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明細書 :高活性光触媒およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4357801号 (P4357801)
公開番号 特開2004-025032 (P2004-025032A)
登録日 平成21年8月14日(2009.8.14)
発行日 平成21年11月4日(2009.11.4)
公開日 平成16年1月29日(2004.1.29)
発明の名称または考案の名称 高活性光触媒およびその製造方法
国際特許分類 B01J  27/045       (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
FI B01J 27/045 M
B01J 35/02 H
B01J 35/02 J
請求項の数または発明の数 13
全頁数 12
出願番号 特願2002-184748 (P2002-184748)
出願日 平成14年6月25日(2002.6.25)
審査請求日 平成17年6月6日(2005.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000227250
【氏名又は名称】日鉄鉱業株式会社
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】田路 和幸
【氏名】岸本 章
【氏名】新子 貴史
個別代理人の代理人 【識別番号】100105647、【弁理士】、【氏名又は名称】小栗 昌平
【識別番号】100105474、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 弘徳
【識別番号】100108589、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 利光
【識別番号】100093573、【弁理士】、【氏名又は名称】添田 全一
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平10-310401(JP,A)
特開平07-313884(JP,A)
特開2001-096169(JP,A)
特開2001-190964(JP,A)
荒井健男他,ストラティファイドCdS光触媒を用いた可視光による水素生成,資源・素材学会春季大会講演集,2002年 3月,No. 2,p. 126-127
田路和幸,ストラティファイド光触媒を用いた太陽光による水素の生成,資源・素材,2001年 9月,No. C/D,p. 137-140
田路和幸,イオウ利用の新展開-太陽光を利用して硫化水素から水素を作る-,硫酸と工業,2002年 1月,Vol. 55, No. 1,p. 7-14
田路和幸,油滴表面でのストラティファイド形成とその触媒への応用,金属,1998年 4月,Vol. 68, No. 4,p. 307-314
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
カドミウム化合物を含有してなり、カプセル構造を有し、且つ白金を担持している平均粒径が100nm以下である光触媒であって、前記カプセル構造は、少なくともカドミウムとイオウを構成元素として含む超微粒子無機層からなる外殻と空洞からなり、該超微粒子無機層は粒径1~10nmの光触媒活性を有する粒子からなることを特徴とする光触媒。
【請求項2】
平均粒径が50nm以下である請求項1記載の光触媒。
【請求項3】
前記カドミウム化合物が硫化カドミウムである請求項1記載の光触媒。
【請求項4】
表面から内部にかけて貫通した孔を有していることを特徴とする請求項1記載の光触媒。
【請求項5】
前記孔を多数有していることを特徴とする請求項記載の光触媒。
【請求項6】
亜硫酸ナトリウム溶液と硫化ナトリウム溶液との混合液に硝酸カドミウム溶液を添加混合し、生成した粒子懸濁液の粒子に白金を担持させることにより、請求項1に記載の光触媒を得ることを特徴とする光触媒の製造方法。
【請求項7】
水酸化ナトリウムを含有する溶液に硝酸カドミウム溶液を混合することにより水酸化カドミウム粒子の懸濁液を調製し、この水酸化カドミウム粒子の懸濁液にイオウを含むナトリウム化合物溶液を添加混合し、生成した粒子懸濁液の粒子に白金を担持させることにより、請求項1に記載の光触媒を得ることを特徴とする光触媒の製造方法。
【請求項8】
前記水酸化ナトリウムを含有する溶液に塩化物を含有させることを特徴とする請求項記載の光触媒の製造方法。
【請求項9】
前記塩化物が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項記載の光触媒の製造方法。
【請求項10】
前記ナトリウム化合物が硫化ナトリウムであることを特徴とする請求項記載の光触媒の製造方法。
【請求項11】
得られた光触媒粒子を更に亜硫酸ナトリウムを含有する溶液に懸濁し、光を照射することを特徴とする請求項または記載の光触媒の製造方法。
【請求項12】
前記光が可視光であることを特徴とする請求項1記載の光触媒の製造方法。
【請求項13】
前記光が太陽光または擬似太陽光であることを特徴とする請求項1記載の光触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒およびその製造方法に関し、詳細には、触媒活性が高く、毒性がなく、寿命が長く、可視光をそのまま光触媒反応に利用することができ、特に水素発生用等に有用な光触媒およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽エネルギーから化学エネルギーを得る、すなわち、無限かつクリーンな水素エネルギーの利用は、人類が描いている一つの夢である。21世紀が抱えるエネルギー問題や化石エネルギーがもたらした二酸化炭素による地球の温暖化や酸性雨などの環境汚染もこのエネルギーの実用化により解決できる。
【0003】
A.Fujishima et.al, Nature, 238, 37(1972)に発表された本田・藤島効果は、光エネルギーを用いて水を酸素と水素に分解できることを示した最初の試みであった。その後、石油危機が全世界で問いただされた頃、この原理に基づいた光エネルギーを化学エネルギーに変換するための数多くの研究が活発に行われた。しかし、可視光領域での光エネルギー変換効率の改善がなされないまま現在に至っている。1980年から1990年にかけての活発な研究の成果は、光励起により生成した電子と正孔(ホール)が、水を分解する反応サイトに到達する前に、再結合することが、変換効率を決定することを示したことである。この結論に基づき反応サイト分離のために、層間化合物を利用する試みもなされた(S.Ikeda et. al., J. Mater. Res., 13, 852(1998))。しかし、徐々に変換効率の改善が成されたが、未だ、満足できる可視光領域での変換効率は達成されていない。それは、完全な反応サイトの分離、すなわち電子とホールの分離が達成されていないためである。
【0004】
先のような研究と同時に、溶液中のイオンの光吸収を利用した水素を生成する反応系の研究もなされた。J.Jortner, et. al., J. Phys. Chem., 68, 247(1964)において、ヨウ素イオンを含む酸性溶液中で、またK.Hara, et. al., J. Photochem. PhotoBiolo. A128, 27(1999)において、硫黄イオンを含むアルカリ溶液中で、高い量子効率で水素を生成することが示された。しかし、これらの反応は全て、光の波長250nm以下というエネルギーの高い紫外光により可能である。
【0005】
また、光触媒技術の応用は、環境汚染物質や悪臭成分・雑菌などの分解などの様々な化学反応を促進する特性を持つことから、抗菌効果のあるタイルや空気清浄機の抗菌・脱臭フィルターなどへの実用化が始まっている。さらに、有害物質に光触媒を作用させて有用な化学物質を得ることも可能である。例えば、原油の脱硫工程に応用することが考えられる。
【0006】
現在、一般的に行われている原油の脱硫工程は、原油を蒸留する際に、重質ナフサを水素化生成して原油に含まれるイオウ成分を全て硫化水素にして回収する。この硫化水素はクラウス法と呼ばれるプロセスを経て、イオウを酸化して回収する。クラウス法は、硫化水素の3分の1を酸化して亜硫酸ガスとし、これと残りの硫化水素とを反応させて元素イオウとするプロセスである。
【0007】
このプロセスでは、亜硫酸ガスと硫化水素の触媒反応だけではなく、加熱や凝縮を繰り返すために、膨大なエネルギーを要している。また、亜硫酸ガスの管理にコストがかかるなどの問題を有している。
硫化水素が溶解したアルカリ水に光触媒を加え、紫外線を照射し、その紫外線の光エネルギーを吸収して光触媒が発生する自由電子及び自由ホールにより、硫化水素が溶解したアルカリ水を酸化還元し、水素とイオウを得る方法、すなわち、光触媒により硫化水素を分解し、水素及びイオウを生成する方法が実用化できれば、より少ないエネルギーで有害物質である硫化水素を分解し、有用物質である水素及びイオウを生産することが可能になる。すなわち、環境問題の解決に寄与し、かつ、有用物質を安く生産できることになる。
【0008】
しかしながら、従来の光触媒は、以下に述べる解決すべき課題があった。第1に、触媒活性が低い。第2に、光触媒に毒性がある。光触媒に光照射すると、自由電子と自由正孔(ホール)が生じるが、再結合してしまう確率が高く、また、酸化還元反応により分解された化学物質が再び再結合して元の化合物に戻ってしまう確率も高く、触媒活性が低くなってしまう。
第3に、触媒の寿命が短い。光触媒に光照射すると、自由電子と自由正孔が生じるが、その強い酸化還元反応により、目的とする化学物質以外に触媒それ自身が酸化還元され、溶解してしまい、触媒作用を失うといった光溶解の問題がある。
【0009】
これに対して、特開2001-190964号公報では、触媒活性が高く、毒性がなく、寿命が長い光触媒を開示し上記3つの問題を解消した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この特開2001-190964号公報では、ZnSからなる光触媒しか開示されていない。ZnSのバンドギャップは紫外光領域であるため、無限のクリーンエネルギーである太陽光等の可視光をそのまま光触媒反応に利用することができなかった。
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、触媒活性が高く、毒性がなく、寿命が長く、可視光をそのまま光触媒反応に利用することができ、特に水素発生用に有用な光触媒およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記構成を採ることにより上記課題を解決することができた。
即ち本発明は以下の通りである。
(1)カドミウム化合物を含有してなり、カプセル構造を有し、且つ白金を担持している平均粒径が100nm以下である光触媒であって、前記カプセル構造は、少なくともカドミウムとイオウを構成元素として含む超微粒子無機層からなる外殻と空洞からなり、該超微粒子無機層は粒径1~10nmの光触媒活性を有する粒子からなることを特徴とする光触媒。
(2)平均粒径が50nm以下である前記(1)の光触媒。
(3)前記カドミウム化合物が硫化カドミウムである前記(1)の光触媒。
)表面から内部にかけて貫通した孔を有していることを特徴とする前記(1)の光触媒。
)前記孔を多数有していることを特徴とする前記()の光触媒。
【0012】
亜硫酸ナトリウム溶液と硫化ナトリウム溶液との混合液に硝酸カドミウム溶液を添加混合し、生成した粒子懸濁液の粒子に白金を担持させることにより、請求項1に記載の光触媒を得ることを特徴とする光触媒の製造方法
【0013】
)水酸化ナトリウムを含有する溶液に硝酸カドミウム溶液を混合することにより水酸化カドミウム粒子の懸濁液を調製し、この水酸化カドミウム粒子の懸濁液にイオウを含むナトリウム化合物溶液を添加混合し、生成した粒子懸濁液の粒子に白金を担持させることにより、前記(1)に記載の光触媒を得ることを特徴とする光触媒の製造方法。
)前記水酸化ナトリウムを含有する溶液に塩化物を含有させることを特徴とする前記()の光触媒の製造方法。
)前記塩化物が塩化ナトリウムであることを特徴とする前記()の光触媒の製造方法。
(1)前記ナトリウム化合物が硫化ナトリウムであることを特徴とする前記()の光触媒の製造方法。
【0014】
(11)得られた光触媒粒子を更に亜硫酸ナトリウムを含有する溶液に懸濁し、光を照射することを特徴とする前記()または()の光触媒の製造方法。
(1)前記光が可視光であることを特徴とする前記(1)の光触媒の製造方法。
(1)前記光が太陽光または擬似太陽光であることを特徴とする前記(1)の光触媒の製造方法。
【0015】
本発明の光触媒は、カドミウム化合物を含有してなるものであるため、その光触媒反応に無限のクリーンな自然エネルギーである太陽光等の可視光をそのまま利用することができ、かつ毒性がなく、寿命も長いものである。
また、従来のカドミウム化合物の単純な粒子からなる光触媒は、光エネルギー変換効率が極めて小さいものであった。
しかし、本発明の光触媒は、カドミウム化合物を含有して成る外殻と空洞を有したカプセル構造をしており、このカドミウム化合物を含有してなるカプセル外殻の外側面と内側面との間に電界が存在し、太陽光等の可視光照射によって生じた自由電子と自由ホールの再結合が減少し、酸化反応生成物と還元反応生成物との再結合も減少し、高い触媒活性を得ることができると考えられる。
上記の作用機構により、本発明は、触媒活性が高く、毒性がなく、寿命が長く、可視光をそのまま光触媒反応に利用することができる、特に水素発生用に有用なものとすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の光触媒およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明において、カドミウム化合物としては、触媒活性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、カドミウムと16族元素からなるものが挙げられ、具体的には、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム等が挙げられるが、最適には、硫化カドミウムである。
本発明のカプセル構造を有する光触媒の平均粒径は、100nm以下であれば特に限定されないが、粒径が小さくなるほど単位質量当りの表面積が大きくなることにより、その分光触媒活性も高くなるため好ましく、50nm以下であることが好ましい。
なお、カプセル構造を有する光触媒の平均粒径の測定は以下の方法にて行う。
数個から数十個の触媒粒子が写った電子顕微鏡写真を数枚撮影し、各々の粒子の長径を測定し、値を平均する。
【0017】
また、本発明の光触媒は、その光触媒活性を更に高めることを目的として、8~11族の金属を担持していることが好ましい。
8~11族の金属としては、Pt、Ru、Ir、Co、Rh、Cu、Pd、Niの中から選択された金属又はこれらの酸化物が用いられ、その中でも白金が最も好ましい。担持される量としては、特に限定されないが、0.1~10重量%の範囲が好ましい。
0.1重量%未満の場合、水素発生量が低下し、触媒の安定性が悪くなるという問題があり、反面、10重量%を超える場合、水素発生量が却って減少するのみならず、触媒の製造原価が増加するという問題を生じる。
【0018】
以下、本発明の光触媒の構造を説明する。
本発明にかかる光触媒は、カドミウム化合物を含有してなる外殻と空洞を有する。また、 本発明の光触媒の外殻は、1nm~10nmの粒径のカドミウム化合物の超微粒子層から成るストラティファイド構造をしており、本発明のような光触媒を、ストラティファイド光触媒ともいう。更に、本発明の光触媒のストラティファイド構造を有する外殻は、カドミウム(Cd)と前記16族の元素等の成分比が、層厚方向に変化した構造を有している可能性がある。これにより層厚方向に電界が存在し、太陽光等の可視光照射によって生じた自由電子と自由ホールの再結合が減少し、酸化反応生成物と還元反応生成物との再結合も減少し、高い触媒活性を得ることができると考えられる。なお、本発明の光触媒は、その外殻が1nm~10nmの粒径のカドミウム化合物の超微粒子層から成るストラティファイド構造をしているため、該超微粒子同志の隙間が連通した無数の孔を有していることになる。
【0019】
図1(A)は、本発明の光触媒の1態様である硫化カドミウム微粒子層状物質の集合体を撮影した透過電子顕微鏡写真である。図1(B)は図1(A)の拡大図である。
写真からわかるように、数ナノメータのCdS超微粒子で構成したカブセル構造をしていることがわかる。
図1(B)の拡大された一つの硫化カドミウム微粒子層状物質の外側の黒色部分は白金であることが微小領域EDXによる測定で確認されている。
【0020】
本発明の光触媒の製造方法としては、特に限定されないが、最も簡単な方法としては、数十~数百nmの光触媒活性を有さないカドミウム化合物の粒子を、前記の16族の元素等のイオンを含む水溶液中で粒子表面から溶解し、この数十~数百nmの粒子の溶解部近傍に1~10nm程度の光触媒活性を有するカドミウム化合物のナノ微粒子を析出させて製造する方法が挙げられる。
【0021】
上記光触媒活性を有さないカドミウム化合物としては、特に限定されないが、カドミウム酸化物またはカドミウム水酸化物が好ましい。
また、16族の元素等を含む水溶液としては、特に限定されないが、ナトリウム化合物溶液が好ましい。
即ち、本発明の光触媒の製造方法の1つとして、カドミウム酸化物またはカドミウム水酸化物粒子の懸濁液にナトリウム化合物溶液を添加混合する方法が挙げられる。
前記ナトリウム化合物としては、特に限定されないが、硫化ナトリウムが好ましい。
【0022】
上記の製造方法の特徴について、光触媒活性を有するカドミウム化合物の好ましい態様である硫化カドミウムを例に挙げて説明する。この場合、原料である酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム微粒子と硫化ナトリウム水溶液とを混合し、この混合液を撹拌すると、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムが水と反応してカドミウム酸イオンになり水溶液中に溶出する。このカドミウム酸イオンは硫化ナトリウム水溶液のイオウ・イオンと反応し、硫化カドミウムになる。この硫化カドミウムは原料である酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム粒子の表面に析出し、硫化カドミウム微粒子層を形成する。この硫化カドミウム微粒子層が形成されると、水がこの硫化カドミウム微粒子層を浸透し、原料である酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム表面に至り、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムと反応し、カドミウム酸イオンが生成する。このカドミウム酸イオンは上記硫化カドミウム微粒子層を拡散して、表面に達し、イオウ・イオンと反応し、硫化カドミウムになり硫化カドミウム微粒子層に析出する。硫化カドミウム微粒子層が成長するにつれ、カドミウム酸イオンが硫化カドミウム微粒子層を拡散し難くなり、化学量論比からずれた組成の硫化カドミウムが析出する。
【0023】
このカドミウム化合物(硫化カドミウム)微粒子層の生成速度を大きくするためには紫外線照射を行っても良い。すなわち、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム微粒子と硫化ナトリウム水溶液を混合し、紫外線照射すれば、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムが光溶解をおこすためカドミウム酸イオンが溶出し易くなり、カドミウム化合物微粒子層の成長が早くなる。
【0024】
また、このカドミウム化合物微粒子層の生成速度を大きくするためには硫化水素を溶解させても良い。すなわち、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム微粒子と水の混合液に硫化水素を溶解すると、イオウ・イオンを含む弱酸性溶液となり、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムは弱酸性溶液に良く溶けるため、同様にカドミウム化合物微粒子層の成長が早くなる。
【0025】
このカドミウム化合物微粒子層の生成速度を大きくするには紫外線照射と硫化水素の溶解を組み合わせても良い。すなわち、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム微粒子と硫化ナトリウム水溶液と硫化水素を混合し、紫外線を照射し、攪拌すれば、さらに、カドミウム化合物微粒子層の成長が早くなる。
上記したこれらの方法によって、本発明の光触媒であるカドミウム化合物微粒子層を製造することができる。
【0026】
すなわち、硫化ナトリウム(Na2S)水溶液中で、酸化カドミウム(CdO)または水酸化カドミウム(Cd(OH)2)が、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム粒子の表面から、カドミウム酸イオン(CdO2-)の形で溶出する。このカドミウム酸イオンは、硫化ナトリウム(Na2S)水溶液のイオウイオン(S2-)と反応し、カドミウム化合物(CdS)になる。このカドミウム化合物は酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムの表面に析出し、カドミウム化合物微粒子層を形成する。このカドミウム化合物微粒子層が形成されると、水がこのカドミウム化合物微粒子層を浸透し、原料である酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムの表面に到り、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウムと反応し、カドミウム酸イオンが生成する。このカドミウム酸イオンはカドミウム化合物微粒子層を拡散して、このカドミウム化合物微粒子層が酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム粒子と対向する面と反対側の面、すなわち、カドミウム化合物微粒子層の表面に到る。この表面で、このカドミウム酸イオンは、イオウ・イオンと反応し、カドミウム化合物になりカドミウム化合物微粒子層に析出し、カドミウム化合物微粒子層が成長していくと考えられる。
【0027】
このような生成過程であるので、酸化カドミウムまたは水酸化カドミウム粒子の一部がカドミウム酸イオンとして溶出して無くなった分の体積の欠損が生じるため、内部に空洞が生じると考えられる。
上記のように、化学反応の一方の成分が拡散によって供給され、かつ、この反応生成物がこの拡散層を形成する場合、拡散層の成長に伴い、一方の成分の供給量がしだいに減少し、化学成分比が変化した層が形成されると考えられる。すなわち、本発明にかかる光触媒であるカドミウム化合物微粒子層は、カドミウム(Cd)とイオウ(S)の成分比が、層厚方向に変化した構造を有すると考えられる。
【0028】
上記の製造方法を用いられる光触媒活性を有さないカドミウム化合物粒子としては、市販のものを用いても良く、また、適宜作成したのを用いても良い。
光触媒活性を有さないカドミウム化合物の作成方法としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウムを含有する溶液に硝酸カドミウム溶液を混合する方法が挙げられる。
また、製造される光触媒の粒径は、その触媒作用の目的に応じて適宜制御することができ、その粒径の制御方法としては、前記光触媒活性を有さないカドミウム化合物粒子の粒径を制御することが挙げられる。
該カドミウム化合物粒子の粒径を制御する方法としては、特に限定されないが、該カドミウム化合物粒子の作成において、前記水酸化ナトリウムを含有する溶液に、あらかじめ塩化物を溶解させておくことが好ましい。
塩化物としては、特に限定されず、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられるが、この場合、塩化ナトリウムが好ましい。
【0029】
また、本発明の光触媒の製造方法の他の形態としては、前記光触媒活性を有さないカドミウム化合物粒子を用いないで、直接、光触媒活性を有するカドミウム化合物を含有するカプセル外殻を形成する方法が挙げられる。
上記の製造方法としては、例えば、ナトリウム化合物溶液にカドミウム塩溶液を滴下投入する方法が挙げられる。
この方法の作用機構としては、明確ではないが、ナトリウム化合物溶液に滴下されたカドミウム塩が一旦カドミウム水酸化物等の微小な固相となり、次いで瞬時に光触媒活性を有するカドミウム化合物となり、本発明の光触媒のカプセル外殻を構成するものと思われる。
前記ナトリウム化合物溶液としては、亜硫酸ナトリウムまたは硫化ナトリウムを含有していることが好ましい。また、前記カドミウム塩が硝酸カドミウムであることが好ましい。
【0030】
また、本発明の光触媒は、前述のように、白金等の8~11族の金属を担持していることが好ましが、その担持方法としては、特に限定されない。
また、上記製造方法等により得られた光触媒粒子は、その光触媒活性を高めるために、更に亜硫酸ナトリウムを含有する溶液に懸濁し、光を照射されることが好ましい。
前記光としては、太陽光または擬似太陽光等の可視光が好ましい。
以下に本発明の光触媒の具体的製造方法を列挙する。
【0031】
光触媒製造方法の第一の実施の形態:
水酸化ナトリウム溶液に塩化ナトリウムを溶解し、この液に硝酸カドミウム溶液を滴下混合し、室温で撹拌し、これにより、白色を有した水酸化カドミウム粒子懸濁液が得られる。この懸濁液に硫化ナトリウム溶液を混合し攪拌する。これにより、CdS粒子懸濁液となる。更にヘキサクロロ白金酸溶液を添加し、攪拌した後、水銀灯式紫外線照射装置を用いて紫外光を照射する。
上記処理後、ニトロセルロース製メンブランフィルター(孔径0.2μm)で吸引濾過・蒸留水洗浄後、60℃の恒温槽で乾燥する。
【0032】
光触媒製造方法の第2の実施の形態:
硫化ナトリウム溶液及び/または亜硫酸ナトリウム溶液を脱イオン水で希釈し、この液に硝酸カドミウム溶液を滴下速で滴下投入し攪拌する。これにより、カプセル状のCdS粒子懸濁液となる。更にヘキサクロロ白金酸溶液を添加し、攪拌した後、水銀灯式紫外線照射装置を用いて紫外光を照射する。
上記処理後、メンブランフィルターで吸引濾過・蒸留水洗浄し、60℃の恒温槽で乾燥する。
【0033】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
(光触媒製造方法1)
0.1M水酸化ナトリウム溶液100mlに塩化ナトリウム4.0gを溶解した(▲1▼液)。この▲1▼液と0.01M硝酸カドミウム溶液100mlを混合し、室温で撹拌した。これにより、白色を有した水酸化カドミウム粒子懸濁液が得られた(▲2▼液)。▲2▼液に0.1M硫化ナトリウム溶液5mlを混合した。これにより、オレンジ色から茶の中間色を有した粒子懸濁液(▲3▼液)となる。▲3▼液に9.65×10-3Mヘキサクロロ白金酸溶液10ml添加し、2分間攪拌した(▲4▼液)に水銀灯式紫外線照射装置を用いて紫外光を5分間照射した(▲5▼液)。
【0034】
▲5▼液をフィルター径47mm、孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて吸引ろ過した(▲6▼)。▲6▼で得た固形分をフィルターごとデシケーターに入れ、常温~60℃にて乾燥した。これにより、フィルター上に赤褐色を有した粒子が得られた(▲7▼)。▲7▼で得た粒子を、0.1M硫化ナトリウム溶液50mlと1M亜硫酸ナトリウム溶液10mlの混合液に懸濁させ、この懸濁液に500W-Xeランプを用いて、擬似太陽光を照射した。これにより、粒子色が赤褐色から緑褐色に変化し水素が発生した。上記懸濁液を吸引ろ過し、フィルターごと光触媒粉を乾燥する。これにより、フィルター上に緑褐色を有した光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約110mg、粒径は46nmであった。
【0035】
〔実施例2〕
(光触媒製造方法2)
光触媒製造方法1(実施例1)の▲1▼液の0.1M水酸化ナトリウム溶液100mlの代わりに、0.1M亜硫酸ナトリウム溶液100mlを使用した以外は、実施例1と同じ操作を行った。フィルター上に緑褐色を有した光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約110mg、粒径は62nmであった。
【0036】
〔実施例3〕
(光触媒製造方法3)
0.1M硫化ナトリウム溶液1mlと1M亜硫酸ナトリウム溶液1mlを混合した(▲1▼液)。この▲1▼液を脱イオン水で希釈して100mlとした(▲2▼液)。▲2▼液に0.05M硝酸カドミウム溶液10mlを13.9ml/min.の滴下速で滴下投入し、投入後2分間攪拌した。これにより、黄からオレンジの中間色を有した粒子懸濁液となった(▲3▼液)。▲3▼液に9.65×10-3Mヘキサクロロ白金酸溶液1.5ml添加し、2分間攪拌した(▲4▼液)。▲4▼液に水銀灯式紫外線照射装置を用いて紫外光を2分間照射した。これにより、オレンジから茶の中間色を有した粒子懸濁液となった(▲5▼液)。▲5▼液をフィルター径47mm、孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて吸引ろ過した(▲6▼)。▲6▼で得た固形分をフィルターごとデシケーターに入れ、常温~60℃にて乾燥した。これにより、フィルター上に赤褐色を有した粒子が得られた(▲7▼)。▲7▼で得た粒子を、0.1M硫化ナトリウム溶液50mlと1M亜硫酸ナトリウム溶液10mlの混合液に懸濁させ、この懸濁液に500W-Xeランプを用いて、擬似太陽光を照射した。これにより、粒子色が赤褐色から緑褐色に変化し水素が発生した。
上記懸濁液を吸引ろ過し、フィルターごと光触媒粉を乾燥する。これにより、フィルター上に緑褐色を有した光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約40mg、粒径は70nmであった。
【0037】
〔比較例1〕
光触媒製造方法1(実施例1)の▲2▼液の粒子懸濁液の代わりに、市販の試薬CdO(高純度化学社製、粒径:300~400nm)100mgの懸濁液を使用した以外は、実施例1と同じ操作(硫化処理及び白金の担持処理を含む)を行った。フィルター上に緑褐色を有した光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約110mg、粒径は355nmであった。
【0038】
〔比較例2〕
0.1M硫化ナトリウム溶液0.5mlを脱イオン水で希釈して50mlとした(▲2▼液)。▲2▼液に0.01M硝酸カドミウム溶液50mlを投入し混合する。これにより、オレンジ色から茶の中間色を有したCdSの粒子懸濁液(1次粒径:5nm)となった(▲3▼液)。この▲3▼液を使用した以外は、実施例1と同じ▲4▼、▲5▼の操作(白金の担持処理)を行い、フィルター上に茶褐色を有したカプセル構造ではない光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約50mg、粒径は7nmであった。
【0039】
〔比較例3〕
比較例2と同じ操作を行った。但し、実施例1と同じ▲4▼、▲5▼の操作(白金の担持処理)を削除した。フィルター上にオレンジ色から茶の中間色を有したカプセル構造ではない光触媒粒子が得られ、触媒粒子量は約50mg、粒径は6nmであった。
【0040】
〔比較例4〕
比較例3の調製したCdSの粒子の代わりに、市販の試薬CdS(高純度化学社製、粒径:30~40nm)100mgの懸濁液を使用した以外は、比較例3と同様に白金の担持処理を削除した操作を行い、フィルター上に茶褐色を有したカプセル構造ではない光触媒粒子を得た。触媒粒子量は約100mg、粒径は42nmであった。
【0041】
<光触媒の評価>
上記、実施例および比較例から得られた光触媒粒子の水素発生量を下記の試験方法により測定した。
(水素発生量測定試験方法)
光触媒粒子100mgをビュレット等から構成される水素発生量測定装置に仕込んだ。次ぎに0.1M硫化ナトリウム溶液140mlを水素発生量測定装置に仕込んだ。
500W-Xeランプを用いて、強度50mW/cm2の擬似太陽光を装置下
方より照射し、10分毎の水素発生量を測定した。
【0042】
水素発製生量の測定に用いた装置を図2に示す。図2に示すように、この装置は、石英ガラスで製作した光反応部分1と、発生した水素の定量を行う水素定量部分2と、発生した水素ガスの体積分の硫化ナトリウム水溶液3を溜めることによって、水素圧の上昇を防ぐ溶液溜4と、擬似太陽光照射用の500W-Xeランプ5と、擬似太陽光6を集光するためのレンズLと、擬似太陽光6を反射し、光触媒7に照射するための反射鏡8とで構成されている。光分解反応開始時に系全体を硫化ナトリウム水溶液3で満たし、一定量の光触媒7を光反応部分1の底に沈殿させ、発生ガス回収口9を閉じ、500W-Xeランプを点灯する。水素定量部分7で一定照射時間ごとに水素発生量を測定する。
【0043】
<水素発生量測定試験結果>
図3は、水素発製生量の可視光照射時間依存性を示している。この性能比較を示すグラフから明らかなように、本発明に係わる実施例の光触媒は、上記の様に、それぞれ満足すべき結果を得たが、各比較例の光触媒による水素発生量測定試験結果は不満足なものであった。
特に、実施例1による光触媒粒子では、照射開始1時間後に水素発生速度最大値74.8ml/hrを示し、照射開始後4時間の総水素発生量は210.3mlであり、実施例3による光触媒粒子では、照射開始1時間後に水素発生速度最大値70.8ml/hrを示し、照射開始後4時間の総水素発生量は189.2mlであった。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明の光触媒は、触媒活性が高く、毒性がなく、寿命が長く、可視光をそのまま光触媒反応に利用することができ、かつ水素発生用等に有用である。
そして本発明の光触媒を、硫化水素を分解し水素とイオウを製造する方法に用いれば、環境問題の解決に寄与し、かつ、有用物質を安く生産できる等々の実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明による光触媒の生成課程を示す電子顕微鏡写真、(B)はその拡大図である。
【図2】水素発生量の測定に用いた装置の構成図である。
【図3】本発明の光触媒と従来の光触媒の水素発生量性能比較図である。
【符号の説明】
1 光反応部分
2 水素定量部分
3 硫化ナトリウム水溶液
4 溶液溜
5 500W-Xeランプ
6 紫外線
7 光触媒
8 反射鏡
9 発生ガス回収口
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2