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明細書 :SMG-1結合タンパク質及びその活性を制御する物質のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4301541号 (P4301541)
公開番号 特開2004-097029 (P2004-097029A)
登録日 平成21年5月1日(2009.5.1)
発行日 平成21年7月22日(2009.7.22)
公開日 平成16年4月2日(2004.4.2)
発明の名称または考案の名称 SMG-1結合タンパク質及びその活性を制御する物質のスクリーニング方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI G01N 33/50 Z
C12Q 1/02
C12N 15/00 ZNAA
A01K 67/027
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61K 45/00
A61P 43/00 111
C07K 14/47
C07K 16/18
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 A
C12Q 1/48 Z
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 48
出願番号 特願2002-260243 (P2002-260243)
出願日 平成14年9月5日(2002.9.5)
審査請求日 平成16年11月17日(2004.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
発明者または考案者 【氏名】大野 茂男
【氏名】大西 哲生
【氏名】山下 暁朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100090251、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 憲一
審査官 【審査官】深草 亜子
参考文献・文献 欧州特許出願公開第01074617(EP,A1)
国際公開第02/031111(WO,A1)
Kawabata,A.et al.,NEDO human cDNA sequencing project,Entrez Nucleotides database, National Center for Biotechnology Information. Entrez accession No: AK026858,[retrieved on 2002-09-02]. Retrieved from the Internet: <URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=nucleotide&list_uids=10439815&dopt=GenBank大西哲生 他,新規PI3K関連巨大プロテインキナーゼの構造と機能の解析,第22回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集,1999年,p.235
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)(A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(B)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、SMG-1結合活性を示すポリペプチド、及び(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、SMG-1結合活性を示すポリペプチドからなる群から選んだポリペプチドと、SMG-1と、試験物質とを、前記試験物質が存在しなければ前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮可能な条件下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮されたか否かを分析する工程
を含む、ナンセンス媒介mRNA崩壊の抑制剤若しくは促進剤、又はナンセンス変異により早期翻訳終止コドンを生じることが原因で生じる病態の治療及び/若しくは予防剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
(1)請求項1に記載のポリペプチド及びSMG-1を産生可能な細胞と、試験物質とを、前記試験物質が存在しなければ前記細胞が前記ポリペプチドを産生可能な条件下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮されたか否かを分析する工程
を含む、ナンセンス媒介mRNA崩壊の抑制剤若しくは促進剤、又はナンセンス変異により早期翻訳終止コドンを生じることが原因で生じる病態の治療及び/若しくは予防剤のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SMG-1結合タンパク質及びその活性を制御する物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子の変異による表現型の異常の1/4程度は、遺伝子の塩基配列の置換、組換え、及び/又は欠失などの変異により、結果的にタンパク質のコード領域にナンセンスコドンが出現してしまう形の異常であると言われている。このような遺伝子は、途中で終わった異常なタンパク質をコードするが、通常、そのような異常なタンパク質をコードするmRNAは検出されない。これは、異常な位置にナンセンスコドンを有するmRNAを識別し、排除する機構を細胞が備えていることに起因する。この機構は、ナンセンスコドンに起因するmRNA分解機構(あるいはmRNAサーベイランス機構)と呼ばれ、ヒトの遺伝性疾患の症状にも大きく反映していると同時に、免疫担当細胞の成熟に伴って生ずる異常なmRNAを排除する生理的な役割を有することも示唆されている。しかし、その分子機構に関しては、脊椎動物では未だにほとんど不明である。
【0003】
本発明者及びその共同研究者は、ヒトSMG-1(hSMG-1)というプロテインキナーゼ分子がヒトUPF1をリン酸化することが、mRNAサーベイランスの過程に必須であることを明らかにし、既に発表している[山下暁朗ら,「ジーンズ・アンド・デベロップメント(GENES & DEVELOPMENT)」,(米国),2001年,第15巻,p.2215-2228(非特許文献1)]。しかしながら、ヒトSMG-1を含むサーベイランス複合体については未だにほとんど不明である。
【0004】
なお、今回、本発明者が見出した新規のポリペプチドをコードするヒトcDNAの塩基配列が、Kawabata,A., Hikiji,T., Kobatake,N., Inagaki,H., Ikema,Y.,Okamoto,S., Okitani,R., Ota,T., Suzuki,Y., Obayashi,M., Nishi,T.,Shibahara,T., Tanaka,T., Nakamura,Y., Isogai,T. and Sugano,S. "NEDO human cDNA sequencing project." Homo sapiens cDNA...[gi:10439815]. Datasheet. [online]. Entrez Nucleotides database, National Center for Biotechnology Information. Entrez accession No: AK026858. [retrieved on 2002-09-02]. Retrieved from the Internet: <URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=nucleotide&list_uids=10439815&dopt=GenBank>(非特許文献2)に報告されている。しかし、この文献には、このcDNAを発現してポリペプチドを取得したことも、前記ポリペプチドの機能についても、全く開示がない。
【0005】
また、本発明者が見出した新規ポリペプチドと近似の分子量を有するタンパク質p140が、本発明者により、大西ら,「新規PI3K関連巨大プロテインキナーゼの構造と機能の解析」,「1999年度第22回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」,1999年,p.235(非特許文献3)に開示されている。しかしながら、前記文献は、細胞周期の進行又はチェックポイント制御に重要な機能を示すヒトフォスファチジルイノシトールキナーゼ(PIK)-関連タンパク質キナーゼ(PIKK)について開示するものであり、mRNAサーベイランス機構に関する開示もそれを示唆する記載も全くない。
【0006】
【非特許文献1】
山下暁朗ら,「ジーンズ・アンド・デベロップメント(GENES & DEVELOPMENT)」,(米国),2001年,第15巻,p.2215-2228
【非特許文献2】
Kawabata,A., Hikiji,T., Kobatake,N., Inagaki,H., Ikema,Y.,Okamoto,S., Okitani,R., Ota,T., Suzuki,Y., Obayashi,M., Nishi,T.,Shibahara,T., Tanaka,T., Nakamura,Y., Isogai,T. and Sugano,S. "NEDO human cDNA sequencing project." Homo sapiens cDNA...[gi:10439815]. Datasheet. [online]. Entrez Nucleotides database, National Center for Biotechnology Information. Entrez accession No: AK026858. [retrieved on 2002-09-02]. Retrieved from the Internet: <URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=nucleotide&list_uids=10439815&dopt=GenBank>
【非特許文献3】
大西ら,「新規PI3K関連巨大プロテインキナーゼの構造と機能の解析」,「1999年度第22回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」,1999年,p.235
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、mRNAサーベイランス機構を解明することにより、mRNAサーベイランス機構を人為的に制御可能な方法を開発することを目的として、鋭意探求したところ、hSMG-1と強固に結合した新規タンパク質を同定し、全構造を決定した。この分子は、細胞内でhSMG-1に強固に結合しており、キナーゼ活性の制御や細胞内の局在化、更にはサーベイランス複合体の活性制御に大きく関わっていることが予測される。従って、mRNAサーベイランス機構を人為的に制御する際の分子標的候補の一つであることを本発明者は見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
従って、本発明の課題は、SMG-1と結合する新規のポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、更には、mRNAサーベイランス機構を人為的に制御する物質のスクリーニング系を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)(A)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(B)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、SMG-1結合活性を示すポリペプチド、及び(C)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、SMG-1結合活性を示すポリペプチドからなる群から選んだポリペプチドと、SMG-1と、試験物質とを、前記試験物質が存在しなければ前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮可能な条件下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮されたか否かを分析する工程
を含む、ナンセンス媒介mRNA崩壊の抑制剤若しくは促進剤、又はナンセンス変異により早期翻訳終止コドンを生じることが原因で生じる病態の治療及び/若しくは予防剤のスクリーニング方法に関する。
また、本発明は、(1)前記ポリペプチド及びSMG-1を産生可能な細胞と、試験物質とを、前記試験物質が存在しなければ前記細胞が前記ポリペプチドを産生可能な条件下で、接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチドのSMG-1結合活性が発揮されたか否かを分析する工程
を含む、ナンセンス媒介mRNA崩壊の抑制剤若しくは促進剤、又はナンセンス変異により早期翻訳終止コドンを生じることが原因で生じる病態の治療及び/若しくは予防剤のスクリーニング方法に関する。
また、本明細書では、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記ポリヌクレオチドを含む形質転換体、前記ポリペプチドに結合する抗体又はその断片、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現が部分的に又は完全に抑制されたノックアウト非ヒト動物又は細胞を開示する
【0009】
また、本明細書では、前記スクリーニング方法で得られた、前記ポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質を有効成分として含有する、ナンセンス媒介mRNA崩壊の抑制剤、前記スクリーニング方法で得られた、前記ポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質を有効成分として含有する、ナンセンス変異により早期翻訳終止コドンを生じることが原因で生じる病態の治療及び/又は予防剤、前記スクリーニング方法で得られた、前記ポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質を有効成分として含有する、ナンセンス媒介mRNA崩壊の促進剤を開示する
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[1]本発明のポリペプチド
本発明のポリペプチドには、
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチド;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチド(以下、機能的等価改変体と称する);並びに
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチド(以下、相同ポリペプチドと称する)
が含まれる。
【0012】
本発明のポリペプチドである「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」は、SMG-1(特にはヒトSMG-1)と結合して複合体を形成することのできる、991個のアミノ酸残基からなる新規タンパク質である。本発明者は、このポリペプチドがSMG-1結合活性を有することから、「SMGBP1」(SMG Binding Protein 1)と命名した。
本明細書において、「SMGBP1活性」とは、SMG-1(特にはヒトSMG-1)と結合する活性、SMG-1によりリン酸化される活性、及び/又はこれらの活性を通じてSMG-1の働きを制御する活性を意味する。また、本明細書において、「SMGBP1活性を示す」とは、これらの活性の少なくとも1つを示すことを意味する。
なお、SMG-1は、mRNAサーベイランスの過程に必須なフォスファチジルイノシトールキナーゼ(PIK)-関連タンパク質キナーゼ(PIKK)であり、自己リン酸化能を有すると同時に、ナンセンス媒介mRNA崩壊(nonsense-mediated mRNA decay;NMD)の必須因子であるUPF1/SMG-2[Sun,Xら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998年,95,p.10009-10014;及びBhattacharya,A.ら,Rna,2000年,6,p.1226-1235]をリン酸化する活性を有するタンパク質であり、SMG-1の活性がNMDを正に制御している[山下暁朗ら,「ジーンズ・アンド・デベロップメント(GENES & DEVELOPMENT)」,(米国),2001年,第15巻,p.2215-2228]。
【0013】
本明細書において、試験対象であるポリペプチドが「SMGBP1活性を示す」か否かを判定する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、試験ポリペプチドとSMG-1(例えば、ヒトSMG-1)とを接触させ、試験ポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されるか否かを分析することにより、判定することができる。
【0014】
前記判定方法において、試験ポリペプチドとSMG-1とを接触させる方法としては、例えば、試験ポリペプチド及びSMG-1を、それぞれ別々に遺伝子工学的に調製し、それらを接触させる方法、あるいは、試験ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、SMG-1を産生可能な細胞に導入し、細胞内で試験ポリペプチド及びSMG-1を産生させ、接触させる方法などを挙げることができる。
【0015】
また、前記判定方法において、試験ポリペプチドとSMG-1との複合体を分析する方法としては、例えば、
SMG-1又は試験ポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、残るもう一方のポリペプチドに対する抗体(例えば、抗試験ポリペプチド抗体)を用いるウエスタンブロットにより、後者のポリペプチドの存在の有無を確認する方法[例えば、後述の実施例4(2)に記載の方法];
SMG-1又は試験ポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、電気泳動し、適当な検出法(例えば、銀染色)により、残るもう一方のポリペプチド(例えば、試験ポリペプチド)の存在の有無を確認する方法[例えば、実施例3(1)に記載の方法];
抗SMG-1抗体を用いて免疫沈降を行なった後、SMG-1によるリン酸化が可能な条件下でリン酸化を実施し、リン酸化された試験ポリペプチドの存在の有無を確認する方法[例えば、実施例1(2)~(4)に記載の方法];又は
クロマトグラフィーを実施した後、試験ポリペプチド及びSMG-1が同一分画に存在するか否かを確認する方法[例えば、実施例2(2)及び(3)に記載の方法]
などを挙げることができる。
【0016】
本発明のポリペプチドである「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチド」としては、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等が付加されたアミノ酸配列からなり、しかも、SMGBP1活性を示す融合ポリペプチドを挙げることができる。
本発明のポリペプチドで用いることのできるマーカー配列としては、例えば、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGタグ、ヘキサ-ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の機能的等価改変体は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、1又は複数個(好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、更に好ましくは1~5個)、例えば、1~数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチドである限り、特に限定されるものではなく、その起源もヒトに限定されない。
【0018】
例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(すなわち、ヒトSMGBP1)のヒトにおける変異体が含まれるだけでなく、ヒト以外の生物(例えば、サル、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来の機能的等価改変体が含まれる。更には、それらの天然ポリペプチド(すなわち、ヒト由来の変異体、あるいは、ヒト以外の生物由来の機能的等価改変体)をコードするポリヌクレオチドを元にして、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを元にして、遺伝子工学的に人為的に改変したポリヌクレオチドを用いて製造したポリペプチドなどが含まれる。
【0019】
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのヒトにおける変異体、あるいは、ヒト以外の生物由来の機能的等価改変体は、当業者であれば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列(例えば、配列番号1で表される塩基配列における第16番目~第2988番目の塩基からなる配列)の情報を基にして、取得することができる。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(例えば、Sambrook,J.ら,”Molecular Cloning-ALaboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1989)に従って実施することが可能である。
【0020】
例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物[例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)]由来の試料(例えば、総RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(Saiki,R.K.ら,Science,239,487-491,1988)又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、ポリペプチドコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドがSMGBP1活性を示すことを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
【0021】
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドは、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site-specific mutagenesis;Mark,D.F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,5662-5666,1984)により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、発現したポリペプチドがSMGBP1活性を示すことを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。
【0022】
本発明の相同ポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、SMGBP1活性を示すポリペプチドである限り、特に限定されるものではないが、配列番号2で表されるアミノ酸配列に関して、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
なお、本明細書における前記「相同性」とは、BLAST(Basic local alignment search tool;Altschul,S.F.ら,J.Mol.Biol.,215,403-410,1990)により得られた値を意味する。
【0023】
[2]本発明のポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではなく、例えば、配列番号1で表される塩基配列における第16番目~第2988番目の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチド、あるいは、配列番号1で表される塩基配列における第16番目~第2988番目の塩基からなる配列を含むポリヌクレオチドを挙げることができる。なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれる。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(1)PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子工学的手法(すなわち、cDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から、所望のcDNAを含む形質転換株を選択する方法)を用いる方法、又は(3)化学合成法などを挙げることができる。以下、各製造方法について、順次、説明する。
【0025】
前記(1)のPCRを用いた方法では、例えば、以下の手順により、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
すなわち、本発明のポリペプチドを産生する能力を有するヒト細胞又は組織からmRNAを抽出する。次いで、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて、本発明のポリペプチドに相当するmRNAの全長を挟むことのできる2個1組のプライマーセット、あるいは、その一部のmRNA領域を挟むことのできる2個1組のプライマーセットを作成する。抽出した前記mRNAを鋳型とする逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行なうことにより、本発明のポリペプチドの全長cDNA又はその一部を得ることができる。
【0026】
より詳細には、まず、本発明のポリペプチドの産生能力を有する細胞又は組織から、本発明のポリペプチドをコードするmRNAを含む総RNAを既知の方法により抽出する。抽出法としては、例えば、グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート-グアニジン・塩酸法、又はグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法等を挙げることができるが、グアニジン・チオシアネート塩化セシウム法を用いることが好ましい。本発明のポリペプチドの産生能力を有する細胞又は組織は、例えば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその一部を用いたノーザンブロッティング法、あるいは、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いたウエスタンブロッティング法などにより特定することができる。
【0027】
続いて、抽出したmRNAを精製する。mRNAの精製は常法に従えばよく、例えば、mRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着後、溶出させることにより精製することができる。所望により、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAを更に分画することもできる。また、mRNAを抽出しなくても、市販されている抽出精製済みのmRNAを用いることもできる。
次に、精製されたmRNAを、例えば、ランダムプライマー、オリゴdTプライマー、及び/又はカスタム合成したプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行ない、第1鎖cDNAを合成する。この合成は、常法によって行なうことができる。得られた第1鎖cDNAを用い、目的ポリヌクレオチドの全長又は一部の領域を挟んだ2種類のプライマーを用いてPCRを実施し、目的とするcDNAを増幅することができる。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。所望により、前記DNAを制限酵素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。
【0028】
前記(2)の常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、例えば、以下の手順により、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
まず、前記のPCRを用いた方法で調製したmRNAを鋳型として、逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後、この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としては、例えば、S1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis,A.ら,Cell,7,279-288,1976)、Land法(Land,H.ら,Nucleic Acids Res.,9,2251-2266,1981)、O.Joon Yoo法(Yoo,O.J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,1049-1053,1983)、又はOkayama-Berg法(Okayama,H.及びBerg,P.,Mol.Cell.Biol.,2,161-170,1982)などを挙げることができる。
【0029】
次に、前記2本鎖cDNAを含む組換えプラスミドを作製した後、大腸菌(例えば、DH5α株、HB101株、又はJM109株)に導入して形質転換させ、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、又はカナマイシン等に対する薬剤耐性を指標として、組換体を選択する。宿主細胞の形質転換は、例えば、宿主細胞が大腸菌の場合には、Hanahanの方法(Hanahan,D.J.,Mol.Biol.,166,557-580,1983)、すなわち、CaCl2、MgCl2、又はRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に、前記組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお、ベクターとしては、プラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターを用いることもできる。
【0030】
このようにして得られる形質転換株から、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する方法としては、例えば、以下に示す(i)合成オリゴヌクレオチドプローブを用いる形質転換株スクリーニング法、(ii)PCRにより作製したプローブを用いる形質転換株スクリーニング法、(iii)本発明のポリペプチドに対する抗体を用いる形質転換株スクリーニング法、又は(iv)セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーション系を用いる形質転換株スクリーニング法を採用することができる。
【0031】
前記(i)の合成オリゴヌクレオチドプローブを用いる形質転換株スクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。
すなわち、本発明のポリペプチドの全部又は一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として、形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルター又はポリアミドフィルターとハイブリダイズさせ、得られた陽性株を検索して、これを選択する。なお、プローブ用のオリゴヌクレオチドを合成する場合には、コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列とすることもできるし、あるいは、考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列とすることもできる。後者の場合には、イノシンを含ませてその種類を減らすことができる。
【0032】
前記(ii)のPCRにより作製したプローブを用いる形質転換株スクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。
すなわち、本発明のポリペプチドの一部に対応するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの各オリゴヌクレオチドを合成し、これらを組合せてPCRを行ない、目的ポリペプチドの全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、本発明のポリペプチドを産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、又はゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNA断片を、例えば、32P又は33Pで標識し、これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーション又はプラークハイブリダイゼーションを行なうことにより、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
【0033】
前記(iii)の本発明のポリペプチドに対する抗体を用いる形質転換株スクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。
すなわち、形質転換株の培養上清、細胞内、又は細胞表面にポリペプチドを産生させ、本発明のポリペプチドに対する抗体及び前記抗体に対する2次抗体を用いて、所望のポリペプチド産生株を検出し、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
【0034】
前記(iv)のセレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーション系を用いる形質転換株スクリーニング法では、例えば、以下の手順により、目的のcDNAを有する形質転換株を選択することができる。
すなわち、形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルター等にブロットし、本発明のポリペプチドの産生能力を有する細胞から別途調製したmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収されたmRNAを適当なポリペプチド翻訳系、例えば、アフリカツメガエルの卵母細胞へ注入したり、あるいは、ウサギ網状赤血球ライゼート又は小麦胚芽等の無細胞系を用いて、ポリペプチドに翻訳させる。本発明のポリペプチドに対する抗体を用いて検出して、目的のcDNAを有する形質転換株を選択する。
【0035】
得られた目的の形質転換株より本発明のポリヌクレオチドを採取する方法は、公知の方法(例えば、Sambrook,J.ら,”Molecular Cloning-A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1989)に従って実施することができる。例えば、細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、得られたプラスミドDNAからcDNA領域を切り出すことにより行なうことができる。
【0036】
前記(3)の化学合成法を用いた方法では、例えば、化学合成法によって製造したDNA断片を結合することによって、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。各DNAは、DNA合成機[例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer(Beckman社製)、又は394 DNA/RNA Synthesizer(Applied Biosystems社製)など]を用いて合成することができる。
また、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの情報に基づいて、例えば、ホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.ら,Nature,10,105-111,1984)等の常法に従い、核酸の化学合成により製造することもできる。なお、所望アミノ酸に対するコドンは、それ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば、利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、常法に従って決定することができる(Crantham,R.ら,Nucleic Acids Res.,9,r43-r74,1981)。更に、これら塩基配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用した部位特異的突然変異誘発法(site specific mutagenesis)(Mark,D.F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,5662-5666,1984)等により実施することができる。
【0037】
これまで述べた種々の方法により得られるDNAの配列決定は、例えば、マキサム-ギルバートの化学修飾法(Maxam,A.M.及びGilbert,W.,“Methods in Enzymology”,65,499-559,1980)やジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing,J.及びVieira,J.,Gene,19,269-276,1982)等により行なうことができる。
【0038】
[3]本発明の発現ベクター及び形質転換体
単離された本発明のポリヌクレオチドを、適当なベクターDNAに再び組込むことにより、真核生物又は原核生物の宿主細胞をトランスフェクションすることができる。また、これらのベクターに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞においてポリヌクレオチドを発現させることが可能である。
【0039】
本発明の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、用いる宿主細胞又は導入対象細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、本発明のポリヌクレオチドを挿入することにより得られる発現ベクターを挙げることができる。本発明の発現ベクターには、本発明の組換えポリペプチドを製造するための発現ベクターと、遺伝子治療により体内で本発明のポリペプチドを産生させるための発現ベクターとが含まれる。
【0040】
また、本発明の形質転換体も、本発明の前記発現ベクター又はポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、本発明のポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、本発明のポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた細胞であることもできるし、あるいは、本発明によるポリヌクレオチドを含む発現ベクターの形で含有する細胞であることもできる。また、本発明のポリペプチドを発現している細胞であることもできるし、あるいは、本発明のポリペプチドを発現していない細胞であることもできる。本発明の形質転換体は、例えば、本発明の発現ベクターにより、所望の宿主細胞をトランスフェクションすることにより得ることができる。
【0041】
例えば、真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、及び酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.,Cell,23,175-182,1981)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub,G.及びChasin,L.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216-4220,1980)、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞、前記HEK293細胞にエプスタイン・バーウイルスのEBNA-1遺伝子を導入した293-EBNA細胞(Invitrogen社)、又はヒト由来細胞である293T細胞(DuBridge,R.B.ら,Mol.Cell.Biol.,7,379-387,1987)等を挙げることができる。
【0042】
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用することができ、更に必要により、複製起点を有しているものも使用することができる。前記発現ベクターの例としては、例えば、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S.ら,Mol.Cell.Biol.,1,854-864,1981)、ヒトの延長因子プロモーターを有するpEF-BOS(Mizushima,S.及びNagata,S.,Nucleic Acids Res.,18,5322,1990)、又はサイトメガロウイルスプロモーターを有するpCEP4(Invitrogen社)等を挙げることができる。
【0043】
宿主細胞としてCOS細胞を用いる場合には、発現ベクターとしてSV40複製起点を有しているものを使用すれば、細胞内で自律増殖が可能である。更に、転写プロモーター、転写終結シグナル、及びRNAスプライス部位を備えたものを用いることができ、例えば、pME18S(Maruyama,K.及びTakebe,Y.,Med.Immunol.,20,27-32,1990)、pEF-BOS(Mizushima,S.及びNagata,S.,Nucleic Acids Res.,18,5322,1990)、又はpCDM8(Seed,B.,Nature,329,840-842,1987)等を挙げることができる。
【0044】
前記発現ベクターは、例えば、DEAE-デキストラン法(Luthman,H.及びMagnusson,G.,Nucleic Acids Res.,11,1295-1308,1983)、リン酸カルシウム-DNA共沈殿法(Graham,F.L.及びvan der Ed,A.J.,Virology,52,456-457,1973)、市販のトランスフェクション試薬(例えば、FuGENETM6 Transfection Reagent;Boeringer Mannheim社製)を用いた方法、あるいは、電気パスル穿孔法(Neumann,E.ら,EMBO J.,1,841-845,1982)等により、COS細胞に取り込ませることができる。
【0045】
更に、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターと共に、G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現することのできるベクター、例えば、pRSVneo(Sambrook,J.ら,“Molecular Cloning-A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1989)又はpSV2-neo(Southern,P.J.及びBerg,P.,J.Mol.Appl.Genet.,1,327-341,1982)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、本発明のポリペプチドを安定に産生するトランスフェクションされた細胞を得ることができる。
【0046】
遺伝子治療のベクターとしては、一般的に使用されているベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、又はセンダイウイルス等)を用いることができる。
【0047】
本発明の形質転換体は、常法に従って培養することができ、前記培養により細胞内に本発明のポリペプチドが生産される。前記培養に用いることのできる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することができる。例えば、COS細胞の場合には、例えば、RPMI-1640培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に、必要に応じて牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を使用することができる。また、293-EBNA細胞の場合には、牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えた培地を使用することができる。
【0048】
本発明の形質転換体を培養することにより、前記細胞の細胞内に生産される本発明のポリペプチドは、前記ポリペプチドの物理的性質や生化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、分離精製することができる。具体的には、本発明のポリペプチドを含む細胞抽出液を、例えば、通常のタンパク質沈殿剤による処理、限外濾過、各種液体クロマトグラフィー[例えば、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等]、若しくは透析法、又はこれらの組合せ等により、本発明のポリペプチドを精製することができる。
【0049】
本発明のポリペプチドは、マーカー配列とインフレームで融合して発現させることにより、本発明のポリペプチドの発現の確認、又は精製等が容易になる。前記マーカー配列としては、例えば、FLAGタグ、ヘキサ-ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。また、マーカー配列と本発明のポリペプチドとの間に、プロテアーゼ(例えば、エンテロキナーゼ、ファクターXa、又はトロンビンなど)が認識する特異的なアミノ酸配列を挿入することにより、マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼにより切断除去することが可能である。
【0050】
[4]本発明のスクリーニング方法
本発明のポリペプチドを用いると、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を制御(例えば、抑制又は促進)する物質をスクリーニングすることができる。本発明のポリペプチドであるヒトSMGBP1は、mRNAサーベイランスの過程に必須なヒトSMG-1と生体内で強固に結合しており、キナーゼ活性の制御や細胞内の局在化、更にはサーベイランス複合体の活性制御に大きく関わっていることが予測される。従って、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質は、例えば、SMG-1活性の制御を介して、ナンセンス媒介mRNA崩壊(nonsense-mediated mRNA decay;NMD)を制御することが可能であるはずであるので、NMDが関連する種々の疾病の治療及び/又は予防剤の候補物質として有用であり、本発明のポリペプチドそれ自体を、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質、あるいは、NMDが関連する種々の疾病の治療及び/又は予防剤のスクリーニングツールとして使用することができる。
なお、NMDとは、遺伝子の本来の翻訳領域の途中のコドンが終止コドンに変異したナンセンス変異mRNAを認識して、特異的に分解する機構である。
【0051】
NMDが関連する種々の疾病としては、例えば、排除されるべき、早期翻訳終止コドン(premature translation termination codon:PTC)を含むmRNAが排除されないことが原因で生じる病態、あるいは、ナンセンス変異によりPTCを生じることが原因で生じる病態を挙げることができる。
ナンセンス変異によりPTCを生じることが原因で生じる病態としては、特に限定されるものではないが、例えば、遺伝性疾患(例えば、デセンヌ型筋ジストロフィー症)、あるいは、体細胞変異によって生じる癌などを挙げることができる。重要な点は、ゲノムの変異によって生じる全ての疾患の中で、「ナンセンス変異によりPTCを生じる」というメカニズムに応じてこれが当てはまるという点である。
【0052】
ゲノムの変異により生ずる疾患の1/4は、特定遺伝子の途中に終止コドンが生じてしまうことに起因すると言われている。その結果、前記遺伝子が本来コードする全長ポリペプチドからなるタンパク質が発現されないばかりでなく、NMD機構の存在により、前記遺伝子が本来コードする全長ポリペプチドのN末端側部分断片からなるタンパク質断片も、ほとんど発現されないことが、その原因とされている。しかし、遺伝子の途中に終止コドンが存在したとしても、遺伝子の種類又は終止コドンの位置によっては、タンパク質断片の状態でも、全長ポリペプチドと同程度の、あるいは、最小限必要な活性を有する場合も少なくない。この場合、NMD機構を抑制することができれば、有効な活性を有するタンパク質断片の発現が可能となるため、特定遺伝子の途中に終止コドンが存在するために生じる病態、すなわち、特定遺伝子のナンセンス変異による病態の少なくとも一部を解消することができることが理論的に予測されている。しかし、従来、NMDのみを特異的に抑制する手法は、全く知られていない。
【0053】
本発明のスクリーニング方法により選択された、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質の内、SMGBP1活性の制御を介してSMG-1活性を抑制することのできる物質は、NMDを特異的に抑制することが期待でき、従って、特定遺伝子のナンセンス変異によるあらゆる病態について、少なくとも一部について遺伝子変異を解消することができるという全く新しいタイプの治療及び/又は予防剤の有効成分として有用である。
あるいは、本発明のスクリーニング方法により選択された、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を制御する物質の内、SMGBP1活性の制御を介してSMG-1活性を促進することのできる物質は、NMDを促進することができるので、NMDの促進剤の有効成分として、あるいは、排除されるべき、PTCを含むmRNAが排除されないことが原因で生じる病態の治療及び/又は予防剤の有効成分として有用である。
【0054】
本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett,N.K.ら,Tetrahedron,51,8135-8137,1995)又は通常の合成技術によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici,F.ら,J.Mol.Biol.,222,301-310,1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
【0055】
本発明のスクリーニング方法は、
(1)本発明のポリペプチドと、SMG-1(例えば、ヒトSMG-1)と、試験物質とを、前記試験物質が存在しなければ前記ポリペプチドのSMGBP1活性が発揮可能な条件下で、接触させる工程(以下、接触工程と称する)と、
(2)前記ポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されたか否かを分析する工程(以下、分析工程と称する)と
を含む。
【0056】
前記接触工程において、本発明のポリペプチドとSMG-1と試験物質とを接触させる方法は、試験物質が存在しなければ本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮可能な条件下(すなわち、本発明のポリペプチドがSMG-1と結合可能な条件下)で、両者を接触させることができる限り、特に限定されるものではない。このような接触方法としては、例えば、本発明のポリペプチド及びSMG-1を、それぞれ別々に遺伝子工学的に調製し、本発明のポリペプチドとSMG-1と試験物質とを接触させる方法、あるいは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、SMG-1を産生可能な細胞に導入し、試験物質存在下にて、細胞内で本発明のポリペプチド及びSMG-1を産生させ、本発明のポリペプチドとSMG-1と試験物質とを接触させる方法などを挙げることができる。
【0057】
前記分析工程では、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されたか否かを分析する。より具体的には、例えば、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されたか否かを分析する。
分析工程において、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されていないと判定された場合には、試験物質は、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を抑制する物質であると判断することができる。
【0058】
分析工程において、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体を分析する方法としては、例えば、
SMG-1又は本発明のポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、残るもう一方のポリペプチドに対する抗体(例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体)を用いるウエスタンブロットにより、後者のポリペプチドの存在の有無を確認する方法[以下、免疫沈降及びウエスタンブロット併用法と称する;例えば、後述の実施例4(2)に記載の方法];
SMG-1又は本発明のポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、電気泳動し、適当な検出法(例えば、銀染色)により、残るもう一方のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)の存在の有無を確認する方法[以下、免疫沈降及び銀染色併用法と称する;例えば、実施例3(1)に記載の方法];
抗SMG-1抗体を用いて免疫沈降を行なった後、SMG-1によるリン酸化が可能な条件下でリン酸化を実施し、リン酸化された本発明のポリペプチドの存在の有無を確認する方法[以下、免疫沈降及びリン酸化反応併用法と称する;例えば、実施例1(2)~(4)に記載の方法];又は
クロマトグラフィーを実施した後、本発明のポリペプチド及びSMG-1が同一分画に存在するか否かを確認する方法[以下、分画法と称する;例えば、実施例2(2)及び(3)に記載の方法]
などを使用することができる。
【0059】
分析工程において前記免疫沈降及びウエスタンブロット併用法を用いる場合には、SMG-1又は本発明のポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、残るもう一方のポリペプチドに対する抗体(例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体)を用いてウエスタンブロットを実施する。ウエスタンブロットの結果、後者のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)が検出されれば、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成された(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮された)と判定することができる。一方、後者のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)が検出されなければ、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されていない(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されていない)と判定することができ、更に、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を抑制する物質であると判断することができる。同様にして、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を促進する物質であることも判断することができる。
【0060】
分析工程において前記免疫沈降及び銀染色併用法を用いる場合には、SMG-1又は本発明のポリペプチドのいずれか一方に対する抗体(例えば、抗SMG-1抗体)を用いて免疫沈降を行なった後、電気泳動し、適当な検出法(例えば、銀染色)により、残るもう一方のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)の存在の有無を確認する。後者のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)が検出されれば、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成された(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮された)と判定することができる。一方、後者のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチド)が検出されなければ、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されていない(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されていない)と判定することができ、更に、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を抑制する物質であると判断することができる。同様にして、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を促進する物質であることも判断することができる。
【0061】
分析工程において前記免疫沈降及びリン酸化反応併用法を用いる場合には、抗SMG-1抗体を用いて免疫沈降を行なった後、SMG-1によるリン酸化が可能な条件下でリン酸化を実施し、リン酸化された本発明のポリペプチドの存在の有無を確認する。本発明のポリペプチドが検出されれば、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成された(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮された)と判定することができる。一方、本発明のポリペプチドが検出されなければ、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されていない(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されていない)と判定することができ、更に、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を抑制する物質であると判断することができる。同様にして、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を促進する物質であることも判断することができる。
【0062】
分析工程において前記分画法を用いる場合には、クロマトグラフィーを実施した後、本発明のポリペプチド及びSMG-1が同一分画に存在するか否かを確認する。本発明のポリペプチド及びSMG-1が同一分画に存在すれば、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成された(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮された)と判定することができる。一方、本発明のポリペプチド及びSMG-1が同一分画に存在しなければ、本発明のポリペプチドとSMG-1との複合体が形成されていない(すなわち、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性が発揮されていない)と判定することができ、更に、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を抑制する物質であると判断することができる。同様にして、試験物質が、本発明のポリペプチドのSMGBP1活性を促進する物質であることも判断することができる。
【0063】
[5]本発明の医薬組成物
本発明のスクリーニング方法により選択することのできるSMGBP1活性を制御する物質の内、SMGBP1活性の制御を介してSMG-1活性を抑制する物質は、NMDを抑制することが可能であり、ナンセンス変異によりPTCを生じることが原因で生じる病態の治療及び/又は予防剤の候補物質として有用である。このようなSMGBP1活性制御物質は、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、NMDを抑制することが必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]、あるいは、ナンセンス変異によりPTCを生じることが原因で生じる病態の治療及び/又は予防が必要な対象に、有効量で投与することができる。
【0064】
一方、本発明のスクリーニング方法により選択することのできるSMGBP1活性を制御する物質の内、SMGBP1活性の制御を介してSMG-1活性を促進する物質は、NMDを促進することが可能であり、排除されるべき、PTCを含むmRNAが排除されないことが原因で生じる病態の治療及び/又は予防剤の候補物質として有用である。このようなSMGBP1活性制御物質は、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、NMDを促進することが必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]、あるいは、排除されるべき、PTCを含むmRNAが排除されないことが原因で生じる病態の治療及び/又は予防が必要な対象に、有効量で投与することができる。
【0065】
本発明の医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0066】
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなかで、注射剤が最も好適に用いられる。
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
また、本発明の医薬組成物は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の医薬組成物をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移植することができる。
【0067】
本発明の医薬組成物は、これに限定されるものではないが、0.01~99重量%、好ましくは0.1~80重量%の量で、有効成分を含有することができる。
本発明の医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
また、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料を含む)、又は飼料として飲食物の形で与えることも可能である。
【0068】
[6]本発明の抗体
本発明のポリペプチドに反応する抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)は、各種動物に、本発明のポリペプチド、又はその断片を直接投与することで得ることができる。また、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入したプラスミドを用いて、DNAワクチン法(Raz,E.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,9519-9523,1994;又はDonnelly,J.J.ら,J.Infect.Dis.,173,314-320,1996)によっても得ることができる。
【0069】
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、腹腔、皮下、又は静脈等に免疫して感作した動物(例えば、ウサギ、ラット、ヤギ、又はニワトリ等)の血清又は卵から製造することができる。このように製造された血清又は卵から、常法のポリペプチド単離精製法によりポリクローナル抗体を分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
【0070】
モノクローナル抗体は、例えば、ケーラーとミルスタインの細胞融合法(Kohler,G.及びMilstein,C.,Nature,256,495-497,1975)により、当業者が容易に製造することが可能である。
すなわち、本発明のポリペプチド又はその断片を適当なアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントなど)に乳濁した乳濁液を、数週間おきにマウスの腹腔、皮下、又は静脈に数回繰り返し接種することにより免疫する。最終免疫後、脾臓細胞を取り出し、ミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製する。
【0071】
ハイブリドーマを得るためのミエローマ細胞としては、例えば、ヒポキサンチン-グアニン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損又はチミジンキナーゼ欠損のようなマーカーを有するミエローマ細胞(例えば、マウスミエローマ細胞株P3X63Ag8.U1)を利用することができる。また、融合剤としては、例えば、ポリエチレングリコールを利用することができる。更には、ハイブリドーマ作製における培地として、例えば、イーグル氏最小必須培地、ダルベッコ氏変法最小必須培地、又はRPMI-1640などの通常よく用いられている培地に、10~30%のウシ胎仔血清を適宜加えて用いることができる。融合株は、HAT選択法により選択することができる。ハイブリドーマのスクリーニングは培養上清を用い、ELISA法又は免疫組織染色法などの周知の方法により行ない、目的の抗体を分泌しているハイブリドーマのクローンを選択することができる。また、限界希釈法によってサブクローニングを繰り返すことにより、ハイブリドーマの単クローン性を保証することができる。このようにして得られるハイブリドーマは、培地中で2~4日間、あるいは、プリスタンで前処理したBALB/c系マウスの腹腔内で10~20日間培養することで、精製可能な量の抗体を産生することができる。
【0072】
このように製造されたモノクローナル抗体は、培養上清又は腹水から常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することができる。そのような分離精製方法としては、例えば、遠心分離、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、又はDEAE-セルロース、ハイドロキシアパタイト、若しくはプロテインAアガロース等によるクロマトグラフィー法を挙げることができる。
また、モノクローナル抗体又はその一部分を含む抗体断片は、前記モノクローナル抗体をコードする遺伝子の全部又は一部を発現ベクターに組み込み、適当な宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、又は動物細胞)に導入して生産させることもできる。
【0073】
以上のように分離精製された抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む)について、常法により、ポリペプチド分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)によって消化を行ない、引き続き、常法のポリペプチド単離精製法により分離精製することで、活性のある抗体の一部分を含む抗体断片、例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFvを得ることができる。
【0074】
更には、本発明のポリペプチドに反応する抗体を、クラクソンらの方法又はゼベデらの方法(Clackson,T.ら,Nature,352,624-628,1991;又はZebedee,S.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,3175-3179,1992)により、一本鎖(single chain)Fv又はFabとして得ることも可能である。また、マウスの抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子に置き換えたトランスジェニックマウス(Lonberg,N.ら,Nature,368,856-859,1994)に免疫することで、ヒト抗体を得ることも可能である。
【0075】
[7]本発明のノックアウト非ヒト動物及び細胞
本発明のノックアウト非ヒト動物は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現が部分的に又は完全に抑制されている限り、特に限定されるものではなく、それ自体公知の方法により、作製することができる。
【0076】
例えば、本発明のポリヌクレオチドを含有してなる組換えベクターを用い、目的とする非ヒト動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、マウス、又はニワトリ等の胚性幹細胞(embryonic stem cell)において、染色体上の本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を公知の相同組換えの手法[例えば、Nature,326,6110,295(1987);又はCell,51,3,503(1987)等]により不活化するか、あるいは、任意の配列と置換した変異クローンを作製する[例えば、Nature,350,6315,243(1991)]。胚性幹細胞の変異クローンを用い、動物の受精卵の胚盤胞(blastocyst)への注入キメラ法又は集合キメラ法等の手法により、胚性幹細胞クローンと正常細胞とからなるキメラ個体を調製することができる。このキメラ個体と正常個体との掛け合わせにより、全身の細胞の染色体上に存在する本発明のポリペプチドをコードする遺伝子に任意の変異を有する個体を得ることができ、更に、その個体の掛け合わせにより相同染色体の双方に変異が入ったホモ個体の中から、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現が部分的に又は完全に抑制された個体としてノックアウト非ヒト動物を得ることができる。
【0077】
更に、前記ノックアウト非ヒト動物から、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現が部分的に又は完全に抑制された、本発明の細胞を得ることができる。
あるいは、所望の細胞(例えば、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞、前記HEK293細胞にエプスタイン・バーウイルスのEBNA-1遺伝子を導入した293-EBNA細胞、又はヒト由来細胞である293T細胞)に対して、例えば、RNA干渉法(例えば、Nature,411,494-498,2002)により、細胞内在性のSMGBP1の発現を抑制することができ、これらの細胞も本発明の範囲に含まれる。
【0078】
また、染色体上の本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の任意の位置へ変異を導入することにより、ノックアウト非ヒト動物を作製することも可能である。例えば、染色体上の本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の翻訳領域中へ、塩基を置換、欠失、及び/又は挿入等させて変異を導入することにより、その遺伝子産物の活性を改変させることも可能である。
また、その発現制御領域への同様な変異を導入することにより、例えば、発現の程度、時期、及び/又は組織特異性等を改変させることも可能である。更に、Cre-loxP系との組合せにより、より積極的に発現時期、発現部位、及び/又は発現量等を制御することも可能である。このような例として、脳のある特定の領域で発現されるプロモーターを利用して、その領域でのみ目的遺伝子を欠失させた例[Cell,87,7,1317(1996)]や、Creを発現するアデノウルスを用いて、目的の時期に、臓器特異的に目的遺伝子を欠失させた例[Science,278,5335(1997)]が知られている。
【0079】
従って、染色体上の本発明のポリペプチドをコードする遺伝子についても、このように任意の時期や組織で発現を制御することができ、また、任意の挿入、欠失、及び/又は置換をその翻訳領域や発現制御領域に有するノックアウト非ヒト動物を作製することができる。ノックアウト非ヒト動物は、任意の時期、任意の程度、及び/又は任意の部位で、本発明のポリペプチドに起因する種々の疾患の症状を誘導することができる。このように、本発明のノックアウト非ヒト動物は、本発明のポリペプチドに起因する種々の疾患の治療や予防において極めて有用な動物モデルとなる。
【0080】
更には、本発明のノックアウト非ヒト動物は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子とは異なる遺伝子に起因する疾患のモデル動物を樹立するのに用いることもできる。例えば、本発明のノックアウト非ヒト動物の1つであるSMGBP1ノックアウトマウスと、種々の系統の(見かけ上の)正常マウスとを掛け合わせる。後者の正常マウスが、PTCを有する変異遺伝子を含む場合、前記掛け合わせにより得られたマウス(例えば、相同染色体の双方にSMGBP1変異が入ったホモ個体、あるいは、相同染色体の一方にSMGBP1変異が入ったヘテロ個体)では、NMD活性が影響を受けることが予想され、例えば、NMDが抑制された場合には、前記変異遺伝子に由来するmRNAが増加する。その結果、或る変異遺伝子については、隠れていた症状が表面化し、何らかの疾患が生じることがあり、新たな疾患モデルマウスを樹立することができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ヒトSMG-1(hSMG-1)の酵素活性依存的にリン酸化されるhSMG-1結合タンパク質の発見》
(1)細胞の培養及び回収と細胞抽出液の調製
ヒトHeLa細胞(ATCC:CCL-2)を常法に従って培養し、107細胞まで増やした。培養皿上の細胞を、氷冷したリン酸緩衝溶液(phosphate-buffered saline;PBS)で洗浄した後、セルスクレイパーで掻き取り、遠心操作により細胞を集めた。PBSを除いた後、プロテアーゼ阻害剤[1mmol/L-PMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride)、10μg/mLアプロチニン、及び10μg/mLロイペプチン]を添加したF-リシス液[20mmol/L-TrisHCl(pH7.5)、0.25mol/Lスクロース、20mmol/L-β-メルカプトエタノール、1.2mmol/L-EGTA、1mmol/Lオルトバナジン酸ナトリウム、1mmol/Lフッ化ナトリウム、1mmol/Lピロリン酸ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム、1%トリトン(Triton)X-100、及び0.5%ノニデット(Nonidet)P40]3mLを加えよく攪拌し、更に、超音波処理により細胞を完全に破砕した。15分間の遠心操作(15000回転)により上清を回収し、細胞抽出液とした。
【0082】
(2)免疫沈降
本実施例では、抗hSMG-1血清として、抗血清C[山下暁朗ら,「ジーンズ・アンド・デベロップメント(GENES & DEVELOPMENT)」,(米国),2001年,第15巻,p.2215-2228]を使用した。抗血清Cは、hSMG-1のC末側断片[hSMG-1のアミノ酸配列(3657アミノ酸)における第3076番目~第3542番目のアミノ酸残基からなる配列に相当]をグルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase;GST)との融合タンパク質(分子量=約70kDa)として大腸菌で発現させ、それを免疫源として得られた抗血清である。
【0083】
予め抗hSMG-1血清(抗血清C)10μL又はその免疫前血清(pre)10μLを結合させておいたプロテインAセファロース粒子(AmershamPharmacia社)25μLに、それぞれ、実施例1(1)で得られた細胞抽出液(遠心上清)1mLを加え、4℃で2時間攪拌した。遠心操作により上清を除き、新たに洗浄液A(F-リシス液に0.25mol/L塩化リチウムを加えたもの)を加えて穏やかに攪拌した直後、更に遠心操作で上清を除いた。この操作をこの後6回繰り返し、非特異的吸着物を除去した。
【0084】
(3)リン酸化反応
最後に回収されたプロテインAセファロース粒子を、1×キナーゼ反応液[10mmol/L-Hepes(pH7.5)、50mmol/L塩化ナトリウム、50mmol/L-β-グリセロリン酸、及び1mmol/Lジチオスレイトール(DTT)]で一度洗浄操作を行なった。2×キナーゼ反応液に2価金属イオン(20mmol/L-MgCl2若しくは20mmol/L-MnCl2又はその両方)及び/又は1μmol/Lウォートマンニン[フォスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-キナーゼ)関連タンパク質キナーゼの阻害剤]を加えた緩衝液25μLを加えて軽く攪拌し、氷上で20分ほど静置した。更に反応開始液(5μCi[γ-32P]ATP及び10μmol/L-ATP)25mlを加えて軽く攪拌し、30℃で15分間反応させた。2×SDSサンプルバッファー[200mmol/L-TrisHCl(pH6.8)、4%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、12%β-メルカプトエタノール、20%グリセロール、及び0.02%ブロモフェノールブルー]50μLを加えて反応を停止させ、100℃で4分間保温してタンパク質を変性させた。この遠心上清を以下の解析試料として使用した。
【0085】
(4)リン酸化タンパク質の解析
高分子量から低分子量にわたるリン酸化タンパク質を分離能よく解析するため、解析試料をゲル濃度6%又は12.5%の2種のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で展開した後、ゲルを乾燥し、常法に従ってオートラジオグラフィーにてリン酸化バンドを可視化した。
【0086】
結果を図1に示す。図1において、記号「32P」は、32Pを用いたオートラジオグラフィーによる結果であることを示す。記号「+」及び「-」は、それぞれ、ウォートマンニンの存在下及び不在下でリン酸化反応を実施したことを示す。記号「IP」は免疫沈降(immunoprecipitation)を意味し、記号「C3」及び「pre」は、それぞれ、免疫沈降において、抗血清C及びその免疫前血清を用いたことを示す。泳動パターンの右端に示す各分子量(例えば、「205kDa」)及び各矢印は、分子量マーカーとして用いた各種タンパク質の分子量及びその泳動位置を示す。泳動パターンの左端に示す記号「pp430」、「pp400」、「pp130」、及び「pp70」は、それぞれ、その数字が示す分子量を有するタンパク質が、リン酸化されていることを示す。
【0087】
図1に示すように400kDa及び430kDaの位置にリン酸化バンドが検出された。これらのバンドはhSMG-1の自己リン酸化によるものであることが、以下の事実から支持される。すなわち、この2つのリン酸化バンドの位置は、ウエスタンブロット法で検出されるhSMG-1の分子量と一致した。また、これらのバンドは、免疫前血清を用いた免疫沈降物では検出されなかった。また、hSMG-1もその一員であるPI3-キナーゼ関連タンパク質キナーゼの阻害剤であるウォートマンニン存在下では、そのリン酸化バンドが顕著に減弱した。更に、PI3-キナーゼ関連タンパク質キナーゼはその活性(自己リン酸化活性も含む)に対して2価金属イオンとしてMgよりMnを要求する傾向があるが、本免疫沈降実験でもMnを加えた場合により強い430kDaタンパク質及び400kDaタンパク質のリン酸化が見られた。
【0088】
ここで、hSMG-1の自己リン酸化の強弱に完全に対応する形で、130kDaのタンパク質(p130)及び70kDaのタンパク質(p70)の2種のタンパク質がリン酸化タンパク質として検出された。これらは、hSMG-1のキナーゼ活性でリン酸化される結合タンパク質の可能性がある。
この可能性を支持するために、抗血清Cの代わりに、別の抗hSMG-1血清である抗血清Lを用いて、前記の免疫沈降及びリン酸化反応を実施した。なお、抗血清Lは、hSMG-1のN末側断片[hSMG-1のアミノ酸配列(3657アミノ酸)における第864番目~第1059番目のアミノ酸残基からなる配列に相当]をGSTとの融合タンパク質(分子量=約50kDa)として大腸菌で発現させ、それを免疫源として得られた抗血清である。
【0089】
結果を図2に示す。図2において、記号「32P」は、32Pを用いたオートラジオグラフィーによる結果であることを示し、記号「WB:C3」は、抗血清Cを用いたウエスタンブロットの結果であることを示す。記号「C-pre」、「C」、「L-pre」、及び「L」は、それぞれ、免疫沈降において、抗血清Cの免疫前血清、抗血清C、抗血清Lの免疫前血清、及び抗血清Lを用いたことを示す。
抗血清Cを用いた場合だけでなく、hSMG-1の異なる部位を抗原とする抗血清L抗体を用いた場合にも、130kDa及び70kDaの2種のタンパク質がリン酸化タンパク質として検出されたことから、前記の可能性が更に強まった。この結果は、抗血清Cで非特異的に免疫沈降されるタンパク質が偶然hSMG-1でリン酸化されるのではないことを示している。
【0090】
【実施例2】
《HeLa細胞抽出液の液体カラムクロマトグラフィーでの分離とhSMG-1免疫複合体におけるリン酸化反応》
(1)細胞抽出液の調製
以下の操作はすべて4℃以下にて行なった。
3×109細胞のHeLa細胞を常法で培養し、実施例1(1)と同様の方法で細胞をPBS中に回収した。遠心操作により上清を除いた後の細胞に、0.25%トリトンX-100及びプロテアーゼ阻害剤(0.1mmol/L-PMSF、10μg/mLアプロチニン、及び10μg/mLロイペプチン)を添加した緩衝液TG[20mmol/L-TrisHCl(pH7.5)、2mmol/L-EDTA、2mmol/L-DTT、1mmol/Lオルトバナジン酸ナトリウム、及び10%グリセロール]35mLを加え、静かに攪拌した。この細胞懸濁液をポッター(Potter)型ホモジナイザーに移し、ポリテトラフルオロエチレン製のペッスル(pestle)を50ストロークさせることで細胞を破砕し、タンパク質を抽出した。超遠心操作(100000×g,60分間)により細胞抽出液を得た。細胞抽出液を膜フィルター(0.22μm poresize;Millipore社)で濾過して解析用試料とした。
【0091】
(2)液体カラムクロマトグラフィー
まず陰イオン交換カラムHiTrapQ(5mL樹脂体積;Pharmacia社)を4本連結し、液体カラムクロマグラフィーシステムFPLC(Pharmacia社)に接続し、緩衝液A(緩衝液TGに0.1%トリトンX-100を添加したもの)で平衡化した。実施例2(1)で調製した解析用試料をカラムに添加して、緩衝液Aで充分に洗浄した後、緩衝液A中で緩衝液B(緩衝液Aに1mol/L塩化ナトリウムを添加したもの)の割合を85分間で0~60%に直線的に上昇させていくことで、タンパク質を樹脂から溶離させた。なお、流速は1.5mL/分とした。FPLCシステム付属の自動分画分取装置(フラクションコレクター)を用いて、2分間/分画(約3mL)の割合で溶出物を連続的に分取した。また、タンパク質の溶出の程度を280nmの吸光度でモニターした。
【0092】
結果を図3に示す。図3において、曲線aは、280nmにおける吸光度(A280)、すなわち、タンパク質の相対濃度を示し、直線bは、塩化ナトリウムの濃度勾配を示す。記号「fr.」は分画を意味し、「fr.」の直後に続く各数字、及び曲線aに沿って並ぶ手書きの各数字は、それぞれ、分画番号である。
【0093】
(3)各分画からのhSMG-1の免疫沈降とリン酸化反応
各分画(10μL相当量)を、抗hSMG-1抗体C又は抗hSMG-1抗体Pを用いてウエスタンブロット解析した。
結果を図4に示す。記号「WB:P」及び「WB:C」は、それぞれ、抗血清P及び抗血清Cを用いたウエスタンブロットの結果であることを示す。
分画25~分画28にhSMG-1が濃縮して溶出することが判明した。
【0094】
各分画600μLを用いて、実施例1(2)及び実施例1(3)と同様の方法で免疫沈降及びリン酸化反応を行なった。但し、免疫沈降に用いる抗体(抗血清C)は1μL/分画とし、リン酸化反応に用いる2×キナーゼ反応液には、2価金属イオンとして10mmol/L-MnCl2を添加し、ウォートマンニンは添加しなかった。更に、2×キナーゼ反応液には、外部基質としてGST-p53(1-58)タンパク質2μgを加えた。なお、GST-p53(1-58)タンパク質は、p53タンパク質(アミノ酸残基数=393)の第1番目~第58番目のアミノ酸からなる部分断片と、GSTとの融合タンパク質であり、p53タンパク質における第15番目のセリン残基(Ser15)及び第37番目のセリン残基(Ser37)は、hSMG-1のリン酸化共通モチーフと一致する配列中にあり、hSMG-1によりリン酸化されることが知られている[山下暁朗ら,「ジーンズ・アンド・デベロップメント(GENES & DEVELOPMENT)」,(米国),2001年,第15巻,p.2215-2228]。
【0095】
リン酸化反応後、反応液をSDS-PAGE及びオートラジオグラフィーによって解析した。結果を図5に示す。カラムで分画しても、hSMG-1の自己リン酸化能及び外部基質リン酸化能と、p130及びp70とを分離することができないことから、hSMG-1は、常に、p130及びp70と挙動を共にしていることが強く示唆される。
【0096】
次に、分画20~分画31を用いて、実施例1(2)及び実施例1(3)と同様の方法で免疫沈降及びリン酸化反応を行なった。但し、リン酸化反応に用いる2×キナーゼ反応液には、外部基質としてGST-p53(1-58)タンパク質2μgを加え、反応開始液のATPの濃度を1mmol/Lとし、放射性ATPは加えなかった。また、反応時間は1時間とした。
GST-p53(1-58)タンパク質のリン酸化状態を、SDS-PAGEと、p53タンパク質におけるリン酸化Ser15に対する抗体(抗P-Ser15抗体;Shieh,S.Y.ら,Cell,91,325-334,1997)又はp53タンパク質におけるリン酸化Ser37に対する抗体(抗P-Ser37抗体;Kitagawa,M.ら,EMBO J.,15,7060-7069,1996)によるウエスタン法とで解析した。
結果を図6に示す。図6において、記号「WB:α-P-Ser15」及び「WB:α-P-Ser37」は、それぞれ、抗P-Ser15抗体及び抗P-Ser37抗体を用いたウエスタンブロットの結果であることを示す。記号「P-Ser15-p53」及び「P-Ser37-p53」は、それぞれ、Ser15及びSer37がリン酸化されたGST-p53(1-58)タンパク質を意味する。
【0097】
【実施例3】
《抗体カラムによるhSMG-1複合体の精製と解析》
(1)免疫沈降
実施例1(1)と同様の方法でHeLa細胞抽出液を準備した。細胞抽出液に3mLの体積のプロテインAセファロース(Amersham-Pharmacia社)を加え、4℃において30分間攪拌処理した。遠心操作により上清を得た。正常ウサギIgG(Santa Cruz社)25μgを、あるいは、常法により抗血清Nから精製した抗hSMG-1IgG(N抗体)25μgを予め結合させておいたプロテインAセファロース100μLに、前記の遠心上清を半量ずつ加え、4℃で2時間攪拌した。なお、抗血清Nは、hSMG-1のN末断片[hSMG-1のアミノ酸配列(3657アミノ酸)における第1番目~第106番目のアミノ酸残基からなる配列に相当]をGSTとの融合タンパク質として大腸菌で発現させ、それを免疫源として得られた抗血清である。
遠心操作により上清を除き、新たにF-リシス液を加えて更に攪拌した直後、更に遠心操作で上清を除いた。この操作をこの後6回繰り返し、最後に回収されたプロテインAセファロース粒子に、2×SDS-サンプルバッファー100μLを加えて100℃で4分間煮沸した。遠心操作で得た上清を解析用試料とした。
【0098】
この解析用試料の1/20量を常法に従ってSDS-PAGEし、銀染色を行なった。結果を図7に示す。130kDa付近に、正常ウサギIgGによる免疫沈降物中には見られないバンドが、抗hSMG-1IgG抗体による免疫沈降物中に含まれることを発見した。この際、430kDa付近には、免疫沈降されたhSMG-1と思われるバンドが検出された。
【0099】
(2)質量分析
解析用試料の1/4量をSDS-PAGEし、常法に従ってポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(イモビロンC;ミリポア社)に転写した。転写後の膜にクマージブリリアントブルー(CBB)液を加えた後、素早く水につけ、洗浄した後、乾燥し、膜に転写され、染色されたタンパク質を観察した。430kDaと思われるバンドと、130kDaのリン酸化タンパク質と思われるバンドが確認された。
染色された130kDaのタンパク質(p130)を膜からナイフで切り出し、公知の方法(例えば、岩松明彦、実験医学、Vol.17、No.8、1999年、第1351頁~第1355頁のクローズアップ実験法「質量分析計を用いたプロテオーム解析」など)に従って、膜状でタンパク質をタンパク質分解酵素Lys-C(リジルエンドペプチダーゼ)で完全消化し、MALDI-TOF/MS(マトリックスアシステッドレーザー励起イオン化法-飛行時間型質量分析計)を用いて消化断片の質量分析を行なった。
【0100】
その結果、表1に示す8種類のLys-C消化断片(AP1~AP8)の質量を決定することに成功した。公知のタンパク質一次構造データベースを検索し、8つの質量のうち、6つのタンパク質断片(AP1、AP2、AP3、AP4、AP5、及びAP8)が、公知のデータベースに登録されているcDNAクローンAK026858.1の翻訳産物から予想されるLys-C消化断片と一致した。図8に、AK026858.1翻訳産物の一次構造(配列番号2で表されるアミノ酸配列)と、AP1、AP2、AP3、AP4、AP5、及びAP8に対応する各配列の位置を示す。このことから、p130がAK026858.1の翻訳産物であり、hSMG-1結合タンパク質であることが推測された。AK026858.1翻訳産物には、既知の機能モチーフに相同性を示す部分はなかった。その一方で、AK026858.1翻訳産物に相同性が高いタンパク質をコードすると考えられる遺伝子がショウジョウバエ(CG6729;相同性=41%)及び線虫(K04B12.3;相同性=41%)にも存在しており、このタンパク質は、進化的に保存されたタンパク質であると考えられた。なお、前記相同性の数値は、BLAST(Basic local alignment search tool;Altschul,S.F.ら,J.Mol.Biol.,215,403-410,1990)による。
【0101】
《表1》
ペプチド 質量実測値 質量理論値 誤差 対応配列
AP1 784.54 784.54 0.00 配列番号3
AP2 1031.61 1031.58 0.03 配列番号4
AP3 1069.55 1069.47 0.08 配列番号5
AP4 1301.71 1301.65 0.06 配列番号6
AP5 1599.86 - - -
AP6 2196.10 - - -
AP7 2392.28 2392.27 0.01 配列番号7
AP8 2519.26 2519.20 0.06 配列番号8
【0102】
【実施例4】
《抗p130抗体の調製及び発現タンパク質の解析》
(1)抗体の調製
AK026858.1DNAは、東京大学医科学研究所の菅野教授らによる全長cDNA塩基配列決定プロジェクトにより既に同定されていたものであり、本実施例で用いた前記DNAを含むプラスミド(pME18Sに挿入してある)は、同教授より分与された。AK026858.1翻訳産物が実際にhSMG-1結合タンパク質であることを確認するため、その特異抗体を開発した。
AK026858.1を含むプラスミドを制限酵素SmaI及びMscIで消化し、446塩基対のDNA断片(配列番号2で表されるアミノ酸配列における第563番目~第710番目のアミノ酸からなる配列に対応)を取得した。このDNA断片を大腸菌発現ベクターpGEX-6P-1(Amersham Pharmacia社)のSmaI部位に挿入した後、大腸菌DH5株に導入した。組み換えプラスミドを有する大腸菌株を培養し、常法により、p130タンパク質断片をGSTとの融合タンパク質として精製した。精製した融合タンパク質を抗原とし、常法によりウサギ(New Zealand White種)を免疫し、抗血清を得た。更に、抗原タンパク質を用いる常法(アフィニティー精製法)により、抗血清から特異抗体(抗AK026858.1翻訳産物抗体)を分取した。
【0103】
(2)p130のHeLa細胞における発現と免疫沈降法によるhSMG-1結合性の確認
HeLa細胞抽出液を実施例1(1)と同様の方法により調製し、実施例3(1)と同様の方法により、正常ウサギ血清、あるいは、抗hSMG-1抗血清(抗血清N、抗血清L、又は抗血清C)を用いて免疫沈降した。細胞抽出液及び免疫複合体をSDS-PAGEで展開した後、常法に従って、実施例4(1)で調製した抗AK026858.1翻訳産物抗体を用いるウエスタンブロット法で解析した。
【0104】
結果を図9に示す。図9において、記号「IP」は免疫沈降(immunoprecipitation)を意味し、記号「N」、「L」、及び「C」は、それぞれ、免疫沈降において、抗血清N、抗血清L、及び抗血清Cを用いたことを示す。また、記号「WB」は、ウエスタンブロットの結果であることを示す。
まず、細胞抽出液に130kDaの分子量を有するタンパク質が特異的に検出されることから、この抗体がAK026858.1翻訳産物を認識することができることが判明した。また、同じ分子量を有するタンパク質が、抗血清N、抗血清L、又は抗血清Cのいずれで免疫沈降した場合にでも検出された。一方、正常ウサギ血清で免疫沈降した場合には、そのようなタンパク質は検出されないことから、最終的にAK026858.1翻訳産物はhSMG-1の特異的結合タンパク質であることが判明した。その分子量からhSMG-1免疫沈降物中でリン酸化される130kDaタンパク質であることが強く示唆される。
【0105】
【発明の効果】
本発明のポリペプチドによれば、ナンセンス変異によりPTCを生じることが原因で生じる病態の治療及び/又は予防剤の簡便なスクリーニング系を提供することができる。また、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換体、及び抗体は、本発明のポリペプチドを製造するのに有用である。
【0106】
【配列表】
JP0004301541B2_000002t.gifJP0004301541B2_000003t.gifJP0004301541B2_000004t.gifJP0004301541B2_000005t.gifJP0004301541B2_000006t.gifJP0004301541B2_000007t.gifJP0004301541B2_000008t.gifJP0004301541B2_000009t.gifJP0004301541B2_000010t.gifJP0004301541B2_000011t.gifJP0004301541B2_000012t.gifJP0004301541B2_000013t.gifJP0004301541B2_000014t.gifJP0004301541B2_000015t.gifJP0004301541B2_000016t.gifJP0004301541B2_000017t.gifJP0004301541B2_000018t.gifJP0004301541B2_000019t.gifJP0004301541B2_000020t.gifJP0004301541B2_000021t.gifJP0004301541B2_000022t.gifJP0004301541B2_000023t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】抗hSMG-1血清(抗血清C)を用いて得られたヒトHeLa細胞抽出液の免疫沈降物について、リン酸化反応を実施した結果をオートラジオグラフィーにより示す、図面に代わる写真である。
【図2】2種類のhSMG-1血清(抗血清C又は抗血清L)を用いて得られたヒトHeLa細胞抽出液の免疫沈降物について、リン酸化反応を実施した結果をオートラジオグラフィーにより示す、図面に代わる写真である。
【図3】ヒトHeLa細胞抽出液の陰イオン交換カラムHiTrapQによるクロマトグラフである。
【図4】図3に示す各分画におけるヒトSMG-1の分布を示すために実施したウエスタンブロット法の結果を示す、図面に代わる写真である。
【図5】図3に示す各分画のhSMG-1血清による各免疫沈降物について、リン酸化反応を実施した結果をオートラジオグラフィーにより示す、図面に代わる写真である。
【図6】図3に示す分画20~31のhSMG-1血清による各免疫沈降物について、リン酸化反応を実施した結果をウエスタンブロットにより示す、図面に代わる写真である。
【図7】ヒトHeLa細胞抽出液の抗hSMG-1IgG(N抗体)による免疫沈降物について、SDS-PAGEを実施した後、銀染色した結果を示す、図面に代わる写真である。
【図8】AK026858.1翻訳産物の一次構造と、AP1、AP2、AP3、AP4、AP5、及びAP8に対応する各配列の位置を示す説明図である。
【図9】ヒトHeLa細胞抽出液の抗hSMG-1抗血清(抗血清N、抗血清L、又は抗血清C)による免疫沈降物について、抗AK026858.1翻訳産物抗体を用いるウエスタンブロットの結果を示す、図面に代わる写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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