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明細書 :マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3740094号 (P3740094)
公開番号 特開2004-016051 (P2004-016051A)
登録日 平成17年11月11日(2005.11.11)
発行日 平成18年1月25日(2006.1.25)
公開日 平成16年1月22日(2004.1.22)
発明の名称または考案の名称 マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動物
国際特許分類 G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
A01K 67/027
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2002-173254 (P2002-173254)
出願日 平成14年6月13日(2002.6.13)
審査請求日 平成14年6月13日(2002.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】審良 静男
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 特開2002-045086(JP,A)
細胞工学,2000年,Vol.19, No.5,p.767-774
医学のあゆみ,2001年,Vol.199, No.1,p.59-63
J.Immunol.,2001年,Vol.166, No.1,p.15-19
R・W・オールド著,関口睦夫訳,「遺伝子操作の原理」第5版,培風館,2000年,p.341
調査した分野 A01K 67/027
G01N 33/15
G01N 33/50
C12N 15/85 - 15/90
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質TLR1をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動として使用する方法
【請求項2】
非ヒト動物が齧歯目動物であることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項3】
齧歯目動物がマウスであることを特徴とする請求項記載の方法
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するTLR1等のタンパク質をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損した、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物や、これらモデル非ヒト動物を用いたマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
トール(Toll)遺伝子は、ショウジョウバエの胚発生中の背腹軸の決定(Cell 52, 269-279, 1988、Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996)、また成体における侵入病原体を検出する自然免疫に関与しており(Nature 406, 782, 2000; Nat. Immunol. 2, 675, 2001; Annu. Rev. Immunol. 20, 197, 2002)、かかるTollは、細胞外領域にロイシンリッチリピート(LRR)を有するI型膜貫通受容体であり、この細胞質内領域は、哺乳類インターロイキン-1受容体(IL-1R)の細胞質内領域と相同性が高いことが明らかとなっている(Nature 351, 355-356, 1991、Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 12, 393-416, 1996、J. Leukoc. Biol. 63, 650-657, 1998)。
【0003】
近年、Toll様受容体(TLR:Tool Like Receptor)と呼ばれるTollの哺乳類のホモログが同定され(Nature 388, 394-397, 1997、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 588-593, 1998、Blood 91, 4020-4027, 1998、Gene 231, 59-65, 1999)、ヒトTLRファミリーについては、TLR2やTLR4などこれまでに10種が報告されている。TLRファミリーの役割は、細菌の共通構造を認識するパターン認識受容体(PRR:pattern recognition receptor)として、別々の病原体会合分子パターン(PAMPs:pathogen-associated molecular patterns)を識別し、転写因子であるNF-κBの核内への移行を導く同様の細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こす。かかるシグナル伝達経路は、最終的には炎症性サイトカインを産生させ、宿主防衛反応を誘起し、さらに獲得免疫に対しても宿主防衛反応を誘起させる。また、近年多くのTLRリガンドが報告されている。
【0004】
TLR2は、ペプチドグリカン(PGN)、細菌由来トリアシル化リポタンパク質、マイコプラズマ由来ジアシル化リポタンパク質、及びTrypanosoma cruzi(クルーズトリパノソーマ)のGPIアンカーなどのさまざまな細菌成分を認識する(Science 285, 732, 1999; Science 285, 736, 1999; J.Biol. Chem. 274, 33419, 1999; Immunity 11, 443, 1999; J. Immunol. 164, 554, 2000; Nature 401, 811, 1999; J. Immunol. 167, 416, 2001)。TLR4は、グラム陰性菌の細胞壁に特異的な糖脂質であるLPSに応答する際必須である。TLR5は、細菌の鞭毛のタンパク質成分であるフラジェリンを認識するとされている。さらに、病原体特異的なヌクレオチド、及びヌクレオチド類似体もTLRが認識する。つまり、TLR3、TLR7及びTLR9は、ウィルス二重鎖RNA、イミダゾキノリン、非メチル化CpGモチーフを有する細菌DNAの認識に、それぞれ関与している(Nature 406, 782, 2000; Nat. Immunol. 2, 675, 2001; Annu. Rev. Immunol. 20, 197, 2002; Nat. Immunol. 3, 196, 2002)。
【0005】
TLRはヘテロ二量体を形成するので、リガンドの特異性をさらに明確にすることができる。特に、TLR6は、TLR2と相互作用してマイコバクテリア由来リポタンパク質を識別する独特の性質を有している(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13766, 2000; Int. Immunol. 13, 933, 2001)。TLR6欠損(TLR6-/-)マウスは、マクロファージ活性化リポペプチド2-kD(MALP-2)と呼ばれるジアシル化マイコプラズマ由来リポペプチドに応答し、炎症性サイトカインを産生しない。その一方、トリアシル化細菌由来リポペプチドに対しては、正常な応答を示す。TLR2-/-マクロファージは、前記リポペプチドのどちらにも応答しない(Int. Immunol. 13, 933, 2001)。つまり、TLR6は、細菌病原体に由来するリポペプチドのアシル化における僅かな相違を区別していることがわかる。また、TLR2が別のTLRとともにヘテロ二量体を形成し、かかるトリアシル化リポペプチド中の他のPAMPsを識別するという可能性が生じる。
【0006】
他方、リポタンパク質は、マイコバクテリア、グラム陰性菌、及びマイコプラズマ種を含む多様な病原体によって産生される(Microbiol. Rev. 60, 316, 1996)。N末端アシル化リポペプチド領域は、細菌由来及びマイコプラズマ由来リポタンパク質の免疫活性化作用に関与している。細菌由来のリポタンパク質とマイコプラズマ由来のリポタンパク質とでは、N末端システインのアシル化の程度が異なっている。細菌由来のリポタンパク質ではトリアシル化されているのに対し、マイコプラズマ由来のものではジアシル化されている(Trends Microbiol. 7, 493, 1999)。N-アシル-S-ジアシルシステイン及びS-ジアシルシステインがパルミトイル化してなる合成リポタンパク質類似体は、それぞれ細菌由来及びマイコプラズマ由来のリポタンパク質に似た免疫活性化作用を示す(Immunobiology 177, 158, 1988; J. Exp. Med. 185, 1951, 1997)。
【0007】
TLR1はTLR6と類似性が高い(Gene 231, 59, 1999)。TLR1の過剰発現により、Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)から分泌されるフェノール可溶性タンパク質であるモジュリンに対し、TLR2を介する応答が阻害されると報告されている(J. Immunol. 166, 15, 2001)。一方、Neisseria meningitides(髄膜炎菌)から放出される可溶性因子の識別にTLR1が関与しているとの報告もある(J. Immunol. 165, 7125, 2000)。しかし、TLR1のインビボでのリガンドはまだ解明されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
インビボにおける菌体成分に対する応答は、細胞表面上の各TLRの発現レベルの差異により変化することが予測されるものの、未だインビボにおける菌体成分刺激によるシグナル伝達に対するTLRファミリーの各メンバーの関わりは明らかにされていない。また、生体膜などに存在する水不溶性のリポタンパク/リポペプチドが免疫細胞を活性化することは知られていた。しかし、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質は知られていなかった。本発明の課題は、インビボにおけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド刺激によるシグナル伝達に対するTLRファミリー各メンバーの関わり、特にTLR1のインビボにおける役割を明らかにする上で有用な、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損した、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物、特にTLR1遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物や、これらを用いたマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、既に同定されているTLR1の遺伝子を、マウス遺伝子ライブラリーから単離し、このTLR1遺伝子の細胞内領域及び膜貫通領域を含む遺伝子部位を、ネオマイシン耐性遺伝子に置き換え、またそれぞれの3’末端側にチミジンキナーゼをコードする遺伝子であるHSV-tk遺伝子を導入させて、G418とガンシクロビアに対して2重に抵抗力のあるES細胞クローンをスクリーニングし、このES細胞クローンをC57BL/6のマウスの胚盤胞(blastocysts)の中に注入し、その生殖系列をとおして、メンデルの法則に従い出生してくるTLR1遺伝子機能が染色体上で欠損したTLR1ノックアウトマウスを作製し、このTLR1ノックアウトマウスと野生型マウスとTLR2ノックアウトマウスとを比較・解析することにより、TLR1がマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識する受容体タンパク質であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質TLR1をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル動として使用する方法に関する。
【0011】
また本発明は、(2)非ヒト動物が齧歯目動物であることを特徴とする上記(1)記載の方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、(3)齧歯目動物がマウスであることを特徴とする上記(2)記載の方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損したヒト以外のモデル動物であれば特に制限されるものではないが、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに加えて、N-パルミトイル-S-ジラウリルグリセリル等の合成トリアシル化リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損したヒト以外のモデル動物であることが好ましく、例えば、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする非ヒト動物の内在性遺伝子の全部又は一部を、破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により、その機能を不活性化させることにより、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子の機能を染色体上で欠損させることができる。また、上記マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識することができるタンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、TLR1やTLR1活性を有するその一部を具体的に挙げることができる。かかるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質は、そのDNA配列情報等に基づき公知の方法で調製することができる。また、本発明におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドには、マイコバクテリアに由来するリポタンパク/リポペプチドの他、マイコバクテリア菌体自体又はその処理物、MALP-2等の合成マイコバクテリア由来リポペプチドなども便宜上含まれる。
【0014】
本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物は、野生型非ヒト動物に比べて、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドによる刺激に対する生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が特異的に低下しているか、あるいは失われている非ヒト動物、すなわち、スピロヘーターやグラム陰性菌等マイコバクテリア以外のリポタンパク/リポペプチドによる刺激に対しては正常に生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官において反応性を有するが、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドにおいては、生体又は生体を構成する細胞、組織若しくは器官の反応性が低下しているか、あるいは失われているマウス、ラット、ウサギ等のヒト以外の動物をいい、具体的には、TLR1ノックアウトマウス等のTLR1遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を具体的に挙げることができる。また、上記マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドによる刺激としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを生体に投与するインビボでの刺激や、生体から分離された細胞にマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを接触させるインビトロでの刺激等を挙げることができる。
【0015】
次に、本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物の作製方法を、TLR1ノックアウトマウスを例にとって説明する。マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、TLR1をコードする遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたTLR1をコードする遺伝子を、ウイルスベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このTLR1をコードする遺伝子の全部又は一部をpMC1ネオ遺伝子カセット等に置換し、3’末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT-A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子等の遺伝子を導入することによって、ターゲットベクターを作製する。
【0016】
この作製されたターゲティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418やガンシクロビア(GANC)等の抗生物質により相同的組換えを起こしたES細胞を選択する。また、この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。その確認されたES細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型マウスと交雑させると、ヘテロ接合体マウス(F1マウス:+/-)を得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスを交雑させることによって、本発明のTLR1ノックアウトマウスを作製することができる。また、TLR1ノックアウトマウスにおいて、TLR1が生起しているかどうかを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスからRNAを単離してノーザンブロット法等により調べたり、またこのマウスにおけるTLR1の発現をウエスタンブロット法等により調べる方法がある。
【0017】
また、作出されたTLR1ノックアウトマウスがマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対して不応答性であることは、例えば、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドをTLR1ノックアウトマウスのマクロファージ、単核細胞、樹状細胞などの免疫細胞にインビトロ又はインビボで接触せしめ、かかる細胞におけるTNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等の産生量や、脾臓B細胞の増殖応答や、脾臓B細胞表面でのCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原の発現量や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR1のシグナル伝達経路における分子の活性化を測定することにより確認することができる。そして、本発明のTLR1ノックアウトマウスは、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドの作用機序の解明や、マイコバクテリア感染に対する治療戦略を考案する上で有用なモデルとすることができる。
【0018】
ところで、メンデルの法則に従い出生してくるホモ接合体非ヒト動物には、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質欠損型とその同腹の野生型とが含まれ、これらホモ接合体非ヒト動物における欠損型とその同腹の野生型を同時に用いることによって個体レベルで正確な比較実験をすることができることから、野生型の非ヒト動物、好ましくはマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを特異的に認識するタンパク質をコードする遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同種の野生型非ヒト動物、さらには同腹の動物を、例えば以下に記載する本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の促進物質又は抑制物質のスクリーニングに際して併用することが好ましい。
【0019】
本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物や該モデル非ヒト動物由来のマクロファージ、脾臓細胞、樹状細胞等の免疫細胞は、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドの作用機序の解明の他、TLR1に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の抑制物質若しくは促進物質のスクリーニングや、肺結核等のマイコバクテリア感染症に対する予防・治療薬のスクリーニング等に用いることができる。かかるTLR1に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の促進物質若しくは抑制物質のスクリーニング方法を、以下に例を挙げて説明する。
【0020】
本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物に由来するマクロファージ、脾臓細胞、樹状細胞等の免疫細胞と、被検物質と、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドとを用いて、かかる免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物と、被検物質と、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドとを用いて、かかるモデル非ヒト動物におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法等を挙げることができる。
【0021】
上記マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物に由来する免疫細胞を用いたスクリーニング方法としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物から得られる免疫細胞と被検物質とをあらかじめインビトロで接触せしめた後、かかる免疫細胞をマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドの存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物から得られる免疫細胞とマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドとをあらかじめインビトロで接触せしめた後、該免疫細胞を被検物質の存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0022】
また、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物から得られる免疫細胞をマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドの存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物にマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを投与し、該非ヒト動物から得られる免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0023】
また、本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを投与した後、該非ヒト動物から得られる免疫細胞を被検物質の存在下で培養し、該免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドを投与した後、該非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物から得られる免疫細胞におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0024】
また、本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物と、被検物質と、マイコバクテリアを用いて、かかるモデル非ヒト動物におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法としては、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該モデル非ヒト動物をマイコバクテリアに感染させ、該モデル非ヒト動物におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法や、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物をあらかじめマイコバクテリアに感染させた後、該モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該モデル非ヒト動物におけるマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価する方法を挙げることができる。
【0025】
本発明においてマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答の測定・評価とは、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドと特異的に反応し、細胞内にシグナルを伝達する機能の測定・評価をいい、かかるシグナル伝達機能としては、TNF-α、IL-6、IL-12、IFN-γ等のサイトカインを産生する機能や、亜硝酸イオンを産生する機能や、細胞を増殖する機能や、細胞表面においてCD40、CD80、CD86、MHCクラスII等の抗原を発現する機能や、NF-κB、JNK、IRAK等のTLR9のシグナル伝達経路における分子を活性化させる機能などを具体的に例示することができるが、これらに限定されるものではない。また前記したように、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答を測定・評価するに際し、対照として同腹の野生型非ヒト動物、特に同腹の野生型非ヒト動物の測定値と比較・評価することが個体差によるバラツキをなくすることができるので好ましい。
【0026】
本発明のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する反応性を特異的に欠如したモデル非ヒト動物により、TLR1がマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドの認識に特異的に関与していることが明らかとなったことから、これらのモデル非ヒト動物は、結核菌による肺結核や腎結核等に対する治療戦略を考案する上で、非常に有用なモデル動物となることが考えられる。またTLR1のアゴニストは、上記各種マイコバクテリア感染症等のTLR1活性の欠失又は異常に起因する疾病等の診断・治療に有用な物質である可能性がある。
【0027】
TLR1とTLR2は哺乳類細胞中での相互作用し、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答性を一層高めることから、これらを宿主細胞内で共発現させると、マイコバクテリア感染症の予防・治療薬となりうる。本発明のTLR1及びTLR2の発現系を含むマイコバクテリア感染症の予防・治療薬における発現系としては、上記TLR1及びTLR2を宿主細胞内で発現させることができる発現系であればどのようなものでもよいが、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス由来のウイルスベクターに、TLR1やTLR2をコードする遺伝子を個別にインテグレーションしたものや、TLR1及びTLR2をコードする遺伝子をコインテグレーションしたものを例示することができる。この発現系は発現を起こさせるだけでなく発現を調節する制御配列を含んでいてもよい。
【0028】
本発明において、予防・治療薬を医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。またこれら医薬品を用いる予防若しくは治療方法においては、患者の性別・体重・症状に見合った適切な投与量の上記予防・治療薬を、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる他、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
参考例(TLR2ノックアウトマウスの作製)
129/SvJマウス遺伝子ライブラリー(Stratagene社製)から、ヒトTLR2遺伝子と類似したマウスESTクローン由来のプローブを用いて、TLR2遺伝子をスクリーニングし、pBluescriptベクター(Stratagene社製)中でサブクローンし、制限酵素マッピング及びDNA配列決定により特定した。ターゲッティングベクターは、TLR2遺伝子の細胞内領域を含むエクソン部位1.3kbの遺伝子フラグメントを、ポリAシグナルをもつpMC1-neo(Stratagene社製)に置換することにより構築した。かかるターゲッティングベクターは、4.8kbの5′遺伝子フラグメントと1.0kbの3′遺伝子フラグメントとをフランキング配列として有し、HSV-tkカセットを5′末端に含んでいる。このターゲッティングベクターをSalIにより線状化し、胎生14.1日目の胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションした。上記エレクトロポレーションしたES細胞から、G418及びガンシクロビアに抵抗性を示し、かつ突然変異TLR2対立遺伝子を含有していたものをスクリーニングし、かかるES細胞をC57BL/6マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしキメラマウスを作製し、この雄のキメラマウスとC57BL/6雌マウスとを交配させることによってTLR2ノックアウトマウスを作製した(Immunity 11, 443-451, 1999)。
【0030】
実施例1(TLR1ノックアウトマウスの作製)
129Svマウス遺伝子ライブラリー(Clontech社製)から、マウスTLR1遺伝子由来のプローブを用いて、TLR1遺伝子をスクリーニングし、pBluescript II SK(+)ベクター(Stratagene社製)中でサブクローンし、制限酵素マッピング及びDNA配列決定により特定した。ターゲッティングベクターは、マウスTLR1の細胞内領域及び膜貫通領域をコードする遺伝子部位(マウスTLR1のアミノ酸配列575-795を含むエクソンの一部を、5’末端側から1.0kb及び3’末端側から10kbまで)を、ネオマイシン耐性遺伝子カセット(Staratagene社製)に置換し、負の選択マーカーとして単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)を挿入することにより構築した(図1)。このターゲッティングベクターをSalIにより線状化し、胎生14.1日目の胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションし、G418及びガンシクロビアに抵抗性を示す125個のクローンを選択し、PCR法及びサザンブロット法により3個のクローンをスクリーニングした。
【0031】
突然変異TLR1対立遺伝子を含有していた3個の標的ESクローンを、C57BL/6マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションしてキメラマウスを作製した。この雄のキメラマウスをC57BL/6雌マウスと交配させ、ヘテロ接合体F1マウスを作製し、かかるヘテロ接合体F1マウスをインタークロスすることによってホモ接合体マウス(TLR1ノックアウトマウス:TLR1-/-)を得た。なお、ホモ接合体マウスの確認は、マウスの尾から抽出した各ゲノムDNAをEcoRIでダイジェストし、図1に示すプローブを用いるサザンブロット法により行った(図2)。TLR1-/-マウスの腹腔マクロファージは、TLR1のmRNAを発現していなかった(図3)。これに対し、TLR1-/-マクロファージ中でのTLR2のmRNAの発現は、野生型細胞の場合と比較して、正常であった。本発明のTLR1-/-はメンデルの法則に従い作製することができ、健やかに成長し、繁殖可能で、生後6ヶ月までは明らかな異常を全く示さなかった。また、TLR1-/-マウスにおける胸腺細胞及び脾細胞中のリンパ球群には、変化がなかった。
【0032】
実施例2(腹腔マクロファージの調製と酵素結合免疫吸着定量法)
野生型マウス(wild-type)、TLR1ノックアウトマウス(TLR1-/-)及びTLR2ノックアウトマウス(TLR2-/-)のそれぞれの腹腔内に4%のチオグリコール酸培地(DIFCO社製)を2mlずつ注入し、3日後に各マウスの腹腔内から腹腔滲出細胞を単離し、これらの細胞を10%のウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地(Nacalai tesque社製)中で37℃にて2時間培養し、腹腔マクロファージ(5×104)を培養し、示されたリポタンパク質等の細菌成分で24時間刺激した。培養上澄液中のTNFα(Genzyme Techne社製)及びIL-6(R & D社製)の濃度は、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)で測定した。
【0033】
(PAMPsに対する応答)
PAMPsにはMycobacterium tuberculosis(結核菌)から精製した未変性19kDリポタンパク質(Science 285, 732, 1999の記載に従い精製)、Salmonella minnesota Re595のLPS、及びStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)のPGNを使用した。チオグリコール酸で刺激した野生型マウス及びTLR1-/-マウスの腹腔マクロファージを、これらのPAMPsの存在下で24時間培養し、培養上澄液中のTNFαの濃度を測定した。未変性19kDリポタンパク質を用いたときの結果を図4に、LPS及びPGNを用いたときの結果を図5に示す。野生型マクロファージは、19kDリポタンパク質に応答し、投与量依存的にTNFαを産生したが、TLR1-/-マクロファージによるTNFαの産生には、実験したリポタンパク質の濃度5μg/ml及び10μg/mlにおいて、障害が認められた(図4)。一方、LPS及びPGNで刺激すると、TLR1-/-マクロファージは、野生型細胞とほぼ同程度、投与量依存的にTNFαを産生した(図5)。また、同様に、培養した腹腔マクロファージ(5×104)を未変性19kDリポタンパク質とLPSとでそれぞれ24時間刺激し、培養上澄液中のIL-6の濃度を測定した。図6に示す結果からもわかるように、未変性19kDリポタンパク質に応答したIL-6の産生も、TLR1-/-マクロファージでは、野生型細胞に比べ少なかったが、LPSに応答したIL-6の産生は両者間において大差がなかった。さらに、全てのマイコバクテリアの識別にTLR1が関与しているのかどうかについて検討するため、段階的に量を増加させた生菌のM. bovis(ウシ型結核菌)BCG(Kyowa社製)を用いて腹腔マクロファージを24時間刺激し、培養上澄液中のTNFα濃度を測定した。BCGに応答してTNFαを産生する能力は、図7に示すように、TLR1-/-マクロファージでは部分的に損なわれていた。これらの結果から、TLR1は、生菌のマイコバクテリアだけではなく、マイコバクテリアから精製した19kDリポタンパク質の識別にも関与していることが判明した。
【0034】
(合成アシル化リポペプチドに対する応答)
また、トリアシル化リポペプチド及びジアシル化リポペプチドの応答にはいずれもTLR2が必須であること、及びTLR6がTLR2と相互作用してジアシル化リポペプチドを特異的に識別することは、本発明者によってこれまでに示されている(Int. Immunol. 13, 933, 2001)。19kDリポタンパク質の調製に応答したサイトカインの産生は、TLR2-/-マクロファージでは阻害されていた(Science 291, 1544, 2001)。こうした結果はすべて、TLR1がTLR2とも相互作用して、トリアシル化リポタンパク質を識別していることを示している。TLR1が識別する化学構造を解明するため、野生型マウス及びTLR1-/-マウスの腹腔マクロファージを、合成細菌由来トリアシル化ペプチドであるPam3CSK4及び合成マイコプラズマ由来ジアシル化ペプチドであるMALP-2で刺激した。TLR1-/-マクロファージでは、野生型細胞と比較して、Pam3CSK4に応答したTNFαの産生が有意に阻害されていたが(図8)、TLR1-/-細胞は、MALP-2に正常に応答していた(図9)。これらの結果から、TLR1がトリアシル化細菌由来リポタンパク質の識別に関与していることがわかる。また、TLR1は、個々のTLR2リガンドを識別し、リポペプチドのアシル化の程度を判別していることがわかる。
【0035】
実施例3(TLR1、TLR2及びTLR6の共発現による、リポペプチドの刺激に応答したNF-κB作用の調節)
TLR1、TLR2及びTLR6の発現ベクターでHEK293細胞の形質転換を行い、その際にpELAMルシフェラーゼレポータープラスミドを使用した。リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)による形質転換効率を標準化するため、示されたベクターをpELAMルシフェラーゼリポータープラスミド(J. Biol. Chem. 274, 10689, 1999)及びpRL-TK(Promega社製)と共に用いて、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞の一時的な形質転換を行った。形質転換の24時間後、10ng/mlのPam3CSK4でかかる細胞を8時間刺激した。その後、細胞を溶解し、Dual-luciferase reporter assay system(Promega社製)を製造者の指示通りに用い、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図10に示す。TLR2の発現は、Pam3CSK4刺激に応答したNF-κBの活性化をもたらし、TLR1の共発現は、かかる活性化を有意に増強した。これに対して、TLR6とTLR2の共発現により、Pam3CSK4刺激に誘導されたNF-κBの活性化が増強することはなかった。こうした結果は、互いに協力してPam3CSK4を識別する際に関与しているのが、TLR6ではなくTLR1及びTLR2であることを示している。
【0036】
実施例4(TLR1及びTLR2の哺乳類細胞中での相互作用)
3μgのFlag標識TLR2、TLR4、又は6μgのHA標識TLR1を用い、HEK293細胞をコトランスフェクションした。36時間後、1.0%のNonidet P-40、150mMのNaCl、20mMのトリスHCl(pH7.5)、5mMのEDTA及びプロテアーゼ阻害剤の混合液であるComplete(Roche Diagnostics社製)を含む溶解緩衝液中で、かかる細胞を溶解した。タンパク質G-セファロースを用い、かかる溶解液の前処理を1時間行い、2μgの抗Flag M2抗体又は2μgの抗HA 12CA5抗体及びタンパク質G-セファロースを用い、免疫沈降を12時間行った。溶解緩衝液でビーズを4回洗浄し、免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGEサンプル緩衝液中で溶出させ、SDS-PAGE上で分離してPVDF膜上に移した。抗HA抗体(Roche Diagnostics社製)及びHRP標識抗マウスIg抗体で、HA標識TLR1を検出した。二次抗体であるHRP-conjugated抗Flag M2抗体で、Flag標識タンパク質を同定した。その後、enhanced chemiluminescence system(DuPont社製)で、かかる抗体の検出を行った。
【0037】
HA標識TLR1の免疫沈降を行った結果、Flag標識TLR2については共沈降が生じたが、TLR4については生じなかった。HA標識TLR1も相互的にFlag標識TLR2と共沈降した(図11)。しかし、Pam3CSK4刺激によって、TLR1-TLR2間の会合の程度が影響を受けることはなかった。これらの結果により、HEK293細胞中でTLR1とTLR2がリガンド非依存的に会合していることが示唆される。
【0038】
実施例5(TLR1及びTLR2が識別するリポペプチド)
TLR1-/-マウスにおいてはPam3CSK4への応答は有意に阻害されていたが、本発明者はTLR1非依存的なサイトカインの産生を観察した。TLR1が識別する特異的なリガンドをさらに絞りこむため、N末端の脂肪酸の組み合わせが異なるリポペプチドを合成した。合成N-パルミトイル-S-ジパルミトイルグリセリル(Pam3)CSK4、及びMALP-2の合成方法については、文献(Science 285, 736, 1999; J. Immunol. 164, 554, 2000)の通りである。合成リポタンパク質類似体のJBT3002は、文献(J. Leukoc. Biol. 63, 766, 1998)の通りである。また、N-パルミトイル-S-ジラウリルグリセリル(N-Pam-S-Lau2)CSK4、N-ラウリル-S-ジラウリルグリセリル(Lau3)CSK4、N-ミリスチル-S-ジミリスチルグリセリル(Myr3)CSK4などの別のN末端アシル機能を有する他のリポペプチド(Peptide Institute Inc.社製)を使用した。これらはペプチドのN末端システインで置換された脂肪酸の長さが異なっている。また、N-Pam-S-Lau2CSK4とJBT3002の脂質部分は同一である。
【0039】
野生型マウス、TLR1-/-マウス及びTLR2-/-マウスのマクロファージを上記合成ペプチド化合物Myr3CSK4、Lau3CSK4、Lau2N-PamCSK4及びJBT3002でそれぞれ刺激し、TNFαの産生を測定した。結果を、それぞれ図12~図15に示す。これらすべての合成ペプチドは野生型細胞を活性化し、投与量依存的にTNFαを産生させていた。TLR2-/-マウスのマクロファージについては、これらのリポペプチドのいずれかに応答したTNFαの産生は全く検出されなかった。TLR1-/-のマクロファージについては、Myr3CSK4及びLau3CSK4に応答したTNFαの産生能力は損なわれていた(図12及び図13)。また、Lau2N-PamCSK4又はJBT3002で刺激した場合、TLR1-/-細胞におけるTNFαの産生がかなり損なわれていたが、このことは、TLR1の識別にリポタンパク質の脂質部分の微妙な相違が影響していることを示している(図14及び図15)。これらのことから、マイコバクテリア由来産物だけではなくトリアシル化リポタンパク質の識別にもTLR1が関与しているという確証が得られた。TLR1とTLR2は、相互作用により協働してPam3CSK4を検出するが、これは、TLR2がTLR1又はTLR6と対になって、異なるPAMPsを識別することを示している。
【0040】
【発明の効果】
本発明のTLR1ノックアウトマウス等のマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチド不応答性モデル非ヒト動物は、マイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対してのみ不応答性であるため、このモデル非ヒト動物を用いることによって、肺結核等のマイコバクテリア感染症に対する抑制物質若しくは促進物質又はTLR1に対するアゴニスト若しくはアンタゴニストなどのマイコバクテリア由来リポタンパク/リポペプチドに対する応答性の抑制物質若しくは促進物質のスクリーニングが可能となり、ひいては、マイコバクテリア属をはじめとする細菌による感染成立の分子機構の解明における新たな有用情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のTLR1ノックアウトマウス、野生型マウス及びターゲッティングベクターの遺伝子地図を示す図である。
【図2】本発明のTLR1ノックアウトマウスのサザンブロット分析の結果を示す図である。
【図3】本発明のTLR1ノックアウトマウスのノーザンブロット分析の結果を示す図である。
【図4】本発明のTLR1ノックアウトマウス及び野生型マウスにおける19kDリポタンパク質刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図5】本発明のTLR1ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるLPS及びPGN刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図6】本発明のTLR1ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるリポタンパク質、LPS刺激に応答したIL-6の産生の結果を示す図である。
【図7】本発明のTLR1ノックアウトマウス及び野生型マウスにおけるBCG刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図8】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるPam3CSK4刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図9】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるMALP-2刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図10】本発明のTLR1、TLR2及びTLR6の共発現のPam3CSK4刺激に誘導されたNF-κBの活性化の結果を示す図である。
【図11】本発明のHA標識TLR1の免疫沈降を行った結果を示す図である。
【図12】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるMyr3CSK4刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図13】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるLau3CSK4刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図14】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるLau2N-PamCSK4刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
【図15】本発明のTLR1ノックアウトマウス、TLR2ノックアウトマウス、及び野生型マウスにおけるJBT3002刺激によるTNFα産生の結果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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