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明細書 :無給電ワイヤレス式センサモジュールおよびワイヤレス式物理量検出システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5885014号 (P5885014)
公開番号 特開2012-255706 (P2012-255706A)
登録日 平成28年2月19日(2016.2.19)
発行日 平成28年3月15日(2016.3.15)
公開日 平成24年12月27日(2012.12.27)
発明の名称または考案の名称 無給電ワイヤレス式センサモジュールおよびワイヤレス式物理量検出システム
国際特許分類 G01N  29/02        (2006.01)
FI G01N 29/02 501
請求項の数または発明の数 7
全頁数 17
出願番号 特願2011-128560 (P2011-128560)
出願日 平成23年6月8日(2011.6.8)
審査請求日 平成26年5月27日(2014.5.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】近藤 淳
【氏名】山崎 陽平
個別代理人の代理人 【識別番号】100136674、【弁理士】、【氏名又は名称】居藤 洋之
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開2006-268579(JP,A)
特開平09-018273(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0231107(US,A1)
米国特許出願公開第2009/0206844(US,A1)
特開2007-018492(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0057540(US,A1)
特開2008-118277(JP,A)
調査した分野 G01N 29/00-29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、
無線送信される駆動信号を受信するとともに応答信号を無線送信するために電波と高周波電気信号とを相互に変換するアンテナと、
2つの第1櫛歯状電極のうちの一方が前記アンテナに接続された状態で前記2つの第1櫛歯状電極が前記圧電基板上で互いに対向配置されて前記高周波電気信号と前記表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、
外部から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、
2つの第2櫛歯状電極のうちの一方が前記インピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続された状態で前記2つの第2櫛歯状電極が前記圧電基板上で互いに対向配置されて前記表面弾性波変換手段によって励振された前記表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段とを備え、
前記表面弾性波変換手段、前記インピーダンス変化型センサおよび前記表面弾性波反射手段が電気的にフローティング状態で前記表面弾性波変換手段における他方の第1櫛歯状電極、前記表面弾性波反射手段における他方の第2櫛歯状電極および前記インピーダンス変化型センサにおける他方の端子が、互いに電気的に接続され、
前記表面弾性波反射手段における前記表面弾性波の反射率が前記インピーダンス変化型センサのインピーダンスにより変化することを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。


【請求項2】
請求項1に記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、
前記表面弾性波反射手段は、前記表面弾性波変換手段に対向する位置に設けられていることを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、さらに、
前記圧電基板は、
前記表面弾性波変換手段と前記表面弾性波反射手段との間における前記表面弾性波の伝搬領域の外側領域に、前記表面弾性波変換手段および/または前記表面弾性波反射手段への前記表面弾性波の反射を防止するための反射防止部を有することを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、
前記反射防止部は、前記表面弾性波の伝搬方向に対して前記圧電基板の縁部が斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、
前記インピーダンス変化型センサは、前記物理量に応じて電荷を蓄える容量が変化する可変キャパシタ、前記物理量に応じてインダクタンスが変化する可変インダクタ、および前記物理量に応じて抵抗が変化する可変抵抗のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、さらに、
導電性を有する材料で構成されて少なくとも前記圧電基板上に配置される前記他方の第1櫛歯電極および前記他方の第2櫛歯電極に対して対向配置される導電性基板を備え、
前記他方の第1櫛歯電極、前記他方の第2櫛歯電極および前記インピーダンス変化型センサにおける他方の端子が前記導電性基板を介して互いに電気的に接続されることを特徴とする無給電ワイヤレス式センサモジュール。
【請求項7】
物理量の検出対象に設置される請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールと、
前記無給電ワイヤレス式センサモジュールに対して駆動信号を無線送信するとともに、前記無給電ワイヤレス式センサモジュールから無線送信される応答信号を受信して前記検出対象における前記物理量を検出するホスト装置とを備えたことを特徴とするワイヤレス式物理量検出システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いて物理的に離れた場所における種々の物理量を無給電で検出することができる無給電ワイヤレス式センサモジュールおよび同無給電ワイヤレス式センサモジュールを備えたワイヤレス式物理量検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光、音、超音波(振動)、圧力、温度、湿度、ガス、電界または磁界などの各種物理量に応じたインピーダンスに変化するインピーダンス変化型センサを備えて、無給電およびワイヤレス(無線)でインピーダンス変化型センサの検出信号をホスト装置に出力することができる無給電ワイヤレス式センサモジュールがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)と高周波信号とを相互に変換する表面弾性波変換IDT(Interdigital
Transducer)と、受光素子が接続された表面弾性波反射IDTとを圧電基板上で対向配置するとともに、表面弾性波変換IDTと表面弾性波反射IDTとの間で表面弾性波を往復伝播させた際における表面弾性波反射IDTの反射率の変化による表面弾性波の変化に基づいて受光素子が受光した光量を検出する無給電ワイヤレス式フォトセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-266846号公報
【0005】
しかしながら、本発明者による実験によれば、上記特許文献1に記載した受光素子のようなインピーダンス変化型センサの両端子を表面弾性波反射IDTに接続した構成の無給電ワイヤレス式センサモジュール(図8参照)においては、インピーダンス変化型センサの共振現象によって反射係数S11(dB)が二次曲線的に変化するため振幅が一意に定まるインピーダンスの幅が狭く、その結果、無給電ワイヤレス式センサモジュールにおけるセンサとしての感知幅が狭いという問題を知見した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、従来の無給電ワイヤレス式センサモジュールに比べてセンサとしての感知幅を広くすることができる無給電ワイヤレス式センサモジュールおよび同無給電ワイヤレス式センサモジュールを備えたワイヤレス式物理量検出システムを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の特徴は、圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、無線送信される駆動信号を受信するとともに応答信号を無線送信するために電波と高周波電気信号とを相互に変換するアンテナと、2つの第1櫛歯状電極のうちの一方がアンテナに接続された状態で前記2つの第1櫛歯状電極が圧電基板上で互いに対向配置されて高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、外部から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、2つの第2櫛歯状電極のうちの一方がインピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続された状態で前記2つの第2櫛歯状電極が圧電基板上で互いに対向配置されて表面弾性波変換手段によって励振された表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段とを備え、表面弾性波変換手段、インピーダンス変化型センサおよび表面弾性波反射手段が電気的にフローティング状態で表面弾性波変換手段における他方の第1櫛歯状電極、表面弾性波反射手段における他方の第2櫛歯状電極およびインピーダンス変化型センサにおける他方の端子が、互いに電気的に接続され、表面弾性波反射手段における表面弾性波の反射率が前記インピーダンス変化型センサのインピーダンスにより変化することにある。

【0008】
このように構成した請求項1に記載した本発明の特徴によれば、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、アンテナが接続されて高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段、インピーダンス変化型センサ、および同インピーダンス変化型センサが接続されて表面弾性波変換手段が励振した表面弾性波を反射させる表面弾性波反射手段が、互いに電気的に接続されている。そして、この場合、表面弾性波変換手段、インピーダンス変化型センサ、および表面弾性波反射手段が互いに電気的に接続されている場合とは、直流的、交流的および/または高周波的に接続されていることを含むものである。これにより、本発明者の実験によれば、インピーダンス変化型センサの共振現象を抑えて反射係数S11(dB)の二次曲線的変化範囲を狭めることができ、従来の無給電ワイヤレス式センサモジュールに比べてセンサとしての感知幅を約20%増加させることができることを確認した。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明の他の特徴は、前記無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、表面弾性波反射手段は、表面弾性波変換手段に対向する位置に設けられていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、表面弾性波反射手段が表面弾性波変換手段に対向する位置に設けられている。これにより、表面弾性波変換手段と表面弾性波反射手段との間における表面弾性波の伝播損失を抑えて効率的に表面弾性波を伝播できるとともに無給電ワイヤレス式センサモジュールをコンパクトに構成することができる。
【0011】
また、請求項3に記載した本発明の他の特徴は、前記無給電ワイヤレス式センサモジュールにおいて、さらに、圧電基板は、表面弾性波変換手段と表面弾性波反射手段との間における表面弾性波の伝搬領域の外側領域に、表面弾性波変換手段および/または表面弾性波反射手段への表面弾性波の反射を防止するための反射防止部を有することにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、圧電基板における表面弾性波変換手段と表面弾性波反射手段との間の外側領域に表面弾性波の反射を防止するための反射防止部が設けられている。これにより、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、圧電基板上における表面弾性波の多重反射を抑制することができ、表面弾性波変換手段による表面弾性波の検出精度を向上させることができる。
【0013】
また、請求項4に記載した本発明の他の特徴は、前記無給電ワイヤレスセンサモジュールにおいて、反射防止部は、表面弾性波の伝搬方向に対して圧電基板の縁部が斜めに傾斜して形成されていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、反射防止部が各表面弾性波の進行方向に対して圧電基板の縁部が斜めに延びて形成されている。これにより、簡単な構成で圧電基板上における表面弾性波の多重反射を抑制することができ、表面弾性波変換手段による表面弾性波の検出精度を向上させることができる。
【0015】
また、請求項5に記載した本発明の他の特徴は、前記無給電ワイヤレスセンサモジュールにおいて、インピーダンス変化型センサは、物理量に応じて電荷を蓄える容量が変化する可変キャパシタ、物理量に応じてインダクタンスが変化する可変インダクタ、および物理量に応じて抵抗が変化する可変抵抗のうちの少なくとも1つを含むことことにある。すなわち、無給電ワイヤレスセンサモジュールにおけるインピーダンス変化型センサは、物理現象によってインピーダンスが変化する素子を広く採用することができる。
【0016】
この場合、物理現象としては、例えば、光電効果(光電子放出効果、光伝導効果、光起電力効果など)、熱現象(ゼーベック効果、焦電効果など)、圧電現象、音(または振動)現象、磁気現象(ホール効果、磁気抵抗効果など)、電子放出効果(熱電子放出効果、電界放出効果など)、超伝導現象(ジョセフソン効果など)、化学現象(吸着現象、イオン移動など)がある。
【0017】
また、光電効果を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、光導電セル、フォトダイオード、フォトトランジスタ、PSD、太陽電池およびUVトロン(「炎センサ」ともいう)などがある。なお、この場合、「UVトロン」とは、金属の光電効果とガス倍増効果を利用した紫外線センサであり、特に炎から出る微弱な紫外線も検出することができるものである。すなわち、インピーダンス変化型センサとしてUVトロンを用いることにより、無給電ワイヤレス炎検出器や火災報知器を構成することができる。
【0018】
また、熱現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、熱伝対、サーモパイル、サーミスタ、量子型赤外線センサ、焦電温度センサおよび焦電形赤外線センサなどがある。また、圧電現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、圧電素子(ピエゾ素子)、加圧導電シート(ゴム)、トーションバー、ストレンゲージ(ロードセル)、ダイアフラムおよびマイクロフォン(圧電式)などがある。また、音現象または振動現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、マイクロフォン(電磁式)、振動センサおよび衝撃センサなどがある。また、磁気現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、ホール素子、MR素子および半導体磁気抵抗素子変位センサなどがある。また、電子放出効果を利用したインピーダンス変化型センサとしては、例えば、電離真空計などがある。また、超伝導現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、SQUID(超伝導量子干渉素子)などがある。また、化学現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、セラミック湿度センサ、半導体ガスセンサおよび固体電解質形酸素センサなどがある。そして、これらのインピーダンス変化型のセンサや素子は、単独でまたはこれらを適宜組み合わせて用いることができる。これらにより、請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、幅広い種類の物理量を効率的に検出することができる。
【0019】
また、請求項6に記載した本発明の他の特徴は、前記無給電ワイヤレスセンサモジュールにおいて、さらに、導電性を有する材料で構成されて少なくとも圧電基板上に配置される前記他方の第1櫛歯電極および前記他方の第2櫛歯電極に対して対向配置される導電性基板を備え、前記他方の第1櫛歯電極、前記他方の第2櫛歯電極および前記インピーダンス変化型センサにおける他方の端子が導電性基板を介して互いに電気的に接続されることにある。
【0020】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、無給電ワイヤレス式センサモジュールは、導電性を有する材料で構成され、少なくとも圧電基板上に配置される前記他方の第1櫛歯電極と前記他方の第2櫛歯電極と間に対応する大きさおよび形状に形成されて圧電基板に対向配置される導電性を有する導電性基板を介して表面弾性波変換手段、表面弾性波反射手段およびインピーダンス変化型センサが電気的に接続される。これにより、スルーホールやワイヤボンディングなどにより、少なくとも圧電基板上に配置される表面弾性波変換手段と表面弾性波反射手段とを容易に電気的に接続することができる。また、導電性基板をインピーダンス変化型センサに達する大きさおよび/または形状に形成することにより、表面弾性波変換手段、表面弾性波反射手段およびインピーダンス変化型センサを容易に電気的に接続することができる。
【0021】
また、本発明は無給電ワイヤレスセンサモジュールの発明として実施できるばかりでなく、無給電ワイヤレスセンサモジュールを備えた同無給電ワイヤレス式センサモジュールを備えたワイヤレス式物理量検出システムの発明としても実施できるものである。
【0022】
具体的には、請求項6に示すように、物理量の検出対象に設置される請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した無給電ワイヤレス式センサモジュールと、無給電ワイヤレス式センサモジュールに対して駆動信号を無線送信するとともに、無給電ワイヤレス式センサモジュールから無線送信される応答信号を受信して前記検出対象における物理量を検出するホスト装置とを備えるとよい。これによれば、上記無給電ワイヤレス式センサモジュールと同様な作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールを含むワイヤレス式物理量検出システム200の構成を模式的に示した斜視図である。
【図2】本発明の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の他の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の他の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図5】(A),(B)は本発明の他の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す図であり、(A)は無給電ワイヤレス式センサモジュールの平面図であり、(B)は無給電ワイヤレス式センサモジュールの正面図である。
【図6】本発明の他の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の他の変形例に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図8】従来技術に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る無給電ワイヤレス式センサモジュールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る無給電ワイヤレス式センサモジュール(以下、単に「センサモジュール」という)200を含むワイヤレス式物理量検出システム100の構成を模式的に示した斜視図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このセンサモジュール200は、ホスト装置300から物理的に離れた場所で物理量(本実施形態においては温度)を検出するとともに検出した物理量に対応する電気信号を無線通信を介してホスト装置300に出力する検出装置である。

【0025】
(センサモジュール200の構成)
ワイヤレス式物理量検出システム100は、主として、センサモジュール200とホスト装置300とで構成されている。センサモジュール200は、筐体201内に圧電基板202を備えている。筐体201は、センサモジュール200を構成する圧電基板202を含む各種部品を収めるケースであり、金属材料や樹脂材料によって構成されている。なお、図1においては、筐体201を二点鎖線で示している。


【0026】
圧電基板202は、圧電効果によって表面弾性波(破線波線で示す)を発生させるとともに発生させた表面弾性波を伝搬する部品であり、表面弾性波の発生および伝搬が可能な素材で構成されている。より具体的には、圧電基板202は、圧電効果によって表面弾性波を発生させる圧電体(「圧電素子」ともいう)によって構成されている。この場合、圧電体としては、各種結晶体(例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、水晶、ランガサイト)や、圧電効果を示す高分子材料(例えば、PVDF)などを用いることができる。本実施形態においては、圧電基板202は、結晶体で構成されている。なお、表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)とは、弾性体の表面を伝播する縦波および/または横波からなる波である。

【0027】
この圧電基板202は、図示左右方向に延びる平行四辺形状の板状体に形成されている。本実施形態においては、圧電基板202は、約7mm×4mm×1mmの大きさで形成されている。この圧電基板202の大きさや形状は、センサモジュール200の使用場所、使用条件、および励振する表面弾性波(図1において破線波線で示す)の周波数などに応じて適宜決定されるものである。また、圧電基板202の厚さは、励振する表面弾性波の波長の1波長以上の厚さであればよいが、好ましくは同波長の3倍以上の厚さで構成するとよい。

【0028】
圧電基板202における長手方向両端部には、反射防止部203a,203bが設けられている。反射防止部203a,203bは、後述する表面弾性変換IDT206によって励振された表面弾性波および表面弾性波反射IDT207によって反射された表面弾性波の表面弾性波変換IDT206および表面弾性波反射IDT207への反射を防止するための部分である。本実施形態においては、反射防止部203a,203bは、平行四辺形に形成された圧電基板202における長手方向両端部の互いに平行に延びる2つの斜辺によって構成されている。本実施形態においては、反射防止部203a,203bを構成する2つの斜辺は、圧電基板202の長辺に対して約60°の角度で形成されている。

【0029】
なお、圧電基板202は、前記圧電体と、表面弾性波を伝搬可能な基体とを組み合わせて構成することもできる。例えば、圧電基板202は、PZTなどの圧電セラミックスや酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などからなる圧電薄膜をガラス、シリコンまたは樹脂などからなる基板表面の全面または部分的に積層して構成することもできる。

【0030】
この圧電基板202は、絶縁層204で被覆された導電性基板205上に固定されている。絶縁層204は、導電性基板205を筐体201内において電気的に絶縁して静電遮蔽するための誘電体層であり、高分子材料(例えば、BCB、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂など)やセラミック材料で構成されている。なお、図1においては、導電性基板205の構成を明確に表すために導電性基板205の側面における絶縁層204を敢えて省略して示すとともに断面をハッチングで示している。また、導電性基板205は、後述する表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209に共通電位を供給するための導体で構成された板状の部材ある。本実施形態においては、導電性基板205は銅板によって構成されている。この導電性基板205は、絶縁層204によって筐体201内において完全に電気的に絶縁されて静電遮蔽された状態で固定されている。

【0031】
一方、圧電基板202の図示上面には、長手方向両側に互いに対向した状態で表面弾性波変換IDT206および表面弾性波反射IDT207がそれぞれ設けられている。これらのうち、表面弾性波変換IDT206は、後述するアンテナ208から入力する高周波信号に対応する表面弾性波を圧電基板202に励振するとともに、表面弾性波反射IDT207によって反射された表面弾性波を受けて同受信した表面弾性波に対応する高周波信号を生成してアンテナ208に出力する電極である。すなわち、表面弾性波変換IDT206は、アンテナ208と圧電基板202との間で高周波信号と表面弾性波とを相互に変換する電極であり、本発明に係る表面弾性波変換手段に相当する。

【0032】
また、表面弾性波反射IDT207は、前記表面弾性波変換IDT206によって励振された表面弾性波を同表面弾性波変換IDT206に向けて反射するための電極であり、本発明に係る表面弾性波反射手段に相当する。これらの表面弾性波変換IDT206および表面弾性波反射IDT207は、それぞれ2つの櫛歯状電極、具体的には、2つの第1櫛歯状電極206a,206bおよび2つの櫛歯状電極207a,207bがそれぞれ互いに対向配置されたIDT(Interdigital
Transducer)によって構成されている。

【0033】
各2つの第1櫛歯状電極206a,206bおよび第2櫛歯状電極207a,207bは、圧電基板202に対して電圧を加えまたは受けることができる電極であり、正極(+)側および負極(—)側の一対の櫛歯状の電極によって構成されている。具体的には、直線状に延びる基部から直交する方向に互いに平行に延びる複数の電極指によって構成された2つの櫛歯状の電極が、互いの電極指間に入り込んだ状態で形成されている。

【0034】
これらの第1櫛歯状電極206a,206bおよび第2櫛歯状電極207a,207bのうち、表面弾性波変換IDT206を構成する第1櫛歯状電極206a,206bは、正極側の電極指と負極側の電極指との間隔Pが、励振する表面弾性波の波長の1/2の整数倍の長さに設定されている。本実施形態においては、第1櫛歯状電極206a,206bにおける各正極側の電極指と各負極側の電極指との間隔Pは、2つの第1櫛歯状電極206a,206bによって励振する表面弾性波の波長の1/2の長さに設定している。また、一対の櫛歯状電極206a,206bを構成する各電極指間の間隔λも、励振する表面弾性波の波長の整数倍の長さに設定されている。

【0035】
一方、表面弾性波反射IDT207を構成する第2櫛歯状電極207a,207bは、必ずしも、各正極側の電極指と各負極側の電極指との間隔Pや材質などの構成を第1櫛歯状電極206a,206bと同一にする必要はないが、本実施形態においては、第2櫛歯状電極207a,207bは第1櫛歯状電極206a,206bと同一に構成されている。

【0036】
また、第2櫛歯状電極207a,207b(表面弾性波反射IDT207)は、第1櫛歯状電極206a,206b(表面弾性波変換IDT206)に対して第1櫛歯状電極206a,206bが励振する表面弾性波の図示右側の伝搬方向上に配置される。この場合、第2櫛歯状電極207a,207bと第1櫛歯状電極206a,206bとの距離は、センサモジュール200の仕様(使用条件、励振する表面弾性波の周波数など)に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではない。この場合、例えば、第1櫛歯状電極206a,206bと第2櫛歯状電極207a,207bとは、第1櫛歯状電極206a,206bによって励振される表面弾性波の振幅とは無関係に配置してもよいし、同表面弾性波の振幅が2つの第2櫛歯状電極207a,207bの電極指間に一致するように表面弾性波の波長の整数倍の間隔を介して配置することもできる。

【0037】
これらの各2つずつの第1櫛歯状電極206a,206bおよび第2櫛歯状電極207a,207bは、Al,Au,Cu,Cr,Ti,Ptなどの金属単体、これらの組み合わせ、またはこれらの合金によって構成されており、圧電基板202の長手方向に沿って表面弾性波を励振させる向き、具体的には、櫛歯状の電極指が圧電基板202の長手方向に直交する向きで設けられている。これらの各2つずつの第1櫛歯状電極206a,206bおよび第2櫛歯状電極207a,207bは、スパッタ法、フォトリソグラフィーなどにより圧電基板202の表面にそれぞれ形成される。

【0038】
表面弾性波変換IDT206を構成する2つの第1櫛歯状電極206a,206bは、一方の第1櫛歯状電極206aがアンテナ208に接続されるとともに、他方の第1櫛歯状電極206bが導電性基板205に接続されている。アンテナ208は、ホスト装置300から送信される電波(図1において破線屈曲線で示す)を高周波信号に変換して表面弾性波変換IDT206に出力するとともに、表面弾性波変換IDT206によって生成された高周波信号を電波に変換して送信出力する送受信器である。なお、このアンテナ208と表面弾性波変換IDT206における第1櫛歯状電極206aとの間には、互いのインピーダンスを整合させるための図示しないインピーダンスマッチング回路が設けられている。

【0039】
一方、表面弾性波変換IDT207を構成する2つの櫛歯状電極207a,207bは、一方の第2櫛歯状電極207aがサーミスタ209に接続されるとともに、他方の第2櫛歯状電極207bが導電性基板205に接続されている。サーミスタ209は、外部から受ける温度変化に対してインピーダンスが著しく変化するとともに同温度に対応する電気信号を出力する半導体素子である。このサーミスタ209は、一方の端子209aが表面弾性波反射IDT207を構成する第2櫛歯状電極207aに接続されるとともに他方の端子209bが導電性基板205に接続された状態で、導電性基板205上に固定されている。

【0040】
すなわち、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209が導電性基板205を介してそれぞれ電気的に接続されている。これにより、センサモジュール200は、センサモジュール200の電気系全体が他の電気系、例えば、センサモジュール200が設置される場所やホスト装置300の電気系から浮いた所謂フローティング状態となっている。なお、図1においては、理解を容易にするために表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209は、導電性基板205に対してそれぞれ導線によって接続されている。しかし、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209と導電性基板205との接続方法は、電気的に接続されていればよく、例えば、各種ボンディングやスルーホールによって接続することができる。

【0041】
ホスト装置300は、センサモジュール200に対して表面弾性波変換IDT206に高周波信号を供給するための駆動信号(電波)を送信するとともにセンサモジュール200から送信される応答信号(電波)を受信して表面弾性波変換IDT206によって生成された電気信号を解析する計算装置である。すなわち、本実施形態においては、このホスト装置300は、物理的に離れた場所に設置されるセンサモジュール200からの応答信号を解析してセンサモジュール200の設置場所における物理量(本実施形態においては、温度)を計算する。なお、このホスト装置300は、内蔵する各種回路を駆動するための電源を備え、または電源に接続されるように構成されている。

【0042】
(センサモジュール200の作動)
次に、上記のように構成したセンサモジュール200の作動について説明する。センサモジュール200の使用者は、センサモジュール200をホスト装置300から物理的な離れた場所であって温度測定の対象となる場所に設置する。この場合、センサモジュール200は、電源を持たないとともにホスト装置300からの駆動信号の送信がないため、作動停止状態にある。次いで、使用者は、ホスト装置300の電源をONにするとともにホスト装置300の作動を開始させる。これにより、ホスト装置300は、センサモジュール200に表面弾性波変換IDT206に高周波信号を供給してセンサモジュール200からの応答信号を得るための駆動信号を送信する。この場合、ホスト装置300は、駆動信号をバースト出力することにより、センサモジュール200からの応答信号を検波し易くなる。

【0043】
ホスト装置300から送信された駆動信号は、センサモジュール200のアンテナ208によって受信される。アンテナ208は、受信した電波(駆動信号)に対応する高周波信号に変換して表面弾性波変換IDT206に出力する。表面弾性波変換IDT206は、アンテナ208から出力された高周波信号に対応する表面弾性波を圧電基板202上に励振する。これにより、圧電基板202上に励振された表面弾性波は、表面弾性波変換IDT206の中心として反射防止部203a側および表面弾性波反射IDT207側にそれぞれ伝搬する。これらのうち、反射防止部203a側に伝搬した表面弾性波は、反射防止部203aによって圧電基板202の図示下側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波変換IDT206から反射防止部203a側に伝搬した表面弾性波が再び表面弾性波変換IDT206に戻ることが防止される。

【0044】
一方、表面弾性波反射IDT207側に向って伝搬した表面弾性波は、一部が表面弾性波反射IDT207によって表面弾性波変換IDT206側に反射されるとともに、他の一部が表面弾性波反射IDT207を通り抜ける。この場合、表面弾性波反射IDT207を通り抜けた表面弾性波は、反射防止部203bによって圧電基板202の図示上側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波反射IDT207を通り抜けた表面弾性波が再び表面弾性波変換IDT206に戻ることが防止される。

【0045】
また、表面弾性波反射IDT207は、第2櫛歯状電極207aに接続されたサーミスタ209のインピーダンスに応じた反射率によって表面弾性波を反射する。より具体的には、表面弾性波反射IDT207は、受けた表面弾性波に応じた高周波信号を生成してサーミスタ209に出力する。この場合、サーミスタ209は、サーミスタ209の周囲温度に応じたインピーダンスとなっている。このため、サーミスタ209に接続された表面弾性波反射IDT207のインピーダンスがサーミスタ209のインピーダンスの変化に応じて変化する。すなわち、表面弾性波反射IDT207のインピーダンスは、サーミスタ209の周囲の温度に応じて変化する。

【0046】
そして、表面弾性波反射IDT207から出力された高周波信号は、サーミスタ209および表面弾性波反射IDT207のインピーダンス変化に応じて変化した後、表面弾性波反射IDT207によって表面弾性波に変換される。すなわち、表面弾性波反射IDT207における表面弾性波の反射率は、サーミスタ209の周囲温度に応じたものとなる。

【0047】
したがって、表面弾性波反射IDT207は、サーミスタ209のインピーダンス(換言すれば、周囲温度)に応じた所定の反射率によって表面弾性波を反射させる。表面弾性波反射IDT207によって所定の反射率で反射された表面弾性波は、圧電基板202上を表面弾性波変換IDT206に向って伝搬する。表面弾性波変換IDT206は、受信した表面弾性波に対応する高周波信号に変換するとともに同高周波信号をアンテナ208に出力する。アンテナ208は、表面弾性波変換IDT206から出力された高周波信号を電波(応答信号)に変換して送信する。アンテナ208から送信された応答信号は、ホスト装置300によって受信される。

【0048】
なお、表面弾性波反射IDT207は、表面弾性波を反射させる際、反射防止部203b側にも表面弾性波を励振させる。この場合、反射防止部203b側に伝搬した表面弾性波は、反射防止部203bによって圧電基板202の図示上側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波用反射IDT207から反射防止部203b側に伝搬した表面弾性波が再び表面弾性波反射IDT207に戻ることが防止される。

【0049】
そして、ホスト装置300は、受信した電波(応答信号)を高周波電気信号に変換した後、この高周波信号を解析することによりサーミスタ209の検出した温度を計算する。この場合、ホスト装置300による信号の発信と受信との間には、表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207との距離(伝搬経路長)や圧電基板202での伝搬速度に応じた遅延が生じる。したがって、ホスト装置300は、この遅延時間を利用して受信信号を検波する。また、ホスト装置300は、センサモジュール200への送信信号をバースト出力した場合には、より精度良く受信信号を検波することができる。

【0050】
次に、本発明者によるセンサモジュール200のセンサとして感知幅の測定実験について説明する。本発明者は、本発明に係るセンサモジュール200のセンサとして感知幅と
従来技術に係るセンサモジュール90のセンサとして感知幅とを測定する実験を行なった。図8は、従来技術に係るセンサモジュール90を示している。この従来技術に係るセンサモジュール90は、表面弾性波変換IDT206における第1櫛歯状電極206bをアースに接続するとともに、表面弾性波反射IDT207における他方の櫛歯状電極である第2櫛歯状電極207bとサーミスタ209の他方の端子209bとを互いに接続した構成において本発明に係るセンサモジュール200と相違する。

【0051】
この測定結果により本発明者は、従来技術に係るセンサモジュール90のセンサの感知幅に対して本発明に係るセンサモジュール200のセンサとして感知幅が約20%増加したことを確認した。すなわち、本発明に係るセンサモジュール200によれば、従来技術に係るセンサモジュール90に比べて検出対象となる物理量をより広範な範囲で検出することができる。このように、センサモジュール200のセンサとして感知幅が約20%増加する理由としては、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209を互い接続して共通電位を供給することにより、サーミスタ209の共振を抑えることができたためと考えられる。

【0052】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、センサモジュール200(ワイヤレス式物理量検出システム100)は、アンテナ208が接続されて高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換IDT206、インピーダンス変化型センサとしてのサーミスタ209および同サーミスタ209が接続されて表面弾性波変換IDT206が励振した表面弾性波を反射させる表面弾性波反射IDT207が、互いに電気的に接続されて共通電位となる導電性基板205に接続されている。これにより、本発明者の実験によれば、サーミスタ209の共振現象を抑えて従来の無給電ワイヤレス式センサモジュールに比べてセンサとしての感知幅を約20%増加させることができる。

【0053】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記変形例の説明においては、参照する各図における上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号または対応する符号を付すとともに直接関わらない部分については一部の構成を適宜省略して示して、それらの説明も省略する。また、各図において、破線矢印は表面弾性波を示す。

【0054】
例えば、上記実施形態においては、センサモジュール200は、サーミスタ209を備えることによりサーミスタ209の周囲温度に応じて表面弾性波反射IDT207における表面弾性波の反射率を変化させるように構成した。すなわち、サーミスタ209が、本発明に係るインピーダンス変化型センサに相当する。しかし、表面弾性波反射IDT207における表面弾性波の反射率を変化させるためのインピーダンス変化型センサは、外部から受ける物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するもの、すなわち、キャパシタ、インダクタンスまたは抵抗が変化する素子であれば、必ずしもサーミスタに限定されるものではない。すなわち、インピーダンス変化型センサは、光、音、超音波(振動)、圧力、温度、湿度、ガス、電界または磁界などの物理量に応じたインピーダンスとなるインピーダンス変換素子を用いることができる。この場合、例えば、温度検出であればサーミスタのほかサーモスタットや熱伝対、圧力検出であればストレンゲージ(ロードセル)や圧電素子(ピエゾ素子)、光検出であればフォトダイオードやフォトレジスタなどを用いることができる。なお、インピーダンス変化型センサは、前記した各種インピーダンス変換素子を単独で、またはこれらを適宜組み合わせて構成することができる。

【0055】
また、上記実施形態においては、インピーダンス変化型センサであるサーミスタ209を圧電基板202および導電性基板205と同じ筐体201内に配置した。しかし、サーミスタ209などによって構成されるインピーダンス変化型センサは、これらを収める筐体201の外側に配置されていてもよい。

【0056】
また、上記実施形態においては、センサモジュール200におけるアンテナ208は、図1に示されるようにポール形のアンテナを採用している。しかし、アンテナ208は、ホスト装置300との間で電波の送受信、すなわち、駆動信号の受信と応答信号の送信を行うことができる形式のものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、アンテナ208は、フィルム状やコイル状のアンテナを採用することができる。また、アンテナ208の配置位置も筐体201の外側であっても内側であってもよい。また、アンテナ208としてフィルム状のアンテナを採用した場合、このフィルム状のアンテナ208は、圧電基板202の表裏面や絶縁層204で被覆された導電性基板205の表裏面に貼り付けて設けることもできる。

【0057】
また、上記実施形態においては、センサモジュール200は、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209を導電性基板205に接続することにより、これらの表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209を互いに電気的に接続して共通電位を供給するように構成した。しかし、センサモジュール200は、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209は互いに電気的に接続されて共通電位が供給されていればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。

【0058】
例えば、センサモジュール200は、図2に示すように、表面弾性波変換IDT206の第1櫛歯状電極206b、表面弾性波反射IDT207の第2櫛歯状電極207bおよびサーミスタ209の他方の端子209bを互いに直結することにより、これらの表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209に共通電位を供給するように構成することもできる。

【0059】
また、上記実施形態においては、導電性基板205は、圧電基板202およびサーミスタ209を載置可能な大きさおよび形状に形成した。これにより、表面弾性波変換IDT206、表面弾性波反射IDT207およびサーミスタ209を容易に電気的に接続することができる。しかし、導電性基板205は、導電性を有する材料で構成され、少なくとも圧電基板202上に配置される他方の第1櫛歯電極206bと他方の第2櫛歯電極207b間に対応する大きさおよび形状に形成されて圧電基板202に対向配置されていれば、スルーホールやワイヤボンディングなどにより、少なくとも圧電基板202上に配置される表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とを容易に電気的に接続することができる。なお、導電性基板205を構成する材料は、上記実施形態における銅材のほか電気を通すことができる材料(電気伝導率が高い材料)であれば特に限定されるものではない。例えば、導電性基板205の材料としては、アルミニウムなどの軽金属、金や銀などの貴金属、導電性セラミックおよび導電性高分子などを用いることができる。また、導電性基板205は、これらの材料を適宜組み合わせて構成することができるとともに、これらの材料と絶縁材料との組み合わせ、例えば、高周波回路で多用されるガラスエポキシ基板の両面に銅箔を設けて導電性基板205を構成することもできる。

【0060】
また、上記実施形態においては、圧電基板202における長手方向両端部の2つの斜辺をそれぞれ反射防止部203a,203とした。しかし、反射防止部203a,203bは、表面弾性波変換IDT206および/または表面弾性波反射IDT207から励振された表面弾性波の表面弾性波変換IDT206および/または表面弾性波反射IDT207への反射を防止することができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、反射防止部203a,203は、圧電基板202上における表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207との間における表面弾性波の伝搬領域の外側領域に設けられていればよい。この場合、反射防止部203a,203は、表面弾性波の進行方向の延長線上に設けるとよい。

【0061】
例えば、反射防止部203a,203bは、図3に示すように、圧電基板202を図示左右方向に延びる略長方形状に形成するとともに、この略長方形状の圧電基板202における長手方向両端辺を連続する凹凸形状に形成することができる。これによれば、反射防止部203a,203bに達した表面弾性波を分散することができる。

【0062】
また、例えば、図4に示すように、圧電基板202を図示左右方向に延びる長方形状に形成するとともに、この長方形状の圧電基板202上の対角線状に表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とを互いに対向配置する。すなわち、長方形状に形成した圧電基板202における対角を反射防止部203a,203bとすることもできる。これによっても、反射防止部203a,203bに達した表面弾性波を分散することができる。また、この場合、圧電基板202の対角によって構成される反射防止部203a,203bを、前記変形例における図3に示した凹凸形状を採用することもできる。なお、上記実施形態および各変形例を含めて、圧電基板202における表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207と間の結晶の面方位は、表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207と間で表面弾性波が効率的に伝搬する面方位、例えば、A面サファイア基板を用いる場合には、六角柱形状のサファイア単結晶の(1120)の面方位で示される面方位が好適であり、R面サファイア基板を用いる場合には、サファイア単結晶の(0112)の面方位で示される面が表面となる面方位が好適である。

【0063】
また、例えば、図5(A),(B)に示すように、圧電基板202を図示左右方向に延びる長方形状に形成するとともに、この長方形状の圧電基板202における長手方向両端部の上面に吸振性を有する弾性体や粘性体(例えば、エポキシ樹脂、ゴム材、シリコンゴムおよびグリースなど)からなる反射防止部203a,203bを設けることもできる。この弾性体や粘性体によって構成される反射防止部203a,203bは、上記実施形態、前記図2および図3に示した各変形例における各反射防止部203a,203bに代えてまたは加えて用いることができることは、当然である。

【0064】
また、上記実施形態および各変形例を含めて各反射防止部203a,203bは、反射防止部203aおよび反射防止部203bのうちのいずれか一方で構成してもよいし、反射防止部203a,203bによって反射される表面弾性波の伝搬方向上に更に設けるようにしてもよい。

【0065】
また、圧電基板202上における表面弾性波の反射を考慮する必要がない場合、例えば、表面弾性波変換IDT206によって変換された高周波信号の中から必要な高周波信号を各種演算処理にて抽出可能な場合などには、反射防止部203a,203bを省略することもできる。

【0066】
また、上記実施形態においては、センサモジュール200は、一組の表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とを設けた。しかし、センサモジュール200は、複数組の表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とを設けることもできる。この場合、各組における表面弾性波の伝搬経路長を互いに異なるものとした所謂タグを用いることにより各組のごとの応答信号を区別するようにするとよい。

【0067】
また、センサモジュール200は、1つの表面弾性波変換IDT206に対して2つ以上の表面弾性波反射IDT207を設けて構成することができるとともに、1つの表面弾性波反射IDT207に対して2つ以上の表面弾性波変換IDT206を設けて構成することもできる。この場合、センサモジュール200は、例えば、図6に示すように、1つの表面弾性波変換IDT206に対して2つの表面弾性波の伝搬方向上にそれぞれ表面弾性波反射IDT207を設けて構成することができる。この場合、2つの表面弾性波反射IDT207には、それぞれサーミスタ209が設けられている。なお、この場合、2つの表面弾性波反射IDT207に、互いに異なる物理量を検出するインピーダンス型センサを設けるようにしてもよい。

【0068】
また、例えば、センサモジュール200は、圧電基板202上における表面弾性波の伝搬経路上に表面弾性波を2方向に伝搬(例えば、入射した表面弾性波の一部を通過させるとともに他の一部を反射)させる反射体を設けて構成することもできる。これらの場合、2つの表面弾性波反射IDT207に対応する2つの表面弾性波の伝搬経路長を互いに異ならせることにより2つの表面弾性波を区別して検出できるようにしておくとよい。

【0069】
また、上記実施形態においては、ワイヤレス式物理量検出システム100は、1つのセンサモジュール200に対して駆動信号の無線送信および応答信号の無線受信を行なう構成とした。しかし、ワイヤレス式物理量検出システム100は、1つのワイヤレス式物理量検出システム100に対して複数のセンサモジュール200に対して駆動信号の無線送信および応答信号の無線受信を行なう構成とすることもできる。

【0070】
また、上記実施形態においては、表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とを互いに対向配置した。しかし、表面弾性波変換IDT206と表面弾性波反射IDT207とは、互いに表面弾性波が往復伝搬できれば、必ずしも対向配置する必要はない。例えば、図7に示すように、表面弾性波変換IDT206によって励振される表面弾性波の伝搬経路上に表面弾性波の進行方向を変更する反射部210を設けることにより表面弾性波反射IDT207を表面弾性波変換IDT206に対して対向しない位置(図7においては、表面弾性波変換IDT206によって励振された表面弾性波の伝搬方向に対して直角方向)に自由に配置することもできる。この場合、圧電基板202の端面を直線状に形成することにより表面弾性波を反射することができるため、表面弾性波の進行方向を変更するための反射部210は、圧電基板202の端面を直線状に形成することにより形成することができる。また、この反射部210は、前記圧電基板202の端面を直線状に形成することに代えてまたは加えて第1櫛歯状電極206a,206bおよび第2櫛歯状207a,207bなどを電極で構成することもできる。

【0071】
また、上記実施形態においては、ホスト装置300は、センサモジュール200に対して電波を送信する機能と受信する機能を共に兼ね備えて構成されている。すなわち、ホスト装置300は、センサモジュール200に対して駆動信号を無線送信するとともに同センサモジュール200からの応答信号を無線受信する。しかし、ホスト装置300は、駆動信号を無線送信する機能と応答信号を無線受信する機能とを別個の装置で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
90…従来技術に係るセンサモジュール、
100…ワイヤレス式物理量検出システム、
200…無給電ワイヤレス式センサモジュール(センサモジュール)、201…筐体、202…圧電基板、203a,203b…反射防止部、204…絶縁層、205…導電性基板、206…表面弾性波変換IDT、206a,206b…第1櫛歯状電極、207…表面弾性波反射IDT、207a,207b…第2櫛歯状電極、208…アンテナ、209…サーミスタ、209a,209b…端子、210…反射部、
300…ホスト装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7