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明細書 :低電圧パルス放電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3822141号 (P3822141)
公開番号 特開2003-339832 (P2003-339832A)
登録日 平成18年6月30日(2006.6.30)
発行日 平成18年9月13日(2006.9.13)
公開日 平成15年12月2日(2003.12.2)
発明の名称または考案の名称 低電圧パルス放電装置
国際特許分類 A61L   9/16        (2006.01)
B01D  53/32        (2006.01)
H01T  19/00        (2006.01)
FI A61L 9/16 Z
B01D 53/32 ZAB
H01T 19/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2002-151703 (P2002-151703)
出願日 平成14年5月27日(2002.5.27)
審査請求日 平成16年3月4日(2004.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】長澤 武
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】中澤 登
参考文献・文献 特開2000-139198(JP,A)
特開2002-018231(JP,A)
特開平11-169645(JP,A)
特開昭51-132172(JP,A)
電気用語辞典編集委員会 編,「新版 電気用語辞典」,日本,コロナ社,1986年,第19版,p.730
電気学会通信教育会 編,「放電現象」,日本,社団法人電気学会,1967年,第47版,p.42
電気学会通信教育会,放電現象,日本,社団法人電気学会,1967年,第47版,42
調査した分野 A61L9/00-9/05,9/14-9/22,
B01D53/32-53/85,
B01J19/00-19/32,
H01T19/00-19/04
特許請求の範囲 【請求項1】
容器内で大気圧中において冷陰極放電を行う放電装置において、
(a)パルス電源と、
(b)該パルス電源に2極が接続される電圧印加電極と該電圧印加電極間に配置される複数の浮遊電極とが突設されるとともに、該突設される電極の間に穴が設けられた穴開き電極絶縁体板と、
(c)前記電極部分の湿度を高湿度にする加湿器と、
(d)前記容器内に外部から強制的に空気を取り入れるエアーポンプとを備え、
(e)前記エアーポンプで前記容器内へ空気を導入し、該空気を前記加湿器で高湿度にし、前記電極間の静電容量を増ことによって、低電圧で暗流放電を行わせ、暗流放電を受けた空気は、前記穴開き電極絶縁体板の穴を通り抜け、容器の排出口より大気中に放出することを特徴とする低電圧パルス放電装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低電圧パルス放電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高電圧放電を利用した殺菌装置は一般に知られており、さらに、これに加湿装置を具備し、湿度制御をしながら放電を発生させ殺菌する方法は、特開平11-267183号公報にも開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の高電圧放電を利用した殺菌装置では、
(1)大気圧中の高電圧による放電はオゾンや光を発生するが、オゾンは人間や植物に有害であり、また、光はX線を発生する。
(2)火花放電による殺菌は高電圧のために危険である。
(3)放電領域が狭く、電子が気体に当たる確率が小さいので放電効果が小さい。
(4)消費電力が大きい。
【0004】
といった問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み、低電圧パルス駆動での放電を可能にし、安全で無害の放電を実施することができる低電圧パルス放電装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔1〕容器内で大気圧中において冷陰極放電を行う放電装置において、パルス電源と、このパルス電源に2極が接続される電圧印加電極とこの電圧印加電極間に配置される複数の浮遊電極とが突設されるとともに、この突設される電極の間に穴が設けられた穴開き電極絶縁体板と、前記電極部分の湿度を高湿度にする加湿器と、前記容器内に外部から強制的に空気を取り入れるエアーポンプとを備え、前記エアーポンプで空気を前記容器内に導入し、該空気を前記加湿器で高湿度にし、前記電極間の静電容量を増ことによって、低電圧で暗流放電を行わせ、暗流放電を受けた空気は、前記穴開き電極絶縁体板の穴を通り抜け、容器の排出口より大気中に放出することを特徴とする。
【0007】
このように構成したので、
(1)放電部の湿度を高くし、さらに多くの浮遊電極で空間を埋めるために、電極間が狭くなり、低電圧で放電を可能にする。また、放電には大きな電流を必要としない上に、本装置は暗流を用いるのでオゾンや光の発生がない。
(2)低電圧のために安全である。
(3)暗流放電であるので放電路が短絡せず、放電領域が広いため、放電効果が高い。
(4)パルス電源を用いた低電圧下での低電流のために、消費電力が極めて少ない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施例を示す低電圧パルス放電方法を用いた空気殺菌装置の模式図である。
【0010】
この図において、1は容器、2はパルス電源、3はパルス電源2に2極が接続される電圧印加電極5とこの電圧印加電極5間に配置される複数の浮遊電極4を有する穴開き電極設置板(絶縁体板)、5は電圧印加電極、6はその電極4,5部分の湿度を高湿度にする加湿器、7は容器1内に外部から強制的に空気を取り入れるエアーポンプ、8は排出口である。
【0011】
このように容器1内で大気圧中において冷陰極放電を行う放電装置において、パルス電源2と、その容器1内にパルス電源2に2極が接続される電圧印加電極5と複数の浮遊電極4を有する穴開き電極設置板3を配置し、その電極4,5部分の湿度を高湿度にする加湿器6を配置するとともに、容器1内に外部から強制的に空気を取り入れるエアーポンプ7とを備え、このエアーポンプ7で放電装置内に気体を注入する。
【0012】
また、加湿器6を用いて放電装置内の湿度を80%程度にする。複数の浮遊電極4と電圧印加電極5とを穴開き電極設置板3に設置し、電圧印加電極5の2極をパルス電源2に接続する。電極4,5間の静電容量を増すことによって、低電圧で暗流放電を行う。放電を受けた気体は穴開き電極設置板3の穴を通り抜け、排出口8より大気中に放出される。なお、放電中の圧力は大気圧で行う。
【0013】
以下、暗流状態の放電電圧を減少させるための原理について説明する。
【0014】
図2は本発明の浮遊電極間の関係を示す図である。
【0015】
今、2つの円筒(直径a)電極11間をdとし、長さをLとする。なお、真空の誘電率をε0 とすると、水は80ε0 (20度)、48ε0 (100度)であり、湿度が80%の空気ではかなり大きな誘電率である。
【0016】
電極間の静電容量Cは、
C=πεL/log〔(d-a)/a〕 …(1)
したがって、湿度が高くなると、電極間の静電容量Cが大きくなる。
【0017】
電極間の抵抗を、
R=1/ωC …(2)
とすると、周波数fおよび湿度の増加とともに抵抗Rが減少する。よって、電極間の電流Iは、
I=Vd /R …(3)
となり、高周波では電流が増加するので、暗流としての効果が減少する。したがって、電流を抑えるためには、放電電圧を下げる必要がある。
【0018】
図3はその複数の電極とその放電電圧波形を示す図であり、図3(a)及び図3(b)はその電極の構成図、図3(c)は放電電圧波形を示す図である。
【0019】
この実施例においては、例えば、図3(a)に示すように、19本を電極を同心円上に等間隔、各電極間5mmで配置する。ここでは、図3(a)の点線で示すように正三角形の配置になるように等間隔で配置する。そして、中心の電極Aと外周に配置される電極B間に電圧を印加する。印加電極間には浮遊電極Cが配置される。
【0020】
そこで、容器1内にはエアーポンプ7で強制的に外部から空気を取り入れる。電源はパルス電源2を用い、500Hz、250Vを電圧印加電極に加える。
【0021】
図3(a)及び図3(b)に示すように、電圧印加電極A,Bに電源を接続すると、その電極AとB間の浮遊電極Cに誘導電荷が蓄積される。したがって、各電極間はコンデンサーとなる。各コンデンサーの容量は電極の表面積、電極間の誘電率に比例し、電極間距離に反比例する。
【0022】
蓄積された電荷量Qは、電極間の電圧に比例し、満杯になるまで充電され、時間的な充放電を行う。
【0023】
そして、図3(c)に示すように、時間とともに充電され、放電が開始されて電圧が下がる。その後、細かい放電が行われる。この細かい振動波形が浮遊電極間の放電であり、この部分の時間帯が浮遊電極放電効果を示すものである。
【0024】
電極間の湿度を高くすることで、誘電率が上がり、電極間の抵抗が下がる。したがって、暗流状態に必要な電圧を下げることができる。また、抵抗は誘電率にのみ依存するのでなく、周波数にも強く依存する。よって、暗流の放電電圧は湿度と周波数に強く依存する。
【0025】
図4はその実験結果を示す図である。
(1)低湿度における放電による気体の解離
図4(a)は、湿度を49%にして各周波数で放電を行い、エチレンガスの分解を行った場合である。横軸は電極に加えた放電電圧であり、縦軸はエチレンガスの減衰量を示す。
【0026】
5kHzの場合は放電電圧が低い場合にエチレンの分解効果が大きい。逆に、周波数が低い場合、50kHzでは高電圧の方が効率が良くなる。
(2)高湿度における放電による気体の解離
図4(b)は湿度80%の場合の放電電圧Vd とエチレンガスの減衰量Δγの関係を示す図である。
【0027】
この図に示すように、エチレンガスの分解効果は周波数に依存するとともに、湿度に強く影響される。
【0028】
すなわち、湿度を上げることにより低電圧で放電効果を上げることができる。
【0029】
図5は、本発明による放電による菌の減衰状態を示す図である。
【0030】
実験条件は90リットルの容器に放電装置を入れて、湿度70%、温度20度、周波数500Hz、放電電圧250V、放電時間15分で行った。菌はPenicillium expansum(アオカビ)を用いた。
【0031】
図5に示すように、放電時間とともに容器内の菌の胞子が減少(死滅)していることが分かる。胞子数は初期値で規格化している。
【0032】
上記したように、本発明によれば、放電部の湿度を高くできるよう加湿装置を具備するとともに、さらに放電空間に多数の浮遊電極を配置し、電極間距離を縮めることにより、低電圧パルス駆動での放電を可能にした。低電圧での放電(暗流放電)のため、光やオゾンを発生させずに放電ができるので、安全、無害の放電装置ができ、パルス放電のため低消費電力であり、空気殺菌や気体の解離に有効な手段となる。
【0033】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0034】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0035】
(1)大気圧中でも非常に低電圧の暗流放電を行うことができ、低電力で安全な広領域の放電が可能になる。
【0036】
(2)低電圧で光やオゾンを発生させずに放電ができるので、安全、無害の放電装置ができ、低消費電力で空気殺菌や気体の解離に有効であり、多くの応用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す低電圧パルス放電方法を用いた空気殺菌装置の模式図である。
【図2】 本発明の空気殺菌装置の浮遊電極間の関係を示す図である。
【図3】 本発明の空気殺菌装置の複数の電極とその放電電圧波形を示す図である。
【図4】 本発明の空気殺菌装置の実験結果を示す図である。
【図5】 本発明の空気殺菌装置の放電による菌の減衰状態を示す図である。
【符号の説明】
1 容器
2 パルス電源
3 穴開き電極設置板(絶縁体板)
4,C 浮遊電極
5,A,B 電圧印加電極
6 加湿器
7 エアーポンプ
8 排出口
11 2つの円筒電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4