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明細書 :骨増生剤および骨粗鬆症治療薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4814477号 (P4814477)
公開番号 特開2003-335686 (P2003-335686A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
公開日 平成15年11月25日(2003.11.25)
発明の名称または考案の名称 骨増生剤および骨粗鬆症治療薬
国際特許分類 A61K  33/42        (2006.01)
A61K  33/06        (2006.01)
A61K  38/17        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
FI A61K 33/42
A61K 33/06
A61K 37/12
A61P 19/10
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2002-138989 (P2002-138989)
出願日 平成14年5月14日(2002.5.14)
審判番号 不服 2008-031482(P2008-031482/J1)
審査請求日 平成16年11月18日(2004.11.18)
審判請求日 平成20年12月11日(2008.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】000190943
【氏名又は名称】新田ゼラチン株式会社
発明者または考案者 【氏名】菊池 正紀
【氏名】田中 順三
【氏名】伊藤 典一
【氏名】萬代 佳宣
【氏名】松本 裕子
【氏名】小山 富久
【氏名】高久田 和夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
参考文献・文献 特開平8-276003(JP,A)
Journal of Material Science Letters,2001,Vol.20,p.1199-1201
戦略的基礎研究推進事業研究年報,2002.03,Vol.2000,p.596-600
調査した分野 A61L27/00
A61K33/42
A61K33/06
A61K38/17
A61P19/00
A61P19/10
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体であって、ハイドロキシアパタイトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小多孔質構造を有する複合体からなる、骨粗鬆症治療のための生体埋め込み型の骨増生剤。
【請求項2】
複合体中のハイドロキシアパタイトとコラーゲンの質量比が60:40~90:10である、請求項1記載の骨増生剤。
【請求項3】
複合体中のコラーゲン間に架橋が導入されている、請求項1又は2記載の骨増生剤。
【請求項4】
ブロック状、ペースト状、膜状又は粒状である、請求項1~のいずれか1項に記載の骨増生剤。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生体埋め込み型の新規骨増生剤に関する。より詳しくは、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体からなる生体埋め込み型の骨増生剤、および該骨増生剤の骨粗鬆症治療薬としての利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨粗鬆症とは、古い骨が新しい骨に置き換わる骨リモデリングの過程において、骨吸収量が骨形成量を上回る結果、骨量が減少する病態をいう。骨粗鬆症では、骨塩量の減少に加えて、骨の微細構造が崩壊するため、骨が脆弱化し、骨折の危険性が増大する。現在、更年期女性の3人に1人、また高齢者の大部分が骨粗鬆症に罹患しているといわれ、骨折により寝たきり状態となる高齢患者も多い。そのため、高齢化社会を迎えた今日、骨粗鬆症患者の増大は社会的・経済的に深刻な問題となっている。
【0003】
従来、骨粗鬆症の治療は骨吸収の抑制と骨形成の促進を指向した内服薬が主流であった。現在最も普及している治療方法は、ホルモン剤(エストロゲン)、カルシウム製剤、ビタミンDやその誘導体等を併用し、全身性に骨代謝を改善しようとするものである。しかし、この治療方法は、副作用を考慮して薬剤の投与量が制限されるため、短期間で顕著な効果を得ることができないという問題がある。また、これらの薬剤には、骨粗鬆症によって細くなった骨梁がそれ以上吸収されないよう維持したり、細くなった骨梁をやや太くする程度の効果は望めても、いったん吸収されて失われた骨梁を新たに骨形成させる効果は望めないと考えられている。
【0004】
一方、現在治験段階にある骨形成タンパク(Bone Morphogenic protein :BMP) は積極的な骨形成作用を有するといわれているが、高価であることと、理想的なキャリアがないため持続的効果が得られず、頻回の投与が必要になるなどの問題がある。
【0005】
他方、骨粗鬆症治療に生体埋め込み型等の局所適用型製剤を用いる方法はこれまでほとんど行われていない。実際、既存の骨充填材の多くは生体非吸収性で、有効な骨形成作用が望めない。例えば、市販の骨充填材であるアパタイト焼結体は生体吸収性を有していないため、その顆粒を骨に充填しても、骨に置換されることなく永久に生体内に残留するだけと考えられる。
【0006】
もし、優れた骨増生作用を有する生体埋め込み型の製剤が開発できれば、それは既存の薬剤によって全身的改善が望めない骨粗鬆症患者等に対し、骨折が懸念される大腿骨等の、所望の部位における局所的骨増生剤として非常に有用である。
【0007】
ところで、脊椎動物の骨はハイドロキシアパタイトとコラーゲンからなる複合体である。これらは、生体骨中でハイドロキシアパタイトがそのc軸方向にコラーゲン繊維に沿って配向した特有のナノコンポジット構造を形成し、この構造が骨に特有の機械的性質を与えている。本発明者らは、この生体骨類似の構造と組成を有するハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体を作製し、生体吸収性の骨欠損部充填用インプラントとして開発する研究を行ってきた(Kikuchi et al, Biomaterials 22, (2000) p1705-1711、特開平7-101708号公報、特開平11-199209号公報、特開平2000-5298号公報等)。しかしながら、このハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体を骨粗鬆症等の骨量の減少を伴う疾患の治療薬として応用することは、これまで試みたことはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、所望の部位で効果的な骨増生作用を発揮しうる、生体埋め込み型の骨増生剤および該骨増生剤を利用した骨粗鬆症治療薬の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体を骨粗鬆症モデル動物の骨内に適用すると、その埋め込み周囲で明らかに骨密度が増加することを見出した。つまり、該複合体は、骨の所望の場所に新たな骨形成を行うことが可能な、生体埋め込み型の骨粗鬆症治療薬として有用であることを確認した。しかも、複合体中のコラーゲンを架橋したり、複合体の形態を適宜変えることによって、複合体の吸収速度や骨への置換速度を制御することも可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)を提供するものである。
(1) ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体からなる、生体埋め込み型の骨増生剤。
(2) 複合体中のハイドロキシアパタイトとコラーゲンの質量比が60:40~90:10である、上記(1)に記載の骨増生剤。
(3) 複合体がハイドロキシアパタイトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小多孔質構造を有するものである、上記(1)または(2)に記載の骨増生剤。
(4) 複合体中のコラーゲン間に架橋が導入されている、上記(1)~(3)のいずれか1に記載の骨増生剤。
(5) 架橋がコラーゲン中の反応可能なε-アミノ基の少なくとも1%以上に導入されている、上記(4)に記載の骨増生剤。
(6) 骨粗鬆症治療薬である、上記(1)~(5)のいずれか1に記載の骨増生剤。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1. 骨増生剤
本発明にかかる骨増生剤は、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体からなる、生体埋め込み型の骨増生剤である。本発明において、「生体埋め込み型の骨増生剤」とは、生体内の目的とする部位に埋植して使用するタイプ〔生体埋め込み型〕の、骨代謝回転を促進する製剤〔骨増生剤〕を意味するものとする。
【0012】
1.1 ハイドロキシアパタイト
本発明の骨増生剤を構成するハイドロキシアパタイトは、一般組成をCa5(PO4)3OH、とする化合物であり、その反応の非化学量論性によって、CaHPO4 、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)2・H2Oなどリン酸カルシウムと称される1群の化合物を含む。また、ハイドロキシアパタイトは、Ca5(PO4)3OH、またはCa10(PO4)6(OH)2の組成式で示される化合物を基本成分とするもので、Ca成分の一部分は、Sr、Ba、MG、Fe、Al、Y、La、Na、K、Hなどから選ばれる1種以上で置換されてもよい。また、(PO4)成分の一部分が、VO4、BO3、SO4、CO3、SiO4等から選ばれる1種以上で置換されてもよい。更に、(OH)成分の一部分が、F、Cl、O、CO3等から選ばれる1種以上で置換されてもよい。また、これらの各成分の一部が欠陥となっていてもよい。生体骨中のアパタイトのPO4およびOH成分の一部は通常CO3に置換されているため、本複合生体材料の製造中、大気中からのCO3の混入と各成分への一部置換(0~10質量%程度)があってもよい。
【0013】
なお、ハイドロキシアパタイトは、通常の微結晶・非晶質並びに結晶体の他に、同型固溶体、置換型固溶体、侵入型固溶体であってもよく、非量子論的欠陥を含むものであってもよい。また、この「ハイドロキシアパタイト」中、カルシウム及びリンの原子比(Ca/P)は1.3~1.8の範囲内にあることが好ましく、特に1.5~1.7がより好ましい。原子比が1.3~1.8の範囲内にあると、生成物中のアパタイト(リン酸カルシウム化合物)の組成と結晶構造が、脊椎動物の骨の中に存在するアパタイトと類似の組成と構造をとりうるため、生体親和性・生体吸収性が高くなるからである。
【0014】
1.2 コラーゲン
コラーゲンは、現在では20種類程度の分子種の異なるものが、哺乳動物に限らず、魚類を含む広範な動物の生体組織中に存在することが知られており、「コラーゲン類」と総称される。本発明の骨増生剤を構成するコラーゲンは特に限定されず、任意のものを用いることができる。一般的には、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ネズミ等)や鳥類(例えば、ニワトリ等)の皮膚、骨、軟骨、腱、臓器などから得られるコラーゲンが用いられる。また、魚類(例えば、タラ、ヒラメ、カレイ、サケ、マス、マグロ、サバ、タイ、イワシ、サメ等)の皮、骨、軟骨、ひれ、うろこ、臓器などから得られるコラーゲン様蛋白を出発原料として用いてもよい。あるいは、動物組織からの抽出ではなく、遺伝子組み替え技術によって得られたコラーゲンを用いてもよい。
【0015】
コラーゲンの分子種のなかで最も量が多く、よく研究されているのはI型コラーゲンで、通常、単にコラーゲンという場合はI型コラーゲンを指すことも多い。本発明で用いられるコラーゲンの分子種は特に限定されないが、I型コラーゲンを主成分とすることが好ましい。さらに、コラーゲンは、コラーゲンタンパク質のアミノ酸残基を、アセチル化、コハク化、マレイル化、フタル化、ベンゾイル化、エステル化、アミド化、グアニジノ化など、適当に化学修飾して用いてもよい。
【0016】
コラーゲンの調製方法としては、例えば、前記の出発原料(遺伝子組み替え技術は除く)から中性緩衝液や塩酸、酢酸、クエン酸などの希酸で抽出する方法が挙げられる。前者は中性塩可溶性コラーゲン、後者は酸可溶性コラーゲンと呼ばれる。しかし、いずれも抽出されるコラーゲンの量は少なく、大部分は不溶性コラーゲンとして残留する。この不溶性コラーゲンを可溶化させる方法としては、酵素可溶化法とアルカリ可溶化法が知られている。前者は酵素可溶化コラーゲン、後者はアルカリ可溶化コラーゲンと呼ばれるが、ともにほぼ100%の収率で分子状のコラーゲンとして可溶化できる。
【0017】
本発明に用いられるコラーゲンの調製方法(抽出型)は、特に限定されないが、コラーゲンが可溶化しているときの分子量が大きいと、立体障害のために複合体の強度が不十分となるため、モノメリック(単分子)なコラーゲンを用いることが好ましい。特に、酵素可溶化コラーゲンとアルカリ可溶化コラーゲンは、モノメリック分が多量であることに加えて、調製段階でコラーゲンの抗原性の大部分を有する非螺旋部(テロペプチド)が、選択的に分解・除去されるため、本発明の有機無機複合生体材料に好適である。なお、この非螺旋部が分解、除去されたコラーゲンはアテロコラーゲンと呼ばれる。
【0018】
酵素可溶化コラーゲンとアルカリ可溶化コラーゲンでは、等イオン点に違いがみられる。等イオン点とは、タンパク質分子に固有の解離基に由来する正、負の両荷電がちょうど相殺するpHのことで、コラーゲンの場合は等イオン点のpH領域に近づくと、可溶化していたものが線維化することが知られている。一般的に、酵素可溶化コラーゲンの等イオン点はpH8~9で、アルカリ可溶化コラーゲンの等イオン点はpH4~5である。本発明では、pHが7~11に保たれた反応容器中でコラーゲンの線維化が進み、自己組織化しやすい酵素可溶化コラーゲンを用いることがより好ましい。また、可溶化するための酵素としては、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、プロナーゼなどが例示されるが、酵素反応後の処理の容易性からペプシン、プロナーゼが好適に用いられる。
【0019】
1.3 コラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む複合体
本発明の骨増生剤を構成する「コラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む複合体」において、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンの質量比は、60:40~90:10が好ましく、特に70:30~85:15がより好ましい。これは両者の質量比が生体骨の組成(75:25)に近いことが、効果的な生体吸収性や骨形成のために必要だからである。
【0020】
前記複合体において、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンは自己組織化的に配向し、生体骨類似の複合体を形成することが好ましい。なお、「自己組織化」とは、一般的には「同種あるいは異種の原子、分子、微粒子などが、非共有結合的相互作用によって集合し、特異的な組織を形成すること(東京化学同人「生化学辞典」より)」を意味する。特に、本明細書中においては、コラーゲン繊維に沿って、アパタイト構造を有するリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)が生体骨特有の配向を有する、すなわちハイドロキシアパタイトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した、微小多孔質構造を意味するものとする。このような生体骨類似の構造を有する複合体の製造方法については、次項で詳細に説明する。
【0021】
2. 骨増生剤の製造方法
本発明の骨増生剤を構成するコラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む複合体は、少なくともコラーゲン、リン酸またはリン酸塩、水酸化カルシウムまたはカルシウム塩の3種の成分を出発物質として製造される。
【0022】
前記リン酸塩としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。また、前記カルシウム塩としては、例えば、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。
【0023】
前記したように、「コラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む複合体」は、ハイドロキシアパタイトのc軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した、生体骨類似の微小多孔質構造を有することが好ましい。そのような複合体は、例えば菊池らの方法(Kikuchi, S. et al, J.,Biomater., 22(13) (2001), 1705-1711, S. Itoh et al, J. Biomed Mater Res, (2001), 445-453)にしたがって製造することができる。すなわち、水酸化カルシウム溶液とコラーゲンを含むリン酸塩水溶液を反応容器中に同時滴下し、生じた沈澱物を乾燥することにより得ることができる。用いられるコラーゲンは、特に限定されないが、分子量が大きいと立体障害のために複合体の強度が不十分となるため、モノメリックなコラーゲンを用いることが好ましい。特に、ペプシン処理したアテロコラーゲンはモノメリックであることに加えて抗原性が低いため、本発明の骨増生剤には好適である。
【0024】
3. 骨増生効果の評価
本発明の骨増生剤の効果は、骨粗鬆症等のヒトの骨量減少病態を反映した実験モデル動物を作製し、このモデル動物に本発明の骨増生剤を埋植して(埋め込んで)、適用部位における骨量変化を確認することにより評価できる。
【0025】
そのようなモデル動物としては、例えば、卵巣摘出手術、低カルシウム食(例えば、Low Ca Diet、日本クレア株式会社製 等)、またはこれらの組合せによって作製された、骨粗鬆症モデル動物(例えば、ラット、マウス等)、あるいは遺伝子改変等によって作製された老化促進モデルマウス等を挙げることができる(江澤郁子 日本家政学会誌 vol 38(8) p695-703, 1987、Yamashita T. et al., J. of Endocrinology 164 p239-245, 2000)。骨量変化は、例えば、適用部位周辺の組織を採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色等を行って確認することができる。
【0026】
4. コラーゲンの架橋による生分解性制御
本発明の骨増生剤は、複合体を構成するコラーゲンに架橋を導入することにより、その生体内分解速度や骨組織への置換速度を制御することができる。
【0027】
4.1 コラーゲンの架橋方法
コラーゲンの架橋は、架橋剤や縮合剤を用いた化学的架橋、γ線、紫外線、熱脱水、電子線等を用いた物理的架橋など、いずれの方法で行ってもよい。架橋剤としては、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジド系架橋剤;エチレングリコールジエチルエーテル等のポリエポキシ系架橋剤;トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。これらの架橋剤の使用量は、コラーゲン1gに対して10μmolから10mmol程度とすることが好ましい。
【0028】
前記架橋は、コラーゲン同士のどの部分を架橋するものであってもよいが、特にカルボキシル基と水酸基、カルボキシル基とε-アミノ基、ε-アミノ基同士を架橋することが好ましい。また、反応可能な官能基のうち、その少なくとも1%以上に架橋が導入されることが好ましく、5%以上に導入されることがより好ましい。架橋が不十分だと生体内での分解が早く、十分な骨形成効果が期待できないからである。ただし、過剰な架橋剤の使用は、生体内での吸収を必要以上に遅くしたり、複合体の強度を低下させて生体内埋め込み時の取り扱いを困難にするため、注意が必要である。
【0029】
4.2 グルタールアルデヒドによる架橋
前記架橋方法のうち、グルタールアルデヒド等の架橋剤を用いた化学的架橋は、架橋度のコントロールしやすさや、得られる複合体の生体適合性という面から、特に好ましい。以下、本発明の好適な態様として、グルタールアルデヒドを用いた架橋方法について説明する。
【0030】
前項に記載したように、菊池らの方法に従い、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体の合成反応を行う。反応液は、複合体合成後直ちに、あるいは3時間までのエージング後、激しく撹拌しながらグルタールアルデヒドを加えて10分間反応させる。ここで、グルタールアルデヒドは、複合生体材料中のコラーゲン1gに対して10μmol~10mmol、特に10μmol~1mmol添加されることが好ましい。また、反応液の温度は0℃~40℃に維持されることが好ましい。架橋反応後、速やかに反応液をろ過して複合体を分取し、純水で3回洗浄して過剰なグルタールアルデヒドを除去する。こうして、コラーゲン間に架橋が導入された複合体が得られる。
【0031】
4.3 架橋複合体の評価
得られた架橋複合体は、未架橋の複合体に比べて、生体内分解速度が遅く、十分な骨形成作用を発揮できるだけの生体内滞留性を有する。所望の生体内分解速度を得るための架橋率は、例えば、ラット、マウス、ウサギ等の実験動物の骨内に該架橋複合体を移植して、その生体内滞留性と骨形成により評価できる。用いる実験動物は、前項で説明した骨粗鬆症等の骨量減少病態を示すモデル動物を用いれば、本発明の骨増生剤の評価としてより好適である。
【0032】
通常の実験動物を用いた本発明者らの検討によれば、コラーゲン1gに対して10μmol~10mmolのグルタールアルデヒドを添加して架橋を導入したハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体は、未架橋複合体が生体骨内において4週間で90%以上吸収されるのに対し、架橋複合体は4週間経っても生体骨内に約50%以上が残存し、良好な骨形成を誘導することが確認されている(特願2002-65778号)。
【0033】
5. 骨増生剤の形状
本発明の骨増生剤の形状は特に限定されず、ブロック状、ペースト状、膜状、粒状など、その適用部位や用途にあわせて任意の形状に成形することができる。この形状や大きさを適宜変化させることにより、本発明の骨増生剤の生体内分解速度や骨組織への置換速度を制御することができる。
【0034】
本発明の骨増生剤を構成するハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体は、水を吸うとスポンジのような弾性を有し、優れた生体親和性、骨誘導能ないしは骨伝導能を有する。したがって、該複合体を生体内に適用する場合は、生理食塩水など適当な液体に一旦浸漬してから、使用してもよい。こうして埋植された複合生体材料は、速やかに骨組織と結合し、ドナー側の硬組織と一体化しうる。
【0035】
6. 骨増生剤の用途(骨粗鬆症治療薬)
本発明の骨増生剤は、骨粗鬆症(原発性、続発性の両方を含む)、骨軟化症、変形性脊椎症、慢性関節リウマチ、悪性腫瘍、外傷等に伴う骨塩量の減少病態に対し、有用な局所的治療薬として利用できる。なかでも、局所適用型の骨粗鬆症治療薬として非常に好適である。本発明の生体埋め込み型骨増生剤は、既存の骨粗鬆症治療薬投与によって全身的改善が望めない骨粗鬆症患者に対し、骨折が懸念される大腿骨等の所望の部位における局所的骨増生を可能にする。
【0036】
本発明の骨増生剤には、必須の成分であるハイドロキシアパタイトとコラーゲンに加えて、本発明の目的と効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含有させることもできる。かかる成分としては、例えばSt、MgおよびCO3等の無機塩、クエン酸およびリン脂質等の有機物、BMP2、BMP6およびBMP7等の骨形成タンパク、bFGF、aFGF、VEGFおよびTGFβ等の増殖因子等が挙げられる。
【0037】
本発明の骨増生剤は、適用部位に応じてその形状や大きさを適宜調整し、生体内の所望の部位に埋植して使用される。本発明の骨増生剤を構成するハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体は、生体吸収性であるとともに優れた骨形成促進効果を有する。したがって、本発明の骨増生剤は生体適用後徐々に吸収され、速やかに新たな骨組織と置換する。
【0038】
【実施例】
以下、実施例および参考例(特願2002-65778号)により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および参考例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1:骨粗鬆症モデルラットにおけるハイドロキシアパタイト/コラーゲン(HAp/Col)複合体埋植による骨形成
1. 試験方法
(1) 骨粗鬆症モデルラットの作製
5週齢雌SD系ラット(n=13)に生後6週齢で卵巣摘出手術(OVX)、または偽手術(Sham)を施した。そして、生後10週齢までは、すべてのラットを低カルシウム食餌(Low Ca Diet (Ca: 0.01 %, P: 0.2 %)、日本クレア株式会社製)と蒸留水で飼育して骨塩量を低下させ、骨粗鬆症モデルラットを作製した。
【0040】
(2) HAp/Col複合体の調整とラット脛骨内埋め込み
生体骨類似の構造を有するHAp/Col複合体を、菊池らの方法(Kikuchi, S. et al, J.,Biomater., 22(13) (2001), 1705-1711, S. Itoh et al, J. Biomed Mater Res, (201), 445-453)にしたがって調製した。10週齢の骨粗鬆症モデルラットに対し、調製した複合体の埋め込み手術を行った。手術はラット脛骨骨幹部外側皮質骨に直径2 mmの孔をあけ、右肢に同径に切削したHAp/Colを埋め込み、左肢はコントロールとして孔のままとした。
【0041】
(3) HAp/Col複合体埋め込み後の飼育
埋め込み手術後、ラットを以下の4群に分けた。なお、HAp/Col複合体埋め込み後の実験プロトコールの概要を図1に示す。
1)Sham Normal Ca群(n=3):Shamかつ通常食餌(Normal Ca Diet)で飼育
2)Sham Low Ca群(n=2) :Shamかつ低カルシウム食餌(Low Ca Diet)で飼育
3)OVX Normal Ca群(n=4) :OVXかつ通常食餌(Normal Ca Diet)で飼育
4)OVX Low Ca群(n=4) :OVXかつ低カルシウム食餌(Low Ca Diet)で飼育
通常食餌(Normal Ca Diet)としては、通常の実験動物用固形飼料(Ca: 1.11 %, P: 0.83 %、オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いた。体重差によりラットの骨代謝に個体差が生じることを避けるため、食餌は各ラットの体重を計量して与えた(体重1gあたり0.05g/dayの給餌量、Pair feeding)。なお、水は自由摂取とした。
【0042】
(4) 評価
経時的にpQCT(XCT 960A, Stratec Medizintechnik GmbH)を用いて、脛骨骨密度の測定および脛骨の形態変化を調べた。
さらに、一定飼育期間(移植後4または6週間)を経てラットを屠殺し、脛骨の摘出を行った。HAp/Colを埋め込み部位周辺の骨組織と共に摘出し、ホルマリン固定した後、脱灰し、薄切したものにヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を施し、組織学的観察を行った。
【0043】
2. 試験結果
HAp/Col複合体埋め込み後4週間における脛骨骨端部の海綿骨密度はOVX-Normal Ca 群や Sham群に比べてOVX-Low Ca 群で有意に減少していた (p < 0.001)。動物実験ではすでに卵巣摘出(OVX)動物が骨粗鬆症モデルとして認められているが、今回行ったOVXと低カルシウム食によっても実験的カルシウム欠乏状態による骨密度減少が誘導でき、骨粗鬆症モデルラットを作成できることが確認された。
【0044】
OVX-Low Ca群においては HAp/Col 複合体は速やかに吸収され、6週後にはHAp/Colはほとんど確認できなかったが、その他の実験群においては6週後のHE染色像において残存する複合体の周囲に新生骨が形成されていることが観察された (図2および図3)。このOVX-Low Ca 群にみられた速やかな複合体の吸収は、卵巣摘出によるエストロゲン欠乏、カルシウム欠乏状態下で破骨細胞の骨吸収活性が亢進したためと考えられた。
【0045】
いずれの実験群においてもHAp/Col複合体の埋め込み部位の海綿骨骨密度がコントロール側(左肢)に比べて有意に増加していた(図4および図5)。すなわちHAp/Col複合体埋め込みによる骨形成亢進が、正常状態 (Sham-Normal Ca 群)のみならず、極度のカルシウム欠乏状態 (OVX-Low Ca群)においても確認できた。
【0046】
また、OVX-Normal Ca 群においては、 4週間の低Ca食飼育後にNormal Ca食に戻してCaの供給を経口で行ったにもかかわらずコントロール側の骨密度の改善はみられなかった。しかし、HAp/Col複合体埋め込み側(右肢)では埋め込み部位周辺の海綿骨骨密度が正常状態 (Sham-Normal Ca 群)と同等レベルまで上昇した(図4)。
OVX-Low Ca群においても同様に、Hap/Col複合体の埋め込みによって正常状態 (Sham-Normal Ca 群)と同等レベルまで海綿骨骨密度が上昇した。
【0047】
一方、皮質骨骨密度は少なくとも今回の実験条件下においてはHAp/Col複合体埋め込みによるあきらかな効果はみられなかった。また、埋め込まれたHAp/Col複合体は生体内に吸収された後、あらたな海綿骨形成に再利用されると考えられた。つまり、今回実施した骨欠損治癒過程のような急性の骨形成では、まず海綿骨が形成され、その後この海綿骨が吸収され、二次的に皮質骨に代謝されていくことが推測された。
【0048】
3. 結論
以上の結果より、HAp/Col複合体は、骨粗鬆症のような骨量減少に対して、埋め込み部位の海綿骨形成を促進しうることが確認された。すなわち、HAp/Col複合体はホストの骨代謝に組み込まれて骨形成を促進する、優れた骨増生剤として、骨粗鬆症はじめとする骨量減少の局所的治療に利用可能であることが確認された。
【0049】
参考例1:架橋HAp/Col複合体の作製
(1) HAp/Col複合体の調整
Kikuchiらの方法(M. Kikuchi, et al.,Biomater., 22(13) (2001), 1705-1711)に従い、HAp/Col複合体を調整した。まず、出発物質として炭酸カルシウム(アルカリ分析用、和光純薬)、リン酸(特級、和光純薬)およびブタ皮膚由来のアテロコラーゲン(新田ゼラチン)を用意した。炭酸カルシウムは1050℃で焼成後、加水消化して水酸化カルシウム単相にした。40mMの水酸化カルシウム懸濁液2dm3とコラーゲン2gを含んだ24mMのリン酸水溶液2dm3を、チューブポンプを介して反応容器に導入した。反応容器内のpHはコントローラによってpH9に制御し、温度は湯浴によって40℃に制御した。
【0050】
(2) 架橋反応
反応液を懸濁したまま3時間静置し、激しく撹拌しながら架橋剤:グルタールアルデヒドを加えて10分間反応させた。架橋反応後、速やかに複合体をろ過し、純水で3回洗浄した。比較として、水溶性カルボジイミド、トランスグルタミナーゼ(いずれも縮合剤)を用いて同様に架橋反応を行った。
【0051】
架橋反応は、複合体中のコラーゲン1gに対して、それぞれグルタールアルデヒド:0.0191-13.5 mmol/g、水溶性カルボジイミド:0.0191-8.8 mmol/g 、トランスグルタミナーゼ: 19.1-1910 mg/g の範囲で変化させて行った。なお、グルタールアルデヒドの場合、0.191 mmol/gで理論上コラーゲン分子中の全てのε-amino基が架橋可能となる。
【0052】
(3) 特性値の測定
得られた架橋複合体の特性を以下のようにして測定した。
▲1▼複合体構造(粒子サイズ):
架橋複合体を純水に分散させ、透過型電子顕微鏡Rapid-VueR (Beckman-Colter製) を用いて観察した。
▲2▼三点曲げ強度:
架橋複合体を20MPaで24時間1軸加圧して脱水成形し、universal testing machine (Autograph AGS-1kN, Shimadzu製) により三点曲げ強度を測定した。測定は、5×3×20mmの架橋複合体片を用いて、クロスヘッドスピード500μm、スパン15mmで行った。
▲3▼HAp/Col/H2O 比:
上記の加圧成形した架橋複合体のHAp/Col/H2O 比をcarbon determinator (LECO製, RC-412)を用いて測定した。
▲4▼膨潤度:
上記の加圧成形した複合体をリン緩衝液 (pH=7.4, 37°C)中に4週間浸漬し、重量測定を行い膨潤度(下式)を求めた。
【数1】
膨潤度(%)=〔(Wx-Wo)/Wo〕×100
Wx:初期重量、Wo:浸漬後の重量
【0053】
▲5▼架橋量:
三点曲げ強度測定に用いた架橋複合体を用いて、sulfo-SDTB 法によりε-amino 基量を測定し、架橋量を求めた。
【0054】
(4) 結果
▲1▼ 透過型電子顕微鏡観察の結果、グルタールアルデヒド架橋複合体の繊維長は平均44.8μmであった。また、架橋されたハイドロキシアパタイトとコラーゲンにはマクロな配向性はみられず、架橋はランダムに生じることがわかった。なお、生体骨類似のナノスコピックな構造(コラーゲン単繊維状のHApの配向)は実質的に維持されていた。グルタールアルデヒド濃度の増加につれて、複合体の色は暗い黄色から茶色に変化した。これは過剰なグルタールアルデヒドが自己組織化繊維間を架橋して複合体繊維長を増大させるためと思われた。
【0055】
▲2▼ グルタールアルデヒド架橋複合体の場合、三点曲げ強度はグルタールアルデヒド含量にしたがって増加し、1.35mmol/g collagenで最高値に達した。この結果は、過剰なグルタールアルデヒド架橋剤(1.35mmol/g以上)は、複合体を形成する各繊維間に架橋を導入し、複合体の水分含量が高める結果、粒子間の結合を阻害して複合体強度を低下させることを示唆していた。
水溶性カルボジイミドやトランスグルタミナーゼによる架橋物では、必ずしも濃度的な変化はみられなかった。
【0056】
▲3▼ グルタールアルデヒド架橋複合体のHAp/Col比はほぼ一定だったが、水の含有量はグルタールアルデヒドの量にしたがって増加した。これは、自己組織化繊維内に生じる架橋は複合体の保水性に影響を与えないが、自己組織化繊維間に生じる架橋が複合体の保水性を増加させるためである。水溶性カルボジイミドやトランスグルタミナーゼでも、グルタールアルデヒド同様、反応剤の濃度にしたがってコラーゲンおよび水含量は増加した。
【0057】
▲4▼ 膨潤度は主としてコラーゲン量に依存する。それゆえ膨潤度は、架橋量を反映するようにコラーゲン量で正規化した。その結果、膨潤度はグルタールアルデヒド濃度にしたがって減少し、架橋により生体組織中における複合体の生分解性を制御しうることが示唆された。
一方、水溶性カルボジイミドやトランスグルタミナーゼでは膨潤度の増加ははっきりと観察できなかった。これは、水溶性カルボジイミドやトランスグルタミナーゼは縮合剤であるため、架橋は複合体を密にして、膨潤を妨げるためと思われた。
【0058】
▲5▼ sulfo-SDTB 測定の結果、グルタールアルデヒド1.35mmol/g濃度では、遊離のε-amino基は検出されなかった。この濃度は、コラーゲン中の架橋可能な官能基を架橋するために必要なグルタールアルデヒド量の約70倍にあたる。
【0059】
(5) 結論
グルタールアルデヒド架橋物の場合、グルタールアルデヒドが1.35mmol/g・col濃度を超えると、架橋物の機械的強度は減少し、人工骨材として適当な機械的強度を維持するためには10mmol/g・col以下の濃度で架橋することが好ましいと思われた。一方、生体内での分解が膨潤度に比例するとすれば、架橋量が多いほど分解は抑えられることが予測された。また、架橋によっても、生体骨類似のナノスコピックな構造(コラーゲン単繊維状のHApの配向)は実質的に維持されていた。
【0060】
参考例2:ウサギによるHAp/Col複合体架橋物の生分解性試験
(1) 試験方法
HAp/Col複合体架橋物の生体内分解性を、実施例1で得られた各種グルタールアルデヒド濃度による架橋物(2×2×2mm)をウサギ脛骨内に埋入して調べた。評価は、1,2,4週後に肉眼所見(図3)と組織学的検査(ヘマトキシリンーエオジン染色)を行うことにより評価した。
【0061】
(2) 結果
組織学的検査の結果、炎症反応等、グルタールアルデヒド架橋物による毒性反応は全く見られなかった。また、全ての架橋体において、架橋体周囲に、未架橋の複合体と同程度の骨形成および骨伝導能が認められた。
【0062】
HAp/Col複合体架橋物の吸収/分解速度は、グルタールアルデヒド濃度にしたがって遅くなり、高密度の架橋(191μmol以上)では、4週間たっても70-80%が骨内に残存していた。コラーゲン1gあたり19.1μmolのグルタールアルデヒドで架橋したものは約50%が、675μmolで架橋したものは約85%以上が残存していた。さらに、コラーゲン1gあたり1.35mmolのグルタールアルデヒドで架橋したもでは表面のみが吸収され、95%以上が残存していた。なお、それぞれの架橋試料におけるε-アミノ基の残存量は、80-95%、0-10%、0%であった。特に1.35mmolのグルタールアルデヒドによる架橋では過剰なグルタールアルデヒド同士が複合体内で架橋のネットワークを形成し、複合体の吸収性をさらに下げていると考えられた。
【0063】
(3) 結論
以上より、コラーゲン1gあたりグルタールアルデヒド19.1μmol~1.35mmolの濃度で架橋した複合体は、人工骨材に必要とされる機械的強度と、生体内分解速度を有することが確認された。上記結果と参考例1の結果から、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体において、コラーゲンの反応可能なε-アミノ基の少なくとも1%以上(好ましくは5%以上)に架橋を導入すれば、機械的強度を維持しつつ、人工骨材に必要な生体内分解速度の達成が可能と考えられた。そしてそのような架橋の導入には、少なくともコラーゲン1gあたりグルタールアルデヒド10μmol~10mmol程度を用いればよいと考えられた。
【0064】
【発明の効果】
本発明にかかる、ハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体からなる生体内埋め込み型骨増生剤を用いれば、所望の部位で効果的な骨増生を行うことが可能になる。該骨増生剤は、骨粗鬆症等の骨量減少を伴う疾患の局所的治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の実験プロトコールを示す。
【図2】図2は、OVX Normal Ca群ラットのコントロール側(孔のみ)のHE染色像を示す。埋め込み6週後では、OVXを施したラットにおいても欠損部が埋まっているが皮質骨厚は薄い。
【図3】図3は、OVX Normal Ca群ラットのHAp/Col埋め込み側脛骨のHE染色像を示す。HAp/Colはわずかに残存し、埋め込み部位周囲に新生骨ができ始めている(B: 新生骨,H: HAp/Col)。
【図4】図4は、Hap/Col埋め込み4週間後の海綿骨骨密度を示すグラフである。a、b、c、dは全ての群で、各々埋め込み側(右肢)とコントロール側(左肢)に有意差(p<0.01 by student's t-test)が認められたことを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4