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明細書 :蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ及びそれを利用した蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3772193号 (P3772193)
登録日 平成18年2月24日(2006.2.24)
発行日 平成18年5月10日(2006.5.10)
発明の名称または考案の名称 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ及びそれを利用した蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 33/68
C12Q 1/68 A
G01N 21/78 C
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2002-514409 (P2002-514409)
出願日 平成12年12月27日(2000.12.27)
国際出願番号 PCT/JP2000/009348
国際公開番号 WO2002/008766
国際公開日 平成14年1月31日(2002.1.31)
優先権出願番号 2000224939
優先日 平成12年7月26日(2000.7.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年3月10日(2003.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】梅澤 喜夫
【氏名】小澤 岳昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開平07-070200(JP,A)
国際公開第00/036093(WO,A1)
Rossi F., Charlton, C.A., and Blau, H.M. ,Monitoring protein-protein interactions in intact eukaryotic cells by β-galactodisase complementaio,Proc. Natl.Acad. Sci. USA,米国,1997年,94,8405-8410
Chong, S. et al.,Protein splicing involving the Saccharomyces cerevisiae VMA intein,J. Biol. Chem.,米国,1996年,Vol 271, No.36,22159-22168
Evans, T.C.Jr. et al.,Protien trans-splicing and cyclization by a naturally split intein from the dnaE gene of Synechocyst,J. Biol. Chem.,米国,2000年 3月31日,Vol. 275, No.13,9091-9094
調査した分野 G01N 33/68、C12N 15/09 ZNA、
MEDLINE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
二つの蛋白質間の相互作用を解析するためのプローブであって、inteinのN-末端側のポリぺプチドと蛍光蛋白のN-末端側のポリぺプチドを含むプローブaと、inteinのC-末端側のポリぺプチドと蛍光蛋白のC-末端側のポリぺプチドを含むプローブbの二つのプローブからなり、蛋白質-蛋白質相互作用によりプロテインスプライシングを生じさせ、物理化学的または生化学的に検出可能な蛍光蛋白を再生させることを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ。
【請求項2】
蛍光蛋白が、緑色蛍光蛋白である請求項1の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ。
【請求項3】
二つの蛋白質間の相互作用を解析するためのプローブであって、inteinのN-末端側のポリぺプチドと発光触媒酵素のN-末端側のポリぺプチドを含むプローブaと、inteinのC-末端側のポリぺプチドと発光触媒酵素のC-末端側のポリぺプチドを含むプローブbの二つのプローブからなり、蛋白質-蛋白質相互作用によりプロテインスプライシングを生じさせ、物理化学的または生化学的に検出可能な発光触媒酵素を再生させることを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ。
【請求項4】
発光触媒酵素が、ルシフェラーゼである請求項3の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ。
【請求項5】
inteinが酵母VMA由来のエンドヌクレアーゼである請求項1ないし4のいずれかの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ。
【請求項6】
inteinが藍藻由来のDnaEである請求項1ないし4のいずれかの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ
【請求項7】
請求項1ないし6記載のいずれかのプローブaを連結した蛋白質と請求項1ないし6記載のいずれかのプローブbを連結した蛋白質を共存させ、標識蛋白のシグナルを検出することを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法。
【請求項8】
請求項1ないし6記載のいずれかの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを発現するポリヌクレオチドを真核細胞内に導入することによりプローブaを連結した蛋白質とプローブbを連結した蛋白質を共存させる請求項7の蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、蛋白質-蛋白質相互作用を解析するためのプローブと、それを用いた蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、あらゆる生細胞中の蛋白質-蛋白質間の相互作用を精度高く、簡便に解析できる蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブと、それを用いた蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生細胞の構築や機能においては、蛋白質-蛋白質相互作用が重要な役割を果たしていることが知られている。
【0003】
また、遺伝子の転写機構や細胞内情報伝達などに代表される分子生物学や生物化学の様々な課題の多くは、蛋白質-蛋白質相互作用が関連するものである。
【0004】
分子生物学や生物化学の分野におけるこれらの研究課題の一部は、これまでに、蛋白質ライブラリー中の「獲物」蛋白質と「おとり」蛋白質との相互作用によってスクリーニングされるtwo-hybrid法(Chien,C.T.,Bartel,P.L.,Sternglanz,R.,Fields,S.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1991,88,9578-9582;Fields,S.,Song,O.,Nature 1989,340,245-246)などの発展によって解明されてきた。このtwo-hybrid法は、蛋白質-蛋白質相互作用の候補分子の同定を簡便にし、更に新たな蛋白質-蛋白質相互作用マップを作成する有効な手段として提唱されたものである(Flores,A.,Briand,J.F.,Gadal,O.,Andrau,J.C.,Rubbi,L.,Mullem,V.,Boschiero,C.,Goussot,M.,Marck,C.,Carles,C.,Thuriaus,P.,Sentenac,A.,Werner,M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1999,96,7815-7820;Ito,T.,Tashiro,K.,Muta,S.,Ozawa,R.,Chiba,T.,Nishizawa,M.,Yamamoto,K.,Kuhara,S.,Sakaki,Y.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1999,97,1143-1147;Walhout,A.J.M.,Sordella,R.,Lu,X.,Hartley,J.L.,Temple,G.F.,Brasch,M.A.,Thierry-Mieg,N.,Vidal,M.,Science2000,287,116-122)。しかし、このtwo-hybrid法では、細胞核中、レポーター遺伝子の付近で起こる解析可能な蛋白質相互作用に限って適用できるものであり、一般性に欠けるという問題があった。
【0005】
また、two-hybrid法は、信頼性においても問題があり、分析の度にモデル細胞あるいは動物を用いて、機能が既知となっている蛋白質による確認試験を行う必要があった(Walhout,A.J.M.et al.,Science 1999,287,116-122)。
【0006】
そこで、新たな蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法として、蛋白質との反応によりN-およびC-末端のユビキチンが再構成され、転写因子の開裂により細胞核付近にあるレポーターが活性化されるスプリットユビキチン蛋白センサー(USPS)法(Dunnwald,M.,Varshavsky,A.,Johnsson,N., Mol.Biol.Cell 1999,10,329-344;Johnsson,N.,Varshavsky,A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1998,95,5187-5192;Stagljar,I.,Korostensky,C.,Johnsson,N.,Heesen,S.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1998,95,5187-5192)や、蛋白質間の相互作用により、触媒ドメインと膜局在化ドメインが近づき、グアニン交換因子(GEF)またはRasが再構成され、これがさらに温度敏感変異酵母GEFを有する酵母を補完するというSOS-リクルートシステムが提案された(Aonheim,A.,Nucleic Acids Res.1997,25,3373-3374;Aronheim,A.,Zandi,E.,Hennemann,H.,Elledge,S.J.,Karin,M.,Mol.Cell.Biol.1997,17,3094-3102;Broder,Y.C.,Katz,S.,Aronheim,A.,Curr.Biol.1998,8,1121-1124)。
【0007】
さらに、より一般性の高いアプローチとして、スプリット酵素法が報告された(Rossi,F.,Charlton,C.A.and Blau,H.M,,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94,8405-8410;Remy,I.,Michnick,S.W.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1999,96,5394-5399;Pelletier,J.N.,Arndt,K.M.,Pluckthun,A.,Michnick,S.W.,Nature Biotech.1999,17,683-690)。この方法では、分割された酵素が蛋白質-蛋白質相互作用により再構築され、酵素活性が復旧される。このとき再構築された酵素の活性は、菌または細胞の表現型、あるいは蛍光性酵素基質によって測定できる。
【0008】
これらの様々な方法は、比較的精度が高く、いずれも細胞内蛋白質や膜蛋白質の相互作用を検定する目的には適するが、適切に設計された細胞にのみ適用できる、十分な精度や感度が得られない等の問題があった。また、これらの方法は、いずれも、解析を行うために種々の基質を用いる必要があり、手間がかかるという問題もあった。
【0009】
したがって、これまで、あらゆる蛋白質について、精度高く、かつ簡便に蛋白質-蛋白質相互作用を解析できる汎用性のある方法やプローブは全く知られていなかったのが実情である。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、あらゆる蛋白質について、高い精度で簡便に蛋白質-蛋白質相互作用を解析できる蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブと、それを用いた蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法を提供することを課題としている。
【発明の開示】
【0011】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、二つの蛋白質間の相互作用を解析するためのプローブであって、inteinのN-末端側のポリぺプチドと蛍光蛋白のN-末端側のポリぺプチドを含むプローブaと、inteinのC-末端側のポリぺプチドと蛍光蛋白のC-末端側のポリぺプチドを含むプローブbの二つのプローブからなり、蛋白質-蛋白質相互作用によりプロテインスプライシングを生じさせ、物理化学的または生化学的に検出可能な蛍光蛋白を再生させることを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを、第2には、この出願の発明は、蛍光蛋白が、緑色蛍光蛋白である蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第3には、二つの蛋白質間の相互作用を解析するためのプローブであって、inteinのN-末端側のポリぺプチドと発光触媒酵素のN-末端側のポリぺプチドを含むプローブaと、inteinのC-末端側のポリぺプチドと発光触媒酵素のC-末端側のポリぺプチドを含むプローブbの二つのプローブからなり、蛋白質-蛋白質相互作用によりプロテインスプライシングを生じさせ、物理化学的または生化学的に検出可能な発光触媒酵素を再生させることを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを提供する。
【0013】
さらに、この出願の発明は、第4には、発光触媒酵素が、ルシフェラーゼである蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを、第5には、inteinが酵母VMA由来のエンドヌクレアーゼである蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを提供し、第6には、この出願の発明は、inteinが藍藻由来のDnaEである蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを提供する。
【0014】
そして、この出願の発明は、第7には前記第1ないし第6のいずれかのプローブaを連結した蛋白質と前記第1ないし第6いずれかのプローブbを連結した蛋白質を共存させ、標識蛋白のシグナルを検出することを特徴とする蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法を提供し、第8には、前記第1ないし第7のいずれかの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを発現するポリヌクレオチドを真核細胞内に導入することによりプローブaを連結した蛋白質とプローブbを連結した蛋白質を共存させる蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1は、この発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブの構成および作用原理を例示した概略摸式図である。(I)は共存、(II)は蛋白質-蛋白質相互作用、(III)は蛋白質スプライシング、(IV)は標識蛋白連結を示す。さらに、(1a)は蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブa、(1b)は蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブb、(2a)はinteinのN-末端側のポリペプチド、(2b)はinteinのC-末端側のポリペプチド、(3)は標識蛋白を示し、とくに(3a)は標識蛋白のN-末端側のポリペプチドを、(3b)は標識蛋白のC-末端側のポリペプチドを示す。(4a)は蛋白質(または蛋白質部位)A、(4b)は蛋白質(または蛋白質部位)Bを示す。
【0016】
図2は、この発明の実施例において、EGFPのN-末端側のポリペプチドの構造について、 I124~I129の間で置換したアミノ酸残基を示した図である。
【0017】
図3は、この発明の実施例において、大腸菌中で発現され、pGEX_NVCで変換された蛋白質のSDS-PAGE分析結果を示した図である。(a)~(c)は、それぞれ、Coomassie Blue染色SDS-PAGE、(a)は蛋白質分子量標準(Novagen)と分子量(kDa)、(b)はGST-アフィニティーカラム前の粗生成物、(c)はGST-アフィニティーカラムによる精製後を示す。また、(d)~(e)は溶解産物の粗生成物のウェスタンブロッティングを示し、(d)はVDE特異的抗体による分析結果、(e)はGFP特異的抗体による分析結果を示す。
【0018】
図4は、この発明の実施例において作成されたプラスミド(蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>)の構成を示した概略摸式図である。帯上は制限酵素切断領域であり、破線はVDEinteinのエンドヌクレアーゼドメイン、白帯はエンドヌクレアーゼを有さないVDEintein、黒帯はGST標識、斜線はHis標識を示す。また、格子模様はリンカーを、stopは翻訳停止コドンを示し、startは翻訳開始コドンを意味する。
【0019】
図5は、この発明の実施例において、蛋白質CaMと蛋白質M13の相互作用によるスプライシング結果を示した図である。(a)はpET_NVCΔSD(C/M)(SDS-PAGE)、(b)はpET_NVCΔSD(M/C)、(c)はpET_NVCΔSD(/)gene1、(d)はpET_NVCΔSDinker(C/M)、(e)はpET_NVCΔSDlinker(M/C)、(f)はpET_NVCΔSDlinker(/)を示し、(A)はanti-His標識によるウェスタンブロッティング、(B)はanti-GFPによるウェスタンブロッティングの結果を示す。
【0020】
図6は、この発明の実施例において作成された各プラスミド(蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>)を有する大腸菌からの粗生成物の蛍光スペクトルを示した図である(励起:470nm、5.0nmバンド幅、発光:5.0nmバンド幅)。(a)はNVCΔSDlinker(/)、(b)はNVCΔSD(C/M)、(c)はNVCΔSDlinker(C/M)を示す。
【0021】
図7は、この出願の発明の実施例において用いられるプラスミドの構成を示した図である。点線は細胞内リボソーム結合サイト(IRES)を示す。また、pLucAll、pLucN、およびpLucCのcDNAはpcDNA3.1(+)に挿入されている。stopおよびstartは翻訳の停止および開始コドンを表す。
【0022】
図8は、この出願の発明の実施例において、LucNのみ、LucCのみ、およびLucAllの発光強度を示す図である。
【0023】
図9は、この出願の発明の実施例におけるインシュリン添加による蛋白質スプライシングの増加を示した図である。
【0024】
図10は、この出願の発明の実施例におけるアミノ酸変異の影響を示す図である。
【0025】
図11は、この出願の発明の実施例におけるLum_F発光強度のインシュリン濃度依存性を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブは、各プローブを連結させた二つの蛋白質が相互作用することによってスプライシングが起こり、プローブ中に含まれる分割された標識蛋白部位が連結して標識蛋白を再生し、シグナルを発するという原理に基づくものである。
【0027】
蛋白質スプライシングとは、翻訳後の蛋白質から内部蛋白セグメント(intein)が切り出されるプロセスである。このとき、inteinの切り出しと同時にフランキング配列(extein)の連結も生じる(Gimble,F.S.,Sci.Biol.1998,5,R251-256)。
【0028】
この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブは、このようなinteinの自己切り出しを巧妙に応用することにより、蛋白質間の相互作用を解析するものである。
【0029】
つまり、この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブは、2つの蛋白質に各々連結される2つのプローブa、bからなるものである。図1にこの出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブの原理を表す概略摸式図を示した。
【0030】
2つのプローブa(1a)およびプローブb(1b)において、プローブa(1a)は、inteinのN-末端側のポリペプチド(2a)と標識蛋白のN-末端側のポリペプチド(3a)を含むものであり、プローブb(1b)は、inteinのC-末端側のポリペプチド(2b)と標識蛋白のC-末端側のポリペプチド(3b)を含むものである。
【0031】
これらのプローブa(1a)およびb(1b)を、各々相互作用を解析したい蛋白質A(4a)およびB(4b)に連結することにより、蛋白質A-B間の相互作用が解析される。すなわち、プローブa(1a)およびプローブb(1b)を連結した蛋白質A(4a)と蛋白質B(4b)が共存(I)するとき、これらの蛋白質(4a、4b)が相互作用(II)すれば、intein(2)がスプライシング(III)によって切り出される。これによりintein(2)に結合されている標識蛋白部位(3a、b)が連結される(IV)ので、得られた標識蛋白(3)を解析すれば、蛋白質-蛋白質相互作用を確認することができるのである。
【0032】
このとき、蛋白質A(4a)と蛋白質B(4b)が相互作用(II)しなければ、inteinのスプライシング(III)が起こらないため、標識蛋白(3)は再生(IV)されず、検出することができない。
【0033】
この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブでは、各プローブa、b(1a、1b)は、inteinのポリペプチドと標識蛋白のポリペプチドのみからなるものであってもよいが、これら以外に、リンカー配列等を含んでいてもよい。したがって、プローブa、b(1a、1b)においてinteinのポリペプチド(2a、2b)と標識蛋白のポリペプチド(3a、3b)は、直接結合されていてもよいし、リンカー配列などのポリペプチドを介して結合されていてもよいのである。
【0034】
また、このようなinteinとしては、種々の生物由来の公知のものが適用できる。例えば、Saccharomyces cerevisiae(酵母)Sce VMA、Candida tropiallis(ガンジタ菌)CtrVMAなどに代表される真核生物由来のもの、Mycobacteriumtuberculosis(結核菌)Mtu recAなどの真正細菌由来のもの、Thermoplasmaasidophilum(サーモプラスマアシドフィラム)Tac VMAなどの古細菌由来のもの等が挙げられる。また、Cyanobacterium synechocystis sp.(藍藻)由来のDnaEもinteinとして例示される。
【0035】
この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)において、蛋白質A(4a)と蛋白質B(4b)の間に相互作用があるとき、inteinが自動的に切り出されるためには、inteinは、部位特異的エンドヌクレアーゼであることが好ましい。
【0036】
具体的には、酵母VMA由来のinteinや藍藻由来のSsp Dna Einteinが好ましく例示される。酵母VMAでは、新生翻訳生成物である120kDa VMA1が蛋白質スプライシングを触媒し、70kDaのH-ATPaseサブユニットと、50kDaの部位特異的エンドヌクレアーゼ(VDE、またはPI-Scel)を与える。このVDEは、上記蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)におけるintein部位(2a、2b)として好ましく用いられる。また、藍藻由来のSsp DnaEでは、strain PCC6803が、そのDNA配列が明らかになっている(N-末端側に123アミノ酸残基、C-末端側に36アミノ酸残基を有する)上、天然の分割inteinであり、N-およびC-exteinの結合を起こすことが知られている(Wu,H.,Hu,Z.,Liu,X.-Q.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA1998,95,9226-9231)ため、扱い易く、上記蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)におけるintein部位(2a、2b)として好ましく用いられる。
【0037】
以上に例示される種々のinteinの中でも藍藻由来のSsp DnaEinteinが、哺乳動物細胞における蛋白質-蛋白質間の相互作用をも感度高く検出でき、好ましい。もちろん、これ以外の、公知あるいは新規のinteinを用いてもよい。
【0038】
さらに、この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)では、inteinのスプライシング(III)が有効に起こるためには、蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ1aと1bにおいて、蛋白質のスプライシングに関与する二つの部位が隣接するように、正しく折り畳まれ、かつ、各部位が正確に並べられなければならない(Duan,X.,Gimble,F.S.and Quiocho,F.A.,Cell 1997,89,555-564)。したがって、inteinとしては、生物由来のものをそのまま用いてもよいが、一部のアミノ酸残基を変換したり、削除したり、適当なリンカー配列を導入したりして、スプライシングが起こりやすいように設計してもよい。
【0039】
例えば前記のVDEでは、エンドヌクレアーゼドメインを削除し、屈曲性のドデカペプチドリンカーで置き換えた変異体において、高いスプライシング活性を示すことが知られている(Cooper,A.A.,Chen,Y.J.,Lindorfer,M.A.,Stevens,T,H.,EMBO J.1993,12,2575-2583;Chong,S.,Xu,M.-Q.,J.Biol.Chem.1997 272,15587-15590)。一方、藍藻Ssp DnaEでは、前記のとおり、天然の開裂inteinであり、正しく折りたたまれてスプライシングが起こることが知られているが、とくにリンカー配列を導入してもしなくてもよい。
【0040】
以上のとおりのinteinは、N-末端側のポリペプチド(2a)とC-末端側のポリペプチド(2b)に分割される。この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)では、分割されたポリペプチド(2a、2b)は、標識蛋白のN-末端側のポリペプチド(3a)、およびC-末端側のポリペプチド(3b)に各々結合されてプローブとなる。
【0041】
一方、この出願の発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ(1a、1b)において、用いられる標識蛋白部位は、蛋白質AおよびBの相互作用(II)により、各プローブa、b(1a、1b)からinteinがスプライシング(III)したとき、直接ペプチド結合し、連結(IV)されるものである。このような標識蛋白(3)は、連結(IV)により再び解析可能となるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、蛍光蛋白や発光触媒酵素が好ましく適用される。緑色蛍光蛋白(GFP)などの蛍光蛋白は、連結されたとき発光し、可視的に解析でき、好ましい。また、ルシフェラーゼ等の発光触媒酵素も連結されて活性中心を形成し、ルミノメーターで容易に検出可能な光を発するため、好ましい。このとき、分割されたルシフェラーゼのN-およびC-末端が、夫々個々では蛍光を示さず、結合して再び活性を取り戻すようにするためには、活性中心を2つに分割するような分け方をする必要がある。ルシフェラーゼ酵素は、活性中心を含む広い間隔を挟んで、一つのβ-バレルと二つのβ-シートからなる大きなN-末端ドメインとC-末端部位の二つのドメインに折り畳まれていることが知られている(Waud,J.P.,Sala-Newby,G.B.,Matthews,S.B,Campbell,A.K.,Biochim.Biophys.Acta1996,1292,89-98;Conti,E.,Franks,N.P.,Brick,P.,Structure 1996,4,287-298)。したがって、これらの二つのドメインが連結している柔軟な部位で分割して、3aおよび3bとするとよい。さらに、ルシフェラーゼ酵素では、N-末端側のポリペプチド(3a)に、inteinのN-末端側のポリペプチド(2a)との結合部位に、システイン(Cys)残基、その-1上流側にチロシン(Tyr)残基、または-3、-4位に各々アラニン(Ala)とフェニルアラニン(Phe)を有することにより、さらに効率的なスプライシングが起こり易くなることが知られていることから、437番目のアルギニン残基をシステインに変換した変異体(R437C)、436番目のアスパラギン酸残基をチロシンに変換した変異体(D436Y)、434番目のイソロイシン残基をアラニンに変換した変異体(I434A)等の変異体を作成し、効率的なスプライシングが起こるようにしてもよい。
【0042】
この出願の発明では、以上のとおりの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブが提供される。そして、一方のプローブ(例えばプローブa)を相互作用を確かめたい一方の蛋白質(蛋白質A)に連結させ、もう一方のプローブ(プローブb)を相互作用を確認したいもう一方の蛋白質(蛋白質B)に連結して両者を共存させることにより、以上のとおりの原理、機構に基づき、蛋白質A-B間の相互作用が解析できるのである。
【0043】
各蛋白質(4a、4b)とプローブ(1a、1b)の連結方法は、蛋白質やプローブに影響を及ぼさなければ、どのような方法であってもよい。例えば、通常用いられる化学的、生物化学的、あるいは、遺伝子工学的手法等が適用できる。また、以上のとおりの蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを用いて蛋白質-蛋白質間の相互作用(発光)を検出、解析する方法は、どのようなものであってもよい。一般的に化学、生物化学等の分野で用いられる実験的手法や検出器を適用すればよく、例えばルミノメーター等を用いて簡便に検出、解析できる。
【0044】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0045】
実施例1 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>の作成
蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>のintein部位としては、酵母VMA1由来のintein(VDE)を用いた。
【0046】
以下、VDEの454のアミノ酸のうち、Cys1を最初のアミノ酸残基、Asn454を最後のアミノ酸残基とする。また、C_exteinは、Cys455から開始し、Cys1に隣接した extein残基を-1とナンバリングする。以下N-extein方向に-2、-3・・・と数字が大きくなる。
【0047】
標識部位としては、発光オワンクラゲ(Aequorea victoria)由来の緑色蛍光蛋白(EGFP:例えばCurrent Biology 1996,6(2);178-182)を用いた。
【0048】
蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>では、スプライシング結合部としては、EGFPのN-末端側のポリペプチドに1つのCys残基、-1位の上流にあるGly残基、-5、-4、-3の3つの疎水性アミノ酸残基が存在することが必要である。
【0049】
したがって、EGFPのN-末端側のポリペプチドの構造が比較的安定なI124~I129の間でアミノ酸残基を以下のように置換した(図2)。
【0050】
(1)EGFPのI129CおよびE125Iの変異を行なった。これらは蛍光を呈し、EGFPのそれと同等の488nmおよび510nmに励起および発光ピークを示した。
【0051】
(2)さらにm125にL126Yの変異を行なった場合には、発現レベルが同じであるにもかかわらず、蛍光が見られなくなった。
【0052】
以上より、L126Yの変異によりm129EGFP変異体が不正に折り畳まれるようになったこと、および/または、蛍光蛋白部位が連結できないことが示された。
【0053】
そこで、I129CおよびE125Iの変異を行ったm125EGFP変異体を蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブの標識蛋白部位として用いた。以下、この標識蛋白部位をEGFP変異体と呼ぶ。
実施例2 単一ポリペプチドにおけるスプライシングの確認
VDEがEGFP変異体のN-末端側ポリペプチドおよびC-末端側ポリペプチドに挟まれた単一のポリペプチドにおいて、蛋白質スプライシングが生じるかを確認するために、大腸菌中でpGEX_NVCの発現を25℃で行なった。
【0054】
(1)大腸菌のDH5α株を用いてグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合蛋白を発現した。VDE領域とEGFP変異体のN-およびC-末端側ポリペプチドを覆うプラスミドをtacプロモーターの制御下で、このGST遺伝子に融合した。これより、GST(26-kDa)、EGFP変異体のN-末端側ポリペプチドから125残基(13-kDa)、VDE(50-kDa)、および変異体のC-末端側ポリペプチド(14-kDa)からなるキメラ蛋白質が得られた。
【0055】
(2)得られた蛋白質を大腸菌から抽出、精製し、SDS-PAGEによって同定した。12~15%SDS-PAGEゲル上に、標識蛋白と10~225-kDa(Novagen)を添加し、電気泳動を行なった。ゲルをCoomassie Brilliant Blue染色し、可視化した。
【0056】
ウェスタンブロッティングは、anti-VDEポリクローナル抗体、anti-His標識ポリクローナル抗体(Santa Crus Biotechnology)、またはanti-GFPモノクローナル抗体(BioRad)をプローブとして行なった。
【0057】
クローニングに必要な酵素は、すべてTakara Biomedicalから入手し、製造元のマニュアルに従って用いた。
【0058】
PCR断片は、ABI310ジェネティックアナライザーによってシーケンスされた。
【0059】
粗生成物の主成分は、~50-kDaの蛋白質であった(図3b)。これは、VDE(50-kDa)およびGSTと連結したexteinの大きさと一致した。つまり、GSTとEGFP変異体のN-末端側ポリペプチド(26-kDa+13-kDa)の融合蛋白質であると考えられる。
【0060】
これより、融合蛋白質の103-kDa前駆体が50-kDaのVDEと53-kDaのGST-EGFP変異融合蛋白質に分割されたことが分かった。
【0061】
さらに、VDEとGST-EGFP変異融合蛋白質の分子量を、ウェスタンブロッティングより評価した。
【0062】
Anti-VDEおよびanti-GFP抗体は、それぞれ、切り出された50-kDa intein(図3d)および53-kDa GST-EGFP変異融合蛋白(図3e)と特異的に反応した。また、スプライシングされない前駆体の100-kDa付近に見られる成分は、いずれの抗体によっても解析された。
【0063】
GST-アフィニティーカラムによってさらにGST-EGFP変異融合蛋白の同定を行なった。粗生成物をアフィニティーカラムに通し、樹脂に結合した蛋白質をPreScissionプロテアーゼで取り出し、SDS-PAGEにかけた(図3c)ところ、25-kDaにバンドが見られた。これは、EGFP変異体の分子量とほぼ一致した。
【0064】
(3)次にアフィニティーカラムによって精製された蛋白質の蛍光スペクトルを測定したところ、励起および発光の最大波長は、それぞれ488nmおよび510nmとなり、EGFPの値とよく一致した。
【0065】
以上の結果より、スプライシングによって単一ポリペプチドの中央にあったVDEが切り出され、EGFP変異体のN-およびC-末端のポリペプチドがペプチド結合によって連結し、得られたEGFP変異体が正しく折りたたまれて蛍光体となることが示された。
実施例3 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>の有効性
(1)大腸菌BL21(DE3)pLysS株を用いてN-末端にHis標識を結合した組換え融合蛋白質を得た。
【0066】
蛋白質-蛋白質相互作用を試験するために、pGEX_NVCのGSTをpET16-bベクターのHis標識で置換し、スプライシングの機能部位を分割してpET_NVCΔSD(/)を得た。
【0067】
この分割は、185~389アミノ酸領域に存在する機能的に不要なエンドヌクレアーゼモチーフを〈(翻訳停止コドン)-(Shine-Dalgarno配列)-(翻訳開始コドン)〉からなるカセットで置換することにより実現した。
【0068】
得られたプラスミドpET_NVCΔSD(/)は、主にEGFPとVDEのN-末端側のポリペプチド(N_EGFP-VDE)をコードするgene1と、VDEとEGFPのC-末端側のポリペプチド(C_VDE-EGFP)をコードするgene2からなる2遺伝子オペロンであった。
【0069】
蛋白質-蛋白質相互作用の際に、VDEのN-およびC-末端側のポリペプチドが空間的に近位にあるようにするために、図4に示されるように、翻訳停止コドンと翻訳開始コドンの間にGly-Asn繰り返し配列を有する屈曲性のペプチドリンカーを導入した(pET_NVCΔSDlinker(/))。
【0070】
大腸菌内においてEGFPを与えるスプライシング現象を容易に起こすような特別な蛋白質-蛋白質相互作用が存在するかを確認するために、カルモジュリン(CaM)とそのターゲットペプチドであるM13をモデル蛋白質として選択した。
【0071】
CaMおよびM13の構造は、NMRにより明らかになっている(Ikura,M.et al.Science1992,256,632-638)ため、CaM中の任意のアミノ酸からM13中の任意のアミノ酸までの距離が分かり、好ましい。
【0072】
(2)組換えプラスミドpET_NVCΔSD(C/M)、pET_NVCΔSDlinker(C/M)、およびpET_NVCΔSDlinker(/)を大腸菌細胞内に導入し、対応する融合蛋白質を得た。
【0073】
菌内でスプライシングを起こすために、蛋白発現を25℃にて12時間行い、その後4℃で1~2日間保存した。
【0074】
gene1の発現蛋白は、anti-His標識抗体によって確認された(図5A)。また、抗体によって解析された主成分は、55-kDa蛋白(図5Aa、d)であり、これらはN_EGFP-VDE(36-kDa)のスプライシングされない前駆体とCaM(17-kDa)、または、その連結リンカー(1-kDa)の大きさと同程度であった。
【0075】
コントロールとして、pET_NVCΔSDlinker(/)プラスミドを有する大腸菌の溶解産物をSDS-PAGEにかけたところ、N_EGFP-VDEの単一バンドが得られた(図5Af)。
【0076】
これら3種のプラスミドから得られたスプライシングされない前駆体蛋白質の発現レベルはほぼ同一であった。
【0077】
一方、gene2の蛋白質生成物は、anti-GFPモノクローナル抗体によって識別され、EGFPのC-末端側のポリペプチドであることが分かった。
【0078】
さらに、pET_NVCΔSD(C/M)およびpET_NVCΔSDlinker(C/M)を発現した細胞において、遺伝子オペロンから得られた発現蛋白の大きさは、N_VDE-EGFP(20-kDa)とM13(3-kDa)(図5Ba)または含リンカ-M13(4-kDa)(図5Bd)の前駆体蛋白質のそれとよく一致した。同様に、コントロールプラスミドは、予想された蛋白質を発現した(図5Bf)。オペロンIIから得られた3つの蛋白質は、いずれも同じ発現レベルであった。
【0079】
図6に各プラスミドを保有する大腸菌溶解産物の蛍光スペクトルを示した。pET_NVCΔSDlinker(/)を含む大腸菌では、スペクトル変化は見られなかった。pET_NVCΔSD(C/M)を有する大腸菌中で、CaMとM13を共発現したところ、510nmにおける蛍光発光に若干の変化が見られた。一方、N_EGFP-VDEおよびC_VDE-EGFPに屈曲性のペプチドリンカーを結合したCaMおよびM13の共発現では、510nmの蛍光が大きく変化した。pET_NVCΔSDlinker(C/M)を有する大腸菌からの粗生成物の蛍光強度は、コントロールプラスミドpET_NVCΔSDlinker(/)または屈曲性リンカーpET_NVCΔSDlinker(C/M)をコードしないプラスミドを有する細胞を識別するのに十分であった。
【0080】
これらの結果より、CaMとM13の相互作用により、in transでスプライシングが起こり、EGFP変異体のN-およびC-末端の二つの外部領域が連結してEGEP蛍光体を形成することが示された。
実施例4 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<1>におけるリンカーの効果
スプライシングが起こるためには、VDEにおけるN-およびC-末端が正しく折り畳まれなくてはならない。このような折り畳みは、C-末端のN_VDEがN-末端のC_VDEと近位にあるとき生じる。
【0081】
CaMとM13の場合、CaMのN-末端およびM13のC-末端の間の距離は、50Åであった(Brookhaven Protein Data Bankより)。この距離は、N_VDEおよびC_VDEが隣接するには大きすぎる可能性があり、したがって、pET_NVCΔSDlinker(C/M)プラスミドを有する大腸菌での正しい折り畳みを阻害しているものと考えられた。
【0082】
しかし、実際には、pET_NVCΔSDlinker(C/M)プラスミドでの510nmで蛍光強度の明らかな増大が見られ、N_およびC_VDEにそれぞれ結合した10-および9-アミノ酸リンカーがVDEの折り畳みに必要な屈曲性を持たせ、VDEが効率よくスプライシングするコンホメーションがとられていることが示された。
実施例5 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>の作成
以下、プラスミドの作成は、大腸菌のstrainDH5α株を宿主として行った。
【0083】
蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>のintein部位としては、藍藻Synechocystis sp.PCC6803株由来のDnaEを、標識蛋白としては、野生ホタル由来のルシフェラーゼ(Lum_F)(pLucAll)を437アミノ酸と438アミノ酸の間で分割し、N-末端側(pLucN)およびC-末端側(pLucC)として用いた。
【0084】
図7にこれらのルシフェラーゼおよびルシフェラーゼ片の構成を示した。
【0085】
(1)ルシフェラーゼの分割
まず、pLucNおよびpLucCが酵素活性を失っていることを確認するために、ヒトインシュリンリセプターを過剰発現したチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-HIR)に各ルシフェラーゼ片を過渡的に発現させた。
【0086】
1μgのプラスミド(pLucAll、pLucN、およびpLucC)と0.01μgのコントロールプラスミド(pRL-TK)とともにCHO-HIRにトランスフェクションし、12ウェルプレート中で45時間培養した。培養後、発光をルミノメーターで測定した。
【0087】
また、コントロールとして、プラスミドを含まないCHO-HIRを同条件で培養した。
【0088】
プレート中のウェル毎のトランスフェクション効率の誤差を補正するために、Renilla(ウミシイタケ)由来のルシフェラーゼ(Lum_R)を用いたdual-ルシフェラーゼ アッセイを行い、ウェル毎のトランスフェクション効率を補正した。
【0089】
図8に各ルシフェラーゼ(またはルシフェラーゼ片)の相対発光強度(RLU)を示した。
【0090】
野生ホタルルシフェラーゼ(LucAll)を発現したCHO-HIRでは、RLUは、11.4であった(図8a)が、LucNおよびLucCのみを発現したCHO-HIRでは、RLUは、それぞれ2.2×10-4および4.5×10-5であった(図8b)。また、Lum_Rそのものを形質移入したCHO-HIRのRLU(バックグランド)は、2.2×10-4であったことから、LucNおよびLuoCのみでは発光活性を有さないことが示された。
【0091】
(2)DnaEの分割
藍藻(Synechocystis sp.)PCC6803株由来のDnaEは、前記のとおり、N-末端側の123アミノ酸残基とC-末端側の36アミノ酸残基を用いた。
【0092】
(3)蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>
上記(2)のDnaEのN-末端側と(1)のLucNを、また、上記(2)のDnaEのC-末端側と(1)のLucCを、各々連結し、バイシストロン性発現ベクターであるpIRES(Invitrogen)のマルチクローニングサイト(MCS)に挿入し、pIRES-DSLを得た。得られたプラスミド(pIRES-DSL)は、N-末端DnaEの3’-末端側とC-末端側DnaEの5’-末端に二つのMCS(各々、MCS-AおよびMCS-B)を有し、これらのMCSには、相互作用する、または相互作用を調べたい蛋白質や蛋白質ドメインを導入することができる。
【0093】
図7にpIRES-DSLの構成を示した。
実施例6 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>の有効性1
(1)実施例5で作成した蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>が有効に作用し、ルシフェラーゼのスプライシングを起こすことを確認するために、生理学的にインシュリン情報伝達に関与することで知られるIRS-1の941番目のチロシン残基を含むオリゴペプチド(Y941)およびそのターゲット蛋白であるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ由来のSH2Nドメイン(White,M.F.,Diabetologia1997,40,S2-S17)を用いた。
【0094】
前記MCS-AにY941を、MCS-BにSH2Nを挿入したpIRES-DSL(Y/S)とpRL-TKベクターをCHO-HIRに過渡的に共発現させた。
【0095】
図7にpIRES-DSL(Y/S)の構成を示した。
【0096】
まず、6ウェルプレート中で2μgのプラスミド(pIRES-DSL(Y/S))および0.02ngのコントロールプラスミド(pRL-TK)をCHO-HIR細胞にトランスフェクションした。45時間の培養後、培養液をFBSを含まない1.0×10-7Mのヒトインシュリン溶液で置換し、CHO-HIR細胞を72時間、3時間、および5分間培養(37℃)して刺激した。5分間培養した細胞は、その後、インシュリン溶液をFCS-フリーでインシュリンを含まない培養液で175分間培養した。
【0097】
インシュリン刺激後のRLUによる発光強度を図9に示した。
【0098】
CHO-HIR細胞がインシュリンにより72時間、3時間、および5分間刺激された際の補正後のルシフェラーゼ活性は、各々1.0、0.73、0.18であった。また、インシュリンを含まない培養液で培養した際の発光強度(バックグランド)は、0.15であり、5分間インシュリン刺激を行った結果とほぼ同等であることが分かった。
【0099】
さらに、3時間以上インシュリンによる刺激を行った際のRLUによる発光強度は、バックグランド値の4倍以上であることが示された。ここで見られたキナーゼ活性は、インシュリンレセプターによってリン酸化されたY941ペプチド(941番目のアミノ酸=チロシン)とSH2Nの特異的な相互作用によるものであり、蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>においてDnaEのin transでの折り畳みとスプライシングが効率的に起こり、LucNとLucCが連結してルシフェラーゼ発光が再現されたことが明らかとなった。
【0100】
そこで、Y941におけるチロシン残基をインシュリンリセプターによってリン酸化されないアラニン残基に変換したY941変異体を作成し、同様の試験を行った。
【0101】
結果を図10に示した。
【0102】
Y941変異体を発現させたCHO-HIR細胞では、補正後のルシフェラーゼ発光はバックグランドと同程度であったことから、Y941のチロシンのリン酸化によりSH2Nと蛋白質間相互作用が起きたことが確認された。
実施例7 蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>の有効性2
実施例5で作成された蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブ<2>を用いてCHO-HIR細胞におけるインシュリン誘発蛋白質相互作用の定量的解析を行った。
【0103】
まず、RLU値のインシュリン濃度依存性を確認した。CHO-HIRを前記のとおりにpIRES-DSL(Y/S)とpRL-TKで共発現した後、前記の方法で1.0×10-13~1.0×10-7Mの範囲の各濃度のインシュリンを用いて37℃で3時間刺激した。
【0104】
RLUによる発光強度を図11に示した。
【0105】
発光強度はインシュリン濃度に伴って増大することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、蛋白質-蛋白質相互作用を精度高く、かつ簡便に解析するための蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブが提供される。また、この蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを用いた蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法が提供される。
【0107】
この蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを用いた蛋白質-蛋白質相互作用の解析方法では、従来の方法のようにレポーター遺伝子や基質を用いる必要がなく、簡便で精度高い解析が可能となる。また、哺乳動物細胞においても感度高く蛋白質-蛋白質相互作用を解析できる。
【0108】
したがって、この発明の蛋白質-蛋白質相互作用解析用プローブを用いれば、細胞膜での蛋白質間の相互作用や細胞内におけるホルモンによるレセプターの活性化など、あらゆる生体内での蛋白質-蛋白質相互作用の機構を短時間で簡便に解析することが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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