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明細書 :不死化ナチュラルキラー細胞株

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4033390号 (P4033390)
公開番号 特開2004-147565 (P2004-147565A)
登録日 平成19年11月2日(2007.11.2)
発行日 平成20年1月16日(2008.1.16)
公開日 平成16年5月27日(2004.5.27)
発明の名称または考案の名称 不死化ナチュラルキラー細胞株
国際特許分類 C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/00 ZNAB
C12Q 1/02
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 21
微生物の受託番号 FERM BP-08518
FERM BP-08519
FERM BP-08520
FERM BP-08521
FERM BP-08522
FERM BP-08523
FERM BP-08524
FERM BP-08525
FERM BP-08526
全頁数 16
出願番号 特願2002-316870 (P2002-316870)
出願日 平成14年10月30日(2002.10.30)
審査請求日 平成16年10月25日(2004.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】飯塚 悟
【氏名】高井 俊行
【氏名】伊藤 由美
【氏名】伊藤 梢
【氏名】帯刀 益夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】三原 健治
参考文献・文献 特開2001-224367(JP,A)
国際公開第00/020599(WO,A1)
Int.Immunol.,Vol.10,No.8(1998),p.1093-1101
日本薬学会第119年会要旨集,Vol.119,No.1(1999),p.179
調査した分野 C12N 5/00-5/28
C12Q 1/02
BIOSIS/WPI(DIALOG)
PubMed
JST7580/JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
脾臓細胞に由来し、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力及び抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化することを特徴とする不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項2】
33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されることを特徴とする請求項1記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項3】
齧歯類起源であることを特徴とする請求項1又は2記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項4】
齧歯類がマウスであることを特徴とする請求項3記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項5】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてDX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1を有していないことを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項6】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてFcγR3及びCD94を有しており、かつ、NK1.1、DX5及びLy49Hを有していないことを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項7】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、DX5及びLy49Hを有していないことを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項8】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、Ly49Hを有していないことを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項9】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてFcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1及びDX5を有していないことを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項10】
不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有していることを特徴とする請求項4記載の不死化ナチュラルキラー細胞株。
【請求項11】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK1(FERM BP-08518)。
【請求項12】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK2(FERM BP-08519)。
【請求項13】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK3(FERM BP-08520)。
【請求項14】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK4(FERM BP-08521)。
【請求項15】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK6(FERM BP-08522)。
【請求項16】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK8(FERM BP-08523)。
【請求項17】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK9(FERM BP-08524)。
【請求項18】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNK10(FERM BP-08525)。
【請求項19】
不死化ナチュラルキラー細胞株TNKb(FERM BP-08526)。
【請求項20】
SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの脾臓から単離して得られるナチュラルキラー細胞を培養して、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力及び抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化する細胞株を樹立することを特徴とする不死化ナチュラルキラー細胞株の製造方法。
【請求項21】
被検物質の存在下、請求項1~19のいずれか記載の不死化ナチュラルキラー細胞株を培養し、該不死化細胞株における細胞傷害活性の程度を測定・評価することを特徴とするナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不死化ナチュラルキラー(NK)細胞株に関し、詳しくはSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの脾臓細胞由来のNK細胞を継代培養して樹立することができる、不死化NK細胞株やその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医薬品の安全性や有効性に関する試験研究には主として動物が用いられていたが、動物愛護の観点から動物を使用する代わりに、培養細胞等を用いてインビトロで医薬品の有効性や安全性を試験研究する技術の実用化レベルでの研究が行われている。例えば、生体組織から採取した初代培養細胞や無限増殖する不死化細胞(樹立細胞)系を用いる方法で予め試験した後に動物試験が行われている。しかし、初代細胞は初期段階ではよく増殖するが、継代培養とともに次第に増殖が停止し、やがては死滅する(この現象を細胞老化という)。さらに、初代細胞は、その特性が生体組織から採取する度に異なるという危惧に加え、継代とともに変化することが指摘されている。特に、増殖速度が非常に遅い場合や微小器官に由来する場合には、試験に供するに足る初代細胞を得ることは非常に困難であるとされている。
【0003】
一方、初代培養の継代を重ねるなかで、細胞老化を免れて無限増殖する能力を獲得した不死化細胞では、安定して均一の特性を有することになるが、このような不死化細胞の多くは、その細胞が生体において本来有していた形態や機能の一部又はその全てを喪失することが多い。そのため、このような不死化細胞株を用いた試験では、その細胞株の由来する組織での本来の特性を正確に反映することは難しいとされていた。そこで、初代細胞にras遺伝子やc-myc遺伝子などの発癌遺伝子、アデノウイルスのE1A遺伝子、SV40ウイルスのラージT抗原遺伝子、ヒトパピローマウイルスのHPV16遺伝子等を導入して細胞を形質転換し、初代細胞の有する活発な増殖能を継続的に保持し、さらに継代することによってその細胞固有の特性を喪失しない不死化細胞を樹立する試みがなされている。ところが、このような不死化細胞においても、対象とする臓器によっては、その初代細胞を調製し、これらの癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を導入する時点で、すでに幾つかの機能を喪失するため、本来の機能を保持する厳密な意味での不死化細胞の取得は困難であった。特に、増殖速度が非常に遅い場合や微小器官に由来する場合の初代細胞を調製して株化することは極めて困難であった。
【0004】
これに対し、近年確立された動物個体への遺伝子導入技術を用いて、個々の細胞に癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を導入するかわりに、これらの遺伝子を安定的に染色体に組み込んだ遺伝子導入動物を作出し、個体の発生時点において既に癌遺伝子やラージT抗原遺伝子を細胞の中に保有する動物の臓器から初代細胞を調製して、これを継代することによって不死化細胞を樹立する方法が報告されている。特にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの臓器から得られる不死化細胞は、その増殖や分化形質の発現を温度を変えることによって操作することができるため、非常に有効であるとされている(例えば、非特許文献1~8参照。)。
【0005】
他方、NK細胞は、ヒト末梢血リンパ球の約5~15%を占め、骨髄から分化し、形態学的には細胞質内にアズール顆粒を有する大型顆粒リンパ球で、抗原による前感作なしに腫瘍細胞やウイルス感染細胞などの標的抗原細胞を障害することができる、生体の恒常性維持のために重要な細胞である。NK細胞はまた、癌の増殖抑制に有効であることがよく知られており、癌細胞に対し、非特異的に、また主要組織適合抗原系(MHC)による拘束を受けることなく、キラーT細胞より広い範囲の癌細胞を攻撃する。かかる特徴から、NK細胞は癌やウイルスによる感染症の治療に用いることが期待されている。しかし、治療に用いるためには、標的の認識機構を含め、NK細胞の詳細を明らかにする必要がある。そして、かかる研究を容易ならしめるため、NK細胞の株化が強く望まれていた。
【0006】
従来、高い細胞傷害活性を保った状態のNK細胞を効率的に増殖する方法として、末梢血単核球細胞とあらかじめ増殖能を失わせたヒトウイルス腫瘍細胞株HFWTとをインターロイキン-2の存在下で混合培養する工程を含む、ヒトNK細胞の増殖方法(例えば、特許文献1参照。)や、増殖刺激用細胞の混入のないヒトNK細胞を提供することを目的として、ヒトNK細胞を増殖刺激用細胞の存在下で増殖培養するために用いる足場依存性の増殖刺激用細胞であって、検出手段が導入されたことを特徴とする細胞、及びこの細胞を用いてヒトNK細胞を増殖培養する方法(例えば、特許文献2参照。)が知られているが、これらNK細胞の増殖方法は、特定条件下でNK細胞を増殖させ、NK細胞を容易に得ることを目的としている。しかし、NK細胞の細胞株の樹立と異なり、半永久的にNK細胞を産生することができるわけではなく、NK細胞を一時的に増殖する方法を開示しているに過ぎない。
【0007】
また、安定的に増殖し続けるNK細胞株の作製は非常に困難であり、これまでにマウスNK細胞株として4例が報告されている(例えば、非特許文献9~12参照。)が、NK細胞としての詳細な解析がなされておらず、単にNatural Killing能を有していることが報じられているに過ぎず、動物から単離したNK細胞と同等の特徴を有するものであるか否かは明らかではない。さらに、これらマウスNK細胞株に関する報告にある細胞株については、広く配布されていないこと、及び、その動態が明らかでないことから研究・実験材料として使用されておらず、免疫の誘導、修飾及び治療などに用いられていない。
【0008】
【特許文献1】
特開2001-149069号公報
【特許文献2】
特開2002-45174号公報
【非特許文献1】
Transgenic Research 4, 215-225, 1995、
【非特許文献2】
Genes to Cells, 2, 235-244, 1997
【非特許文献3】
Exp. Cell Res., 197, 50-56, 1991
【非特許文献4】
Exp. Cell Res., 209, 382-387, 1993
【非特許文献5】
Exp. Cell Res., 218, 424-429, 1995
【非特許文献6】
Blood, 86, 2590-2597, 1995
【非特許文献7】
J. Cell. Physiol., 164, 55-64, 1995
【非特許文献8】
Exp. Hematol., 27, 1087-1096, 1999
【非特許文献9】
Nature, 287, 47-49, 1980
【非特許文献10】
J. Exp. Med., 181, 1785-1795, 1995
【非特許文献11】
J. Immunol., 158, 112-119, 1997
【非特許文献12】
Int. Immunol., 10, 1093-1101, 1998
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
NK細胞は、ウイルスに感染した細胞や癌化した細胞を認識し、それを殺傷することで、生体防御の一端を担っている。この特徴から、感染や癌の治療が可能であることが示唆されるが、それには標的の認識機構を含め、この細胞の詳細を明らかにする必要がある。従来のNK細胞研究においては、マウスを処分し、NKが常在する脾臓や末梢血から2~3時間かけて精製を行ったのち、実験に用いていた。この方法では、時間がかかること、NK細胞以外の細胞の混入の可能性があること、マウスを毎回殺す必要があること、という点で不利・不便であった。また、せっかく単離し、培養したNK細胞であっても、その寿命は限られており、サイトカイン存在下で培養したとしても1ヶ月が限界であって、その後は死滅するという問題があった。本発明の課題は、NK細胞本来の機能・特性を保持する不死化NK細胞株及びその樹立方法並びに当該不死化NK細胞株を用いた有用物質のスクリーニング方法や細胞ワクチンを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、不死化遺伝子としてのSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの脾臓からNK細胞を単離し、得られたNK細胞を10ヶ月以上継代培養することによって不死化NK細胞株を樹立し、得られた不死化NK細胞株が安定した増殖を示し、NK細胞の特徴を保持していることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)脾臓細胞に由来し、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力及び抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化することを特徴とする不死化ナチュラルキラー細胞株や(2)33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されることを特徴とする上記(1)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(3)齧歯類起源であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(4)齧歯類がマウスであることを特徴とする上記(3)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(5)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてDX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1を有していないことを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(6)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてFcγR3及びCD94を有しており、かつ、NK1.1、DX5及びLy49Hを有していないことを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(7)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、DX5及びLy49Hを有していないことを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(8)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、Ly49Hを有していないことを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(9)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてFcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1及びDX5を有していないことを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株や(10)不死化ナチュラルキラー細胞株が、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有していることを特徴とする上記(4)記載の不死化ナチュラルキラー細胞株に関する。
【0012】
また本発明は、(11)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK1(FERM BP-08518)や(12)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK2(FERM BP-08519)や(13)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK3(FERM BP-08520)や(14)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK4(FERM BP-08521)や(15)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK6(FERM BP-08522)や(16)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK8(FERM BP-08523)や(17)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK9(FERM BP-08524)や(18)不死化ナチュラルキラー細胞株TNK10(FERM BP-08525)や(19)不死化ナチュラルキラー細胞株TNKb(FERM BP-08526)に関する。
【0013】
さらに本発明は、(20)SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの脾臓から単離して得られるナチュラルキラー細胞を培養して、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力及び抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化する細胞株を樹立することを特徴とする不死化ナチュラルキラー細胞株の製造方法や、(21)被検物質の存在下、上記(1)~(19)のいずれか記載の不死化ナチュラルキラー細胞株を培養し、該不死化細胞株における細胞傷害活性の程度を測定・評価することを特徴とするナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の不死化NK細胞株としては、脾臓細胞に由来し、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力(Natural Killing)及び/又は抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力(ADCC)を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化する樹立細胞株であればどのようなものでもよく、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制される細胞株が好ましい。かかる細胞株として、不死化NK細胞株TNK1(この不死化NK細胞株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERMP-19035として寄託されている。以下同様である。)、不死化NK細胞株TNK4(FERM P-19038)、不死化NK細胞株TNK8(FERM P-19040)、不死化NK細胞株TNK9(FERM P-19041)を具体的に挙げることができる。また、本発明の不死化NK細胞株の由来は特に制限されないが、マウス等の齧歯類起源の不死化NK細胞株を好適に例示することができる。
【0015】
このような不死化NK細胞株として、上記特徴のほか、細胞表面抗原としてDX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1を有していない不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK1(FERM P-19035)を具体的に挙げることができ、細胞表面抗原としてFcγR3及びCD94を有しており、かつ、NK1.1、DX5及びLy49Hを有していない不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK2(FERM P-19036)を具体的に挙げることができ、細胞表面抗原としてNK1.1、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、DX5及びLy49Hを有していない不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK3(FERM P-19037)、TNK6(FERM P-19039)、TNK10(FERM P-19042)及びTNKb(FERM P-19043)を具体的に挙げることができ、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3及びCD94を有しており、かつ、Ly49Hを有していない不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK4(FERM P-19038)を具体的に挙げることができ、細胞表面抗原としてFcγR3、Ly49H及びCD94を有しており、かつ、NK1.1及びDX5を有していない不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK8(FERM P-19040)を具体的に挙げることができ、細胞表面抗原としてNK1.1、DX5、FcγR3、Ly49H及びCD94を有している不死化NK細胞株を例示することができ、かかる不死化NK細胞株として、不死化NK細胞株TNK9(FERM P-19041)を具体的に挙げることができる。
【0016】
また、本発明の不死化NK細胞株の製造方法としては、SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの脾臓から単離して得られるナチュラルキラー細胞を培養して、細胞質内にアズール顆粒を有し、前感作無しで標的細胞を殺傷する能力及び/又は抗体で被覆された標的細胞を殺傷する能力を保持し、インターロイキン-2により増殖・活性化する細胞株を樹立する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、上記トランスジェニックマウスの脾臓から、NK1.1+MACS(磁気ビーズ法)を用いてNK細胞を単離し、単離したNK細胞に、増殖を促すサイトカインであるインターロイキン-2を1000U/mL含む培地で5%CO2、33℃の条件下で、10ヶ月以上継代培養することによって不死化NK細胞株を樹立することができる。
【0017】
また、上記トランスジェニックマウスは、以下のようにして作製することができる。例えば、SV40の複製起点(ori)を欠失させたtsA58ori(-)-2の全DNAを制限酸素BamHIで開環してpBR322に導入したプラスミドpSVtsA58(-)-2(Ohno T. et al., Cytotechnology 7, 165-172, 1991)を常法に従い大腸菌内で大量に増幅させ、この増幅したプラスミドを制限酵素BamHIで切断してベクター部位を除去し、tsA58のラージT抗原遺伝子を有するDNA断片を調製する。このラージT抗原遺伝子のプロモーターが内在するDNA断片を常法に従いマウス等の齧歯類などの動物の全能性細胞に遺伝子導入することにより、SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を全ての細胞内に有する遺伝子導入マウス、すなわちトランスジェニックマウスを作出することができる。かかるトランスジェニックマウスは、その全ての体細胞においてtsA58のラージT抗原遺伝子が発現することになる。そして、上記全能性細胞としては、受精卵や初期胚のほか、多分化能を有するES細胞などを具体的に挙げることができる。また、全能性細胞へのDNAの導入方法としては、マイクロインジェクション法、電気パルス法、リポソーム法、リン酸カルシウム法等の公知の遺伝子導入法を用いることができる。
【0018】
上記マウスの全能性細胞(培養細胞)の核を、除核未受精卵に移植して初期化すること(核移植)で卵子にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入することができる。また、前核期受精卵の雄性前核にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子をマイクロインジェクションして得られる受精卵を仮親の卵管に移植して産仔を得た後、注入した遺伝子を持つ産仔を選出し、安定的にかかる遺伝子が組み込まれた個体を得ることで、個体発生時にすでにtsA58のラージT抗原遺伝子が各組織の細胞の染色体に組み込まれた遺伝子導入マウス、すなわちトランスジェニックマウスを効率よく作出することができる。
【0019】
本発明の不死化NK細胞は、33℃において永久的増殖能を保持し、37℃においては増殖が抑制され、39℃においては増殖を停止するため、細胞固有の分化形質の発現を制御することができるという特色を有している。また、本発明の不死化NK細胞は、10ヶ月の継代培養後においても33℃で良好な増殖性を示し、NK細胞としての機能を保持していることから、免疫の誘導・修飾、癌の治療、ウイルス疾患の治療の研究や、これら病態に関連する疾患等の診断薬や治療薬の開発を細胞レベルで研究するのに有用である。また、癌細胞やウイルス感染細胞をMHC非拘束的に攻撃・殺傷する能力を保持していることから細胞ワクチンとして有用である上に、以下に示すように、NK細胞の細胞傷害活性促進又は抑制物質のスクリーニングに用いることができる。
【0020】
本発明におけるNK細胞の細胞傷害活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法としては、被検物質の存在下、上記不死化NK細胞株を培養し、該不死化細胞株における細胞傷害活性の程度、すなわち、前感作無しで標的細胞を殺傷する(Natural Killing)能力及び/又は抗体で被覆された標的細胞を殺傷する(ADCC)能力の程度を測定・評価する方法であれば特に制限されず、通常、被検物質の非存在下に培養した対照の測定値と比較・評価することにより行われる。そして、上記スクリーニング方法により得られるNK細胞の細胞傷害活性促進物質又は抑制物質も免疫の誘導・修飾、各種癌、各種ウイルス感染症の治療薬、予防及び/又は症状改善剤として利用できる可能性があり、本発明に含まれる。
【0021】
本発明の細胞ワクチンとしては、上記本発明の不死化NK細胞株を主成分とするものであれば特に制限されるものではないが、上記不死化NK細胞株としてはヒト由来の不死化NK細胞株が好ましく、かかるヒト由来の不死化NK細胞株は、ヒト末梢血よりNK細胞を単離し、SV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入し、継代培養を繰り返すことにより、あるいはヒトの胚性幹細胞(ES細胞)にSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入し、これをインビトロでNK細胞に分化させ、継代培養を繰り返すことにより樹立することができる。また、不死化NK細胞株としては、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されるものが好ましい。本発明の細胞ワクチンは、インビボ、エクスビボ又はインビトロで作用させることができる。例えば、本発明の不死化NK細胞株の懸濁液からなる本発明の細胞ワクチンは、ヒト体内に治療用のワクチンとして接種されることになるが、37℃では増殖が抑制されることから安全性が高い。通常、細胞ワクチンとしての安全性を高めるために、加熱処理、放射線処理、あるいはマイトマイシンC処理などが必要とされるが、本発明の不死化NK細胞株は、かかる細胞不活化処理が不要で、かつ、33℃で増殖することができるが、37℃では増殖が抑制されることから極めて安全性が高いワクチンということができる。
【0022】
本発明の細胞ワクチン、特にヒト由来の不死化NK細胞株を主成分とする細胞ワクチンは、ヒトに移入可能な細胞ワクチンとして、白血病、肝癌、肺癌、胃癌、大腸癌などの各種腫瘍、及び各種ウイルス、細菌等による感染症等に対して有利に利用することができる。本発明の細胞ワクチンの投与量は、患者の年齢、体重、性別、癌の種類及び癌の進行度、症状等により異なり、一概に決定できないが、現在行われている細胞ワクチン療法で注入されるのと同程度の量が患者に投与することができる。本発明の細胞ワクチンは、患者本人に使用することもできるが、患者本人以外の多数の患者にも投与することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1(トランスジェニックマウスの作出)
SV40の温度感受性突然変異株tsA58のDNAを導入したトランスジェニックマウスは、下記の手順で作出した。
【0024】
(導入遺伝子の調製)
マイクロインジェクションにはSV40の温度感受性突然変異株tsA58のゲノムDNAを遺伝子工学的手法で改変したものを使用した。tsA58のゲノムDNAを制限酵素BamHIで開環し、pBR322のBamHI部位に導入し、SfiI配列をSacIIに変換してSV40の複製起点(ori)を欠失するori(-)としたDNAクローンpSVtsA58ori(-)-2(Ohno T. et al., Cytotechnology, 165-172, 1991)から常法に従い導入用DNAを調製した。すなわち、大腸菌内で大量に増幅させることにより得られたプラスミドDNAのpSVtsA58ori(-)-2を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で消化した後、アガロース電気泳動法(1%ゲル;ベーリンガー社製)により分離し、ゲルを溶解した後、フェノール・クロロホルム処理及びエタノール沈殿処理を行いDNAを回収した。回収した精製DNAをTEバッファー(1mMのEDTAを含む10mMのTris-HCl;pH7.6)に溶解して170μg/mlの精製DNAを含む溶液を得た。このDNA溶液を注入用バッファー(0.1mMのEDTAを含む10mMのTris-HCl;pH7.6)で5μg/mlとなるように希釈して注入用DNA溶液を調製した。なお、調製したDNA溶液は注入操作まで-20℃で保存した。
【0025】
(トランスジェニックマウスの作出)
マウス前核期受精卵への上記調製した注入用DNA溶液のマイクロインジェクションは下記の要領で行った。性成熟した8週齢のウィスターマウスを明暗サイクル12時間(4:00~16:00を明時間)、温度23±2℃、湿度55±5%で飼育し、膣スメアにより雌の性周期を観察して、ホルモン処理日を選択した。まず、雌マウスにより150IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(日本ゼンヤク社製;PMSゴナドトロピン(pregnanto mare serum gonadotropin:PMSG))を腹腔内投与し、その48時間後に75IU/kgのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(三共臓器社製;プベローゲン(human chorionic gonadotropin:hCG))を投与して過剰排卵処理を行った後、雄との同居により交配を行った。hCG投与32時間後に卵管灌流により前核期受精卵を採取した。卵管灌流及び卵の培養にはmKRB液(Toyoda Y. and Chang M.C., J. Reprod. Fertil., 36, 9-22, 1974)を使用した。採取した受精卵を0.1%のヒアルロニダーゼ(シグマ社製;Hyaluronidase Typel-S)を含むmKRB液中で37℃、5分間の酵素処理を行い卵丘細胞を除去した後、mKRB液で3回洗浄して酵素を除去し、DNA注入操作までCO2-インキュベーター内(5%のCO2-95%のAir,37℃、飽和湿度)に保存した。この様にして準備したマウス受精卵の雄性前核に前記DNA溶液を注入した。注入した228個の卵を9匹の仮親に移植して出産させ80匹の産仔を得た。注入DNAのマウスへの導入は、離乳直後に断尾して得た尾より調製したDNAをPCR法により検定した[使用プライマー;tsA58-1A,5’-TCCTAATGTGCAGTCAGGTG-3’(1365~1384部位に相当:配列番号1)、tsA58-1B,5’-ATGACGAGCTTTGGCACTTG-3’(1571~1590部位に相当:配列番号2)]。その結果、遺伝子導入の認められた20匹(雄6匹、雌8匹、性別不明6匹)の産仔の中から性成熟期間を経過する12週齢まで生存した11ラインのトランスジェニックマウス(雄ライン:#07-2,#07-5,#09-6,#12-3,#19-5,雌ライン:#09-7,#11-6,#12-5,#12-7,#18-5,#19-8)を得た。これらのG0世代のトランスジェニックマウスとウィスターマウスを交配し、雄ファウンダーの2ライン(#07-2,#07-5)と雌ファウンダーの3ライン(#09-7,#11-6,#19-8)において次世代以降への遺伝子の伝達を確認した。
【0026】
実施例2(脾臓からのNK細胞の分離・調製)
脾臓からのNK細胞の分離・調製は以下のようにして行った。実施例1で得られたSV40の温度感受性突然変異株tsA58のラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(1匹)から脾臓を摘出し、NK1.1+MACS(磁気ビーズ法)でNK細胞を単離した。これをNK細胞の増殖を促すサイトカインである、インターロイキン-2を1000U/mL含む培地[RPMI-1640(SIGMA社製、R8758)、10%(v/v)FBS(SIGMA社製、Lot:40k2368)、50μMペニシリン・50μg/mLストレプトマイシン(大日本製薬社製、16-700-49)、50μM 2-メルカプトエタノール、1mM ピルビン酸、1×MEM Non-essential Amino Acid Solution(GIBCO BRL社製、11140-850)、1000U/mL recombinant human インターロイキン-2(ペプロテック社製、200-02またはストラスマン・バイオテック社、IL2-50)]で約1ヶ月間培養し、0.2個/wellに希釈して96well培養プレートに蒔いた。すべての培養は、5%CO2、33℃インキュベーター内で行った。244wellに蒔いたうち、約30wellから細胞の増殖が見られたが、最終的に増殖の良好であった8株、すなわち、TNK1、TNK2、TNK3、TNK4、TNK6、TNK8、TNK9、TNK10を選択した。これら8種の不死化NK細胞株について、以下に示すNK細胞の特徴を正常に保持しているか調べてみた。
1.ウイルスに感染したり癌化した細胞を、前感作なしに殺傷する。
2.抗体で被覆された細胞を、殺傷する。
3.刺激に応答して、IFN-γなどのサイトカインを生産する。
4.特徴的細胞表面抗原(NK1.1など)を有する。
5.インターロイキン-2により増殖・活性化する。
【0027】
実施例3(ライトギムザ染色による形態観察)
NK細胞は標的細胞の殺傷にかかわる顆粒を蓄えており、ライトギムザ(Wright-Giemsa)染色法で染めると顆粒が可視化できる。8種の不死化NK細胞株及び実施例2における希釈前の不死化NK細胞群(TNKb)をサイトスピンでスライドグラスに接着させライトギムザ法(ライト染色液・ギムザ染色液、ともにメルク社製)にて染色し、可視化した。結果を図1(例えば、参考写真1参照。)に示す。図1中、Bは、上記TNKbを意味する。この結果、各不死化NK細胞株とも、紫色に染まり、アズール顆粒を認めることができた。このことから、各不死化NK細胞とも形態的に正常なNK細胞の特徴を有していることが確認された。
【0028】
実施例4(SV40トランスジェニックマウス由来であることの確認)
得られた8種の不死化NK細胞株及びTNKb等について、PCR法を用いてSV40T遺伝子の有無を確認した[使用プライマー;SV404441S,5’-GGAGGAGTAGAATGTTGAG-3’ :配列番号3、SV40T4892AS,5’-GTGTTGATGCAATGTACTGC-3’ :配列番号4]。なお、コントロールとして、FcεRIgを用いた。その結果、8種の不死化NK細胞株においてSV40遺伝子の特徴的なバンドを検出することができ、該トランスジーンを持つことが確認できた。同様に、ウエスタンブロット法を用いてSV40Tタンパク質を検出した。その結果、8種の不死化NK細胞株及びTNKbにおいてSV40Tタンパク質の特徴的バンドを検出することができ、該タンパク質が存在することが確認できた。なお、コントロールとしてG3PDHを用いた。また、このマウスに由来する細胞株は、トランスジーンの構造上、33℃で不死化し39℃で不死化が解除され増殖停止・死滅する。MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazo-lium bromide)はミトコンドリア内膜の脱水素酵素などにより開裂されて赤紫色のMTT-formazanを生成する。この呈色反応が細胞の増殖能に比例することに基づいたMTTアッセイで8種の不死化NK細胞株及びTNKbの増殖を調べたところ、各NK細胞株とも上記の温度依存的な増殖が見られた。これらのことから、8種の各不死化NK細胞株はSV40Tトランスジェニックマウス由来の細胞株であることが確認された。結果を図2に示す。
【0029】
実施例5(増殖因子要求性)
免疫細胞は生体外へ単離すると、特定の増殖因子を含む培地で培養する必要があるものが多い。NK細胞は、増殖にインターロイキン-2を要求することが知られている。増殖因子は高価であり、長期保存にも注意が必要であることから、これを必要とせず培養できれば、もっとも好ましい。本発明にかかる細胞株は、培養開始当初から1000U/mLのインターロイキン-2を含む培地で培養を行ってきたが、これを減らす、又は、含まない状態で培養できるかを検討した。各種濃度のヒト組換えインターロイキン-2(ペプロテック社製またはストラスマン・バイオテック社製)で6日間の培養を行ったのち、MTTアッセイでNK細胞の増殖を調べた。結果を図3に示す。その結果、これら8種の不死化NK細胞株及びTNKbの増殖はいずれも1000U/mLが最良であった。この実験の結果、得られたNK細胞株はインターロイキン-2濃度依存的に増殖していることから、インターロイキン-2を減らさない方がよいことがわかった。
【0030】
実施例6(細胞傷害活性)
NK細胞は、2つの殺傷機構を有している。1つは、前感作なしでウイルスに感染したり、癌化した細胞を殺傷するというもの(Natural Killing)で、もう一つは抗体で被覆された細胞を殺傷する(ADCC)というものである。8種の各NK細胞株及びTNKb(E)が、この2つの殺傷機構を保持するか、51Cr遊離試験で検討した。標的細胞(T)として、NK細胞による細胞傷害に感受性であるYAC-1細胞、RL♂1細胞及びB16-F10細胞をそれぞれE:T=10:1の割合で用いてNatural Killing能を測定し、また、標的細胞(T)として、トリニトロフェノール(TNP)を細胞表面に結合させたEL-4細胞とマウス抗TNP IgG1抗体免疫複合体をE:T=10:1の割合で用いてADCC能を測定した。結果を図4に示す。図4中、LAKは1000U/mLインターロイキン-2を含む培地で約7日間刺激・増殖させた脾臓由来のフレッシュなNK細胞を意味する。図4(上)から、TNK8株がLAK同様に特に高いNatural Killing能を示したことから、TNK8株はNatural Killingのメカニズムの解明に特に有用であることがわかった。また、図4(下)から、NK細胞による細胞傷害に非感受性であるEL-4細胞であっても、抗体との免疫複合体の場合には、8種の各不死化NK細胞株、とりわけTNK2、TNK3、TNK6、TNK8、TNK10の各細胞株が抗体濃度依存的に高いADCC能を示した。
【0031】
実施例7(細胞表面抗原)
NK細胞は、図から読み取り得るNK1.1、DX5、FcγR3、Ly49H、CD94等の特徴的抗原を、その表面に有している。8種の不死化NK細胞株及びTNKbがこの抗原を正常に保持しているか、フローサイトメトリーで確認した。細胞懸濁液を作製し、特異的モノクローナル抗体と氷上で15分反応させた。緩衝液で洗浄ののち、2次反応が必要なものは標識2次抗体と氷上で15分反応させた。モノクローナル抗体で標識した細胞をFACScalibur(ベクトン・ディッキンソン社製フローサイトメトリー解析機)で解析した。結果を図5に示す。図5から、8種の不死化NK細胞株及びTNKbには、いくつかの特徴的抗原の発現が失われたり、減少しているがことがわかった。
【0032】
実施例8(サイトカイン生産性)
NK細胞は、刺激に応答して、IFN-γなどのサイトカインを生産する。8種の各NK細胞株及びTNKb(E)が、標的細胞(T)との接触刺激に応答して、IFN-γを生産するかどうか調べてみた。標的細胞として、NK細胞に障害されるYAC-1又は障害されないEL-4を用い、96穴培養プレート内で接触した状態で共培養を行った。24時間後に培養上清を回収し、ELISA法でIFN-γを測定した。結果を図6に示す。その結果、8種の各不死化NK細胞株及びTNKbは、障害されないEL-4との接触ではサイトカインを生産せず、障害されるYAC-1との接触ではサイトカインを生産し、正常に機能を保持することが確認できた。また、TNK8株がLAK同様に特に高いサイトカイン生産能を示したことから、TNK8株はサイトカイン生産のメカニズムの解明に、特に有用であることがわかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によると、安定的に増殖し続ける不死化NK細胞株を得ることができ、該細胞株を用いると、NK細胞の標的の認識機構、その他のNK細胞の詳細な研究や、NK細胞による癌の治療及びウイルスによる感染症の治療に関する研究を有利に行うことができる。また、本発明によれば、NK細胞の機能・特性を保持しているので、これを用いたNK細胞の作用を促進する有用物質および抑制物質のスクリーニングを行うことができる。
【0034】
【配列表】
JP0004033390B2_000002t.gifJP0004033390B2_000003t.gifJP0004033390B2_000004t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の8種の不死化NK細胞株における、ライトギムザ染色法による形態観察の結果を示す図である。
【図2】本発明の8種の不死化NK細胞株が、SV40Tトランスジェニックマウス由来であることを確認するための、PCRによるSV40T遺伝子の検出結果およびウエスタンブロット法によるSV40Tタンパク質の検出結果および温度依存性増殖を示す図である。
【図3】本発明の8種の不死化NK細胞株の増殖因子(インターロイキン-2)要求性を示す図である。
【図4】本発明の8種の不死化NK細胞株が、細胞傷害活性(Natural Killing能及びADCC能)を有すること示す図である。
【図5】本発明の8種の不死化NK細胞株の細胞表面抗原の解析結果を示す図である。
【図6】本発明の8種の不死化NK細胞株がサイトカイン生産能を有することを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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