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明細書 :単結晶基板の熱処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4388294号 (P4388294)
公開番号 特開2004-288767 (P2004-288767A)
登録日 平成21年10月9日(2009.10.9)
発行日 平成21年12月24日(2009.12.24)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
発明の名称または考案の名称 単結晶基板の熱処理方法
国際特許分類 H01L  21/02        (2006.01)
FI H01L 21/02 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2003-077151 (P2003-077151)
出願日 平成15年3月20日(2003.3.20)
審査請求日 平成17年7月15日(2005.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【識別番号】391049530
【氏名又は名称】株式会社信光社
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】松本 祐司
【氏名】山本 雄一
【氏名】望月 圭介
【氏名】福士 大吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100086254、【弁理士】、【氏名又は名称】小平 進
審査官 【審査官】大嶋 洋一
参考文献・文献 特開2003-073193(JP,A)
特開平08-264401(JP,A)
特開平01-143331(JP,A)
特開平01-128423(JP,A)
調査した分野 H01L 21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
TiOルチル単結晶基板を大気下400°C~1,000°Cの加熱温度で1時間焼成して、選択した面方位(110)の上記TiOルチル単結晶基板の表面に0.32nmの高さの原子ステップ及びテラス構造を得るようにしたことを特徴とする単結晶基板の熱処理方法。
【請求項2】
TiOルチル単結晶基板を大気下400°C~1,100°Cの加熱温度で1時間焼成して、選択した面方位(100)の上記TiOルチル単結晶基板の表面に0.46nmの高さの原子ステップ及びテラス構造を得るようにしたことを特徴とする単結晶基板の熱処理方法。
【請求項3】
TiOルチル単結晶基板を大気下800°C~900°Cの加熱温度で1時間焼成して、選択した面方位(001)の上記TiOルチル単結晶基板の表面に0.30nmの高さの原子ステップ及びテラス構造を得るようにしたことを特徴とする単結晶基板の熱処理方法。
【請求項4】
TiOルチル単結晶基板を大気下500°C~900°Cの加熱温度で1時間焼成して、選択した面方位(111)の上記TiOルチル単結晶基板の表面に0.22nmの高さの原子ステップ及びテラス構造を得るようにしたことを特徴とする単結晶基板の熱処理方法。
【請求項5】
TiOルチル単結晶基板を大気下600°C~800°Cの加熱温度で1時間焼成して、選択した面方位(101)の上記TiOルチル単結晶基板の表面に0.25nmの高さの原子ステップ及びテラス構造を得るようにしたことを特徴とする単結晶基板の熱処理方法。
【請求項6】
前処理としてTiOルチル単結晶基板の表面を有機溶剤で洗浄し、ついで酸性溶剤で洗浄しておくことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の単結晶基板の熱処理方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体、磁性体、高温超電導体などの薄膜成長用基板や光触媒材料の発現機構解明のための材料などに適用される単結晶基板の熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
良質なエピタキシャル膜の作製には、単結晶基板表面の原子レベルの平坦性が大きく影響されることは知られている。これまで、SrTiO単結晶基板やサファイア単結晶基板については、極めて高い平坦度が得られる処理技術が開発され、その処理技術が例えば特許第3252052号特許公報、特許第3015261号特許公報及び特許第3244966号特許公報などにおいて提案されており、現在は超平坦化技術が確立されているのが実情である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、TiO単結晶については、光触媒の発現機構の解明のために、また薄膜電子ディバイス応用のために、多くの研究が行われてきた。
しかしながら、発明者の知る限りではTiO単結晶基板の表面の原子レベル制御についてはこれまで系統的に研究された例は見当たらない。
本願発明の目的は、TiOルチル単結晶基板(以下「ルチル単結晶基板」と略称する。)の表面を原子レベルでの高い平坦化を可能にすることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明において、選択した面方位のルチル単結晶基板を大気下約300°C~約1,100°Cの加熱温度で電気炉などの加熱装置を用いて所定時間焼成して、上記ルチル単結晶基板の表面に約0.22nm~約0.46nmの高さ原子ステップ及びテラス構造を得るようにする方法である。
熱処理の対象となる上記ルチル単結晶基板はその面方位が選択される。選択される面方位は、所望の高さの原子ステップ及びテラス構造を制御できる面方位か又はルチル単結晶基板上に成長させる異種物質の結晶格子に適合する格子定数を有する面方位である。面方位は、(110),(100),(001),(111)及び(101)の中から選択され、選択の範囲は最小で少なくとも1つ、最大ですべての面方位である。
加熱温度は約300°C~約1,100°Cの範囲が望ましい。約300°Cより低温になると、上記ルチル単結晶基板の表面に所望のステップが得にくく、また約1,100°Cを越えて高温になると、ステップの高さが不均一となって高平坦性を有する基板が得にくくなるおそれがある。
加熱時間として上記加熱温度の範囲においては1時間程度で良いが、1時間未満又は1時間を越えても良い。もっとも、加熱時間については、加熱温度との関係で相対的に決定され、高温の場合には短時間の加熱処理が可能であり、また時間をかけることにより低温でも処理が可能である。
ルチル単結晶基板を焼成する段階において、前処理として基板表面を洗浄剤を用いて洗浄しておく場合と、洗浄することなく焼成する場合の双方があるが、前処理することは超平坦面であるテラス構造を得やすくするためには望ましい。前処理工程である洗浄工程では、洗浄剤例えば有機溶剤で洗浄し、ついで例えば酸性溶剤で洗浄すると、上記効果が高められる。有機溶剤としてはアセトン、エタノールなどが用いられ、また酸性溶剤としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸などが使用される。
【0005】
【作用】
選択した面方位(110),(100),(001),(111)又は(101)を持つ表面のルチル単結晶基板を所定温度で所定時間焼成することにより、上記ルチル単結晶基板表面には所望の高さの原子レベルのステップを有する超平坦面であるテラス構造が形成される。
【0006】
【実施例】
(実施例1)
面方位(110)であるルチル単結晶基板の表面をまず有機溶剤によって洗浄し、ついで酸性溶剤で洗浄処理した後、研磨仕上げされたルチル単結晶基板を電気炉内において大気中400°Cの加熱温度で1時間焼成した。
同様に、上記ルチル単結晶基板に対して異なった加熱温度すなわち、500°C、600°C、700°C、800°C、900°C及び1,000°Cのそれぞれの加熱温度でも1時間焼成した。
このように、上記の面方位で、かつ下限を400°C、上限を1,000°Cとして加熱温度を順次100°Cそれぞれ上昇させた7ケースについて、個別に焼成後、原子間力顕微鏡でルチル単結晶基板の表面を観察したところ、7ケースのいずれの加熱温度の場合でもその表面には高さ0.32nmのステップ及びテラス構造が形成されていた。テラス幅はルチル単結晶基板の表面の結晶軸精度すなわち面方位(110)からのずれ幅に依存して相対的に変化した。
この観察では、原子間力顕微鏡(AFM)としてSII社製のSPA300/SPI3800を使用した。観察範囲は1×1μmである。
図1(A)及び図1(B)は、加熱温度が900°Cにおける焼成後の上記ルチル単結晶基板における配向面(110)のAFM像の斜視図及び同断面図である。ルチル単結晶基板の表面には高さ0.32nmのステップ2及びテラス幅が100nmを越えるテラス1を有する構造が形成されていた。
【0007】
(実施例2)
面方位(100)であるルチル単結晶基板の表面をまず有機溶剤によって洗浄し、ついで酸性溶剤で洗浄処理した後、研磨仕上げされたルチル単結晶基板を電気炉内において大気中400°Cの加熱温度で1時間焼成した。
同様に、上記ルチル単結晶基板に対して異なった加熱温度すなわち、500°C、600°C、700°C、800°C、900°C、1,000°C及び1,100°Cで個別毎に1時間焼成した。
このように、上記の面方位で、かつ下限を400°C、上限を1,100°Cとして加熱温度を順次100°Cそれぞれ上昇させた8ケースについて、焼成後、上記原子間力顕微鏡でルチル単結晶基板の表面を観察したところ、いずれの加熱温度の場合でもその表面には高さ0.46nmのステップ及びテラス構造が形成されていた。テラス幅はルチル単結晶基板の表面の結晶軸精度すなわち面方位(100)からのずれ幅に依存して相対的に変化した。観察範囲は1×1μmである。
図2(A)及び図2(B)は、加熱温度が800°Cにおける焼成後の上記ルチル単結晶基板における配向面(100)のAFM像の斜視図及び同断面図である。ルチル単結晶基板の表面には高さ0.46nmのステップ2及びテラス幅が100nmを越えるテラス1を有する構造が形成されていた。
【0008】
(実施例3)
選択する面方位及び加熱温度を除いて、実施例1に示す条件と同一の条件でルチル単結晶基板の表面を熱処理した。
本例の面方位は(001)、加熱温度は800°C及び900°Cの2ケースであった。
焼成後のルチル単結晶基板の表面を上記原子間力顕微鏡で観察したところ、いずれの加熱温度の場合でもその表面には高さ0.30nmのステップ及びテラス構造が形成されていた。テラス幅はルチル単結晶基板の表面の結晶軸精度すなわち面方位(001)からのずれ幅に依存して相対的に変化した。観察範囲は1×1μmである。
図3(A)及び図3(B)は加熱温度が900°Cにおける焼成後の上記ルチル単結晶基板における配向面(001)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
ルチル単結晶基板の表面には高さ0.30nmのステップ2及びテラス幅が100nmを越えるテラス1を有する構造が形成されていた。
【0009】
(実施例4)
選択する面方位及び加熱温度を除いて、実施例1に示す条件と同一の条件でルチル単結晶基板の表面を熱処理した。
本例の面方位は(111)、加熱温度は500°C、600°C、700°C、800°C及び900°Cの5ケースであった。
焼成後のルチル単結晶基板の表面を上記原子間力顕微鏡で観察したところ、いずれのケース(加熱温度)でも上記ルチル単結晶基板の表面には高さ0.22nmのステップ及びテラス構造が形成されていた。テラス幅はルチル単結晶基板の表面の結晶軸精度すなわち面方位(111)からのずれ幅に依存して相対的に変化した。観察範囲は1×1μmである。
図4(A)及び図4(B)は加熱温度が800°Cにおける焼成後の上記ルチル単結晶基板における配向面(111)のAFM像の斜視図及び同断面図である。ルチル単結晶基板の表面には高さ0.22nmのステップ2及びテラス幅が80nmを越えるテラス1を有する構造が形成されていた。
【0010】
(実施例5)
選択する面方位及び加熱温度を除いて、実施例1に示す条件と同一の条件でルチル単結晶基板の表面を熱処理した。
本例の面方位は(101)、加熱温度は600°C、700°C及び800°Cの3ケースであった。
焼成後のルチル単結晶基板の表面を上記原子間力顕微鏡で観察したところ、いずれのケース(加熱温度)においても、ルチル単結晶基板の表面には高さ0.25nmのステップ及びテラス構造が形成されていた。テラス幅はルチル単結晶基板の表面の結晶軸精度すなわち面方位(101)からのずれ幅に依存して相対的に変化した。観察範囲は1×1μmである。
図5(A)及び図5(B)は加熱温度が800°Cにおける焼成後の上記ルチル単結晶基板における配向面(101)のAFM像の斜視図及び同断面図である。ルチル単結晶基板の表面には高さ0.25nmのステップ2及びテラス幅が50nmを越えるテラス1を有する構造が形成されていた。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、ルチル単結晶基板の表面を原子レベルでの平坦化が可能となるから、光触媒の発現機構の解明用材料に応用でき、また性能の良い薄膜電子ディバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)及び(B)はルチル単結晶基板における配向面(110)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
【図2】(A)及び(B)はルチル単結晶基板における配向面(100)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
【図3】(A)及び(B)はルチル単結晶基板における配向面(001)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
【図4】(A)及び(B)はルチル単結晶基板における配向面(111)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
【図5】(A)及び(B)はルチル単結晶基板における配向面(101)のAFM像の斜視図及び同断面図である。
【符号の説明】
1 テラス
2 ステップ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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