が好ましい。
≡Si-OH+hν→≡Si-O・+・H (2)

【14】
合成石英ガラス中の酸素過剰型欠陥は、≡Si-O-O-Si≡構造のことを意味し、OH基と同様、式(3)に従って紫外線照射によりNBOHCとなり耐紫外線性を低下させるため、合成石英ガラス中の酸素過剰型欠陥濃度は低い方が好ましく、具体的には1×1016個/cm3以下が好ましい。
≡Si-O-O-Si≡+hν→2≡Si-O・ (3)

【15】
ここで、合成石英ガラス中の酸素過剰型欠陥濃度は、合成石英ガラスを水素ガス含有雰囲気中で加熱処理し、酸素過剰型欠陥をSiOH基に置換することにより評価できる。具体的な評価方法を以下に述べる。厚み10mmの合成石英ガラス試料を水素ガス、100%、1気圧雰囲気下にて温度1000℃にて50時間保持する。同処理の前後で赤外分光光度計による測定を行い、波長2.7μmにおける吸収ピーク強度からOH濃度の変化量ΔOH(重量ppm)を求め(Cer.Bull.,55(5),524,(1976))、酸素過剰型欠陥濃度CPOL(個/cm3)は次式(4)で与えられる。
POL(個/cm3)=3.68×1016×ΔOH(重量ppm) (4)

【16】
また、本発明の合成石英ガラス中の水素分子濃度は1×1017分子/cm3以下であることが好ましい。合成石英ガラス中の水素分子濃度が1×1017分子/cm3より高い場合、紫外線照射により酸素欠乏型(還元型)欠陥が生成し、同欠陥は163nmを中心とした光吸収帯を有するため、耐紫外線性が著しく損なわれる。

【17】
また、合成石英ガラス中の酸素欠乏型欠陥(≡Si-Si≡)は、163nmを中心とする光吸収帯を有し、初期光透過性を低下させるため好ましくない。具体的には、酸素欠乏型欠陥濃度は1×1014個/cm3以下であることが好ましい。

【18】
また、本発明において、合成石英ガラス中の金属不純物(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等)や塩素は、真空紫外域~紫外域における透過率を低下させるだけでなく耐紫外線性を低下させる原因ともなるため、その含有量は少ない方が好ましい。金属不純物の含有量は100ppb以下、特に10ppb以下が好ましい。塩素濃度は、100ppm以下、特に10ppm以下、さらには1ppm以下が好ましい。

【19】
本発明の光学用合成石英ガラスは、直接法、スート法(VAD法、OVD法)やプラズマ法により製造できる。特に、合成石英ガラス中のOH基濃度を比較的容易に制御でき、合成時の温度が低いために塩素や金属などの不純物の混入を避ける上で有利なことから、スート法が好ましい。

【2】

【従来の技術】合成石英ガラスは、近赤外から真空紫外域にわたる広範囲の波長域に亘って透明な材料であること、熱膨張係数が極めて小さく寸法安定性に優れていること、また、金属不純物をほとんど含有せず高純度であることなどの特徴がある。そのため、従来のg線、i線を光源として用いた光学装置の光学部材には合成石英ガラスが主に用いられてきた。

【20】

【実施例】(実施例および比較例)ヘキサメチルジサラザンを原料として酸水素火炎中で加水分解させて形成された石英ガラス微粒子を基材上に堆積させて多孔質石英ガラス体(直径300mm、長さ600mm)を作製した。この多孔質石英ガラス体を雰囲気制御可能な電気炉にセットし、表1に示す雰囲気にて温度1450℃まで昇温することにより、透明石英ガラス体(直径200mm、長さ300mm)を得た。

【21】
得られた透明石英ガラス体の中央より直径200mm×20mm厚の試料を切出し、表1に示す条件にて後処理を実施した。さらに、同試料中央より、20mm□×10mm厚、20mm×30mm厚の試料をそれぞれ数個切出し、20mm□の2面を鏡面研磨し、評価用サンプルを作製した。評価用サンプルを用いて以下の各評価を実施した。

【22】
(OH基濃度)10mm厚試料について赤外分光光度計による測定を行い、2.7μm波長での吸収ピークからOH濃度を求めた(Cer.Bull.,55(5),524,(1976))。本法による検出限界は0.1重量ppmである。

【23】
(水素分子濃度)10mm厚試料についてラマン分析を実施し、レーザラマンスペクトルの4135cm-1の散乱ピークにより検出した強度I4160と珪素と酸素との間の基本振動である800cm-1の散乱ピークの強度I800との強度比(=I4160/I800 )より、水素分子濃度(分子/cm3)を求めた(V.S.Khotimchenko,et.al.,Zhurnal Prikladnoi Spektroskopii,Vol.46,No.6,PP.987~997,1986)。なお、本法による検出限界は3×1016分子/cm3である。

【24】
(酸素過剰型欠陥濃度)10mm厚試料について水素ガス、100%、1気圧雰囲気下にて温度1000℃にて50時間保持する。同処理の前後で赤外分光光度計による測定を行い、波長2.7μmにおける吸収ピーク強度からOH濃度の変化量ΔOH(重量ppm)を求め(Cer.Bull.,55(5),524,(1976))、酸素過剰型欠陥濃度CPOL(個/cm3)を式(4)により算出した。同法による検出限界は1×1016個/cm3である。

【25】
(酸素欠乏型欠陥濃度)真空紫外分光光度計(アクトンリサーチVTMS502)を用いて、10mm厚試料と30mm厚試料の163nm透過率を測定し、下式(5)により酸素欠乏型欠陥濃度CODC(個/cm3)を算出した。同法による検出限界は1×1014個/cm3である。
ODC=4.5×1015×ln(T10/T30) (5)
10:10mm厚試料の163nm透過率(%)
30:30mm厚試料の163nm透過率(%)

【26】
(初期透過率および耐光性)10mm厚試料について、キセノンエキシマランプ光(中心波長172nm,照度10mW/cm2)を100時間照射し、照射前後における150~400nm透過率を真空紫外分光光度計(アクトンリサーチVTMS502)および紫外分光光度計(日立製作所U4000)を用いて測定し、照射前後の172nm初期透過率を評価した。

【27】
さらに、式(6)により150~400nmにおける紫外線照射誘起吸収係数Δα(λ)を算出し、さらに、酸素欠乏型欠陥が検出されなかった試料について、得られた吸収スペクトルを180nm,220nm,260nmを中心とする3本のガウス関数でカーブフィッティングを行うことにより、180nm吸収帯の吸収強度Δα(180nm)(cm-1)を算出し、NBOHC濃度CNBOHC(個/cm3)を式(1)により計算、評価した。

【28】

Δα(λ)=ln(Tbef(λ)/Taft(λ)) (6)
Δα(λ):波長λnmにおける紫外線照射誘起吸収係数(cm-1
bef(λ):波長λnmにおける紫外線照射前透過率(%)
aft(λ):波長λnmにおける紫外線照射後透過率(%)

【29】
評価結果を表1に示す。表1において、例10及び例11が実施例であり、その他は比較例である。例10のNBOHC濃度は4.9×1015/cm3であり、キセノンエキシマランプ光の照射前の172nm透過率88.9%が照射後に86.9%とわずかに低下しているだけであり、例11は同じく89.0%が86.8%とわずかに低下しているだけである。比較例の中で例6はNBOHC濃度はやや低いがOH基濃度が大きく、例1は酸素欠乏型欠陥濃度が大きく、いずれも透過率の低下がやや大きくなり、他の比較例は透過率の低下が著しく大きい。

【3】
近年、LSIの高集積化に伴い、ウエハ上に集積回路パターンを描画する光リソグラフィ技術において、より線幅の短い微細な描画技術が要求されており、これに対応するために露光光源の短波長化が進められている。すなわち、例えば、リソグラフィ用ステッパの光源は、従来のg線(436nm)、i線(365nm)から進んで、ArFエキシマレーザやF2レーザが用いられようとしている。

【30】

【表1】
JP0003531870B2_000002t.gif

【4】
また、低圧水銀ランプ(185nm)やエキシマランプ(Xe-Xe:172nm)は、光CVDなどの装置、シリコンウェハの洗浄またはオゾン発生装置などに用いられており、また、今後、光リソグラフィ技術に適用すべく開発が進められている。低圧水銀ランプやエキシマランプに用いられるランプのガス封入管、または前述の短波長光源を用いた光学装置に用いられる光学素子にも合成石英ガラスを用いる必要がある。これらの光学系に用いられる合成石英ガラスは、紫外域~真空紫外域に亘る波長での光透過性が要求されるとともに、光照射により使用波長における透過率が低下しないこと(以下、「耐紫外線性」という)が要求される。

【5】
従来の合成石英ガラスでは、ArFエキシマレーザやF2レーザなどの高エネルギー光源からの光を照射すると、紫外線領域に新たな吸収帯を生じるため使用波長における透過率が低下し、ArFエキシマレーザやF2レーザなどを光源とした光学系を構築する際の光学部材として耐紫外線性に問題があった。

【6】
ArFエキシマレーザやF2レーザなどの紫外光を長時間照射すると、いわゆるE’センター(≡Si・)と呼ばれる214nmを中心とする吸収帯(以下、「214nm吸収帯」という)と、NBOHC(非架橋酸素ラジカル:≡Si-O・)と呼ばれる260nmを中心とする吸収帯(以下、「260nm吸収帯」という)とが生成することが知られており、これら吸収帯の生成により波長190~280nmの広い波長域にわたって光透過率が低下する。しかしながら、紫外光を長時間照射した場合、これら吸収帯の中心波長と離れた波長155~190nmにおいても光透過率が低下し、同波長域を光源とする光学装置の光学部材として使用する場合、耐紫外線性に問題があった。

【7】
特開2001-180962号公報には、合成石英ガラス中のOH基濃度が10ppm以下、水素分子濃度が1×1017分子/cm3未満であって、実質的に還元型欠陥を含まないものとすることによって、波長172nmの紫外線を10mW/cm2で10kJ/cm2照射した後の波長150~200nmにおける吸光係数の変化量が0.2cm以下とした合成石英ガラスが開示されている。

【8】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、波長150~190nmの紫外線を光源とする装置に用いられ、波長150~190nmの紫外光に対する耐紫外線性に優れた合成石英ガラスの提供を目的とする。

【9】

【課題を解決するための手段】本発明者らが、耐紫外線性について詳細な研究を行った結果、合成石英ガラスに生じる吸収帯には、214nm吸収帯と260nm吸収帯以外に、NBOHCによる180nmを中心とする吸収帯(以下、「180nm吸収帯」という)が存在することを初めて知見した。紫外線を照射した場合、波長150~190nmにおける光透過率低下はNBOHC生成が主因であり、透過率低下を低減するためには、生成するNBOHCの濃度を所定の値以下に抑制することが必要であり、そのためには、合成石英ガラス中のOH基および酸素過剰型欠陥(≡Si-O-O-Si≡)を所定の濃度範囲に制御すればよいことを見出した。