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明細書 :リグノセルロース系材料及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4081579号 (P4081579)
公開番号 特開2003-165844 (P2003-165844A)
登録日 平成20年2月22日(2008.2.22)
発行日 平成20年4月30日(2008.4.30)
公開日 平成15年6月10日(2003.6.10)
発明の名称または考案の名称 リグノセルロース系材料及びその利用
国際特許分類 C08L  97/02        (2006.01)
B27N   3/04        (2006.01)
C08J   5/00        (2006.01)
FI C08L 97/02
B27N 3/04 Z
B27N 3/04 B
C08J 5/00 CFJ
請求項の数または発明の数 3
全頁数 17
出願番号 特願2002-255721 (P2002-255721)
出願日 平成14年8月30日(2002.8.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成14年3月10日 日本木材学会発行の「第52回日本木材学会大会 研究発表要旨集」に発表
優先権出願番号 2001280009
優先日 平成13年9月14日(2001.9.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年7月7日(2004.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】木方 洋二
【氏名】高須 恭夫
【氏名】酒井 昌夫
個別代理人の代理人 【識別番号】501312912、【氏名又は名称】久保 泰男
【識別番号】100064344、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 英彦
【識別番号】100087907、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 鉄男
【識別番号】100095278、【弁理士】、【氏名又は名称】犬飼 達彦
【識別番号】100105728、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 敦子
【識別番号】100064344、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 英彦
審査官 【審査官】内田 靖恵
参考文献・文献 特開平08-224709(JP,A)
特開平11-323752(JP,A)
特開平10-043712(JP,A)
特開2001-205604(JP,A)
特開昭60-206604(JP,A)
特開2002-225003(JP,A)
特開2002-192508(JP,A)
調査した分野 C08L 97/02
C08H 5/04
B27K 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
リグノセルロース含有材料を150℃以上250℃以下の温度で水蒸気処理して、リグノセルロース系熱可塑性材料を含む組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥する工程と、乾燥させた組成物を110℃以上230℃以下に加熱して溶融させた状態で、10MPa以上80MPa以下の圧力を加える圧縮成形法により成形する工程とを有する、リグノセルロース系成形体の製造方法。
【請求項2】
リグノセルロース含有材料を150℃以上250℃以下の温度で水蒸気処理して、リグノセルロース系熱可塑性材料を含む組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥する工程と、乾燥させた組成物を110℃以上230℃以下に加熱して溶融させた状態で、押出成形法又は射出成形法により成形する工程とを有する、リグノセルロース系成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法により製造したリグノセルロース系成形体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、リグノセルロース系材料とこの材料を利用する技術に関し、詳しくは、水蒸気処理により改質され、可塑性を発現するリグノセルロース系可塑性材料とこれを利用する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
資源の有効利用、自然や人体に悪影響を与える化学物質の使用の低減、有害物質の廃棄やCO2排出の低減を目的として、植物資源由来のリグノセルロース含有材料を利用する試みが成されている。
リグノセルロース含有材料としては、木材や草本類から得られるリグノセルロース材料が典型的である。
これらのリグノセルロース含有材料は、典型的には、ファイバー状あるいはチップ状とされ、熱硬化性接着剤をバインダーとする各種ボードやパネル等の成形体材料として用いられている。また、熱硬化性樹脂材料中に木粉などを添加して押出し成形などにより成形体を得ることも行われている。
【0003】
また、リグノセルロース含有材料には、廃棄されるかあるいは未だ利用されていないものもある。たとえば、家屋や家具の解体廃材、新聞紙やダンボールなどの古紙、刈り草、落ち葉、刈り枝、間伐材、サトウキビなどの圧搾滓などの産業廃棄物あるいは農業廃棄物である。これらのリグノセルロース含有材料は、一部がボードやパネル材料、発酵堆肥、敷料、固形燃料に再利用されているものの、破砕や乾燥などの加工コストの関係から、有用な部分を有しながらも、依然として廃棄・焼却処分が行われているのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
有用資源の循環利用、地球温暖化抑制の観点から、近年、廃棄・焼却処分されていたリグノセルロース含有材料についてもさらなる利用が求められるようになってきている。しかしながら、上述のように、廃棄あるいは未利用リグノセルロース含有材料は、不均質、水分含量が高いなどという観点から、再利用のためには、各種工程を経る必要があった。また、さらに、循環利用を促進するには、できるだけ他の材料を含まないことも望まれる。
【0005】
一方、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理した材料を、乾燥し、解繊し、加熱及び圧締して、水蒸気処理によって生成する成分が有する接着力を利用して強固なボードを得る技術が知られている。しかしながら当該ボードは、材料形態であるファイバーを主体とするファイバーボードであるため、ボード以外への成形加工は困難であった。しかしながら、より広い再利用の途を確保するには、ボード以外への新たな用途確保が必要である。
【0006】
そこで、本発明では、簡易な処理でしかも広範囲の用途を確保できるリグノセルロース系材料及びその利用技術を提供することを、その目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理して得られるリグノセルロース系材料につき種々検討した。その結果、当該処理後のリグノセルロース系材料を加熱して、当該材料の流動を発現させうることを見出し、さらに、当該流動による可塑性に基づいて、一般的な樹脂成形に適用される成形加工を適用できることを見出し、本発明を完成した。また、一旦硬化後に、加熱することにより再度可塑化できることも見出した。
本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0008】
(1)リグノセルロース含有材料を150℃以上250℃以下の温度で水蒸気処理して、リグノセルロース系熱可塑性材料を含む組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥する工程と、乾燥させた組成物を110℃以上230℃以下に加熱して溶融させた状態で、10MPa以上80MPa以下の圧力を加える圧縮成形法により成形する工程とを有する、リグノセルロース系成形体の製造方法。
(2)リグノセルロース含有材料を150℃以上250℃以下の温度で水蒸気処理して、リグノセルロース系熱可塑性材料を含む組成物を得る工程と、前記組成物を乾燥する工程と、乾燥させた組成物を110℃以上230℃以下に加熱して溶融させた状態で、押出成形法又は射出成形法により成形する工程とを有する、リグノセルロース系成形体の製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の方法により製造したリグノセルロース系成形体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理して得られる、リグノセルロース系熱可塑性材料を提供する。
また、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理して得られるリグノセルロース系材料を含む組成物を加熱して前記リグノセルロース系材料を流動させることにより当該組成物を可塑化して成形する工程を備える、リグノセルロース系成形体の製造方法とこの製造方法によって得られる成形体を提供する。
さらに、リグノセルロース系成形体の製造方法であって、前記成形体を加熱して可塑化し前記成形体と異なる形状を付与する工程を備える、方法も提供する。
【0010】
リグノセルロース含有材料が水蒸気処理されることにより、当該材料中に含まれていたセルロースあるいはヘミセルロースなどのセルロース系成分が加水分解等を受けて分解成分が生成される。また、当該剤材料中に含まれていたリグニン系成分も変性あるいは分解され、分解成分が生成される。したがって、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理して得られるリグノセルロース系材料は、セルロース系分解成分とリグニン系分解成分とを含有する。かかる材料は、理論的に十分に解明されてはいないものの、加熱により、少なくともその一部が溶融し、流動し、可塑性を発現する。また、この流動により可塑化後、一旦固化された当該材料は、再び加熱することにより、流動し、可塑性を発現する。したがって、当該リグノセルロース系材料は、加熱により可塑性を付与できる熱可塑性材料として機能する。同時に、当該リグノセルロース系材料を含む組成物を、加熱することにより、この組成物を流動化し、可塑性を発現させることができる。
したがって、これらの発明によれば、貴重な植物由来資源の循環利用を実現することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
以下の説明においては、まず、本発明の熱可塑性材料について説明し、次いで、当該熱可塑性材料を用いた成形体の製造方法について説明する。
【0012】
(熱可塑性材料)
本発明の熱可塑性材料(以下、本材料という。)は、リグノセルロース含有材料を水蒸気処理して得られる。本明細書において「リグノセルロース含有材料」とは、リグニンとセルロースとを含有する材料であればよい。好ましくは、植物細胞壁を構成するリグノセルロースの形態で含有する。したがって、リグノセルロース含有材料は、好ましくは、種々の樹木、ケナフ、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類の全体あるいは一部である。また、リグノセルロース含有材料には、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈り草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの産業あるいは農産廃棄物を包含する。リグノセルロース含有材料は、セルロースとリグニンと複合体形態でなく、それぞれ別個に含有する形態で構成されていてもよい。また、これらの個別の材料を複合形態のリグノセルロースを含有するリグノセルロース含有材料に添加してもよい。したがって、リグノセルロース含有材料は、たとえば、殆どリグニンを含まない上質紙の古紙とパルピングの工程で廃棄物として得られるリグニン含有画分とすることでもできる。
【0013】
本発明においては、これらのリグノセルロース含有材料を1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、材料の均質性の観点、処理条件強度の抑制の観点からは、単独かあるいは2種~3種程度を組み合わせて使用することが好ましい。
水蒸気処理をするにあたっては、リグノセルロース含有材料のみとすることが好ましいが、必要に応じて、リグノセルロース以外の材料、たとえば、グルコースなどの糖類、リグニン成分、酸、水分を適宜添加することができる。
【0014】
水蒸気処理に供するリグノセルロース含有材料の大きさにより、水蒸気処理による分解成分の生成程度を制御することができる。
リグノセルロース含有材料は、水蒸気処理を均一に行うことができるように、細分化されていることが好ましい。細分化されていると、水蒸気処理や乾燥、粉砕の各工程で必要とされる時間も短縮される。特に、リグノセルロース含有材料は、小片化ないし微粉末化、具体的には、フレーク又はウェーハ等の薄片状に形成されていると、取り扱いやすい。大きさは、例えば、厚さ1mm以下で5cm×5cm以下程度の大きさ、好ましくは、厚さ0.5mm以下で2cm×2cm以下程度とすることができる。鋸くずやプレーナ屑等をそのまま用いることもできる。
【0015】
リグノセルロース含有材料の含水率(乾量基準)は、120%(以下、含水率においては重量%を意味する。)以下であることが好ましい。含水率が120%を超えると、水蒸気処理によってリグノセルロース含有材料中に生成する分解成分が流出しやすくなり、有効量の分解成分が処理後のリグノセルロース系材料に保持されにくくなるからである。より好ましくは、8%以上100%以下である。かかる範囲であると、リグノセルロース含有材料全体を均一に水蒸気処理して分解成分を生成させると同時に分解成分の流出を効果的に抑制できて、好ましい流動性と成形性とを備える熱可塑性材料を得ることができる。8%未満であると、水蒸気による暴露が不均一になりやすく、このため、分解成分の生成も不均一になり、流動性の良好な熱可塑性材料を得られにくくなる。一方、100%を超えると、水蒸気処理中にリグノセルロース含有材料中の自由水が遊離しやすくなり、この自由水の遊離とともに分解成分がリグノセルロース含有材料から流出しやすくなり、得られるリグノセルロース系材料の熱流動性が低下する。より好ましくは、15%以上100%以下である。さらに、好ましくは、30%以上100%以下である。
含水率は、リグノセルロース含有材料を乾燥する工程においてその程度を調整することができる。逆に、含水率は、リグノセルロース含有材料に対して外部から水分を付与することによっても調整することができる。
【0016】
(水蒸気処理)
水蒸気処理は、各種形態で実施することができるが、好ましくは、飽和水蒸気あるいは過熱水蒸気下で加熱することによって行われる。具体的には、耐圧容器内で、高圧下において、加熱水蒸気にリグノセルロース含有材料を曝すことによって行う。
水蒸気処理は、約60℃以上で加熱することが好ましく、また、上限は好ましくは約260℃以下である。60℃以上250℃以下であると、ヘミセルロース、リグニン等の分解を行う一方、分解縮合等の副反応を抑制することができる。好ましくは、約110℃以上約230℃以下に加熱する。より好ましくは、約150℃以上約230℃以下とする。最も好ましくは、約200℃以上約230℃以下とし、さらに好ましくは220℃とする。
【0017】
水蒸気処理は、加熱温度が約110℃以上約230℃以下のとき、例えば、数十秒から数十分間程度処理すればよい。処理時間は、処理温度が低い場合にはより長くすることが好ましく、処理温度が高い場合には、より短くすることができる。また、リグノセルロース含有材料が大きい場合には、より長くすることが好ましく、同材料が小さい場合には、より短くすることができる。
上述したようなフレーク状にまで細分化されたリグノセルロース含有材料では、加熱温度が110℃以上230℃以下のとき、数十秒~10分程度処理すれば良い。好ましく約1分~約5分である。好ましくは、約2分~3分程度である。一方、より大きな状態のままのリグノセルロース材料を用いた場合は、15分以上必要とされることもある。
好ましい処理温度である200℃以上230℃以下の場合、数十秒~5分程度の加熱で良好な処理状態を得ることができる。たとえば、一般的に入手しやすいプレーナ屑(典型的には、厚さ1mm以下で5cm×5cm以下程度の大きさ、好ましくは、厚さ0.5mm以下で2cm×2cm以下程度の細片)の場合、2分から5分程度で好ましい処理状態を得ることができる。
【0018】
なお、製造される成形材料が黄色、褐色、茶色等に変色したり、特有の匂いを備えることを防ぐためには、水蒸気処理は、200℃未満の温度で行われることが好ましい。
【0019】
水蒸気処理を終了させるときは、徐々に圧力を下げることもできるし、一挙に大気圧まで開放することもできる。大気圧まで一挙に開放する場合には、処理装置内のセルロース含有材料内部の水分が蒸気化されることにより、セルロース含有材料内で爆発が生じてセルロース含有材料の組織が破壊される。この結果、セルロース含有材料が細分化されて繊維状や粉末状等に粉砕することができる(以下、高圧状態から一挙に圧力開放することを、爆砕という。また、加圧容器内で蒸煮後に一挙に圧力開放することを蒸煮・爆砕処理という。)。通常、爆砕を採用する場合には、蒸煮・爆砕が連続して行われる。蒸煮・爆砕処理の概念を図1に例示する。爆砕によれば、その後の粉砕工程が容易になる。また、乾燥工程も効率的に実施されるようになる。
なお、爆砕を実施する場合には、水蒸気処理における加熱温度は、180℃以上260℃以下であることが好ましい。より好ましくは、約200℃以上約230℃以下とする。
【0020】
このような水蒸気処理により、本材料を得ることができる。本材料には加水分解あるいは熱分解成分が生成され、当該分解成分が組織内に保持されあるいは組織から材料表面に浸出した状態となっている。
【0021】
(乾燥)
水蒸気処理後、本材料を乾燥することが好ましい。水分が多量に存在すると、本材料を加熱して流動化させる際、水分が気化して成形性あるいは流動性を損なう可能性がある。また、分解成分が水分の蒸発とともに移動して流動性や成形性を損なう可能性がある。
【0022】
乾燥工程は、一般には、本材料の含水率(乾量基準)が28%以下となるまで実施することが好ましい。より好ましくは、12%あるいは気乾含水率まで乾燥する。さらに好ましくは8%以下となるまで乾燥する。
【0023】
乾燥は、常温下でも高温下でも行い得るが、好ましくは、水蒸気処理の後、積極的に乾燥する。水蒸気処理後、早期に水分を蒸発させることにより、水分とともに水溶性の分解成分が離脱することを抑制して、分解成分をセルロース含有材料に多く残留させることができる。
なお、積極的な乾燥とは、水分蒸発を促進するための送風および/または熱を付与しながら乾燥させることをいう。具体的には、水蒸気処理温度以下の高温下での乾燥や、常温下での送風等による乾燥である。
なお、含水率は、JIS Z 2101木材の試験方法 3.2 含水率に準じて測定することができる。
【0024】
(粉砕)
水蒸気処理後において、粉砕は、必要に応じて行うことができる。例えば、成形材料を適用しようとする用途に本材料の粒径が適するように粉砕することができる。
本成形用組成物とする際の粒径は特に限定しない。1000μm程度でも、溶融時の流動性を十分確保することができる。押出し成形や射出成形のためのメルトフローを考慮すれば、好ましくは、約800μm以下であり、約200μm以下がさらに好ましく、より好ましくは180μm以下である。さらに好ましくは約100μm以下であり、一層好ましくは約90μm以下である。また、約45μm以下であってもよい。一方、二次加工への適性を考慮すると好ましくは約90μm以上である。
フローに関しては、粒径の他、粒度分布位も影響する。ある程度粒度分布を有する方が高い流動性を得ることができる。
全体的に好ましい範囲としては、約45μm以上約180μm以下であり、より好ましくは、約45μm以上約90μm以下であり、また、約90μm以上約180μm以下である。
なお、粒子形状は、特に限定しないで、薄片状、球状、不定形状、繊維状等とすることができる。
【0025】
粉砕には、例えばウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサー等の機械を用いることができる。水蒸気処理し乾燥したリグノセルロース含有材料は、組織が脆化されているために簡単に破壊される。このため、単に粉砕するのに比較して小さな動力、短時間で微粉末に形成することができる。したがって、粉砕工程で熱が発生することもなく、安全にかつ省コストで粉砕することができる。
粉砕では、目標とされる成形材料の最大粒径以下の目開きの篩を用いて篩い分けすることができる。
なお、乾燥後には、粉砕のみならず、造粒も可能である。分解成分は接着性を有するため、造粒して、粒径を均質化したり、流動性を改善したりすることができる。また、造粒に際して、コーティング材を適用することにより、新しい複合成形材料を得ることもできる。
【0026】
本材料は、少なくともセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの分解成分を保持している。また、多くの場合、分解されていないリグニンおよび/またはセルロースを含有している。本材料は、既に述べたように、加熱することにより流動し、可塑性を発現する。結果として、このため、本材料は可塑化剤として使用できる。加熱流動は、一旦固化後も可能である。また、本材料を含む組成物を熱可塑性材料として使用でき、典型的には、熱による可塑化を利用した成形材料として使用できる。好ましくは、熱可塑性成形用材料として使用する。
推論であって、本発明を拘束するものではないが、本材料の少なくとも一部であって、特に、粒子表面に存在する分解成分が溶融することにより、粒子の集合体全体に流動性と可塑性とを付与するものと思われる。したがって、本材料は、加熱により可塑性を発現するとき、完全に溶融樹脂化している場合もありうるが、多くの場合、溶融物を一部に含み、本材料の構成粒子に由来する、不定形状、球状、繊維状、あるいは薄片状等の各種形状粒子が含んでいると考えられる。
【0027】
(本材料を含む組成物)
本発明の組成物は、本材料を含有すれば足りる。
本組成物には、本組成物を加熱することにより、本材料が流動化あるいは溶融樹脂化して、本組成物自体に可塑性を発現させうる程度に本材料を含有していることが好ましい。したがって、好ましくは、本成形用組成物は、本材料を主として含有する。具体的には組成物に用いる樹脂材料100重量部のうち本材料を20重量部以上99重量部以下含有し、より好ましくは、40重量部以上99重量部以下含有する。また、本材料のみからなる組成物とすることもできる。
【0028】
組成物中に含めることのできる他の樹脂材料としては、たとえば、通常の熱可塑性樹脂材料、熱硬化性樹脂材料、生分解性樹脂材料を使用することができる。熱可塑性樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、塩化ビニルなどを用いることができるが、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。好ましくは、フェノール樹脂を用いることができる。
生分解性樹脂材料を用いることにより、成形体全体としての生分解性を容易に確保することができる。なお、生分解性樹脂材料としては、ポリ乳酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ポリコハク酸ブチレン等の脂肪族ポリエステル材料から選択される1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。これらの脂肪族ポリエステル材料は、優れた生分解性と入手容易な点において好ましい。
【0029】
なお、本組成物、特に、成形用組成物には、樹脂材料の他、強度確保や賦形性のための無機あるいは有機フィラー、可塑剤、着色剤、揮発性溶媒などの通常の成形用組成物が含有することのできる各種添加剤を含むことができる。無機フィラーとしては、ガラス、金属、炭素系材料、およびセラミックス材料からなる、チップ状、球状、針状、及びファイバー状粒子等を挙げることができる。また、無機フィラーとしては、たとえば、クレーなどの天然物を用いることもできる。有機フィラーとしては、リグノセルロース系材料(薄片、球状、不定形状粒子やファイバーを含む)、タンパク質系材料(粒子やファイバーを含む)、あるいは合成樹脂材料(粒子あるいはファイバー)、木粉などを利用することができる。
【0030】
(本材料あるいは本組成物の利用)
本材料、あるいは本材料を含む本組成物は、加熱により流動性を発現し、可塑性を有するようになる。さらに、冷却により固化する。本材料の可塑性を利用することで、熱可塑性を利用する成形用組成物、可塑剤組成物、充填剤組成物等の各種組成物に適用することができる。
成形用組成物としての使用に際しては、可塑時に適当な形状付与工程を実施することで容易に成形体を得ることができる。成形方法は、押出し成形、射出成形他、各種樹脂成形法を採用することができる。
また、充填剤組成物としての使用に際しては、可塑性を利用して、充填性が発揮され、充填後にはシール性が発揮される。特に、本充填剤組成物は、木製品の一部を代替するような充填剤組成物として使用することができる。充填剤組成物の適用においては、加熱時の可塑性を利用して、吐出、噴射などの適用手段を採用することができる。
可塑剤組成物としての使用に際しては、加熱により他の材料を可塑化させることができるとともに、本材料は、同時に、フィラーとしても機能する。
【0031】
(前駆体)
使用前の本組成物(成形用組成物、可塑剤組成物、充填剤組成物等の各種用途の組成物を含む)は、特に、その形態を限定するものではない。粉末状や粒子状の他、成形・搬送・ハンドリングに適した形状や大きさを備えた前駆体とすることもできる。このような前駆体は、少なくとも加圧することによって得ることができる。本材料が本来的に有する分解成分は、常温でも粘結性を有している。このため、この粘結性を利用することにより、加圧のみによって形状を有する前駆体を得ることができる。また、同時に加熱することにより、本材料の少なくとも一部を溶融させ一層結合性が高められた状態の各種形状の前駆体を得ることができる。本材料は熱可塑性を有するため、前駆体を後段の加熱工程において、加熱することにより可塑性を発現させることができる。
【0032】
(可塑化)
可塑化のための加熱条件は、好ましくは、本材料が流動化する範囲内で設定することができる。流動化する温度(流動化開始温度)は、本材料の水蒸気処理条件によっても異なるが、約100℃以上約260℃以下とすることができる。好ましくは、約110℃以上であり、より好ましくは約150℃以上であり、さらに好ましくは約170℃以上であり、最も好ましくは約180℃以上である。また、約230℃以下とすることが好ましい。約170℃以上約180℃以下とすることが最も好ましい。
なお、加熱温度は、水蒸気処理時の温度が高い場合には、相対的に低く設定することができる。また、水蒸気処理温度が低い場合には、相対的に高く設定することが好ましい。
【0033】
特に、水蒸気処理温度が約200℃であった場合、用いたリグノセルロース含有材料や処理時間にもよるが、約150℃~約190℃の温度で流動開始させることができる。
また、水蒸気処理温度が約210℃であった場合、用いたリグノセルロース含有材料や処理時間にもよるが、約160℃で流動開始させることができる。
水蒸気処理温度が約220℃であった場合、用いたリグノセルロース含有材料や処理時間にもよるが、約100℃~約140℃で流動開始させることができる。
たとえば、一般的なプレーナ屑(典型的には、厚さ1mm以下で5cm×5cm以下程度の大きさ、好ましくは、厚さ0.5mm以下で2cm×2cm以下程度の細片)を水蒸気処理温度が約200℃で処理した場合、処理時間が5分未満(2分程度)の場合には、約190℃で流動開始し、処理時間が5分~10分の場合は、約190℃で流動開始する。
また、同様の細片につき、水蒸気処理温度が約210℃、処理時間が5分未満(2分程度)の場合には、約160℃で流動化する。水蒸気処理温度が約220℃、処理時間が5分未満(2分程度)の場合には、約140℃で流動化し、同温度で処理時間が5~10分の場合には、100~110℃で流動化する。特に、同様の細片について、水蒸気処理温度が約220℃、処理時間10分の場合、流動開始温度は約105℃程度である。
なお、既に述べたように、本材料の粒子径は、流動化を確保するには、好ましくは、45μm以上180μm以下であるが、粒子径が45μm以下であると、例示した温度よりもより低い温度で流動を開始することがわかっている。
【0034】
以上のことから、水蒸気処理温度によって流動開始温度や流動性を制御できることが明らかである。なお、流動開始温度は、一般的に入手可能な細管式レオメータ等による押出し試験によって確認することができる。
最も、一般的な細管式レオメータは、温度制御可能な加熱炉と、加熱炉内に設置され、試験試料を収容し、吐出口であるノズルを有するシリンダと、シリンダ内の試料を加圧するピストン、とを備えている。かかる細管式レオメータによる押出し試験の一例を図2に示す。本材料は、かかる細管式レオメーターにより加熱により流動を開始し、糸状体として吐出される。
【0035】
なお、加熱工程に先んじて、本材料及び本組成物を予め加熱しておくことが好ましい。すなわち、本材料が可塑化しない程度の加熱工程を予め実施することが好ましい。かかる予熱工程を実施することで、加熱条件を緩やかにすることができる。また、成形体を得る場合には、得られる成形体の密度、曲げ強さ、曲げヤング係数を飛躍的に向上させることができる。また、吸水時の膨張率や吸水率を顕著に低下させることができる。予熱工程の温度は、特に限定しないが、好ましくは、加熱工程時の加熱温度と同程度とする。
【0036】
(成形体の製造)
成形用組成物を加熱して流動化・可塑化後、あるいは流動化に伴い、適切な形状付与手段を適用することにより成形体を得ることができる。形状付与手段は、たとえば、型を使用したり、ダイを通過させたりする従来公知の手段を使用することができる。その後、冷却することにより、成形体を得ることができる。成形方法としては、射出成形、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、異形押出し成形、スタンピングモールド成形、スタンパブル成形、シートスタンピング法等を含むスタンピング成形等の各種成形方法に適用できる。
また、本成形体の製造にあたっては、成形用組成物を可塑化して成形するため、精密な成形が可能である。たとえば、ボード等の単純形状のみならず、肉厚の異なる部位や異なる断面形状を有する成形体、レリーフ等の微細表面形状を有する成形体、絞り部分などを有する成形体を製造することができる。
【0037】
形状付与時の条件は、水蒸気処理条件や成形手法によって異なる。ボードやパネル等を圧縮成形により得る場合には、加圧条件を、約10MPa以上約80MPa以下とすることが好ましい。より好ましくは、約25MPa以上とし、また、60MPa以下とする。水蒸気処理温度が220℃以上の高温で所定時間(典型的には2~5分程度)処理されていれば、50MPa以下で良好な成形を実現することができる。
【0038】
(成形体)
本成形用組成物に対して形状付与し後、冷却することにより、成形体を得ることができる。
得られた成形体は、少なくとも一部において、樹脂様となっている。特に、表面において顕著に樹脂様表面を有する。また、特に、内相において、本材料の構成粒子に由来する粒子が結合された状態が観察されることもある。多くの場合、成形体は、樹脂様部と粒子結合部分とが混在した状態となっている。
本成形体によれば、その密度、曲げ強さ、曲げヤング係数において優れた特性を確保することができる。たとえば、曲げ強さが、少なくとも10N/mm2、好ましくは40N/mm2以上、より好ましくは50N/mm2以上の成形体を得ることができる。また、曲げヤング係数が2.0kN/mm2以上、好ましくは6.0kN/mm2以上、さらに好ましくは8.0kN/mm2以上である成形体を得ることができる。また、吸水時の厚さ膨張率が15%以下、好ましくは、12%以下の成形体を得ることができる。また、吸水率が13%以下、好ましくは10%以下の耐水性に優れた成形体を得ることができる。
また、粒子流動に近い流動状態の場合には、硬化後の加熱後の収縮率が小さく、このため、容易に寸法精度の高い成形体を得ることもできる。
なお、上記した各種特性の試験方法としては、以下に示す方法を採用することが好ましい。
【0039】
1.密度
JIS A 5905繊維板5.4密度試験に準じる。なお、試験片の寸法は、20mm×20mmとする。
2.曲げ試験(曲げ強さ及び曲げヤング係数)
寸法幅10mm×長さ65mm×厚み4~6mmの試験片に対して、スパン50mm、荷重速度2mm/分とし中央集中荷重を加えて試験を行う。曲げ強さ及び曲げヤング係数の算出は、JIS Z 5905 木材の試験方法 9 曲げ試験による。
3.吸水厚さ膨張率
JIS A 5905繊維板5.10吸水厚さ膨張率試験に準じる。水浸せき時間は24時間とする。また、試験片の寸法は20mm×20mmとする。
4.吸水率
JIS A 5905繊維板5.9吸水率試験に準じる。試験片の寸法は20mm×20mmとする。
【0040】
このような成形体は、樹脂様相を備えるとともに、高い密度と高い強度を有していることから、成形後に2次的加工を施すことできる。この結果、本成形体及びその2次加工体は、従来合成樹脂成形体が用いられていた工業製品を本成形体により代替することができる。たとえば、合成樹脂に対して行われる、切削加工及び研削加工等の各種加工を実施することできる。
【0041】
本成形体は、その表面が本質的に潤滑性に優れ、摩擦により熱が発生しにくいという特性を備えている。特に、本材料のみから得られた成形体においてはかかる特性が顕著である。このため、成形により、あるいはさらに切削加工を施して、歯車、シャフト、オーガ、ベアリング、軸受け、ボルト、ナットなどの各種機械部品に用いることができる。また、各種ケーシングにも用いることができる。また、各種装飾品にも用いることができる。すなわち、成形時に成形加工により微細なレリーフなどを付与することができるとともに、成形後の加工によってそのような微細な凹凸を付与することができる。具体的には、メダル、ペンダントトップ、模型などに適用することができる。
また、本成形体は、家具、建築材料の他、各種樹脂材料及び各種木質材料として用いることができる。特に、取っ手、手すり、床材、壁材、柱材、化粧板などの積層板などには好適である。
さらに、本成形体は、皿、椀などの食器、容器などの日用品あるいはその基材としても有用である。
また、本成形体は、インストルメントパネル、クラブボックス、ドアトリム、灰皿、コンソールボックス、シートバック、トランクルームトレー等の自動車の内装部品の基材にも好適である。
【0042】
(成形体の再利用)
本成形体は、本材料の熱可塑性に基づいて、加熱により再度可塑性を発現させることができる。したがって、本成形体が不要となった場合において、再度加熱することににより、再び成形材料として使用できる。すなわち、そのままの組成で新たな形状を付与することもできるし、他の材料と組み合わせて新たな形状を付与することもできる。さらに、充填剤として別の用途に転用することもできる。
また、使用済みの本成形体を可塑化させることにより、成形体中の他のフィラーなどの複合材料や樹脂材料と分離したり、あるいはこれらを回収することができる。同時に、本材料のみを回収することも可能となる。
なお、本成形体を再利用するにあたっては、本成形体は予め、細分化しておくことが好ましい。
【0043】
【実施例】
(実施例1)
スギのプレーナ屑を5cm角程度に細分したものを250℃で30秒間水蒸気処理し、その後、一気に圧力を開放して爆砕し、繊維化した。その後、天日で気乾含水率まで乾燥させ、かいらい機を用いて15分間粉砕し、篩にかけて90μm以下の大きさの微粉末を回収した。
【0044】
(実施例2)
実施例1で得た微粉末を成形材料として、そのまま成形用組成物として使用した。本成形材料以外には、なんら他の材料は使用しなかった。この成形用組成物を用いて、細管式レオメータ(島津製作所製フローテスターCFT-500形)により押出し試験を行った。すなわち、180℃、400kgf/cm2の条件にて、成形用組成物を導入し、直径1mm、厚さ1mmの押出し口から、押し出したところ、滑らかな表面を有する樹脂糸を得ることができた。
以上の結果によれば、本成形材料を用いることにより、加熱溶融した成形用組成物に対して加圧して形状を付与できることがわかった。特に、加熱溶融と同時に流動化させることができるため、押出し成形や射出成形に好ましく利用できる。
【0045】
(実施例3)
ブナのプレーナ屑500gに水400gを加え、200℃~210℃で2分蒸煮した後、一気に圧力を開放して爆砕し、繊維化した。その後、室内に放置して気乾状態(含水率約9%)まで乾燥させ、ウィレーミルで粉砕した後、篩いにかけて、以下の5種類の粒子サイズに分類して微粉末を回収した。
粒子サイズ
90μm以下
90μm超え180μm以下
180μm超え250μm以下
250μm超え500μm以下
500μm超え1000μm以下
【0046】
(実施例4)
実施例3で得た各粒子サイズの微粉末をそのまま成形用組成物として使用した。すなわち、本成形材料以外には、なんら他の材料は使用しなかった。この成形用組成物を用いて、細管式レオメータ(島津製作所製フローテスターCFT-500形)により押出し試験を行った。すなわち、この成形用組成物を、押出し成形型内に導入し、荷重400kgf/cm2下、初期温度を140℃とし、4℃/分で昇温させて、直径1mm、長さ1mmの押出し口から押し出しを試みた。
この結果、いずれの粒子サイズの微紛末においても、140℃~150℃で、押出し口から押出し物が出始め、約155℃から、連続して押出し物が出るようになった。いずれの粉末からも、滑らかな表面を有する樹脂糸を得ることができた。なお、蒸煮及び爆砕を経ることなく粉砕した木紛では、このような流動化は観察されなかった。
【0047】
(実施例5)
実施例3で得た各粒子サイズの微粉末をそのまま成形用組成物として使用した。すなわち、本成形材料以外には、なんら他の材料は使用しなかった。この各成形用組成物を、プレス金型に注入し、荷重400kgf/cm2下、160℃~180℃の熱を与えた。いずれの成形用組成物を用いた場合でも、プレス金型のキャビティ形状に応じた形状を有し、滑らかな表面を有する樹脂様の成形体を得ることができた。
【0048】
以上の結果によれば、本成形材料を用いることにより、加熱溶融した成形用組成物に対して加圧して形状を付与できることがわかった。特に、射出あるいは押し出し成形等の、樹脂流動性によって成形する方法を実施することができる。
【0049】
(実施例6)
ブナのプレーナ屑を200℃で2分及び210℃で2分の条件でそれぞれ蒸煮爆砕して、室内で含水率が10wt%以下となるまで風乾した。乾燥物をウィレー式ミルで粉砕し、振動ふるい機で分級し、粒径90μm以上180μm以下の範囲の試料を、細管式レオメータ(島津製作所製フローテスターCFT-500形)により押出し試験を行った。すなわち、この試料1.5gを、120℃に保持した加熱炉内に設置した面積1cm2のシリンダ内に導入し、5分間予熱した後、ピストンにより3.92kNの定荷重で加圧し、初期温度を120℃とし、2℃/分で昇温させて、直径1mm、厚さ1mmのノズルで流出状態を観察した。この手法によると、加熱炉の昇温に伴い、試料が溶融・流動して試料のノズルからの流出が発生すると、ピストンが下降し、流出に伴い下降量が増大する。
なお、対照として、先の試料の原料として使用したのと同じブナのプレーナ屑を蒸煮爆砕せず、かつ、ウィレー式ミルで同様に粉砕し分級して90~180μmの粉末を用いて、先と同様の条件で流出を試みた。
結果を図3に示す。図3は、加熱炉内の温度とピストンの下降量との関係を示す。
【0050】
図3に示すように、220℃で2分蒸煮・爆砕した試料が163℃で流出し始め、200℃で2分蒸煮・爆砕した試料が196℃で流出し始めたことがわかる。また、図3は、いずれも、流出開始後、数分で全量が流出したことを示している。各試料の流出物は、いずれも、連続的な糸状体であった。以上の結果から、これらの試料において、少なくとも一部が溶融して流動性を発現していることがわかった。
これに対して、対照試料は、120℃~220℃までの全温度域において、全く流出が観察されなかった。
以上のことから、木粉を水蒸気処理することにより、流動可能な程度に加熱可塑化できることがわかった。また、水蒸気処理した木粉は、乾燥後においても、流動性・可塑性を発現できることがわかった。
【0051】
(実施例7)
ブナのプレーナ屑を、表1に示す条件で蒸煮・爆砕等行い、室内で含水率が10wt%以下となるまで風乾した。乾燥物をウィレー式ミルで粉砕し、振動ふるい機で分級し、各種粒径範囲の試料を得た。
【表1】
JP0004081579B2_000002t.gifこれらの試料につき、細管式レオメーター(島津製作所製フローテスターCFT-500形)により押出し試験を行った。すなわち、各試料1.5gを、120℃に保持した加熱炉内に設置した面積1cm2のシリンダ内に導入し、5分間予熱した後、ピストンにより3.92kNの定荷重で加圧し、初期温度を120℃とし、2℃/分で昇温させて、直径1mm、厚さ1mmのノズルで流出状態を観察した。
結果を図4に示す。図4は、蒸煮条件(温度及び時間)と流出開始温度との関係を示している。
【0052】
図4に示すように、蒸煮温度が高いほど、また、蒸煮時間が長いほど、流出開始温度が低下する傾向が明らかである。180℃の蒸煮温度試料では、10分処理しても、200℃近傍で初めて流出開始している。したがって、水蒸気処理温度と時間により、試料の流動性・可塑性を調整できることがわかった。
また、200℃分処理試料であって、粒径が90~180μmの試料(図4中-■-で示す。)と45μm未満の試料(図4中-□-(なお、図中、輪郭は点線である)で示す。)とを対比すると、いずれの蒸煮時間においても、45μm未満試料がやや低い流出開始温度を示した。このことから、試料の粒径が試料の流動性・可塑性に影響を及ぼすことがわかった。
【0053】
なお、爆砕によらないでオートクレーブ200℃、10分加熱試料についても、流動させることができることが確認できた。
【0054】
(実施例8)
次に、新聞紙及びブナのプレーナ屑の水蒸気処理条件、成形工程に用いた粒径、加熱加圧条件等を種々に替えて成形体を作製した。成形は、各試料23gを内径70mmの円柱状のキャビティを有するプレス金型に充填して行った。なお、各特性は、以下の方法で測定した。成形条件と得られた成形体の特性を表2に示す。
【0055】
1.密度
JIS A 5905繊維板5.4密度試験に準じた。なお、試験片の寸法は、20mm×20mmとした。
2.曲げ試験(曲げ強さ及び曲げヤング係数)
寸法幅10mm×長さ65mm×厚み4~6mmの試験片に対して、スパン50mm、荷重速度2mm/分とし中央集中荷重を加えて試験を行った。曲げ強さ及び曲げヤング係数の算出は、JIS Z 5905 木材の試験方法 9 曲げ試験によった。
3.吸水厚さ膨張率
JIS A 5905繊維板5.10吸水厚さ膨張率試験に準じた。水浸せき時間は24時間とした。また、試験片の寸法は20mm×20mmとした。
4.吸水率
JIS A 5905繊維板5.9吸水率試験に準じた。試験片の寸法は20mm×20mmとした。
【0056】
【表2】
JP0004081579B2_000003t.gif
【0057】
表2に示す結果からは、水蒸気処理したリグノリグノセルロース含有材料によれば、30℃の低温でも、耐水性は高くないものの、十分に形状を付与できることがわかった。したがって、低温成形で成形用前駆体を容易に製造することができることがわかった。
また、170℃あるいは180℃の加熱温度を付与することにより、曲げ強さ、曲げヤング係数とも十分に高い成形体を得られることがわかった。さらに、水蒸気処理220℃、5分、粒径45μm以下の材料を、170℃、13.5MPaで成形した成形体において、高い機械的強度と耐水性が得られていることから、十分な温度を付与することにより、成形圧が低くても優れた成形体を得られることがわかった。すなわち、十分な程度の水蒸気処理条件で処理されたリグノセルロース含有材料に対し、当該材料の流動開始温度(本材料にあっては、図4によれば約110℃以下である。)よりも十分に高い温度、たとえば、40℃あるいは50℃以上の加熱温度を付与することにより、低圧でも容易に優れた成形体を成形できる。これは、成形型内における材料の流動化・可塑化に基づくものであると考えられる。
特に、170℃~180℃での温度での成形によって得られた成形体は、いずれも、樹脂様の内相及び表層を有しており、加熱により、水蒸気処理後のリグノリグノセルロース系材料が少なくとも一部溶融していることが明らかである。
【0058】
(実施例9)
ブナのプレーナ屑を、220℃で5分間蒸煮・爆砕し、室内で含水率が10wt%以下となるまで風乾した。乾燥物をウィレー式ミルで粉砕し、振動ふるい機で分級し、粒径90μm~180μmの範囲の試料を得、当該試料1.5gにつき、細管式レオメータ(島津製作所製フローテスターCFT-500形)により押出し試験を行った。なお、試験条件は、予熱を80℃で5分間とし、初期温度を80℃する以外は、実施例6に記載した試験条件を用いた。この結果、約105℃にて試料の流出を観察し、連続する糸状体を得た。
流出した糸状体を、再び、ボールミルで破砕し、直前に実施した試験条件と同条件で流出試験を行った。その結果、108℃で試料の流出を観察し、連続する糸状体を得た。以上のことから、水蒸気処理したリグノセルロース含有材料は、熱可塑性を有することがわかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、リグノセルロース含有材料に由来する新たな熱可塑性材料、及び当該材料の利用技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸煮・爆砕の概念図である。
【図2】細管式レオメータによる押出し試験の概要を示す図である。
【図3】実施例6の押出し試験結果であって、加熱炉内の温度とピストンの下降量との関係を示す図である。
【図4】実施例7の押出し試験結果であって、蒸煮条件(温度及び時間)と流出開始温度との関係を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3