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明細書 :オリゴ糖(塩)の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3939592号 (P3939592)
公開番号 特開2003-339393 (P2003-339393A)
登録日 平成19年4月6日(2007.4.6)
発行日 平成19年7月4日(2007.7.4)
公開日 平成15年12月2日(2003.12.2)
発明の名称または考案の名称 オリゴ糖(塩)の製造方法
国際特許分類 C12P  19/26        (2006.01)
C07H   1/00        (2006.01)
C07H   7/033       (2006.01)
FI C12P 19/26
C07H 1/00
C07H 7/033
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2002-153086 (P2002-153086)
出願日 平成14年5月27日(2002.5.27)
審査請求日 平成15年7月14日(2003.7.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】掛樋 一晃
【氏名】白石 弘之
【氏名】木下 充弘
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 特開2000-060591(JP,A)
調査した分野 C12P 19/26
C07H 1/00
C07H 7/033
BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒアルロン酸またはその塩をエンド型ヒアルロニダーゼで分解してオリゴ糖またはその塩を製造するオリゴ糖(塩)の製造方法において、
エンド型ヒアルロニダーゼは通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りで仕切られた第1空間および第2空間を用意し、
上記第1空間内でヒアルロン酸またはその塩をエンド型ヒアルロニダーゼで分解し、その分解によって生成して、透析により通過膜を通って第2空間に移動したオリゴ糖(塩)を回収し、
4個以上の糖からなるオリゴヒアルロン酸またはオリゴヒアルロン酸塩を製造することを特徴とするオリゴ糖(塩)の製造方法。
【請求項2】
上記通過膜が、製造するオリゴ糖(塩)の分子量以下の分子量を持つ物質のみを通過させることを特徴とする請求項1に記載のオリゴ糖(塩)の製造方法。
【請求項3】
さらに、回収した上記オリゴ糖(塩)を有機溶媒により沈殿させて精製することを特徴とする請求項1または2に記載のオリゴ糖(塩)の製造方法。
【請求項4】
上記オリゴ糖(塩)は、4個の糖からなるオリゴヒアルロン酸もしくはオリゴヒアルロン酸塩、または、6個の糖からなるオリゴヒアルロン酸もしくはオリゴヒアルロン酸塩であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のオリゴ糖(塩)の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ムコ多糖およびそのムコ多糖の塩の少なくとも1つを分解することによって、オリゴ糖またはオリゴ糖塩を製造するオリゴ糖(塩)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オリゴ糖とは、文献(分子細胞生物学辞典 1997年(株)東京化学同人発行)によると、単糖が数個(10数個)結合して作られる物質である。また、オリゴ糖類は、医薬品、化粧品、食料品などの原料として広く利用されている、有用性の高い物質である。
【0003】
オリゴ糖のうち、有用性の高いものとして、例えば、ヒアルロン酸のオリゴ糖(「ヒアルロン酸のオリゴ糖」を適宜「オリゴヒアルロン酸」と記す)が挙げられる。なお、ムコ多糖の1つであるヒアルロン酸を式(1)に示す。
【0004】
【化1】
JP0003939592B2_000002t.gif【0005】
また、上記ヒアルロン酸を分解して得られるオリゴヒアルロン酸、例えばヒアルロン酸4糖などは、アポトーシス抑制剤として有効であること、その誘導体が抗血液凝固活性を示すことなどが分かっている。そのため、ヒアルロン酸4糖などのオリゴヒアルロン酸は、生理活性を示す物質として注目されている。
【0006】
また、上記オリゴヒアルロン酸の製造に応用可能な方法としては、例えば、特開昭63-57602号公報(公開日:1988年3月12日)、特開平2-245193号公報(公開日:1990年9月28日)、および特開平11-124401号公報(公開日:1999年5月11日)に開示の方法がある。
【0007】
特開昭63-57602号公報に開示の方法は、ヒアルロン酸含有原料をアルカリで処理して、さらに酸で処理をすることによって、低分子ヒアルロン酸を製造する方法である。また、特開平2-245193号公報に開示の方法は、発酵法によって得られたヒアルロン酸を塩素系の酸化剤で処理することにより、低重合のヒアルロン酸塩を得る方法である。また、特開平11-124401号公報に開示の方法は、ヒアルロン酸を分解酵素で分解した後に、限外ろ過膜を用いてオリゴヒアルロン酸を得る方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭63-57602号公報の方法により平均分子量が1万未満のオリゴヒアルロン酸を製造するためには、その公報に記載の通り、酸処理におけるpHを2.8よりも小さくするなどの、極端に酸性の強い条件としなければならない。また、そのような極端に酸性の強い条件によって平均分子量1万未満のオリゴヒアルロン酸を製造する上記方法では、上記オリゴヒアルロン酸の収率が低下するという問題点がある。さらに、上記のような、極端に酸性の強い条件による上記方法では、オリゴヒアルロン酸の変色が発生するという問題点もある。
【0009】
また、特開平2-245193号公報に開示の方法のように、ヒアルロン酸を次亜塩素酸などの塩素系の酸化剤で処理する方法では、ヒアルロン酸を酸化により分解する。そのため、酵素などによる加水分解では生成することがないオリゴヒアルロン酸が、酸化剤で処理する上記方法によって生成されるという問題点がある。つまり、酸化剤によって、オリゴヒアルロン酸の化学構造が変化するという問題点がある。具体的に言うと、酸化剤で処理する上記方法では、還元性末端および非還元末端に、新たな化学構造の末端を有するオリゴヒアルロン酸が生成される。このような新たな化学構造の末端を有するオリゴヒアルロン酸は、医薬品、化粧品、および食料品にオリゴヒアルロン酸を使用する場合に問題となる。
【0010】
また、特開平11-124401号公報に開示の方法では、分解酵素として、エンド型グルコシダーゼを用いる。このようなエンド型グルコシダーゼを用いた分解反応では、その分解反応と併行して糖転位反応を伴うことが知られている。
【0011】
上記糖転位反応について、具体的に説明する。例えば、エンド型グルコシダーゼであるヒアルロニダーゼでヒアルロン酸を分解すると、オリゴヒアルロン酸が生成する。また、分解が進むにつれて、ヒアルロン酸は減少し、オリゴヒアルロン酸は増加する。しかし、分解が進みオリゴヒアルロン酸の量が多くなると、これまでは分解することに働いていた酵素が、分解と逆の反応を引き起こすという問題点がある。その逆の反応とは、オリゴヒアルロン酸からヒアルロン酸を合成する反応のことである。さらに、その逆の反応により、オリゴヒアルロン酸が減少するという問題点がある。
【0012】
酸・アルカリを用いる方法、および酸化剤を用いる方法では、分解反応は、分解する方向にしか反応は進まない。しかし、上記のように酵素を用いた方法では、分解する方向の他に、その分解とは逆の方向、つまり合成する方向にも反応が進む。つまり、酵素を用いた方法では、分解反応の制御が難しく、効率よくオリゴヒアルロン酸を得ることができないという問題点がある。特に、文献(Kinoshita M et al., Electrophoresis(2001),22,p3458-3465、およびTakagaki K et al., Biochem.(1994),33,p6503-6507)によると、上記のような逆の反応は、工業的にオリゴヒアルロン酸を調製するために、高濃度のヒアルロン酸および大量の酵素を用いるときに、より顕著に観察される。
【0013】
上記のような逆の反応は、反応基質であるヒアルロン酸の濃度をできるだけ低く、例えば1%またはそれ以下とすることによって、ある程度防ぐことができる。しかし、そのように逆反応を防いでオリゴヒアルロン酸を製造する方法は、オリゴヒアルロン酸を得るときに、反応液を大量に濃縮する工程が必要となる。そのため、オリゴヒアルロン酸を工業的に製造する方法として実用的であるとは言えない(Kakehi, J.Chromatogr.(1994),630,p141)。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、オリゴ糖またはオリゴ糖塩の変色と、酸化による化学構造の変化とを発生させずに、酵素による分解とは逆の反応を抑制して、収率の高いオリゴ糖(塩)の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために、鋭意検討した。その結果、一定の分子量で分子を分別する膜を有する仕切りで仕切られた空間内で、酵素によるムコ多糖(塩)の分解反応を行うことにより、一定の分子量以下となったオリゴ糖(塩)は、上記の膜から仕切りの外に出ると考えた。そして、仕切りの外に出た一定の分子量以下のオリゴ糖(塩)を、分解と逆の反応に使用されるのを防ぎ、選択的に分別できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、ムコ多糖またはその塩を酵素で分解してオリゴ糖またはその塩を製造するオリゴ糖(塩)の製造方法において、酵素は通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りで仕切られた第1空間および第2空間を用意し、上記第1空間内でムコ多糖またはその塩を酵素で分解し、その分解によって生成して通過膜を通って第2空間に移動したオリゴ糖(塩)を回収することを特徴としている。
【0017】
上記方法によれば、上記仕切りで仕切られた第1空間内で、ムコ多糖またはその塩を酵素で分解する。上記通過膜としては、例えば、分子量で分子を分別する膜が挙げられる。さらに、その分子量で分子を分別する膜としては、例えば、透析膜、限外ろ過膜などが挙げられる。例えば、製造したいオリゴ糖(塩)の分子量が750であるとする。そのとき、分子量が750以下の分子は通過でき、ムコ多糖(塩)および酵素のような分子量が大きいものは通過できない膜を、上記通過膜として使用することができる。
【0018】
また、酵素は通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りとは、仕切りのうちの少なくとも一部に、通過膜が設けられていればよい。そのとき、通過膜以外の仕切りの部分は、例えば、酵素、ムコ多糖(塩)、およびオリゴ糖(塩)などが通過できないもので構成する。なお、もちろん、上記仕切りは、その仕切りの全部を上記通過膜で構成してもよい。
【0019】
上記仕切りで仕切られた第1空間でムコ多糖(塩)を酵素で分解すると、分解によって、通過膜を通過できるオリゴ糖(塩)が生成される。その通過膜を通過できるオリゴ糖(塩)は、仕切りにある通過膜から通過して、第2空間に出る。
【0020】
例えば、ムコ多糖(塩)と、分解酵素と、酵素の反応に適した緩衝液とを、一方を閉じた透析膜の中に投入する。次に、透析膜の残りのもう一方を閉じて、その透析膜を液体の中に入れる。その透析膜を入れる液体としては、例えば、酵素による分解に適した緩衝液などが挙げられる。そのような緩衝液に上記透析膜を入れると、透析膜内(第1空間内)のpHが一定に保たれて、透析膜内の酵素による分解が安定化する。そのような環境で透析膜内(第1空間内)のムコ多糖(塩)を分解すると、透析膜を通過可能な分子量となったオリゴ糖(塩)は、透析膜の外、つまり仕切りの外(第2空間)に出る。
【0021】
上記のように、通過膜(透析膜)を通過して仕切りの外へ出たオリゴ糖(塩)は、仕切りの内側(第1空間)にある酵素から離れる。また、酵素は、仕切りの外(第2空間)へは出られないので、仕切りの外へ出たオリゴ糖(塩)と、酵素とが結合することはない。そのため、第2空間へ出たオリゴ糖(塩)は、酵素の影響を受けない。つまり、仕切りの外へ出たオリゴ糖(塩)は、酵素によって、さらに分解されることも、分解とは逆の反応を受けることもない。このように酵素による分解とは逆の反応を避けることができるため、上記方法によれば、酵素を用いた従来のオリゴ糖(塩)製造方法と比べて、オリゴ糖(塩)の収率は上昇する。また、上記方法によれば、分解反応終了後に、酵素とオリゴ糖(塩)とを分離する必要はない。
【0022】
また、上記方法によれば、酵素による分解反応を用いるため、酵素がその活性を失わない範囲内でムコ多糖(塩)を分解することができる。つまり、極端にpHが低い環境と極端にpHが高い環境とを避けて、ムコ多糖(塩)を分解することが可能である。また、酸化剤を使用せずにムコ多糖(塩)を分解することができる。その結果、オリゴ糖またはオリゴ糖塩の変色と、酸化による化学構造の変化とを発生させずに、酵素による分解とは逆の反応を抑制して、収率の高いオリゴ糖(塩)の製造方法を提供することができる。
【0023】
本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、上記方法に加えて、上記通過膜が、製造するオリゴ糖(塩)の分子量以下の分子量を持つ物質のみを通過させることを特徴としている。
【0024】
上記方法によれば、上記通過膜は、製造するオリゴ糖(塩)の分子量以下の分子量を持つ物質のみを通過させる。つまり、製造するオリゴ糖(塩)の分子量よりも大きい分子量を持つ物質、例えばムコ多糖(塩)は、通過膜を通過することができない。
【0025】
その結果、原料であるムコ多糖(塩)と、そのムコ多糖(塩)を分解することにより生成されるオリゴ糖(塩)との分離工程を省くことができる。さらに、分解の結果得られたオリゴ糖(塩)が通過膜を通過して第2空間に出ると、第1空間内のオリゴ糖(塩)濃度が減少するため、第1空間内における酵素反応の平衡を、分解方向に促進させることができる。
【0026】
また、本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、上記方法に加えて、ムコ多糖は、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、およびキトサンからなる群より選ばれる多糖であることを特徴としている。
【0027】
上記方法によれば、ムコ多糖は上記の群より選ばれる多糖であり、これらムコ多糖には、それぞれ、分解する酵素が存在する。
【0028】
その結果、上記効果に加えて、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、およびキトサンを酵素で分解することにより得られる、多くの種類のオリゴ糖(塩)を製造することができる。
【0029】
また、本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、ムコ多糖にはヒアルロン酸を、酵素にはエンド型ヒアルロニダーゼを用いて、4個以上の糖からなるオリゴヒアルロン酸またはオリゴヒアルロン酸塩を製造することを特徴としている。
【0030】
上記方法によれば、エンド型ヒアルロニダーゼを用いることによって、オリゴ糖(塩)として、ヘキソサミンを還元末端とする最小単位が4糖のヒアルロン酸(塩)を、高い収率で得ることができる。エンド型ヒアルロニダーゼとしては、例えば、ウシまたはヒツジの睾丸(精巣)由来のヒアルロニダーゼ、放線菌由来のヒアルロニダーゼなどが挙げられる。また、例えば分画分子量が1000の膜を通過膜として用いると、ヒアルロン酸4糖(塩)を選択的に取得することができる。
【0031】
その結果、上記効果に加えて、オリゴヒアルロン酸(塩)(ヒアルロン酸のオリゴ糖(塩))、例えばヒアルロン酸4糖(塩)を、選択的にかつ効率よく製造することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明する。本実施の形態のオリゴ糖(塩)の製造方法では、ムコ多糖またはその塩を酵素で分解して、オリゴ糖またはそのオリゴ糖の塩を製造する。また、酵素は通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りで仕切られた第1空間および第2空間を用意して、上記第1空間内でムコ多糖またはその塩を酵素で分解する。また、その分解によって生成して、通過膜を通って第2空間に移動したオリゴ糖(塩)を回収する。本実施の形態のオリゴ糖(塩)の製造方法では、この回収によりオリゴ糖(塩)を製造する。
【0033】
すなわち、本実施の形態のオリゴ糖(塩)の製造方法は、まず、通過膜として、例えば、一定の分子量で分子を分別する膜を用いて、その通過膜を含む仕切りで区切られた空間内において、ムコ多糖(塩)を酵素で分解する。そして、その通過膜を通過できる分子量になったオリゴ糖(塩)は、上記空間の外に遊離するので、その空間の外に遊離したオリゴ糖(塩)を回収して、高純度のオリゴ糖(塩)を製造する方法である。特に、本実施の形態のオリゴ糖(塩)の製造方法は、下記に示すように、ムコ多糖のオリゴ糖(オリゴムコ多糖)を製造する方法として有用である。
【0034】
従来、オリゴムコ多糖を得る方法において、酵素による分解と、その分解とは逆の反応の防止と、一定の分子量のオリゴ糖(塩)の分別とを同時に行う方法は知られていなかった。しかし、本実施の形態の方法は、酵素を用いた分解を第1空間で行い、第1空間で生成したオリゴ糖(塩)を第2空間に出すことによって、酵素による分解と、その分解とは逆の反応の防止と、一定の分子量のオリゴ糖(塩)の分別とを同時に行う方法である。
【0035】
(1)ムコ多糖(塩)
まず、ムコ多糖(塩)について説明する。ムコ多糖(塩)とは、構成糖として、アミノ基を有する糖であるヘキソサミンを構造中に有する、天然に存在する高分子多糖類である。また、ムコ多糖(塩)としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸類、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、およびキトサンなどが挙げられる。
【0036】
ヒアルロン酸としては、例えば、微生物由来のもの、組織(鶏冠)由来のものが挙げられる。
【0037】
【化2】
JP0003939592B2_000003t.gif【0038】
また、ヒアルロン酸は、一般に、式(1)で表される化合物である。なお、式(1)のnは正の整数を示す。また、ヒアルロン酸には、式(1)に示すように、カルボキシル基(-COOH)がある。そのため、ヒアルロン酸は、例えばナトリウムなどの金属との塩(ヒアルロン酸塩)として存在することも多い。
【0039】
また、コンドロイチン硫酸類としては、例えば、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、およびデルマタン硫酸などが挙げられる。また、通常、天然において、上記ムコ多糖は、金属塩という形態で、特にナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属の塩という形態で存在している。
【0040】
なお、本実施の形態の製造方法に使用可能なムコ多糖は、酵素で分解することができるムコ多糖である。
【0041】
(2)オリゴ糖(塩)
オリゴ糖は、通常、単糖が数個数個結合した物質であり、10数個結合した物質も含む。本実施の形態におけるオリゴ糖(塩)は、ムコ多糖(塩)を酵素で分解して得られたオリゴ糖(塩)である。
【0042】
例として、ヒアルロン酸のオリゴ糖(オリゴヒアルロン酸)について説明する。ヒアルロン酸を示す式(1)において、nが1のときは、ヒアルロン酸を構成する糖が4個つらなったものであり、ヒアルロン酸4糖というオリゴ糖である。同じく、nが2のときは、ヒアルロン酸を構成する糖が8個つらなったものであり、ヒアルロン酸8糖というオリゴ糖である。また、それ以外にも、オリゴヒアルロン酸には、それを構成する糖が6個、10個、あるいは12個つらなった、ヒアルロン酸6糖、ヒアルロン酸10糖、ヒアルロン酸12糖などもある。
【0043】
(3)ムコ多糖またはその塩を分解する酵素およびその分解の条件
次に、ムコ多糖(塩)を分解する酵素について説明する。上記ムコ多糖を分解する酵素としては、その基質特異性の点から、例えば、ヒアルロニダーゼ類、コンドロイチナーゼ類、ヘパリナーゼ、へパリチナーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼなどが挙げられる。
【0044】
ヒアルロニダーゼ類には、まず、ウシまたはヒツジの睾丸(精巣)由来のものがある。その由来のヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、およびコンドロイチン6硫酸を分解することができる。また、ヒアルロニダーゼ類には、放線菌、細菌、およびヒル由来のものがあり、それら由来のヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する。
【0045】
また、コンドロイチナーゼ類には、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸類を分解するもの(コンドロイチナーゼABCなど)がある。また、ヘパリナーゼはヘパリンを、へパリチナーゼはヘパラン硫酸を、キチナーゼはキチンを、キトサナーゼはキトサンを分解する。
【0046】
また、選択する酵素によって分解の様式が異なるため、目的とするオリゴ糖(塩)の製造に合わせて、上記酵素を選択することが好ましい。例えば、ヘキソサミンを還元末端とする最小単位が4糖のオリゴヒアルロン酸を得たいときは、ウシやヒツジの睾丸(精巣)由来のヒアルロニダーゼ、あるいは放線菌由来のヒアルロニダーゼなど、エンド型のヒアルロニダーゼを選択することが好ましい。
【0047】
次に、酵素による分解の条件について説明する。上記酵素による分解は、例えば、ムコ多糖またはその塩を酵素で分解できる条件、例えば、ムコ多糖またはその塩と酵素とが流動性を有する条件で行う。そのムコ多糖またはその塩と酵素とが流動性を有する条件とは、例えば、液体中において、溶解、懸濁、または乳濁させたムコ多糖またはその塩と、酵素とが存在している条件などである。しかし、酵素による分解の条件を、そのような条件だけにこだわる必要はない。例えば、上記酵素による分解を、不溶性担体に固定した酵素で行ってもよい。
【0048】
また、液体中において、溶解、懸濁、または乳濁させたムコ多糖またはその塩と、酵素とが存在している条件としては、例えば、水などの液体に溶解、懸濁、または乳濁させたムコ多糖またはその塩と、酵素とが存在していることが挙げられる。もちろん、酵素による分解に適したpHの緩衝液を、上記液体として用いてもよい。なお、上記液体は、水などに限定されない。例えば、酵素によるムコ多糖(塩)分解と、製造するオリゴ糖(塩)の通過膜の通過とが可能であれば、上記液体は、水などではなく他の溶媒でもよい。
【0049】
また、酵素によってムコ多糖(塩)を分解するとき、酵素の至適条件、例えば至適pHおよび至適温度の条件下で分解をするのが一般的である。例えば、分解反応に最適な温度および最適なpHという条件が整った緩衝溶液中で、ムコ多糖(塩)を分解する。しかし、上記至適条件の他に、得られるオリゴムコ多糖(塩)の重合度を高くするために、穏やかに酵素による分解反応が進む条件で、ムコ多糖(塩)を分解してもよい。通常は、pH4~10、反応温度4℃~60℃の範囲から、反応条件を選択する。
【0050】
また、酵素による分解に時間を要して微生物などの増殖が予想される場合、上記液体中に、酵素による分解反応に影響しない程度の量の防腐剤を入れても良い。なお、そのような防腐剤としては、例えばメチルパラベンなどが挙げられる。
【0051】
(4)通過膜および仕切り
次に、酵素は通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りについて説明する。
【0052】
上記通過膜としては、例えば、一定の分子量によって分子を分別する膜などが挙げられる。また、一定の分子量によって分子を分別する膜としては、例えば、透析膜、限外ろ過膜などがある。なお、上記通過膜は、透析膜および限外ろ過膜に限定されるものではない。
【0053】
また、上記通過膜としては、製造するオリゴ糖(塩)の分子量以下の分子量を持つ物質のみを通過させる膜を使用することが好ましい。そのような膜を使用すると、製造するオリゴ糖(塩)の分子量よりも大きい分子量を持つ物質、例えばムコ多糖(塩)は、通過膜を通過しない。そのため、オリゴ糖(塩)を得るときに、原料であるムコ多糖(塩)と、そのムコ多糖(塩)を分解することにより生成されるオリゴ糖(塩)とを分離する工程を省くことができる。さらに、分解の結果得られたオリゴ糖(塩)が通過膜を通過して第2空間に出ると、第1空間内のオリゴ糖(塩)濃度が減少するため、第1空間内における酵素反応の平衡を、分解方向に促進させることができる。
【0054】
上記のように、ムコ多糖(塩)および酵素は通過できず、製造するオリゴ糖(塩)は通過できる通過膜を選定するためには、製造するオリゴ糖(塩)の分子量と、ムコ多糖(塩)の分子量と、酵素の分子量とに注意して、上記通過膜を選定する必要がある。
【0055】
なお、上記通過膜を少なくとも一部に有する仕切りの内側で分解を行うのは、通過膜を通過可能となったオリゴ糖(塩)を、酵素から引き離すためである。そのように酵素からオリゴ糖(塩)を引き離すのは、酵素とオリゴ糖(塩)とが共存すると、分解と逆の反応が生じて、オリゴ糖(塩)の収率が低くからである。さらに、従来の製造方法と同じように酵素を除去する工程があると、製造工程が複雑になるからである。
【0056】
また、上記のようにオリゴ糖は、通常、単糖が数個結合した物質であるから、官能基の種類と数とで多少変化するものの、オリゴ糖(塩)の分子量は、最大でも2000程度となる。従って、本実施の形態における通過膜として一定の分子量によって分子を分別する膜を用いる場合であって、製造したいオリゴ糖(塩)の分子量が最大でも2000であるときは、分画分子量が2000以下の膜を選択する。
【0057】
なお、製造したいオリゴ糖(塩)の分子量に合わせて、上記膜の分画分子量は決定すればよい。例えば、10数個の糖からなるオリゴ糖(塩)の場合、そのオリゴ糖(塩)の分子量は、3000から3500程度となる。そのような10数個の糖からなるオリゴ糖(塩)を製造する場合は、それに応じて、上記膜の分画分子量を、3000から3500にする。
【0058】
なお、上記のように、一定の分子量によって分子を分別する膜を通過膜として用いる場合、ムコ多糖(塩)を分解する酵素は、その通過膜を通過しない分子量を持つ酵素を用いる。
【0059】
また、通過膜の種類を変更することにより、取得するオリゴ糖の分子量を変化させることができる。例えば、分画分子量が2000の膜を通過膜として選択した場合と、分画分子量が1000の膜を通過膜として選択した場合とを比較すると、分画分子量が2000の膜を選択した方が、分子量の大きいオリゴ糖を取得することができる。
【0060】
また、本実施の形態における仕切りとは、その仕切りの少なくとも一部に、上記通過膜を有しているものである。そのように仕切りの一部に上記通過膜を有する場合、通過膜以外の部分の仕切りは、液体および液体中の分子を通過させないもので構成する。なお、上記仕切りは、その仕切りの全部を上記通過膜で構成してもよい。
【0061】
次に、通過膜および仕切りの様式について説明する。仕切りとしては、例えば、その仕切り全体を、通過膜である透析膜で構成することが挙げられる。具体的には、水系の緩衝液にムコ多糖(塩)が溶解もしくは懸濁している液を、片方が閉じられている透析膜(透析チューブ)に投入する。次に、ムコ多糖(塩)を分解する酵素を透析膜に投入して、透析膜の残りの片方を閉じる。次に、その透析膜を、上記と同じ水系の緩衝液に入れて、温度を一定(例えば分解に最適な温度)に保ちながら、ムコ多糖を分解する。つまり、透析膜で閉じられた空間(第1空間)内でムコ多糖を分解する。そして、透析膜の外(第2空間)に出たオリゴ糖(塩)を回収して、オリゴ糖(塩)を製造する。
【0062】
また、樹脂などでできた管の両側を、透析膜(通過膜)で封をすることによって仕切りを構成してもよい。この場合、まず、管の片側を透析膜(通過膜)で封をする。次に、水系の緩衝液にムコ多糖(塩)が溶解もしくは懸濁している液を、管の中に投入する。次に、ムコ多糖(塩)を分解する酵素を管に入れて、管の残りの側を透析膜(通過膜)で封をする。この場合、管と透析膜とで閉じられた空間が第1空間である。そして、その管に水系の緩衝液を流して、透析膜から第2空間に流出するオリゴ糖(塩)を回収することで、オリゴ糖(塩)を製造する。
【0063】
(5)オリゴ糖(塩)の取得(回収)方法
次に、通過膜を通過して仕切りの外側に出たオリゴ糖(塩)の取得(回収)方法について説明する。上記のように、通過膜を通過して仕切りの外側に出たオリゴ糖(塩)は、仕切りの外側の液体中に存在する。そのため、その外側の液体から、オリゴ糖(塩)を回収する。例えば、アルコール、アセトンなど有機溶媒を用いた沈殿、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂などによる吸着によって、オリゴ糖(塩)の回収が可能である。なお、沈殿させるときに用いる上記アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール(2-プロパノール)などが挙げられる。
【0064】
なお、アルコールやアセトンなどの有機溶媒を用いて沈殿を生成させて、オリゴ糖(塩)を回収する場合、有機溶媒は、製造するオリゴ糖(塩)に合わせて選択すればよい。例えば、オリゴヒアルロン酸を回収するときは、エタノールを使用することが好ましい。
【0065】
なお、従来のオリゴ糖(塩)の製造方法においては、ムコ多糖を分解後、目的とするオリゴ糖を、ゲルろ過などのクロマトグラフ法で分別するという方法がなされていた。しかし、クロマトグラフ法は、一般的に操作が煩雑であり収率も悪い。そのため、クロマトグラフ法は、目的とするオリゴ糖を効率よく得る方法とは言えない。本実施の形態の方法においては、クロマトグラフ法のような煩雑な操作は不要であり、オリゴ糖(塩)の収率も良い。
【0066】
また、従来のオリゴ糖(塩)の製造方法には、クロマトグラフ法を用いない方法として、ヒアルロン酸を酵素で分解してオリゴヒアルロン酸とした後に、分画分子量1万以下の限外ろ過膜を用いて、その膜を通過するオリゴヒアルロン酸を集める方法もある。しかし、その方法では、酵素によって分解と逆の反応(つまり合成反応)が起こるため、分解により生成するオリゴ糖とともに、そのオリゴ糖よりも分子量の大きい糖も生成する。その結果、ヒアルロン酸を酵素で分解した後に限外ろ過膜などでオリゴ糖を集める方法では、製造者の要求に応じた分子量をもつオリゴ糖を、効率よく得ることができない。
【0067】
また、上記のように、分解の後に限外ろ過を行う場合には、当然、その限外ろ過の工程を1段階加えることとなる。しかし、分解反応後の液を限外ろ過に使用する前に、さらに、限外ろ過におけるろ過速度を上げるための処理が必要となる。ろ過速度を上げるための処理とは、あらかじめ分解反応の液を遠心分離した上清をろ過に用いて、上記ろ過膜の目詰まりなどを防止する処理である。このように、遠心分離して上清を取得する工程が必要なために、ヒアルロン酸を酵素で分解した後に限外ろ過膜を用いる上記従来の方法では、製造工程が煩雑となる。
【0068】
本実施の形態の製造方法においては、酵素は通過させず製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜、例えば、目的とするオリゴ糖の分子量以下の分子量を持つ物質のみ通過できる通過膜を用いる。そのため、従来の方法のような、分解反応後に、所望のオリゴ糖(塩)とそれより分子量の大きいオリゴ糖(塩)とを分離する限外ろ過の工程は不要であり、その限外ろ過の速度を上げるための遠心分離も不要となる。
【0069】
【実施例】
(実施例1)
オリゴ糖(塩)の製造方法の例として、ムコ多糖にはヒアルロン酸を、酵素にはヒアルロニダーゼを用いて、オリゴヒアルロン酸またはオリゴヒアルロン酸塩、特にヒアルロン酸4糖(塩)を製造する例を示す。
【0070】
0.05%のメチルパラベンを含む10mMの酢酸緩衝液50ml(pH5.3)に、ムコ多糖の塩であるヒアルロン酸ナトリウム(ナカライテクス製、特級、微生物由来)5gと、酵素であるエンド型ヒアルロニダーゼ(ヒツジの睾丸由来のヒアルロニダーゼ(Biozyume社))250000U(国立衛生試験所標準ヒアルロニダーゼ換算値)とを加えて、ヒアルロン酸液を調製した。また、そのヒアルロン酸液は、30℃~40℃に温度を保ちながら、7日間撹拌した。
【0071】
次に、そのヒアルロン酸液に上記ヒアルロニダーゼ100000Uを追加して、さらに、そのヒアルロン酸液を、分画分子量1000の透析膜(Spectra/Por MWCO1000)のチューブに入れて、そのチューブの端を閉じて密封した。次に、その密封した透析膜を上記酢酸緩衝液900mlに入れて、その緩衝液全体を30℃~40℃に保ちながら、7日間透析した。
【0072】
次に、上記透析で得た透析液を濃縮した後、その透析液に、10%になるように酢酸ナトリウムを溶かした。次に、その透析液に、9倍量(V/V)のエタノールを加えて、沈殿を析出させた。次に、ろ過によりその沈殿を取得して、取得した沈殿を、2-プロパノールおよびアセトンで洗浄した。洗浄後、五酸化二リンとともにデシケーター中に沈殿を入れて、沈殿を減圧乾燥した。その乾燥後の沈殿(オリゴヒアルロン酸)の重量は、3.9gであった。なお、最初に使用したヒアルロン酸ナトリウムは5gであり、得られた沈殿(オリゴヒアルロン酸)は3.9gであるので、収率は78%であった。
【0073】
オリゴヒアルロン酸の分子量は、6糖のとき、約1000となる。ゆえに、上記で得られた沈殿には、オリゴヒアルロン酸として、4糖を主成分とした6糖以下のオリゴ糖が含まれていることが予想される。
【0074】
次に、上記で得た沈殿(オリゴヒアルロン酸)を、キャピラリー電気泳動で分析した。なお、このときのキャピラリー電気泳動の条件を、以下に示す。装置は、BeckmanP/ACE5010型を用いた。キャピラリーは、フューズドシリカキャピラリー(内径50μm、有効長40cm)を用いた。緩衝液は、100mMのSDSを含む50mMホウ酸緩衝液(pH9.3)を用いた。なお、SDSとは、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)のことである。また、印加電圧は20kV、分析温度は30℃とし、検出には200nmの紫外部吸収を用いた。このキャピラリー電気泳動の結果を、図1に示す。
【0075】
図1に示すキャピラリー電気泳動の結果、上記に予想した通り、得られた沈殿は、オリゴヒアルロン酸として、ヒアルロン酸4糖を主成分として含んでいることが分かった。また、得られた沈殿には、ヒアルロン酸6糖も含まれており、さらにヒアルロン酸8糖もごく微量含まれていることが分かった。つまり、上記方法により、78%という高い収率でオリゴヒアルロン酸が得られることが分かった。
【0076】
また、上記オリゴヒアルロン酸を、さらにエタノールにより沈殿させて精製することにより、簡便にかつ高い収率でヒアルロン酸4糖を得ることができる。
【0077】
まず、上記オリゴヒアルロン酸3gを、10%酢酸ナトリウム水溶液30mlに溶解させた。次に、そのオリゴヒアルロン酸が溶解している液にエタノール90mlを加えて、遠心分離(3000rpm、10分間)した。次に、遠心分離後の上清を回収して、その回収した上清に270mlのエタノールを加え、沈殿を得た。次に、その沈殿をろ過により取得して、取得した沈殿を、2-プロパノールおよびアセトンで洗浄した。洗浄後、五酸化二リンとともにデシケーター中に沈殿を入れて、沈殿を減圧乾燥した。その乾燥後の沈殿(ヒアルロン酸4糖)は、1.25gであった。
【0078】
なお、オリゴヒアルロン酸3gから1.25gの沈殿(ヒアルロン酸4糖)を得たので、オリゴヒアルロン酸から計算した収率は、約40%(41.67%)である。
【0079】
さらに、上記の沈殿(ヒアルロン酸4糖)をキャピラリー電気泳動で分析した。結果を図2に示す。なお、キャピラリー電気泳動の分析条件は、上記と同じ条件とした。図2に示すデータにより、上記操作で精製した沈殿は、97%以上の純度のヒアルロン酸4糖であることが分かった。
【0080】
(実施例2)
実施例1よりも分画分子量が大きい透析膜を用いた、オリゴ糖(塩)の製造方法の例を示す。酢酸緩衝液5ml(pH5.3)に、ヒアルロン酸ナトリウム5gと、ヒアルロニダーゼ250000Uとを加えて、ヒアルロン酸液を調製した。次に、そのヒアルロン酸液を、分画分子量2000の透析膜(Spectra/Por MWCO2000)のチューブに入れ、両端を密封した。次に、その密封した透析膜のチューブを酢酸緩衝液300mlに入れて、その緩衝液全体を30℃~40℃に保ちながら、2日間透析した。なお、酢酸緩衝液、ヒアルロン酸ナトリウム、およびヒアルロニダーゼは、実施例1と同じものを使用した。
【0081】
次に、上記透析で得た透析液を濃縮した後、その透析液に、10%になるように酢酸ナトリウムを溶かした。次に、その透析液に、9倍量(V/V)のエタノールを加えて、沈殿を析出させた。次に、ろ過によりその沈殿を取得して、取得した沈殿を、2-プロパノールおよびアセトンで洗浄した。洗浄後、五酸化二リンとともにデシケーター中に沈殿を入れて、沈殿を減圧乾燥した。
【0082】
オリゴヒアルロン酸の分子量は、12糖のとき、約2000となる。ゆえに、分画分子量2000の透析膜を用いて取得した上記沈殿は、12糖以下のオリゴ糖であることが予想される。
【0083】
次に、上記沈殿を、キャピラリー電気泳動で分析した。その結果を図3に示す。図3に示すように、上記沈殿に含まれている14糖以上の糖は、ごくわずかの量であることが分かった。また、上記沈殿は、上記の予想通り、12糖以下の糖を主成分とするオリゴ糖であることが分かった。
【0084】
また、実施例1と実施例2とを比較すれば分かるように、通過膜、つまり実施例における透析膜の種類を変化させることにより、異なる分子量のオリゴ糖を、選択的に得ることが可能となる。
【0085】
(実施例3)
ムコ多糖としてコンドロイチン4硫酸を用いた例を示す。酢酸緩衝液(実施例1と同じもの)15mlに、コンドロイチン4硫酸(和光純薬製(コンドロイチン硫酸A))1.5gと、ヒアルロニダーゼ(実施例1と同じもの)5000Uとを溶解させて、溶液を調製した。また、その溶液は、30℃~40℃に温度を保ち、3日間反応させた。
【0086】
次に、その溶液に、上記ヒアルロニダーゼ5000Uを追加し、さらに、その溶液液を、分画分子量1000の透析膜(Spectra/Por MWCO1000)のチューブに入れて、そのチューブの端を閉じて密封した。次に、その密封した透析膜を上記酢酸緩衝液(150ml)に入れて、その緩衝液全体を室温に保ち、7日間透析した。
【0087】
次に、上記透析で得た透析液を濃縮した後、その透析液に、10%になるように酢酸ナトリウムを溶かした。次に、その透析液に、9倍量(V/V)のエタノールを加えて、沈殿を析出させた。次に、ろ過によりその沈殿を取得して、取得した沈殿を、2-プロパノールおよびアセトンで洗浄した。洗浄後、五酸化二リンとともにデシケーター中に沈殿を入れて、沈殿(オリゴコンドロイチン硫酸)を減圧乾燥した。
【0088】
コンドロイチン硫酸は、N-アセチルD-グルコサミンと、D-グルクロン酸との繰り返し糖単位からなっている。また、コンドロイチン硫酸においては、N-アセチルD-グルコサミンの水酸基の平均約1個が、硫酸エステルとなっている。従って、コンドロイチン硫酸では、おおよそ4糖で分子量が1000となるため、上記で得た沈殿は、4糖を主成分とするオリゴ糖であると予想される。
【0089】
次に、上記沈殿を、キャピラリー電気泳動で分析した。その結果を図4に示す。図4に示すように、キャピラリー電気泳動で分析すると、複数のピークが得られ、組成が明確に示されなかった。
【0090】
上記のように組成が明確とならなかった理由としては、以下のことが考えられる。コンドロイチン硫酸のうち、繰り返し糖単位であるN-アセチルD-グルコサミンの4位の水酸基が硫酸エステルとなっているものを、コンドロイチン4硫酸と呼んでいる。しかし、そのコンドロイチン4硫酸と称されるものには、同一分子内には硫酸基が全くない糖単位のもの、および、6位に硫酸基がある糖単位のものも含まれている。つまり、コンドロイチン4硫酸と称されるものは、不均一な構造である。そのため、キャピラリー電気泳動で分析すると、複数のピークが得られ、組成が明確に示されなかったと考えられる。
【0091】
そこで、上記沈殿を、質量分析(MALDI-TOFMS:Matrix assisted laser-desorption ionization time-of-flight mass spectrometry)で分析した。その結果を図5に示す。図5に示すように、5本のピークが顕著である。そのうち、m/z=958、m/z=980、およびm/z=1002付近のピークは、いずれもコンドロイチン硫酸4糖由来のピークである。また、m/z=856、m/z=879付近のピークは、コンドロイチン4硫酸の硫酸基のないもののピークである。従って、上記沈殿(オリゴコンドロイチン硫酸)の主成分は、上記の予想通り、4糖であることが分かった。
【0092】
(比較例1)
反応時の基質とするヒアルロン酸濃度、酵素の濃度、反応温度、および反応時間といった各酵素反応の条件は実施例1と同じであるけれども、透析膜を使用しない条件で分解を行い、沈殿(オリゴヒアルロン酸)を得るという操作を行った。さらにその沈殿をキャピラリー電気泳動で調べた。実施例1の結果と、比較例1の結果とを、図6および表1に示す。
【0093】
なお、比較例1においては、透析膜を使用しないこと以外は実施例1と同じ条件で分解して、その分解後、透析膜を使用せずに、多量のエタノールを用いて沈殿(オリゴヒアルロン酸)を得た。この操作およびこの操作による結果を、比較例1-1と表記する。なお、図6においては、比較例1-1の結果を図6(b)に示す。
【0094】
また、比較例1においては、透析膜を使用しないこと以外は実施例1と同じ条件で分解して、その分解後に透析膜により透析して沈殿を得るという操作も行った。この操作およびこの操作による結果を、比較例1-2と表記する。なお、図6においては、比較例1-2の結果を図6(c)に示す。
【0095】
【表1】
JP0003939592B2_000004t.gif【0096】
実施例1では、表1に示すように、沈殿(オリゴヒアルロン酸)の収量は3.9gであった。また、表1と図6(a)とに示すように、オリゴヒアルロン酸は、4糖が主成分で、6糖も含み、8糖はごくわずかしか含んでいないものであった。
【0097】
それに対し、比較例1-1の結果は、表1と図6(b)とに示すように、8糖の割合が多くなっている。また、8糖よりも大きい10糖、12糖なども含まれている。さらに、図6(b)の結果によれば、12糖以上の大きな分子も認められる。また、比較例1-1の結果は、収量が2.5gであり、実施例1の収量よりも小さい。ゆえに、比較例1-1のように、透析膜を用いずにオリゴヒアルロン酸を製造すると、収量は小さく、分子量のバラツキは大きいオリゴヒアルロン酸が製造されることが分かる。
【0098】
また、比較例1-2では、表1に示すように、分解後に透析膜を使用したため、4糖および6糖が大部分のオリゴヒアルロン酸を製造することができる。しかし、表1に示すように、比較例1-2では、収量が1.3gであり、実施例1と比べてかなり低い収量となる。
【0099】
ゆえに、本実施例のように、透析膜などの通過膜を有する仕切りの内側(第1空間)で、ヒアルロン酸などのムコ多糖(塩)を分解して、仕切りの外側(第2空間)に出たオリゴ糖(塩)を回収する方法は、収率が高く、分子量のバラツキも少ないオリゴ糖(塩)を製造する方法と言える。
【0100】
なお、本発明は、上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0101】
【発明の効果】
本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、以上のように、酵素は通過させず、製造するオリゴ糖(塩)を通過させる通過膜を有する仕切りで仕切られた第1空間および第2空間を用意し、上記第1空間内でムコ多糖またはその塩を酵素で分解し、その分解によって生成して通過膜を通って第2空間に移動したオリゴ糖(塩)を回収するという方法である。
【0102】
それゆえ、オリゴ糖またはオリゴ糖塩の変色と、酸化による化学構造の変化とを発生させずに、分解とは逆の反応を抑制して、収率の高いオリゴ糖(塩)の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0103】
また、本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、上記方法に加えて、上記通過膜が、製造するオリゴ糖(塩)の分子量以下の分子量を持つ物質のみを通過させるという方法である。
【0104】
それゆえ、原料であるムコ多糖(塩)と、そのムコ多糖(塩)を分解することにより生成されるオリゴ糖(塩)との分離工程を省くことができるという効果を奏する。さらに、第1空間内における酵素反応の平衡を、分解方向に促進させるという効果を奏する。
【0105】
また、本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、上記方法に加えて、ムコ多糖は、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、およびキトサンからなる群より選ばれる多糖であるという方法である。
【0106】
それゆえ、上記効果に加えて、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、およびキトサンを酵素で分解することにより得られる、多くの種類のオリゴ糖(塩)を製造することができるという効果を奏する。
【0107】
また、本発明のオリゴ糖(塩)の製造方法は、上記方法に加えて、ムコ多糖にはヒアルロン酸を、酵素にはエンド型ヒアルロニダーゼを用いて、4個以上の糖からなるオリゴヒアルロン酸またはオリゴヒアルロン酸塩を製造するという方法である。
【0108】
それゆえ、上記効果に加えて、オリゴヒアルロン酸(塩)(ヒアルロン酸のオリゴ糖(塩))、例えばヒアルロン酸4糖(塩)を、選択的にかつ効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において、ムコ多糖としてヒアルロン酸を、通過膜として分画分子量1000の透析膜を使用してオリゴ糖を得て、その得られたオリゴ糖(オリゴヒアルロン酸)を、キャピラリー電気泳動で分析した結果を示すチャートである。
【図2】本発明の実施例において、図1の結果を示したオリゴ糖(オリゴヒアルロン酸)を精製して、その精製したオリゴ糖(オリゴヒアルロン酸)をキャピラリー電気泳動で分析した結果を示すチャートである。
【図3】本発明の実施例において、ムコ多糖としてヒアルロン酸を、通過膜として分画分子量2000の透析膜を使用してオリゴ糖を得て、その得られたオリゴ糖(オリゴヒアルロン酸)を、キャピラリー電気泳動で分析した結果を示すチャートである。
【図4】本発明の実施例において、ムコ多糖としてコンドロイチン4硫酸を、通過膜として分画分子量1000の透析膜を使用してオリゴ糖を得て、その得られたオリゴ糖(オリゴコンドロイチン硫酸)を、キャピラリー電気泳動で分析した結果を示すチャートである。
【図5】本発明の実施例において、ムコ多糖としてコンドロイチン4硫酸を、通過膜として分画分子量1000の透析膜を使用してオリゴ糖を得て、その得られたオリゴ糖(オリゴコンドロイチン硫酸)を、MALDI-TOFMSで分析した結果を示すスペクトル図である。
【図6】図6(a)は図1と同じ結果を、図6(b)は、比較例1において、ヒアルロン酸の分解後、透析膜を使用せずに、多量のエタノールを用いてオリゴヒアルロン酸を得て、そのオリゴヒアルロン酸をキャピラリー電気泳動で分析した結果を、図6(c)は、比較例1において、ヒアルロン酸の分解後に、透析膜により透析してオリゴヒアルロン酸を得て、そのオリゴヒアルロン酸をキャピラリー電気泳動で分析した結果を示すチャートである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5