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明細書 :前方視超音波探触子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3553923号 (P3553923)
公開番号 特開2003-348694 (P2003-348694A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月11日(2004.8.11)
公開日 平成15年12月5日(2003.12.5)
発明の名称または考案の名称 前方視超音波探触子及びその製造方法
国際特許分類 H04R 17/00      
A61B  8/12      
H04R 31/00      
FI H04R 17/00 332A
H04R 17/00 330G
H04R 17/00 330J
A61B 8/12
H04R 31/00 330
請求項の数または発明の数 11
全頁数 13
出願番号 特願2002-154625 (P2002-154625)
出願日 平成14年5月28日(2002.5.28)
審査請求日 平成14年5月28日(2002.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】江刺 正喜
【氏名】芳賀 洋一
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】松澤 福三郎
参考文献・文献 特開平05-091594(JP,A)
特開平05-042146(JP,A)
特開平03-280939(JP,A)
特開平02-309799(JP,A)
調査した分野 H04R 17/00 332
H04R 17/00 330
A61B 8/12
H04R 31/00 330
特許請求の範囲 【請求項1】
中空円筒状のカテーテルの先端内に搭載され、背面に音響吸収材を備えたリングアレイ状の超音波振動子に対して駆動回路から駆動電圧を印加することにより、超音波振動子の前方に超音波を放射しその後にこの超音波の反射波を受信して、カテーテル前方の超音波画像を取得するための前方視超音波探触子であって、
上記超音波振動子の背面に備えられた音響吸収材が、導電性材料から構成されていると共に、超音波振動子の等角度間隔に分割された後方電極の各電極部毎に対応して分割されており、
超音波振動子の後方電極の各電極部が、分割された個々の音響吸収材部分を介して、上記駆動回路に対して電気的に接続されていることを特徴とする、前方視超音波探触子。
【請求項2】
互いに隣接する音響吸収材部分が、溝を介して対向することにより電気的に絶縁されていることを特徴とする、請求項1に記載の前方視超音波探触子。
【請求項3】
前記溝部内に、絶縁材料が配設されていることを特徴とする、請求項2に記載の前方視超音波探触子。
【請求項4】
前記音響吸収材を構成する材料に対して、導電性粉末が混入されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の前方視超音波探触子。
【請求項5】
前記超音波振動子の前面に音響整合層が備えられていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の前方視超音波探触子。
【請求項6】
前記音響吸収材の後面に対して、駆動回路を構成する集積回路を搭載した部品が直接に装着されていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の前方視超音波探触子。
【請求項7】
前記集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体であることを特徴とする、請求項6に記載の前方視超音波探触子。
【請求項8】
中空円筒状のカテーテルの先端内に搭載され、背面に音響吸収材を備えたリングアレイ状の超音波振動子に対して駆動回路から駆動電圧を印加することにより超音波振動子の前方に超音波を放射して、カテーテル前方の超音波画像を取得するための前方視超音波探触子の製造方法であって、
前後面に電極を備え且つ分極済みの超音波振動子に対して、導電性音響吸収材を備える第一の段階と、
次に、超音波振動子及び導電性音響吸収材に対して、縦横二方向に溝を形成して絶縁材料を充填することにより、1-3コンポジット構造を作製する第二の段階と、
続いて、超音波振動子及び導電性音響吸収材に対して、中心に対して等角度間隔で複数に分割し、その間に絶縁材料を充填する第三の段階と、
その後、超音波振動子及び導電性音響吸収材を、その中心に対して内円及び外円を切断して、全体をリング状に形成する第四の段階と、
リング状の超音波振動子及び導電性音響吸収材の中空部内に、絶縁被覆した接地用メタルチューブを挿入・固定し、前面の電極と接続する第五の段階と、
を含んでいることを特徴とする、前方視超音波探触子の製造方法。
【請求項9】
さらに、超音波振動子の前面に対して、音響整合層を貼り付ける第六の段階を備えていることを特徴とする、請求項8に記載の前方視超音波探触子の製造方法。
【請求項10】
さらに、導電性音響吸収材の後面に対して、直接に駆動回路を構成する集積回路を装着する第七の段階を備えていることを特徴とする、請求項8または9に記載の前方視超音波探触子の製造方法。
【請求項11】
前記集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体であることを特徴とする、請求項10に記載の前方視超音波探触子の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、血管内および尿道内、腎臓内など生体内の治療や診断のために使用されるカテーテル前方の超音波画像を取得するための前方視超音波探触子及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、血管内治療や診断に使用するカテーテルは、X線血管造影図の情報に基づいて血管内に挿入し、操作することにより、治療や診断を行なうようにしている。
これに対して、カテーテルの先端に前方視超音波探触子を設けて、カテーテル前方の超音波画像をリアルタイムで取得しながら、カテーテルやガイドワイヤーを用いた治療や診断を行なうようにした、前方視超音波探触子の開発が種々行なわれている。
【0003】
これらの前方視超音波探触子は、基本的には小面積の超音波振動子の両面に対してそれぞれ電極を設けて、これらの電極に対して配線を接続すると共に、超音波振動子の背面に対して音響吸収材を取り付けることにより構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような前方視超音波探触子は、血管内などに挿入されるカテーテルの先端に取り付けられることから、小さく且つ細く構成されなければならない。このため、超音波振動子の面積は非常に小さくなってしまうと共に、超音波として、例えば10~40MHz程度の非常に高い周波数を使用していることから、超音波振動子の厚さも非常に薄くなるため、超音波振動子の取扱いが難しくなってしまう。また、超音波振動子の両面の電極が短絡(ショート)しないように、配線を引き回すのが困難である。
ここで、前方視超音波探触子を構成するためには、上記超音波振動子の両面に設けられた電極から配線を後方まで引き出す必要がある。その際、超音波振動子の背面には音響吸収材(バッキング材)が取り付けられることから、狭いスペース内での配線の引回しが困難になってしまう。
【0005】
また、配線の引回しは、フレキシブルケーブルにより側方から行うと組み立てが複雑になり、十分に曲げられないと配線の外径が超音波振動子の直径よりも大きくなってしまうことがあった。さらに、前方視超音波探触子の製造の際に、音響吸収材は、最後に超音波振動子に対して貼り合わせなければならず、小面積で且つ薄い超音波振動子の取扱いの際に、超音波振動子が変形したり割れてしまうことがあり、歩留まりが低下してしまう。
【0006】
また、このような構成の前方視超音波探触子は、従来1つずつ手作業で作製しなければならなかった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、超音波振動子への配線が容易に行なわれ得ると共に、超音波振動子の取扱いを容易にし、音響吸収材つきの1-3コンポジットリングアレイ構造を一括で作製できるような、前方視超音波探触子及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第一の構成によれば、中空円筒状のカテーテルの先端内に搭載され、背面に音響吸収材を備えたリングアレイ状の超音波振動子に対して駆動回路から駆動電圧を印加することにより、超音波振動子の前方に超音波を放射しその後にこの超音波の反射波を受信して、カテーテル前方の超音波画像を取得するための前方視超音波探触子であって、上記超音波振動子の背面に備えられた音響吸収材が、導電性材料から構成されていると共に、超音波振動子の等角度間隔に分割された後方電極の各電極部毎に対応して分割されており、超音波振動子の後方電極の各電極部が、分割された個々の音響吸収材部分を介して駆動回路に対して電気的に接続されていることを特徴としている。
【0009】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、互いに隣接する音響吸収材部分が、溝を介して対向することにより電気的に絶縁されている。
【0010】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、上記溝部内に絶縁材料が配設されている。
【0011】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、上記音響吸収材を構成する材料に対して、導電性粉末が混入されている。
【0012】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、上記超音波振動子の前面に音響整合層が備えられている。
【0013】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、上記音響吸収材の後面に対して、駆動回路を構成する集積回路を搭載した部品が直接に装着されている。
【0014】
本発明による前方視超音波探触子は、好ましくは、上記集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体である。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の第二の構成によれば、中空円筒状のカテーテルの先端内に搭載され、背面に音響吸収材を備えたリングアレイ状の超音波振動子に対して駆動回路から駆動電圧を印加することにより、超音波振動子の前方に放射し、また反射波を受信して、カテーテル前方の超音波画像を取得するための前方視超音波探触子の製造方法であって、前後面に電極を備え且つ分極済みの超音波振動子に対して、導電性音響吸収材を備える第一の段階と、次に、超音波振動子及び導電性音響吸収材に対して、縦横二方向に溝を形成し、絶縁材料を充填することにより、1-3コンポジット構造を作製する第二の段階と、続いて、超音波振動子及び導電性音響吸収材に対して、中心に対して等角度間隔で複数に分割し、その間に絶縁材料を充填する第三の段階と、その後、超音波振動子及び導電性音響吸収材を、その中心に対して内円及び外円を切断して、全体をリング状に形成する第四の段階と、リング状の超音波振動子及び導電性音響吸収材の中空部内に、絶縁被覆した接地用メタルチューブを挿入・固定し、前面の電極と接続する第五の段階と、を含んでいることを特徴としている。
【0016】
本発明による前方視超音波探触子の製造方法は、好ましくは、さらに、超音波振動子の前面に対して、音響整合層を貼り付ける第六の段階を備えている。
【0017】
本発明による前方視超音波探触子の製造方法は、好ましくは、さらに、導電性音響吸収材の後面に対して、直接に駆動回路を構成する集積回路を装着する第七の段階を備えている。
【0018】
本発明による前方視超音波探触子の製造方法は、好ましくは、上記集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体である。
【0019】
上記第一の構成によれば、超音波振動子の背面に備えられる音響吸収材が、導電性材料により構成され、且つ超音波振動子の後方電極の各電極部が、それぞれ対応する分割された音響吸収材部分を介して駆動回路に対して電気的に接続されるので、超音波振動子の後方電極の各電極部から駆動回路まで配線を引き回す必要がなくなる。従って、超音波振動子の後方電極の各電極部の駆動回路に対する電気的接続が容易に行なわれることになる。
【0020】
互いに隣接する音響吸収材部分が、溝を介して対向することにより電気的に絶縁されている場合には、各音響吸収材部分が、互いに独立的に一つの配線として機能するので、分割された数の配線として使用することができる。
【0021】
上記溝部内に、絶縁材料が配設されている場合には、各音響吸収材部分が互いに確実に電気的に絶縁されることになる。
【0022】
上記音響吸収材を構成する材料に対して、導電性粉末が混入されていることにより、導電性が実現される。
【0023】
上記超音波振動子の前面に音響整合層が備えられている場合には、この音響整合層により、超音波振動子と生体内との音響インピーダンスの差が補間されて整合され、体内への超音波の送受の効率を向上することができる。
【0024】
上記音響吸収材の後面に対して、集積回路を搭載した部品が直接に装着されている場合には、その接続端子がそれぞれ各音響吸収材部分に当接して電気的に接続されることにより、配線の引回しが完全に排除される。また、上記集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体とすれば、複雑な配線であっても大量生産が可能である。
【0025】
また、上記第二の構成によれば、第一の段階で、最初に超音波振動子に対して音響吸収材を備えることになるので、小面積で且つ薄い超音波振動子が音響吸収材によって補強されることになり、超音波振動子の取扱いが容易になり、途中の工程で変形したり、割れたりするようなことがない。従って、歩留まりが向上し、コストが低減され得る。
さらに、第二の段階から第四の段階までは、超音波振動子及び導電性音響吸収材の中心を基準として、縦横の溝の形成,等角度間隔の分割そしてリング状の形成が行なわれるので、例えばダイシングソーやマイクロミリング等の超高速超精密立型加工機を使用して一括加工することができ、前方視超音波探触子の作製が容易に行なわれ得ることになる。
【0026】
そして、このように構成された前方視超音波探触子においては、前述したように超音波振動子の背面に備えられる音響吸収材が、導電性材料により構成され、且つ超音波振動子の後方電極の各電極部が、それぞれ対応する分割された音響吸収材部分を介して駆動回路に対して電気的に接続されるので、超音波振動子の後方電極の各電極部から駆動回路まで配線を引き回す必要がなくなる。従って、超音波振動子の後方電極の各電極部の駆動回路に対する電気的接続が容易に行なわれることになる。また、導電性音響吸収材を有する1-3コンポジット構造のリングアレイ超音波振動子の場合には、一括して作製することができる。
【0027】
さらに、超音波振動子の前面に対して、音響整合層を貼り付ける第六の段階を備えている場合には、完成した前方視超音波探触子において、この音響整合層により、超音波振動子と生体内の血液との音響インピーダンスの差が補間されて整合し、体内への超音波の送受の効率を向上することができる。
【0028】
さらに、導電性音響吸収材の後面に対して、直接に駆動回路を構成する集積回路などを装着する場合には、完成した前方視超音波探触子において、集積回路の回路部品15がそれぞれ音響吸収材の後面に直接に装着されることによってその接続端子がそれぞれ各音響吸収材部分に当接して、電気的に接続され、配線の引回しが完全に排除されると共に、特に、集積回路の搭載部品が、表面に電極パターンを有するポリマー構造体である場合には、複雑な配線であっても大量生産が可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明による前方視超音波探触子の一実施形態を示している。図1において、前方視超音波探触子10は、中空円筒状のカテーテル11の先端内部に搭載されている。この前方視超音波探触子10は、図1に示すように、前方から順次に、音響整合層12,超音波振動子13,音響吸収材14,回路部品15と、これらの超音波振動子13,音響吸収材14及び回路部品15を貫通する接地(以下、GNDと呼ぶ)用メタルチューブ16とから構成されている。ここで、カテーテル11自体は公知の構成であり、例えばポリウレタン,シリコーン等の生体適合性を有する材料から構成されており、その直径は0.1~3.0mm程度に選定されている。
【0030】
上記音響整合層12は、扁平な環状に形成されていて、例えばポリイミド等のポリマーから構成されている。この音響整合層12の厚さは、例えば約50μm程度に選定されている。また、その大きさは、後述する超音波振動子13の形状に対応するようになっている。この音響整合層12により、超音波振動子13と生体内の血液との音響インピーダンスの差が補間され、体内への超音波の送受の効率を向上させるようになっている。
【0031】
図2に示される図1のA-A断面に示すように、上記超音波振動子13はリングアレイ状の形状を有しており、例えばPZT振動子から構成されており、例えばその外径は3mm,内径は1.6mm,厚さは150μmに選定されている。また、上記超音波振動子13は、周方向に沿って等角度間隔に複数個の部分13b(図示の場合、8個)に溝13aにより分割されており、これらの溝13a内には、例えばエポキシ樹脂等の絶縁材料17が充填される。なお、上記超音波振動子13の両面(前面及び後面)には、それぞれ電極が形成されており、溝13aによって複数個に分割されている。
【0032】
さらに、上記超音波振動子13は、所謂1-3コンポジット構造を有するように加工されている。
ここで、1-3コンポジット構造とは、圧電セラミックスの一次元的な微小な柱列を三次元的な高分子マトリックスの中に埋め込んだ構造であり、このような構造によって、圧電セラミックスの有する高い電気機械結合係数を維持しながら音響インピーダンスを低減させることができる。これにより、超音波振動子13の音響インピーダンスと生体内の音響インピーダンスとの差を小さくすることができるので、超音波画像の画質を向上させることが可能になる。
【0033】
上記音響吸収材14は、超音波振動子13の後面に備えられており、例えば導電性接着剤から構成されていて、超音波振動子13に対応して中空円筒状に形成され、例えば約2.0mm程度の厚さを有している。
さらに、上記音響吸収材14は、図3に示すように、超音波振動子13と一体化された状態で、超音波振動子13の分割と同時に、同様に周方向に関して等角度間隔に複数個(図示の場合、8個)の溝14aにより分割されており、これらの溝14a内には、超音波振動子13の溝部13a内への絶縁材料17の充填と同時に、例えばエポキシ樹脂等の絶縁材料17が充填される。
【0034】
これにより、上記音響吸収材14は、全体として超音波振動子13を機械的に支持すると共に、後方への音を吸収して余分な音響振動を抑制するようになっている。
また、上記音響吸収材14の分割された各音響吸収材部分14bは、それぞれ超音波振動子13の分割された対応する超音波振動子部分13bの後面電極に当接することにより、その導電性に基づいて、当該超音波振動子部分13bへの配線を兼ねることになる。
【0035】
回路部品15は、集積回路の搭載部品が表面に電極パターンを有するポリマー構造体であればよい。回路部品15は、例えばポリマー射出成形体の表面に電気メッキ等の方法により立体的に電気配線を備えた射出成形回路部品のMID(Molded Interconnection Device)である。この回路部品15上に、超音波振動子13の駆動、例えば送受信におけるチャンネル切換え,電気的インピーダンス整合及び受信信号の増幅等を行なう駆動回路として構成された集積回路15aがボンディング等により実装されていると共に、集積回路15aの各端子に電気的に接続された接続端子部が、立体的に配置されるようになっている。なお、集積回路15aは、保護のためにエポキシ樹脂等により封止される。
この場合、回路部品15の各接続端子部(図示せず)は、その前面に配置されており、回路部品15の前面が前述した音響吸収材14の後面に当接されたとき、各接続端子がそれぞれ音響吸収材14の各音響吸収材部分14bと電気的に接続され、さらに配線として役立つこれらの音響吸収材部分14bを介して、超音波振動子13の後面電極の各部分に対してそれぞれ、電気的に接続されるようになっている。なお、この回路部品15は、前述した超音波振動子13,音響吸収材14と同様に、中空円筒状に形成されている。
【0036】
上記接地のためのGND用メタルチューブ16は、例えばステンレス鋼,インジウム等の導電性金属から構成されており、上記超音波振動子13,音響吸収材14及び回路部品15の中空部内に挿入されることにより、これらを前後方向に貫通するようになっている。上記GND用メタルチューブ16は、例えば外径1.6mm,内径1.4mm,長さ5mmに選定されており、内側にワーキングチャネル16aを形成するようになっている。このワーキングチャネル16aは、カテーテル11内に後方から先端に対して、マイクロツールの出し入れ,薬剤の投与等の血管内病変部の診察,治療を行なうことができるようにするものである。従って、ワーキングチャネル16aをできるだけ大きく確保するために、GND用メタルチューブ16は、できるだけ薄く形成されるようになっている。
【0037】
このようにして、カテーテル11の先端内に装着された前方視超音波探触子10は、回路部品15への信号線やGND用メタルチューブ16がカテーテル11内の配線と接続された後、例えばパリレン樹脂膜等の保護膜にて覆われることにより、生体適合性を付与される。
【0038】
次に、このような前方視超音波探触子10の製造方法について説明する。
前方視超音波探触子10は、本発明による製造方法の一実施形態に基づいて、具体的には図4乃至図14に示すようにして、製造される。
先ず、第一の段階として、図4において、両面に蒸着,メッキ,スパッタリング等により、例えば700nmの厚さの電極を形成すると共に、例えば、分極済みの厚さ150μm,10mm角のPZT板21と、例えば2×2×20mmの四本のガラス角柱から成るほぼ方形のガラス型枠22とを、熱剥離シート23上の所定位置に貼り付ける。
次に、図5に示すように、上記ガラス型枠22内に、例えばMETADUCT社製のCLN-658等の導電性接着剤24を充填し、熱剥離シート25によりガラス型枠22の開放した上部を覆った後、例えばホットプレートにより65℃乃至70℃程度の温度で30分おきにひっくり返しながら、例えば3時間加熱して導電性接着剤24を硬化させ、これにより導電性バッキング材24aが形成される。その後、図6に示すように、下方の熱剥離シート23とガラス型枠22を取り外す。
以上で、PZT板21に対して、導電性バッキング材24aが取り付けられることにより導電性音響吸収材が構成されることになる。
【0039】
次に、第二の段階として、図7に示すように、所謂ダイス・アンド・フィル(Dice and Fill)法により、縦方向及び横方向に関して、それぞれPZT板21側からダイシングソーにて溝26を形成し、その溝26内にエポキシ樹脂を充填した後、例えば低真空チャンバ内で脱泡し、さらに例えば80℃の恒温槽内において5時間加熱することにより硬化を行なう。これにより、1-3コンポジット構造が作製される。
この前方視超音波探触子10は、この段階で1-3コンポジット構造を作製するが、第一の段階の、熱剥離シート23上に貼り付ける段階で、最初から1-3コンポジット構造になっているPZT板21を貼り付けてもよい。このときは、図7に示す工程は省略できる。
【0040】
続いて、第三の段階として、図8に示すように、導電性バッキング材24a側から、例えばダイシングソーにより、超音波振動子となるべき領域毎に、PZT板21の下部電極(図8(A)にて上側の電極)まで、その中心から等角度間隔に放射状に延びる溝28を形成し、その溝28内にエポキシ樹脂を充填し、同様に脱泡,硬化を行なう。本例では、前方視超音波探触子10を4個製作する場合を示しているが、さらに多数個製作できることはいうまでもない。
【0041】
その後、第四の段階として、熱剥離シート25を取り外して、図9に示すように、上記PZT板21を下にしてダミー板27に載置し、上記PZT板21及び導電性バッキング材24aをダミー板27と共に、例えば超高速超精密立型加工機のステージ(図示せず)に固定する。そして、順次に各超音波振動子となるべき領域毎に、溝28の中心に位置合わせして、それぞれ内円29及び外円30の順にマイクロミリング加工によってリング状に切断する。これにより、各超音波振動子となるべき領域31が個別に分離されることになる。ここで、各領域31は、PZT板21による超音波振動子13と導電性バッキング材24aによる音響吸収材14とが一体に形成された状態になっている。そして、ここまでは、複数個の超音波振動子となるべき領域31が同時に形成されるようになっている。
【0042】
次に、図10に示すように、超高速超精密立型加工機のステージからダミー板27が取り外され、このダミー板27から各領域31が取り外された後、各領域のPZT板21の上部電極(図10にて下側の電極)を研磨することにより、図7の工程で上部電極に付着したエポキシ樹脂を除去する。
【0043】
続いて、図11に示すように、第五の段階として、領域31の中空部内に、GND用メタルチューブ16を挿入し、接着等により固定した後、図12に示すように、領域31の外周面を例えばポリイミドテープ32によりマスキングして、スパッタリング等により領域31の下面に対して上部電極33を再形成すると共に、この上部電極とGND用メタルチューブ16とを導通させる。
【0044】
その後、第六の段階として、図13に示すように、領域31の下面に、音響整合層12を取り付けると共に、第七の段階として、領域31の上面に、前もって別途形成された回路部品15を取り付ける。もちろん、第七の段階の、回路部品15を取り付ける段階で、回路部品15の集積回路の接続端子に対してすでに配線34を接続したものを取り付けてもよい。
【0045】
最後に、図14に示すように、回路部品15の集積回路の接続端子に対して配線34を接続し、GND用メタルチューブ16に対して接地線35を接続した後、全体にパリレン樹脂を蒸着させる。
以上で、前方視超音波探触子10が作製されることになる。
【0046】
本発明による前方視超音波探触子10は、以上のように構成されており、使用の際には以下のように動作する。
即ち、カテーテル11が例えば血管40内に挿入され、駆動回路としての集積回路15aにより音響吸収材14の分割された各音響吸収材部分14bを介して超音波振動子13が駆動され、カテーテル11の先端から前方に向かって超音波が送信される。そして、反射物体により反射されて戻ってきた超音波が超音波振動子13により受信され、集積回路15aに送出される。これにより、集積回路15aにて受信信号の増幅を行なって、カテーテル11を介して外部に送出するようになっている。
この場合、超音波振動子13は、図16に示すように、溝13aで分割された各部分13bが、それぞれ送信部及び受信部として動作するようになっている。そして、一つの部分13cから超音波パルスが送出され、反射物体41により反射された超音波パルスが、他の一つの部分13dにより検出されるようになっている。そして、各超音波パルスの送信から受信までの時間を外部に出力し、例えばコンピュータによって適宜に処理することにより、カテーテル11の前方の超音波画像が得られることになる。
【0047】
この場合、超音波振動子13に取り付けられる音響吸収材14が、導電性材料により構成されていると共に、超音波振動子の分割された後面電極の各部に対応して分割された音響吸収材部分14bが、それぞれ後面電極の各部に対する配線として役立つ。
従って、超音波振動子13の分割された後面電極の各部から、それぞれ駆動回路としての集積回路15aの接続端子まで配線を引き回す必要がなくなるので、これらの音響吸収材部分14bを介して回路部品15内の集積回路15aに対して直接に接続されることから、超音波振動子と駆動回路の接続が容易に行なわれる。
【0048】
また、超音波振動子13の前面に音響整合層12が設けられているので、超音波振動子13と生体内との音響インピーダンスの差が補間されて整合され、体内への超音波の送受の効率が向上する。
さらに、超音波振動子13は、前方視超音波探触子10の製造の際に、最初に音響吸収材14と一体化されるので、小面積で且つ薄い超音波振動子13が音響吸収材14によって補強され、途中の工程で超音波振動子13が変形したり割れたりするようなことがなく、歩留まりが向上し、コストが低減され得る。
【0049】
また、前方視超音波探触子10の作製の際には、図4乃至図9までに示す各工程では、複数個の前方視超音波探触子10が同時に作製されることになるので、生産効率が向上し、また回路部品15を使用することにより、複雑な配線が簡略化され且つ大量生産可能であるので、より一層コストが低減され得る。さらに、図4乃至図9の工程は、工作機をプログラム制御することが可能であるので、前方視超音波探触子10の寸法や形状の変更の際には、上記プログラムの数値を適宜に変更するだけで対応することができるので、簡単に且つ短時間で寸法や形状の変更が可能となる。
従って、超音波振動子への配線が容易に行なわれ得ると共に、超音波振動子の取扱いを容易にできる音響吸収材つきの1-3コンポジットリングアレイ構造を一括で作製できる。
また、図7の工程において、1-3コンポジット構造を作製する際には、音響吸収材が導電性を有していることから、超音波振動子が静電気等により破壊されることが少なくなる。
【0050】
上述した実施形態において、前方視超音波振動子10は、その前端に音響整合層12を備えているが、これに限らず、音響整合層12は省略されてもよい。
また、上述した実施形態においては、超音波振動子13及び音響吸収材14の溝13a,14a内には、それぞれエポキシ樹脂が充填されているが、これに限らず、他の絶縁材料が充填されてもよく、また絶縁材料が省略されてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施形態においては、音響吸収材14は、導電性接着剤により構成されているが、これに限らず、さらに導電性粉末として、例えばカーボンナノチューブ粉末が混入されていてもよい。これにより、音響吸収材14の各音響吸収材部分14bの導電性が実現され、配線抵抗が低減され得る。
また、上述した実施形態においては、集積回路15aは、回路部品15が音響吸収材14の後面に当接されることにより配線が行なわれるようになっているが、これに限らず、他のポリマー部品を使用してもよく、さらには集積回路15aの接続端子をそれぞれ対応する音響吸収材部分14bに配線を介して接続するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態において、超音波振動子13は1-3コンポジット構造で構成され、画質の向上ができるが、これに限らず、他のコンポジット構造でもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、作製の際に、最初に超音波振動子に対して音響吸収材を備えることになるので、小面積で且つ薄い超音波振動子が音響吸収材によって補強されることになり、超音波振動子の取扱いが容易になり、途中の工程で変形したり、割れたりするようなことがない。従って、歩留まりが向上し、コストが低減され得ることになる。
さらに、第二の段階から第四の段階までは、超音波振動子及び導電性音響吸収材の中心を基準として、縦横の溝の形成,等角度間隔の分割そしてリング状の形成が行なわれるので、例えばタイシングソーやマイクロミリング等の超高速超精密立型加工機を使用して、一括加工することができるので、前方視超音波探触子の作製が容易に行なわれ得る。
【0053】
そして、このように構成された前方視超音波探触子においては、超音波振動子の背面に備えられる音響吸収材が、導電性材料により構成され、且つ超音波振動子の後方電極の各電極部が、それぞれ対応する分割された音響吸収材部分を介して駆動回路に対して電気的に接続されるので、超音波振動子の後方電極の各電極部から駆動回路まで配線を引き回す必要がなくなる。従って、超音波振動子の後方電極の各電極部の駆動回路に対する電気的接続が、容易に行なわれることになる。
【0054】
このようにして、本発明によれば、超音波振動子への配線が容易に行なわれ得ると共に、超音波振動子の取扱いを容易にし、音響吸収を向上させ、さらに寸法や形状の変更が短時間に低コストで行なわれ得るようにした、極めて優れた前方視超音波探触子及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による前方視超音波探触子の一実施の形態の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の前方視超音波探触子のA-A線断面図である。
【図3】図1の前方視超音波探触子における超音波振動子及び音響吸収材の構成を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明による前方視超音波探触子の製造方法の一実施の形態における第一の工程を示す概略断面図である。
【図5】図4の製造方法における第二の工程を示す概略断面図である。
【図6】図4の製造方法における第三の工程を示し、(A)は概略断面図、(B)は縮小平面図である。
【図7】図4の製造方法における第四の工程を示し、(A)は概略断面図、(B)は縮小平面図である。
【図8】図4の製造方法における第五の工程を示し、(A)は概略断面図、(B)は縮小平面図である。
【図9】図4の製造方法における第六の工程を示し、(A)は概略断面図、(B)は縮小平面図である。
【図10】図4の製造方法における第七の工程を示し、(A)は拡大底面図、(B)は拡大側面図、(C)は拡大平面図である。
【図11】図4の製造方法における第八の工程を示し、(A)は拡大底面図、(B)は拡大側面図、(C)は拡大平面図である。
【図12】図4の製造方法における第九の工程を示し、(A)は拡大底面図、(B)は拡大側面図、(C)は拡大平面図である。
【図13】図4の製造方法における第十の工程を示し、(A)は拡大底面図、(B)は拡大側面図である。
【図14】図4の製造方法における第十一の工程を示し、(A)は拡大底面図、(B)は拡大側面図である。
【図15】図1の前方視超音波探触子の使用状態を示す概略斜視図である。
【図16】図1の前方視超音波探触子の動作原理を示す概略図である。
【符号の説明】
10 前方視超音波探触子
11 カテーテル
12 音響整合層
13 超音波振動子
13a 溝
13b 部分
14 音響吸収材
14a 溝
14b 音響吸収材部分
15 回路部品
15a 集積回路(駆動回路)
16 GND(接地)用メタルチューブ
16a ワーキングチャネル
17 絶縁材料
21 PZT板
22 ガラス型枠
23,25 熱剥離シート
24 導電性接着剤
24a 導電性バッキング材
26 溝
27 ダミー板
28 溝
29 内円
30 外円
31 領域
32 ポリイミドテープ
33 上部電極
34 配線
35 接地線
40 血管
41 反射物体
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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