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明細書 :二重染色法によるガン検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4004385号 (P4004385)
公開番号 特開2004-157053 (P2004-157053A)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発行日 平成19年11月7日(2007.11.7)
公開日 平成16年6月3日(2004.6.3)
発明の名称または考案の名称 二重染色法によるガン検出方法
国際特許分類 G01N  33/48        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI G01N 33/48 P
G01N 33/48 M
C12Q 1/68 Z
G01N 21/64 F
G01N 21/78 C
G01N 33/50 P
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2002-324433 (P2002-324433)
出願日 平成14年11月7日(2002.11.7)
審査請求日 平成17年2月17日(2005.2.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】椙村 春彦
【氏名】五十嵐 久喜
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】白形 由美子
参考文献・文献 特開平07-035748(JP,A)
特表2002-530676(JP,A)
特表2002-521682(JP,A)
葛目 博子,蛍光 in situ Hybridization法の検討,生理研技報告,1999年,第14号,第14頁-17頁
R. Holm,A highly sensitive nonisotopic detection method for in situ hybridization,Appl. Immunohistochem. Mol. Morphol.,2000年,Vol.8(2),p.162-165
調査した分野 G01N 33/48-33/98
PubMed
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の手順によりHER-2陽性の対象例についてガン組織を検出することを特徴とする二重染色法によるガン検出方法。
(I)病理標本を免疫染色して細胞膜をDAB発色させた後、
(II)細胞染色体に螢光マーカーを付与し、蛍光レーザー顕微鏡で染色体を観察する。次いで、
(III)前記細胞染色体にアルカリホスファターゼ標識抗FITC抗体を反応させてニューフクシン発色させて、ガン細胞の細胞染色体および形状を可視化する。
【請求項2】
細胞染色体への螢光マーカーの付与は、マイクロウェーブ間欠照射による螢光In situハイブリダイゼーションとして行うことを特徴とする請求項1の二重染色法によるガン検出方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、二重染色法によるガン検出方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、近年注目されるガン細胞増殖阻害剤であるハーセプチン等の治療対象症例(HER-2陽性)の選択に有用な、形態学的シグナルと遺伝子レベルのシグナルとが明瞭に可視画像として判別可能とされる、高精度なガン検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HER-2タンパク質を産生する遺伝子、すなわち、HER2/neu遺伝子はがん遺伝子のひとつとして注目されており、1986年にその配列が決定されている。この遺伝子はチロシンキナーゼ活性をもつ受容体型のタンパクで分子量185kDaの膜貫通型タンパクをコードしており、細胞外のシグナルを細胞内に伝達し細胞増殖を促進する機能を担っている。そして、乳癌や卵巣癌・胃癌において高頻度に増幅または過剰発現していることが知られている。このためHER2/neu遺伝子の増幅あるいはタンパクの過剰発現は、癌の早期再発や予後不良と相関し、乳癌や卵巣癌・胃癌などの臨床経過を予測する上で非常に有用である。特に乳癌においては、全患者の25~30%においてHER-2タンパクの過剰発現がみられ、こういった患者では転移をきたしやすく、進行が早いため生存率も低いことがわかっている。
【0003】
そこで、新規なガン治療剤のスクリーニング等においては、一般病理検査の対象とされた細胞がHER-2タンパク質を過剰発現しているかどうかを迅速に判定し、しかも対象とされる細胞を高精度に検出・診断することが重要な課題になっている。
【0004】
このような状況において、免疫染色法による判定方法が開発され、また、螢光マーカーの付与による観察との比較方法が提案されている(文献1および2)。
【0005】
【文献】
【表1】
JP0004004385B2_000002t.gif
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法においては、免疫染色によるHER-2発現状況と予後および治療効果の予測との間にはばらつきが認められたり、一方乳癌の10%前後で遺伝子の増幅なしにタンパクの発現のみが過剰となる例が認められるとの報告もある。
【0007】
このため、ガン診断のための方法としては精度が低いのが実情であった。そしてこのことは、従来の免疫組織染色法と螢光マーカー付与による比較観察においては、形態的細胞膜シグナルと核内染色体シグナルとの判別ができないという状況をともなっていた。
【0008】
この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、HER-2陽性、つまりHER-2タンパク質発現の対象症例について、高精度でガン検出することを可能とする新しい技術手段を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次の手順によりHER-2陽性の対象例についてガン組織を検出することを特徴とする二重染色法によるガン検出方法を提供する。
【0010】
(I)病理標本を免疫染色して細胞膜をDAB発色させた後、
【0011】
(II)(II)細胞染色体に螢光マーカーを付与し、蛍光レーザー顕微鏡で染色体を観察する。次いで、
【0012】
(III)前記細胞染色体にアルカリホスファターゼ標識抗FITC抗体を反応させてニューフクシン発色させて、ガン細胞の細胞染色体および形状を可視化する。
【0013】
そして、第2には、細胞染色体への螢光マーカーの付与は、マイクロウェーブ間欠照射による螢光In situハイブリダイゼーションとして行うことを特徴とする上記の二重染色法によるガン検出方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記のとおりの特徴を有するこの出願の発明は、HER-2陽性の治療対象症例の選択に有効であって、免疫組織化学的方法(IHC)と、蛍光In situハイブリダイゼーション(FISH、暗視野で蛍光レーザー顕微鏡で観察)並びに明視野での可視化(CISH)との2重染色を用いることにより、乳癌、卵巣癌、胃がん、肺癌等のガン組織の高精度検出を可能としている。
【0015】
その手順は▲1▼免疫染色(IHC)▲2▼染色体への螢光マーカー付与(FISH)、▲3▼ニューフクシン発色(CISH)である。
【0016】
すなわち、患者から患部組織を採取し常法に従い作成されたパラフィン包埋薄切り病理標本を、たとえば、先ず米DAKO社の手法
(たとえば、http://www.nisiq.net/~dakoj/her/senshoku.htmlを参照することができる)
に準じて処理しHER-2陽性の患者特有に見られるガン細胞表層に過剰生産されたHER-2タンパク質をDAB染色により褐色に発色(可視化)させてその発色強度を判定する(IHCステップ)。次いで細胞染色体に螢光マーカーを付ける(FISH法:この段階で暗視野下螢光レーザー顕微鏡観察すると染色体は緑色点として観測され、ガン細胞は染色体数異常(正常細胞に比べて数が多い)が見られる。しかしFISH法だけでは可視領域の光学顕微鏡では観察できないため、ガン細胞部分と正常細胞部分とを形状で同時に区別できない。そこで螢光観察後、さらにCISH処理を組み合わせニューフクシン発色させることにより、ガン細胞の癌特異蛋白(HER-2)を茶褐色に、染色体動原体を紫色の点として発色させて可視化観測する。
【0017】
たとえばその手順が上記のとおりのこの出願の発明による形態学的シグナルと遺伝子シグナルのシグナルとが組合された特有の可視画像はガン細胞の高精度判定において極めて有用である。
【0018】
そして、この出願の発明においては、従来二重染色を行うと、形態的シグナルと核内染色体シグナルが重なって十分な染め分けができないとされてきたが、最初に免疫染色(IHC)を行い、細胞膜をDAB染色し、さらにFISH処理時のハイブリダイゼーション工程におけるマイクロウェーブ(MW)間欠照射処理条件を最適化することにより、形態学的シグナルと核内染色体増幅シグナルとが重なることなく染め分けることが可能とされている。
【0019】
マイクロウェーブ(MW)間欠照射について、たとえば、出力コントロールが約150W~400Wの範囲において可変とされ、MW照射中に温度が急激に上昇する場合には出力を下げ、温度の上昇が好ましくないときは出力を挙げることで照射中にも可能とされるようにする。ハイブリダイゼーションにおけるMWの間欠照射の温度は40~45℃、出力は4/300W、3秒照射/2秒停止の繰返しの操作条件がたとえば好適に採用される。
【0020】
従来法では、IHC染色とFISHを別に行い、各々を観測比較したのに対して、この出願の発明では同一細胞でタンパク発現と遺伝子増幅を同時に観察できることから、より的確で信頼性の高い判定が可能となる。
【0021】
そこで以下により具体的にこの出願の発明の実施の形態について説明する。
【0022】
<A> HER-2/neu.IHC
以下の手順とする。
【0023】
【表2】
JP0004004385B2_000003t.gif
【0024】
添付した図面の図1は、HER-2タンパク質をDAB染色により褐色に発色(可視化)させた状態を示した白黒の写真である。
【0025】
<B> FISH
以下の手順とする。
【0026】
【表3】
JP0004004385B2_000004t.gif
【0027】
暗視野下螢光レーザー顕微鏡観察すると染色体は緑色点として観察され、ガン細胞には染色体異常が見られる。図2は、この観察像を白黒写真として例示したものである。
【0028】
<C> CISH
以下の手順とする。
【0029】
【表4】
JP0004004385B2_000005t.gif
【0030】
FISHだけでは染色体シグナルが可視光線の光学顕微鏡では観察できないがCISH後には、染色体動原体が紫色の点として発色され、可視化観察することができる。
【0031】
図3は、この観察像を白黒写真として例示したものである。
【0032】
【発明の効果】
以上のとおりのこの出願の発明によって、HER-2陽性の対象例選択に有用な、形態学的シグナルと遺伝子レベルのシグナルとが明瞭に可視画像として判別可能とされる、高精度なガン検出方法が提供される。
【0033】
なお、米国およびヨーロッパにおけるHER2検査ガイドラインでは通常
1)FIRST LineとしてIHC法を実施し、結果3+の場合治療薬の投与を決定する。
【0034】
2)IHC法の結果2+の場合、再検およびFISH法での確認を推奨する。とされている。この出願の発明法は、乳癌をはじめとするガン診断法として大いに注目を集めるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】IHC後の観察像を例示した写真である。
【図2】FISH後の観察像を例示した写真である。
【図3】CISH後の観察像を例示した写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2